輸入畜産物の検査手続
家畜伝染病予防法(以下「法」という。)により、指定検疫物の品物別に輸入できる港や空港が指定されています。 |
検査の申請
動物検疫の対象物(指定検疫物)を輸入しようとする者(代行者を含む。以下「申請者」という。)は、指定検疫物の本邦到着後遅滞なく(船舶貨物の場合は、原則として現物検査を希望する日の前日まで)、「輸入検査申請書」(規則別記様式第23号)を動物検疫所に提出するか、NACCS(動物検疫関連業務)(以下「NACCS」という。)を使用して申請してください。
申請書には、輸出国政府機関発行の検査証明書、その他必要書類を添付して輸入港を管轄する動物検疫所へ提出してください。(NACCSを使用した場合は、輸出国政府機関発行の検査証明書等の関係書類を提出してください。)
輸入検査申請書の記入方法
- 申請書は、種類別、仕向地別に作成します。
- 申請書の「種類」欄には、輸入する物の名称を記入します。
- 「重量」欄には、国際法(メートル法、kg)で正味重量(Net Weight)を記入します。原皮、卵など枚数あるいは個数が記入できる場合には、申請書のこうり数欄にその数量を()書きで記入します。
- 「商標」欄には、船積み商標を記入します。
- 「生産地」欄には、当該物の輸出国名を記載することとしますが、生産国が輸出国と異なる場合には、生産国名を()書きで記載します。
- 「仕向地」欄には、当該物を加工工場へ送致するときは搬入する場所及び所在地を記入します。
- 積み替えがあったときは、「とう載船舶名」欄に積み替え船舶名と積み替え地を併記します。
- 備考欄には、輸送方法(在来船、コンテナ、航空貨物、携帯品)を記入し、コンテナの場合はコンテナの番号、その他検査時に必要となる事項を記入します。
- 担当者名及び担当者の電話番号を欄外に記載します。
輸出国政府機関の発行する検査証明書の添付
指定検疫物を輸入するには、法第37条に基づき、輸出国政府機関発行の検査証明書(Health Certificate 又は Veterinary Certificate と称される)の添付が必要です。なお、オーストラリアからの一部の畜産物については、検査証明書が国際電送でNACCSに送信されますので、この場合は当該証明書番号をお知らせください。
その他の添付書類
検査をより円滑に実施するために、次のような場合にあっては、関係書類を添付していただくことがあります。
- 商標、荷受人、荷送人等が輸出国の検査証明書に記載されていない場合又は検査証明書の記載事項を補足する必要がある場合
例 送り状(Invoice)、船荷証券(Bill of Lading(以下「B/L」という。)) - 輸送途中積み替え等があった場合
例 船荷証券(B/L) - 検疫要領等で必要とする場合
例 ゼラチン加工用原料砕骨 …輸送計画書、加工消毒実施計画書等 - その他家畜防疫官が必要と認めて要求する場合
例 加工工程説明書、入庫報告書など - 指示書(他港からの回送物件の場合及び農林水産大臣の指定した検査場所において検査を実施する場合など)
申請の受付
申請書の受付時間は、担当する動物検疫所により異なりますので、事前に確認してください。なお、申請時に検査希望予定を検査台帳に記載していただくことがあります。
NACCSを利用して申請される場合は、当該システム運用時間内であればいつでも申請できます。
その他
- 輸入したものが指定検疫物かどうかの判断は、B /L等による品名だけで判断することなく、その原材料や加工工程等を確認した上で行ってください。なお、判断がつかない場合には、動物検疫所に照会されますようお願いします。
- 指定検疫物以外のものであっても、監視伝染病の病原体に汚染しているおそれがあるものについては、要検査物として検査の対象となります。
現物検査
検査前の注意事項
- 貨物は家畜防疫官が特に指示をした場合を除き開梱しないでください。
- 検査に係る関係者間の打合せ、照会等は事前に行い、貨物等の状況及び情報を相互に確認しておいてください。
- 申請者は特殊な貨物や専門知識を必要とする貨物等について、十分な説明ができるようにしておいてください。
- あらかじめ家畜防疫官から検査手順及び消毒が指示された場合は、作業員、器材等を配備しておいてください。
- 同一貨物で植物防疫所又は厚生労働省検疫所の検査がある場合には、同時に現物検査を実施することができます。希望される場合は、その旨を事前に届け出て家畜防疫官と調整してください(同時並行処理の実施について(PDF:64KB)。
検査時間
現物検査は、通常、家畜防疫官指定検査場所で家畜防疫官により順次に実施されますが、全てのものを一度に検査をすることはできないことから、家畜防疫官が関係者と貨物の状況、検査所要時間、順路等を打ち合わせて効率的に実施しています。
申請者は、担当の動物検疫所の家畜防疫官と検査時間について事前に打合せを行い、現物検査の準備をしてください。
現物検査時の立会い
申請者及び指定検査場所の担当者は、家畜防疫官の行う現物検査に立ち会い、検査の安全を図るとともに、検査対象貨物等の説明や家畜防疫官による検査に基づく処置(消毒等)の指示に協力し、検査が円滑に運ばれるようご協力願います。
現物検査
現物検査は、「畜産物の輸入検査要領」等の関係要領で規定される開梱数を無作為に抽出し、家畜防疫官により検査対象物件と関係書類(申請書、輸出国政府機関発行の検査証明書等)との照合、監視伝染病の病原体の汚染の有無、法令・家畜衛生条件の違反の有無等について行います。また、必要に応じて精密検査を実施します。
現物検査の省略
書類検査に合格したもののうち「抜き打ち検査の対象物」に該当するものは、現物検査を省略することがあります。
現物検査の場所
家畜防疫官により行われる現物検査は、(1)動物検疫所、(2)輸入港内の家畜防疫官の指定した場所、(3)農林水産大臣により指定された場所及び(4)陸揚げ前の状態(船舶 ・航空機内等)で行います。
- 動物検疫所での検査
指定検査場所での検査の結果、SK消毒等が家畜防疫官により指示された場合や航空貨物の検査を除き、動物検疫所で輸入貨物の検査を行うことはほとんどありません。 - 家畜防疫官の指定した検査場所での検査
家畜防疫官の指定検査場所には港内の倉庫、コンテナステーション、コンテナヤードなどがあります。なお、コンテナに収納した状態で現物検査を行う場合は、原則として指定検査場所のエプロンに引き付けて実施します。
エプロンのない場合は、タラップ等のエプロンに代わる設備を整え検査の安全確保をお願いします。 - 農林水産大臣の指定した検査場所における検査
検査そのものは、家畜防疫官の指定検査場所と同様ですが、農林水産大臣の指定した検査場所に検査対象物を回送する場合は、あらかじめ到着港の動物検疫所に届け出て、輸送方法、順路その他について文書による指示(指示書)(NACCSでも可)を受けてから、貨物を搬入します。 - 臨船(機)検査
陸揚げ前の状態で行う検査ですが、通常、畜産物では船用品や緊急の処置を必要とするものについて実施しています。
現物検査時の注意事項
- 再検査
コンテナターミナルでの検査等において、検査又は消毒が適切に実施できないと判断された場合は、当該貨物を倉庫等の指定検査場所に搬入後、再度検査を実施することとなります。
- 陸揚げされた検査対象物は検査及び消毒が完了するまで他の貨物と明確に区分して蔵置し、指定検疫物票を掲げて動物検疫対象貨物であることを明示してください。
- 指定検査場所の管理責任者は、指定を受ける際に指示のあった事項を担当者に徹底し、検査に支障をきたさないように努めてください。
検査に基づく処置
消毒 ・焼却 ・埋却
消毒、焼却、埋却等については、効率的に実施するためあらかじめ家畜防疫官の指示により作業員、消毒薬品、運搬用具、消毒器等を手配・準備してください。くん蒸消毒は、密閉式コンテナ、くん蒸倉庫又はビニール天幕で被覆し密閉状態にして行います。くん蒸消毒を始めとして、家畜防疫官が指示する消毒は、動物検疫所が行う「輸入畜産物消毒講習」を受講した者しか実施できませんのでご注意ください。
家畜防疫官は、検査及び検査に基づく処置の実施に当たり、必要な場合は検査対象物の積み替え、隔離、密閉を指示することがあります。
SK消毒施設は動物検疫所内に設置されていますので、SK消毒を実施する場合、申請者は、家畜防疫官の指示に基づいて当該貨物を蔵置場所から動物検疫所まで送致しなければなりません。
精密検査
輸出国政府機関発行の検査証明書においてわが国の要求する条件が満たされていない場合、現物検査において検査対象物に異常が認められた場合など、家畜防疫官が必要と認めたものについては検査材料を採取し、精密検査を実施します。この場合、検査結果が判明し、家畜防疫官が指示するまでは当該貨物を移動してはなりません。
NACCS(動物検疫関連業務)を使用した指示
通関業者がNACCSを使用して申請情報を入力した場合は、動物検疫所に申請情報が送られ、申請者の端末から指示事項が出力されます。
回送手続など
指定検疫物の他港又は農林水産大臣の指定した検査場所への回送
(1)回送の申請は「輸入検査申請書」に所要の記載事項のほか、使用コンテナーの種類、記号、番号等を備考欄に記入して提出することにより行います。
(2)申請書にはB /Lの他、必要に応じ、D /O(Delivery Order)、輸出国政府機関発行の検査証明書等のコピーを添付します。
(3)回送は、家畜防疫官の指示に従って行います。
(4)消毒の必要な貨物は、原則として到着港において外装消毒を実施した後に回送することとなります。
(5)偶蹄類の動物の肉、臓器など輸入禁止地域が設定されている畜産物であって、輸入禁止地域を経由しなかったことが確認できないもの(シールの脱落のないこと等家畜防疫上の安全確認ができないもの)は回送することができません。
(6)申請者がNACCS端末から申請情報を入力した場合は、動物検疫所に申請情報が送られ、申請者の端末から指示事項が出力されます。
誤揚げ貨物
誤揚げ貨物が確認された場合、輸入者又は当該貨物の管理者は他の貨物と区分して保管し、「輸入検査申請書」に所要事項を記入して動物検疫所に届け出なければなりません。
- 誤揚げした港で輸入検疫を終了する場合、当該貨物の輸入予定港に輸出国政府機関発行の検査証明書が保管されているときは、その証明書のコピーに管轄動物検疫所の家畜防疫官による原本対照済確認印を受け、これを誤揚げ貨物のある港の動物検疫所に提出して検査を受けます。
- 当初の輸入予定港へ回送する場合、前記「指定検疫物の他港又は農林水産大臣の指定した検査場所への回送」により手続を行います。
不足貨物
輸入貨物の数量不足を確認した申請者(輸入者)は、あらかじめ提出した輸入検査申請書の記載事項を訂正しなければなりません。関係各港への照会により他港での誤揚げが確認された場合は、前記「誤揚げ貨物」により手続を行います。
オーバー(ランド)カーゴ
輸出国政府機関発行の検査証明書に記載された数量を超えて輸入された貨物(オーバーカーゴ)の取扱いは次によります。
(1)オーバー分が誤揚げによるものか、輸出国から余分に輸出されたものであるかを調査します。
(2)誤揚げの場合は前記「誤揚げ貨物」により手続を行います。
(3)余分な輸出の場合で、種類、荷姿、マーク、ロット番号等の一致が確認できるときは、オーバーカーゴ分についても輸入検疫証明書を交付します。
(4) (2)及び(3)以外のものについては返送、焼却等の処置がとられます。
仮陸揚げ
仮陸揚げには、外航船が修理等のため入渠した際の船用品の仮陸揚げ(艀取りを含む。)と、最終目的港(B /L記載港)への直行船がないために積み替えを目的として行われる仮陸揚げとがあります。
(1)仮陸揚げをしようとする場合は、「輸入検査申請書」、「仮陸揚申請書」「仮陸揚計画書」などにより事前に動物検疫所に届け出なければなりません。
(2)偶蹄類の動物の肉などであって、輸入禁止地域から発送されたもの、輸入禁止地域を経由したもの、輸入禁止品と混載されたもの及び生産国が確認できないものについては仮陸揚げは認められません。
(3)消毒の対象となる畜産物は、仮陸揚げの後、外装消毒を実施した上で保管されます。
(4)仮陸揚げのための検査は、当該貨物の陸揚げ以前に本船上において船長又はその職務代行者の立会いのもとに実施します。
(5)仮陸揚げ貨物の保管場所は、家畜防疫官の指定した港内の検査場所に限定されます。
(6)密閉式コンテナに収容された貨物のうち、コンテナのまま陸揚げされ、開扉されることなく保管された後、同一埠頭から積み出されるもので前記(2)に該当しないものは、(4)及び(5)によることなく、書類検査によって仮陸揚げを認めることがあります。
(7)保管期間経過後のとう載確認は、船用品にあっては船長又はその職務代行者の証明によることとし、貨物にあってはB /Lコピーによります。
注意
各港の事情により、取扱いが異なる場合がありますので、不明な場合は関係港の動物検疫所にお尋ねください。
トランシップ貨物の検疫実務
検疫対象物が外国向けで、我が国の港で接続(トランシップ)のみ行う場合の取扱いは、次のとおりです。
(1)積み替えは原則として到着港の同一埠頭内に限定して実施します。ただし、当該コンテナ貨物に対する輸出国政府機関発行の検査証明書(Health Certificate)が添付されており、かつ、我が国の輸入に際して消毒等の処置が必要ないと認められる場合は、積み替えのための輸送、保管及び本船への積み込み等、動物検疫上の取扱いは家畜防疫官の指示により、到着港内及び家畜防疫官が許可する区域において認められます。
(2)輸入禁止品(輸入禁止地域を経由した偶蹄類動物由来の肉類等を含む。)及びこれらと混載された貨物コンテナの積み替えは認められません。
(3)積替えにあっては、あらかじめ到着港の動物検疫所に届け出る必要があります。