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関東農政局

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3.水を運ぶ

  通常、水路の取水口である堰(頭首工)は、集落よりもかなり上流にあります。これは水の位置エネルギー(重力で下へ流れようとする力)を大きくするためです。水の不便であった土地を切り拓き、水路を設けて通水させることを「疏水(そすい)」とも言います(農水省では全国から優れた疏水を選ぶ疏水百選を実施し、110地区を選定しました)。

川を超えて水を渡す水路橋
 (大井川用水農業水利事業)


  山を越えて違う流域から引いてくるケースも少なくありません。そうした場合、山の急斜面の等高線に沿って、ぐるりと回るようにして水路を引いてきます。あるいはそれが不可能な場合、山の中にトンネルを掘ることになります。いずれにしても、かなり難易度の高い工事となります。それらは特殊な例ですが、普通の水路でも、堰から集落の水田までには丘があったり、いくつかの谷を越えたり、川を横切ったりしなければなりません。

  例えば昭和43年に完成した静岡県の大井川用水は、大井川の水を左岸側の大井川平野と右岸側の小笠地域にくまなく行き渡らせる大事業でした。この事業では、小笠地域まで水を運ぶために、大井川に長大な水路橋を架け、また、途中に横たわる台地(牧之原台地)はトンネルを掘って水を通しています。この水路橋やトンネルには、当時の最新技術も導入されました。それでも、現在のように機械が発達していなかった時代に、人力に頼る部分も多かった工事は様々な困難に遭遇したようです。事業は22年間にも及んでいます。

  疏水と呼ばれるような水路は、多かれ少なかれ、こうした難工事の末に完成したものです。地盤は一定ではなく、土砂崩れが起きそうな柔らかい場所もあれば、硬い岩盤にはばまれて掘り進めないような場所もあります。昔はクワやノミしかなかったわけですから、その工事は現代では想像もつかないほど苦難を伴いました。現在も多くの犠牲者の霊がこうした水路脇に祀られています。

  さて、頭首工などで取り入れた水を運ぶ水路は、幹線水路と呼ばれる大きな水路です。ちなみに大井川用水では、大井川平野に水を運ぶ幹線水路が5本、小笠地域に水を運ぶ幹線水路が3本にそれぞれ枝分かれし、さらにこの幹線水路から、いくつもの支線水路に枝分かれして、各集落に水が配分されることになります。

  今度は、水を分ける仕組みが必要となってきます。




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