
生協はどれも同じではないことを、ご存じだろうか?
スローガンやビジョンなどは生協ごとに異なり、アイチョイスは地域でも「安心・安全」へのこだわりが強いことに定評がある。
有機野菜については【有機JAS】制定以前から、有機栽培の農産物を取扱ってきた。コツコツと全国から集める一方、有機野菜生産者の育成にも着手している。
アイチョイスは2011年に設立された「生協事業連合」だ。生協は県域・職域で活動が制限されており、広域で事業に取り組む場合には他生協と共同で生協事業連合を組織する必要がある。
アイチョイスの場合、愛知県尾張地区・三河地区、静岡県遠州地区を事業エリアとする「1.あいち生活協同組合」、岐阜を事業エリアとする「2.生活協同組合アイチョイス岐阜」の2生協で2011年に事業連合を設立。その後2020年に愛知県尾張地区・海部地区・名古屋市の一部を事業エリアとする「3.一宮生活協同組合」が参加。あえて店舗をもたないことで、店舗の運営費用がかからず、食品廃棄につながらないことを選択した3生協から成っている。
この事業連合の名称がアイチョイスであり、商品開発・企画・仕入・配送など、共同購入事業全般を担っている。
アイチョイス商品部係長の神谷清光さんは、「組合員の中心は、子育て中や家族の健康を願う主婦。『有機農産物』に対し、意識が高い組合員さんが多くいらっしゃいます。
3生協は地域に密着する生協として、安全・安心な商品を組合員の代わりに探し、ジャッジし、提供しているという自負があります。全国に小さな点としてちらばる有機栽培生産者をつなぐ共同物流を実現したことでコストを下げ、毎週買える価格で提供しています。」と説明する。
有機JAS認証が制定された2000年以降、認定マークを付けた有機農産物を少量ながら扱うようになった。
仕入先は全国にあるが、すべての農家と直接取引しているわけではない。アイチョイスグループの職員が常に全国を回って、生産量や取扱量などの調整を行っているが、すべて同様に対応をするのはハードルが高い。特に有機農産物については、必要な量を信頼できる農家から仕入れ、注文のあった必要量を届けてくれる帳合先(特定の卸売業者)との連携が必要となる。
物流に帳合先が入ると、数量の調整役の役割を果たし、発注した側は余分な在庫を持たないことがメリットとなる。しかし流通経費に転嫁されて価格が上昇することから、できるだけ農家に負担をかけない独自の取り決めを行い調整している。
そのため、一般市場価格に左右されない、安定した価格で組合員に提供できるのだ。
「有機農産物の加工品は目にするようになりましたが、有機農産物はどこでも購入できるというわけではありません。組合員に配布する商品カタログでは有機JAS・農薬不使用(認証を取得していないもの)・化学肥料不使用・特別栽培以上・ネオニコチノイド農薬不使用・ゲノム編集されていな作物などが一目で分かるように、農産物それぞれに表示しています。」
現在、有機農産物と農薬節減の野菜の割合は、キノコ類を含めて野菜全体の58%。毎週扱う全95品の農産物のうち55品が該当する。内訳は20品が有機JAS認証、35品は農薬不使用となっており、今後は70%以上に増やしたいと考えている。
なお、組合員向けのカタログの青果物欄では、有機農産物が最初に掲載されており力の入れ方が伝わってくる。
「生協の現在の仕組みは、農家さん泣かせの面があります。カタログを作るのは1ケ月前で、それ以降は変更ができない。出荷したくてもサイズが小さかったり、見栄えが悪かったりということもあるし、良いできだと思っていたら直前にゲリラ豪雨に遭い出荷できないこともあります。代替商品をご用意できることもありますが、有機や農薬不使用の商品を急に出荷できる生産者は非常に少ないのが現実です。」
こうした状況に向き合っていくには、どうしても組合員の理解が必要になる。神谷さんは組合員向けのリモート勉強会で、「生産者の方が農業に意欲をもって取り組んでいるように、組合員の方も温かい目で、『支援する』という気持ちでご購入いただければうれしいです。」と呼びかけている。それに対して組合員からも次のような反応が寄せられていた。
「注文した野菜が届かない時は残念に思い、自分で買いにいけば手に入るかもしれないし、生協を止めようか迷ったこともありました。でも、収穫できなくて残念な気持ちは作り手の農家さんだって同じで、自然を相手に生産する野菜や果物なのだから、収穫できないことがあったり、大きさが様々になったりするのは仕方ないと、今日改めて気づきました。」
伝えることで、組合員の理解も深まっている。
生産現場で生産者と日々接する神谷さんは「有機農産物を生産している農家の方は、生産から販売まで自分でやる人が多い。そうせざるを得なかったという面はあるが、野菜作りはプロでも、実際に販売まで上手くできる人は多くない。農家は生産に専念して、販売については商売が得意な人に任せるようにしていった方が良いと思っています。」
一方で、有機農業の今後の可能性には、期待も持っている。
「有機農業はもうからないというイメージがありますが、やり方次第だと思っています。有機栽培で丁寧な土づくりを行い、生産効率の高い農家さんもいます。こうした知見もアイチョイスには貯まってきているので、これを広めることも役割ではないかと思います。2年前から熊本県に「有機の学校」を開校し有機栽培を学べるカリキュラムを組んでいます。生産者が良い野菜づくりに十分な時間を掛け、アイチョイスのようなプラットフォームを介して必要な人に届ける…こうしたサイクルを太く強くしていけば、有機農業の世界はもっと楽しく、誰もがやってみたい仕事になると信じています。」