国際機関や諸外国における取組

先進国を中心に、食品中のフランやフラン化合物について含有実態調査やリスク評価等が行われており、ここでは主な取組を紹介します。なお、フラン及びフラン化合物について基準値等による規制を設けている国や地域はありません。

コーデックス委員会

有効な低減対策等に関する情報が不足していることから、コーデックス委員会において、食品中のフランやフラン化合物に関する実施規範や最大基準値の策定及び策定に向けた検討はなされていません。

EU

• 欧州食品安全機関（EFSA）は2017年に食品中のフラン及びメチルフラン類（2-メチルフラン、3-メチルフラン、2,5-ジメチルフラン）に関する公衆衛生上のリスクについての科学的意見書を公表しました[*1]。フランについては毒性評価と2004～2016年に加盟国等から提供された含有実態データをもとにした推定摂取量の結果から、非発がん毒性、発がん性ともに健康への影響が懸念されると評価されました。また、2-メチルフラン、3-メチルフランについてデータの利用が可能な一部の食品における各メチルフランのフランに対する濃度比をもとに総フラン（フラン、2-メチルフラン及び3-メチルフラン）の摂取量を推定したところ、成人から高齢者の総フランの摂取量はフラン単独の場合の約3～4倍とされ、これらのメチルフランはフランによる肝毒性の懸念を高める可能性があると評価されています。
• 2017年のリスク評価において、食品中のメチルフラン類の含有実態データが不足しており、更なるデータの収集が推奨されたことを踏まえて、EUは2022年に食品中のフラン、2-メチルフラン及び3-メチルフランのモニタリングを行うよう加盟国に勧告しました[*2]。なお、定量可能な分析法が存在する場合は、2,5-ジメチルフラン、2-エチルフラン、2-ペンチルフランなどのその他のフラン化合物についてのモニタリングも行うよう求めています。

英国

英国食品基準庁（FSA）では、高温調理によって生成され発がん性が懸念される化学物質であるアクリルアミド及びフラン類（フラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン）について2014年から2018年にかけて含有実態調査を行いました（メチルフランの調査は2016～2018年のみ）。2018年調査では、朝食用シリアル、コーヒー、ビスケット類などの6つの食品群（計134点）を対象としてフラン類の濃度を調査し、コーヒー製品を中心として、フランだけでなく2-メチルフラン、3-メチルフランも検出されました。ただし、本調査で得られたフラン類濃度はヒトの健康への懸念を増加させないものであったとしています[*3]。

カナダ

カナダ保健省（Health Canada）やカナダ食品検査庁（CFIA）では、フランやフラン化合物を含め食品中の様々な化学物質について含有実態調査を行っています[*4]。CFIAが2013年から2018年にかけて、国内で市販されている朝食用シリアル、コーヒー、乳幼児用食品などの9つの食品群（計945点）を対象としてフラン、2-メチルフラン、3-メチルフラン濃度を調査したところ、全試料の83%でいずれかのフラン類が、35%で3種類全てのフラン類が検出されました。調査対象としたいずれの食品群についても、ヒトの健康に懸念をもたらすことは想定されないと考察されています[*5]。

米国

2004年に米国食品医薬品局（FDA）は、焙煎コーヒーや缶詰を含む幅広い食品にフランが含まれることを公表した後、フラン分析法の開発（2006年）、食品中の含有実態調査（2004～2008年）や摂取量推定（2007年）を行うとともに、Q＆Aによる消費者向けの情報発信（2004年）も実施しました[*6] 。

【参考文献】
*1 EFSA Journal 2017;15(10):5005 Risks for public health related to the presence of furan and methylfurans in food（外部リンク）
*2 Commission Recommendation (EU) 2022/495 on monitoring the presence of furan and alkylfurans in food（外部リンク）
*3 Food Standards Agency, Survey of acrylamide and furan in UK retail products（外部リンク）
*4 Health Canada, Furan（外部リンク）
*5 CFIA 2023 Furan, 2-methylfuran and 3-methylfuran in Selected Foods - April 1, 2013 to March 31, 2018 – （外部リンク）
*6 FDA, Furan（外部リンク）