概説
1 施策の重点
食料自給率・食料自給力の維持向上に向けた施策、食料の安定供給の確保に関する施策、農業の持続的な発展に関する施策、農村の振興に関する施策及び食料・農業・農村に横断的に関係する施策等を総合的かつ計画的に展開しました。
また、これまでの農政全般にわたる改革に加えて、新たに生産基盤の強化を目的とする政策パッケージとして「農業生産基盤強化プログラム」を取りまとめ、これを「農林水産業・地域の活力創造プラン」(令和元年12月改訂)に新たに位置付けたことを踏まえ、強い農業・農村を構築し、農業者の所得向上を実現するための施策を展開しました。
さらに、TPP11、日EU・EPAに続く日米貿易協定により、我が国が新たな国際環境に入ったことを踏まえ、令和元(2019)年12月に改訂された「総合的なTPP等関連政策大綱」に基づき、強い農林水産業の構築、経営安定・安定供給の備えに資する施策等を推進しました。また、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所(以下「東電福島第一原発」という。)事故からの復旧・復興に関係省庁が連携しながら取り組みました。
2 財政措置
(1)令和元(2019)年度農林水産関係予算額は、2兆3,108億円(このほか臨時・特別の措置1,207億円)を計上しました。本予算は、「農林水産業・地域の活力創造プラン」等に基づき、農林水産業の成長産業化に向けて、「強い農林水産業」と「美しく活力ある農山漁村」を実現していくための施策として措置しました。具体的には、<1>担い手への農地集積・集約化等による構造改革の推進、<2>水田フル活用と経営所得安定対策の着実な実施、<3>強い農林水産業のための基盤づくりと「スマート農業」の実現、<4>農林水産業の輸出力強化と農林水産物・食品の高付加価値化、<5>食の安全・消費者の信頼確保、<6>農山漁村の活性化、<7>林業の成長産業化と生産流通構造改革の推進、<8>水産改革を推進する新たな資源管理と水産業の成長産業化、<9>重要インフラの緊急点検等を踏まえた防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策を推進しました。
また、令和元(2019)年度農林水産関係補正予算額は、5,849億円を計上しました。
(2)令和元(2019)年度の農林水産関連の財政投融資計画額は、5,379億円を計上しました。このうち主要なものは、株式会社日本政策金融公庫への5,300億円となりました。
3 立法措置
第198回国会、第200回国会及び第201回国会において以下の法律が成立しました。
- 「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」(平成31年法律第17号)
- 「農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第12号)
- 「特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律」(令和元年法律第22号)
- 「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(令和元年法律第57号)
- 「肥料取締法の一部を改正する法律」(令和元年法律第62号)
- 「家畜伝染病予防法の一部を改正する法律」(令和2年法律第16号)
また、令和元(2019)年度において、以下の法律が施行されました。
- 「土地改良法の一部を改正する法律」(平成31年4月施行)
- 「特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律」(令和元年6月施行)
- 「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」(令和元年7月施行)
- 「農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年11月施行)
4 税制上の措置
施策の総合的な推進を図るため、以下を始めとする税制措置を講じました。
(1)一定の事項が定められた農用地利用規程に基づき行われる農用地利用改善事業の実施区域内にある農用地が、当該農用地の所有者の申出に基づき一定の農地中間管理機構に買い取られる場合を2,000万円特別控除の適用対象に追加しました(所得税・法人税)。
(2)「特定農産加工業経営改善臨時措置法」(平成元年法律第65号)に規定する承認計画に係る施設に対する事業所税の課税標準の特例措置について、菓子製造業、パスタ製造業及び砂糖製造業を適用対象に加えた上、適用期限を1年9月(個人は2年)延長しました(事業所税)。
(3)「農業競争力強化支援法」(平成29年法律第35号)に基づく事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却等の特例措置を2年延長しました(所得税・法人税、登録免許税)。
(4)利用権設定等促進事業により農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置等を2年延長しました(登録免許税・不動産取得税)。
5 金融措置
政策と一体となった長期・低利資金等の融通による担い手の育成・確保等の観点から、農業経営の特性に応じた資金調達の円滑化を図るための支援措置である農業制度金融の充実を図りました。
(1)株式会社日本政策金融公庫の融資
ア農業の成長産業化に向けて、民間金融機関と連携を強化し、農業者等への円滑な資金供給に取り組みました。
イ農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)については、実質化された「人・農地プラン」の中心経営体として位置付けられたなどの認定農業者を対象に貸付当初5年間実質無利子化する措置を講じました。
(2)民間金融機関の融資
ア民間金融機関の更なる農業融資拡大に向けて株式会社日本政策金融公庫との業務連携・協調融資等の取組を強化しました。
イ認定農業者が借り入れる農業近代化資金については、貸付利率をスーパーL資金の水準と同一にする金利負担軽減措置を実施しました。
ウ農業経営改善促進資金(スーパーS資金)を低利で融通できるよう、都道府県農業信用基金協会が民間金融機関に貸付原資を低利預託するために借り入れた借入金に対し利子補給金を交付しました。
(3)農業法人への出資
意欲のある農業法人の財務基盤の強化や経営展開を支援するため、「農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法」(平成14年法律第52号)に基づき、農業法人に対する投資育成事業を行う株式会社又は投資事業有限責任組合の出資原資を株式会社日本政策金融公庫から出資しました。
(4)農業信用保証保険
農業者等の信用力を補完し、円滑な資金供給が行われるようにするため、農業信用保証保険制度に基づき、都道府県農業信用基金協会による債務保証及び当該保証に対し独立行政法人農林漁業信用基金が行う保証保険により補完等を行いました。
(5)被災農業者等支援対策
ア甚大な自然災害により被害を受けた農業者等が借り入れる災害関連資金について、貸付当初5年間実質無利子化する措置を講じました。
イ甚大な自然災害により被害を受けた農業経営の再建に必要となる農業近代化資金の借入れについて、都道府県農業信用基金協会の債務保証に係る保証料を保証当初5年間免除するために必要な補助金を交付しました。
ウ新型コロナウイルス感染症の影響を受けた農業者等に対して、農林漁業セーフティネット資金の貸付限度額の引上げ、貸付当初5年間実質無利子化するなどの資金繰り支援策を講じました。
6 政策評価
効果的かつ効率的な行政の推進、行政の説明責任の徹底を図る観点から、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づき、「政策評価基本計画」(平成27年3月策定)及び毎年度定める実施計画により、事前評価(政策を決定する前に行う政策評価)、事後評価(政策を決定した後に行う政策評価)を実施しました。
ご意見・ご感想について
農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。
白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
送信フォームはこちら。
お問合せ先
大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX番号:03-6744-1526