2 主要品目ごとの生産努力目標の実現に向けた施策
(1)米
ア 需要に応じた米の生産・販売の推進
(ア)産地・生産者と実需者が結び付いた事前契約や複数年契約による安定取引の推進、水田活用の直接支払交付金等による作付転換への支援、都道府県産別、品種別等のきめ細かな需給・価格情報、販売進捗情報、在庫情報の提供、都道府県別・地域別の作付動向(中間的な取組状況)の公表等により需要に応じた生産・販売を推進します。
(イ)国が策定する需給見通し等を踏まえつつ生産者や集荷業者・団体が主体的に需要に応じた生産・販売を行うため、行政、生産者団体、現場が一体となって取り組みます。
(ウ)米の生産については、農地の集積・集約化による分散錯圃(さくほ)の解消や作付けの団地化、直播(ちょくはん)等の省力栽培技術やスマート農業技術等の導入・シェアリングの促進、資材費の低減等による生産コストの低減等を推進します。
イ コメ・コメ加工品の輸出拡大
「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(令和4(2022)年12月改訂)(以下「輸出拡大実行戦略」という。)で掲げた輸出額目標の達成に向けて、輸出ターゲット国・地域である香港、米国、中国、シンガポールを中心とする輸出拡大が見込まれる国・地域での海外需要開拓・プロモーションや海外規制に対応する取組に対して支援するとともに、大ロットで輸出用米の生産・供給に取り組む産地の育成等の取組を推進します。
(2)麦
ア経営所得安定対策や強い農業づくり総合支援交付金等による支援を行うとともに、作付けの団地化の推進や営農技術の導入を通じた生産性向上や増産等を推進します。
イ実需者ニーズに対応した新品種や栽培技術の導入により、実需者の求める量・品質・価格の安定を支援し、国産麦の需要拡大を推進します。
ウ実需と生産のマッチングを推進し、実需の求める品質・量の供給に向けた生産体制の整備を推進します。
(3)大豆
ア経営所得安定対策や強い農業づくり総合支援交付金等による支援を行うとともに、作付けの団地化の推進や営農技術の導入を通じた生産性向上や増産等を推進します。
イ実需者ニーズに対応した新品種や栽培技術の導入により、実需者の求める量・品質・価格の安定を支援し、国産大豆の需要拡大を推進します。
ウ「播種(はしゅ)前入札取引」の適切な運用等により、国産大豆の安定取引を推進します。
エ実需と生産のマッチングを推進し、実需の求める品質・量の供給に向けた生産体制の整備を推進します。
(4)そば
ア需要に応じた生産及び安定供給の体制を確立するため、排水対策等の基本技術の徹底、湿害軽減技術の普及等を推進します。
イ高品質なそばの安定供給に向けた生産体制の強化に必要となる施設の整備等を支援します。
ウ国産そばを取り扱う製粉業者と農業者の連携を推進します。
(5)かんしょ・ばれいしょ
アかんしょについては、共同利用施設の整備や省力化のための機械化体系の確立等への取組を支援します。特にでん粉原料用かんしょについては、多収新品種への転換や生分解性マルチの導入等の取組を支援します。また、「サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)」については、土壌消毒、健全な苗の調達等を支援するとともに、研究事業で得られた成果を踏まえつつ、防除技術の確立・普及に向けた取組を推進します。さらに、輸出の拡大を目指し、安定的な出荷に向けた施設の整備等を支援します。
イばれいしょについては、生産コストの低減、品質の向上、労働力の軽減やジャガイモシストセンチュウ及びジャガイモシロシストセンチュウの発生・まん延の防止を図るための共同利用施設の整備等を推進します。また、収穫作業の省力化のための倉庫前集中選別への移行やコントラクター等の育成による作業の外部化への取組を支援します。さらに、ジャガイモシストセンチュウやジャガイモシロシストセンチュウ抵抗性を有する新品種への転換を促進します。
ウ種子用ばれいしょ生産については、罹病(りびょう)率の低減や作付面積増加のための取組を支援するとともに、原原種生産・配布において、選別施設や貯蔵施設の近代化や、配布品種数の削減による効率的な生産を推進することで、種子用ばれいしょの品質向上と安定供給体制の構築を図ります。
エいもでん粉の高品質化に向けた品質管理の高度化等を支援します。
オ糖価調整制度に基づく交付金により、国内産いもでん粉の安定供給を推進します。
(6)なたね
ア播種前契約の実施による国産なたねを取り扱う搾油事業者と農業者の連携を推進します。
イ需要に応じたなたねの生産拡大に伴い必要となる施設の整備等を支援します。
ウなたねのダブルロー品種(食用に適さない脂肪酸であるエルシン酸と家畜等に甲状腺障害をもたらすグルコシノレートの含有量が共に低い品種)の普及を推進します。
(7)野菜
アデータに基づき栽培技術・経営の最適化を図る「データ駆動型農業」の実践に向けた、産地としての取組体制の構築やデータ収集・分析機器の活用等を支援するとともに、より高度な生産が可能となる低コスト耐候性ハウスや高度環境制御栽培施設等の導入を支援します。
イ実需者からの国産野菜の安定調達ニーズに対応するため、加工・業務用向けの契約栽培に必要な新たな生産・流通体系の構築、作柄安定技術の導入等を支援します。
ウ園芸産地が抱える課題に緊急に対応するとともに、輸入野菜の国産への置換え等、我が国の食料安全保障にもつながる産地強化のための取組を支援します。
エ複数の産地と協業して、加工・業務用等の新市場が求めるロット・品質での供給を担う拠点事業者による貯蔵・加工等の拠点インフラの整備や生育予測等を活用した安定生産の取組等を支援します。
オ農業者と協業しつつ、<1>生産安定・効率化機能、<2>供給調整機能、<3>実需者ニーズ対応機能の三つの全ての機能を具備又は強化するモデル性の高い生産事業体の育成を支援します。
(8)果樹
ア優良品目・品種への改植・新植及びそれに伴う未収益期間における幼木の管理経費を支援します。
イ担い手の就農・定着のための産地の取組と併せて行う、小規模園地整備や部分改植等の産地の新規参入者受入体制の整備を一体的に支援します。
ウ平坦(へいたん)で作業性の良い水田等への新植や、労働生産性向上が見込まれる省力樹形の導入を推進するとともに、まとまった面積での省力樹形及び機械作業体系の導入等による労働生産性を抜本的に高めたモデル産地の育成を支援します。
エ省力樹形用苗木の安定生産に向けたモデル的な取組を支援します。
(9)甘味資源作物
アてんさいについては、省力化や作業の共同化、労働力の外部化や直播栽培体系の確立・普及等を推進します。
イさとうきびについては、自然災害からの回復に向けた取組を支援するとともに、地域ごとの「さとうきび増産計画」に定めた、地力の増進や新品種の導入、機械化一貫体系を前提とした担い手・作業受託組織の育成・強化等、特に重要な取組を推進します。また、分蜜糖工場における「働き方改革」への対応に向けて、工場診断や人員配置の改善の検討、施設整備等労働効率を高める取組を支援します。
ウ糖価調整制度に基づく交付金により、国内産糖の安定供給を推進します。
(10)茶
改植等による優良品種等への転換や茶園の若返り、輸出向け栽培体系や有機栽培への転換、てん茶(抹茶の原料)等の栽培に適した棚施設を利用した栽培法への転換や直接被覆栽培への転換、担い手への集積等に伴う茶園整理(茶樹の抜根、酸度矯正)、荒茶加工施設の整備を推進します。また、海外ニーズに応じた茶の生産・加工技術や低コスト生産・加工技術の導入、スマート農業技術の実証や、茶生産において使用される主要な農薬について輸出相手国・地域に対し我が国と同等の基準を新たに設定申請する取組を支援します。
(11)畜産物
肉用牛については、優良な繁殖雌牛の増頭、繁殖性の向上による分べん間隔の短縮等の取組等を推進します。酪農については、受精卵技術の活用による乳用後継牛の効率的な確保、経営安定、高品質な生乳の生産等を通じ、多様な消費者ニーズに対応した牛乳・乳製品の供給等を推進します。
また、温室効果ガス排出削減の取組、労働力負担軽減・省力化に資するロボット、AI、IoT等の先端技術の普及・定着、外部支援組織等との連携強化等を図ります。
さらに、子牛や国産畜産物の生産・流通の円滑化に向けた家畜市場や食肉処理施設及び生乳の処理・貯蔵施設の再編等の取組を推進します。
(12)飼料作物等
草地の基盤整備や不安定な気象に対応したリスク分散の取組等による生産性の高い草地への改良、国産濃厚飼料(子実用とうもろこし等)の増産、飼料生産組織の作業効率化・運営強化、放牧を活用した肉用牛・酪農基盤強化、飼料用米等の利活用の取組等を推進します。
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