漁業経営改善促進資金融通事業実施要領の制定について
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7水漁第2484号
平成7年7月18日
改正:平成15年10月1日 15水漁第1644号
都道府県知事あて
関係漁業者団体あて
農林水産事務次官
最近の我が国漁業をめぐる厳しい情勢の下、漁業経営の近代化を目指すものに対して、その円滑な推進を支援するため、漁業経営改善促進資金融通事業を実施することとし、別紙のとおり漁業経営改善促進資金融通事業実施要領が定められたので、御了知の上、本事業の円滑かつ的確な実施に御配慮お願いする。
以上、命により通知する。
別紙
漁業経営改善促進資金融通事業実施要領
第1 趣旨
この事業は、最近の我が国漁業をめぐる厳しい情勢の中で漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法(昭和51年法律第43号。以下「漁特法」という。)第4条第1項の認定に係る同項の改善計画(以下「漁業経営改善計画」という。)に従って漁業経営の改善のための措置を行う中小漁業者に対し、その経営の改善の円滑な推進を資金面で支援しようとするものである。
第2 定義
1 この要領において「漁業経営改善促進資金」(以下「本資金」という。)とは、第4の規定に基づき、独立行政法人農林漁業信用基金(以下「信用基金」という。)及び漁業信用基金協会(以下「基金協会」という。)に造成される低利預託基金と漁協系統資金等民間資金の協調融資により融通される、経営の改善合理化を目指す中小漁業者が必要とする低利の運転資金をいう。
2 この要領において「中小漁業者」とは、中小漁業融資保証法第2条第1項に規定する中小漁業者等であって、漁特法第4条第1項の認定を受けた者(当該認定に係る漁業経営改善計画に従い設立された法人を含む。)をいう。
第3 資金利用計画
1 資金利用計画の認定等
本資金の貸付けを受けようとする者(以下「借入希望者」という。)は、おおむね5年を期間として、水産庁長官が別に定める事項を記載した資金利用計画(第3において「計画」という。)を作成し、当該計画が適当である旨の都道府県知事の認定を受けるものとする。
2 計画の提出
計画の認定を受けようとする者は、当該計画を、あらかじめ融資機関の承諾を受けた上で、融資機関を経由して都道府県知事に提出するものとする。この場合、融資機関は貸付予定極度額を記載した承諾書を付した上で都道府県知事への提出を行うものとする。
ただし、債務保証が必要な場合には、融資機関は基金協会と保証協議を行い、その保証の承諾を得た上で、計画を都道府県知事に提出するものとする。
3 都道府県知事の認定
都道府県知事は、2の提出を受けたときは、原則として水産庁長官が別に定める審査委員会の意見を聴き、当該計画の審査を行い、当該計画が適当であると判断する場合には、その旨の認定を行う。
認定を行った場合は、借入希望者、融資機関その他関係者に対して通知するものとする。
4 計画の変更
計画の変更は、1から3に準ずるものとし、水産庁長官が別に定める様式により行うものとする。
5 計画の認定の取消し
都道府県知事は、水産庁長官が別に定めるところにより計画の認定の取消しを行うことができる。
第4 漁業経営改善促進資金の内容
1 貸付対象者
本資金の貸付けを受けることができる者は、次に掲げる要件の全てを満たす中小漁業者であって、第3の規定による資金利用計画の認定を受けたものとする。
(1) 漁業経営改善計画が運転資金を必要とするような具体的な経営改善措置を内容とするものであること。
(2) 当該年度において、(1)の措置に着手することが確実であること。
(3) 青色申告を行っていること。
(4) 資金利用計画において、既往借入金の返済財源が確保されていること。(各事業年度における減価償却前当期利益が固定負債の償還額を上回っていること。)
2 融資機関
本資金の融資機関は、水産業協同組合法(昭和23年法律第242号)第11条第1項第3号及び第4号の事業を行う漁業協同組合、同法第87条第1項第3号及び第4号の事業を行う漁業協同組合連合会、農林中央金庫、銀行並びに信用金庫とする。
3 資金使途
本資金の資金使途は、以下のように例示される漁業経営改善計画の達成に必要な運転資金一般とする。ただし、既往借入金の借換えは含まれないものとする。
(1) 雇用労賃
(2) 燃料費
(3) 漁船の保守管理費
(4) 漁船乗組員の研修費
(5) 市場開拓費、販売促進費等
4 貸付方式等
本資金の貸付けは、次によるものとする。
(1) 貸付方式 | 極度貸付方式による当座貸越又は手形貸付とする。 |
(2) 利用期間 | 本資金の貸付けが受けられる期間は、認定を受けた漁業経営改善計画期間中(当該計画の開始日から当該計画の終了日を含む年度の末日までをいう。以下同じ。)とする。 |
5 極度額
(1) 極度額の設定
極度額は、漁業経営改善計画期間の各年度について融資機関が設定するものとし、都道府県知事の認定を受けるものとする。
(2) 極度額の上限
本資金の極度額の上限は、別表の左欄に掲げる区分に応じ、それぞれ右欄に定める金額とする。そのうち漁船漁業を営む者については、使用する漁船の合計総トン数に応じるものとする。
ただし、経営規模等からみて、特別の事情がある場合にあっては、都道府県知事が水産庁長官に協議し認めた額とすることができる。
(3) 極度額の見直し
融資機関は本資金を借り受けた者の経営状況及び資金利用状況からみて極度額を変更する必要があると判断する場合は、都道府県知事の認定を受けて、極度額を変更することができる。
6 貸付利率
(1) 本資金の貸付利率は、次の算式により決定する(小数点以下第三位を四捨五入した上で、小数点以下第二位を二捨三入又は七捨八入して0.05%単位とする。)水準以内とする。

(注1)都銀・短プラとは、「都市銀行の短期プライムレ-ト」をいう。
(注2)協調倍率は4とする。
(注3)調整値は、都銀・短プラ水準に応じ次のとおりとする。
都銀・短プラ | 調整値 | |
5%未満 | --- | 0.8% |
5%以上6%未満 | --- | 0.6% |
6%以上7%未満 | --- | 0.4% |
7%以上8%未満 | --- | 0.2% |
8%以上 | --- | 0 |
(2) 中小漁業者が当座貸越による貸付けを選択する場合には、(1)の貸付利率に年0.5%の範囲内で融資機関が定めた率を加算することができるものとする。
(3) 本資金の貸付利率は変動金利制とし、利率の改定があったときは、改定日の貸付金残高(当座貸越の場合に限る。)及び改定日以降の貸付金に適用するものとする。
(4) (1)の具体的な貸付利率については、別途水産庁長官から通達するが、金利改定日は原則として月の当初とする。
7 償還期限等
(1) 償還期限
本資金の償還期限は、手形貸付けにあっては1年以内、当座貸越にあっては1年程度の当座貸越契約期間内とする。
ただし、4の(2)に定める本資金の利用期間中((2)において「利用期間」という。)は、有効に決定される極度額の範囲内で借換えを行うことができるものとする。
(2) 利用期間の期間終了時の取扱い
本資金を借り受けた者の利用期間終了時に有する借入金残高は、利用期間終了時にすべて返済するものとする。
第5 漁業経営改善促進資金融通事業の実施
1 貸付目標額(平均残高)の策定
本資金の都道府県別の貸付目標額の策定については、次によるものとする。
(1) 都道府県貸付予定目標額(平均残高)
ア 融資機関は、借入希望者からの要望額等を踏まえ、毎年度、融資機関貸付予定目標額(平均残高)を策定し、これを都道府県知事に提出するものとする。
イ 都道府県知事は、融資機関から提出のあった融資機関貸付予定目標額(平均残高)、都道府県低利預託基金の造成見込み、本資金の貸付実績等を基礎として関係機関と協議して、毎年度、都道府県貸付予定目標額(平均残高)を策定し、これを水産庁長官と協議するものとする。
ウ イの協議は、毎年1月末までに、水産庁長官が別に定める様式により貸付目標額協議書を作成・提出して行うものとする。
(2) 都道府県別の貸付目標額(平均残高)
水産庁長官は、貸付目標額協議書に基づいて、毎年度、都道府県別の貸付目標額(平均残高)を定め、これを都道府県に内示するとともに信用基金に通知するものとする。
(3) 融資機関別貸付目標額(平均残高)の設定等
都道府県知事は、(2)の内示を受け都道府県の貸付目標額(平均残高)を設定したときは、融資機関別の貸付目標額(平均残高)及びこれに対応する2の(2)のイの預託額を決定し、融資機関及び基金協会に通知するとともに水産庁長官に報告するものとする。
2 低利預託基金の貸付け等
(1) 信用基金による全国低利預託基金の貸付け
ア 信用基金は、(2)の規定により資金の預託を行う基金協会に対して当該預託に必要な資金に充てる資金(以下「全国低利預託基金」という。)の貸付けを行うものとする。
イ アの貸付額及び貸付利率は次のとおりとし、その他貸付けに必要な事項は信用基金が定めるところによるものとする。
(ア)貸付額 | 都道府県別の貸付目標額(業種別の基金協会についてはその合計)の8分の1に相当する額又は(2)のアの都道府県低利預託基金(業種別の基金協会についてはその合計)の額のいずれか低い額 |
(イ)貸付利率 | 年1% |
ただし、貸付予定日の14日前の日の属する週に日本銀行が作成した「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等について」(当該週に作成されない場合には貸付予定日の21日前の日の属する週に作成されたもの)における「預入金額が3百万円以上1千万円未満の定期預金の1週間の預入期間別平均年利率」に掲げる預入期間が1年の利率が1%未満の場合は、当該利率 |
(2) 基金協会による低利預託基金の預託
ア 基金協会は、信用基金の全国低利預託基金からの貸付けを受けたときは、当該資金及び融資機関に預託するものとして都道府県等から出捐された資金(以下「都道府県低利預託基金」という。)を、都道府県の指示に従って、融資機関に預託するものとする。
イ アの融資機関への預託額及び預託利率は次のとおりとし、その他預託に必要な事項は都道府県と協議して基金協会が定めるところによるものとする。
(ア)預託額 | 都道府県が定めた融資機関の貸付目標額の4分の1に相当する額以内の額 |
(イ)預託利率 | 信用基金の全国低利預託基金から基金協会が貸付けを受けた利率 |
(3) 融資機関による貸付け
ア 本資金を融通しようとする金融機関は、あらかじめ都道府県にその旨を届け出るとともに、基金協会との間において基本契約を締結するものとする。
イ アの基本契約の例は、水産庁長官が別に定めるものとする。
ウ 融資機関は、第4に規定するところに従い本資金を貸し付けるものとする。
第6 資金貸付け等の適正化について
1 融資機関は、本資金の貸付けに当たっては、債権保全措置が形式的・慣行的とならないよう担保・保証人の徴求の弾力化に努めるとともに、借入希望者が基金協会の債務保証を受けようとする場合には、資金利用計画の都道府県における審査の前に、基金協会による債務保証の決定が必要であるので、基金協会の債務保証に関する手続等を迅速に進めることにより、円滑な融通が図られるよう配慮するものとする。
2 融資機関は、本資金の貸付け及び資金の払出しに当たっては、次の事項に留意して、適切な運用の確保に努めるものとする。
(1) 本資金の貸付けを開始するに当たっては、貸付けの相手方ごとに本資金と他の資金とを明確に区分して管理すること。
(2) 本資金の貸付資金の払出しに当たっては、極力現金交付を避け、口座引落し、口座振込み等貸付資金の使途を確認し得る方法を活用すること。
3 融資機関は、常に借入者の資金利用状況及び経営状況等を把握し、本資金の融通及び償還の適正化を図るものとする。
第7 都道府県の要綱等の制定等
1 漁業経営改善促進資金融通事業を実施しようとする都道府県は、本資金の融通に必要な事項を定めた実施要綱等を制定するものとし、水産庁長官に届け出るものとする。
また、これを改廃したときも同様とする。
2 都道府県は、本制度が信用基金及び基金協会に造成される低利預託基金を基盤としていることにかんがみ、本制度の安定的な運用の確保に努める等主導的な役割を果たすものとする。
3 都道府県は、基金協会に対して、都道府県低利預託基金の造成、全国低利預託基金からの借入れ、第5の2の(2)の融資機関への預託その他必要な事項を指示することができるものとする。
4 都道府県は、融資機関に対して、本資金の貸付け等に関して必要な事項を指示することができるものとする。
第8 国の助成
1 国は、信用基金における全国低利預託基金の造成に充てるための一部を出資するものとする。
2 国は、信用基金が全国低利預託基金の造成に充てるため民間金融機関から長期借入金を借り入れたときは、別に定めるところにより、当該借入金に係る利息相当額について、予算の範囲内において利子補給補助金を交付するものとする。
3 国は、国会の議決を経た金額の範囲内において、2の規定による信用基金の長期借入金に係る債務について保証することができるものとする。
第9 運営に当たっての留意事項
1 本事業の関係者は、本事業が中小漁業経営の改善合理化努力を支援することを最大の目的にしていることを十分踏まえて、制度の運営に当たるものとする。
2 本制度は、漁業経営改善計画達成を資金面で支援することを目的にしているため、使いやすい融資制度とすることに主眼を置いているが、融資は返済を必要とするものであり、また、金利負担を伴うものであることを踏まえ、必要な融資が的確に行われるように配慮するとともに、安易又は過大な融資により中小漁業者の経営を圧迫することのないよう十分に留意するものとする。
3 融資機関は、本資金の融資に当たっては、迅速な貸付けに努めるものとする。
第10 その他
この要領に定めるもののほか、この事業の実施につき必要な事項については、水産庁長官が別に定めるものとする。
別表
極度額の上限
区分 | 限度額 (百万円) |
漁船漁業を主として営む者 | |
[1] 50トン未満の漁船漁業を営む者 | 30 |
[2] 50トン以上100トン未満の漁船漁業を営む者 | 60 |
[3] 100トン以上200トン未満の漁船漁業を営む者 | 110 |
[4] 200トン以上の漁船漁業を営む者 | 190 |
養殖業を主として営む者 | 30 |
定置漁業を主として営む者 | 40 |
注)区分のトン数は、新トン。旧トンは各漁業ごとの許可の取扱方針における旧トン、新トンの読替表により読み替えることとする。