第1節 農林水産物・食品の輸出の促進
人口減少や高齢化が進む中、国内の農業生産基盤や食品産業の事業基盤等の食料供給能力を確保するためには、輸出の促進を図ることが不可欠です。そのため、基本計画では、「海外から稼ぐ力」の強化として輸出の拡大を位置付けるとともに、令和12(2030)年を目標年とする農林水産物・食品の輸出額の目標を設定しました。
本節では、我が国の輸出額の動向、主な輸出重点品目の状況について紹介します。
(1)農林水産物・食品の輸出額
(農林水産物・食品の輸出額が1兆7,005億円に拡大し、過去最高を更新)
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令和7(2025)年の農林水産物・食品の輸出額は、1兆7,005億円と、前年に比べ12.8%増加し、過去最高となりました(図表3-1-1)。これは、日本食への関心の高まり、インバウンドの増加による日本食の認知度向上、健康志向の高まり等を背景に、既存商流における取扱量が拡大したことや新規商流を獲得したこと等によるものです。また、同年4月から関税措置(*1)が導入された米国向けについても、緑茶、ぶり等が大きく増加し、前年に比べ13.7%増加しました。
同年に農林水産物・食品の輸出額を2兆円とする中間目標には届かなかったものの、牛肉、米・パックご飯等、茶等の13の輸出重点品目(*2)で過去最高を更新しました。また、米・パックご飯等、茶等の輸出重点品目で、当該品目の目標を達成しました。今後、令和12(2030)年の輸出額5兆円目標の達成に向けて、輸出拡大の加速化を図ることとしています。
*1 第1章第6節を参照
*2 第3章第2節を参照
(品目別の輸出額では加工食品が最多)
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令和7(2025)年の農林水産物・食品の品目別の輸出額では、加工食品が最多で5,725億円、次いで水産物が4,231億円、畜産品が1,428億円となりました(図表3-1-2)。
最多となった加工食品の品目別の輸出額では、主に、みそ、しょうゆ、アルコール飲料で大きく増加しました。
(国・地域別の輸出額では米国向けが最多)
データ(エクセル:29KB)
令和7(2025)年の農林水産物・食品の国・地域別の輸出額では、米国向けが最も多く、次いで香港、台湾、中国、韓国の順となっており、米国、台湾、韓国等は過去最高の輸出額となりました(図表3-1-3)。
また、輸出品目を各国・地域別に見ると、台湾向けではうなぎや牛肉、ホタテ貝の輸出額が、韓国向けではぶりやビール、いわしの輸出額が前年に比べ増加しています。
(2)主な輸出重点品目の状況
(米・パックご飯等の輸出額は前年に比べ増加)
データ(エクセル:31KB)
商業用の米の輸出額は、日本食レストランやおにぎり店等の需要開拓により近年増加傾向にあります。令和7(2025)年は、138億8千万円と、前年に比べ15.4%増加しました(図表3-1-4)。また、パックご飯や加工米飯、米粉・米粉製品を含めた輸出額は、159億円と、前年に比べ17.2%増加しました。
輸出拡大によって新たな需要を生み出していくことは、我が国の食料自給力の強化を図る上でも重要です。農林水産省では、日本産米ならではの冷めてもおいしいおにぎりを提供するおにぎり専門店や、日本産米を使った寿司、定食等のメニューを提供する外食チェーン等の拡大、家庭で手軽に食べられるパックご飯や冷凍米飯の輸出といった海外の需要拡大に取り組むとともに、農地の集積・集約化や大区画化、スマート農業技術の活用や品種改良、多収品種の作付拡大等により低コストで生産できる輸出産地を育成していくこととしています。
(牛肉の輸出額は前年に比べ増加)
データ(エクセル:29KB)
牛肉の輸出額は、我が国が誇る和牛肉の品質の高さやおいしさが世界中で認められていることを背景として、近年増加傾向で推移しています。令和7(2025)年は、731億円と、前年に比べ12.8%増加しました(図表3-1-5)。これは、米国、台湾、香港における新規商流の開拓や既存商流の拡大によるものです。
農林水産省では、輸出解禁等の協議を通じた輸出先国・地域の更なる多角化、高級部位のロイン系の輸出拡大と合わせたカット技術の普及等を通じたカタ・モモ等の商流拡大、輸出対応型施設の整備や省力化機械等の導入による機能強化、オールジャパンでのプロモーション等を推進していくこととしています。
(牛乳乳製品の輸出額は前年に比べ減少)
データ(エクセル:29KB)
牛乳乳製品の輸出額は、令和4(2022)年まで増加傾向で推移し、令和4(2022)年以降は300億円以上となっています。令和7(2025)年は、305億円と、前年に比べ0.2%減少しました(図表3-1-6)。
農林水産省では、更なる輸出の拡大に向けて、オールジャパンでのプロモーション、市場等の調査・分析を行うとともに、指定団体、産地の地方公共団体、乳業者等が一体となった取組や新たな商流の構築を推進することとしています。
このような取組を通じて、今後、国産生乳の使用割合の高いロングライフ牛乳やチルド牛乳について、アジア地域を中心として輸出を推進していくこととしています。
(事例)現地のニーズを捉えた製品販売やPR活動により牛乳の輸出を拡大(北海道)

現地の小売店での試飲販売
資料:よつ葉輸出促進協議会
我が国のロングライフ牛乳等の多くは、主要な輸出先国・地域において、他国・地域産の競合商品に比べ、小売価格が高い傾向にあります。このため、輸出先国・地域のニーズに合わせて、認知度の向上に取り組むなど、価格に見合った価値を訴求していくことが必要です。
北海道のよつ葉(ば)輸出促進協議会では、北海道の高品質なロングライフ牛乳を手に取る機会を提供し、味を知ってもらうことが重要だと考えました。そこで、現地の小売店での試飲販売の取組を進めたところ、消費者から味について高い評価が得られ、このことが販売数量の増加につながりました。
また、同協議会では、これまで香港へ1L容量の低脂肪のロングライフ牛乳を輸出していましたが、消費者の中には「1Lでは容量が多い」という感想が、小売店の中には「売場スペースの関係等から小容量タイプの方が売りやすい」という声が、それぞれありました。このため、同協議会では、現地のニーズを受け止め、令和5(2023)年から、200mLの小容量タイプの販売も開始しています。
このような取組により、同協議会のロングライフ牛乳の輸出額は増加傾向で推移しています。同協議会では、アジアへの輸出に加え、令和6(2024)年からはカナダへの輸出も行っており、今後は、これまでの知見を活かしながら、他国・地域へのロングライフ牛乳の輸出も進めていくこととしています。
(緑茶の輸出額は前年に比べ増加)
データ(エクセル:30KB)
緑茶の輸出額は、健康志向や日本食への関心の高まり等を背景に、抹茶を含む粉末状茶の需要が拡大し、近年増加傾向で推移しています。令和7(2025)年は、721億円と、前年に比べ98.2%増加しました(図表3-1-7)。
また、有機栽培茶は海外でのニーズも高く、有機同等性の仕組みを利用した輸出量は増加傾向にあり、令和6(2024)年は2,999tと、前年に比べ89.2%増加し、過去最高となりました。特にEUや米国が大きな割合を占めています。
農林水産省では、海外での需要が見込まれる抹茶の原料となるてん茶の生産や有機栽培等の輸出向けの茶生産を推進するとともに、有機栽培に適した耐病虫性品種等の開発・導入や輸出先国・地域における残留農薬基準の設定等を推進しています。
(事例)輸出先の規制に対応した宇治茶の増産に向け環境整備を推進(京都府)
緑茶の国内需要は減少傾向にあるものの、北米・EU等での需要は高まっており、海外輸出は、好調です。このような中、更なる輸出拡大を図るためには、残留農薬基準の遵守を始めとする、輸出先国・地域の規制等に対応した輸出産地を形成していく必要があります。

輸出向け宇治茶の実証ほ場
資料:京都府
京都府の京都府農林水産物・加工品輸出促進協議会の宇治茶(うじちゃ)部会では、輸出先国・地域の残留農薬基準に対応した宇治茶の増産が必要と考えました。そこで、同部会では、令和3(2021)年度から同府内の複数箇所に実証ほ場を設置し、ほ場内で生産された宇治茶の残留農薬分析や、栽培期間中の病害虫の発生状況調査に加え、慣行栽培と比べ品質に問題がないか、実証事業参加農家らとの結果検討会を実施しています。令和7(2025)年度は北米向けの実証に続いて、新たにEU向けの実証を行っています。この実証結果を踏まえ、北米やEUの残留農薬基準に対応できる防除暦の作成を進めています。
また、円滑な輸出を実現するためには、輸出先国・地域における規制等に関する情報や留意事項について、産地内の輸出に関わる関係者が知見を深めることも重要です。このため、同部会では、令和3(2021)年から、生産者や茶商、関係機関等を対象とした研修会を開催しています。
同部会は、輸出先国・地域に対応した栽培体系の転換を支援するとともに、同部会の生産者・茶商の持つ宇治茶の「品質」への誇りも大事にし、世界における「宇治茶ブランド」を確立していきたいと考えています。
(果樹の輸出額は前年に比べ減少)
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果樹の輸出額は、我が国の高品質な果樹が諸外国・地域で評価され、りんご、ぶどうを中心に増加傾向で推移していますが、令和7(2025)年は、262億円と、前年に比べ21.3%減少しました(図表3-1-8)。これは、食味・見栄えの良さに起因する継続的な引き合いがあったものの、夏季の高温の影響等により収量が減少した品目が多かったこと等によるものです。
農林水産省では、りんご等の果樹について、輸出先国・地域の規制やニーズに対応するための防除暦の見直し等を通じた産地育成を推進するとともに、プロモーション等による更なる海外需要開拓を図っていくこととしています。
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