第1節 食品アクセスの確保
我が国においては、食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる者や、経済的理由により十分な食料を入手できない者が増加していると考えられるなど、いわゆる「食品アクセス」の問題が発生しており、関係省庁や地方公共団体等が連携して円滑な食品アクセスの確保に向けて対応していく必要があります。
本節では、食品アクセス問題の現状と円滑な食品アクセスの確保に向けた対応について紹介します。
(1)平時における食品アクセスの確保
(買物困難者・経済的に困窮している者の現状)
データ(エクセル:29KB)
人口減少に伴う国内市場の縮小の影響は、特に過疎地で顕在化・深刻化しており、高齢者等を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる人、いわゆる「買物困難者」が増加しています。農林水産政策研究所が公表した調査によると、令和2(2020)年の食料品アクセス困難人口は全国で904万3千人と推計されており(*1)、買物困難者の食品アクセス(物理的アクセス)の確保に向けた対応が必要となっています。
また、厚生労働省の調査によると、所得金額階級別世帯数の相対度数分布について、平成9(1997)年と令和5(2023)年を比較すると、高所得世帯割合が低下し、200万円未満等の低所得世帯割合が上昇しています(図表4-1-1)。このようなデータは、経済的な理由により十分な食料を入手できない人が増加していることをうかがわせるものであり、経済的に困窮している者の食品アクセス(経済的アクセス)の確保に向けた対応も必要となっています。
*1 農林水産政策研究所「食料品アクセス困難人口の推計結果」(令和6(2024)年2月公表)
(「食品アクセスの確保に関する支援策パッケージ」に基づき地域の取組を促進)
食品アクセスの問題が顕在化している中、平時から国民一人一人が食料にアクセスでき、健全な食生活を実現できるようにすることが重要です。このためには、地域の関係者が連携して取り組む体制づくりや、食品流通業者等による流通サービスの確保、フードバンク(*1)やこども食堂(*2)等の機能強化等が必要になっています。
農林水産省では、令和5(2023)年度以降、関係省庁の支援策を組み合わせて活用できるよう、「食品アクセスの確保に関する支援策パッケージ」を取りまとめており、関係省庁と連携して開催する「食品アクセス全国キャラバン」等によりその周知を図り、地方公共団体や民間事業者等による支援策の活用及び各地域における食品アクセスの確保に向けた取組を促進しています。
また、円滑な食品アクセスの確保に向けて、地域の関係者が連携して取り組む体制づくりや、それに向けた現状・課題の調査等を支援しています。
*1 食品関連事業者やその他の者から、まだ食べることのできる未利用食品等の提供を受け、貧困や災害等により必要な食品を十分に入手できない者にこれを提供するための活動を行う団体
*2 子供たちを中心に、無料又は安価でバランスの良い食事や温かな団らん、共食の場を提供する、地域住民等による自主的な取組
(買物困難者対策を促進)
農林水産省では、平成23(2011)年度以降、全国の市町村を対象として、食料品の購入に不便や苦労を感じている住民への対策に関するアンケート調査を実施し、その結果を「食品アクセス(買物困難者等)問題ポータルサイト」を通じて情報発信しています。また、買物困難者に関する課題が明らかになった地域において、それぞれの課題に応じ、買物支援バスの運行等による交通手段の確保、移動販売車の導入やドローンを活用した配送等によるラストワンマイル物流の確保に向けた取組を促進することとしています。
食品アクセス(買物困難者等)問題ポータルサイト
URL:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/syoku_akusesu.html
(事例)ドローンを活用した買物支援により、生活の質が向上(長崎県)
長崎県五島市(ごとうし)のそらいいな株式会社は、福江島(ふくえじま)を拠点として五島(ごとう)列島のほかの離島へ、自動飛行型ドローンで医療用医薬品や日用品、食品を定期的に配送しています。
同市には商店のない離島が多く、島民が、商店がある福江島に定期船でまとめ買いに行く必要がありますが、日持ちの観点で商品選択の幅が限定されています。
同社は、離島に新鮮な食品を提供するために、最大11機のドローンで拠点から設定された目的地まで、配送しています。ドローンは、目的地の半径10m以内にパラシュートを使って荷物を安全に投下し、受け手に物資を届けます。この仕組みによって、離島に住む人々は食品を手軽に購入できるようになりました。高齢者にも配慮し、SNSに加えて、電話、FAXで注文を受け付けています。さらにスマートフォンアプリの実装も予定しています。
この取組は、令和5(2023)年3月から配送料を有償化した後も事業として継続しており、離島の物流課題を解決し、生活の質向上に貢献しています。

自動飛行型ドローンによる
配達の様子
資料:そらいいな株式会社
飛行経路
資料:そらいいな株式会社
(フードバンクの活動支援を強化)
データ(エクセル:31KB)
令和8(2026)年3月末時点で、農林水産省ウェブサイトへの掲載の希望があったフードバンクは全国で318団体に拡大しています(図表4-1-2)。
フードバンクの活動は、食品ロス削減に直結するとともに、経済的に困窮している者への多様な食料の提供につながるものであることから、農林水産省では、フードバンクの機能強化等を支援しています。
また、食品事業者からの未利用食品の提供を促進するため、食品寄附等に関する官民協議会において令和6(2024)年12月に策定された「食品寄附ガイドライン~食品寄附の信頼性向上に向けて~」の普及啓発を消費者庁が中心となって行っており、農林水産省では、フードバンクやこども食堂等への食品の寄附が進むよう、企業とのマッチングや、企業による寄附の内容の見える化を推進しています。さらに、国の災害用備蓄食品について、食品ロス削減や経済的に困窮している者への支援の観点から、入替え時に、フードバンク等への提供に取り組んでいます。
(事例)食品提供システムにより、提供者と受取者をマッチング(三重県)

三重県食品提供システム「みえ~る」
資料:三重県
三重県は、「食品ロスの削減」と「生活困窮者支援」を同時解決するため、令和3(2021)年7月から三重県食品提供システム「みえ~る」を運用し、企業や団体が提供する未利用食品を生活困窮者支援に活用しています。「みえ~る」は、経済的に困難な状況にある方々が安定して食品を確保できるよう、地域の支援団体や福祉施設と迅速かつ直接的につなぐ役割を果たしています。
「みえ~る」では、提供者が無償で提供する食品情報をウェブサイト上に登録し、受取者とマッチングを行います。同県が仲介せずに、提供者と受取者が直接やり取りを行うため、スムーズに受取を行うことができます。令和8(2026)年3月末時点で、945件、約41tの食品のマッチングが成立しました。
今後も関係団体、特定非営利活動法人、企業と連携し、登録団体の拡大を図りながらシステムの運用を更に広げていくこととしています。
(こども食堂等による食料提供の取組を推進)
データ(エクセル:28KB)
認定特定非営利活動法人全国(ぜんこく)こども食堂支援(しょくどうしえん)センター・むすびえが令和7(2025)年6~10月に実施した調査によると、こども食堂の数は全国で少なくとも1万2,602か所となっています(図表4-1-3)。
こども食堂は、共食の場の提供のほか、子供の居場所づくりや、経済的に困窮している者の食品アクセスの確保の観点からも重要な取組です。農林水産省では、こども食堂等の取組を支援しており、令和2(2020)年度から、政府備蓄米の無償交付を行っています。令和6(2024)年11月からは、食育活動を支援するフードバンクも交付対象に加えており、令和7(2025)年度は、無償交付の申請機会を更に拡大したところです。
(2)不測時における食品アクセスの確保
(不測時における食品アクセスの確保)
国民一人一人に食料が行き届くよう、大規模な自然災害等に備えて、平時からの対策として、食料のサプライチェーンを維持・強化し、発生時には、プッシュ型支援を実施しています。また、食料供給が困難となる場合に、食料供給困難事態対策が効率的かつ効果的に実施されるよう、国民各層の理解の醸成を図ることとしています。
お問合せ先
大臣官房広報評価課情報分析室
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