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農林水産省

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第1節 多様な人材が農村に関わる機会の創出


人口減少と高齢化が並行して著しく進行している農村の地域コミュニティを維持するためには、農村に関心と関わりを持つ「農村関係人口」を創出・拡大するとともに、都市から地方への移住・定住につなげていくことが不可欠です。

本節では、農村人口の動向、農村関係人口の拡大、移住・定住の促進や農山漁村の活性化に向けた取組について紹介します。

(1)農村人口の動向

(人口減少と高齢化が進行)

農村の高齢化率は令和2(2020)年時点で35.0%と、都市部よりも25年程度先行しています(図表6-1-1)。また、人口減少は、都市的地域から山間農業地域になるほど顕著となり、特に山間農業地域においては、令和2(2020)年から令和32(2050)年にかけて、人口が5割以上減少すると見込まれています(図表6-1-2)。

図表6-1-1 農村・都市部の人口と高齢化率

データ(エクセル:35KB

図表6-1-2 農業地域類型区分別の人口推移と将来予測(令和2(2020)年を100とする指数)

データ(エクセル:33KB

国立社会保障(こくりつしゃかいほしょう)・人口問題研究所(じんこうもんだいけんきゅうじょ)が令和3(2021)年6月に実施した調査によると、令和3(2021)年の平均出生子ども数は、農村で1.97人、都市で1.74人と、農村の方が高くなっている(*1)ものの、総務省の調査による転出入者数で見ると、一部の地域を除きほとんどの道府県で転出者数が転入者数を上回っている状況にあります(図表6-1-3)。

図表6-1-3 都道府県別転入超過率

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農村を含む過疎地域では、平成21(2009)年度を境として、高齢化による自然減が都市への人口流出による社会減を上回るようになりました。人口減少が特に著しい地域では、集落の存続が危ぶまれており、これまで集落の共同活動により支えられてきた農業生産活動の継続が困難になることが懸念されます。

*1 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」人口集中地区を都市、非人口集中地区を農村とした。

(農村では製造業や医療・福祉等の多様な産業が展開)

農村では第一次産業に限らず、多様な産業が展開され、総務省の国勢調査によると、令和2(2020)年の農村の産業別就業者数は、「製造業」が348万人で最も多く、次いで「医療、福祉」となっており、「農業、林業」は156万人で全体の8.6%となっています。農村人口の減少に歯止めをかけ、農村での就業機会を確保するためには、農村における産業の振興や起業を促していくことが重要です。

また、北海道の日高(ひだか)地域を中心とした軽種馬(*1)の生産といった、地域特有の産業が農村における雇用や経済を支える役割を果たしている例もあります。今後も、優秀な競走馬が生産されるよう、農林水産省は関係団体による産地における人材確保や生産基盤の強化等の取組を後押しすることとしています。

*1 サラブレット等の軽快で競走又は乗用に適する馬

(2)農村関係人口の創出・拡大

(農村関係人口の拡大に向けては複線型アプローチが必要)

図表6-1-4 全国の18歳以上の男女に占める関係人口の割合

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国土交通省が令和5(2023)年9~10月に実施した調査によると、全国の18歳以上の男女のうち、2割強が特定の地域に継続的かつ、多様な形で関わっていると推計されました(図表6-1-4)。

農村関係人口については、「農村への関心」や「農村への関与」の度合いに応じて多様な関わり方があり、担い手不足の解消や賑わいの創出等につながることが期待されています。農村関係人口の拡大に向けては、農村への関わり方やその深め方が人や地域によって多様であることを踏まえて、複線型アプローチが重要となっています(図表6-1-5)。

例えば農泊や農業体験で農村に触れた都市住民が、援農ボランティアとして農村の仕事に携わるようになり、二地域居住を経て、最終的には就農するために農村へ生活の拠点を移すケース等も想定されます。

また、都市と農村の交流によって農村関係人口を増加させ、農産物・食品等の特産品の消費拡大や地域の共同活動への参加を促し、集落機能を補完する取組を進めることも重要です。

農林水産省では、農村関係人口を増加させるため、従来の都市と農村の交流に加え、農業・農村が有する様々な資源を活用して、二地域居住や農泊等を推進することとしています。

図表6-1-5 農村への関与・関心の深化のイメージ図

(「ふるさと住民登録制度」の創設)

地域の担い手確保や地域経済の活性化等につなげるため、住所地以外の地域に継続的に関わる方々を登録する仕組みとして「ふるさと住民登録制度」の創設に向けた検討が進められており、令和8(2026)年度中にモデル事業での実証を踏まえ、プラットフォームとなるシステム及びアプリの開発を行うとともに、効果的な事例の創出を図ることとしています。

(3)移住・定住、二地域居住の促進

(改正広域的地域活性化法により二地域居住を促進)

生活拠点を地方へ移すに当たっては、UIJターン(*1)のみならず、都市・地方の二地域居住という選択肢もあります。

令和6(2024)年11月の改正後の広域的地域活性化法(*2)に基づき、二地域居住の促進のための計画を策定することで、市町村は住宅、コワーキングスペース、交流施設等の二地域居住に必要な環境整備に係る支援を受けやすくなりました。令和7(2025)年度には、新たに計19府県が広域的地域活性化基盤整備計画を作成し、当該府県内の市町村が支援を受けています。

また、令和6(2024)年10月には、地方公共団体や多様な民間事業者で構成され、二地域居住の促進に係る様々な施策・事例の情報交換、課題の整理や対応策の検討・提言等を行う「全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム」が発足しました。

農林水産省としても、農山漁村における二地域居住の推進は、地域の活性化や課題の解決に有効な取組であるとして、受入れに向けた環境整備や定住・交流を促進するための施設整備等を支援しています。

*1 Uターン、Iターン、Jターンの略称。Uターンは地方から別の地域へ移住し、その後、元の地方へ戻り住むことを指す。Iターンは生まれ育った地域から別の地方へ移住することを指す。Jターンは地方から別の地域に移住し、その後生まれ育った地方近くの地方大都市圏や、中規模な都市へ戻り住むことを指す。

*2 正式名称は「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」

(4)農山漁村の活性化の促進

(農林水産地域の活性化に向け地方みらい共創戦略を策定)

農林水産省では、農林水産地域の活性化に向け、令和7(2025)年5月に「地方みらい共創戦略」を取りまとめたところであり、里業(さとぎょう)・森業(もりぎょう)・海業(うみぎょう)等の主要7分野において付加価値創出に資する各種施策に取り組むこととしています。

同戦略では、具体的な施策として、国と地方の共創による地域レベルの官民共創拠点「農林水産 地方創生センター」の形成等を取りまとめており、令和7(2025)年7月には福井県において全国第1号となる「福井県 農林水産 地方創生センター」が設立されました。

(「農山漁村」経済・生活環境創生プロジェクトを通じて課題解決を支援)

農林水産省では、企業等の活力を人口減少下の農山漁村に取り込むため、令和7(2025)年2月、「『農山漁村』経済・生活環境創生プロジェクト」を開始し、(1)官民共創の関係者が集まる場である「農山漁村」経済・生活環境創生プラットフォームの創設と個別テーマの検討、(2)拠点の創設、課題解決モデルの選定による具体的な案件形成の促進、(3)農山漁村の課題解決によって生まれる社会的・環境的な変化や効果(インパクト)の可視化による、企業が農山漁村に関わるインセンティブの向上、(4)大企業による課題解決に向けた取組の促進、(5)このような取組を国が証明する制度の創設を行っています。

令和8(2026)年3月末時点で約650企業等が参画している同プラットフォームにおいては、シンポジウム等により機運醸成や情報発信を行うとともに、個別のテーマについても検討を進めてきたところであり、令和7(2025)年7月には、新たに農山漁村における課題に取り組もうとする企業、農山漁村における課題を有している地方公共団体等を対象に、具体的な取組事例や課題等を体系的に整理した「農山漁村」課題解決実践要点集を作成したほか、令和8(2026)年3月には、学生の参画促進に関する議論を取りまとめた「農山漁村」学生共創ガイドや、社会的影響力の高い大企業による農山漁村の課題解決に向けた取組を普遍化することを目的とした企業による農山漁村への参入・取組の持続に関する手引・論点集を公表しました。

官民共創による農業・農村の
課題解決のための取組について
URL:https://www.maff.go.jp/j/
nousin/kanmin_kyousou.html

農山漁村の課題解決に向けた具体的な案件形成については、各地域で企業と地方公共団体等をつなぐ中間支援の役割を担う地域金融機関との連携を進めており、令和7(2025)年度は10金融機関との連携を促進するとともに、農山漁村においてインパクトを創出し得る企業の良質な取組を幅広く募集し、11社の取組を「農山漁村」インパクト創出ソリューションとして選定しました。このような取組の農山漁村現場への実装に向け、地域の課題解決に活用を希望する地方公共団体等を募集し、ソリューション提供企業等とのマッチング及び伴走支援を実施しています。

このほか、企業等の農山漁村の課題解決に取り組むインセンティブを高めるためには、農山漁村の有するポテンシャルを活用した取組を広く周知していくとともに、そうした取組によって創出されるインパクトを可視化していくことが重要です。農林水産省では、企業等の個別の取組を後押しできるよう、令和7(2025)年10月に、企業等の金銭的・技術的・人的なリソースを農山漁村の課題解決に活用している取組について国が証明を行う、「農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書」制度を開始しました。また、新たに課題解決に取り組もうとする企業等の参考となるよう、令和8(2026)年3月には「農山漁村」インパクト可視化ガイダンスの改訂を行い、農山漁村における課題の深掘りやインパクトの分析手法に係る記載を充実させました。

(事例)棚田研修を通じて関係人口の創出を推進(新潟県)

新潟県十日町市

棚田研修における稲刈体験

資料:NTT東日本株式会社 地域循環型
ミライ研究所

農村人口の自然減が進む中、地域と生産の維持には外部から人を呼び込む仕組みが必要です。このような状況において、都市と農村を行き来する地域との関わり方を、NTT(エヌティティ)東日本株式会社 地域循環型ミライ研究所では、「通い農」として推進しており、この取組は、地域活動への参画を促し、関係人口の創出につながる重要なアプローチとなる可能性があります。

同研究所は、棚田には、担い手不足等の中山間地域の課題と、生物多様性・国土の保全機能や景観等の文化資源としての価値が凝縮されていることに着目し、新潟県十日町市(とおかまちし)の社会起業家等と連携した棚田研修を行いました。

同市では、14地区の棚田が「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~(ポスト棚田百選)」に認定されています。同研究所は、同市の農業者との対話や棚田の稲刈り、地域おこしロールプレイング等のプログラムを企画しました。参加者が棚田及び中山間地域での多様な価値観や課題を学び、自ら考えることを通じ、参加者のCSV(*)マインドの醸成といった人材育成効果を生むとともに、関係人口の創出や地域交流を通じた、棚田地域の活性化に取り組みました。

同研究所が実施したアンケート調査によると、参加者から同市への応援のほか、耕作体験への参加意欲等も示され、物理的距離を補完するICT技術の活用等の関係人口創出に向けた課題が明らかになりました。通い農を通じた関係人口創出が期待されています。

* Creating Shared Valueの略で、共通価値の創造のこと


お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883

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