第3節 農村に人が住み続けるための条件整備
集落活動を担う人材が不足し、集落機能が低下する農村地域の割合が上昇する中、農山漁村における定住や交流促進、関係人口の創出・拡大に向け、「経済面」の取組(*1)に加え、生活の利便性を確保する「生活面」の取組を推進し、農村に人が住み続けるための条件を整備していくことが必要となっています。
本節では、生活面を支える「農村型地域運営組織」(以下「農村RMO(*2)」という。)の形成や、生活インフラ等の確保に関する取組について紹介します。
*1 第6章第2節を参照
*2 Region Management Organizationの略
(1)農村RMOの形成
(地域運営組織の形成数は増加傾向だが、農業・農村に関する活動は少数)
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中山間地域を始めとした農村地域では高齢化・人口減少が顕著であり、農業生産活動のみならず、農地・農業用水路等の保全や買物・子育て等の生活支援の取組を担ってきた地域コミュニティの弱体化が懸念されています。
このような中、地域で暮らす人々が中心となって課題解決に向けた取組を持続的に実施する地域運営組織の形成数は増加傾向にあり、令和7(2025)年度には8,587団体となっています(図表6-3-1)。しかしながら、祭り等のイベントの実施や、地域の美化・清掃活動等の生活支援活動が各地で行われている一方で、農業・農村に関する活動を行っている地域運営組織の割合は1割未満にとどまっています(図表6-3-2)。
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(農用地保全や生活支援等に取り組む農村RMOの形成を推進)
中山間地域等においては、複数の集落の機能を補完し、農用地の保全活動や農業を核とした経済活動と併せて生活支援等地域コミュニティ維持に資する取組を行う「農村RMO」の形成を推進していくことが重要となっています(図表6-3-3)。
農林水産省は、農村RMOを目指す団体等が行う農用地の保全、地域資源の活用、生活支援に係る将来ビジョンの策定、これらに基づく調査、計画作成、実証事業等の取組に対して支援を行い、農村RMOの形成を推進しています。また、地方公共団体や農協、中間支援組織等から構成される都道府県単位の支援チームや全国プラットフォームの構築を支援しています。
(事例)集落の再生、活性化及び存続に向けた農村RMOの活動を展開(宮崎県)
宮崎県西都市(さいとし)の東米良(ひがしめら)地区では、銀鏡神楽(しろみかぐら)を始めとして、古くから継承される集落活動を大切にしています。高齢化や人口減少が進む中、地域住民や地域の企業・団体、行政が一体となって同地区を「1000年続く村」とするため、令和4(2022)年度に農村RMO「東米良地区(ひがしめらちく)1000年協議会」を設立しました。
同協議会は、労働力部会や特産品技術継承部会、鳥獣被害対策部会、利便性向上部会から構成されており、年間労働力需給調査等により収集した情報を基に、人手不足解消に向けた労働力確保アプリの開発、熟練農家の栽培技術継承に向けた教材プログラムの作成、鳥獣被害対策で捕獲したジビエを用いた商品開発、IT技術を活用した無人販売所における地場産品の販売、ニーズに即したオンデマンドカーの運用等について実証実験を行い、高齢化に伴い生じた地域課題の解決に向け、農用地保全、地域資源活用、生活支援に取り組みました。また、地域の課題を定期的に整理、可視化し共有することで地域住民の個々の要望を地域全体で解決する体制の構築を図りました。
今後は、各部会が実施する事業の収益化や安定した稼働に向け支援するとともに、地域内外の賛助会員の会費を活用するなど、効率的な運営を目指しながら同地区の関係者が一丸となって村おこし活動を展開することとしています。

教材プログラム
資料:東米良地区1000年協議会
IT技術を活用した無人販売所
資料:東米良地区1000年協議会
(2)生活インフラ等の確保
(農村地域における交通・教育・医療・福祉等の充実を推進)
人口減少が進む農村においては、担い手の育成や農地の集積・集約化等に加え、交通・教育・医療・福祉といった地域に定住するための諸条件の維持・確保や、農業水利施設等の管理の省力化・高度化、スマート農業技術の実装等のICT等の活用に向けた情報通信環境を整備することが重要な課題となっています。
このため、政府は生活の利便性向上や地域交流に必要な買物支援等を推進するとともに、活力ある学校づくりに向けたきめ細かな取組を推進しています。また、へき地における医療の確保を図るとともに、住まい・医療・介護・予防(*1)・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。
農林水産省では、農村における情報通信環境の整備に向けて、行政、土地改良区、農協、民間企業等による官民連携の取組を通じて、普及・啓発・人材派遣等のサポートを行うとともに、実装に関する調査、計画策定、施設整備への支援を実施しています。
*1 高齢者が要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止を目的として行うもの
(農村部においても公共ライドシェアを推進)
人口減少及び高齢化が全国的に進む中、免許返納した高齢者を中心に移動手段の確保に対する不安が高まっています。
国土交通省が令和7(2025)年2~3月に実施した調査によると、誰もがアクセスできる移動の足がない又は利用しづらいなど、地域交通に係る困りごとを抱えており、何らかの対応が必要と認識されている「交通空白」地区は2,057地区(717地方公共団体)に上り、居住人口は全人口の12.5%に当たるとしています(*1)。
農村に人が住み続けられる生活環境が確保されるよう、農村部の交通空白地において、農協や商工会、観光協会、地域運営組織等といった地域に根差した主体による公共ライドシェアの導入を推進する必要があり、政府では、引き続き、全国各地で多様な関係者の参画を働き掛け、取組を推進することとしています。
*1 国土交通省「「交通空白」リストアップ調査結果(地域の足)」(令和7(2025)年5月公表)
(標準耐用年数を超過した農業集落排水施設は全体の約9割)
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農業集落排水施設は、農業用水の水質保全等を図るため、農業集落におけるし尿、生活雑排水を処理するものであり、農村の重要な生活インフラとして稼働しています。
一方、令和8(2026)年3月末時点で農業集落排水施設の87%が標準耐用年数である20年を経過するなど、老朽化の進行や災害への脆弱性(ぜいじゃくせい)が顕在化するとともに、施設管理者である市町村の維持管理に係る負担が増加しています(図表6-3-4)。
このような状況を踏まえ、農林水産省では、農業集落排水施設の保全管理や維持管理の効率化のための再編・集約、強靱(きょうじん)化を進めています。
(農道の適切な保全対策を推進)
農道は、農業の生産性向上等に資するほか、地域住民の日常的な通行に利用されるなど、農村の良好な生活環境を確保する重要なインフラであり、その総延長距離は令和7(2025)年8月時点で16万9,493kmとなっています。一方、農道を構成している構造物については、同年4月時点で供用開始後20年を経過するものの割合が橋梁(きょうりょう)で86%、トンネルで73%となっています(図表6-3-5)。経年的な劣化の進行も見られる中、その機能を適切に維持していくためには、日常管理や定期点検、計画的・効率的な保全対策に取り組むことが重要です。
このため、農林水産省では、市町村、土地改良区等の職員向けに、直接点検等の実施にも役立つ手引を作成し、保全対策の推進に取り組むとともに、農道の再編・強靱化や拡幅等による高度化を通じて、農業の生産性向上や農村の生活環境の整備を図っていくこととしています。
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