第4節 地域の共同活動の維持
農村では人口減少・高齢化が進み、農地等の地域資源や末端農業インフラの保全管理等を含む地域の共同活動等の維持が困難となり、農業生産活動に影響することが懸念されています。このため、非農業者も含む多様な人材が参画していく仕組みを構築していくことが重要です。
本節では、地域資源や末端農業インフラの保全管理に関する取組について紹介します。
(1)地域資源の保全管理の状況
(多面的機能支払制度の認定農用地面積は前年度と同水準で推移)
データ(エクセル:31KB)
多面的機能支払交付金
URL:https://www.maff.go.jp/j/nousin/kanri/tamen_siharai.html
農業の有する多面的機能の発揮の促進を図るための多面的機能支払制度は、水路の草刈りや泥上げといった共同活動を支援する「農地維持支払」と、農村環境保全活動や施設の長寿命化といった地域資源の質的向上を図る共同活動を支援する「資源向上支払」の二つから構成されています。
令和7(2025)年度から始まった第3期対策について、これまでは環境保全型農業直接支払(*1)において支援してきた長期中干し等の水管理を伴う取組について、地域でまとまりをもって取り組むことによって効率的かつ効果的に推進されることが期待できることから、「資源向上支払」の加算措置として支援しています。
近年、多面的機能支払制度の認定農用地面積は微増傾向で推移してきましたが、令和6(2024)年度は233万haと、前年度と同水準となりました(図表6-4-1)。これに伴い、全国の農用地面積(*2)のうち同制度を活用している面積の割合は56.8%となりました。また、令和6(2024)年度における同制度の活動組織数は2万5,283組織と、前年度に比べ855組織減少しました。
*1 第5章第2節を参照
*2 「令和5年の農用地区域内の農地面積」に「農用地区域内の採草放牧地面積」を加えた面積
(広域化組織のカバー率が拡大)
草刈り隊による活動
資料:高柳広域水土里会(兵庫県養父市)
これまで、農地周辺の水路等の地域資源の保全管理は、小規模経営体を含む多数の農業者等の共同活動により行われてきましたが、年々、保全活動への参加者が減少してきています。また、人口減少・高齢化が進む中、共同活動の中核的役割を果たす者や事務処理を担当する者等の確保が困難となるおそれがあります。
このため、農林水産省では、保全活動や事務処理等を担う者を複数の集落で確保するための活動組織の広域化を推進しています(図表6-4-2)。
データ(エクセル:29KB)
データ(エクセル:31KB)
全組織の認定農用地面積に占める広域化組織の割合は、近年上昇傾向で推移しており、令和6(2024)年度には49.3%となっています(図表6-4-3)。
(2)末端農業インフラの保全管理
(共同活動への非農業者・多様な組織の参画や作業の省力化を推進)
末端の農業インフラは、農業生産の基盤であるだけでなく、雨水排水や交通等生活の基盤にもなっているため、非農業者を含む地域住民によって、泥上げや草刈りといった共同活動を通じた保全管理が行われてきました。一方、農村人口の減少、高齢化等により、これまでの共同活動が困難となるリスクを踏まえ、他地域から移住して農業に取り組みつつ農業以外の事業にも取り組む者、地域資源の保全や地域コミュニティの維持に資する取組を行う者といった多様な形で農村に関わる者を確保することが必要となっています。
また、各地域において末端農業インフラの保全管理の在り方を明確にしつつ、管理コストの低減や管理作業の省力化を図ること等により、その機能を維持していくことも必要です。
このため、農林水産省では、地域の共同活動について、集落の枠組みを超えて広域的に保全管理活動を実施できる体制の構築や、非農業者や多様な組織の参画を促進し、各地域の末端の農業インフラについて、土地改良区を中心とした連携管理保全計画(通称は「水土里(みどり)ビジョン」)の策定を通じて、保全管理の役割分担の明確化を推進していくこととしています。
また、最適な土地利用の姿を明確にした上で、開水路の管路化、法面(のりめん)の被覆等による作業の省力化やICTの導入等による作業の効率化を推進していくこととしています。
(事例)幅広い地域住民の参画により地域資源の保全を推進(福井県、鳥取県)
(1)広域化により持続的な活動体制づくりを展開
福井県鯖江市(さばえし)のグリーンネットさばえは、平成19(2007)年に水(み)・土(ど)・里(り)ネット中野(なかの)として活動を開始しました。その後、近隣の活動組織において事務作業を含む活動の継続が困難となる状況があったことから、広域で支え合う体制を構築するため、平成27(2015)年度に広域活動組織となり、令和7(2025)年度には33集落、6土地改良区にまたがる農地において取組を継続しています。
また、地域内の水路、農道等は、その多くで老朽化が進んでいたことから、費用負担を軽減しながら長寿命化対策を推進するため、水路の法面の補修やコンクリート水路への更新を地域住民が自ら直営で施工することで、施工費を削減するほか、地域内の人材発掘、技術力の向上につなげています。
さらに、人口減少・高齢化による活動参加者の減少に対応するため、農業者や地域住民で構成する草刈隊を設置し、広域活動組織内で労力の補完を図るほか、大型草刈機の使用により、作業負担の軽減を図るなど、限りある人的資源等を有効に活用する工夫を凝らしながら、地域の共同活動の継続を目指しています。
(2)多様な人材が参画した農村文化の伝承や防災・減災に関する活動を展開
鳥取県鳥取市(とっとりし)の会下部落地域資源(えげぶらくちいきしげん)・環境保全(かんきょうほぜん)プロジェクトでは、大堤池(おおづつみいけ)を中心とした農村文化の伝承活動や景観形成活動、防災・減災に関する活動を展開しています。毎秋、同池の水を抜き、「うぐい」と言われる竹で編んだ筒状の漁具を使った伝統漁法での漁を行うことを通じ、農業用ため池の管理と農村文化の伝承に地域一体となって取り組んでいます。また、豪雨災害に備え、令和4(2022)年度から田んぼダムに取り組んでおり、水田貯留機能の強化や、河川への流出量を抑制する効果も期待されています。
これらの活動や水路清掃等に、非農業者や大学生、地元の小学生が参加するなど、多様な人材が参画した活動が展開されています。

地域住民が参加する
直営施工による水路の更新
資料:グリーンネットさばえ

大学生や小学生による
「うぐい突き漁」
資料:会下部落地域資源・環境保全
プロジェクト
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