このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

第5節 中山間地域等の振興


中山間地域(*1)は、食料生産の場として重要な役割を担う一方、傾斜地等の不利な生産条件に加え、人口減少や高齢化、担い手不足、荒廃農地(*2)の発生、鳥獣被害の発生といった厳しい状況に置かれており、将来に向けて農業生産活動を維持するための取組を推進していく必要があります。

本節では、中山間地域等の振興を図る取組について紹介します。

*1 農業地域類型区分の中間農業地域と山間農業地域を合わせた地域のこと

*2 第2章第3節を参照

(1)中山間地域等の農業を「支える」ための施策の推進

(中山間地域の農業産出額は全国の約4割)

我が国の人口の約1割、総土地面積の約6割を占める中山間地域は、総農家数、耕地面積、農業産出額ではいずれも全国の約4割を占めており、我が国の食料生産を担うとともに、国土の保全、水源の涵養(かんよう)、自然環境の保全や良好な景観の形成といった多面的機能の発揮においても重要な役割を担っています(図表6-5-1)。

一方、中山間地域には傾斜地が多く、ほ場の大区画化や大型農業機械の導入、農地の集積・集約化等が容易ではないため、規模拡大等による生産性の向上が平地に比べ難しい状況にあり、平地農業地域では経営耕地面積1.0ha未満の農業経営体数が全体の約4割であるのに対し、山間農業地域では約6割となっています(図表6-5-2)。また、中山間地域では、担い手の不足や鳥獣被害の発生にも直面しています。

図表6-5-1 中山間地域の主要指標

データ(エクセル:31KB

図表6-5-2 農業地域類型区分別の経営耕地面積規模別農業経営体数の割合

データ(エクセル:30KB

(中山間地域等直接支払制度の協定数は前年度とほぼ同程度)

中山間地域等直接支払制度は、農業の生産条件が不利な地域における農業生産活動の継続を支援する制度として平成12(2000)年度から実施してきており、平成27(2015)年度からは「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律」に基づいた措置として実施しています。

令和6(2024)年度の同制度の協定数は2万4,446協定と前年度に比べ36協定増加し、協定面積も66万1千haと前年度に比べ1.5千ha増加しました(図表6-5-3)。一方、集落協定(*1)の参加者数は50万2千人と前年度とほぼ同程度になっています(図表6-5-4)。協定参加者の高齢化が進む中、活動の継続が困難な協定の増加や協定の廃止といった課題に対応するためには、活動の継続に向けた体制づくりが重要です。

図表6-5-3 中山間地域等直接支払制度の協定数と協定面積

データ(エクセル:31KB

図表6-5-4 中山間地域等直接支払制度における集落協定の協定参加者数

データ(エクセル:30KB

*1 対象農用地において農業生産活動等を行う複数の農業者等が締結する協定

(中山間地域等直接支払制度の協定間の連携と共同活動の活性化に向けた支援が重要)

令和6(2024)年8月に公表した「中山間地域等直接支払制度(第5期対策)の最終評価」によると、第5期対策にて減少が防止されたと推計される農用地面積は約8.4万haです。

協定面積が小さく、参加者数が少ない小規模な集落協定では、活動の廃止意向が示される割合が高くなっており、共通の課題を有する複数の集落協定間で連携するネットワーク化や、農業者のみならず多様な組織等が参画するための体制づくりを進めることが重要です。

令和7(2025)年度から開始された第6期対策では、中山間地域等の農用地8.4万haの減少防止を目標として設定し、農業生産活動の継続に取り組む農地の維持・拡大を図っています。共同活動を通じた農業生産活動等が継続できる仕組みが構築されるよう、集落協定のネットワーク化や多様な組織等の活動への参画が可能な体制づくり、スマート農業技術の導入による農作業の省力化・効率化、棚田地域における振興活動等を推進しています。

(事例)農業インターンシップを契機とした集落の活性化を実現(富山県)

富山県氷見市

インターンシップ学生
によるリモコン草刈機体験

資料:論田集落及び熊無集落

富山県氷見市(ひみし)の論田(ろんでん)集落及び熊無(くまなし)集落は、いずれも人口減少、高齢化に伴う担い手不足が深刻化していたことから、論田集落は平成12(2000)年度から、熊無集落は平成30(2018)年度から中山間地域等直接支払制度を活用した活動を開始し、草刈りや農道整備等の農用地保全の取組を地域一体で実施しています。令和元(2019)年度に同県の中山間地域向けの事業に両集落が参加したことをきっかけに、両集落における共通の課題に対応する必要性を認識し、令和2(2020)年度から同制度の棚田地域振興活動加算を活用して連携することとしました。

両集落では、同県や都市部の大学の協力も得て、大学生を対象とした農業インターンシップの受入れを令和5(2023)年度から開始しました。地元の食材を用いた草餅づくりや果樹の収穫、草刈りといった農業と集落の文化に触れつつ、地域住民と交流できる機会を提供することを通じ、集落の活性化を実現するとともに、関係人口の拡大を図っています。

今後も活動継続に向け、参加者や地域住民等の声を基に課題を洗い出し、参加者の農業との関わりの度合いに応じてプログラムを変更するなどの見直しを実施することとしています。また、両集落で立ち上げた「ろんくま移住促進委員会」や地域おこし協力隊等と協力して、移住希望者や交流人口・関係人口拡大のための観光客向けの宿泊体験交流施設を整備し、同インターンシップのノウハウを活かしたプログラムを作成するなど、引き続き地域全体が一丸となって共通の課題に取り組むこととしています。

(山村の自立的かつ持続的な発展を促す取組を推進)

振興山村(*1)は、人口減少や高齢化等が他の地域より進んでいますが、農林水産物の供給、国土の保全、水源の涵養、生物の多様性の確保、地球温暖化の防止、良好な景観の形成、文化の伝承等に重要な役割を担っています。それらの恵沢を国民が将来にわたって享受できるよう、山村における持続的な地域社会の維持及び形成のため、山村地域の特性を活かした産業の育成による就業機会の創出、所得の向上を図ることが重要となっています。

令和7(2025)年3月には山村振興法が改正され、同法の期限が10年間延長されました。農林水産省では、山村活性化や自立的かつ持続的な発展を促し、山村への移住・定住や地域間交流の促進を図るため、地域資源を活かした商品の開発等を支援しています。都道府県や市町村においては、各地域の実情を踏まえた山村の振興に関する方針や計画の策定が進められています。

*1 山村振興法に基づき指定された区域。令和7(2025)年4月時点で、全市町村数の約4割に当たる734市町村において指定

(2)中山間地域等の農業で「稼ぐ」ための施策の推進

(中山間地域等の特性を活かした複合経営等を推進)

中山間地域を振興していくためには、清らかな水や冷涼な気候等を活かした農作物の生産が可能である点を活かし、需要に応じた市場性のある作物や現場ニーズに対応した技術の導入を進めるとともに、多様な複合経営を推進することで、新たな人材を確保しつつ、多様な経営体がそれぞれにふさわしい農業経営を実現できるようにする必要があります。

このため、農林水産省では、中山間地域等直接支払制度により生産条件の不利を補正しつつ、中山間地農業ルネッサンス事業等により、多様で豊かな農業と美しく活力ある農山村の実現や、地域コミュニティによる農地等の地域資源の維持・継承に向けた取組を支援しています。また、米、野菜、果樹、飼料等の複数の作物生産のほか、畜産や林業、他業種も含めた多様な組合せによる複合経営を推進するため、農山漁村振興交付金等により地域の様々な取組を支援しています。

(事例)複合経営を通じて地域経済の活性化に貢献(佐賀県)

佐賀県鹿島市

放牧の様子

資料:増田好人さん

かんきつの収穫の様子

資料:増田好人さん

佐賀県鹿島市(かしまし)はかんきつ類の栽培が盛んですが、高齢化の進行や後継者不足から、荒廃園地の増加が課題となっています。長年かんきつ栽培を営んでいた増田好人(ますだよしと)さんは、約15年前から荒廃園地を活用した牛の放牧を開始し、果樹と畜産の複合経営を実践しています。

増田さんは同市による実験放牧をきっかけに、イノシシの住みかとなる藪(やぶ)の解消を目的として牛を導入した後、かんきつ栽培と放牧の両立に向けて、農地中間管理機構(農地バンク)を活用して畑、ハウス、牧場等の農地を集約しました。また、大学や研究機関と連携し、スマートフォンを用いた給餌や体重測定、ライブカメラを用いた健康状態の確認等のICT技術を活用した牛の管理により、効率的な放牧を実施しています。さらに、放牧牛の精肉や加工品を地元の道の駅で販売するなど、地域資源のブランド化にも取り組んでいます。

かんきつ栽培の面では、同市や地元の農協が推進している農法や先進技術を導入し、甘味と酸味のバランスが良いかんきつ類の生産に取り組むことで付加価値を向上させ、収益性の高い栽培を実現しています。

今後は、同市や集落、地域の企業、研究機関等の協力を得て培ったかんきつ栽培や放牧の技術を、増田さんが代表を務める「かしま放牧研究会(ほうぼくけんきゅうかい)」や道の駅等を巻き込んで展開していくことも検討しており、担い手やブランドの育成を通じて地域経済の活性化に貢献していく考えです。


お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader