第2節 農業生産活動における環境負荷の低減
気候変動による大規模災害の頻発や生物多様性の損失が地球規模で課題となる中、農林水産省では、みどり戦略に基づき、気候変動対策を講じているほか、生物多様性の保全や農業生産活動における環境負荷低減の促進に向けた取組を推進しています。
本節では、環境負荷低減に向けた取組、気候変動対策、生物多様性保全の取組、バイオマスや再生可能エネルギーの利活用について紹介します。
(1)環境負荷低減に向けた横断的な取組
(みどり戦略の今後の展開)
みどり戦略の策定以降、環境負荷低減の取組は全国で着実に進展してきました。その一方で、気候変動が深刻化しており、令和8(2026)年2月に環境省が公表した報告書によれば、農業・林業・水産業分野の13項目のうち水稲や果樹等の6項目で現状において重大な影響が生じていると評価されています(*1)。また、政府全体で化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する「グリーントランスフォーメーション」(以下「GX」という。)が分野横断的な課題となるなど、みどり戦略を取り巻く状況も変化しています。
こうした変化を踏まえ、農林水産省では気候変動への適応強化やGX投資の呼び込み等の新たな課題への対応も含め、みどり戦略の取組を加速化させ、将来にわたって持続可能な食料システムを確立するため、基本計画に基づき、「みどり加速化GXプラン」の策定に向けて、生産者や有識者の意見を聞き取りつつ検討を進めています。
*1 環境省「第3次気候変動影響評価報告書」(令和8(2026)年2月公表)
(環境配慮のチェック・要件化の本格実施に向け実施体制を整備)
農林水産業の現場における環境負荷低減への意識向上とその取組の底上げを図るため、農林水産省では、全ての補助事業等において最低限行うべき環境負荷低減の取組の要件化(愛称は「みどりチェック」)の令和9(2027)年度からの本格実施に向けて検討することとしています。このため、令和7(2025)年度においては、補助事業等の申請時及び報告時における取組の実施状況に関するチェックシートの提出を、試行的に実施しているところです。
(環境保全型農業直接支払制度の推進)
環境保全型農業直接支払制度は、平成27(2015)年度から「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律」に基づく制度として実施されており、化学肥料・化学農薬の使用を原則5割以上低減する取組と合わせて行う地球温暖化防止や生物多様性保全等に効果の高い営農活動に対して、同制度による支援を行っています。
実施面積は令和元(2019)年度以降、増加傾向で推移しており、令和6(2024)年度は9万1千haと前年度に比べ約4千ha増加しました(図表5-2-1)。また、同年度の実績を支援対象取組別に見ると、全国共通の取組では「堆肥の施用」が26.6%で最も多く、次いで「カバークロップ(*1)」、「有機農業」の順となっています(図表5-2-2)。
令和7(2025)年度からは第3期対策が始まり、前期からの見直しとして、有機農業の支援単価を引き上げるとともに、地域特認取組(*2)のうち全国的に拡大が見込める取組について、一層の推進を図る観点から全国共通取組へ移行しました。また、水田からのメタン排出量の削減に資するため、堆肥の投入量を見直したほか、堆肥や緑肥等の取組の際に長期中干し(*3)や秋耕(しゅうこう)(*4)等のメタン排出削減対策を併せて実施することを要件化しました。
今後は、みどり戦略の目標の実現に向けて、令和9(2027)年度を目途に同制度の見直しを行うこととしており、具体的には、みどり法の認定を受けた農業者が先進的な環境負荷低減の取組を行う場合に、導入リスク等に応じた支援を行う仕組みとする方向で検討することとしています。
*1 土壌侵食の防止や有機物の土壌への供給等を目的として、主作物の休閑期等に栽培される作物
*2 都道府県が申請し、国が承認した、地域を限定した取組
*3 中干しとは、水稲の栽培期間中、出穂前に一度水田の水を抜いて田面を乾かすことで、稲の過剰な分げつ(根本付近からの枝分かれ)を防止し、成長を制御する作業をいう。有害ガスの排出抑制、刈取り時等の作業性の向上等の目的も含まれる。
*4 水稲収穫後、秋のうちに稲わら等をすき込む作業をいう。好気的な条件下での稲わらの分解を促進し、翌春の湛水時のメタンの発生量を抑制することができる。
(2)気候変動対策の推進
(農業由来の温室効果ガス排出削減に向けた取組を推進)
我が国は世界全体での1.5℃目標と整合し、2050年ネット・ゼロ(*1)の実現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、令和17(2035)年度、令和22(2040)年度において、温室効果ガスを平成25(2013)年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指すこととしており、この新たな削減目標の達成に向けた総合的な実施計画である「地球温暖化対策計画」を令和7(2025)年2月に閣議決定しました。
我が国の農林水産分野での温室効果ガス排出量は全体に占める割合は約5%と小さいものの(*2)、基本計画では令和12(2030)年度に、農業分野において平成25(2013)年度から1,176万t-CO2削減することとしています。
これに向け、農林水産省では、みどり戦略や令和7(2025)年4月に改定した「農林水産省地球温暖化対策計画」に基づき、施設園芸や農業機械の省エネルギー化、バイオ炭の農地施用の推進等の取組を進めています。また、農地土壌から排出されるメタン等の温室効果ガスの削減に向けては、生物多様性にも配慮した水稲栽培における中干し期間の延長等の取組を推進するとともに、新たな排出削減技術の開発や普及を進めることとしています。
畜産分野では、家畜排せつ物の管理や家畜の消化管内発酵に由来するメタン等の排出削減技術の開発・普及を進めることとしています。具体的には、家畜排せつ物管理方法の変更については、地域の実情を踏まえながら、通常の堆積型発酵から強制発酵等への転換を進めるほか、アミノ酸バランス改善飼料の給餌については、家畜排せつ物に由来する温室効果ガスの発生抑制だけでなく、飼料費削減の効果も期待できることを周知しつつ、普及を進めていくこととしています。さらに、牛の消化管内発酵に由来する温室効果ガスの発生抑制に資する資材について、飼料安全法(*3)に基づく飼料添加物への指定の審議を円滑に進めるとともに、みどり法に基づく生産者の認定等も活用しつつ、更なる開発と普及を進めていくこととしています。
*1 令和2(2020)年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」以降、カーボンニュートラルや脱炭素という用語を用いてきた。一方、G7広島サミットの成果文書等にあるように、国際的な文脈においては、ネット・ゼロと表現することが一般的であることを踏まえ、本資料においては、固有名詞等の場合を除き、原則「ネット・ゼロ」を用いる。
*2 第5章第1節を参照
*3 正式名称は「飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律」
(新たにMIDORI∞INFINITYを策定)
農林水産省は、我が国が有する食料安全保障に資する温室効果ガス排出削減技術の海外展開を後押しし、気候変動ビジネスに取り組む企業の市場拡大や、世界の食料安全保障ひいては我が国の食料安全保障の向上につなげるため、農業・食品分野への国内外の脱炭素投資の呼び込みと地球規模の課題解決に貢献する政策パッケージとして、令和7(2025)年5月に「MIDORI∞INFINITY(ミドリ・インフィニティ)(*1)」を策定しました。
ミドリ・インフィニティでは、水田や畜産由来のメタン排出削減等の海外展開が可能で食料安全保障に資する技術を選定し、それら技術の海外展開を促進する施策や民間事業者が国内外で活用可能な支援等を紹介しています。
同年6月には、「みどり脱炭素海外展開コンソーシアム」を設立しました。温室効果ガス排出削減技術を有し、海外展開を検討している企業・団体を始め、100以上の構成員が参画しています。我が国企業と国内外のパートナーとのマッチングを図り、二国間クレジット制度(JCM)の活用にもつながる脱炭素プロジェクトの形成を推進することとしています。
また、同年11月にブラジルで開催された国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)で、農林水産省は、ミドリ・インフィニティの枠組みやこれに基づく我が国の取組を紹介しました。さらに、その趣旨に賛同する民間企業有志連合から、農業分野、畜産分野、MRV(*2)分野、それぞれの温室効果ガス排出削減に資する取組事例について情報発信するとともに、気候変動、アグリ・フードシステム及び持続可能な開発についての声明を発表しました。COP30では、このほかにも、農林水産省から、ブラジルの劣化牧野における我が国企業の生産資材を活用した主要作物の栽培実証結果を発表しました。
農林水産省は、こうした国際会議等の場を活用して、官民連携によるミドリ・インフィニティの取組を国内外に情報発信しています。
COP30における民間企業有志連合の声明発表
*1 正式名称は「農林水産分野GHG排出削減技術海外展開パッケージ」
*2 Measurement, Reporting and Verificationの略。温室効果ガス排出量の測定、報告及び検証のこと
(燃料燃焼による温室効果ガス排出削減対策を推進)
みどり戦略では、農業機械の燃料燃焼による温室効果ガス排出削減対策として、令和12(2030)年には電動草刈機と自動操舵(そうだ)システムの普及率をいずれも50%とする目標を掲げ、農林水産省において、目標実現に向けた施策を展開しています。
令和6(2024)年の電動草刈機の普及率は、前年に比べ4.0ポイント上昇し、27.7%となっています(図表5-2-3)。また、GPS等の位置情報とハンドルの自動制御により、作業重複を低減して燃料使用量の削減を可能とし、高精度な作業や軽労化にも資する自動操舵システムの普及率は、前年に比べ2.0ポイント上昇し9.8%となっています。
施設園芸に関しては、加温設備を備えた温室の大部分が化石燃料に依存している状況にあることから、省エネルギー型施設や省エネルギー機器の導入支援に加え、ゼロエミッション型園芸施設の実現に向けた技術開発・実証を進めることとしています。
令和6(2024)年の加温面積に占めるハイブリッド型園芸施設等の割合は12.7%となっており、農林水産省では、環境負荷低減と収益性向上を両立した持続可能な園芸施設への転換を推進しています(図表5-2-4)。
(気候変動の影響に適応するための技術の開発・普及を推進)
農業生産は気候変動の影響を受けやすく、各品目で気候変動の影響と考えられる生育障害や品質低下等が見られています。近年、高温、渇水、豪雨等の気候変動による生産現場への影響が深刻化(*1)している状況を踏まえ、農林水産省では、これらの影響への対応を効果的に実施するため、「農林水産省気候変動適応計画」を策定し、同計画に基づき、生産現場における気候変動の状況や、その適応策等について「地球温暖化影響調査レポート」を取りまとめています。令和8(2026)年3月に公表した「令和7年地球温暖化影響調査レポート(速報)」においては、水稲の適切な水管理や、追肥等の肥培管理、適期防除の徹底等の高温対策を取り上げているほか、気候変動を活用した産地形成に向けた取組として亜熱帯果樹の中でも耐寒性が比較的あり、露地での栽培が期待できるアボカドの導入に向けた取組等について紹介しています。また、水稲では、高温障害への対応として主食用作付面積に対する高温耐性品種の作付割合が上昇しており、令和7(2025)年産は18.2%です。
地球温暖化影響
調査レポートについて
URL:https://www.maff.go.jp/j/seisan/
kankyo/ondanka/report.html
農林水産省は、高温等の影響を回避・軽減する適応技術や高温耐性品種の開発・導入(*2)、適応策の生産現場への普及指導等の取組を推進しており、夏の高温化傾向による農作物への影響を軽減するため、収益力強化に計画的に取り組む産地に対して、高温対策等に必要な農業機械や農業生産資材の導入等を支援しています。さらに、気候変動による降水量の変化等に対応するため、農業水利施設の整備に当たって、将来の降雨予測に基づいた排水計画策定手法を導入するとともに、渇水時の応急ポンプの活用やきめ細かな水管理等の支援、取水期間等の調整を実施しています。今後とも、気候変動に適応するための生産安定技術・品種の開発・普及、農業水利施設の整備等を進めていくこととしています。
*1 第5章第1節を参照
*2 第2章第5節を参照
(農業分野におけるJ-クレジット制度の取組が拡大)
データ(エクセル:31KB)
世界的にカーボン・クレジットの取引市場が拡大する中、我が国においても、森林、農地、家畜等の農林水産分野から創出されるカーボン・クレジットの取組拡大への期待が高まっています。
温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして国が認証し、取引を可能とする「J-クレジット制度」は、経済産業省、環境省、農林水産省の3省により運営されており、農林漁業者等の取組による温室効果ガス削減量をクレジット化して売却することで、当該農林漁業者等が収入を得ることができるものです。
同制度により創出されたクレジットは、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく企業による温室効果ガス排出量の報告に利用できるほか、海外イニシアティブへの報告、企業の自主的な取組といった様々な用途に活用することが可能です。J-クレジット制度では、令和8(2026)年2月末時点で75の方法論が承認されています。このうち農業分野では、令和8(2026)年2月に、牛へ飼料添加物を使用した飼料を給餌することにより消化管内発酵由来の温室効果ガス発生を抑制する「牛への飼料添加物(曖気中の温室効果ガス削減に資するもの)を使用した飼料の給餌」が新たに方法論として追加され、「水稲栽培における中干し期間の延長」や「肉用牛へのバイパスアミノ酸の給餌」を含め、七つの方法論(*1)が承認されています。
J-クレジット制度におけるプロジェクトの登録件数は、令和7(2025)年12月末時点で862件であり、このうち農業者が取り組むプロジェクトは、再エネ・省エネ分野の方法論によるものを含めて56件です(図表5-2-5)。また、農業分野の方法論を用いたプロジェクトは、「水稲栽培における中干し期間の延長」に取り組むプロジェクトが26件、「バイオ炭の農地施用」に取り組むプロジェクトが14件、その他のプロジェクトが6件の計46件承認されています。農林水産省では、農業分野におけるJ-クレジットの取組を推進するため、プロジェクトの登録やJ-クレジットの認証等を支援するとともに、方法論の新規策定等に向けたデータ収集を実施しています。
*1 排出削減・吸収に資する技術ごとに、適用範囲、排出削減・吸収量の算定方法及びモニタリング方法を規定したもの
(事例)他産業から農業分野における環境負荷低減の取組に参画(島根県)
島根県雲南市(うんなんし)のスポーツ栄養食品メーカーである株式会社アルプロンは、2050年ネット・ゼロの実現を社会課題と考え、地域の農業者と協力し「水稲栽培における中干し期間の延長」の取組に着手しています。
同社は令和6(2024)年4月に同市と地域連携協定を締結するとともに、同市のほか奥出雲町(おくいずもちょう)と飯南町(いいなんちょう)でも試験的に取組を実施し、同年度は206.3haの水田において385t-CO2のメタンガスを削減しました。また、令和7(2025)年度は、これを1市2町に加え、更に県内外でも地域・面積を増加させ、479.5haの水田において約760t-CO2のメタンガスの削減を試算しています。
参加した農業者からは、作業の負担がない範囲で環境負荷低減の取組に参加できて良かったという意見が寄せられており、農業者同士で取組の利点を共有することで、参加者も増えてきています。
今後も取組面積を拡大し、中国・四国地方を中心に、約1万haの水田で実施することを目標としています。

中干しの様子
資料:株式会社アルプロン
水田からのメタン発生の仕組み
資料:農研機構
(3)生物多様性保全に関する取組の推進
(ネイチャーポジティブの実現に向けた取組を推進)
環境と調和のとれた食料システムの確立に向けて、生物多様性の保全を図ることも重要です。国際的には、令和4(2022)年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、生物多様性への脅威を減らす行動として、農薬や有害性の高い化学物質によるリスクの半減、環境中に流出する過剰な栄養素の半減等が示されるなど、生物多様性の減少傾向を止め、回復に向かわせる「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた動きが進んでいます。
農林水産省では、みどり戦略や昆明・モントリオール生物多様性枠組等を踏まえ、令和5(2023)年3月に改定した「農林水産省生物多様性戦略」に基づき、有機農業や冬期湛水(たんすい)(*1)管理といった生物多様性保全等に効果の高い営農活動に取り組む農業者の組織する団体等に対して支援を実施することとしています。
このほか、令和5(2023)年度には、民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を環境省が「自然共生サイト」として認定する仕組みが開始され、令和7(2025)年4月からは、自然共生サイトを法制化した「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」が、環境省、農林水産省、国土交通省の共管により施行され、同法の施行前の認定と併せて、令和8(2026)年3月末時点で合計569か所が自然共生サイトとして認定されています。
*1 冬期間の水田に一定期間水を張り、水田地帯の多様な生き物を育む取組
(化学農薬・化学肥料の使用低減を推進)
化学農薬使用量(リスク換算)は、地域の栽培暦等への農薬使用量低減技術の反映や、リスクの低い農薬への切替え等により、令和6(2024)農薬年度(*1)は令和元(2019)農薬年度に比べ約19.9%低減となりました。これは、みどり戦略に位置付けられている令和12(2030)年目標を達成している水準ですが、その要因としては、化学農薬使用量(リスク換算)の大きい土壌くん蒸剤の使用低減が進んだこと等だけでなく、資材費上昇による農薬の買控え傾向も影響したと考えられることから、引き続き化学農薬使用量の低減に向けた対策を進めていくことが重要です。
このため、農林水産省では、使用量低減に資するスマート農業技術、病害虫抵抗性品種、生物防除資材の導入等による総合防除の普及を、指導者を活用しつつ推進するとともに、有機農業の面的拡大、化学農薬の使用量低減技術や病害虫抵抗性品種等の開発、生物防除資材等の新規資材の審査等を推進することとしています。また、産地における新たな技術の検証結果を共有し横展開するために、実践に向けた栽培マニュアルの作成等を支援しています。
化学肥料の使用量については、家畜排せつ物や下水汚泥資源等の国内資源の利用拡大に向けた堆肥化・ペレット化施設の整備や関係者間のマッチング機会を増やす取組、緑肥等を含めた有機物の施用による土づくりの推進と併せ、リモートセンシングデータの利用を含め、土壌診断に基づく適正施肥の取組拡大、局所施肥や可変施肥技術の導入等を進めています。このような取組により、令和5(2023)年の化学肥料使用量は68万t(NPK総量(*2)・生産数量ベース)で基準年である平成28(2016)年に比べ約25%の低減となっています。
また、近年、バイオスティミュラントと呼ばれる、農薬、肥料等とは異なる新たな生産資材の開発・普及が進んでおり、農作物の高温への耐性や栄養分の利用効率等の向上に資するものとして注目されていますが、効果や使用方法等の表示が不明確なものがあるなどの課題も存在しています。このため、農林水産省では、製造者や使用者等による意見交換会を開催し、その意見等を踏まえ、使用者が安心して選択できる環境を整えることを目的として、令和7(2025)年5月に「バイオスティミュラントの表示等に係るガイドライン」を策定したところであり、その周知を進めています。
*1 農薬年度は、前年10月から当年9月までの期間
*2 肥料の三大成分である窒素(N)、りん酸(P)、加里(K)の全体での出荷量のこと
(有機農業の推進)
データ(エクセル:30KB)
我が国では、「有機農業の推進に関する法律」において、「有機農業」とは、化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業と定義されています。
輸入依存度の高い化学肥料を使用しない有機農業は、生物多様性の保全や地球温暖化防止等に加えて、国際情勢に左右されにくい農業生産体制の確立に資するものとして、我が国でも推進されています。
我が国の有機農業の取組面積については令和3(2021)年度のみどり戦略の策定等を受け拡大傾向で推移しており、令和5(2023)年度の取組面積は3万4,500ha、耕地面積に占める割合は0.8%となりました(図表5-2-6)。前年度に比べ4,400ha(15%)増と大きく拡大しており、みどり戦略等で掲げた、令和12(2030)年までに6万3千haとする目標の達成に向けて着実に増加しています。
市町村が主体となり、生産から消費まで一貫した取組により有機農業拡大に取り組むモデル産地である「オーガニックビレッジ」についても、令和7(2025)年までに100市町村を創出する目標を達成し、令和7(2025)年度には154市区町村において取組が行われています。また、全ての道府県立農業大学校において有機農業をカリキュラム化するなど、有機農業の教育が全国で実施されています。
我が国の有機食品の市場規模は拡大傾向で推移しており、農林水産省では、有機食品の更なる需要拡大に向け、12月8日「有機農業の日」に合わせた情報発信の強化等を実施しています。また、環境負荷低減に関心の高い海外市場をターゲットとして有機JAS認証の取得や商談の実施を支援するなど、有機農産物の輸出拡大に向けた取組を推進しています。
(事例)担い手育成を通じて有機農産物の輸出拡大を推進(鹿児島県)

中東向け需要開拓に向けた
商談会の様子
資料:有限会社かごしま有機生産組合
有機JAS認証を受けた
ベビーフード
資料:有限会社かごしま有機生産組合
鹿児島県鹿児島市(かごしまし)の有限会社かごしま有機生産組合には、同県に加え、熊本県、宮崎県の約160戸の生産者が加入し、にんじんやたまねぎ、かんしょ等の有機農産物を100種類以上生産しています。
同社は有機農産物の販売先の多角化を進めており、生協やスーパー等の直営店、ECでの販売に加え、海外市場における有機農産物のニーズを取り込むため、平成30(2018)年から有機農産物の輸出を開始しました。令和7(2025)年までの間に東南アジアを中心とした12か国・地域に、青果としての有機野菜に加え、有機農産物を原料としたベビーフード、冷凍焼き芋等を輸出しました。
一方、有機農産物の需要が高まる中、販路の開拓だけではなく、持続的で安定した生産の拡大も喫緊の課題となっています。同社は座学や現場実習等の新規就農希望者向けの研修や直営農場での雇用によるOJTにより、有機農業の担い手の育成と生産体制の確保に取り組んでいます。
同社は今後、安定的な生産基盤を確保した上で、海外向けの新たな加工商品の開発や、海外市場の選択と集中を進めることで、有機農産物の輸出拡大を推進することとしています。また、30by30目標(*)に賛同し、有機農業を普及することにより、生物多様性保全に効果の高い営農を促していく考えです。
* ネイチャーポジティブの実現に向けて、2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標
(学校給食での有機農産物等の活用の広がり)
データ(エクセル:29KB)
学校給食での有機食品の利用を、食育の推進や有機農産物の安定的な販路確保の観点から推進しており、令和6(2024)年度の取組市区町村数は328市区町村と、前年度から50市区町村増加しています(図表5-2-7)。
特にオーガニックビレッジにおいて学校給食への有機食品の導入が積極的に取り組まれており、地方公共団体内の地産地消のみならず、産地と消費地が連携した取組も見られます。宮城県大崎市(おおさきし)は、令和7(2025)年の「有機農業の日」に合わせて、同市内と、姉妹都市である東京都台東区(たいとうく)の学校給食にそれぞれ大崎市産の有機米等を提供し、有機農業に関する出張授業を実施しました。
(農業由来廃プラスチックの対策を推進)
農畜産業の生産現場では、農業用ハウスの被覆資材やマルチ等のプラスチック資材が使用されていることから、環境への負荷を低減するため、使用後に回収し、リサイクル等の適正処理を進めることが必要です。また、作物収穫後に土壌中にすき込むことで、土壌中の微生物の働きにより水と二酸化炭素に分解される生分解性マルチ等への転換を図り、排出抑制を進めることも重要です。
農業分野の廃プラスチックの再生処理(焼却に伴い発生する熱エネルギーの回収を含む。)の割合は70%程度で推移しており、令和6(2024)年度では68.9%となっています(図表5-2-8)。また、農業用生分解性資材普及会(のうぎょうようせいぶんかいせいしざいふきゅうかい)の調査によると、生分解性マルチの年間利用量(樹脂の出荷量)は近年3千t台で推移しており、令和6(2024)年度は3,723tとなっています(図表5-2-9)。
農林水産省では、生分解性マルチ等への転換に向けた取組のほか、農業用ハウスの被覆資材やマルチといった農業由来の廃プラスチックの適正処理対策を推進していくこととしています。
プラスチックを使用した被覆肥料は、作物の生育に応じて徐々に肥料成分が溶け出すことから、肥料の投入量低減や、農作業の省力化につながる一方、ほ場から海洋に使用後の被膜殻が流出することによる環境への影響が懸念されています。このため、プラスチックを使用せずに徐々に肥料成分が溶け出す機能を持つ代替肥料や、農業用ドローンを利用して省力的に追肥を行うなどの代替技術の現場実証や取組事例の普及を推進しています。
(4)バイオマスや再生可能エネルギーの利活用の推進
(農山漁村や都市部におけるバイオマスの総合的な利用を推進)
持続的に発展する経済社会の実現や循環型社会の形成には、みどり戦略に基づき、農林水産業から生じる家畜排せつ物や林地残材(りんちざんざい)、食品産業から生じる食品廃棄物等のバイオマスを製品やエネルギーとして活用するなど、地域資源の最大限の活用を図ることが重要であり、地域の未利用資源等を地域の農林漁業関連施設等で循環利用する取組を進めることとしており、令和7(2025)年度までに8市町が農林漁業循環経済先導計画を策定しました。
データ(エクセル:29KB)
バイオマスの活用の推進
URL:https://www.maff.go.jp/j/
shokusan/biomass/
令和4(2022)年9月に閣議決定した「バイオマス活用推進基本計画」では、農山漁村だけでなく都市部も含め、新たな需要に対応した総合的なバイオマスの利用を推進することとしており、令和5(2023)年度のバイオマス利用率は77%で、令和12(2030)年には約80%を目指すこととしています(図表5-2-10)。また、製品・エネルギー市場のうち、国産バイオマス関連産業の市場シェアを令和元(2019)年の約1%から令和12(2030)年に約2%に拡大させることを目指しています。これらの目標の達成に向けて、農山漁村や都市部に存在するバイオマスについて、堆肥や飼料等の既存の利用に支障のないよう配慮しつつ、バイオガス等の高度エネルギー利用を始め、より経済的な価値を生み出す高度利用を推進しています。
さらに、地域のバイオマスを活用したグリーン産業の創出と地域循環型エネルギーシステムの構築を図ることを目的として、経済性が確保された一貫システムを構築し、地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とした環境に優しく災害に強いまち・むらづくりを目指す地域を、関係府省が共同で「バイオマス産業都市」として選定しています。令和7(2025)年度においては新たに3市町をバイオマス産業都市に選定し、選定された地域は累計で107市町村となりました。バイオマス産業都市に選定された地域に対して、地域構想の実現に向けた各種施策の活用、制度・規制面での相談・助言等を含めた支援のほか、バイオマスの活用を促進する情報発信、技術開発・普及、人材の育成・確保等を行っています。
(農山漁村における再生可能エネルギーの導入)
みどり戦略においては、温室効果ガス削減のため、令和32(2050)年までに目指す姿として、我が国の再生可能エネルギーの導入拡大に歩調を合わせ、農山漁村における再生可能エネルギーの導入に取り組むこととしています。一方、食料供給機能や国土保全機能の発揮に支障を来さないよう、農林水産省では、農山漁村再生可能エネルギー法(*1)に基づき、市町村、発電事業者、農業者等の地域の関係者から成る協議会を設立し、地域主導で農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー発電を行う取組を促進しています。
農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画を作成した市町村数は、令和6(2024)年度は前年度に比べ9市町村増加し累計で112市町村となりました(図表5-2-11)。また、農山漁村再生可能エネルギー法を活用した再生可能エネルギー発電施設の設置数も年々増加しており、設備整備計画の認定数は令和6(2024)年度末時点で139となりました。
データ(エクセル:31KB)
*1 正式名称は「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」
(大規模太陽光発電事業に関する対策や営農型太陽光発電の取組を推進)
営農を継続しながら発電を行う営農型太陽光発電は、農業生産と再生可能エネルギーの導入を両立し、作物の販売収入に加え、発電電力の自家利用等による農業経営の更なる改善が期待できる有用な取組です。その取組面積については年々増加しており、令和5(2023)年度は前年度に比べ142ha増加し1,362haとなりました(図表5-2-12)。
一方、太陽光パネル下部の農地において作物の生産がほとんど行われないなど、農地の管理が適切に行われず営農に支障が生じている事例も増えており、設置者からの栽培実績報告に基づき都道府県等が営農に支障があると判断した件数は同年度末時点で存続している取組の2割以上となっています(図表5-2-13)。
太陽光パネル下部の農地における営農が適切に行われるようにするためには、農地法や再エネ特措法(*1)等の関係法令に違反する事例に対して厳格に対処するなどの対応が必要であることから、令和6(2024)年3月に策定したガイドライン等に基づいて定期報告や指導等を実施しています。
営農型太陽光発電は、農業者の所得向上や地域活性化に資する取組ですが、不適切な事例も散見される中、全ての取組を農山漁村にとって有益な地域共生型の取組へと誘導していく必要があります。こうした中、今後導入を推進する価値のある「望ましい営農型太陽光発電」を具体的に整理するため、令和7(2025)年5月に「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」を設置しました。
また、令和7(2025)年12月に「大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議」が取りまとめた「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」等を踏まえ、農林水産省は、望ましい営農型太陽光発電を明確化するとともに、不適切な取組への厳格な対応に向け、関連制度の見直しを含めた検討を行っています。
*1 正式名称は「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」
(農業水利施設の再エネ利用・省エネ化を推進)
農業水利施設等を活用した再生可能エネルギー発電施設については、令和7(2025)年3月末時点で、農業用ダムや農業用水路を活用した小水力発電施設183施設、農業水利施設の敷地等を活用した太陽光発電施設126施設、風力発電施設4施設、合計で313施設が農業農村整備事業等により整備されています(図表5-2-14)。これにより、土地改良区の使用電力量に対する農業水利施設を活用した小水力発電等再生可能エネルギーの割合は、同年同月末時点で32.2%となりました。
農林水産省では、みどり戦略の実現を後押しするため、農林水産業のCO2ゼロエミッション化の推進に向けて、農業水利施設を活用した小水力等発電施設の新規の案件形成や更新・整備等に係る事例集の作成、優良事例の横展開、研修、関連施策の周知等により、再生可能エネルギー発電施設の導入を促進するとともに、老朽化した農業水利施設の更新に際しては、施設の集約・再編、ポンプ等の省エネルギー化の取組を推進することとしています。
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