第3節 食品産業・消費における環境負荷の低減
持続可能な食料システムの構築のため、食料システムをつなぐ食品産業においても、持続可能な方法で生産された原材料を使用し、食品ロスを削減するなど、環境や人権に配慮した持続可能な産業に移行することが求められています。また、このような取組の重要性について消費者の理解を深め、持続可能性に配慮した消費行動を促していくことも重要です。
本節では、食品産業の環境負荷低減に向けた取組や、消費者等への理解醸成を図る取組について紹介します。
(1)食品産業における環境負荷低減等の促進
(食品産業による持続可能性に配慮した取組を促進)
食品産業については、環境と調和し人権に配慮した調達・生産・加工・流通に転換していく方向が国際的にも主流となり、持続可能な国際認証等が拡大する中で、生産現場の環境や人権に配慮することが世界的に求められています。
このうち、原材料調達に際しては、国内での上場食品企業のうち「持続可能性に配慮した輸入原材料調達」に関する取組を実施している企業の割合は、令和6(2024)年は49.3%となっています。
このような取組については、短期的には直接的な売上げ向上につながりにくく、企業負担が増えるなどの課題があることから、農林水産省では、食品産業の持続可能性の向上に向けて、国産原材料の利用促進、環境や人権に配慮した原材料調達等を支援することとしています。環境や人権、栄養といったサステナビリティ課題について深掘りし、より緊密に官民が連携した検討を行っていくために、令和7(2025)年5月に「食料システムサステナビリティ課題解決プラットフォーム」を設立し、検討会、ワーキンググループでの課題整理や事例集の作成、セミナー等の開催による食品産業全体の理解醸成、国内外の規制等に関する調査レポートの発信等を実施しています。
(2)食品ロスの削減、リサイクルの推進
(国内では食品ロスの発生量は減少傾向)
我が国の食品ロスの発生量については、令和5(2023)年度は464万tと推計されており、前年度に比べ8万t減少し、食品ロスの発生量の推計を開始した平成24(2012)年度以降で最少となりました(図表5-3-1)。食品ロスの発生量を場所別に見ると、一般家庭における発生(家庭系食品ロス)は233万tと前年度に比べ3万t減少しました。また、食品産業における発生(事業系食品ロス)は231万tと前年度に比べ5万t減少し、平成12(2000)年度比で58%削減しました。
データ(エクセル:31KB)
我が国の食品ロス削減の取組や成果に対し、UNEP(*1)(国連環境計画)は、我が国がSDGs12.3を踏まえた食品ロスの半減目標を達成したことや、令和12(2030)年度までに平成12(2000)年度に比べ事業系食品ロスを60%削減させるという野心的な目標を追求していることについて、対外的に情報発信しました。
*1 United Nations Environment Programmeの略
(事例)AIとビッグデータを活用して食品ロスを削減(岐阜県)

AI需要予測量を
確認する従業員
資料:中部フーズ株式会社
岐阜県多治見市(たじみし)の株式会社バローホールディングスでは、サプライチェーン上での温室効果ガス排出量の削減と食品廃棄物の削減について長期的な目標を設定し、一般財団法人日本気象協会(にほんきしょうきょうかい)やソフトバンク株式会社と連携して、AIと人流・気象データ等のビッグデータを活用する取組によって食品ロスの削減を実現しています。
株式会社バローホールディングスのグループ企業でデリカ部門を担い、弁当・総菜を製造・販売する中部(ちゅうぶ)フーズ株式会社では、売れ残りによる食品廃棄を課題としていました。この解決方法として、令和6(2024)年1月から、一般財団法人日本気象協会の気象データとソフトバンク株式会社の人流データ等を活用したAI需要予測モデルによる自動発注システムを試験的に導入し、同年11月に全店舗での導入を開始しました。4者が連携した本取組において、食品廃棄・欠品の減少と売上げ・利益の向上といった効果が確認され、同システム導入後3か月で、廃棄が34%、欠品が9%減少し、売上げが26%、利益が31%増加しました。
また、季節のイベントである2月の恵方巻販売においては、事前予約に取り組むとともに、店舗の統括者が過去データと直近トレンドから店舗別に客数予測を実施した上で生産量を管理しました。これにより、令和6(2024)年2月の恵方巻販売において初めて廃棄ゼロを達成し、取組を継続しています。
同グループでは、今後、サプライチェーンの上流である生産まで取組を拡大させ、食品ロスの削減を推進していくこととしています。
(事業系食品ロスの削減に向け商慣習の見直し等の取組を推進)
農林水産省では事業系食品ロスの削減に向けた取組を推進しており、令和7(2025)年度においては、食品小売事業者が賞味期間の3分の1を経過した商品の納品を受け付けないという商慣習である「3分の1ルール」の緩和や、食品製造事業者における賞味期限表示の大括り化(*1)等の取組を呼び掛けています。令和7(2025)年10月時点で、納品期限の緩和に取り組む事業者は、377事業者に拡大しています。また、行政・食品業界・消費者で協調して食品ロス削減の取組を更に推進することを目的に設置した「食品廃棄物等の発生抑制に向けた取組の情報連絡会」を同年5月、9月及び令和8(2026)年3月に開催し、政府における施策の検討状況のほか、食品企業の商慣習の見直しや食品寄附等の取組について情報共有を行いました。
さらに、消費者への啓発については、従来の「てまえどり」の呼び掛けに加え、外食店舗における「食べきり」を呼び掛けることを目的としたポスターを新たに作成しました。
外食店舗向け食べきりポスター
食品産業もったいない大賞受賞者インタビュー
URL:https://www.youtube.com/playlist?list=PLMvvhD9xvwfm
R575GXnnI6oX2LyP1p1DK
*1 年月日表示を年月表示や10日単位で統一といった日まとめ表示等に変更すること
(食品関連事業者による食品ロス削減等の取組を見える化)
食品関連事業者の食品ロス削減や食品リサイクル等の取組を後押しするため、食品関連事業者の取組を適正に評価して開示する枠組みを構築し、令和10(2028)年度から運用できるよう、関係者の意見を聞きつつ検討を進めています。
(食品リサイクルの取組を推進)
農林水産省では、環境省とともに、食品の売れ残り・食べ残しや、食品の製造過程において発生している食品廃棄物について、飼料や肥料等の原材料として再生利用する取組を促進しています。
令和7(2025)年度においては、食品リサイクル法(*1)に基づく再生利用事業計画(食品リサイクルループ)の認定対象となる範囲を拡大し、特定肥飼料等を利用した生産物を利用して製造された飼料又は肥料を利用した農畜水産物等を生産した場合においても認定の対象となりました(図表5-3-2)。

*1 正式名称は「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」
(3)プラスチック資源循環への対応
(食品産業分野におけるプラスチック資源循環の取組を推進)
国際的には、海洋プラスチックごみ問題等を背景として、国連において「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)」を策定するための政府間交渉委員会の交渉が継続されています。EUでは、全てのプラスチック包装について、再生材の利用等を義務付けた「包装及び包装廃棄物規則(EU)2025/40 (PPWR)」(*1)が、令和7(2025)年1月にEU官報に掲載され、数年の間に、段階的に適用されることとなっています。
我が国においても、令和6(2024)年8月に閣議決定した「第五次循環型社会形成推進基本計画」において、資源や製品を循環的に利用し、付加価値を創出する循環経済への移行を国家戦略として位置付けました。
また、令和7(2025)年6月に公布された「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律」に基づき、再生プラスチックの利用義務が課される製品の製造等を行う一定規模以上の事業者に対して、再生材の利用に関する計画の提出及び定期報告を義務付けることとされています。食品産業分野では、指定ペットボトル(*2)が対象となっています。
さらに、ペットボトル以外の食品容器包装では再生材の利用はほとんど進んでいない状況にあることから、農林水産省では、令和7(2025)年10月に、官民合同の「食品分野におけるプラスチック容器包装資源循環タスクフォース」を立ち上げ、解決すべき課題や今後の取組方向を整理しています。
*1 正式名称は「Regulation (EU) 2025/40 of the European Parliament and of the Council of 19 December 2024 on packaging and packaging waste, amending Regulation (EU) 2019/1020 and Directive (EU) 2019/904, and repealing Directive 94/62/EC (Text with EEA relevance)」
*2 飲料又は特定調味料(しょうゆ、食酢その他の主務省令で定める調味料)が充塡されたポリエチレンテレフタレート製の容器
(4)環境負荷低減の取組の「見える化」
(環境負荷低減の取組の「見える化」を推進)
環境と調和のとれた食料システムを確立するためには、食料システム全体で環境負荷低減を推進するとともに、環境に配慮した農産物を消費者が選択できる環境づくりに向けて、その取組を可視化することが重要です。
令和8(2026)年3月に公表した調査によると、環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶと回答した人が57.1%となっており、前年に比べ4.2ポイント低下しました(*1)。
農林水産省では、農産物の生産段階における温室効果ガスの排出量・吸収量を算定する簡易算定シート(*2)の結果に基づき、地域の慣行栽培と比べた場合の温室効果ガス削減の貢献度合いを星の数で表示する「見える化」(ラベルの愛称は「みえるらべる」)の取組を推進しています。算定の対象は、令和8(2026)年3月末時点で米や野菜を始めとする24品目であり、米については、生物多様性保全の取組についても、その取組数に応じた星の数による表示が可能です。令和7(2025)年7月からは営農管理アプリと連携したシステムで「みえるらべる」の取得が可能になりました。また、対象品目の拡大に向け、畜産物(牛肉、生乳)の簡易算定シートの算定・販売実証を開始しました。
みえるらべる商品が通年購入可能な店舗等がある都道府県数は、令和8(2026)年2月時点で24都道府県に拡大したところであり、引き続き、優良事例の情報発信や畜産物や花き等の更なる対象品目の拡大に向けた検討に取り組むこととしています。
「みえるらべる」を取得した
にんじんを使用した加工品
資料:KITANO ACE 各務原インター店
農産物の環境負荷低減の取組の「見える化」
URL:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/
being_sustainable/mieruka/mieruka.html
*1 農林水産省「食育に関する意識調査報告書」
*2 正式名称は「農産物の温室効果ガス簡易算定シート」
(5)食料システムの関係者の理解浸透の推進
(食と農林水産業のサステナビリティを考える取組を推進)
みどり戦略の実現に向け、農林水産省は消費者庁、環境省と連携して、企業・団体が一体となって持続可能な生産・消費を促進する「あふの環(わ)2030プロジェクト~食と農林水産業のサステナビリティを考える~」を推進しており、令和8(2026)年3月末時点で農業者や食品製造事業者等228社・団体等が参画しています。
同プロジェクトでは、食と農林水産業のサステナビリティについて知ってもらうため、「サステナブルが“推し”になる」をテーマに「サステナウィーク2025」を開催し、環境に配慮した農産物の販売や、その消費に資する情報の発信を集中的に行いました。また、サステナブルな取組についての動画作品を表彰する「サステナアワード2025」を実施したほか、環境負荷低減に取り組む生産者と流通・小売事業者等のマッチング促進を目的とした展示会での出展や講演、シンポジウムにおける消費者に対する施策情報の発信を行いました。
サステナアワード2025 農林水産大臣賞受賞作品
野村不動産ホールディングス株式会社
作品名:「森を、つなぐ」東京プロジェクト
(みどり戦略学生チャレンジにより、若い世代の環境に配慮した取組を推進)
農林水産省では、令和6(2024)年度から、将来を担う若い世代の環境に配慮した取組を促すため、みどり戦略に基づいた大学生や高校生等の活動を表彰する「みどり戦略学生チャレンジ」を実施しています。第2回大会には、高校の部で221件、大学・専門学校の部で166件の参加登録があり、各部門の最も優れた取組として、高校の部では、熊本県立熊本(くまもと)農業高等学校、大学・専門学校の部では、東海学院大学医療栄養学科「規格外野菜で食育の推進プロジェクトチーム」が農林水産大臣賞を受賞しました。
農林水産大臣賞(高校の部)
熊本県立熊本農業高等学校
取組名:持続可能な養豚経営を目指して
~「くまもとの赤」による地方創生プロジェクト~
農林水産大臣賞(大学・専門学校の部)
東海学院大学医療栄養学科
「規格外野菜で食育の推進プロジェクトチーム」
取組名:産学官連携で取組む規格外野菜の商品化![]()
お問合せ先
大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883




