このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

第7節 都市農業の振興と農村の魅力発信による農村に関わる人材の裾野拡大


都市農業は、農業のPR拠点として農業・農村への理解を深める重要な役割を発揮しています。また、農村に関心と関わりを持つ農村関係人口(*1)の拡大に当たっては、農村の支えとなる人材の裾野を拡大する必要があり、農村のファンとも言うべき「農村関心層」を創出することが重要です。

本節では、都市農業の振興、農業体験の推進や棚田・農業遺産等の魅力の発信の取組について紹介します。

*1 第6章第1節を参照

(1)都市農業の振興

(約64%の都市住民が都市農地を残していくべきと回答)

図表6-7-1 都市住民の都市農業・都市農地の保全に対する考え方

データ(エクセル:29KB

都市農業は、都市という消費地に近接する立地特性を背景に、新鮮な農産物の供給に加えて、農業体験・学習の場や災害時の避難場所の提供、都市生活の安らぎ提供といった多様な機能を有しています。

令和7(2025)年11月に都市住民を対象に実施したアンケート調査によると、64.3%が都市農地を保全すべきと回答しており、都市農業の多様な役割を評価している住民が多いことがうかがわれます(図表6-7-1)。

農林水産省では、都市住民と共生する農業経営の実現のため、農業体験や農地の周辺環境対策、防災機能の強化等の取組を支援することにより、多様な機能を有する都市農業を振興しています。

(都市農地貸借法に基づき貸借された農地面積は拡大傾向)

生産緑地制度(*1)は、良好な都市環境を形成するため、市街化区域内の農地の計画的な保全を図るものです。全体としては市街化区域内の農地面積が減少する中で生産緑地地区(*2)の面積はほぼ横ばいで推移しており、令和6(2024)年は1万1千haとなっています(図表6-7-2)。

また、都市農業の振興を図るため、意欲ある農業者による耕作や市民農園・体験農園の整備等による都市農地の有効活用も促進しています。都市農地貸借法(*3)に基づき貸借が認定・承認された農地については、農地所有者が意欲ある農業者等に安心して貸付けすることができ、その面積は、令和6(2024)年度は136haと前年度に比べ16.4%増加しました(図表6-7-3)。

農林水産省では、都市農地貸借法の仕組みに基づく制度の円滑かつ適切な活用を通じ、貸借による都市農地の有効活用を図ることとしています。

図表6-7-2 市街化区域内農地面積

データ(エクセル:32KB

図表6-7-3 都市農地貸借法による貸借面積

データ(エクセル:31KB

*1 三大都市圏特定市における市街化区域農地は宅地並に課税されるのに対し、生産緑地に指定された農地は軽減措置が講じられる。

*2 市街化区域内の農地で、良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設等の敷地として適している原則500m2以上の農地

*3 正式名称は「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」

(事例)都市農業ならではの消費者と連携した幅広い活動を展開(神奈川県)

神奈川県横浜市(よこはまし)の苅部(かるべ)農園の代表である苅部博之(かるべひろゆき)さんは、同市保土ケ谷区(ほどがやく)と旭区(あさひく)の15か所に点在する3haの農地で、オリジナル野菜を含め年間100種類以上の野菜や果樹を生産しています。収穫した農産物の約8割を同農園が運営する直売所で販売し、地産地消にも取り組んでいます。

また、同農園の農地は都心へのアクセスが良い住宅地に点在することから、農業を理解してもらう取組として、近隣住民に畑に来てもらい、自身の取組や想いを伝える「畑の見学ツアー」を実施しています。このほか、地元の小学生向けに農業授業も実施しており、農業体験だけではなく、収穫した農産物を給食に使用してもらい、学校と協力して販売会を開催しています。

同農園では、将来的には農家レストランを開くことを目標としており、都市農業ならではの消費者を意識した取組を実施していくこととしています。

神奈川県横浜市

直売所で販売している野菜

資料:苅部農園

畑の見学ツアー

資料:苅部農園

(2)農業体験の推進

(農業者や企業が開設する市民農園数は増加傾向で推移)

都市農地等を活用した市民農園や体験農園は、消費者が身近に農と触れ合う場として、気軽に農産物の栽培や収穫等を体験できる機会を提供することにより、農業に対する関心や理解の醸成に寄与しています。市民農園の農園数は令和7(2025)年3月末時点で4,273農園と、前年に比べ16農園増加しています。これは、都市農地貸借法の制定を契機に、生産緑地を活用した民間企業等による手軽な市民農園が拡大したものと考えられます。

また、簡易な宿泊施設を備えた滞在型の市民農園、いわゆる「クラインガルテン」は、農村関係人口の創出・拡大に寄与することが期待されています。

(事例)地域や人とつながり、二拠点生活を可能とする市民農園を提供(茨城県)

茨城県笠間市

宿泊施設付き市民農園

資料:株式会社マイファーム

茨城県笠間市(かさまし)の笠間(かさま)クラインガルテンでは、宿泊施設付き市民農園や貸し農園等のサービスを提供しており、都市に暮らしながら、もう一つの拠点として地域や人とつながり、農園で草花や野菜を育て、リフレッシュする場所となることを目指しています。

同施設は、令和4(2022)年4月に株式会社マイファームが指定管理者となり、令和7(2025)年4月から同社による運営に移行し、利用者の状況に合わせた家庭菜園のサポートや栽培指導等幅広いサービスを提供しています。首都圏からの利用者が多く、定年退職後の世代に加え、子育て世代の利用者も増えています。また、季節ごとの収穫体験や夏祭り等のイベントが定期的に開催されており、利用者と地域住民の交流につながっています。

今後は、同市の農業振興や移住促進と連携しながら、農ある暮らしを楽しむ拠点として、同施設の取組の横展開を図ることとしています。

(事例)体験農園を通じた地域活性化を実現(東京都)

東京都小金井市

セミナー農園

資料:一般社団法人小金井市観光
まちおこし協会

東京都小金井市(こがねいし)の一般社団法人小金井市観光(こがねいしかんこう)まちおこし協会は、都市農地の保全や、高齢者の活躍、多世代・地域交流を進めるため、東京都がモデル農園として開設した「わくわく都民農園小金井(とみんのうえんこがねい)」を都等との協定に基づき運営しています。

同農園では、都市農業の担い手育成を目的として、50歳以上を対象に、地域の若手農家から栽培について学ぶことができるセミナー農園を設置しています。このほか、農福連携事業を行う福祉農園、農地を活用した多世代・異分野交流を推進する地域農園、小学生を対象とした農体験による学びの機会を提供するこども農園、近隣の保育園と一緒に運営する共菜園の全5種類の農園を運営し、幅広い世代が利用しています。また、地元の農産物の販売や子供向けの無料の食事提供といったイベントを定期的に開催しており、地域の交流の場にもなっています。

同法人では、今後とも、外部への情報発信に力を入れながら、同農園を起点に様々なまちおこしの取組を実施することとしています。

(3)棚田・農業遺産等の魅力の発信

(棚田地域振興法に基づく指定棚田地域は749地域に拡大)

令和7(2025)年4月の改正後の棚田地域振興法により、棚田を核とした地域振興の取組を支援するとともに、棚田地域振興コンシェルジュによる情報提供等を推進しています。

令和7(2025)年度までに、同法に基づき累計で749地域が指定棚田地域に指定されたほか、指定棚田地域において指定棚田地域振興協議会が策定した認定棚田地域振興活動計画は173計画となっています。

また、令和4(2022)年に創設した「つなぐ棚田遺産オフィシャルサポーター制度」により、棚田地域における企業連携を推進しており、令和7(2025)年3月末時点で44の企業・団体等が棚田地域の振興に関する取組を行う公式サポーターとして認定されています。

つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~
URL:https://www.maff.go.jp/j/nousin/tanada/tanadasen.html

(世界農業遺産に新たに2地域が認定)

世界農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業システムをFAOが認定する制度であり、令和7(2025)年8月には、新たに島根県奥出雲(おくいずも)地域と和歌山県有田(ありだ)・下津(しもつ)地域の2地域が認定され、国内の世界農業遺産認定地域は17地域となりました。

また、日本農業遺産は、我が国において重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域を農林水産大臣が認定する制度であり、認定地域は28地域となっています。

農林水産省は、農業遺産地域の魅力を広く発信し、地域活性化を図る取組の一環として、農業遺産地域等の高校生による複数の農業遺産地域の産品を使った食品のアイデアを競う「高校生とつながる!つなげる!ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」を開催しています。

島根県奥出雲地域

和歌山県有田・下津地域

(世界かんがい施設遺産に新たに2施設が認定)

世界かんがい施設遺産は、歴史的・社会的・技術的価値を有し、かんがい農業の画期的な発展や食料増産に貢献してきたかんがい施設をICIDが認定・登録する制度であり、令和7(2025)年9月に、我が国で新たに湯(ゆ)の口(くち)ため池(いけ)・井手(いで)(熊本県山鹿市(やまがし))と竹田(たけた)のかんがい用水群(ようすいぐん)(大分県竹田市(たけたし))の2施設が認定され、国内認定施設数は56施設となりました。世界かんがい施設遺産を活用した、かんがいの歴史と発展の理解促進、地域活性化を図る取組を推進しています。

湯の口ため池・井手(熊本県山鹿市)

竹田のかんがい用水群(大分県竹田市)

(「ディスカバー農山漁村の宝」に27団体と3人を選定)

「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」は「強い農林水産業」、「美しく活力ある農山漁村」の実現に向け、農山漁村の有するポテンシャルを引き出すことによる地域活性化や所得向上に取り組んでいる優良な事例を選定し、全国へ発信することにより、他地域への展開を図る取組です。

第12回目となる令和7(2025)年度には、全国から27団体と3人を選定し、選定数は累計で375件となりました。

農林水産省は、選定された地区の活動を「ディスカバー農山漁村の宝」特設ウェブサイト等で紹介し、情報発信することにより、農山漁村地域の活性化に対する国民の理解の促進に取り組むとともに、農山漁村における所得の向上と雇用の創出を推進しています。

未利用・低利用魚を活用した商品開発を行う団体
(「ディスカバー農山漁村の宝」(第12回選定)のグランプリ受賞)

資料:一般社団法人Local Revolution

ディスカバー農山漁村の宝
URL:https://www.discovermuranotakara.com


お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader