米生産についてのQ&A
令和5年9月1日現在
- 基準値とこれまでの米の検査結果について
Q1.米の放射性物質の基準値はどのように設定されているのですか。
Q2.これまでの検査の結果、基準値を超える米はどのくらいあったのですか。 - 令和5年産米の放射性物質検査について
Q3.令和5年産米の放射性物質検査はどのように行うのですか。
Q4.令和5年産米の放射性物質の検査結果に基づく出荷制限の設定・解除に関するルールを教えて下さい。
Q5.令和2年産米から旧避難指示区域等を除いてモニタリング(抽出)検査に移行したのはなぜですか。 - 令和5年産稲の作付制限について
Q6.令和5年産稲の作付制限の対象区域はどこですか。
Q7.令和5年産稲の作付制限区域では、令和6年産以降の稲の作付はどうなるのですか。 - 令和5年度に農地保全・試験栽培を行う区域について
Q8.農地保全・試験栽培とは何ですか。作付制限とは何が異なるのですか。
Q9.令和5年産米の農地保全・試験栽培の対象区域はどこですか。
Q10.農地保全・試験栽培の対象区域では、試験栽培をし、収穫した米は出荷できないのですか。
Q11.管理計画とは何ですか。 - 令和5年度に作付再開準備を行う区域について
Q12.作付再開準備とは何ですか。農地保全・試験栽培とは何が異なるのですか。
Q13.令和5年産米の作付再開準備の対象区域はどこですか。
Q14.作付再開準備の対象区域では、作付が可能でも、収穫した米は出荷できないのですか。 - 令和5年産米の全量生産出荷管理を行う区域について
Q15.全量生産出荷管理とは何ですか。作付再開準備とは何が異なるのですか。 - 令和5年産米の全戸生産出荷管理を行う区域について
Q16.全戸生産出荷管理とは何ですか。 - 精米・米ぬか
Q17.玄米を精米した場合、放射性物質濃度は変わりますか。 - 生産現場での対応
Q18.生産現場で留意すべき点はありますか。
1.基準値とこれまでの米の検査結果について
Q1.米の放射性物質の基準値はどのように設定されているのですか。
A1.食品中の放射性物質の基準値は、食品を食べ続けたときに、その食品に含まれる放射性物質から生涯に受ける影響が十分小さく安全なレベル(年間1ミリシーベルト)となるよう定めています。
放射性セシウムの基準値は、「飲料水」「牛乳」「乳児用食品」「一般食品」の各々について、食品の摂取量等を基に設定されています。米は一般食品に含まれ、放射性セシウムの基準値は100ベクレル/kgです。
(参考)放射性セシウムの基準値
食品群 | 飲料水 | 牛乳 | 一般食品 | 乳幼児用食品 |
基準値(ベクレル/kg) | 10 | 50 | 100 | 50 |
※放射性ストロンチウム、プルトニウム等を含めて基準値を設定
Q2.これまでの検査の結果、基準値を超える米はどのくらいあったのですか。
A2.米については、放射性セシウム濃度が基準値を超えない米のみを出荷するため、作付制限、吸収抑制対策及び収穫後の検査を組み合わせた安全確保の取組を実施しています。
17都県(※1)の基準値超過割合は平成23年産米では2.2 %でしたが、24年産米では0.0008 %、25年産米では0.0003 %、26年産米では0.00002%に減少しました。27年産米以降は、基準値超過はありません。
米の放射性物質の検査結果(令和5年3月31日現在)
平成23年産 基準値超過割合 |
平成24年産 基準値超過割合 |
平成25年産 基準値超過割合 |
平成26年産 基準値超過割合 |
平成27年産~令和3年産 基準値超過割合 |
令和4年産 | |
2.2% | 0.0008% | 0.0003% | 0.00002% | 0% | 基準値超過割合 | 検査点数 |
0% | 274,912袋 |
(※1)青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県
2.令和5年産米の放射性物質検査について
Q3.令和5年産米の放射性物質検査はどのように行うのですか。
A3.令和5年産米の放射性物質検査は国が定めた検査の考え方(※2)に基づいて行うこととしており、令和4年産米の検査結果等を踏まえ、対象自治体17都県においては、米が摂取量の多い品目であることや、地域の生産状況を勘案しながら、各自治体が必要に応じて、検査を行うこととなります。
福島県では、上記考え方に関わらず、避難指示があった区域等においては全袋検査を行うこととしています。
(※2)食品中の放射性物質に関する「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」(令和5年3月30日改正)(外部リンク)
Q4.令和5年産米の放射性物質の検査結果に基づく出荷制限の設定・解除に関するルールを教えて下さい。
A4.地域で生産される米の全量を把握し、管理計画の下で全袋検査を行う地域では、地域の米を適切に管理・検査する体制が整備されていることから、基準値を下回ったものについては順次出荷することができます(基準値を超過したものについては、隔離・廃棄)。
その他の地域では、基準値を超える放射性セシウムが検出された場合は、基準値を超える放射性セシウムが再度検出され、地域的な広がりが確認された場合に、出荷制限が指示されます。その後、管理計画により地域の米を適切に管理・検査する体制が整備された場合は、出荷制限の一部解除が認められ、基準値を下回ったものを出荷することができます。
A5.放射性セシウム吸収抑制対策や、交差汚染防止対策が確立され、生産現場における対策が徹底されたことにより、平成27年産から基準値超過が出ていません。このため、令和2年産米より、避難指示があった区域等(※3)を除いてモニタリング(抽出)検査に移行しました。
令和4年産米からは、避難指示があった区域等のうち広野町及び川内村がモニタリング(抽出)検査に移行し、令和5年産米からは、田村市も移行することになっています。
(※3)田村市、南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、川俣町(旧山木屋村)
3.令和5年産稲の作付制限について
Q6.令和5年産稲の作付制限の対象区域はどこですか。
A6.令和5年産稲の作付制限は、立入が制限されている帰還困難区域が対象となっており、具体的には、南相馬市、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村及び飯舘村の7市町村の一部地域が対象となっています。
帰還困難区域では、稲の作付だけでなく営農を行うことができません。
Q7.令和5年産稲の作付制限区域では、令和6年産以降の稲の作付はどうなるのですか。
A7.令和6年産以降の稲の作付については、今後、避難指示区域の見直しの状況を踏まえて検討されることとなります。
4.令和5年度に農地保全・試験栽培を行う区域について
Q8.農地保全・試験栽培とは何ですか。作付制限とは何が異なるのですか。
A8.農地保全・試験栽培区域では、避難指示により区域内での営農が制限されており、一般の生産者の作付はできませんが、帰還困難区域である作付制限区域とは異なり、区域内への立入りが可能であり、可能な範囲で、除染後農地の保全管理や市町村の管理の下での試験栽培を実施します。
帰還困難区域でも、特定復興再生拠点が設けられ、管理計画に位置付けられれば、農地保全・試験栽培を行うことが可能です。
Q9.令和5年産米の農地保全・試験栽培の対象区域はどこですか。
A9.令和5年産米の農地保全・試験栽培の対象区域は、下表のとおりです。
【農地保全・試験栽培の対象区域】
市町村名 | 対象区域 |
双葉町 | (1)平成25年5月7日付け指示により設定された避難指示解除準備区域 (2)帰還困難区域のうち、平成29年9月15日に認定された特定復興再生拠点区域 |
浪江町 | 帰還困難区域のうち、平成29年12月22日に認定された特定復興再生拠点区域 |
飯舘村 | 帰還困難区域のうち、平成30年4月20日に認定された特定復興再生拠点区域 |
Q10.農地保全・試験栽培の対象区域では、試験栽培をし、収穫した米は出荷できないのですか。
A10.農地保全・試験栽培区域で栽培された米は、出荷が制限されており、廃棄することになっています。ただし、管理計画に基づく管理が行われ、全袋検査により、基準値以下が確認されたものについては、試食等は可能です。
Q11.管理計画とは何ですか。
A11.管理計画は、農地保全・試験栽培、作付再開準備及び全量生産出荷管理の対象区域で生産される米の全量管理、全袋検査を行うために、県及び関係市町村が作成する計画です。管理計画のポイントは以下のとおりです。
- 地域で稲を作付した全てのほ場を把握し、除染や吸収抑制対策の実施状況を確認して台帳に整理
- 台帳に基づき、全てのほ場の作付状況を現地確認
- 収穫された米の乾燥、保管場所を把握し、全袋にバーコードを貼付(全量管理)
- 全袋(飯米、縁故米を含む)をもれなく検査
- 検査の結果、基準値を超える米は隔離・処分し、基準値以下の米は順次出荷(ただし、農地保全・試験栽培区域は除く)
5.令和5年度に作付再開準備を行う区域について
Q12.作付再開準備とは何ですか。農地保全・試験栽培とは何が異なるのですか。
A12.作付再開準備区域では、住民の帰還や農地の除染等の状況に応じて、県及び関係市町村が管理計画を策定し、作付再開に向けた実証栽培を実施します。
実証栽培で生産される米については、管理計画に基づき、県及び関係市町村による全量管理の下、全袋検査により基準値以下のものは出荷・販売等が可能です。
一方、農地保全・試験栽培区域では、避難指示により区域内での営農は試験栽培を除き制限されており、試験栽培で収穫した米については原則廃棄となります。
Q13.令和5年産米の作付再開準備の対象区域はどこですか。
A13.令和5年産米の作付再開準備の対象区域は、下表のとおりです。
【作付再開準備の対象区域】
市町村名 | 対象区域 |
富岡町 | 帰還困難区域のうち、平成30年3月9日に認定された特定復興再生拠点区域 |
大熊町 | (1)平成24年11月30日付け指示により設定された避難指示解除準備区域 (2)帰還困難区域のうち、平成29年11月10日に認定された特定復興再生拠点区域 |
葛尾村 | 帰還困難区域のうち、平成30年5月11日に認定された特定復興再生拠点区域 |
Q14.作付再開準備の対象区域では、作付が可能でも、収穫した米は出荷できないのですか。
A14.作付再開準備の対象区域では、実証栽培で生産される米について、管理計画に基づき、県・市町村による全量管理を行い、全袋検査により基準値以下のものは出荷・販売することが可能です。
6.令和5年産米の全量生産出荷管理を行う区域について
Q15.全量生産出荷管理とは何ですか。作付再開準備とは何が異なるのですか。
A15.前年が作付再開準備の地域及び前年産で基準値超過が検出された地域において、県及び関係市町村が管理計画を策定し、稲を作付した全ほ場を台帳に整理し、この管理計画に基づき、吸収抑制対策等を徹底するとともに、飯米や縁故米を含む生産量の全量を把握し、全袋検査を行います。
全量生産出荷管理区域では、基本的に対象区域の全域で作付を行い、全袋検査で基準値以下となった米は、順次出荷・販売することができます。
なお、令和5年産の全量生産出荷管理を行う区域は、ありません。
7.令和5年産米の全戸生産出荷管理を行う区域について
Q16.全戸生産出荷管理とは何ですか。作付再開準備とは何が異なるのですか。
A16.前年が全量生産出荷管理の地域であって前年産米で基準値超過が検出されなかった地域において、県の管理の下、農家単位で吸収抑制対策を徹底するとともに、全戸検査を行います。
なお、令和5年産の全戸生産出荷管理を行う区域は、下表のとおりです。
【全戸生産出荷管理の対象区域】
市町村名 | 対象区域 |
大熊町 | 平成24年11月30日付け指示により設定された居住制限区域 |
8.精米・米ぬか
Q17.玄米を精米した場合、放射性物質濃度は変わりますか。
A17.農林水産省において、放射性セシウムを含む平成23年産の玄米(40~160 ベクレル/kg)を用いて精米試験を行い、放射性セシウム濃度を測定しました。
その結果、
- 精米中の放射性セシウム濃度は、最も高い場合でも玄米中の放射性セシウム濃度の約10分の4
- 米ぬか中の放射性セシウム濃度は、最も高い場合でも玄米中の放射性セシウム濃度の約8倍
となりました。
また、福島県農業総合センターの研究によれば、精米及び炊飯試験の結果、炊飯した米(ご飯)中の放射性セシウム濃度は、玄米中の放射性セシウム濃度の約10分の1となりました。
これらの試験結果から、玄米で基準値以下に管理していれば、精米・炊飯後の米(ご飯)の放射性セシウム濃度は基準値を確実に下回ることが分かります。
なお、米ぬかについては、食品や飼料、肥料、きのこ菌床用培地等に利用されますが、関係する事業者が、
- 玄米中の放射性セシウム濃度に加工係数「8」(玄米中の放射性セシウム濃度に対する米ぬか中の放射性セシウム濃度の比率)を乗じて得られる米ぬか中の放射性セシウム濃度の推計値、又は
- 米ぬか中の放射性セシウム濃度の実測値
を踏まえて、米ぬかを用いた製品が用途毎の暫定許容値等を超えないよう管理を行っています。
米ぬかは米油の原料としても利用されますが、農林水産省において、放射性セシウムを含む平成23年産の玄米(11~150 ベクレル/kg)に由来する米ぬかを用いて米油を製造する試験を行い、放射性セシウム濃度を測定しました。その結果、最も高い濃度の放射性セシウムを含む玄米に由来する米ぬかを用いた場合も含め、米油中の放射性セシウム濃度は全て検出限界値(4 ベクレル/kg)未満でした。
9.生産現場での対応
Q18.生産現場で留意すべき点はありますか。
A18.農林水産省では、福島県及び各研究機関と協力しながら、放射性セシウム濃度の高くなる要因とその対策について取りまとめました。
生産現場における留意事項として、
- 土壌中の交換性カリ含量が25 mg/100gを下回っている水田では、玄米中の放射性セシウム濃度が高い傾向があることから、カリ施肥によって土壌中の交換性カリ含量を25 mg/100g程度にした上で、地域の慣行の施肥を行うべきこと
また、稲は生育初期にセシウムを吸収する傾向があることから、同じカリ肥料でも速効性である塩化カリを基肥施用又は分げつ期の早期に追肥することが望ましいこと (なお、土壌中の交換性カリ含量が既に稲作に必要な水準を超えている場合は、カリ肥料の投入量を増やしても効果はありません) - 稲のセシウム吸収には、土壌中の粘土鉱物のセシウム固定力が影響している可能性があり、砂質土、腐植質の多い黒ボク土等の固定力の弱い土壌は注意が必要であること
- 耕うんが浅い場合は、土壌表層に放射性セシウムがたまり、表層に根張りが集中し、稲が放射性セシウムを吸収しやすくなるため、深耕等により放射性セシウムを土壌中のより深い部分まで分散させるとともに作土層を拡大して根張りが深くなるよう改善すること
などがあげられています。
水田に流入する水については、
- 含まれる放射性セシウムのうち、溶存態のセシウムは作物が直接吸収できるのに対して、懸濁態のセシウムは作物が直接吸収し難く、作物への移行は基本的に小さいと考えられること
- ため池や水路等の水質調査によると、通常は検出下限値(セシウム134、137とも1ベクレル/kg程度)未満であり、大雨時などの濁水では懸濁体のセシウムにより濃度上昇が見られることはあるが、一時的なものであること
- 調査において、こうした濁水をろ過した水に含まれる溶存態のセシウムは検出下限値未満であったこと
から、水からの影響は限定的だと考えられます。また、カリ肥料等の施用によって水から稲へのセシウムの移行も低減できることが分かったため、水からの移行を低減する観点からもカリ肥料等の施用を徹底することが必要です。
一方で、玄米中の放射性セシウム濃度が土壌からの移行だけで説明することが難しい事例も一部にはあることから、水からの影響については、引き続き調査を行うこととしています。
上記の研究成果とあわせて、下の資料もご活用ください。
- 「米の生産現場において留意すべきポイント」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/pdf/120710_komeq17_rev.pdf(PDF:166KB)
お問合せ先
農産局穀物課
代表:03-3502-8111(内線4787)
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