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中央卸売市場における業務運営について

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中央卸売市場における業務運営について


                                    制    定            平成12年3月31日
                                                              12食流第746号
                                    一部改正            平成17年1月31日
                                                              16総合第1530号
                                    一部改正            平成23年4月13日
                                                              22総合第1791号
                                    一部改正            平成26年4月  1日
                                                              25食産第4958号
                                    一部改正            平成27年3月25日
                                                              26食産第4619号
                                    一部改正            平成28年3月30日
                                                              27食産第6090号

  中央卸売市場における業務運営については、卸売市場法(昭和46年法律第35号。以下「法」という。)及び法に基づき各中央卸売市場で定められている業務規程により行われているところであるが、平成28年1月に、第10次卸売市場整備基本方針(以下「基本方針」という。)が定められたことを踏まえ、中央卸売市場における今後の業務運営に当たって特に留意すべき点について、下記のとおり考え方を示したので、これらに留意の上、卸売市場制度の適切かつ円滑な運用について、特段の配慮をお願いする。


第1  中央卸売市場の業務運営の基本
1  経営戦略的な視点を持った市場運営の確保
(1)  経営展望の策定
  消費者ニーズの多様化、農林水産物の国内生産・流通構造の変化、生鮮食料品等流通の国際化など卸売市場をめぐる環境が変化し、卸売市場に期待される機能・役割が一層多様化する中で、中央卸売市場が我が国の生鮮食料品等の流通の基幹的インフラとして今後とも健全に発展し、その機能が十全に発揮されるためには、卸売市場をひとつの経営体として捉え、将来を見据えた経営戦略的な視点から、当該市場の将来方向を検討し、実行に移す体制を構築することが必要となっている。
  このため、開設者にあっては、各市場が置かれている状況について客観的な評価を行った上で、多様な市場関係者が一丸となり、経営戦略的な視点を持って、当該市場のあり方や運営方針等を明確化した経営展望を早期に策定するとともに、当該経営展望に即した市場運営を計画的に実施するものとする。
  また、基本方針に規定する再編基準に該当する中央卸売市場においては、取り組む再編措置の内容を踏まえた構造改革的な戦略を構築するため、経営展望の策定又は見直しを行うものとする。
  経営展望の策定に当たっては、各市場の立地条件や強み・弱み等を踏まえ、目指すべき卸売市場としてのビジネスモデルの方向等を基本戦略として定めるとともに、開設者及び市場関係業者それぞれが取り組むべき具体的な内容を行動計画として定め、明確化するものとする。
  なお、経営展望の策定に当たっての具体的な考え方について別紙1のとおり作成したので、参考とされたい。
(2)  卸売市場の運営体制の整備
  中央卸売市場の運営に経営戦略的な視点を導入し、市場全体としての意思決定を的確に行っていく上では、独立した意思決定、経営責任の明確化、自主性の発揮等が期待できる運営体制の整備が必要となっている。
このため、開設者にあっては、市場運営に当たって、地方公営企業法(昭和27年法律第292号)に基づく管理者制度(地方公営企業の業務の執行に当たる者として管理者を置き、経営についての権限を大幅に付与し、管理者の創意工夫により自主的に企業経営に当たることができるようにした仕組み)の活用も視野に入れて対応するものとする。
  なお、管理者の権限は、地方公営企業法において地方公共団体の長に留保されている権限(予算調製権、議案提出権(地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づく指定管理者の指定、指定の期間の設定等)、決算の審査及び認定の付議、過料を科する権限(法第50条)、法令の特別の定めによる長の権限(大臣への許認可申請等(法第9条、第11条、第13条の3、第14条等))を除き、各市場の実情に応じて設定するものとする。
(3)  効率的な運営のための民間能力の活用
  中央卸売市場の運営に経営戦略的な視点を導入した場合、利益の獲得を目指す一方で、経費負担の削減を徹底していく必要がある。
このため、開設者にあっては、民間能力の活用による住民ニーズへの的確な対応とともに、経費の削減を図るため、市場施設の建設、維持管理等について民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)に基づくPFI手法の活用や、市場施設の管理について地方自治法に基づく指定管理者制度の導入を積極的に推進するものとする。

2  適正かつ健全な市場運営の確保
  中央卸売市場の運営に当たっては、1の経営戦略的な視点を持った市場運営の確保と併せて、中央卸売市場における適正かつ健全な運営を確保することにより生鮮食料品等を国民へ安定的に供給するという公的な役割を果たしていくことが引き続き重要である。
  そのためには、卸売業者、仲卸業者といった中央卸売市場の関係事業者の経営の健全性が確保されている必要があるほか、当該事業者による売買取引が各種法令に即して適正に行われている必要があり、仮にそうでない場合は、開設者として、当該事業者に対し、必要な監督措置を講じる必要がある。
  このため、第3においては中央卸売市場の関係事業者、第4においては中央卸売市場における売買取引について、それぞれ特に留意すべき事項を示しているので、開設者にあっては、これらの事項に十分に留意の上、中央卸売市場における適正かつ健全な運営の確保に万全を期すものとする。

第2  市場間での役割分担と連携強化
  現在の中央卸売市場の配置状況を踏まえ、大規模な中央卸売市場と中小規模の中央卸売市場との間での機能・役割の分担の明確化を図った上で、地方卸売市場も含めた複数の卸売市場間における連携による効率的な流通ネットワーク構築に努めるものとする。
  その際、経営展望に即して、周辺の卸売市場と連携した流通を行う拠点的な役割を担う中央卸売市場においては、大型車両にも対応可能な保管・積込施設、全国の産地や卸売市場との間での情報の迅速な処理を行うために必要な情報処理施設等の整備・配置を計画的に推進するものとする。また、集荷の共同化、双方向・相互融通での荷揃え、販売の相互連携等の複数の卸売市場間における効果的な連携を図るものとする。

第3  中央卸売市場の関係事業者
1  卸売業者
(1)  純資産額
  開設者にあっては、純資産額が、法第19条第1項の規定に定められた純資産基準額を下っている又は下るおそれがある卸売業者については、速やかに基準額以上となるよう指導するとともに、統合等による経営規模の大型化と経営の健全化について指導するものとする。
  また、同一の取扱品目の部類であって、2以上の市場で卸売の業務の許可を受けている卸売業者にあっては、その許可を受けている各市場ごとの法第19条の規定により定められた純資産基準額を合算した額が、当該卸売業者の純資産基準額となる。開設者にあっては、該当する卸売業者に対して、この旨を周知するものとする。
  なお、卸売業者は、法第20条第1項の規定に基づき、農林水産大臣(卸売市場法施行規則(昭和46年農林省令第52号。以下「省令」という。)第34条の規定により権限を委任された地方農政局長)に対し、省令別記様式第2号により作成する純資産額調書を提出することが義務づけられているところであるが、純資産額調書は、事務負担軽減の観点から、電磁的記録媒体により提出しても差し支えない。
(2)  財産の状況を記載した書類の提出
  中央卸売市場に対する出荷者の信用を維持するためには、農林水産大臣が卸売業者の支払担保能力をきめ細かく把握しておく必要があることから、卸売業者について、
  (a)  流動比率が1を下った場合
  (b)  自己資本比率がO.1を下った場合
  (c)  3期連続して経常損失を生じた場合
  (d)  純資産額が純資産基準額を下った場合
には、法第20条第2項の規定により、財産の状況を記載した書類(省令別記様式第3号により作成する残高試算表)の一定期間ごとの提出の義務を課しているところである。開設者にあっては、該当する卸売業者に対して、この旨を周知するものとする。
  なお、残高試算表は、事務負担軽減の観点から、電磁的記録媒体により提出しても差し支えない。
(3)  事業報告書
  卸売業者は、法第28条の規定に基づき、農林水産大臣に対し事業年度ごとに、省令別記様式第1号により作成する事業報告書を提出することが義務づけられているところであるが、事業報告書は、事務負担軽減の観点から、電磁的記録媒体により提出しても差し支えない。
  また、開設者にあっては、次に示す事業報告書の作成に当たっての留意事項を卸売業者に周知の上、事業報告書が適正に作成されるよう指導するものとする。
  (a)   内部組織に関する記載事項について
    ア  省令別記様式第1号の第1の3の(2)の「役員の略歴及び持株数又は出資口数」における「略歴」については、親会社、子会社との帰属関係が明確になるよう記載する。
    イ  省令別記様式第1号の第1の3の(4)の「大口株主の名簿」については、当該株主が「株主構成」の区分のどれに属しているかを括弧書で付記する。
  (b)   兼業業務及び支配関係法人に関する記載事項について
    ア  省令別記様式第1号の第1の5の(1)の「附帯業務の概況」及び(2)の「兼業業務の概況」における「兼業業務」については、中央卸売市場における卸売業務から独立した一の営業であって専ら本来業務である卸売業務を補完するための「附帯業務」と区別されるものであり、例えば、円滑に卸売業務を営むためにこれに附帯して行う内臓販売、魚木箱製造、製氷等は「附帯業務」に、国土交通大臣の許可を受けて行う倉庫業、独立して営利のために営む製氷業等は「兼業業務」に分類して記載する。
    イ  省令別記様式第1号の5の(3)の「他の法人に対する支配関係の概要」における「事業の内容」については、卸売業(親会社である卸売業者との間における取引金額については、これが明確になるよう「売上高」に括弧書で内数を記載する。)、冷蔵倉庫業、不動産業等具体的に記載する。
(4)  区分経理
  卸売業者の適正な経理を推進するとともに、出荷者が卸売業者の財務状況を正確に把握できるようにするため、法第30条の規定により、卸売業者は、自己の計算による取引と委託者の計算による取引とを帳簿上区分して経理しなければならないこととしている。
  開設者にあっては、次の区分に従い、日常において発生する債務である受託販売未払金、手形、買掛金及び預り金について、それぞれの取引の区分に応じて、卸売業者が適切に管理及び区分経理するよう指導するものとする。
  (a)   受託
    ア  受託販売未払金
        受託物品の販売により発生した売上金額から受託手数料、委託者の負担すべき費用及び(a)のウの荷主預り金を除いた後の未払金で、(a)のイの支払手形(受託)以外のものを計上するものとする。
    イ  支払手形(受託)
        売買仕切金の未払額を手形により支払う場合その額を計上するものとする。
    ウ  荷主預り金
        受託に係る委託者からの要請により一時的に預っている場合その額を計上するものとする。
  (b)   買付け
    ア  買掛金
        買付集荷に基づいて発生した営業上の未払金で、(b)のイの支払手形(買付け)以外のものを計上するものとする。
    イ  支払手形(買付け)
        買付集荷した場合の未払額を手形により支払う場合その額を計上するものとする。
    ウ  預り金(買付け)
        買付先の要請により決済時に一時的に預っている場合その額を計上するものとする。
  (c)   その他
    ア  買掛金(その他)
        (a)及び(b)以外の取引において発生した未払金で、(c)のイの支払手形(その他)以外のものを計上するものとする。
    イ  支払手形(その他)
        支払手形(受託)及び支払手形(買付け)以外に手形で支払う場合その額を計上するものとする。
    ウ  預り金(その他)
        荷主預り金及び預り金(買付け)以外の預り金を計上するものとする。
(5)  財務・会計に関する指導
  卸売業者は、出荷者から卸売のための販売の委託を受けて生鮮食料品等の卸売をする業者であるため、常に一定の財産の状況を保ち、健全な経営を行うことが必要である。
  このため、法第51条第2項の規定により、卸売業者の財産の状況が
  (a)  流動比率が1を下った場合
  (b)  自己資本比率が0.1を下った場合
  (c)  3期連続して経常損失を生じた場合
には、農林水産大臣が、必要な改善措置をとるべき旨を命ずることができることとしている。
  また、法第51条第3項の規定により、農林水産大臣又は開設者は、卸売業者に対し、当該卸売業者の会計に関し必要な改善措置をとるべき旨を命ずることができることとされている。
  開設者にあっては、次に示す事項に留意の上、卸売業者の財務の健全性及び経理処理の適正化について適切な指導を行うものとする。
  (a)  卸売業者に対して財務検査を行う場合は、卸売業者の資産の確認、資産の評価等の一層の厳格化を確保するため、公認会計士等の積極的活用を図る。
  (b)  会社法(平成17年法律第86号)第431条及び中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)第57条の6において、株式会社及び組合の会計は、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」とされており、この一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行(以下、「企業会計慣行」という。)とは、原則的な企業会計の基準、中小企業の会計に関する指針及び中小企業の会計に関する基本要領等である。卸売業者は、企業会計慣行のうちから1つ採用するものを社内で明確にするとともに、それに基づく適切な決算・経理処理を行うことが求められている。
卸売業者が財務諸表を作成する際には、企業会計慣行を明らかにするとともに、公認会計士等の意見を聴いて、正確な財務諸表を作成するよう指導する。
  (c)  卸売業者の財務の内容に関しては、特に、貸付金、借入金、産地への価格保証の有無、支配関係法人等への借入債務の保証の状況、卸売業務に係る支配関係法人との取引内容、役員と会社との取引の状況について注視して適切な指導に努める。
  なお、開設者が実施した卸売業者に対する検査の結果、会計に関する違法行為又は会社の財務状況の重大な欠陥が発見された場合には、速やかに農林水産省にその内容を報告するものとする。
(6)  業務に関する指導
  卸売業者は、市場機能の基幹的な担い手として、日々大量の物品の集荷・分荷を行うことを業務としていることから、その業務が適正に実施されることを担保することが必要である。
  このため、法第49条第2項の規定により、農林水産大臣は、卸売業者が法令等に違反した場合には、是正措置命令、許可取消し等の処分を、また、法第50条の規定により、開設者は、卸売業者が業務規程等に違反した場合には、是正措置命令等の処分をすることができることとされている。
  さらに、法第51条第3項の規定により、農林水産大臣又は開設者は、卸売業者に対し、当該卸売業者の業務に関し必要な改善措置をとるべき旨を命ずることができることとされている。
  開設者にあっては、第4に示す事項に留意の上、卸売業者の業務について適切な指導を行うものとする。
  なお、開設者が実施した卸売業者に対する検査の結果、業務に関する違法行為又は著しく不当な行為(不正確な売買仕切書の作成等)が発見された場合には、速やかに農林水産省にその内容を報告するものとする。
  また、(5)及び(6)に関する指導に関し、国と開設者との役割分担や連携と指導監督措置の執行手順についての具体的考え方を別途示すこととしているので、参考とされたい。
(7)  統合・再編の推進
  基本方針においては、卸売業者の経営体質の強化を図るため、合併や営業権の譲受け等による統合大型化や市場を越えた卸売業者間の資本関係の構築による連携関係の強化を図ることとしているが、開設者にあっては、経営展望を策定する中で、卸売業者の統合・再編についても検討し、その計画的な推進を図るものとする。

2  仲卸業者
(1)  財務に関する指導基準
  卸売市場における仲卸しの業務の適正かつ健全な運営を確保するため、仲卸業者は常に安定した財産を保っていることが必要である。
このため、開設者は各市場の実情に応じた財務基準を定め、法第51条第4項で定めるところにより、仲卸業者の財産の状況がこの基準に該当した場合には必要な改善措置をとるべき旨を命ずることができることとしている。
  開設者にあっては、仲卸業者の経営規模や各市場における位置づけ等も踏まえて、仲卸業者に対する改善措置命令を発出する場合及び当該命令に基づき仲卸業者が改善計画書を作成する場合の留意事項等の具体的な経営改善に係る指導監督指針を定め、これに即したきめ細かな指導を行うものとする。
(2)  統合・再編の推進
  基本方針においては、仲卸業者の経営体質の強化を図るため、合併や営業権の譲受け等による統合大型化等を図ることとしているが、開設者にあっては、経営展望を策定する中で、仲卸業者の統合・再編についても検討し、その計画的な推進を図るものとする。
(3)  卸売業者との連携
  卸売市場が有する機能を十分に発揮していくためには、卸売業者及び仲卸業者が、それぞれの機能を発揮しつつ、共同出資会社の設立や役職員の兼任を伴わない資本提携等により、連携・協働して加工処理や貯蔵・保管業務等卸売市場の機能を強化することが必要である。
  開設者におかれても、卸売業者及び仲卸業者の連携・協働について、適切な施策を講ずるものとする。
(4)  市場内での小売行為
  中央卸売市場は、生鮮食料品等の卸売を行う場として国の財政的支援の下に設置されたものであり、また、中央卸売市場の仲卸業者は小売業者等への販売活動を行うために市場内の店舗の使用を許された者である。
したがって、仲卸業者が市場内の店舗を利用して一般消費者に対して小売活動を継続して行うなど恒常的な活動である場合は、原則として卸売市場法の目的外の使用に該当する行為である。このため、開設者にあっては、仲卸業者に対して、当該市場内においては、卸売市場法の本旨に沿った事業活動に専念するよう適切な指導を行うものとする。
  なお、年数回から月数回の頻度以下で限定的に実施される「市場まつり」、「市場開放デー」等のイベントにおいて中央卸売市場内の小売活動を行う場合は、卸売市場法の目的外の使用に該当しない。ただし、関係者間の合意形成の下、卸売市場への市民の理解醸成や生鮮食料品等の需要拡大等に資するよう適切な実施に努めるものとする。その際、卸売市場は生鮮食料品等の卸売を行う場であることを前提としつつ、卸売業務への影響や市場内の衛生管理、入場者の安全の確保等に十分留意するとともに、市民の入場可能時間の設定等細部について事前に開設者、市場関係業者、地域社会等関係者間で必要な調整を行うものとする。

3  売買参加者   
  売買参加者は、中央卸売市場において卸売業者から卸売を受けることにつき市場及び取扱品目の部類ごとに業務規程で定めるところにより開設者の承認を受けた者である。
  売買参加者は、仲卸業者とともに卸売市場における買い手として機能し、適切な取引、公正な価格形成等に寄与しているとともに、大規模な集荷・分荷機能を持つ市場からの情報を通じた取引を行う際に周辺市場の売買参加者を活用することも想定されることから、その承認に当たっては、卸売市場の適正な流通を阻害するおそれがない場合は、開設区域外の卸売業者も対象とするなど、効率的な流通の確保について配慮しつつより開放的な運営を図るものとする。
  また、経営展望に基づき輸出に取り組む市場の開設者にあっては、業務規程等の見直しや関係者間の合意形成など環境整備を図り、外国のバイヤー等を売買参加者として承認すること等に努めるものとする。

4  関連事業者   
  関連事業者は、卸売市場の業務の直接かつ健全な運営を確保するため必要があると開設者が認めるときに、卸売市場内において市場機能の充実や市場利用者の便益を提供するための業務を営むことにつき開設者より承認を受けた者である。
  関連事業者については、卸売市場が食料品総合卸売センターとしての機能や、加工、配送、保管等のニーズに対応した機能の充実を図る上でも重要なことから、その体質強化と経営の活性化を図るよう適切な指導を行うものとする。
 
第4  中央卸売市場における売買取引 
1  売買取引の原則
  中央卸売市場における売買取引については、法第34条で公正かつ効率的でなければならない旨を規定し、また、法第46条及び第47条で開設者及び卸売業者は卸売予定数量及び取引結果を公表しなければならない旨を規定するなど、公正・公開・効率を中央卸売市場における売買取引の原則とすることを明確化しているところである。
  開設者にあっては、中央卸売市場における効率的な流通や公正かつ透明な価格形成が行われるよう、卸売業者、仲卸業者、売買参加者その他関係者に対し、適切な指導を行うものとする。
  特に、以下に示す事項に留意の上、適正な卸売業務が行われるよう、卸売業者に対する適切な指導をお願いする。
(1)  販売原票の厳正な管理
  販売原票は、卸売市場における取引の原始記録であり、取引終了後の出荷者に対する仕切書の作成、卸売の相手方に対する販売代金の請求書の作成等の基礎となる最も重要な帳票である。
  このため、各市場における公正で円滑な取引を確保する観点から、開設者は、卸売業者に対して販売原票の作成を義務づけ、その作成に当たって、
  (a)   販売原票に係る物品が委託物品か買付物品かの区分
  (b)   販売原票を作成した担当責任者
  (C)  原産地
を明記するよう指導するとともに、その作成が適正に行われているかを確認するなど、卸売業者に対する指導監督に努めるものとする。
  また、開設者は、卸売業者が行う販売原票の作成・管理に係る取扱要領を各市場の実情に応じて定めるほか、(2)により販売原票の電子化を行う場合にあっても、電子化された販売原票の適切な管理が行えるよう必要な取扱要領等を定めるものとする。
  なお、販売原票の作成が適正に行われているかを確認するため、卸売業者に対して販売原票の副本の提出を義務づけている開設者にあっては、提出義務を廃止し、検査等の際に確認できるようにしておくか、提出義務を廃止できない場合であっても、申請等の書類の電子化を進めるとともに、提出頻度を下げるものとする。
(2)  販売原票の電子化
  販売原票の電子化は、卸売業務に係る事務処理の円滑化により卸売業者の負担軽減に寄与するとともに、取引結果の保存・管理に優れているため公正な取引の確保にも資するものである。
  販売原票の電子化は、卸売場において取引結果が即時にコンピュータ入力されるシステム(現場入力システム)で行う場合のほか、卸売場において所定の用紙に取引結果を記入し、事務所でこれをコンピュータ入力する場合等、各市場により実態が異なっているところである。
  開設者にあっては、以下に示す事項に留意の上、各市場の実態に応じて、販売原票の電子化を推進するよう努めるものとする。
  (a)  取引内容を記入した販売原票入力票等の所定の用紙及び電子化された販売原票は、一定期間保存する。
  (b) 入力したデータに誤りがないか複数の者で確認するなどのチェック体制を構築する。
  (c)  電子化された販売原票には、その作成時間を明示させるとともに、上書きのできない電磁的記録媒体に保存するなど、事後的なデータの改ざんを防止するための方策を講じる。
  また、作成後に訂正等が発生した場合は、別の電磁的記録媒体等に保存を行うとともに、訂正の日時、訂正者、訂正の内容及びその理由等の訂正履歴が確認できるようにする。
  (d)  電子化された販売原票は、開設者が必要に応じてその内容を確認できるようにしておく。
(3)  適正な仕切事務の確保
  委託物品に係る販売代金の仕切りについては、適正かつ正確な処理が確保されることが必要であることから、開設者にあっては、卸売業者が行う売買仕切りに関する事務について、以下に示す事項に留意の上、卸売業者に対し適切な指導を行うものとする。
  (a)  適正な仕切業務の確保のためには、卸売業者内部の相互牽制態勢の確立が必要であることから、
    ア  販売原票と売買仕切書を作成・管理する部門が分離されていること
    イ  出荷者に送付する売買仕切書には、必ずこれを作成した担当責任者が明記されていること
    ウ  販売原票の内容が売買仕切書に正確に記載されているかをチェックするための部署の設置や販売原票と売買仕切書に係る事務を監督するためのトップマネージメントに直属する内部管理組織が確立されていること
を随時確認し、これが実施されていない場合は、早急な実施を指導するものとする。
  (b)  卸売業者に対して検査を行う際には、販売原票の記載内容と売買仕切書の内容、出荷者に対する売買仕切金の送金状況及び卸売の相手方に対する請求書の内容とを突き合わせて確認するものとする。
  (c)  なお、卸売業務に係る事務処理の円滑化と売買仕切書の正確な作成及び迅速な処理を図るため、販売原票のほか、売買仕切書の作成等に当たっても、電子化の推進を図るよう指導を行うものとする。
(4)  卸売業者による卸売物品の買戻し
  卸売業者が、一定価格で買い戻すことを約した上で卸売をする行為は、物品の需給や品質により価格が決定するという卸売市場の価格形成機能を歪曲するものである。また、買戻しにより取扱高を嵩上げすることは、出荷者等に卸売業者の経営状態を誤認させることとなる。
  開設者にあっては、かかる行為が行われることのないよう卸売業者に対し適切な指導を行うとともに、開設者が卸売の適正かつ健全な運営を阻害するおそれがないと認める場合(例えば、仲卸業者が卸売業者から買い受けた生野菜をカット野菜に加工し、付加価値を付けた上で当該卸売業者に販売する場合等)を除いて、かかる行為が行われていることが認められた場合は、法第45条による卸売市場における売買取引の制限についての措置を講じることも視野に入れ対応するものとする。

2  売買取引の方法
  せり取引については、相対取引と比較して、個々の取引物品ごとに商品評価や検品が厳密に行われるという点や、すべての取引参加者に公平な取引機会を保証し、公正な価格形成が行われるという点が長所である反面、多数の小売買参人の要請でせり単位を小口とする必要があるような場合等においては大量の入荷物をさばききれない点や、短期の価格変動が激しいという点が短所である。
  他方、相対取引については、せり取引と比較して、産地や量販店・業務用等の大口のユーザーが求める安定的な取引関係の構築に資するという点や、取引時間の制約が緩やかで大量の入荷物を随時取引できるという点が長所である反面、取引の透明性が劣る点が短所である。
  このため、売買取引の方法については、法第35条第1項の規定により、市場ごと及び品目ごとに開設者が、
  (a)   せり売又は入札の方法
  (b)  一定の割合をせり売又は入札の方法とし、その他の部分についてはせり売若しくは入札の方法又は相対取引
  (c)  せり売若しくは入札の方法又は相対取引
のいずれかを業務規程で設定することとしている。
  開設者にあっては、市場関係業者の意見を踏まえ、経済的地歩、取扱品目の性質、売手・買手の特徴等の実態を反映するとともに、実需者の要望や価格競争力の弱い出荷者及び中小買受人の安定的な取引機会の確保にも十分配慮して、(a)から(c)までにより適切な売買取引の方法を設定するものとする。その際、(b)の一定の割合の設定については、経営展望や取扱物品の需給動向等も踏まえ、柔軟かつ戦略的に設定するものとする。
  なお、相対取引については、生産及び消費の実態を適正に反映した合理的な価格が形成されるよう、また、零細な仲卸業者や売買参加者が不当に差別的な取扱いを受けることのないよう十分な指導監督を行うものとする。
  また、法第35条第2項の規定により、災害の発生その他省令で定める特別の事情があって、開設者の承認を受けてせり売又は入札の方法により取引することとしている物品を相対取引に変更する場合については、申請書類の電子化を進めるとともに、市場取引の適正化と円滑化を確保するため、次に示す事項に留意の上、適切に取り扱うものとする。
(1)  残品が生じた場合の取扱い
  省令第22条第4号の規定により、せり売又は入札の方法による卸売により生じた残品の卸売をする場合にあっては、相対取引に変更することができることとしている。
この場合、卸売業者が一方的に売り止めを行い、恣意的にせり残品として処理するなど公正な取引を害し、不当な価格を生ずることがないよう指導監督する一方、業務規程に基づき当該取引方法についての承認を行う場合には、残品となった物品の需給動向、品目、時期等を勘案し、円滑な運用に努めるものとする。
  また、承認申請の手続について、構造的に残品が発生する状況が事前に想定される場合にあっては、包括承認を行うなど、弾力的な運用に配慮するものとする。
(2)  予約相対取引の場合の取扱い
  省令第22条第5号の規定により、卸売業者と仲卸業者又は売買参加者との間においてあらかじめ締結した契約に基づき確保した物品の卸売をする場合(予約相対取引)にあっては、相対取引に変更することができることとしている。
  予約相対取引の取扱いについては、次に示す事項に留意するものとする。
  (a)  予約相対取引に係る契約が直前に締結される場合を考慮して、承認申請は当該取引の前日まで受け付け、また、契約書の写しの添付を義務づけている開設者にあっては、事後的に提出することを認めるなど、弾力的な対応に配慮する。
  (b)  予約相対取引に係る開設者の承認については、法第39条第2号前段の規定を適用する場合を除いて、せり・入札・相対のいずれの売買取引の方法でも認められている物品(法第35条第1項第2号の一定の割合以外の部分及び第3号に該当する物品。以下同じ。)を予約相対取引により行う場合は、承認申請等の手続は要しない。
  (c)  予約相対取引に係る数量又は価格を変更する場合の申請については、円滑な取引を推進するため、次により運用し、手続の簡素化を図る。 
    ア  開設者は、あらかじめ一定の変更幅の基準を設け、この基準に適合する予約相対取引の変更については、事前の変更の申請を省略できる。
    イ  アの場合、販売原票に当該予約相対取引に係る数量又は価格の変更について明記するよう卸売業者を指導する。
    ウ  アの変更幅の基準は、物品ごとに、その市場における当該物品に関する過去の価格又は数量の変動の状況を踏まえ、適切な範囲で設定する。
  なお、(a)及び(c)の取扱いについては、せり・入札・相対のいずれの売買取引の方法でも認められている物品について、法第39条第2号前段の規定により取引を行う場合にも適用するものとする。
(3)  せり開始時刻以前の卸売
  省令第22条第6号の規定により、緊急に出港する船舶に生鮮食料品等を供給する必要があるためその他やむを得ない理由により通常の卸売開始の時刻(せり開始時刻)以前に卸売をする場合にあっては、相対取引に変更することができることとしている。
  この場合、次により運用するものとする。
  (a)  開設者は、せり開始時刻以前の卸売を厳正に取り扱うための運用要領を定め承認等の手続を行う。
この運用要領は、各市場のせり開始時刻以前の卸売の状況等を踏まえ、特に、その対象となる物品とその期間については、卸売業者、仲卸業者及び売買参加者の意見を十分に聴いた上で、当該市場における取扱品目の部類ごとに、以下の事項に留意して定める。
    ア  卸売業者は、せり開始時刻以前の卸売に関する承認申請書を前日のあらかじめ定める時間までに提出する。
    イ  卸売業者は、せり開始時刻以前の卸売を行う物品とせり売により卸売を行う物品とを区分し、せり開始時刻以前の卸売を行う物品に、当該物品の卸売の相手方である仲卸業者若しくは売買参加者の名称又はこれらの者を特定する記号及びこれらの者に対する販売数量を記載した紙片(いわゆる割符)を添付するなど、取引の透明性の確保のための措置を講じる。
    ウ  卸売業者は、イのせり開始時刻以前の卸売を行う物品について、あらかじめ明示された仲卸業者又は売買参加者に対してのみ明示された数量の範囲でせり開始時刻以前の卸売を行う。
    エ  卸売業者は、当日のせり取引開始の前に、せり開始時刻以前の卸売を行った物品については、卸売場に当該物品の数量及びせり上場数量を明示する。
    オ  卸売業者は、せり開始時刻以前の卸売に係る物品の販売原票には、せり開始時刻以前の卸売である旨を明記する。
    カ  開設者は、卸売業者がアからオまでの手続に従わなかった場合には、以降のせり開始時刻以前の卸売の承認の量を削減するなど、この取引についての制限を設ける。
  (b)  開設者は、せり開始時刻以前の卸売に係る卸売価格の設定について、同種物品のその市場における卸売価格を基準として、入荷量の状況に応じたきめ細かい価格設定基準を設けるとともに、基準設定及びその見直しに当たっては、関係者による検討委員会を設けるなど市場関係者の意見を反映させるための手続を踏まえる。
  さらに、法第35条第3項の規定により、法第35条第1項第2号及び第3号に掲げる物品は、需給ひっ迫時には、開設者の指示に従い、せり売又は入札によらなければならないこととしているが、開設者にあっては、当該指示を行う場合の判断基準を、市場取引委員会の意見を聴きつつ設けるなど、的確な運用を期すものとする。

3  卸売業者及び仲卸業者の市場外での販売行為
  卸売業者及び仲卸業者による、法第15条第1項又は第33条第2項の許可に係る取扱品目の部類に属する物品(以下「許可物品」という。)の開設区域内での販売について、業務規程において届出又は承認の手続の規定を置いている開設者にあっては、卸売業者及び仲卸業者の市場外での許可物品の販売行為については、次に示す事項に留意の上、適切な運用を図るものとする。
  (a)  「中央卸売市場業務規程例の作成について」(平成11年10月1日付け11食流第3083号食品流通局長通知)別添の業務規程例(以下「業務規程例」という。)第33条及び第42条に定める届出又は承認申請に係る許可物品の販売が、卸売の業務又は仲卸しの業務の適正かつ健全な運営を阻害するおそれがあるかどうかは、その市場における通常の許可物品の供給量が安定的に確保され市場本来の取引秩序が維持できているかどうかにより判断されるものである。
  (b)  業務規程例第33条及び第42条で、市場取引委員会は委員の少数意見にも十分配慮して当該届出又は承認申請に係る販売についての意見を開設者に対して述べる旨を定めているが、この市場取引委員会における少数意見に対する配慮とは、開設者が市場取引委員会での少数意見についても十分に斟酌した上で、届出又は承認申請に係る市場外での販売行為の是非について判断をすることを意味するものである。
  (c)  許可物品以外の物品を市場外で販売する場合や加工業等を兼業で行う場合については、従前どおり、開設者への届出又は承認申請は不要である。
  なお、卸売業者及び仲卸業者の市場外での販売行為は兼業業務に該当するが、兼業業務に係る物品を市場内で保管等をすることは、本業である卸売業務を行うこととして整備した市場施設本来の目的に照らし、不適当な行為であることから、市場外での販売行為を兼業業務として営む場合は、市場外に販売物品の保管等の拠点を設けて行うよう指導する。
  また、仲卸業者に対して、市場外に設置する加工処理等の施設に係る届出を義務づけている開設者にあっては、届出義務を廃止する。

4  差別的取扱いの禁止
  卸売業者は、法第36条第1項の規定により、中央卸売市場における卸売の業務に関し、出荷者又は仲卸業者若しくは売買参加者に対して不当に差別的な取扱いをすることが禁止されている。これは、市場取引は公正に行われなければならず、取引の安全、秩序等の保持の見地から、信用力、取引量、決済方法等に応じた、いわゆる通常の商取引において許容される範囲を超えるような不当な取扱いをしてはならないという趣旨から設けられた規定である。
  開設者にあっては、このような趣旨に反することのないよう、卸売業者、仲卸業者、売買参加者その他関係者を適切に指導するものとする。
  なお、量販店等の大型小売事業者が卸売業者に出資等をすることは禁止されているものではないが、この場合において、卸売業者が当該大型小売事業者からの働きかけを受け、通常の商取引において許容される範囲を超えて、当該大型小売事業者の取引に利するために特定の出荷者、仲卸業者又は売買参加者に便益を与える行為又は不利な取扱いをする行為は、差別的な取扱いを禁止する法第36条第1項の規定に抵触し、公正な売買取引による適正価格の形成にも大きな影響を与えるおそれがある。
  開設者にあっては、かかる差別的な取扱いが行われることがないよう、不断の監視に努めるなど、卸売業務の適正な運営の確保に努めるものとする。

5  受託拒否の禁止
  卸売業者は、法第36条第2項の規定により、許可物品について中央卸売市場における卸売のための販売の委託の申込みがあった場合には、「正当な理由」がなければ、その引受けを拒んではならないとされている(受託拒否の禁止原則)。
  これは、経時変化が著しい生鮮食料品等について、規模の大小に関わらず生産者に安定的な販路を提供するとともに、卸売業者の恣意による需給操作(入荷制限)を排除し、適切な価格形成を図るという趣旨から設けられた規定である。
  この場合の正当な理由としては、上記の趣旨を損なわない範囲内において、次の(1)から(5)までのとおり、5つの観点の下、7つの区分がこれに該当するものと考えられる。
  このことを踏まえ、開設者にあっては、別紙2にも留意しつつ、個別具体的な事案について、卸売業者の恣意により正当な理由なしに受託拒否が行われることのないよう、日頃から適正かつ厳格な指導に努めるとともに、卸売業者が正当な理由なしに受託拒否を行ったことにより出荷者が不利益を被った場合には、受託契約約款に基づき出荷者へ賠償するなどの指導を行うものとする。
  また、卸売業者が正当な理由により受託拒否を行ったにもかかわらず、出荷者との力関係等を背景として卸売業者が不利益を被った場合には、開設者への相談や、国の相談窓口(市場取引110番など)の活用を促すものとする。
(1)  物品が一定の機能を有しているか
  卸売市場が国民へ安全な生鮮食料品等を供給するという役割を果たすためには、卸売市場へ出荷される物品が一定の機能を有していることが必要である。
  このような観点から、正当な理由として、次の2つの区分が考えられる。
  (a)   衛生上有害な物品等の場合(区分1)
  (b)  その市場の過去の実績からみてすべて残品となり販売に至らなかった物品と品質が同程度であるとして開設者の指定する検査員が認めた場合(区分2)
(2)  施設面での物理的な制約がないか
  卸売市場の施設は、供給対象人口や取扱数量等の見込みをもとに整備がなされており、施設の処理能力には物理的な制約があることから、これを超えて処理を行おうとした場合には、国民への生鮮食料品等の安定的な供給に支障が生じてしまうことになる。
  このような観点から、正当な理由として、市場施設の処理能力の超過の場合(区分3)が考えられる。
(3)  ルールが遵守されており、権利関係も安定しているか
  卸売市場は、国民へ生鮮食料品等を安定的に供給する役割を果たしているという点で公共性が高いことから、法令等のルールに即していることが当然に必要である。また、卸売市場は、出荷者から卸売業者、仲卸業者へと物品の権利移転を短期間で行う場である以上、権利関係が安定していることが必要である。
  このような観点から、正当な理由として、法令違反又は行政当局の指示・命令があった場合(区分4)が考えられる。
(4)  信義則に反していないか
  卸売業者と出荷者とは物品の販売の受委託について契約関係に立っているが、契約関係にある者は、権利を濫用してはならず、信義則に基づき行動することが必要である。
  このような観点から、正当な理由として、次の2つの区分が考えられる。
  (a)  卸売のための販売の委託の申込みが開設者の承認を受けた受託契約約款によらない場合(区分5)
  (b)  市場外取引や他市場での残品の出荷であることが明白であり、かつ、これが同一の出荷者により繰り返し行われ、その量も相当程度ある場合(区分6)
(5)  その他
  卸売市場は、国民へ生鮮食料品等を安定的に供給する役割を果たしているという点で公益性が高く、公益性が高いがゆえに社会正義のための取組も強く求められることから、物品自体に瑕疵がない場合であっても、暴力団関係者と一切の関係を遮断するという企業倫理の観点から、暴力団関係者という属性に着目して受託を拒否することが適当である。
  このような観点から、正当な理由として、暴力団関係者から販売の委託の申込みがあった場合(区分7)が考えられる。
 
6  第三者販売禁止及び直荷引き禁止の例外措置
  卸売業者は、法第37条の規定により、中央卸売市場における卸売の業務について、仲卸業者及び売買参加者以外の者に対して生鮮食料品等の卸売をすること(第三者販売)が、また、法第44条の規定により、仲卸業者は、中央卸売市場内において、販売の委託の引受けをすること及び当該市場の卸売業者以外の者から生鮮食料品等を買い入れて販売すること(直荷引き)が原則として禁止されている。
  しかし、卸売市場の価格形成上支障のない範囲内において、地方の卸売市場における集荷力の低下、産地と実需者間の契約取引や国産農林水産物の輸出の拡大等の卸売市場を取り巻く状況変化に円滑に対応できるよう、省令第24条第1項第5号及び第28条第1号ロの規定により、卸売業者が他の市場の卸売業者と締結した集荷の共同化その他卸売の業務の連携に関する契約に基づき、当該他の市場の卸売業者若しくは買受人(卸売業者から卸売を受けることを開設者から許可又は承認を受けた者)に卸売する場合又は仲卸業者が当該他の市場の卸売業者から買入れを行う場合(以下「市場間連携」という。)、省令第24条第1項第6号及び第28条第1号ハの規定により、卸売業者が生産者及び実需者と締結した新商品の開発に必要な素材の供給に関する契約に基づき当該実需者に卸売する場合又は仲卸業者が生産者及び実需者と締結した新たな需要の開拓に関する契約に基づき当該生産者から買入れを行う場合(以下「業者間連携」という。)並びに省令第24条第1項第7号及び第28条第1号ニの規定により、卸売業者が実需者と締結した国内産の農林水産物の輸出に関する契約に基づき当該実需者に卸売をする場合又は仲卸業者が生産者と締結した輸出のための国内産の農林水産物の買入れに関する契約に基づき当該生産者から買入れを行う場合(以下「輸出連携」という。)にあっては、包括承認による承認手続の簡素化が図られている。
  開設者にあっては、市場間連携、業者間連携及び輸出連携について、次に示す事項に留意の上、適切な運用を図るものとする。
  なお、開設者にあっては、第三者販売禁止及び直荷引き禁止の例外に係る承認申請の手続について、申請書類の電子化を進めるとともに、市場間連携、業者間連携及び輸出連携以外の承認申請の手続についても、各市場の実情に応じて、包括承認を認めるなど、弾力的な運用に配慮するものとする。
(1)  市場間連携
  (a)  省令第24条第1項第5号イ及び第28条第1号ロ(1)に定めるところにより、市場間連携に係る契約において入荷量が著しく減少した場合の措置が定められていることが承認要件の一つとなっているが、この措置としては、当初予定していた入荷量が著しく減少した場合に、連携する市場間における合理的な配分方法があらかじめ契約で決められていることが必要である。
  (b)  市場間連携に係る契約であって、相互に物品を融通し合うことを内容とするものを承認する場合は、関係する全市場の開設者の承認が必要であることから、開設者はお互いに情報交換等を行い、円滑な承認ができるよう対応する必要がある。
  (c)  市場間連携に係る契約であって、相互に物品を融通し合うことを内容とし、かつ、当該契約で卸売業者の卸売の相手方として明記されている連携先の市場の仲卸業者にあっては、直荷引きに係る承認申請を行う必要はない。
  なお、市場間連携に関する契約は、卸売業者間で締結するものであり、契約内容に連携先の市場の仲卸業者への卸売に関する事項がない場合は、直荷引きが認められないことになる。
(2)  業者間連携及び輸出連携
  (a)  省令第24条第1項第6号の業者間連携による第三者販売は、新商品の開発に必要な国内産の農林水産物の供給に関する契約に基づく卸売であるが、この場合、卸売業者の卸売の相手方となる実需者が新しい商品開発を行うものであれば、卸売業者が卸売する物品の新規性にかかわらず対象となるものである。
  一方、省令第28条第1号ハの直荷引きにおける新たな国内産の農林水産物の供給による需要の開拓とは、新品種による需要の開拓のことであるが、この場合、新たに開発された品種のみならず、その地域において新たな需要が開拓される品種についても対象となるものである。
  「新商品」、「新たな供給による需要の開拓」の定義については全国一律に定まるものではなく、従って、例えば、新商品について、最終商品としては同一であっても製造工程や製造方法に新規性が認められる場合等の判断は開設者に委ねられるものである。
  (b)  省令第24条第1項第7号イ及び第28条第1号ニ(1)に定めるところにより、輸出連携に係る契約において入荷量が著しく減少した場合の措置が定められていることが承認要件の一つとなっているが、この措置としては、輸出連携に係る品目の当該市場における入荷量が著しく減少した場合に、契約に基づき卸売又は買入れする数量の調整を図ることなど通常取引に支障を来さないような措置が講じられていることが必要である。
  (c)  省令第24条及び第28条の規定により開設者が業者間連携又は輸出連携に係る第三者販売又は直荷引きを承認するに当たっては、その市場におけるこれまでの取引に混乱が生じないことを前提として、卸売業者又は仲卸業者の経営の多角化を通じた経営改善への必要性も含めて総合的に勘案した上で、事案ごとに適切に判断することが重要である。
  (d)  一定期間が経過し、新商品又は新たな国内産の農林水産物の供給による需要の開拓若しくは輸出がその市場において定着した場合は、通常取引に移行すべきものであることから、業者間連携及び輸出連携の契約期間の上限を1年未満としているところである。しかし、この期限内で当該市場への定着が図られなかった場合等にあっては、承認の更新をするなど、状況に応じて適切に対応する。
 
7  商物一致原則の例外規定
  法第39条の規定により、市場外にある物品の卸売については原則として禁止されている(商物一致原則)が、卸売市場の周辺道路の混雑や市場自体の狭あい化が進行していること、また、一定の生鮮食料品等においては規格性が向上するとともに生鮮食料品等の取引の情報化が進展していることから、すべての物品を市場内に持ち込んで取引を行うことが非効率となる場合も生じている。
  このため、法第39条第1号及び第2号で、効率的な売買取引のために必要であり、かつ、市場取引の秩序を乱すおそれがないと認められる場合は、商物一致原則の例外として、卸売業者は市場内に物品を持ち込まなくても卸売をすることが認められている。
  このうち、平成11年及び平成16年の法改正により、
  (a)  省令第26条第1号及び第2号で定めるところにより、卸売業者が仲卸業者又は売買参加者との間においてあらかじめ締結した契約に基づき確保した物品であって、開設区域内において申請した場所(以下「申請場所」という。)にあるものの卸売をする場合
  (b)  省令第26条第3号で定めるところにより、卸売業者が電子情報処理組織を使用する取引方法その他の情報通信の技術を利用する取引方法(以下「電子商取引」という。)により卸売をする場合であって、開設者が利害関係者又は市場取引委員会の意見を聴いた上で効率的な売買取引のために必要であり、かつ、取引の秩序を乱すおそれがないと認めた場合について、商物一致原則の例外措置として商物分離取引を行うことが認められている。
  開設者にあっては、商物分離取引について、次に示す事項に留意の上、適切な運用を図るものとする。
  なお、商物分離取引に係る承認申請の手続に当たっては、申請書類の電子化を進めるものとする。
(1)  卸売業者の申請場所にある物品の卸売
  (a)  卸売業者の申請場所は、卸売業者やその直接の販売先である仲卸業者・売買参加者の保有する施設である必要はなく、例えば、仲卸業者の販売先である小売業者の店舗を当該申請場所とすることも差し支えない。
  (b)  省令第26条第2号により、卸売業者が仲卸業者又は売買参加者との間においてあらかじめ締結した契約に基づき確保した物品の卸売(予約相対取引)である必要があることから、予約相対取引に係る手続については、2の(2)のとおり取り扱う。
(2)  電子商取引による卸売
  (a)  電子商取引では、適切な価格形成に支障がないことが求められるが、画像は取引の必須要件ではなく、画像情報を提供して行うネットオークション形式に限定されるものではない。このため、適切な価格形成が可能であれば、卸売業者が買受人に卸売物品の産地や規格等の文字情報を電子メールで提供する場合も電子商取引の対象であり、携帯端末を活用した電子商取引も可能である。
  (b)  省令第26条第4号イ(7)の規定により、開設者が業務規程で市場ごとに電子商取引の対象物品を定める場合にあっては、規格性の乏しい生鮮食料品等や実際に物品を市場に持ち込まないと正確な商品評価を行うことが困難な品目については、電子商取引の対象としては馴染まないことに留意する。他方、詳細な画像を提供できる取引システムを構築する場合には、現物を見ないと価格形成が困難であり電子商取引に馴染まないとされる品目についても、電子商取引の対象となり得るため、仲卸業者や売買参加者の理解を得ながら、可能な限り対象物品として追加する。
  (c)  電子商取引についても、法第37条の規定が適用されることから、卸売の対象はその市場の仲卸業者又は売買参加者に限定され、これ以外の者に対する卸売は認められないものである。市場間ネットワークで電子商取引を導入する場合には、連携する他市場の市場関係業者を電子商取引を行う市場の売買参加者とするなど開放的な運営に努めるものとする。
  (d)  卸売業者は、その市場において電子商取引に参加する全ての仲卸業者及び売買参加者に対して、当該取引の受付開始時間及び終了時間を正確かつ確実に周知し、当該取引における取引条件に格差が生じることがないよう措置する。
  (e)  卸売業者は、電子商取引以外の取引の場合と同様、電子商取引の成立後速やかに販売原票を作成する。
  (f)  電子商取引に参加しない市場の仲卸業者及び売買参加者に対する取引機会を確保する観点から、電子商取引を行う品目の入荷量が極端に減少した場合にあっては、承認申請に係る電子商取引による卸売の数量の上限を引き下げるなどあらかじめ適切なルールを定めるよう努める。
  また、業務規程例第36条第6項第4号の規定により、卸売業者が電子商取引において事故が発生した場合の処理方法を適正に定めていることが電子商取引の承認要件の一つとなっている。開設者にあっては、次に示す事項を参考にして、適正な事故処理方法が定められるよう、卸売業者に対する適切な指導を行うものとする。
  (a)  開設者による事故品検査に係る物品の確認方法
       開設者が事故品検査を行うに当たっては、事故物品を卸売市場に搬入して行うことを原則とする。
       ただし、引渡場所が遠隔地にある等の理由により、当該物品を卸売市場に搬入して行うことが困難な場合にあっては、写真を添付する等事故内容が確認できる方法に置き換えて行うことができるものとする。
       なお、開設者にあっては、これを踏まえて、電子商取引に係る事故処理要領を定める。
  (b)  事故発生時の処理に当たり卸売業者が定めるべき事項
      開設者が電子商取引の申請を承認する場合、事故処理方法として卸売業者が定めるべき事項については、以下を参考にする。
    ア  物品の検収
        電子商取引では、物品が卸売市場に搬入されることなく産地から直接実需者に出荷される場合もあることから、その場合を含めて、物品の検収の手順について、誰が、いつまでに、どのように行うかについて定められている必要がある。
    イ  異状を発見した場合の卸売業者への通知
        卸売業者以外の者が検収を行い、その結果、物品に異状(電子商取引を行うに当たって、卸売された物品と事前に卸売業者から提供された等階級、荷姿、量目等の取引情報との間に著しい相違があるもの、粗悪品が混入し選別不十分と認められるもの、運送途中に物品が損傷を受けたもの等が「異状」に該当すると考えられる。)等を発見した場合、卸売業者への通知の手順について、誰が、いつまでに、どのような方法(異状を客観的に確認できる写真等を添付する等)で行うかについて定められている必要がある。
    ウ  開設者への事故検査の申出
        電子商取引以外の取引については、卸売業者は卸売の相手先を明らかにした上で、事故物品とともに検査受付時刻までに開設者に検査を申し出ることとなっている。
        電子商取引で事故が発生した場合については、卸売業者は当該物品の異状の状態が確認できる写真の提出(電子情報処理組織を使用する方法又は電磁的記録媒体を使用する方法による提出を含む。)をもって事故物品の添付に代えることができる。
    エ  検査後の事故に係る卸売代金の変更等
        電子商取引以外の取引については、卸売業者は、開設者の検査結果に基づき、卸売の相手方である買受人と責任分担を協議し、卸売代金の変更を行うとともに、委託品にあっては、開設者が交付する事故品証明書を出荷者へ送付することとなっている。
        電子商取引で事故が発生した場合については、卸売業者は、出荷者とも責任分担を協議し、卸売代金の変更又は物品の交換等を行うほか、出荷者の責めに帰すべき場合にあっては、開設者が交付する事故品証明書を出荷者へ送付する。
 
8  受託契約約款
  卸売業者は、法第42条第1項の規定により、中央卸売市場における卸売のための販売の委託の引受けについて受託契約約款を定め、開設者の承認を受けなければならないとしており、開設者は、この承認をしたときは、遅滞なく、当該受託契約約款を農林水産大臣に届け出なければならないとしている。
また、受託契約約款については、出荷者と卸売業者との間における取引の基本となる事項を定めたものであることから、出荷者が常にその内容を知り得るよう卸売業者に対し適切な指導を行うものとする。
なお、受託契約約款について、今般、卸売業者の恣意的な価格形成につながらないよう配慮しつつ大量出荷による相場の乱れを緩和するための措置を新たに規定した上で、別紙3のとおり参考例を示しているので、卸売業者の受託契約約款の作成の指導に当たっての参考にされたい。
 
9  せり人の登録
  せり人は卸売におけるせり売を実際に担当する者で、出荷者並びに仲卸業者及び売買参加者等の利害に影響を与える重要な地位にある。
  このため、法第43条第2項の規定に基づき業務規程において、せり人登録に係るせり人の資格その他その登録に関し必要な事項を定め、その登録を行わなければならないこととしているところであるが、開設者にあっては、せり人の資質向上とせり取引の公正の確保に向けて、適切な指導を行うものとする。また、相対取引を担当する者についても、必要な資質の向上等について指導を行うものとする。
 
10  決済の確保
  中央卸売市場における売買取引(卸売のための販売の委託の引受けを含む。)を行う者の決済については、法第44条の2の規定により、支払期日、支払方法その他の決済の方法であって業務規程で定めるものにより行わなければならないとしている。
  開設者にあっては、次に示す方針に基づき決済を行うよう十分指導するものとする。
(1)  売買仕切金の支払い
  卸売業者は、業務規程例第48条第1項に定めるところにより、受託物品を卸売した翌日までに売買仕切書及び売買仕切金を送付することを原則とし、これを超える場合は、卸売業者と出荷者との間において支払期日、支払方法等を定めた特約を締結し、これに基づき卸売業者は売買仕切金を支払う。
(2)  買受代金の即時支払義務
  仲卸業者及び売買参加者は、業務規程例第52条に定めるところにより、卸売業者から買い受けた物品の引渡しと同時に買受代金を支払うことを原則とし、卸売業者があらかじめ仲卸業者及び売買参加者(仲卸業者又は売買参加者の組織する団体等で、円滑な決済の確保のため卸売業者に対して買受代金の代位弁済を行ういわゆる代払機関も含む。)と支払期日及び支払方法を定めた支払猶予の特約を締結し、これに基づき買受代金を支払う。
  また、仲卸業者と量販店等との間の決済期間についても、業務規程例第52条第2項に定める趣旨を踏まえ、適切となるよう十分配慮する。

11  市場取引委員会の設置 
  開設者は、
  (a)   売買取引等に関する業務規程の変更に当たり利害関係者の意見を聴くこと
  (b)  卸売市場における公正・公開・効率の原則の下で適正な取引を確保していくために、実際に日々の取引を行っている関係者の意見を聴くこと
を目的として、法第13条の2に定めるところにより、卸売業者、仲卸業者、売買参加者その他の利害関係者及び学識経験を有する者のうちから開設者が委嘱する者で構成する市場取引委員会を設置することができることとしている。
  市場取引委員会は、第三者販売・直荷引きの禁止に係る例外措置のうち市場間連携に関すること、電子商取引、開設区域内の販売行為等について開設者に意見を述べる旨が法令等で規定されているが、これ以外にも卸売市場における売買取引全般について検討する場であり、その運営のあり方が各市場の活性化につながる極めて重要な存在として位置づけられている。
  開設者にあっては、このことを踏まえて、次に示す事項に留意の上、市場取引委員会を適切に運営するものとする。
  (a)  市場取引委員会における議論は、「経営展望」に即したものになるよう留意する。
  (b)  市場取引委員会は各市場において取扱品目の部類ごとに市場運営協議会とは別に組織する。ただし、休開市日等市場全体として統一的に取り組むべき課題については、部類合同の市場取引委員会を開催することにより、当該市場全体としての意思統一を図る。
  (c)  市場取引委員会は、業務規程の変更のみならず日々の取引における種々の問題について調査審議し、取引の活性化を図る観点で設置されていることを踏まえ、市場取引委員会の下に、取引の実務に通じた担当者からなる部会を必要に応じて設け、定期的・機動的に開催することで、日々の取引に関する事項についても活発に議論を行っていく。この場合、市場取引委員会においては、業務規程の改正に関する事項や部会において調整がつかなかった事項について審議するといった役割分担を図る。
  (d)  市場取引委員会は、卸売業者、仲卸業者、売買参加者等から発議があれば速やかに開催するほか、売買取引に問題が発生した場合又は発生するおそれがある場合で、開設者が必要であると認めた場合は、弾力的に開催するよう運用を図る。
  (e)  市場取引委員会の委員の構成については、利害関係が対立する委員の比率を同一にすること等によりバランスのとれた議論ができるよう留意する。また、必要に応じて、生産者や出荷団体の代表者を委員として選定することや、学識経験者を委員として選定する場合には、経営的な視点を持った者を選定するなど、市場取引の活性化を広い視野に立って議論できるよう留意する。
  (f)  市場取引委員会において意思決定を行う場合は、原則として多数決の方式による。ただし、卸売業者及び仲卸業者による許可物品の開設区域内での販売について、業務規程における届出又は承認の手続について議論する場合には、市場取引とは別の商業調整の観点からの配慮が必要であることから、委員の少数意見にも十分配慮する。

12  卸売予定数量、卸売の価格や数量の公表等
  相対取引が増加し、当日の取引量や価格形成過程が不透明になりつつある中、取引に関する情報開示を一層充実させることが必要となっている。卸売市場における売買取引の公正・公開性を保ち、また、卸売市場が情報の受発信拠点として機能していくためには、開設者、卸売業者による卸売予定数量等の公表については法第46条及び第47条の規定により以下のように取り扱うこととしているので、開設者にあっては、適正な取引情報の公表が行われるよう努めるものとする。
(1)  開設者は、その日に実際に市場で取引されることとなる数量である卸売予定数量等を掲示するとともに、取引後、売買取引の方法ごとに、その日の卸売数量及び高値・中値・安値に区分した卸売価格の公表を行う。
(2)  卸売業者は、
  (a)  せり売又は入札の方法による卸売((d)に掲げるものを除く。)
  (b)  法第35条第1項第2号に規定する相対取引による卸売((c)及び(d)に掲げるものを除く。)
  (b)  法第37条ただし書の規定による卸売
  (d)  法第39条第2号の規定による卸売
の区分ごとに、
    ア  毎日の卸売が開始される時までに、その日の主要な品目の卸売予定数量及び主要な産地を卸売場の見やすい場所に掲示するとともに、
    イ  毎日の卸売が終了した後速やかに、主要な品目の卸売数量、主要な産地及び高値・中値・安値に区分した卸売価格の公表を行う。
  また、開設者にあっては、開設者及び卸売業者の公表措置が迅速かつ的確に行われるよう、業務規程例第45条の規定により卸売業者が開設者に報告する卸売予定数量、卸売の数量及び価格の報告の電子化も含め、卸売市場における情報処理の電子化を積極的に推進する。
(3)  開設者及び卸売業者は、(1)及び(2)の取引情報について、日単位、月単位等時系列で整理するなど、仲卸業者等買受人の利便性に配慮した取引情報の公表に努める。

13  表示やトレーサビリティ等の法令遵守
  食品表示法(平成25年法律第70号)に基づき名称、原産地等の表示に関する基準が定められている生鮮食料品等については、流通業者(卸売業者、仲卸業者、売買参加者等)は次の流通段階の者に確実にそれらの情報を伝えるため、容器又は包装の見やすい箇所、送り状、納品書等に必要事項を分かり易く表示することが義務づけられている。
  また、牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(平成15年法律第72号。以下「牛トレーサビリティ法」という。)に基づき、販売者(卸売業者、仲卸業者、売買参加者等)は、同法に規定する特定牛肉の個体識別番号又はロット番号の表示及び帳簿への記録・保管が義務づけられている。
  これらの法令に規定されている事項が遵守されない場合は、当該事業者のみならず、卸売市場全体に対する産地及び消費者からの信頼失墜にもつながりかねないこととなる。
  このことを踏まえて、開設者にあっては、名称、原産地、特定牛肉の個体識別番号等の適正な表示等、食品表示やトレーサビリティに係る法令の遵守に関し、研修会の開催、巡回点検の実施等により市場関係業者に対する適切な指導を行うとともに、法令遵守の徹底のために卸売業者や仲卸業者が策定することとされている自主行動計画や企業行動規範の策定に向けた取組に対する適切な指導を行うものとする。

14  卸売市場の取引におけるその他の留意事項
(1)  生鮮食料品等の取引、とりわけ水産物の取引においては、出荷者及び流通関係業者が一体となって正しい量目による取引の励行に努めることが必要であり、卸売市場においても、卸売業者、仲卸業者等の関係業者と十分に連携の上、正しい量目による取引のための態勢の整備を推進するとともに、現在、既に整備されている市場にあっても計量態勢及び計量方法等について、その内容の一層の充実・改善に努めるものとする。
(2)  卸売市場の取引において通い容器を利用する市場関係業者は、利用に係る契約等に基づき通い容器を適切に管理するものとする。また、開設者は、市場内に通い容器の保管場所を設置するなど適切な管理に資する措置を講じるよう努めるものとする。

15  取引における消費税及び地方消費税の転嫁
  卸売市場における取引について消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の転嫁が円滑かつ適正に行われるよう、開設者にあっては、次に示す事項に留意の上、関係業者の指導に努めるものとする。
(1)  転嫁についての考え方
  (a)  卸売業者
    ア  せり売又は入札   
         卸売業者がせり売又は入札で卸売を行う場合にあっては、買受人に対してそのせり売又は入札に係る価格を提示させ、その価格決定後に、これにその8%に相当する金額を上乗せしたものを取引が成立した卸売価格とさせる。
    イ  相対取引による販売    
        卸売業者が相対取引(いわゆる「定価売」を含む。)によって卸売を行う場合にあっては、買受人との交渉により決定した相対取引に係る価格に、その8%に相当する金額を上乗せしたものを取引が成立した卸売価格とさせる。
    ウ  委託品の仕切    
        卸売業者が出荷者に売買仕切書を送付するに当たっては、次の金額を明記させる。
        a  個々の出荷物のせり売、入札又は相対取引に係る価格
        b  aの合計額
        c  bの8%に相当する金額
        d  bとcの合計額
        なお、dの金額が仕切金額となるが、卸売業者が立て替えた諸経費はその8%に相当する金額を含めて、これから控除させる。
    エ  卸売業者の委託手数料   
        卸売業者の委託手数料の金額については、卸売金額に委託手数料率を乗じて得られた金額とする。
    オ  卸売代金の請求   
        卸売業者が卸売の相手から代金を請求するに当たっては、請求書に次の金額を明記させる。
        a  個々の卸売物品のせり売、入札又は相対取引に係る価格
        b  aの合計額
        c  bの8%に相当する金額
        d  bとcの合計額
  (b)  仲卸業者
    ア  せり売又は入札による買受け   
        仲卸業者に対し、せり売又は入札においては、提示した価格にその8%に相当する金額を上乗せしたものが買取価格になることを周知させる。
    イ  相対による買受け   
        仲卸業者に対し、相対取引による買受けにおいては、卸売業者との交渉により決定した相対取引に係る価格に、その8%に相当する金額を上乗せしたものが買取価格になることを周知させる。
  (c)  売買参加者
      せり売又は入札及び相対による買受けについて、仲卸業者に対する指導と同様の指導を行う。
  (d)  買出人
      仲卸業者による消費税等の転嫁について十分な理解が得られるよう消費税等の基本的性格、市場取引における消費税等の転嫁の方法等について周知させる。
(2)  価格等の報告等
  (a)  販売原票
       卸売業者が記入する販売原票には、せり売、入札又は相対取引に係る価格を記入させる。
  (b)  価格等の報告
       卸売業者が開設者に価格等を報告する場合には、卸売価格等を報告させる。
  (c)  価格の公表
       開設者が価格を掲示又は公表する場合には、卸売価格を掲示又は公表する。
(3)  出荷奨励金
  卸売業者が出荷者に対し出荷奨励金を交付する場合に当たっては、卸売金額に交付率を乗じて得た額を交付させる。
  なお、出荷奨励金は消費税等の課税対象になるので、その交付を受けた課税事業者である出荷者は納税義務があることを周知させる。
(4)  完納奨励金
  卸売業者が買受人に対し完納奨励金を交付する場合にあっては、卸売金額に交付率を乗じて得た額を交付させる。
  なお、完納奨励金は消費税等の課税対象になるので、その交付を受けた課税事業者である買受人は納税義務があることを周知させる。
(5)  その他
  (a)  端数処理の方法
      卸売業者又は仲卸業者が、その販売等に係る金額を算出する場合に、1円未満の端数は四捨五入させる。
  (b)  事業報告書の作成
      法第28条に基づき卸売業者が事業報告書(省令別記様式第1号の第2の貸借対照表及び損益計算書を除く。)を作成する場合にあっては、消費税等を仕入れ及び売上げに含めて会計処理を行う方法に基づき作成させる。
  (c)  純資産基準額の適用
      卸売業者の純資産基準額(昭和46年6月30日農林省告示第1028号)の「卸売金額」は、せり売、入札又は相対取引に係る価格にその8%に相当する金額を上乗せした金額とする。

16  事務手続の簡素化
  開設者にあっては、中央卸売市場における公正な取引を確保するため、卸売業者及び仲卸業者に対して各種の申請、報告、書類の提出等の事務手続を課しているところである。
  他方、迅速かつ機動的な取引を求める実需者ニーズへの的確な対応を図っていくためには、事務手続について、公正な取引の確保に留意しつつも可能な限り効率化を図る必要がある。
  このため、開設者が卸売業者及び仲卸業者に対して課している以上のような事務手続について、その必要性を十分に検討した上で、事務手続の簡素化を積極的に推進するものとする。
  なお、事務手続の簡素化についての国の考え方については、第4の関係項目ごとに必要に応じて触れているが、全般的な方向性について次の区分により整理し、また、詳細について別紙4のとおり整理したので、開設者にあっては、これらに十分留意するものとする。
(1)  法及び省令に規定されていない事務手続((2)に該当するものを除く。)については、廃止。ただし、事務手続によって性格が異なるため、次の類型に応じて取り扱う。
  (a)  存置する必要性が乏しいものについては、直ちに廃止
  (b)  適切な市場運営を確保する観点から、開設者の一定の関与が必要なものについては、事務手続を廃止する代わりに、開設者による事後的な確認が可能となる関係書類の保存義務を課す。
  (c)  開設者の関与について市場ごとに差異がみられるため、直ちに一律廃止とすることは困難であることから、直ちに廃止することができないものについては、条件が整うまでの間は電子化に移行
  (d)  直ちに廃止することで円滑な市場運営に支障が生じる可能性があり、かつ、電子化についても制約があるものについては、条件が整った段階で、整った条件に応じて電子化に移行又は廃止
(2)  法及び省令に規定されている事務手続並びにこれと密接な関連を有する事務手続については、電子化に移行。ただし、電子化が困難な零細業者の存在や添付書類の多さ等から、直ちに電子化することが困難なものについては、条件が整った段階で電子化に移行。


附  則(平成27年3月25日付け26食産第4619号)

  この通知は、平成27年4月1日から施行する。


附  則(平成28年3月30日付け27食産第6090号)

  この通知は、平成28年4月1日から施行する。

 



(別紙1)

                                                                    経営展望の策定について

  経営展望は、卸売市場を一つの経営体として捉え、将来を見据えた経営戦略的な視点から、当該卸売市場の将来方向とそのために必要な創意工夫ある取組を検討し、実行に移す体制を構築するために策定するものである。
具体的には、開設者及び市場関係業者が一体となって、市場全体の経営戦略的な視点から、それぞれの市場の位置づけ・役割、機能強化の方向、将来の需要・供給予測を踏まえた市場施設の整備、コストも含めた市場運営のあり方等を明確にしたものである。
  以下に、経営展望の策定に当たっての基本的考え方、策定の手順等経営展望の策定についての具体的な考え方を示すので参考にされたい。

1  経営展望の策定に当たっての基本的考え方
(1)卸売市場における経営展望は、「当該市場が国民へ生鮮食料品等を安全かつ安定的に供給するという公共性を発揮しつつ、取扱金額・数量の増加やコストの削減等を通じて、開設者や卸売業者、仲卸業者等の市場関係者の経営改善を図るなど、経済性を発揮していくために、多様な市場関係者が長期的に何をどのように行っていくべきかを示すもの」である必要がある。
(2)このうち、「経済性を発揮していくために、多様な市場関係者が長期的に何をどのように行っていくべきか」という点に関し、中央卸売市場においては、産地や生産者から大量の物品を集荷し、これを販売(卸売)する卸売業者と、卸売業者から物品を買い受け、小売業者等の実需者へ販売する仲卸業者が存在し、両者が生産者や実需者の利害を代表して対峙することにより公正な価格形成がなされており、両者の利害は対立する面もあることから、卸売業者や仲卸業者としては、自らの利益を追求するために、自らの最適のみを確保するということが考えられる。
  しかし、卸売業者の産地からの集荷機能が低下した場合には仲卸業者の買受けに支障が生じ、逆に、仲卸業者の実需者への分荷機能が低下した場合には卸売業者の販売に支障が生じるなど、両者は言わば運命共同体とも言える関係にある。
  このため、卸売市場における経営展望の策定に当たっては、卸売業者、仲卸業者といった個別の主体ごとに最適を図るのではなく、個別の主体が多少の負担を負うことになることを認識しつつ、市場全体としての最適を図るという観点をすべての市場関係者が共有した上で検討する必要がある。
  また、「多様な市場関係者が長期的に何をどのように行っていくべきか」の検討に当たっては、部類ごとに検討すべき項目はもちろんのこと、市場全体としての総合的な物流体系をどのように構築していくかなど、部類横断的に検討すべき項目も存在することから、経営展望は、当該市場全体をカバーしたものとすることが基本であると考える。このため、複数の取扱品目の部類がある市場においては、まずは部類ごとの基本戦略(ビジネスモデル)や行動計画を検討し、その後に当該市場全体としての経営展望を取りまとめて策定することを基本とする。

2  経営展望の策定の手順
  市場全体としての最適を図るという観点から、市場関係者が市場全体の客観的な状況について共通認識を持つことが戦略を立てていく上で非常に重要であり、こうした共通認識を持った上で、市場全体としての基本的な方向性を決め、それに基づいて市場関係者それぞれが行うべき行動を記した個別・具体的な計画を立てていくことが有効な手法であると考えられる。
  具体的には、以下のような手順をとることが望ましい。
(手順1)検討体制の構築
(手順2)外部環境及び内部環境の分析
(手順3)基本戦略(ビジネスモデル)の策定
(手順4)行動計画の策定
(手順5)行動計画の取りまとめ
(手順6)経営展望の公表
(手順7)基本戦略・行動計画の遂行
(手順8)行動計画の遂行状況の評価と見直し

(1)検討体制の構築(手順1)
(a)  経営展望は、市場全体としての最適を図るという観点から、当該市場のあり方や運営方針等を明確化するものであり、関係者が一堂に会し、検討を尽くす必要があることから、この検討を行う場として、協議会等の合議機関を設置する。
  また、複数の取扱品目の部類がある市場においては、部類ごとの実情に応じた基本戦略及び行動計画を検討するため、合議機関の下に当該市場の青果、水産、食肉、花き等の部類ごとの検討組織を設置する。
(b)  経営展望を検討する合議機関として、新規に協議会等を設置することが基本となると考えるが、開設運営協議会に開設者を加えるなど既存の機関を活用することを妨げない。ただし、いずれの場合であっても、十分な議論を尽くすことができるような開催回数の確保や、自由闊達な議論を行うことができるような議事運営の確保に留意する。
(c)  経営展望を検討する合議機関のメンバーとして、当該市場の開設者、卸売業者、仲卸業者等すべての市場関係者が参画することを必須とする。
  また、(2)の外部環境の評価に当たり、生産者、実需者等の市場ユーザー(顧客)の意見等を把握する必要があることから、臨時委員又はオブザーバーとしてこれら顧客の参画を得ることが望ましい。
  さらに、(2)~(8)の全体を通じて、経営的な観点からの議論が必要となることから、臨時委員又はオブザーバーとしてコンサルタント、シンクタンク等の外部の専門的調査機関の参画を得ることが望ましい。

(2)外部環境及び内部環境の分析(手順2)
  (a)  当該市場を取り巻く外部環境の評価(機会・脅威の把握)
    (1)  当該市場の顧客である生産者や実需者等(当該市場を利用していない者を含む。)が現在販売又は購入している品目やその金額・数量、これらの将来予測等について評価するとともに、当該顧客に対して、当該市場に求めている商品・サービスの内容(品質、品揃え等)や、当該市場が提供する商品・サービスが期待するレベルに達しているか等についてヒアリング、アンケート調査等を行い、当該市場に対するニーズ、不満等を明らかにする。
  経営展望の策定に当たっては、このように顧客ニーズ主導で検討を行っていくマーケットイン型の発想をとることが重要である。
    (2)  当該市場の競合相手(他市場、あるいは市場外流通)の取扱品目やその金額・数量等の状況、対象とする顧客の範囲や営業範囲等について評価する。
    (3)  当該市場の置かれた地理的・経済的・社会的な条件(産地からの距離、道路・港湾等の整備状況、周辺地域の食品産業の状況、周辺地域の人口・世帯構造等)、当該市場に対する社会的な要請(環境問題への対応等)について評価する。
    (4)  (1)から(3)により、当該市場の外部に、どのような機会(当該市場に対するニーズや要請)があり、どのような脅威(当該市場の利益を圧縮する要因)があるのかを把握する。
  (b)  当該市場の内部環境の評価(強み・弱みの把握)
    (1)  当該市場の有形資産(施設・設備等)、無形資産(産地と卸売市場が協力して作り上げた商品ブランド等)、人的資源(従業員の能力、従業員数等)等の経営資源について、当該市場の競合相手との比較を行いつつ、評価を行う。
    (2)  (1)の経営資源を生かして、当該市場における業務を遂行していく能力(マーケティング、品揃え、品質保持、情報受発信、物流等)について、当該市場の競合相手との比較を行いつつ、評価を行う。
    (3)  (1)及び(2)により、当該市場が競合相手と比較して、どのような点が強みであり、どのような点が弱みであるかを把握する。
  (c)  外部環境及び内部環境の分析による方向性の抽出
       (a)により、当該市場が利用可能な機会、回避すべき脅威が明らかとなり、また、(b)により、当該市場が有する強みと弱みが明らかとなるため、以下のとおり、強みと機会による積極的方向性、強みと脅威による脅威の解消の方向性、弱みと機会による弱みを強みに変える方向性、弱みと脅威による縮小・撤退の方向性の4つのパターンの組合せにより、当該市場の目指すべき方向性を検討する。
      その際、どのような集荷先や販売先をターゲットとし、どのような商品・サービスを提供していくのか、また、市場施設も含め必要となる体制をどのように構築していくのか等の機能強化の方向性を明らかにする。
    (1)  積極的方向性(強みと機会)
          機会と強みによる積極的戦略を打ち、強みを活かした更なる役割・機能強化が期待できるもの。
    (2)  脅威の解消の方向性(強みと脅威)
強みを活かし、脅威の解消を行う戦略により、役割や機能の強化が見込まれるもの。
    (3)  弱みを強みに変える方向性(弱みと機会)
          強みのある市場との連携や経営資源の投入により弱みを強みに変える戦略により、役割や機能の強化が見込まれるもの。
    (4)  縮小・撤退の方向性(弱みと脅威)
          商品やサービス等を縮小・撤退する戦略により、マイナス効果を減らすことが期待できるもの。

(3)基本戦略(ビジネスモデル)の策定(手順3)
  (2)で行った外部環境及び内部環境の分析から導いた方向性に基づき、合議機関において目指すべき市場の基本戦略(ビジネスモデル)を定める。
   基本戦略(ビジネスモデル)については、地域内における生鮮食料品等の安定的な供給を基本としつつ、
      (a) 大規模な集荷・分荷機能の発揮
      (b) 産地との連携による魅力ある生産物の集荷・販売
      (c) 加工・業務用ニーズに対応した機能強化と商品開発
      (d) 輸出等を通じた新たな需要開拓
      (e) (a)から(d)までの複合型
が考えられるが、これら以外のビジネスモデルを定めることも可能である。

(4)行動計画の策定(手順4)
  (a)  (3)で策定された基本戦略(ビジネスモデル)を実行に移すために、部類毎の検討組織において、開設者・市場関係業者それぞれが今後取り組むべき具体的な取組内容等を定めた行動計画を策定する。
行動計画で定める項目は以下のとおり13項目あり、各ビジネスモデル毎にそれぞれ13項目の中から必要に応じ選択の上、定めるものとする。また、当該13項目以外の項目であっても、市場の実情に応じ、必要と認められるものについては、積極的に行動計画の項目とすることが望ましい。
    なお、コールドチェーンをはじめとした各種の施設整備の計画策定に当たっては、将来の需要・供給予測を十分に踏まえたものとするよう留意する。
    ア  経済性の発揮のためにどのような商品・サービスを提供していくのかということに関しては、
      (1)  品質保持(コールドチェーン施設の整備計画(注1)、品質管理の高度化に向けた規範の策定及びその遵守等)
      (2)  効率的な物流体系(ネットワークを構築する相手方市場とその手法(注2)等)
      (3)  品揃え(地場産品、規格外品等多様な物品を市場に取り込む手法等)
      (4)  加工・調製(加工・調製施設の整備計画等)
      (5)  情報受発信(収集する情報の範囲・提供の方法、これに必要となる施設の整備計画等)
      (6)  取引条件(受託契約約款の見直し、予約相対取引の推進等)
    イ  どのように公共性を発揮していくのかということに関しては、
      (7)  取引規制のあり方(承認手続等業務規程の見直し等)
      (8)  コンプライアンスの確保(食品関係法令の遵守、企業行動計画の策定の推進方策等)
      (9)  環境問題(温室効果ガスの削減計画(注3)等)
      (10)  市場に対する理解の醸成(市場開放、食育等)
      (11)  災害時対応(危機管理体制、事業継続体制の構築等)
    ウ  商品・サービスの提供に必要となる体制をどのように構築するのかということに関しては、
      (12)  開設者の業務運営体制(地方公営企業法に基づく管理者制度の活用、運営コスト軽減の観点からの地方自治法に基づく指定管理者制度の活用、職員の配置の見直し等)
      (13)  卸売業者、仲卸業者等の市場関係業者の業務運営体制(統合による大型化、他の業者との連携、従業員教育等)
(注1)コールドチェーン施設の整備計画に盛り込む事項としては、以下のような事項が想定される。
    ・  コールドチェーンに対する考え方(各市場の特性に合わせてどの部分を強化するのかを記載(例:冷蔵品の取扱いが多いことから冷蔵庫中心の整備を進める。))
    ・  その市場における低温卸売場、冷蔵施設等の整備水準の数値目標及び目標年度(基本方針の目標年度である平成27年度を超えることも可とする。)
    ・  各施設の整備主体と整備スケジュール
(注2)当該市場が周辺市場とネットワークを構築するに当たっては、当該市場と周辺市場との間で、少なくとも以下のような事項について検討を行うことが必要となるものと想定される。
    ・  情報処理等に係る共通システムの導入
    ・  連携物流システムの導入
    ・  売買参加者の承認要件の緩和
    ・  第三者販売(市場間連携)の活用
    ・  連絡体制の構築
(注3)温室効果ガスの削減計画に盛り込む事項としては、以下のような事項が想定される。
    ・  温室効果ガス削減に対する考え方(各市場の特性に合わせてどの部分を強化するのかを記載(例:事務所棟の整備にあわせて太陽光発電を設置する。))
    ・  温室効果ガス削減のための取組(施設整備を含む。)の内容、削減目標及び目標年度(基本方針の目標年度である平成32年度を超えることも可とする。)
    ・  各取組の主体と取組スケジュール
  (b)  行動計画は、各部類及び各ビジネスモデル毎に作成するものとし、以下の内容を記載することが望ましい。
    ・作成日、作成部類
    ・ビジネスモデル
    ・戦略(外部環境及び内部環境の分析による方向性)
    ・行動計画の項目(手順4の(a)の(1)~(13)等)
    ・長期目標(重要目標達成指標(KGI: Key Goal Indicator))
        目指すべき当該市場の状況を設定するため、目標年度までの達成目標を設定する。この時、可能な限り数値化した目標を設定する。
    ・短期目標(重要業績評価指標(KPI: Key Performance Indicator))
        計画の達成状況を把握するために短期の目標を設定する。ここでは取組実績などを計測し、取組内容の改善に役立てる。この時、可能な限り数値化した目標を設定する。
    ・具体的な取組内容
        目標に向けた具体的で実行性のある取組を記載する。
    ・担当者
        それぞれの取組の進捗状況を管理・把握するため、主担当と副担当を設定する。
    ・工程表
        短期(1年)、中期(2~3年)、長期(3年以上)といったスパンでさらに期間ごとに行う具体的な取組も記入する。

(5)行動計画の取りまとめ(手順5)
  (4)で策定した行動計画について、当該市場としてどのような状態となることを目指すのか市場関係者間で共通認識を持っておくことが必要であるため、各部類で策定・評価された行動計画を毎年度合議機関で取りまとめるものとする。

(6)経営展望の公表(手順6)
  (3)で策定した基本戦略及び(5)でとりまとめた行動計画からなる経営展望は、顧客である生産者や実需者等(当該市場を利用していない者を含む。)の当該市場に対する信頼や評価を高め、当該市場の利用増加につながることにより、さらに当該市場における経営展望の確実な遂行が促されるという好循環が期待できることから、合議機関は、経営展望や当該市場の社会的取組について、顧客である生産者や実需者等へ可能な限り開示する。

(7)基本戦略・行動計画の遂行(手順7)
  基本戦略や行動計画は、策定すること自体が目的ではなく、その市場が競争上優位に立つための手段であることから、各部類毎に策定した行動計画に基づき、開設者及び市場関係業者は、それぞれの立場で、あるいは相互に連携・協力し着実に遂行する。

(8)行動計画の遂行状況の評価と見直し(手順8)
  各市場関係業者においては、日頃から行動計画の目標に関する販売データの集計等により進捗状況を確認するとともに、定期的に部類毎の検討組織において進捗状況を取りまとめの上、評価を行うものとする。また、顧客等の意見も踏まえながら、必要に応じて行動計画の見直しを行う。


3  その他
  (1)各市場において、既に長期計画のようなものを策定しているケースが見られるが、それらの計画についても、当該市場を取り巻く外部環境に対する客観的な評価が不足している、地方公営企業としての経済性の発揮という観点が欠けているなどのケースが見られることから、2の経営展望の策定の手順を参考に見直しを行い、必要な事項の追加や修正を行う。
(2)経営展望の策定に当たって参考となる様式例は以下のとおり。また、事例集を別途示すので、必要に応じて活用する。

【様式例】

                                                     
                                                                                               策定日  20XX/XX/XX
                                                                                               改定日  20XX/XX/XX


   〇〇卸売市場経営展望


1  合議体の構成委員
(※複数部類がある場合は部類毎の構成委員も記載)


2  市場を取り巻く環境と本市場の現状と評価
(1)外部環境の現状と評価

(2)本市場(内部環境)の現状と評価


3  外部環境及び内部環境の分析を踏まえた基本的な方向性
  (a)積極的方向性
  (b)脅威の解消の方向性
  (c)弱みを強みに変える方向性
  (d)縮小・撤退の方向性


4  基本戦略(ビジネスモデル)
  ・目標年度

  ・目指すべき市場全体のビジネスモデル


5  行動計画
  ・検討組織毎、ビジネスモデル毎に行動計画で定める項目

  ・遂行状況確認

  ・評価頻度


6  経営展望の公表方法



(別紙2)

                                      受託拒否ができる「正当な理由」の判断に当たっての留意事項

【区分1:衛生上有害な物品等の場合】
  衛生上有害な物品又は客観的事情に照らして食品としての安全性が十分に確保されておらず人の健康に危害を及ぼす可能性がある物品が出荷された場合である。
  区分1に該当する具体的な場合としては、次のようなものが考えられる。
  なお、家畜伝染病が発生した場合や原子力発電所事故による放射能汚染が発生した場合等に、科学的・客観的な根拠なく受託拒否することは風評被害にもつながりかねないものであり、正当な理由として認められるものではない。 

 
  ・厚生労働省が危害の発生を防止するために必要があると認め、食品衛生法(昭和22年法律第233号)に基づく検査命令により安全確認を指示している物品について、安全確認が終了するまでの間、受託を拒否する場合
  ・委託物品が、食毒の危険性から保健所と卸売業者との協議に基づき取扱品目外とした野生の山菜、きのこ等である場合において、受託を拒否する場合
  ・「アブラソコムツ」(厚生労働省通知で指定されている有毒魚)の入荷情報があり、保健所の指導のもと、入荷前にその受託を拒否する場合
  ・危険水域からのアサリ等については毒化されている可能性があるとの衛生当局からの情報に基づき、安全性が確認されるまでの間、その受託を拒否する場合
  ・赤痢菌に汚染された可能性のあるカキが出荷されたとの連絡を受け、保健所が卸売業者に販売禁止と当該カキの回収を指示した場合において、その受託を拒否する場合


【区分2:その市場の過去の実績からみてすべて残品となり販売に至らなかった物品と品質が同程度であるとして開設者の指定する検査員が認めた場合】
  区分2に該当するかどうかの判断に当たっては、次に示す事項に留意するものとする。
  (a)  品質については、客観的、かつ、迅速に判断する必要があることから、変色、しおれ等の外観により判断する。
      このため、開設者においては、残品となり販売に至らない可能性のある物品の状態について、検収の際に前広に写真等により記録しておいた上で、実際に残品となり販売に至らなかった場合には、当該写真等を保存し、リスト化しておくなどの準備が必要である。また、当該リストについては、必要に応じ関係者に明示する。
  (b)  検査員は、各市場の実情に応じて指定するが、検査が適正に実施されるよう、開設者が一定の関与を行う。
  区分2に該当する具体的な場合としては、次のようなものが考えられる。 

 
   ・出荷された花き・野菜の大半が一部変色したり、しおれるなどにより、販売に至らないと思われたことから、開設者の指定する検査員に検査してもらった結果、検査員が過去の実績からみてすべて残品となり販売に至らなかった物品と品質が同程度であると認めた場合において、その受託を拒否する場合


【区分3:市場施設の処理能力の超過の場合】
  市場施設の処理能力を超える入荷が見込まれる場合で、物理的に受入れが困難な場合である。
  区分3に該当する具体的な場合としては、次のようなものが考えられる。
  なお、過大な入荷量により市況が暴落するとの理由のみで受託拒否をすることは、物品の需給により決定するという卸売市場の価格形成機能が歪められるおそれがあ
ることから、認められるものではない。

 
  ・地震等の災害により市場が被害を受け、委託を受けた物品を保管する場所がない場合において、受託を拒否する場合
  ・食肉市場で、1日の処理能力(牛200頭、豚100頭)に応じて出荷の日程調整を行っているが、この調整がつかず、処理能力の限界を超える出荷がある場合において、受託を拒否する場合
  ・倉庫や冷蔵庫等施設の能力を超えて同一商品を大量に委託された場合であって、販売までに著しく品質が低下し廃棄せざるをえないことが明らかな商品について、受託を拒否する場合

 
【区分4:法令違反又は行政当局の指示・命令があった場合】
  食品表示法その他の法令の定めに違反する物品(違反しているかどうか確認中の物品を含む。)が出荷され、又は行政当局の指示若しくは命令があった場合である。
  区分4に該当する具体的な場合としては、次のようなものが考えられる。
  なお、区分1と同様に、原子力発電所事故による放射能汚染が発生した場合等に、科学的・客観的な根拠なく受託拒否することは風評被害にもつながりかねないも
のであり、正当な理由として認められるものではない。


  ・原子力発電所の事故を踏まえ政府の原子力災害対策本部による出荷制限の指示又は地方公共団体による出荷自粛の要請がなされた対象地域の対象品目について、受託を拒否する場合
  ・食品表示法で、産地表示が義務づけられている物品について、産地が不明であるものが出荷された場合において、受託を拒否する場合。
  なお、「産地が不明であるものが出荷された場合」とは、具体的には、
  (a) 容器包装、送り状等に原産地情報が記載されていないとき
  (b) 容器包装、送り状等に記載された原産地情報に齟齬があるとき(容器包装に記載された原産地情報と送り状に記載された原産地情報が異なるとき等)
等をいう。
  ・植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づく移動制限がかかっている物品について、受託を拒否する場合
  ・医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)で使用が禁止されているホルマリンを使用したことが明らかなトラフグの受託を拒否する場合
  ・牛トレーサビリティ法に定める個別識別番号を表示した耳標が着装されていない国内産牛について、当該牛に係る食肉の受託を拒否する場合
  ・密漁又は窃盗により入手されたことが明らかな物品について、受託を拒否する場合
  ・原産地情報の信憑性に疑義があるために委託者に対して当該原産地情報が正しいものであることを証明する書類の提示を求めた場合であって、当該委託者からその書類の提示がない場合。
    なお、原産地情報の信憑性に疑義がある場合とは、具体的には、
      (a) その物品の外観上の特徴(大きさ、形状)や出荷時期が当該原産地に係る商品の一般的な特徴や出荷時期と異なっていると判断されるとき
      (b) 原産地表示について食品表示法上の指示等を受けた者からの委託を受けたとき
等をいう。
  ・製法について知的財産権が取得されている物品について、当該製法を無断で使用したとしてトラブルが発生し、裁判がなされている場合について、受託を拒否する場合

 
【区分5:卸売のための販売の委託の申込みが開設者の承認を受けた受託契約約款によらない場合】
  区分5に該当する具体的な場合としては、次のようなものが考えられる。


  ・受託契約約款に定める委託手数料率よりも低い手数料率を条件とする出荷について、受託を拒否する場合
  ・委託者が残品の廃棄費用等受託契約約款に定める費用負担をしないことを条件とする出荷について、受託を拒否する場合


 【区分6:市場外取引や他市場での残品の出荷であることが明白であり、かつ、これが同一の出荷者により繰り返し行われ、その量も相当程度ある場合】
  区分6に該当するかどうかの判断に当たっては、次に示す事項に留意するものとする。
  (a)  繰り返し行われているかどうかの具体的な判断は、各市場の実情に応じて開設者が定める基準によることとし、当該基準については関係者に明示する。
  (b)  量が相当程度あるかの具体的な判断は、市場ごとに取扱数量に差があることから、各市場の実情に応じて開設者が定める基準によることとし、当該基準については関係者に明示する。
  区分6に該当する具体的な場合としては、次のようなものが考えられる。 


  ・市場外取引も行っている出荷者が、市場外取引での残品であることが明白である物品を、その市場に繰り返しかつ大量に持ち込んでいるという事実が判明し、その頻度や量が当該市場の定めた基準に合致する場合において、その受託を拒否する場合


【区分7:暴力団関係者から販売の委託の申込みがあった場合】
  区分7に該当するかどうかの判断に当たっては、次に示す事項に留意するものとする。
  (a)   暴力団関係者とは、
    ア  暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者(以下これらを「暴力団員等」という。)
    イ  暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用している者
    ウ  暴力団員等によりその事業活動を支配されている者
のいずれかに該当する者をいう。
  (b)  暴力団関係者であるかを判断するためには、都道府県暴力追放運動推進センター等外部の専門機関へ照会するという方法があるが、最低限の情報として、名称及び生年月日が必要であるとのことから、今後、新規委託者や素性の不審な委託者については、名称及び生年月日がわかる本人確認書類の提出を求める。
  (c)  暴力団関係者が密漁品や窃盗品を出荷した場合には、本区分に加え、区分4にも該当することから、本人確認をするまでもなく、受託拒否が可能である。
  区分7に該当する具体的な場合としては、次のようなものが考えられる。

 
  ・所在地に不審な点があるなど委託者の事業活動に疑義があることから専門機関に照会したところ、その業務を執行する役員が暴力団関係者であることが明らかとなったため、当該委託者からの受託を拒否する場合


(別紙3)
受託契約約款例

  (趣旨)
第1条  〇〇〇中央卸売市場○○市場○○部の卸売業者である○○○会社(以下「会社」という。)が○○○中央卸売市場○○市場(以下「市場」という。)において行う卸売のための販売の委託の引受は、卸売市場法(昭和46年法律第35号。以下「法」という。)、同法施行規則(昭和46年農林省令第52号。以下「省令」という。)、○○○中央卸売市場業務規程(以下「業務規程」という。)、同規程施行規則(以下「規則」という。)その他関係諸法令によるほか、受託者との間に特約のない限り、本約款によるものとします。

  (会社の義務) 
第2条  会社は、委託者のために、受託した物品の卸売を誠実に行います。
2  会社が本約款に違反して委託者に損害を与えたときは、その賠償の責任を負います。

  (委託者の義務)
第3条  委託者は、委託する物品については、次に掲げる事項に適合し、その商標信用を保証する責任を有するものとします。
  (1)  食品表示法に基づく食品表示基準(名称及び原産地表示等) 
  (2)  食品衛生法上の基準及び規格
  (3)  牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法における「特定牛肉」を委託する場合は、同法で定める「個体識別番号」の表示方法

  (委託物品の引渡し)                                                                         
第4条  委託者は、会社に対する委託物品の引渡しをすべて市場内の卸売場で行うこととします。
ただし、法第39条第1号又は第2号前段の規定により卸売をする場合には、当該場所で引渡しを行うこととします。

  (委託物品の受領)
第5条  会社は、委託物品の引渡しを受けたときは、委託者に対して、ただちに、その物品の種類、数量、等級、品質、受領のときにおける物品の状態及び受領の日時を通知します。ただし、受領の翌日までに売買仕切書を発送する場合は、売買仕切書の発送をもって受領の通知に代えることができることとします。
2  前項の場合において、委託物品について、種類又は品質の相違、損敗、数量の不足等の異状を認めたときは、会社は引渡しを受けた後遅滞なく開設者の指定する検査員の確認を受け、ただちにその結果を委託者に通知することとし、また、当該物品を販売したときは、その結果を売買仕切書に付記することとします。
3  会社は、委託物品の異状については、前項の確認を受け、その証明を得なければ委託者に対抗することができないものとします。

  (委託物品の保管)
第6条  会社は、受領した委託物品の販売が終了するまでは、その保管の責任を負うものとします。
2  会社は、会社の責めに帰すべき事由によって委託物品の保管中に生じた腐敗損傷等委託者の受けた損害について、その賠償の責任を負います。
3  会社は、委託物品の卸売に当たりその一部を見本に供した場合は、その見本に供した物品に通常生ずる品質の損傷若しくは低下又は減量等については、その責任を負いません。     

  (委託物品の手入れ等)
第7条  会社は、委託物品の性質に従い、その販売のため通常必要とする手入加工その他の調製をすることができるものとします。

  (委託物品の検査)
第8条  会社は、委託物品の保管中その物品について国又は地方公共団体の検査を受けたときは、速やかに、その概要等を委託者に通知します。

  (衛生上有害な物品等の受託拒否)
第9条  会社は、衛生上有害な物品又は客観的事情に照らして食品としての安全性が十分に確保されておらず健康に危害を及ぼす可能性がある物品、市場の過去の実績からみてすべて残品となり販売に至らなかった物品と品質が同程度であるとして開設者の指定する検査員が認めた物品、食品表示法その他の法令の定めに違反する物品、市場施設の処理能力を超える入荷が見込まれる場合で物理的に受け入れが困難な物品、本約款によらない販売の委託の申込みがあった場合の物品、市場外取引や他市場での残品の出荷であることが明白であり、これが同一の出荷者により繰り返し行われ、その量も相当程度ある場合の物品及び暴力団関係者から販売の委託の申込みがあった場合の物品の販売の委託は、引き受けません。
2  前項に掲げる物品について、販売の委託があったとき、又は国若しくは地方公共団体から売買を差し止められ、若しくは撤去を命ぜられたときは、会社は、開設者の指示に従って、これを処分することがあります。
3  前項の処分によって生じた費用および損害は、すべて委託者の負担とします。
4  第2項の処分をしたときは、会社は、処分に関する開設者の証明書を添付し、速やかに、その旨を委託者に通知します。

  (帳簿の閲覧)
第10条  会社は、委託者の請求があるときは、特別の事情がある場合を除いて、営業時間中、いつでも販売の委託を受けた物品の販売に関する諸帳簿及び書類の閲覧の求めに応じ、かつ、質問に応答します。

  (受信場所)
第11条  委託者からの会社に対する諸通信は、市場内の会社の事務所あてに行うものとします。

  (送り状等の添付) 
第12条  委託者が会社あてに委託物品を出荷する場合は、その物品の種類、数量、等級、品質、その他受領に関し必要な事項を記載した送り状又は発送案内をその物品に添付するものとします。なお、委託物品の運送を他人に委託する場合も同様とします。
2  前項の送り状又は発送案内をその物品に添付しないときは、委託者は、品質の相違、数量の不足又は委託先の不明等による受領の遅延について、会社に対抗することはできないこととします。

  (委託物品の上場)
第13条  会社は、委託物品を、その受領後最初の卸売取引に上場するものとします。
2  会社は、委託者に著しく損害を与えるおそれがあることその他相当の事由があると認めたときは、委託者の同意又は開設者の承認を受けて委託物品の全部又は一部についてその上場を前項の翌日の卸売取引へと変更するか、翌日及びそれ以降の連続する営業日へ分割して上場することができることとします。
3  委託物品の上場順位は、委託者から特段の指示がない場合は、会社の判断により決めることができるものとします。

  (販売方法)
第14条  委託物品の販売の方法は、次の各号に掲げる物品の区分に応じ、当該各号に掲げる販売方法によることとします。
  (1)  業務規程別表第1に掲げる物品  せり売又は入札の方法
  (2)  業務規程別表第2に掲げる物品  毎日の卸売予定数量のうち規則で定める割合に相当する部分についてはせり売若しくは入札の方法、それ以外の部分についてはせり売若しくは入札の方法又は相対取引
  (3)  業務規程別表第3に掲げる物品  せり売若しくは入札の方法又は相対取引
2    前項第1号及び第2号に掲げる物品(前項第2号に掲げる物品にあっては、同号の一定割合に相当するせり売若しくは入札の方法による部分に限る。)について、次の各号のいずれかに該当する場合であって、開設者の承認を受けたときは相対取引の方法によることができることとします。
  (1)  災害が発生した場合
  (2)  入荷が遅延した場合
  (3)  卸売の相手方が少数である場合
  (4)  せり売又は入札の方法による卸売により生じた残品の卸売をする場合
  (5)  会社と仲卸業者又は売買参加者との間においてあらかじめ締結した契約に基づき確保した物品の卸売をする場合
  (6)  緊急に出港する船舶に物品を供給する必要があるためその他やむを得ない理由により通常の卸売開始の時刻以前に卸売をする場合
  (7)  次条の規定により、当該市場における仲卸業者及び売買参加者以外の者に対して卸売をする場合
3  第1項第2号及び第3号に掲げる物品については、次の各号に掲げる場合であって、開設者の指示を受けたときは、せり売又は入札の方法によることとします。
  (1)  当該市場における生鮮食料品等の入荷量が一時的に著しく減少した場合
  (2)  当該市場における生鮮食料品等に対する需要が一時的に著しく増加した場合
4  第2項第6号の規定により卸売をしたときの当該物品の卸売価格(消費税及び地方消費税を含む価格とします。以下同じ。)は、当該物品と同種の物品についてその日に価格形成された卸売価格を基準として開設者が定める価格設定基準に基づき算定した価格とします。

  (当該市場の仲卸業者及び売買参加者以外の者に対する卸売)
第15条  会社は、次の各号に掲げる場合であって、開設者の許可又は承認を受けたときは、委託物品を当該市場の仲卸業者及び売買参加者以外の者に対して卸売をすることができるものとします。
  (1)  当該市場における入荷量が著しく多いか、又は委託物品が当該市場の仲卸業者及び売買参加者にとって品目又は品質が特殊であるため残品を生ずるおそれがある場合
  (2)  委託物品が当該市場の仲卸業者及び売買参加者に対する卸売をした後残品となった場合
  (3)  開設区域内の他の市場の入荷量を調整するため当該他の市場の卸売業者に対して卸売をする場合
  (4)  開設区域外の卸売市場の生鮮食料品等の入荷事情等からみて、会社からの卸売の方法以外の方法によっては委託物品と同種の物品の出荷を受けることが著しく困難である当該卸売市場の卸売業者に対して卸売をする場合
  (5)  会社が他の市場の卸売業者と締結した集荷の共同化その他の卸売の業務の連携に関する契約に基づき、当該他の卸売市場の卸売業者又は買受人(卸売市場において卸売業者から卸売を受けることにつき開設者の許可又は承認を受けた者をいう。以下同じ。)に対して卸売をする場合
注)食肉市場にあっては家畜の生体は除くものとします。
  (6)  会社が農林漁業者等(農林漁業者又は農林漁業者を構成員とする農業協同組合、農業協同組合連合会、農事組合法人、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、森林組合若しくは森林組合連合会(これらの者の出資又は拠出に係る法人で農林漁業の振興を図ることを目的とするものを含む。))及び食品製造業者等(生鮮食料品等を原料又は材料として使用し、製造、加工又は販売の事業を行う者)と締結した国内産の農林水産物を利用した新商品の開発に必要な素材の供給に関する契約に基づき、当該食品製造業者等に対して卸売をする場合
  (7)  会社が食品製造業者等と締結した国内産の農林水産物の輸出に関する契約に基づき、当該食品製造業者等に対して卸売をする場合
注)食肉市場にあっては家畜の生体は除くものとします。

  (販売不成立の場合の処理)
第16条  会社は、委託物品について、その販売が不成立となった場合は、遅滞なくその旨を委託者に通知し、その指図を求めることとします。
2  前項の場合、委託者は会社に当該物品の返送又は廃棄を求めることができるものとします。
3  前項の規定により、委託者の求めに応じて、会社が当該物品を返送又は廃棄した場合に要した費用は委託者の負担とします。

  (指値等の条件) 
第17条  委託者は、委託物品の販売について、指値(消費税及び地方消費税を含まない価格とします。以下同じ。)その他の条件を付すことができることとしますが、その場合には、第12条第1項の送り状若しくは発送案内等に付記するか又はその物品の販売準備着手前までにその旨を会社に通知しなければならないこととします。なお、これらの通知がその物品の販売準備着手前までに到着しないときは、その条件がなかったものとみなすものとします。
2  前項の指値その他の条件を変更しようとする場合は、前項の規定を準用することとします。

  (指値等の条件がある場合で販売不成立の場合の処理)
第18条  会社は、委託物品の販売につき指値その他の条件がある場合において、その条件どおり委託物品を販売することのできないときは、遅滞なくその旨を委託者に通知し、その指図を求めることとします。ただし、委託者の指図を待つと委託者に対し著しく損害を与えるおそれがあると認められる場合においては、開設者の確認を受けて、その条件がなかったものとみなしてこれを販売することができることとします。
2  前項の場合において、損害が生じたときは会社は、その賠償の責任を負いません。
3  第1項ただし書の規定によって販売したときは、会社は、これに関する開設者の証明書を売買仕切書に添付して委託者に送付するものとします。

  (再委託の禁止)
第19条  会社は、委託者の要求又は同意がなければ、他の卸売業者に委託物品販売の委託をすることはできないこととします。

  (委託の解除等)
第20条  委託者による販売委託の解除又は他の卸売業者への委託替えの申込みは、その委託物品の販売準備着手前に限り、会社は、これに応ずるものとします。
2  前項の申込みに応じた場合においては、会社は、委託の解除又は委託替えに応じたために要した費用は委託者の負担とします。

  (会社に事故あるときの処置)
第21条  会社が卸売の業務の許可を取り消されたとき又はその許可に係る卸売の業務を停止されたとき若しくは売買を差し止められたときは、未販売の委託物品は、開設者の指示に基づいて処置するものとします。

  (販売後の事故処理)                                                                             
第22条  委託物品を販売し、これを買受人に引き渡した後において、買受人から隠れた瑕疵があること又は数量、品質に著しい差異があること等を理由として開設者が定める期間内に会社に対して販売代金の減額の申出があった場合であって、その申出について開設者が正当な理由があると認めたときは、会社は、それに相当する減額をします。この場合、会社は、開設者の証明書を添付して委託者にその旨を通知するものとします。

  (委託手数料)
第23条  会社が委託者から収受する委託手数料は、
野菜及びその加工品(つけ物は除く。)は卸売金額(消費税及び地方消費税を含む金額とします。以下同じ。)の1OO分の○、果実及びその加工品は卸売金額の100分の○・・・・とします。
生鮮水産物及びその加工品は卸売金額の100分の○・・・・とします。
食肉は卸売金額の1OO分の○・・・・とします。
花き卸売金額の1OO分の○・・・・とします。   

  (委託者の費用負担) 
第24条  委託物品の卸売に係る費用のうち次に掲げるものは、これらに係る消費税額及び地方消費税額を含めて委託者の負担とします。
  (1)  通信費(当該物品を販売するに当たって委託者等への連絡に要する費用)
  (2)  運送料(会社の当該物品の卸売場までの運搬費及び荷卸しに要する費用)
  (3)  売買仕切金送料
  (4)  保管料(委託物品を冷蔵その他の方法により保管したためとくに経費を必要としたときは、その費用) 
  (5)  調製費(手入れ加工その他の調製につきとくに経費を要したときはその費用)
  (6)  その他会社が立て替えた費用
注)その他正当な理由がある場合は、必要に応じて定めるものとする。
2  委託手数料及び前項各号の費用は、委託物品の卸売金額から控除するものとします。

  (売買仕切書の送付)
第25条    会社は、委託物品の卸売をしたときは、その卸売をした翌日までに、当該卸売をした物品の品目、等級、価格(消費税及び地方消費税を含まない価格とします。以下同じ。)、数量及び価格と数量の積の合計額、当該合計額の8%に相当する金額、前条第2項の規定により控除すべき委託手数料及び費用の金額並びに差引仕切金額(「売買仕切金」とします。以下同じ。)を記載した売買仕切書を委託者に送付するものとします。

  (仕切金の支払)
第26条  売買仕切金の送付は、委託物品の販売をした翌日までに行うこととします。
2  売買仕切金の送付として、前項に定める期日までに委託者の要請等により売買仕切金を現金で支払う場合の支払い場所は、市場内の会社の事務所とします。

  (仕切金の精算)
第27条  委託者は、委託物品の卸売金額が委託手数料と第24条第2項の規定により控除すべき金額の合計額に満たないときは、会社に対し、速やかに、精算するものとします。ただし、委託者が引き続き販売の委託をする場合には、次回の委託物品の仕切計算に合算してこれを精算することができるものとします。

  (再販売)
第28条  会社は、買受人が卸売を受けた物品の引取りを怠ったため委託物品を再販売したときは、その卸売金額によって仕切りを行うものとします。ただし、再販売によって差損金を生じたときは、最初に販売したときの卸売金額によるものとします。

  (電子商取引についての取扱い)
第29条  委託物品を市場に搬入することなく法第39条第2号後段に定める電子情報処理組織を使用する取引方法その他の情報通信の技術を利用とする取引方法(電子商取引)により卸売を行う場合の委託物品の引渡し、受領、事故処理及びその他必要な事項については、第4条、第5条、第12条及び第22条の規定にかかわらず、別に定めるところにより行うこととします。

  (臨時開市等の通知)
第30条  臨時の開市及び休業その他委託者に重要な関係を有する事項については、ただちに委託者に通知するものとします。


(別紙4)
主な事務手続ごとの事務簡素化の区分

1  法及び省令に規定されていない事務手続(2に該当するものを除く。)については、廃止するものとする。
ただし、事務手続によって性格が異なるため、次の類型に応じて取り扱うものとする。
  (1)  存置する必要性が乏しいものについては、直ちに廃止する。
     (a)  上場順位変更届
     (b)  自己の計算による卸売の結果報告
     (c)  せり物品の相対取引の販売結果報告
     (d)  せり売開始時刻前の卸売結果報告
     (e)  相対品を予約相対取引にした場合の結果報告
     (f)   第三者販売結果報告
     (g)  電子商取引結果報告
     (h)  市場外施設設置届出

  (2)  適切な市場運営を確保する観点から、開設者の一定の関与が必要なものについては、事務手続を廃止する代わりに、開設者による事後的な確認が可能となる関係書類の保存義務を課す。
     (a)  支払猶予特約承認申請
     (b)  仕切書・仕切金特約の届出
     (c)  販売条件等承認申請
     (d)  販売担当者届出等

  (3)  開設者の関与について市場ごとに差異がみられるため、直ちに一律廃止とすることは困難であることから、直ちに廃止することができないものについては、条件が整うまでの間は電子化に移行する。
     (a)  出荷・完納奨励金承認申請
     (b)  出荷・完納奨励金支出状況報告
     (c)  販売原票の副本提出
     (d)  相対品を予約相対取引にする場合の承認申請
     (e)  売上高月計表
     (f)   卸売の代行の承認・休止等届・取扱高報告
     (g)  せり売開始時刻前の卸売承認申請
     (h)  委託手数料率届出

  (4)  直ちに廃止することで円滑な市場運営に支障が生じる可能性があり、かつ、電子化についても制約があるものについては、条件が整った段階で、整った条件に応じて電子化に移行又は廃止する。
     (a)  開設区域内販売承認申請
     (b)  事故品等検査申請(販売前・後)
(注)(b)については、口頭での申請とする。

2  法及び省令に規定されている事務手続並びにこれと密接な関連を有する以下の事務手続については、電子化に移行するものとする。
     (a)  せり物品の相対取引の承認申請
     (b)  第三者販売許可申請
     (c)  市場間連携・業者間連携・輸出連携承認申請
     (d)  市場間連携・業者間連携・輸出連携結果報告
     (e)  電子商取引承認申請
     (f)   卸売予定数量報告
     (g)  販売結果報告
(注)(a)、(b)、(c)、及び(e)の承認等申請については、包括的な承認等を導入する。
      ただし、電子化が困難な零細業者の存在や添付書類の多さ等から、直ちに電子化することが困難な以下のものについては、条件が整った段階で電子化に移行するものとする。
     (a)  直荷引き許可申請
     (b)  直荷引き結果報告
     (c)  受託契約約款承認申請
     (d)  せり人登録等申請
     (e)  市場外保管場所指定・解除申出

 

 

 

 

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