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今後の果樹農業における農薬の飛散による影響防止対策について

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17生産第8263号
平成18年3月17日

北海道農政部長あて
地方農政局流通経営部長あて
沖縄総合事務局農林水産部長あて
全国農業協同組合中央会会長あて
全国農業協同組合連合会代表理事理事長あて
日本園芸農業協同組合連合会代表理事会長あて
全国果樹研究連合会会長あて

農林水産省生産局果樹花き課長


農薬の飛散による危害を防止する観点から、これまで「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」(平成15年農林水産省・環境省令第5号)の周知徹底や農薬危害防止運動の実施等、農薬使用者に対し、農薬の適正使用及び農薬の飛散防止措置の実施について、指導の徹底が図られているところである。
一方、平成18年5月から食品衛生法に基づく残留基準値が設定されていない農薬等を一定量以上含む食品の販売等を原則禁止する制度(いわゆる「ポジティブリスト制度」)が導入されることから、今後、農薬の使用に当たっては、当該農薬を使用する農産物のみならず、周辺のほ場で栽培・収穫される農産物においても、食品衛生法の基準を超えた農薬が残留しないように注意する必要がある。
万一、基準値を超えた農薬が農産物で検出された場合、
[1] 出荷停止や回収等により、当該農産物の生産者等の経営に悪影響が生ずる
[2] 当該農薬の使用者が特定された場合は、相当の被害補償等が必要となる
[3] 当該地域における農産物への風評被害の恐れがある
など、その影響は農家経営のみならず、当該地域の農業全般に及ぶことが懸念される。
その際、果樹農業は、
[1] 防除対象が幅・高さのある樹木である
[2] 授粉や作業平準化の観点から、早生から晩生まで生育特性の異なる品種や多品目の混植を行う場合がある
[3] 労働軽減等の観点から、防除効果が及ぶ範囲の広いスピードスプレヤー等を使用する
一方、今後とも果実を安定的に生産するためには、適切な農薬使用に基づく病虫害の防除が重要である。このため、今後の果樹農業における農薬の飛散による影響防止の観点から配慮すべき事項について、別紙のとおり取りまとめたので、農業団体等関係機関等と連携し、果樹農業者への周知を図るとともに、ポジティブリスト制度に対応した防除の実施に遺漏のないように指導を徹底されたい。

(別紙)
1.農薬散布に対する基本姿勢
従来、農薬の散布に際しては、散布対象樹に対する使用基準を遵守しつつ、主に防除効果の発現及び作業の省力化・効率化の観点から作業を実施してきたところである。
一方、今般施行される農薬のポジティブリスト制度の下では、農薬の飛散による影響防止を徹底する必要があることから、農薬の使用に当たっては、防除効果の発現と併せて、散布対象樹以外の周辺に作付けされている食用農作物への影響防止を考慮することを基本姿勢とすることが望ましい。
2.地域一体的な取組の推進
農薬の飛散による影響を防止するためには、果樹をはじめ自ら栽培する農作物に加え、周辺ほ場等で栽培される水稲や野菜等他の農作物への影響も考慮に入れて対策を講じる必要がある。
その際には、
[1] 地域内の農作物の作付状況、生育状況及び収穫等作業の実施スケジュールを共有するとともに、
[2] 必要に応じて、農作物や作型の変更等を行う
など、地域が一体的に取り組むことが必要となる。
特に、果樹は永年性作物であることから、果樹園及びその周辺での農作物や作型の変更等については、周囲の農業者に必要な対策を要請する場面が多くなることが想定される。
このため、円滑な地域調整を進める観点から、果樹農業者が「農薬の飛散による周辺作物への影響防止対策について」(平成17年12月20日付け17消安第8282号消費安全局長、生産局長、経営局長通知)に基づき、地域単位の指導体制や農業者相互の連絡体制の構築に積極的に参画し、地域一体的にドリフトの拡大防止に取り組むことが望ましい。
3.農薬散布における留意事項
農薬散布に当たっては、「地上防除ドリフト対策マニュアル」(平成17年12月 日本植物防疫協会)等を参考に、当該園地及び周辺ほ場における作物の生育状況を十分把握した上で、
[1] 防除効果のある散布量を検討し、防除効果の発揮に必要な量以上の過大な散布を行わない
[2] ドリフトしにくい剤を使用する
[3] できる限り混植樹や周辺ほ場の農作物に共通する農薬を選択する
等の配慮が必要である。
また、農薬散布にあたっては、できる限り散布対象樹の近くからの散布に心がけるとともに、特に、スピードスプレヤー等農薬散布能力の高い機器の使用に当たっては、風向、風速等、農薬の飛散に影響する気象要因に十分留意することが必要である。
さらに、防除効果の発現に機器の最大散布能力(風力)は必ずしも必要でないことから、
[1] 園地周縁部での散布や転回時など、散布・走行場所に応じて、散布方法の切り替え・調節(運転席でのノズルの開閉操作、送風量の調節等)をきめ細かく実施するとともに、
[2] 必要に応じてドリフト低減ノズルや飛散防止シャッター等のアタッチメントを活用し、
散布対象樹以外への農薬の飛散を防止しつつ、散布の必要な部分へ必要量の農薬散布を行うものとする。なお、ドリフト軽減アタッチメント等は、あくまで散布時の適切な機器の調整を前提として効果を発揮することから、農薬の飛散影響の防止を単にアタッチメント等の装着に頼る安易な対応は行わない。
(散布方法の切り替え・調整の例)
・ 園地周縁部での散布及び転回時には、散布対象樹に向いていない外側ノズル等を閉鎖するとともに、必要最小限に風量を押さえる。
・ 散布対象樹の樹高等に応じて、開く散布ノズルの方向や送風量の調節を行う。
なお、具体的な対応策を検討する際には、「地上防除ドリフト対策マニュアル」(平成17年12月 日本植物防疫協会)等を参考にされたい。
4.中長期的視野も含めた栽培・園地管理面からの取組
園地設計は生産性の向上を主眼として行われることが多いことから、現在の園地は、授粉のための混植や高い植栽密度の園地が見られ、散布方法の工夫のみでは、農薬飛散の影響防止と作業性の確保が必ずしも両立しがたい場合がある。
このため、農薬の飛散影響の防止対策が無理なく成果を上げられるように、中長期的視野も含めて、栽培・園地管理面からも以下のように取り組むことが望ましい。
(1) 低風量でも十分農薬散布ができるよう樹形の管理を行う。
〈例〉張り出した枝や高い枝の切除、樹内部の枝の切除、わい化栽培など低風量による散布でも防除効果が発現しやすい樹形への転換 等
(2) 園地設計や植栽に当たっては、
[1] 農薬飛散防止効果も期待できる防風林・ネットの設置
[2] 緩衝帯としても機能する園地周縁への園内道配置
[3] SS等の農薬散布機械が効率的に走行できる園内道や樹体の配置
などに配慮する。

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