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17年8月号文字情報

味の再発見! 昔ながらのニッポンの郷土料理 第4回

山形県 だし

夏の野菜たっぷりで、暑くても食が進む家庭の味
「だし」と聞けば誰しもかつお節などのだし汁を思い浮かべるだろうが、これがれっきとした郷土料理名なのである。
「さっぱりしてて食べやすいので、暑い時期には毎日のように作ります」という声は山形でよく聞かれた。
なす、きゅうり、みょうがなどの夏野菜を細かく刻み、しょうゆなどで味つけすれば完成する手軽さもいい。そのままおかずにしたり、豆腐やそうめんにかけたり、「焼いたもちにのせる」なんて人も。山形の地で多様に今も楽しまれている郷土料理だ。

家ごとに味つけは異なる。しょうゆだけの人もいれば、「みりんを加えて甘めに」派も多く、さらに七味をふる人もいる。最近では、手軽にめんつゆやだしじょうゆを使う人が主流のよう。

具材もまた人それぞれ。先に挙げたなす、きゅうり、みょうがは定番として、ここに「納豆昆布」という細切り昆布を混ぜる人は少なくない。これは、がごめ昆布という、粘りけのよく出る昆布を細く刻んだもの。夏野菜と一緒に入れてしばしねかせると粘りが出て、全体がよくなじむ。暑さ負けをして食欲のないときなど、よく冷やした納豆昆布入りの「だし」はつるつると口当たりがよく、いいものである。

この料理、発祥や名の由来は定かではないが、県内陸部の村山地方で食べられてきたよう。
話は飛ぶようだが、この村山地方には立石寺(りっしゃくじ)という天台宗の古刹(こさつ)がある。松尾芭蕉(ばしょう)が「閑(しずか)さや岩にしみ入る蟬(せみ)の声」という句を詠んだと伝わる、美しい寺だ。通称は山寺。ここを訪れてふと「芭蕉もだしを食べただろうか?」と考えた。蟬の声を聞きつつ「だし」を食べたら暑さもしのげてさぞよかったろう……と思うが、残念ながら「だし」を詠んだ句を、芭蕉は遺していない。

[写真1]
撮影/島 誠 料理制作/三好弥生

[写真2]
立石寺(山形県山形市)

[写真3]
なすやみょうがのほか、青じそを入れても実においしい。ほかにはオクラを入れる人も多い。「夏野菜の即席漬けなんですよ」とは、ある県人の言葉。

文/白央篤司
フードライター。研究テーマは日本の郷土食と「健康と食」で、月刊誌『栄養と料理』(女子栄養大学出版部)などで執筆。著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)『ジャパめし。』(集英社)などがある。
ブログhttp://hakuoatsushi.hatenablog.com/[外部リンク]

特集1 夏野菜

暑い季節に旬を迎える夏野菜。色鮮やかで、みずみずしく、栄養豊富な野菜の効用や食べ方をぜひ知ってください。

夏においしい野菜の魅力を再確認

旬の野菜はおいしいうえ栄養もたっぷり
ふだんスーパーに並んだ野菜の数々を見慣れている私たちは、季節を感じることが少なくなっているかもしれません。しかし、トマトやきゅうり、なすはいずれも暑い時期に多く出回る野菜だということをご存じでしたか。
こうした旬の野菜はおいしくて値段も手ごろ。さらに栄養も豊富です。例えば、トマトのリコピンという抗酸化作用のある成分は、旬の8月には2月の約3倍になるというデータがあります(女子栄養大学生物有機化学研究室調べ)。

健康を維持するための必要な量をとろう
それぞれの産地では、生産者がよりおいしい野菜を新鮮なまま届けようと努力を積み重ねています。ところが、日本人の野菜の消費量は減少傾向にあります。平成13年度に1人当たり年間102キログラム消費していたのですが、平成27年度には91キログラムと1割も減っています。

ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素を多く含む野菜が、健康のため欠かせないことは広く知られています。厚生労働省では、健康の維持・増進、生活習慣病対策として成人の1日当たりの摂取量の目標値を350グラムとしています。

しかし、世代別でみると、すべての年代で目標値に達しておらず、特に20歳代から30歳代で不足が目立ちます。とはいえ、平成18年に975円だったサラダの1人当たり1年の購入金額は平成27年で1360円に増えていることから、私たちの野菜の買い方が変化しているともいえます。

野菜好きの子どもを増やしたいと、生産者と栄養士などが連携して学校給食に郷土の野菜料理を取り入れるといった取り組みが行われています。またスーパーの店頭などでは品種ごとの特徴や調理法などを表示する情報提供の試みも盛んになりました。

夏野菜が盛りを迎えるこの時期、必要な栄養をとるためにも、野菜の知識を増やし、料理のレパートリーを広げてみてはいかがでしょうか。

[写真1]

[グラフ1]
■野菜の卸売市場入荷量
出典:東京都中央卸売市場調べ(平成28年)

[グラフ2]
■世代別野菜摂取量 摂取目標量=350グラム (成人1人1日当たり)
※「平均」は、1~19歳も含む、全世代の値。
出典:厚生労働省「平成27年国民健康・栄養調査」

[グラフ3]
■ サラダの購入金額の推移 ※1人1年当たり購入金額
出典:総務省「家計調査」(農林漁家世帯を除く2人以上の世帯)、ただし、総務省「消費者物価指数(平成22年基準)」のサラダの指数により算出



取材・文/下境 敏弘
撮影/島 誠

太陽をいっぱい浴びて育った旬の夏野菜を食べよう
夏野菜には疲労回復や食欲増進などの作用を持つ栄養成分が含まれています。
旬の野菜を食べて暑い夏を乗り切りましょう。

[写真1]
きゅうり
夏野菜の定番は水分がたっぷり
炒めものにも使えるが、歯応えを残すように軽く炒める程度にする。約95パーセントが水分だが、ビタミンCやカリウムも含むため、疲労回復やむくみ改善が期待できる。体を冷やす作用も。

[写真2]
なす
紫色の皮にポリフェノールが
油との相性がいいので、まず素揚げした後に煮たり炒めるようにすると、おいしくなる。皮に含まれるポリフェノール成分のナスニンは、活性酸素の働きを抑えるといわれている。

[写真3]
トマト
ビタミンA、Cを豊富に含む
赤い色を出す成分のリコピンには抗酸化作用があり、加熱したり、油とともにとると体に吸収されやすい。種の周りのゼリー質には、うまみ成分のグルタミン酸が豊富に含まれる。

[写真4]
ピーマン
ビタミン類やカロテンが豊富
加熱すると青臭さが抜けて食べやすい。加熱しても壊れにくいビタミンCのほか、ビタミンCを吸収しやすくするビタミンP、免疫力を高めるといわれるカロテンも含んでいる。

[写真5]
ゴーヤ
豊富なビタミンCで夏バテを防止
独特な苦みが特徴。ゴーヤのビタミンCは加熱しても壊れにくいため、炒めものや天ぷらに。苦み成分は胃液の分泌を促して食欲を増進。わたと種を取り除いて塩もみすると苦みが和らぐ。

[写真6]
オクラ
ネバネバ成分が腸を整えてくれる
粘り気のもとになる食物繊維のペクチンが腸内環境を整えて便通も改善。下ごしらえは包丁でがくをむき、塩を振って板ずりを。火が通りやすいので、ゆでる際は1分ほどあれば十分。

[写真7]
枝豆
疲労回復や貧血防止が期待できる
枝豆は大豆が熟す前の状態。大豆と同じようにカルシウムやイソフラボンなどを含み、ビタミンC、カロテンの量は熟した大豆よりも多い。洗わずに塩もみした後、さやのままゆでるといい。

[写真8]
みょうが
薬味として使いやすい爽快な香り
香気成分のα-ピネンは発汗を促し、食欲も増進させるといわれる。利尿作用のあるカリウムも含んでいる。生で食べるのが一般的。加熱するなら香りがとばないように短時間で。

[写真9]
さやいんげん
さやにも豆にも栄養がある
いんげん豆の食用の若いさや。ゆでればさやごと食べられるが、かたい筋があれば取って。ビタミンC、カロテン、カリウムのほか、アミノ酸も含んでいる。

[写真10]
ズッキーニ
じっくり火を通すと甘みが増す
クセがなく低カロリーなので、使いやすい食材。切り方で食感が変わるため、料理に応じて工夫できる。免疫力を高めるといわれるカロテン、ビタミンCのほか、ビタミンB2も含む。

[写真11]
冬瓜(とうがん)
ほとんどが水分の低カロリー野菜
冷暗所なら冬まで保存可能なため「冬瓜」と呼ばれる(諸説あり)。体を冷やすだけでなく、利尿作用のあるカリウムも含む。調理の際は、わたと種を取り、薄く皮をむく。

[写真12]
モロヘイヤ
ぬめりが消化を助けてくれる
ぬめり成分のマンナンは胃腸の粘膜を保護するだけでなく、血糖値やコレステロールの上昇を抑えるといわれる。根元は筋があってかたいので、調理の際は切り落とすのがよい。

[写真13]
スイートコーン
実がつぶれないように気をつけて
胚芽部分にリノール酸やオレイン酸が豊富に含まれているので、実はなるべくつぶさないで。ゆでるときは水からにして、余熱で仕上げた後、実の間に包丁を縦に入れると、うまく取れる。
※スイートコーンは甘いとうもろこしという意味で、品種としては実に含まれる糖分が多いとうもろこし(甘味種)に含まれる。

取材協力/レタスクラブ
取材・文/Office彩蔵
撮影/島 誠

おいしい夏野菜の代表格「トマト」の種類と見分け方
夏野菜の中でも、大きさ、色といった種類が豊富なトマト。
ここでは、ハヤシフルーツ東急東横店 東急フードショーの店長・岡村鉄平さんに聞いた、主な生食用トマトの特徴をご紹介します。

生食用の定番、桃太郎をはじめ数多くの品種がある
トマトが初めて日本に輸入されたのは、江戸時代。しかし、最初は食べ物ではなく「珍しい形の観賞用植物」でした。真っ赤なトマトは当時の人たちにとって、食用としては受け入れ難いものだったようです。明治以降になると日本人もトマトを食べるようになり、国内での栽培も盛んになりました。

現在、日本で生産されるトマトの品種はとても多く、120種以上あるといわれています。トマトには生で食べられる品種と、加工用の品種がありますが、店頭販売されるのは生食用が中心。なかでも有名なのは「桃太郎」系です。昭和60年に発表後、品種改良を重ねて、これまでに31品種の桃太郎シリーズが誕生。現在は、22品種が全国で販売されています。

大きさと糖度で分けられ、今はミニトマトがブーム
桃太郎シリーズをはじめ、たくさんの種類があるトマトは、大きさで見分けると、用途に合わせて選びやすくなります。店頭で販売されているトマトは、大まかに大玉、中玉、ミニ、マイクロミニの4種類に分けられます。

大きさに加え、糖度にも注目するといいでしょう。トマトならではの酸味だけでなく、甘さも感じることができ、食べやすくなっています。基準はありませんが、糖度8度以上のものを高糖度トマトとして、販売している例が多いようです。8度以上とは、一般的ないちごと同じくらいの糖度。店頭でよく見かけるフルーツトマトは品種名ではなく、トマトの中の水分を極力抑えて完熟させ、糖度を高めたものの総称になります。

近年、市場では中玉や高糖度のトマト・ミニトマトの売れ行きがよくなっています。最近はカラフルなミニトマトも出回るようになり、店舗でも人気が高まっています。その理由は、切らずに食べられる大きさであることと、種類が豊富でサラダの彩りに最適だからともいわれています。

「当店では糖度、色など多くの種類を扱っており、とくにミニトマトは1個ずつバラ売りもしています。様々な色のミニトマトにも力を入れていて、黄色や緑、紫といったカラフルな種類を混ぜて購入するお客さまも増えています」(ハヤシフルーツ東急東横店東急フードショー・岡村さん)。

大玉トマト
[写真1]
桃太郎
大玉の中でも、大きめ、小さめなどサイズが豊富。果肉はかためでほどよい酸味。

[写真2]
桃太郎ゴールド
サラダのアクセントになる黄色いトマト。果肉はしっかりしていて独自の味が楽しめる。糖度7度。

中玉トマト
[写真3]
カンパリ
房ごと収穫する、房つきのトマト。甘み、酸味、コク、香りのバランスが絶妙な品種。

[写真4]
華クイン
香りが良く、すっきりとした甘さ。皮がやわらかいので食べやすく、みずみずしい。糖度8.5度。

[写真5]
アメーラ
皮は薄めで、中心部は肉厚。酸味と甘みがバランスよく感じられることで人気。糖度8.5度。

ミニトマト
[写真6]
フルティカ
皮は薄くて口に残りにくく、かんでも中身の飛び出しが少ない。なめらかな果肉。糖度7.5度。

[写真7]
ノーブル・バイオレット
深みのある紫色で、ぶどうを思わせる甘い香り。果肉は少しかためで濃厚な味。糖度7.5度。

[写真8]
エメラルド
宝石のエメラルドのような緑色のトマト。弾力性のある果肉で、さわやかな風味が特徴。糖度7.5度。

[写真9]
ソフィア・オレンジ
鮮やかなオレンジ色のトマト。口どけが良く、香り高い味わい。β-カロテンも豊富。糖度9.5度。

[写真10]
優糖星(ゆうとうせい)
和歌山県JA紀州のオリジナル。果肉がやわらかく、甘みは強め。とても香りがいい。糖度10.5度。

[写真11]
ルビー
果肉はかためでコクがあり、食べごたえのあるトマト。メロンほどの糖度があり甘さ抜群。糖度12度。

[写真12]
赤糖房(あかとんぼ)
和歌山県JA紀州のオリジナル。樹から房どりする房つきミニトマト。フルーツ感覚で食べられる。糖度9~10度。

[写真13]
シャイニング・イエロー
サラダの彩りにぴったりな色。皮はかためで、かみしめるたびに甘さが広がる。糖度10度。

マイクロミニトマト
[写真14]
マイクロトマト
料理の飾り用として使われることが多い、小さなタイプ。トマトの味もきちんと感じられる。

※トマトの名称は品種または商品名です。また、大きさの分類・糖度はハヤシフルーツ東急東横店 東急フードショーで6月上旬取材時に購入した際の表示をもとにしています。

取材協力/東京青果、ハヤシフルーツ東急東横店 東急フードショー
取材・文/Office彩蔵
撮影/島 誠

生産地を訪ねて【福島県白河市】 生食用は完熟前に市場へ出荷
「ピンク系」と呼ばれる生食用トマトは、どのように栽培されているのでしょうか。福島県の産地を訪れてみました。

生産に適した条件がそろった福島県南部地方
都道府県別のトマト収穫量ランキングで8位(平成27年産)の福島県。とくに初夏から出荷が始まる「夏秋(かしゅう)トマト」では全国有数の産地です。

その中でも、白河市は東北地方南部にあり、野菜の大消費地である首都圏に隣接しています。標高が高く、昼と夜の気温差が大きいことから、野菜づくりに適した気候。しかも、高地ながら平野が広がり、日当たりが良好です。土も火山灰由来で野菜に向いている黒(くろ)ぼく土(ど)の地域が多く、阿武隈川(あぶくまがわ)が流れ、地下水も豊か。これらの好条件がそろい、引き締まったこくのあるトマトができます。

この地域で作られているのが、皮が薄くて食べやすい「ピンク系」の生食用トマトです。品種は、6月中旬から11月中旬まで出荷する桃太郎を栽培。これが終わると、12月下旬から翌年5月下旬にかけて「旬太郎」というブランドトマトが出荷されます。「桃太郎ヨーク」という品種で、糖度9.0以上のものです。

白河地区を管轄するJA夢みなみはトマトを基幹作物と位置づけ、ビニールハウスを用いた施設栽培を推進し、共同出荷のシステムを整えてきました。また消費者の信頼確保に努め、安全・安心で、自然環境に配慮した栽培方法に取り組んでいます。

1つずつ大切に扱い生産、選別、出荷を行う
「甘みと酸味のバランスがよい、さっぱりとして生で食べるのに向いたトマトを、健康的に、安定的に育てるため、土壌の分析を行うなど管理に力を入れています。同じ地域の生産者もそれぞれこだわりをもっているため、同じ品種でも出来が異なります」と言うのは、生産者の中山さん。5000平方メートルのビニールハウスで桃太郎を生産しています。

栽培は2月の土づくりから始まります。4月に苗を植え、収穫を始めるのが6月。生食用トマトは茎を支柱で支えながら、上に伸びるように育てていきます。実が熟すのも地面に近いところからで、色や大きさが適正な状態になったトマトから収穫します。

朝、収穫したトマトは選果場に運ばれ、品質検査を受けます。目視によるチェックの後、品質センサーで大きさや形状など8つの項目を瞬時に判別し、18の規格に分けてから、箱詰めにします。鮮度を保つため、出荷の時間まで12度に保たれた倉庫で保管します。おいしいものを届けるため、すべての工程でトマトを1つずつ大切に管理しているのです。

「野菜は選果や箱詰めに多くの労働時間を要しますが、共同出荷のシステムが確立したことで、負担が減り、その分、生産に労力をかけられるようになりました」と中山さん。

倉庫から出すとすぐに色づくトマトは、予冷トラックに積まれ、消費地に向かいます。

[写真1]
生食用トマトの断面。

[写真2]
1つずつ丁寧に手でもいでから、ヘタをハサミでカットする。

[写真3]
「同じ品目を同じ作業で作っても毎年、出来が異なります。農業は奥が深く、毎年1年生のつもりで学んでいます」と語る中山哲也さん。

[写真4]
中山さんを含め6戸の農家が共同で運営するビニールハウス群。苗を育てるハウスもある。

[写真5]
生食用トマトの茎はよけいな芽や葉を取り除きながら、ひもで吊り、縦に仕立てていく。

[写真6]
最新の設備を備えた選果場。ピーク時は40人で作業を行い、年間50万箱を出荷する。

[写真7]
輸送する間に潰れたり、傷んだりしないよう、実に適度なかたさが残るうちに収穫する。

[写真8]
消費者の手元に届くころには赤く。

真夏に収穫する露地栽培の加工用
生食用トマトと品種も栽培方法も異なる加工用トマト。
また、すべての国産加工用トマトは契約栽培です。

太陽をたっぷり浴び、地面で育つ「赤系トマト」
一般に販売されているトマトジュースやトマトケチャップなどの原料となる加工用トマトは「赤系」と呼ばれ、「ピンク系」と呼ばれる生食用に対し、皮がよりかたく、実が真っ赤なことが特徴です。

また、日本国内で栽培されている加工用トマトには、各メーカーや農業関係機関等によって開発されたさまざまな品種があり、主にストレートトマトジュースに加工されています。

栽培方法も異なります。加工用トマトは露地の畑で支柱は用いず、畝(うね)のうえに茎や葉をはわせて育てます。こうするのは、栽培にかかるコストを下げ、よりたくさんの太陽を浴びさせるためでもあります。3~4月に苗を植えて、8~9月に完熟したものを収穫。その日のうちに加工工場に運び、新鮮なうちにストレートトマトジュースに加工します。また、収穫をする際の手間を大幅に軽減するため、収穫時にヘタが枝(茎)に残り、果実だけがとれるように品種改良がなされています。

規格にもとづいてすべて契約栽培
日本国内の加工用トマトの収穫量は約3万3千トン(平成27年産)ほどです。しかし契約栽培のため、スーパーマーケットや青果店で見かけることはありません。

あらかじめ決められた規格があり、茎についたまま完熟させたものであることや、栄養成分であるリコピンの含有量、赤みの程度などを満たしていることが必要です。この規格に合うものはすべて引き取られます。つまり、面積当たりの収穫量を増やすことが売上増に直結することに。作業の効率化を図るため、機械を利用して一挙に収穫する方法もあります。

[写真9]
加工用トマトの断面。

[写真10]
収穫前の加工用トマト。

[写真11]
加工用トマトは露地で育てる。トマトはもともと地面をはうように育つ植物。

[写真12]
栽培の省力化・規模の拡大のため、機械を利用して収穫する生産者もいる。

[写真13]
太陽の光をたっぷり浴び、赤く熟してから収穫される。

[写真14]
収穫した加工用トマトはその日のうちに加工工場に運び込む。

取材・文/下境 敏弘
撮影/島 誠

たくさん買ってもおいしく使いきれる手作りトマトソースで時短レシピ
旬だからこそ安価なトマトを使って、シンプルなトマトソースに。
うまみが凝縮しているので、調理時間が短くてもおいしく作れます。
和風メニューとの相性もよいので、トマト料理の幅が広がりますよ。

[コラム1]
栄養の話
加熱すると吸収しやすい
トマトはビタミンCのほか、ミネラルも豊富。グルタミン酸などのアミノ酸、抗酸化成分のリコピンなども含む、栄養価の高い野菜。リコピンは老化防止が期待でき、トマトは加熱するとリコピンを体内に吸収しやすくなるという研究結果も。加熱したソースなら効果的です。

[写真1]
和の味つけにも合うシンプルトマトソース
自家製トマトソース(基本)
材料(500ミリリットルの保存容器1個分)
トマト 1キログラム 塩 小さじ1と2分の1

作り方
(1)トマトはへたを除き、くし形切りにする。フライパンに入れて塩を加え、木べらなどで押して軽くつぶしてから中火にかける。
(2)水が出てきて沸騰したら、アクを取り除きながら時々混ぜ、気になるようであれば目立つ皮を除き、半量になるまで13~15分煮る。

※粗熱がとれたら保存容器に入れて、冷蔵庫で4~5日間保存可能。

[コラム2]
こんな使い方も
●豆腐にかけて冷奴に
●コーンチップスのディップに
●めんつゆに混ぜてそうめんつゆに
●肉や魚のソテーにかけて
●オリーブ油と混ぜてドレッシングに

[写真2]
食欲がないときにもサラりと飲める
アレンジ…冷たいトマトスープ

材料(2人分)
自家製トマトソース(基本参照) 1カップ
冷水 2分の1カップ
玉ねぎのすりおろし 大さじ1
レモン汁 小さじ2
ゆで枝豆 適量

作り方
(1)枝豆以外の全ての材料を混ぜてざるでこす。
(2)器に盛り、枝豆をさやから出して散らす。
※玉ねぎは省いてもいい。こしてから冷蔵庫で冷やすとさらにおいしい。

[写真3]
しょうゆ味でさっぱりとした味わいに
アレンジ…トマト肉じゃが

材料(2人分)
じゃがいも 2個(約300グラム)
玉ねぎ 2分の1個
サラダ油 小さじ2
牛切り落とし肉 100グラム
砂糖 大さじ1と2分の1
自家製トマトソース(基本参照) 大さじ5
水 2分の1カップ
しょうゆ 大さじ1

作り方
(1)じゃがいもは一口大に、玉ねぎはくし形に切る。じゃがいもを水にくぐらせて耐熱皿にのせ、ラップをかけて電子レンジで約4分加熱する。
(2)フライパンに油を熱し、玉ねぎと牛肉をさっと炒める。じゃがいもと砂糖を加え、全体にからめながら炒める。
(3)トマトソース、水、しょうゆを加えてふたをし、汁けが少なくなるまで約8分煮る。

[写真4]
カラフルミニトマトも加えて華やかに
アレンジ…冷製トマトパスタ

材料(2人分)
自家製トマトソース(基本参照) 大さじ7
ツナ缶 小1缶(70グラム)
オリーブ油 大さじ1
こしょう 少々
スパゲッティ(1.4ミリ) 140グラム
ミニトマト 2~3個

作り方
(1)トマトソース、缶汁をきったツナ、オリーブ油、こしょうを混ぜ、冷蔵庫で冷やす。
(2)スパゲッティを袋の表示より2分長くゆでて湯をきり、冷水で冷やして水をよくきる。
(3) (1)、(2)、半分に切ったミニトマトを合わせ、器に盛る。好みでバジルを添える。

[写真5]
ほかの夏野菜もたっぷり加えて大満足
アレンジ…簡単トマトカレーライス

材料(2人分)
なす 大1本
ズッキーニ 2分の1本
スイートコーン 3分の1本
サラダ油 大さじ2分の1
にんにくのみじん切り 小さじ1
しょうがのみじん切り 小さじ1
豚ひき肉 100グラム
玉ねぎのみじん切り 2分の1個分
水 1と4分の1カップ
自家製トマトソース(基本参照) 大さじ5
カレールウ 50グラム
温かいご飯 適量

作り方
(1)なすとズッキーニは小さめに切り、スイートコーンは実をそぐ。
(2)フライパンに油、にんにく、しょうがを入れて中火にかけ、ひき肉と玉ねぎを加えて炒める。なすとズッキーニも加え、油がまわったら、スイートコーン、水、トマトソースを加えて混ぜ、ふたをして約8分煮る。
(3)火を止めてカレールウを加えて溶かし、再び火にかけてとろみがついたらご飯にかける。

調理/三好弥生
撮影/島 誠
取材・文/池田由香

特集2 バーベキュー

夏のレジャーといえばバーベキュー。道具から焼き方まで、バーベキューを最大限に楽しむためのポイントを紹介します。

屋外で楽しむ夏のレジャー道具をそろえて快適に
屋外の開放的な空気のなか、大人数でも楽しめる夏の定番レジャー、バーベキュー。近年は、海辺やキャンプ場だけでなく、街中で楽しめる施設も増えていて、より手軽になっています。

そんなバーベキューに欠かせないのが、専用の道具。グリルやトングなどの必須アイテムから、火おこしを短時間で行えるチャコールスターター、後片付けの負担を減らすバーベキュー用アルミホイルといった道具まで、さまざまな製品があります。すべてを買いそろえる必要はありませんが、道具の検討や準備をする時間も、バーベキューの楽しみの一つ。予算や人数に合わせて選び、バーベキューを快適に楽しみましょう。

道具をそろえる
グリルは炭が主流だが、煙が少ないガスも人気
[写真1]
LPガス燃料を使用するので着火も火力調整も簡単。煙やにおいが少ないので、自宅の庭で楽しみたい方にぴったり。/ロードトリップグリルエクスカーション

[写真2]
入手が簡単な木炭を使用。炭の遠赤外線効果でかたまり肉がジューシーに焼きあがり、香りも楽しめる。比較的手ごろな価格で手にはいるのも魅力。/クールスパイダープロL

備えておきたい便利な道具類
グリルのほかにも、あると便利なバーベキューの道具はたくさんあります。必要に応じて、そろえておきましょう。

[写真3]
スターターとトーチで着火の効率アップ
トーチ(上)の火力で一気に炭に火をつける方法もあるが、スターター(左)があると風が強い日でも確実。組み立てて炭を入れ、トーチで着火すれば10分ほどで炭火ができる。/コールマン トーチ(上)/チャコールスターター(左)

[写真4]
やけどを防ぐグローブは必須アイテム
軍手でもよいが、ひじまで保護するタイプがおすすめ。半袖時でもやけどを防ぐことができる。/ソリッドレザーグリルグローブ2

[イラスト1]
トングは食材に合わせて使い分けを
いくつあってもいい道具がトング。生の肉や魚をつかむトングと焼いたものをつかむトングを分ければ、食中毒防止になる。

[イラスト2]
除菌はウエットティッシュで
手洗いのための水をすぐに確保できないときなどに役立つ。食材を触る前や、食事の前などこまめに使うことで食中毒の予防になる。

[イラスト3]
あると便利な厚手のバーベキュー用アルミホイル
調理に使う家庭用と合わせ2種あるとよい。網に巻けば鉄板代わりに、グリルの底に敷けば炭の掃除が簡単でグリルも傷みにくい。

[イラスト4]
食材準備は保存容器やファスナー付き袋を活用
食材の持ち運びに活躍。事前にカットしたり下味をつけたりして容器や袋に入れて持って行けば、すぐに焼き始めることができゴミも少ない。
※写真の製品はすべてコールマン製です。

[写真5]
最後の火消しは水を張ったブリキのバケツで
炭はブリキのバケツに水を張り消火を。プラスチック製は高温で溶ける可能性がある。炭は、水をきって天日干しすれば再利用可能。

食中毒に注意して安全に楽しむ

細菌やウイルスを増やさないよう衛生的に
バーベキューをするときに、注意したいのが食中毒です。原因となるのは、目には見えない細菌やウイルス。温度や湿度など一定の条件がそろうと増殖し、その食品を食べると腹痛や下痢、おう吐などの症状を引き起こします。

予防のポイントは、菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」という3点。生肉や生魚は、ほかの食材にくっつかないよう、それぞれ別のポリ袋に入れて持ち込み、調理道具も分けます。きれいに見えても手には菌がついているので、手洗いを徹底し、使い捨て手袋やウエットティッシュも活用してください。

クーラーボックスも置き場所や置き方に気を配ることで、食材を低温に保ち、菌の増殖を防ぎます。その上でよく焼いて食べることを徹底すれば、食中毒の多くは防ぐことができます。また、焦がさないよう注意して、焼いたものでも早めに食べましょう。

食品はクーラーボックスに入れ、保冷剤でしっかり冷やしておきましょう
[イラスト5]

生肉や生魚と加熱しない食品で別々のまな板や包丁を使いましょう
[イラスト6]

まな板と包丁を分けて使うのが難しいときは、加熱しないで食べるものを先に切りましょう。

取材・文/千葉貴子
イラスト/あべかよこ
取材協力・写真提供/コールマン ジャパン
http://www.coleman.co.jp/[外部リンク]

焼き方の基本
肉や野菜を焦がさずにおいしく焼くためには、押さえておくべきいくつかのコツがあります。この機会にぜひ覚えて、ワンランク上のバーベキュー料理を楽しみましょう。

肉を焼く

うまみを引き出しておいしく焼く方法
バーベキューに欠かせない食材、肉。シンプルだからこそ、その焼き方は奥深くもあります。じっくりと弱火で加熱したり、アルミホイルに包んで余熱で火を通したり。肉の特性に合わせて焼き方を選び、うまみを引き出しましょう。

[写真1]
網を十分に熱してから焼く
加熱が不十分だと、肉の表面が網につく原因に。網をよく熱してから肉をのせ、肉が反り返る前に裏返してもう片面を焼くとよい。

[写真2]
炭に火がついているときは焼かない
炭の熱源は、炎ではなく赤外線。炎は火力が強過ぎると表面だけ焦げて中まで火が通らない。炭が内部から赤くなり白い灰を薄くかぶった状態になるまで待ってから、焼きはじめよう。

[写真3]
厚い肉は周りまでまんべんなく焼く
かたまり肉や厚みのある肉の場合には、トングを使って側面も焼くようにする。こうすることで、うまみを閉じ込めることができる。また、肉の内部までしっかり火を通すことも大切。

[イラスト1]
焼いた後に10分ほど蒸らす
表面を火で焼いてうまみを閉じ込めた後、アルミホイルで包んで10分ほどねかせ、余熱で中まで火を通す。厚い牛肉の赤身肉におすすめ。

[イラスト2]
炭の置き方で火加減を調節する
直火で肉を上手に焼くなら「スリーゾーンファイヤ」がおすすめ。敷き詰める炭の量を調節し、炭を2層に積み上げた強火、炭1層の中火、炭を敷かない弱火(保温)の3つのゾーンに分けます。アルミ皿で油を受ければ片付けも簡単です。
片付けの際は
焼いた後の網はすぐにグリルから外さずにしばらく炭の熱に当てておく。すると食材が完全に炭化するので掃除しやすくなる。

野菜を焼く

焦がさずにじっくり焼いて素材の味わいを
水分の含有量の多い野菜は、高温で焼くと水分が蒸発して焦げやすくなります。野菜をおいしく焼くために、注意すべきポイントを紹介します。

[イラスト3]
野菜は厚め、大きめに切る
ふだん調理するときよりも、1.5~1.8倍程度を意識して大きめ、厚めに切ることで焦げにくくなる。

[イラスト4]
強火厳禁、中火以下で
中火以下で水分を保ったままゆっくり焼く。じっくりと火を通せば、焦がさずに味わいも引き出せる。

[イラスト5]
焼く前に網にオイルを塗る
水分を逃さず焦げにくくするための工夫として、オリーブ油を網に塗る方法もある。野菜に直接塗っても同様の効果が得られる。

[写真4]
焼き串を使ってまとめて焼く
バラバラになりやすい野菜は、焼き串に刺してまとめると焼きやすい。返すときも一気にできる。肉と混ぜて刺すのは、十分に焼けるまでの時間に差が出てしまうのでおすすめしない。

[写真5]
スイートコーンは皮ごと焼く
スイートコーンは一度ゆでてから焼くか、そのまま焼く場合には皮ごと焼いて蒸し焼きに。甘みが出ておいしくなる。

[写真6]
ピーマンやパプリカは丸ごと焼いてもおいしい
半分に切って種を取りのぞいて焼くことの多いピーマンやパプリカだが、切らずに丸ごと焼くのもおすすめ。蒸し焼きになり、種の部分までおいしく食べることができる。切る手間がないのもいい。

[写真7]
アルミホイルで蒸し焼きに
どんな野菜もアルミホイルで蒸し焼きにすれば失敗が少ない。バターなどを加えても。皮の厚いトマトであれば、網焼きもおすすめ。


輝く! 未来を担う生産者 vol.4

株式会社ベジアーツ/長野県
農業を通じて多くの人を幸せに!
高齢化、後継者不足が問題になっている農業の現場で、なんと社員の平均年齢が28歳!若手農業集団が飛躍的な発展を続け、注目を集めています。その成功の秘密とは……?

「お前、明日から農業しないか?」
勤務先に突然現れた父親に、なかば強制的に実家に連れ戻され、就農。十数年の歳月を経て、若い社員を率いる農業集団として注目を集めているのが、ベジアーツの代表・山本裕之さんです。長野県北佐久郡。浅間山の麓でレタス、サニーレタス、グリーンリーフ、パクチーなどを栽培しています。

父親は、農家から買い上げた野菜を市場やスーパーに納品する中間流通の会社を経営していました。でも山本さんは、跡を継ぐ気はない、と大学は経済学部へ進学、一般企業で営業の仕事に。とはいえ「給料はいいけれど、仕事はつまらない」と母親にもらしていたそうです。それを聞いた父親が、ある日突然職場へ。支店長に「御社の経営理念を教えてください」と尋ね、答えが得られないと、「じゃあ、息子には農業をさせるから」とその日のうちに山本さんは実家へ。まさにドラマのような展開!

実はその2年前、父親は自社直営農場を立ち上げていました。その理由は、中間流通の需要が先細りだから。大手外食企業が、店舗で使用する野菜を契約農家から仕入れ始めていたことも大きな動機でした。

これからは契約栽培の野菜の需要が高まる――。息子は、先見の明がある父親に、強引に農業という新たな道に立たされたのです。

若い人材を集め、育てる工夫と努力
とはいえ、当時の直営農場は正社員1人、アルバイト2~3人。農業未経験の山本さんも一作業者として働き、野菜づくりを学ぶ一方で人手不足に悩むことに。ハローワークに求人を出し続け、全員雇ってはやめていくという状態。

「そんなとき、ぴかぴか輝いている若者が応募してきてくれて。うれしくて、彼を単なる労働力として使い捨てにするようなことはしてはいけない、と思いました」

そこで山本さんは一念発起。代表理事として農場を全面的に任せてもらうことにし、人材育成に取り組むことに。どうしたら若者が「働きたい!」と思ってくれるだろうと聞いて回り、「名前がダサい。会社のホームページがないから、事業概要も特徴もわからない」と指摘され、社名を農事組合法人北佐久園芸生産組合から、ベジアーツへ変更。ホームページや会社案内を作成しました。

時間外勤務手当の支給や休日の確保など「一般企業では当然のことが、できていない」ことに気づいた山本さんは、その後も若い社員たちに意見を求めては、職場環境や勤務内容を次々と改善。会社説明会、入社式、研修旅行なども行うように。その甲斐あって、今では平均年齢28歳の正社員9人と、季節雇用者やパート、海外からの実習生を含む全26人の若手農業集団に発展したのです。

みんなに喜ばれる農場づくりを目指して
ベジアーツという社名には、"人・土・野菜"すべてが自分たちの作品である、という思いが込められています。「農業をもっと楽しく!」「野菜をもっとおいしく!」を礎に、多くの人が幸せになれる農場を目指しています。

「経営的な数字はもちろん大切ですが、お客様の注文に欠品を出さない、冬期の雇用など身近な問題を一つずつ解決していくことで発展していく。幸福を追求する会社でありたいと思っています」

[写真1]
浅間山の麓に広がる雄大なほ場。
最盛期のレタスは明け方3時から収穫し、契約先に出荷する。

[写真2]
活気に満ちている、若い社員たちが活躍する現場。

[写真3]
年間の栽培計画に基づいて、苗を育てる。

[写真4]
会社説明会に参加し、大学新卒で入社した初の女性社員・荒井美波さん。入社3年目でパクチー班農場長を務める。

[写真5]
サニーレタス(手前)やグリーンリーフ(奥)も、真夏は出荷の最盛期。

[写真6]
女性を中心に大人気のパクチー。

[写真7]
農業への道を勧めた父親、山本富士雄さん。

[写真8]
真夏でも野菜を急速に冷やすことができる真空予冷装置。野菜を新鮮なまま出荷することが可能。

[写真9]
中学時代から始めたギター。毎年恒例のベジアーツバーベキュー大会では、長渕剛の曲を披露することも。

[写真10]
会社経営や食に関する知識などは、読書から学ぶことも多い。

Profile
山本裕之さん
1979年生まれ。信州大学経済学部を4年で中退、一般企業に1年ほど勤務したのち、2002年に就農。2009年、農事組合法人北佐久園芸生産組合の代表理事に就任。2013年、農事組合法人ベジアーツに社名変更。2015年に株式会社化を果たす。3児の父。
所在地/長野県北佐久郡御代田町馬瀬口94-4
http://www.vegearts.co.jp/[外部・リンク]

取材・文/岸田直子
撮影/原田圭介

MAFF TOPICS

MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

あふラボ 光で天敵を集め、害虫防除
紫色LEDの照射で農作物を守る
化学合成農薬を繰り返し使用することで農業害虫はその農薬への耐性が高まることがあり、近年、防除が難しい害虫が発生しています。そこで、化学合成農薬に代わるものとして期待されているのが、LEDを利用した防除法。国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)生物機能利用研究部門は、LEDの紫色光が農作物に甚大な被害をもたらす「アザミウマ」の天敵「ナミヒメハナカメムシ」を呼び込むことを確認し、ナスの露地栽培で、光による誘引に成功しました。

農業害虫の天敵となる昆虫が好きな植物(バンカー植物)を畑の周辺に植え、そこに天敵を住まわせます。その後LEDを利用し、バンカー植物から天敵を畑に誘引するのです。研究者らによると「誘引される光の波長は昆虫によって異なりますが、ナミヒメハナカメムシは紫色光に最も強く誘引されることがわかりました。また、幸運なことに、害虫のアザミウマやアブラムシは紫色光に誘引されませんでした。LEDの方法は土着の天敵をそのまま利用するため、費用を抑えられます。現在はメーカーが使い勝手の良い商品を目指して開発中です」とのこと。

害虫防除が化学合成農薬から光を利用した防除に代わる日が来るかもしれません。

[写真1]
□ ナスの露地栽培での実験の様子
ロープ型紫色LEDを、毎日3時間点灯させ、照射した。

[グラフ1]
□ 紫色光照射の防除効果
無農薬で栽培した、ナスの葉上の害虫(アザミウマ)と天敵(ヒメハナカメムシ類)の数を6日間調査。紫色光を照射すると、天敵は照射なしの場合の10倍に増加。害虫は天敵に捕食され、60パーセント以上減少した。
※実生産ほ場の栽培方法に則った実験ほ場。

[写真2]
アザミウマを捕えたナミヒメハナカメムシ。

[イラスト1]
紫色LEDを照射することで、アザミウマの天敵ナミヒメハナカメムシを畑に呼び込む。土着天敵を効果的に利用して害虫を防除する技術を開発。

[コラム]
あふトリビア
カメムシには実にさまざまな種類があります。多くは稲や果樹、野菜などに被害をもたらす害虫ですが、ヒメハナカメムシ類は農業害虫を捕らえてくれる優等生です。

NEWS1 「山の日」記念全国大会を開催
山に親しみ、恵みに感謝する日
8月11日は国民の祝日「山の日」です。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する日」という趣旨のもとに、平成28年に施行されました。

世界でも例のない"山"に関する国民の祝日は、国内外から注目されています。

「山の日」を記念した第2回「『山の日』記念全国大会」は栃木県那須町で開催されます。また、栃木県内各地では自然体験や健康づくり活動などの連携イベントが11月まで開催されます。この機会に山や森林の恵みを感じてみませんか。

[写真3]
昨年の第1回大会は、長野県上高地および松本市内で行われた。写真は「山のコンサート」(上高地会場)の様子。

[写真4]
第2回大会は栃木県那須町で。写真は鶏頂山(けいちょうざん)。

第2回「山の日」記念全国大会
開催日:平成29年8月11日(金曜日)
式典会場:栃木県那須郡那須町内
[記念式典]9時15分~10時40分(那須町文化センター)
[シンポジウム]11時00分~12時00分(那須町文化センター)
[歓迎フェスティバル]11時00分~19時00分(那須町余笹川(よささがわ)ふれあい公園)

大会の詳細はこちらへ!
第2回「山の日」記念全国大会[外部リンク]

NEWS2 「日本(にっぽん)美しの森 お薦め国有林」を選定
林野庁では国有林の中でも、自然景観が特に優れ、森林浴や自然観察、野外スポーツ等に適している森林を「レクリエーションの森」として整備しています。平成28年4月現在、全国に1,055カ所あり、登山やキャンプ、森林セラピー等に活用されています。

今年4月、このうち特におすすめできる森を「日本美しの森 お薦め国有林」として93カ所選定しました。選定されたレクリエーションの森は、重点的な情報発信や環境整備の充実などを通じて、その魅力をさらに磨き上げ、地域振興のために一層活用されることが期待されています。さらに多くの方に日本の美しい森林景観を味わってもらえるよう、地域の方々の協力などを得ながら、取り組みを行っていきます。そのひとつとして、「フォトコンテスト」も開催される予定です。

夏休みのレジャーとして避暑や水遊びを楽しんだり、山の上の短い夏の花々に出合える季節です。「日本美しの森 お薦め国有林」に出かけてみませんか。

[写真5]
夏の京都・東山。

[写真6]
東京・高尾山に咲く花。ノハラアザミ。

[写真7]
フシグロセンノウ。

詳細はこちらへ!
レクリエーションの森

NEWS3 地理的表示(GI)登録
登録によるさまざまな効果も
地理的表示(GI)保護制度は、地域の伝統に育まれ、生産地の気候・風土・土壌などによって生み出された品質を持つ農林水産物・食品の名前を知的財産として保護するものです。平成29年6月23日までに、26道府県の38産品が登録されています。

昨年度の調査では、模倣品を排除できたほか、取引の拡大、担い手の増加、生産者の産品への意識や士気の高まりなどの効果が認められました。

また、広告などにおけるGIマークの使用についてガイドラインを作成しました。詳しくは農林水産省Webサイトをご覧ください。

[図]
日本地図

[写真1]
北海道  夕張メロン
北海道  十勝川西長(とかちかわにしなが)いも

青森県  あおもりカシス
青森県  十三湖(じゅうさんこ)産大和しじみ

岩手県  前沢牛(まえさわぎゅう)

秋田県  大館(おおだて)とんぶり

宮城県  みやぎサーモン

山形県  米沢牛(よねざわぎゅう)
山形県  東根(ひがしね)さくらんぼ

新潟県  くろさき茶豆

石川県  加賀丸いも
石川県  能登志賀(しか)ころ柿

福井県  吉川(よしかわ)ナス
福井県  谷田部(やたべ)ねぎ
福井県  山内かぶら

長野県  市田柿
長野県  すんき

栃木県  新里(にっさと)ねぎ

茨城県  江戸崎(えどさき)かぼちゃ
茨城県  飯沼栗(いいぬまくり)

静岡県  三島馬鈴薯(ばれいしょ)
静岡県  田子(たご)の浦(うら)しらす

愛知県  西尾の抹茶

三重県  特産松阪牛(まつさかうし)

奈良県  三輪素麺(みわそうめん)

京都府  万願寺甘(まんがんじあま)とう

兵庫県  但馬牛(たじまぎゅう)
兵庫県  神戸ビーフ

[写真2]
鳥取県  鳥取砂丘らっきょう  ふくべ砂丘らっきょう

岡山県  連島(つらじま)ごぼう

山口県  下関ふく

愛媛県  伊予生糸(いよいと)

福岡県  八女(やめ)伝統本玉露

熊本県  くまもと県産い草
熊本県  くまもと県産い草畳表

鹿児島県  鹿児島の壺(つぼ)造り黒酢

大分県  くにさき七島藺表(しちとういおもて)
大分県  大分かぼす

「地理的表示(GI)PRイベント」
日程:9月22日(金曜日)~24日(日曜日)
開催場所:イオンモール幕張新都心グランドモール1階グランドコート
問い合わせ:JTB西日本法人営業大阪支店公務営業部(電話 06-6252-2540)

詳細はこちらへ!
地理的表示(GI)

News4 「水の恵みカード」が増えました
8月1日は「水の日」です。この日から1週間を「水の週間」として、水の貴重さ、大切さを考える取り組みを進めています。

農林水産省では、「水の恵みカード」によりダムやポンプ場などの農業水利施設と、農産物の生産における水の大切さをわかりやすく紹介する取り組みを行っています。

カードには、表面に地域の農産物の情報を、裏面に農産物の生産を支える農業用の水路や堰、地域の情報などが書かれています。

昨年から配布をはじめましたが、好評により配布終了になっていた場所もあり、平成29年は配布終了地区での増刷と、愛知県での新カードを含め、全国で28種類が作成されています。カードの種類は今後も増える予定です。

水の恵みカードは各地の直売所や収穫祭などで配布しています。

[写真3]

水の恵みカード
詳細はこちらへ!
水の恵みカード

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