第2回 肉用子牛生産者補給金に係る算定方式検討会 議事録
1.日時及び場所
- 平成30年11月20日(火曜日)15時00分から16時10分
- 三番町共用会議所2階大会議室
2.出席者
- 委員:石田委員、井田委員、大田委員、大山委員、菊池委員、里井委員、中林委員、西野委員
- 農林水産省:枝元生産局長、富田畜産部長、望月食肉鶏卵課長、冨澤室長、関川分析官、天野課長補佐、林課長補佐
3.議事
【枝元局長より冒頭挨拶】
(枝元局長)肉用子牛生産者補給金に係る第2回の算定方式検討会の開催に当たり、一言御挨拶申し上げます。委員の皆様方におかれましては、御多忙中、本検討会に御出席いただき、有り難うございます。
御承知のとおり、TPP11協定につきましては、先月31日に、6カ国目となるオーストラリアが国内手続を完了したことにより、12月30日に、発効することとなりました。「総合的なTPP等関連政策大綱」では、TPP協定の発効に合わせて、肉用子牛の保証基準価格を現在の経営の実情に即したものに見直すこととされておりますので、本年12月30日より、新たな保証基準価格が適用されることとなります。
本日は、前回の検討会で出された御意見に関する資料とともに、とりまとめ案を用意いたしました。本日は、これらの資料について、御議論をいただき、検討会としての取りまとめをお願いしたいと存じます。取りまとめいただけましたら、後日、審議会に報告したいと考えております。委員の皆様におかれましては、忌憚のない御意見をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
御承知のとおり、TPP11協定につきましては、先月31日に、6カ国目となるオーストラリアが国内手続を完了したことにより、12月30日に、発効することとなりました。「総合的なTPP等関連政策大綱」では、TPP協定の発効に合わせて、肉用子牛の保証基準価格を現在の経営の実情に即したものに見直すこととされておりますので、本年12月30日より、新たな保証基準価格が適用されることとなります。
本日は、前回の検討会で出された御意見に関する資料とともに、とりまとめ案を用意いたしました。本日は、これらの資料について、御議論をいただき、検討会としての取りまとめをお願いしたいと存じます。取りまとめいただけましたら、後日、審議会に報告したいと考えております。委員の皆様におかれましては、忌憚のない御意見をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
【望月課長から資料2~4を説明】
(大山座長)事務局からの説明を踏まえまして、各委員からご意見・ご質問などをご発言いただきたいと思います。今回の議論により、基本的な考え方が整理され、それが食料・農業・農村政策審議会に報告されることとなりますので、皆様の忌憚のない御発言をいただければと思います。まずは、本日御欠席の築道委員からご意見をいただいておりますので、事務局からご紹介をお願い致します。
(林課長補佐)それでは、築道委員からの意見を読み上げさせていただきます。
平成30年11月20日 肉用子牛生産者補給金に係る算定方式検討会座長 大山憲二様、公益社団法人日本食肉市場卸売協会副会長 築道繁男。
まずは、肉用子牛生産者補給金に係る算定方式見直しについて、十分な分析を基に、とりまとめ案を作成されました事務局及び座長に感謝申し上げます。結論から申し上げまして、とりまとめ(案)は、基本的に理解できるものであり、以下のとおり考えます。
我が国の卸売市場を含む健全な食肉の流通の維持のためには、国内における肉用牛生産において、繁殖及び肥育がともに安定した経営を保ちつつ、持続的に維持されることが基本であり、それにより国産食肉の価格が安定し、円滑な物流が維持されることが重要であると考えております。
その観点から、肉用子牛生産者補給金に係る価格算定に当たり、短期間の比較的大きな価格変動を抑え、品種による違いを考慮しつつ、生産合理化を促進する方向性を打ち出していることは、理解できるものと考えます。
内容的には、
1生産費調査の充実を踏まえ、算定の基礎となるデータとして生産費調査を基礎とすること
2牛肉の周期的変動を踏まえ、算定に用いる期間を過去7年間とし、算定の基礎とすること
3交雑種は乳用種とは別の価格形成・流通をしていることを踏まえ、乳用種とは連動させず独立に算定すること
4国産牛肉が需要の中で一定の割合を確保し、輸入牛肉に対抗してきている実態を踏まえ、合理化目標価格の算定の基礎として全等級を対象とすること
について、理解できるものと考えます。
平成30年11月20日 肉用子牛生産者補給金に係る算定方式検討会座長 大山憲二様、公益社団法人日本食肉市場卸売協会副会長 築道繁男。
まずは、肉用子牛生産者補給金に係る算定方式見直しについて、十分な分析を基に、とりまとめ案を作成されました事務局及び座長に感謝申し上げます。結論から申し上げまして、とりまとめ(案)は、基本的に理解できるものであり、以下のとおり考えます。
我が国の卸売市場を含む健全な食肉の流通の維持のためには、国内における肉用牛生産において、繁殖及び肥育がともに安定した経営を保ちつつ、持続的に維持されることが基本であり、それにより国産食肉の価格が安定し、円滑な物流が維持されることが重要であると考えております。
その観点から、肉用子牛生産者補給金に係る価格算定に当たり、短期間の比較的大きな価格変動を抑え、品種による違いを考慮しつつ、生産合理化を促進する方向性を打ち出していることは、理解できるものと考えます。
内容的には、
1生産費調査の充実を踏まえ、算定の基礎となるデータとして生産費調査を基礎とすること
2牛肉の周期的変動を踏まえ、算定に用いる期間を過去7年間とし、算定の基礎とすること
3交雑種は乳用種とは別の価格形成・流通をしていることを踏まえ、乳用種とは連動させず独立に算定すること
4国産牛肉が需要の中で一定の割合を確保し、輸入牛肉に対抗してきている実態を踏まえ、合理化目標価格の算定の基礎として全等級を対象とすること
について、理解できるものと考えます。
(大山座長)築道委員からは以上のような意見を頂戴しました。内容的には、示された案に賛同するという御意見だったと思います。
では、本日ご出席の各委員からご発言をお願いします。今日は、反時計回りでお願いしたいと思います。それでは、西野委員からお願いします。
では、本日ご出席の各委員からご発言をお願いします。今日は、反時計回りでお願いしたいと思います。それでは、西野委員からお願いします。
(西野委員)いくつか意見を述べさせていただきます。まず、資料3の3ページ(2)2生産費の取り方ですが、国の政策の中には、例えば、加工原料乳生産者補給金や、麦や大豆の直接支払交付金のように、生産拡大のインセンティブが働くよう、自己資本利子や自作地地代を含めた全算入生産費をもとに交付金等の単価を決めているものもあります。そうしたことからすると、「自己資本利子・自作地地代に国費を投入するのは不適切である」と書かれていますが、表現として適切なのかどうか疑問を感じます。
次に、算定に用いる期間ですが、「直近の期間を用いた算定をすれば、直近の経済状況に大きく左右され、一方、長期間を用いた算定をすれば、直近の経済状況が反映されなくなる」と書いてあります。近年の生産費の推移を畜産物生産費統計で調べてみますと、近年、飼料費を中心として生産費が増加傾向にあります。また、総合的なTPP等関連政策大綱においては、「現在の経営の実情に即したものに見直す」とされていることを踏まえると、過去7年間に遡るというのは、遡り過ぎではないかと感じています。仮に、過去7年間を基礎とする場合においても、直近の経営状況を反映できるよう補正をするなどの工夫を検討いただけないかと考えています。
次に、生産の合理化促進への配慮ですが、第1回検討会でも申し上げましたが、中小規模層への配慮に関する意見は、生産合理化の促進に対するものだけに限ったものではございません。繁殖雌牛の飼養頭数規模別の飼養頭数の推移の資料をみますと、10頭未満が18.3%という書き方をされていますが、20頭未満まで広げますと、36.8%と4割弱を占める状況です。こうした中小規模層の生産基盤の維持・拡大も図っていくことも重要ではないかと考えています。そのため、生産費を取る段階においても中小規模経営の実態を反映するべきではないかと考えています。
次に、2年目以降の算定ですが、肉用牛繁殖経営支援事業は、保証基準価格と経営実態が乖離することに対して創設したものです。言い換えれば、2年目以降の現行の算定方式、つまり、生産コストの変化率方式では、これまでの情勢の変化に十分対応できなかったという証左ではないかと思います。
また、御紹介がありましたように、来月30日にはTPP11が発効します。そして、16年目には関税率が9%まで下がることとなっております。そうした中で、我が国の畜産物の需給や価格への影響を注視して、再生産の確保という制度の趣旨に即して、適切な時期に初年度に設定される基準の見直しを行うということを、どこかで明確にしておくべきではないかと思います。
次に、算定に用いる期間ですが、「直近の期間を用いた算定をすれば、直近の経済状況に大きく左右され、一方、長期間を用いた算定をすれば、直近の経済状況が反映されなくなる」と書いてあります。近年の生産費の推移を畜産物生産費統計で調べてみますと、近年、飼料費を中心として生産費が増加傾向にあります。また、総合的なTPP等関連政策大綱においては、「現在の経営の実情に即したものに見直す」とされていることを踏まえると、過去7年間に遡るというのは、遡り過ぎではないかと感じています。仮に、過去7年間を基礎とする場合においても、直近の経営状況を反映できるよう補正をするなどの工夫を検討いただけないかと考えています。
次に、生産の合理化促進への配慮ですが、第1回検討会でも申し上げましたが、中小規模層への配慮に関する意見は、生産合理化の促進に対するものだけに限ったものではございません。繁殖雌牛の飼養頭数規模別の飼養頭数の推移の資料をみますと、10頭未満が18.3%という書き方をされていますが、20頭未満まで広げますと、36.8%と4割弱を占める状況です。こうした中小規模層の生産基盤の維持・拡大も図っていくことも重要ではないかと考えています。そのため、生産費を取る段階においても中小規模経営の実態を反映するべきではないかと考えています。
次に、2年目以降の算定ですが、肉用牛繁殖経営支援事業は、保証基準価格と経営実態が乖離することに対して創設したものです。言い換えれば、2年目以降の現行の算定方式、つまり、生産コストの変化率方式では、これまでの情勢の変化に十分対応できなかったという証左ではないかと思います。
また、御紹介がありましたように、来月30日にはTPP11が発効します。そして、16年目には関税率が9%まで下がることとなっております。そうした中で、我が国の畜産物の需給や価格への影響を注視して、再生産の確保という制度の趣旨に即して、適切な時期に初年度に設定される基準の見直しを行うということを、どこかで明確にしておくべきではないかと思います。
(大山座長)生産拡大へのインセンティブにつながっている事例もあること、表現についての御指摘、7年間という数字の御指摘、中小規模層への配慮ということも含めて、たくさん御意見をいただきました。では、中林委員お願いします。
(中林委員)前回欠席しましたので、少し自己紹介をさせていただきます。本所は三重県にあり、肥育が専門です。支所は宮崎県にあり、繁殖主体の牧場です。なお、一貫生産ではありません。繁殖と肥育の複合経営という表現があてはまると思います。宮崎で生まれる子牛は全頭家畜市場に出荷して現金に換えます。その市場で肥育用の素牛を購入します。私の所から出荷する牛は一切買い戻ししません。全部現金化して売り切るという体制で30年間続けております。なぜかというと、私は一貫生産に不安感を持っており、そういう観念から一貫にはせず、複合経営でいるということを続けています。
それでは、意見と生産農家の実情を言わせていただきます。まず、資料3の3ページの下段、資料4の1ページの右下の「実際の支出がない」という文言ですが、実際の支出がないというと家族労働費も減価償却費も一切の支出がない部類に入ります。「実際の支出がない自己資本利子・自作地地代」という風にまとめるのはいかがなものかと思います。別の文言を考えた方がよいのではないかと思います。あとは本当に良い内容でまとめていただいたと思います。
ただ、生産者の実情を言いますと、資料2の1ページで、50頭までの生産農家がほとんどだとありますが、現状はどうかといいますと、この方々は、真面目に国の言う通りに飼料自給率100%で50頭の繁殖をされている農家が大半かと思います。この方々は、どういうことを考えているかというと、宮崎の私の友人もよく言いますが、もう辞めたいと。50頭で国の言う通りにやっている優等生で飼料自給率100%をしていると、夫婦で旅行に行くことはもちろん、買い物に二人で行く時間さえ持ちにくいと。牛の頭数は増えてはきているものの、これだけ子牛が高くなっているにも関わらず、劇的に頭数が回復するかというとそうでもなさそうです。やはりこれからは、繁殖農家の働き方改革をしていかないと難しいのではないか。例えば、思い切ってこの際、100%購入飼料でも繁殖ができるとしてみるとか。私のところは、100%購入飼料で120頭の繁殖をしていますが、従業員は8時から17時までの勤務時間、週休2日、ボーナスもとって、十分に繁殖経営がやりこなせます。購入飼料による繁殖も一つの方法としてありではないかと、国の考えも見直してもらえると、より画期的に頭数が増えるのではないかと思います。
(大山座長)現状、そういう経営も考えていかないといけないのではないかという意見と、資料の内容に関しては、家族労働費も実際に支出がないので、表現を考えてはどうかという御意見でした。では、事務局からご回答をお願いします。
(望月課長)まず、西野委員の御意見の1点目、資料3の3ページ下の「自己資本利子・自作地地代に国費を投入するのは不適切である」との表現ぶりについてですが、畜産物に限らず農産物も個々の品目毎にやり方が違っているのが実態です。牛に関しては、マルキン制度がありますが、こちらも支払利子・地代算入生産費を使っています。また、現行方式も同じように使っているということ、10割補填であることも考えると、「不適切」が強いということであれば、「適切ではない」ということではないかと思います。
算定期間については、過去7年間は長いのではないか、7年とった場合でもウエイト付けができないかという御意見です。資料でもご説明させていただきましたが、キャトルサイクルは7年間、また、繁殖雌牛の供用期間は基本的には7年間と考えているので、7年は妥当ではないかと考えています。7年間の中でのウエイト付けに関してですが、算定に当たっては、透明性、客観性、つまり、わかりやすさが求められていると思いますので、ウエイト付けをするというのは、恣意的な要素が入りやすいという意味でも難しいのではないかと思います。
小規模農家の配慮の話が生産合理化への配慮の中で扱われているが、生産費の取り方全体にかかるべきではないかというお話がありました。これは、生産の合理化促進への配慮という項目で書かせていただきましたが、生産費の中でちゃんと配慮していくという趣旨です。
2年目以降の見直しについて、具体的にはTPP11が発効して関税が下がった後はどうするのかというお話がありましたが、そもそも保証基準価格というものは、輸入事情の変化に対処するために設定される措置です。このため、TPP11の発効に基づく関税削減の影響により、子牛の再生産の確保が難しくなるというような場合には、弾力的に対応していくことが制度の趣旨に照らして適切ではないかと思います。
中林委員の御指摘で「実際の支出がない」というところで、家族労働費や減価償却費のお話がありました。おっしゃる通りですが、ここで言いたいことは、負担がないということです。つまり、減価償却費は、一回購入してそれを分割して計上することですし、労働費も実際はサービスを提供している対価ですので、負担はしているということになります。「支出」というのはお金の出入りではなく、負担がないという意味で書かせていただきました。ここは表現を変えることも考えたいと思います。
(大山座長)では、里井委員お願いします。
(里井委員)前回は欠席しましたが、簡単な意見をとりまとめており、その意見が反映されているということも含め、非常に分かりやすくとりまとめていただいてありがとうございます。
まず、簡単な自己紹介ですが、私は、消費者寄りでして、フードジャーナリストとして、審議会の畜産部会の委員もしております。例えばお肉でいいますと、全肉連の皆様とも連動しながら、さらに、例えば全国の酪農協、畜産農協の方にも参加し、ラジオで紹介したり、雑誌やウェブで応援したりしながら活動しています。各地域での講演もさせていただききながら、フードアクションニッポンアンバサダーとして国産の食材を全般的に応援しています。畜産部会委員に加えまして、甘味資源部会や家畜衛生部会の委員なども兼任させていただいております。そのような状況で、私は、こういった会議で決まり、公開可能となったことを色々な媒体を使いながら発信させていただいております。私は、畜産部会や今回の検討会で議論するものというのは、単純に消費者の皆さんにとって、「和牛が大好き」「お肉が大好き」「それがいくらで買えるんだ」「どういう風にして食べられるんだ」というように非常に関心が高いジャンルだと認識しております。
そのような中、前回も意見させて頂きましたが、私が一番良いと思ったことは、合理化目標価格の現状と課題、改正の方向性の表が分かりやすいのでこれに沿って意見を述べさせて頂きますが、今まで1~3等級の価格を用いて算定されていたところが、今回4、5等級含めた全等級になることです。これに私としては非常に賛同しております。食べ手にとってブームとなっているのは、最近は赤身が流行っているだとか、例えば牛でいうと、非常にヘルシー志向であるとか、色んなことが言われております。実際、鶏も今まで売れていなかった胸肉が売れるようになったとか、今までの和牛の魅力というのにプラスして赤身が魅力というような例もあります。これは、女性やマスコミが一種のブームというものを大きく広げているからという点も多々あります。一方で、和牛の強みというのは、やはりサシが入った和牛ならではのうまみです。海外から食べに来る人も、そういったものを求めており、牛肉にはこういった両方の側面があります。したがって、1~3等級の価格を用いて算定されていたものが、今回全等級になり、そして良い結果になるという点が非常に良いと思っています。前回もそのようにまとめさせていただきましたが、今回もそれを意見として付け加えさせていただきます。
私自身も畜産部会委員として参加する中で思うことは、委員の皆さん、生産者、国、そして食べ手の私も含め、皆で考えた施策だということを発信していくことで、この会自体の価値も上げていけたらということです。今回の検討会のとりまとめ案に賛同させていただきますので、よろしくお願いいたします。
(大山座長)また違った立場からのご意見をありがとうございました。基本的には、全等級、4~5等級も含めた形での合理化目標価格の設定に対して、賛同するという意見だと理解しました。では、菊池委員お願いします。
(菊池委員)事務局の皆様、限られた時間の中で算定の考え方をまとめていただきまして本当にありがとうございました。全体的には、特に大きな異論は無いですが、何点か意見を申し上げたいと思います。
まず、生産費の取り方について、約3分の1を占める家族労働費のそもそもの考え方についてですが、最低限の水準ということではなく、農業者の方々が他産業並み、又は以上の生活を送れるような評価とするなど配慮していただくことによって、意欲を持って経営をできる形になるのかなと思いますので、検討していただきたいと思います。
次に、生産合理化への配慮ですが、前回の検討会でもお話しましたが、岩手県の実情を申し上げますと、全国の平均規模では14.6頭となっておりますが、岩手県ではこの半分の7.8頭という規模です。そういった中で、10頭未満が飼養戸数全体の約8割という数字です。このため、県としても全国並の水準に持って行くような施策を導入しながらやってはいるのですが、なかなかすぐにはその水準にいかないというのが実情です。このような状況を配慮していただき、家族経営の多い小規模の実情を改めて配慮していただきたいと思います。
それから、2年目以降の算定について、7年間という内容については理解しましたが、大きな変化があった時、例えば関税が完全撤廃する、あるいは社会的・経済的に大きな変化があった際には、算定の見直しを検討していただきたいと思います。また、生産コストの変化率や品種格差係数については、前回も申し上げましたが、現行がちょっと分かりづらい形になっているので、生産者の方が分かりやすいような形に配慮していただければ良いのかなと思います。生産者の方が分かりやすい制度にすることによって、加入率の増加が図れるのではと思いますし、生産基盤の維持のためにも、この制度が優良な制度として維持されて欲しいことから意見をします。よろしくお願いいたします。
(大山座長)重ねて小規模経営に対する配慮というものを盛り込んで欲しいというご意見だったと思います。では、大田委員お願いします。
(大田委員)前回、小規模、中規模農家に配慮して欲しいというお話をさせていただきましたが、本日新たな資料を作ってお示ししていただき、本当にありがとうございます。全国的な目線でいきますと、このような趨勢になるということは承知をしております。菊池委員からも出ましたように、繁殖地帯では、このグラフの中の小規模の階層がかなり多いというのが実態です。そういう中で、資料3の5ページにもあるように、「小規模な肉用子牛経営の実態を踏まえつつ」という文言をお示しいただきましたので、私としては、概ねこれでいいのかなと考えております。肉用牛経営においては、資料2にありますように、生産基盤の強化に向けた取組として、CBSの活用やTMRセンター、こういったところも本県は取り組んでいるところですし、資料にあるような色々な事業を措置していただいております。こういったことは他の家畜ではなかなかありません。その背景には、肉用牛経営には、国土保全という側面があり、草を食べさせて肉を消費者に提供するという、その大義が大きく寄与しているのだろうと思います。そういうようなことでいいますと、今回の補給金制度のとりまとめ案については、文言の中でお示しいただきましたので、それで十分かなと思っております。こういった支援対策を、私どもとしてもできるだけ補助事業を使わなくても経営が成り立つような方向性に導いていくということも考えていかなければなりませんが、現状としては、小規模の農家さんが辞めていく、裏を返せば、中山間地域の集落営農がだんだん廃れていっているという実態もあります。ですから、専業化・大規模化というところだけでなく、小規模の農家にも配慮した支援対策を今後とも引き続き取り組んでいただきながら、この算定方式の考え方には概ね賛成ということでございます。私は本日の検討会に来る前に、県の経済連や行政の方ともお話をしましたが、概ねこれでいいのではないかというお話でした。
(大山座長)賛同の意見を頂戴したと理解しました。それでは、事務局の方からご質問に対して回答をお願いいたします。
(林課長補佐)菊池委員の御意見にありました家族労働費の評価についてですが、実際、生産費調査においては、調査先の農家さんがどれだけ働かれたかという時間は、間違いなくすべての労働時間が入るような形で算出しておりますが、実際の評価額・単価がいくらであるのかは、なかなか農村での賃金というところが取りにくい関係上、統計上は、建設業、製造業および運輸・郵便業に属する5~29人規模の事業所における賃金を採用するという形にしています。そこが、高いか安いかの評価はありますが、基本的に、他産業に見劣りしないよう調査を行っておりますので、そういう意味で、しっかりと生産費調査の数字を使ってやってまいりたいと思います。
(望月課長)小規模経営に配慮してほしいという御意見を菊池委員、大田委員からいただきました。私どもとしましても、前回出された意見を踏まえ、資料3の5ページに「小規模な肉用子牛経営の実態を踏まえつつ」と書かせていただいたとおりでございます。さはさりながら、法律上やはり近代化の道も配慮しなければなりません。今日ご紹介を飛ばしてしまいましたが、4ページの一番下の注8に、制度創設当時の委員会の報告書を抜粋しております。当時の委員会の報告におきましても、「現在の肉用子牛生産は、いまだ零細、小規模の副業的経営が多数を占めているが、今後、規模拡大、近代化を促進する方向に沿って保証基準価格の設定を考える必要がある」ということで、この考え方自体もまた、現在にも当てはまると思いますので、両方のバランスを取りながら、これから保証基準価格の設定を考えていきたいと思います。
それから、2年目以降の話で、大きな変化があった場合にはきちんと見直してほしいというお話がございました。これについては、2ページの1の保証基準価格のところの1行目に書いておりますが、保証基準価格は、肉用子牛の生産条件や需給事情等、「等」は経済事情なのですが、こういったことを考慮して定めることとなっています。したがって、お話にあったような、外国の影響を受け、国内事情が大きく変化するという場合は、まさにこのようなことに当てはまりますので、改めて保証基準価格を見直していくということでございます。
大田委員から肉用牛経営が中山間地域を守っている、国土資源を守っているというお話がありましたが、我々といたしましても、5ページのイの3行目「地域で繁殖・育成を集約化する体制の構築を推進する」ということでございまして、大規模だけということではなく、地域全体での繁殖をいかに増やしていくのかということを酪肉近の中でもうたっておりますので、この方向に沿って進めていきたいということでございます。前回、大田委員から小規模を中規模に引き上げるような対策を、というお話をいただきました。まさに今日ご説明させていただいたような支援策を講じまして、そういった増頭意欲のある方を支援していくという姿勢には、変わりないということでございます。
(大山座長)引き続きまして、井田委員お願いします。
(井田委員)お示し頂いた「保証基準価格等の算定の基本的な考え方について」は、賛成します。保証基準価格は、肉用子牛の生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、肉用子牛の再生産を確保することを旨として定めることとされており、また、その決定に当たっては、酪肉近基本方針に即し、肉用牛生産の近代化を促進することとなるように配慮することが法定されております。肉用子牛生産安定等特別措置法の逐条解説によれば、この趣旨は、「輸入自由化後において、我が国肉用牛生産の存立を確保するためには、近代化された肉用牛生産への努力を前提として、肉用子牛生産者の肉用子牛の再生産を確保するための価格を保証することが不可欠であるため」とされています。また、保証基準価格の命名の由来として、「肉用子牛の市場実勢価格がこの価格を下回った場合に、この価格を基準として、各都道府県の指定協会が生産者補給金を交付し、肉用子牛生産者の平均的な手取りをこの水準で保証する価格となっていることによるものである」とされています。こうしたことを考えますと、保証基準価格の算定にあたっては、肉用牛生産の合理化を促進することとなるような視点を踏まえつつ、肉用子牛生産者の平均的な手取りが、しっかりと確保され、この先も肉用子牛の再生産が確実に確保されるような水準で定められることが必要だと思います。
(大山座長)制度というよりは、中身についてしっかりとした水準を確保して欲しいというご意見をいただきました。最後に石田委員お願いします。
(石田委員)今回、基本的な考え方とりまとめ案ということで整理いただいた内容につきましては、賛同する立場です。全体としましてはこのような形でとりまとめいただき、ありがとうございます。ただ、いくつか意見を言わせていただきたいと思います。
資料2の4ページに、牛肉自由化以来の乳用種のヌレ子・子牛価格の推移があります。私事ですが、たまたま私は平成3年に根室の方に転勤になりまして、まさに、牛肉自由化直後の現場の実態として、根室はほとんどが酪農家で肉牛農家というのは酪農家に比べると戸数的には少ないのですが、非常に当時の現場は大混乱しました。この推移を見れば、平成2~5年でいかに急激に、自由化に伴って子牛価格が下落したかが分かると思います。乳用種のヌレ子は、あくまでもこの中で整理しているとおり、酪農経営から見ると副産物ということになるわけですが、平成に入った当時の酪農経営にとっては、収益の構成でいうと、乳代が7割、個体販売が3割という状況でしたので、3割の個体販売が半減してしまったということで、酪農家にとっても大きな影響がありました。また、ヌレ子を買って哺育育成、あるいは肥育する肉牛農家にとっても、この価格変動については非常に大きな影響があったわけであります。一方で、こういった制度があったからこそ、特に乳用種・交雑種の肉牛経営体というのは、かなり経営的に助けられたという部分があるのも事実であります。近年は違いますけれども、制度があったことによって、現在まで乳用種を中心とする肉牛経営についても、持続的に経営が維持することができたと思いますので、今回TPP11の発効を目前にして、また新たにこの機会に基準等々を見直すということについても賛成するところであります。ただ、今申し上げましたように、平成3年のときもそうでしたが、この先何が起こるか分からない、価格がどう推移するかについては、予測することができても当たるかどうかは全く分かりません。そういった意味からすると、過去の経験則なりキャトルサイクル等の数字をもって基準を作るということについては、それしかないのかなと思います。ただし、やはり、それぞれの経営体がこれからも持続的に経営が成り立つために非常に必要なセーフティーネットでありますので、経営が持続的に維持できるために役立つような制度であって欲しい、今までもそうであったのですけれど、これからもそうあって欲しい。そういった経営の実態に配慮したような基準を作っていただきたいというお願いです。
もう一点ですが、直近3年ほどの乳用種のヌレ子の価格が非常に急騰しております。理由はなかなか説明がつかないのですが、私なりに考えると、ヌレ子というのは酪農の副産物ですが、一方で酪農においても、一番端的な例が何年か前にあったバター不足なのですが、需要はあるのだけれど日本の酪農全体から見ると、需要に対して十分に応えられる供給ができない状況があります。いくら需要があっても急激に乳量を増やすことはなかなか難しいことで、ベースとなるのはやはり生産基盤、生産基盤というと乳用牛であります。近年は、乳用牛の頭数も増えている中、昔から初妊の場合は分娩負担を軽くするために、交雑牛を付けるということはよくやっていたのですが、ここ3、4年は、技術が革新して、いわゆる雌雄判別精液ですが、酪農家にとっては雌を生ませた方がメリットがあるので、雌雄判別精液を使う割合がここ2、3年で急激に増えています。これにより、当然、雄のヌレ子、子牛は減るということになります。肉牛経営の方から言うと本当はもっとヌレ子を供給して欲しいけれど、酪農家サイドからの供給が、今言ったような事情で減っているということで、需給の関係で価格が高騰しているのではないかと思います。ただ、これが、TPP11の発効に伴って沈静化する方向にいくのかということについては、何とも言えません。この辺の扱いについて、とりまとめの中でも苦慮されている表現になっていますが、ここから先の見通しは誰にもできませんが、その辺についても配慮いただきたいと思います。
特に、2年目以降の問題なのですが、生産コストの変化率を乗じることを基本とする考え方は、基準になるのは今回過去7年間と言いますけれど、基本的には、今年の数字ではなく29年度までの生産費の数字ということになると思います。直近とは言いながらも、その直近の部分の数字を反映させるということになると、やはり2年目以降の変化率に左右されることになるので、ここは、直近の様々な経済状況を十分に考慮して、単純に生産コストの変化率ではなく、合わせて本当の直近の様々な状況を勘案していただければありがたいと思います。
(大山座長)井田委員のお話と同じように、肉牛の再生産あるいは持続的な生産に資するような内容にしていただきたいということと、ヌレ子価格の取り扱い、未来の予想について、2年目以降の算定方法についてご意見いただきました。事務局の方からご説明お願いいたします。
(望月課長)石田委員から御指摘のあった、経済事情をきちんと適切に反映してほしいというお話ですが、我々も各種経済事情に配慮しながら算定に当たっていきたいと考えています。一方で、そういった経済事情が今までと全く異なるような大きな変化あった場合には、先程来申し上げていますが、もう一度保証基準価格の在り方を見直すことも視野に入れていくということです。
(大山座長)一通り委員の皆様から御意見を頂戴したところですが、何か追加で御意見を言いたい方はいらっしゃいますか。
(西野委員)今後、食料・農業・農村政策審議会の畜産部会に、この基本的な考え方を報告されると思いますが、その際には、必ずこの検討会であったような意見をあわせて紹介していただきたいと思います。
(望月課長)本日いただいた意見については、今度の畜産部会の中で報告をさせていただきます。
(大山座長)私からも責任をもって報告いたします。その他に御意見ありますでしょうか。
それでは、本日の議事は以上となります。今日も経営規模について、たくさんの委員の方からお話いただきました。私からもその点については、大田委員がおっしゃっていたような国土保全、多面的機能があるということですので、そういったところの切り捨てにならないような形で制度ができるよう、お願いしたいと思います。
それでは、事務局は、本日委員の皆様からいただいた意見を踏まえまして、資料の修正をお願いします。それでは、進行を事務局にお返しいたします。皆様御協力ありがとうございました。
(望月課長)大山座長、ありがとうございました。座長から御指示をいただきましたが、とりまとめ資料については、必要な修正を行い、委員の皆様にご確認いただいた上で、審議会に報告させていただきます。
委員の皆様におかれましては、ご多用の中、本検討会へご参画いただき、ありがとうございました。なお、実施要領に基づき、本日の議事概要を事務局で作成の上、皆様の了解を得て、公表させていただきますので、よろしくお願いいたします。最後に富田畜産部長より御挨拶をさせていただきます。
(富田部長)委員の皆様方におかれましては、前回、また今回、貴重な御意見を賜りまして、誠に有り難うございました。第1回検討会の際にも触れさせていただきましたが、今回の保証基準価格等の見直しは、制度創設以降初めてとなるたいへん大きな見直しでございます。
委員の皆様には、生産費の取り方や生産合理化への配慮等について、貴重な御意見をいただいて、本日、算定の基本的な考え方をまとめることができました。委員の皆様方には、改めて感謝を申し上げるとともに、今後とも我が国畜産の発展に、より一層の御支援・御協力をお願い申し上げまして、閉会の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
(望月課長)それでは、これをもちまして第2回肉用子牛生産者補給金に係る算定方式検討会を閉会します。ありがとうございました。
(以上)
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