令和4年度第1回畜産部会議事概要
令和4年度第1回畜産部会議事概要 PDF版(PDF : 340KB)
1.日時
令和4年11月7日(月曜日)14:00~17:30
2.場所
農林水産省 第2特別会議室(web併催)
3.出席委員
三輪泰史部会長、角倉円佳委員、二村睦子委員、石田陽一委員、大山憲二委員、小山京子委員、串田雅樹委員、駒井栄太郎委員、里井真由美委員、
畠中五恵子委員、羽田香弥子委員、馬場利彦委員、彦坂誠委員、福永充委員、前田佳良子委員、正好邦彦委員、松田克也委員
(角倉委員、二村委員、大山委員、小山委員、駒井委員、里井委員はリモート出席)
4.概要
各委員からの主な発言内容は以下のとおり。
◯里井委員
輸出については、今後国産の付加価値をどのように付けていくかということが非常に大きな課題。みどりの食料システム戦略における持続的な畜産物生産については、非常に賛同する部分があり、国からも広く発信していけたらと感じた。
消費者は安全性の関心が高いほか、最近では価格面を心配しているのでは。安全性という面において、畜産については、有機や持続的な取組を知らない人が多いのではないか。課題は多いが今このような前向きな取組を発信し、畜産の未来は明るいということをアピールしていくことが重要。
後継者問題については、畜産をやっていくことは明るいんだということで、今日は畜産のよいところをとりまとめ、発信していきたい。
◯石田委員
自分も含め、周囲のほとんどの酪農仲間が危機的な状況に瀕しているということを事実としてお伝えしたい。農水省の支援はまだまだ足りない、このままでは畜産・酪農は崩壊してしまうという意見を持つ酪農仲間もいるが、私は農水省はやるべきことはやっているのではと考えている。現在の困難な状況を乗り切るためには、高度な経営改革が求められていると思っている。
自身で経営状況のシミュレーションを行い、乳用牛を40頭から28頭規模に絞ることとした。売上げを下げることになるため、かなり思い切った決断ではあった。規模を縮小させたことで、堆肥の処理負担、一日あたりの労働時間や飼養管理のためのコストを削減できており、必要な改革であったと感じている。直接的かつ緊急的な支援は非常にありがたいが、中長期的な経営力を強化するためのソフト面の支援も必要ではないかと感じている。
◯大山委員
飼料価格の高騰にとどまらず、場合によっては希望の飼料を購入できないこともある。抜本的な国産飼料生産力の強化に対して、これまで以上に予算をさかないといけないのではないかと考えている。飼料価格の高止まりが続き、配合飼料価格安定制度が発動しないことが懸念される。最終的には生産費が生産物に価格転嫁されることが望ましいが、消費者が価格に納得できなければ、消費低迷につながる。消費者の理解醸成に向けた取組を進めていただきたい。
全国和牛能力共進会において、通常より半年程出荷が早いものでもBMSの平均が10を超えていた。牛の遺伝的能力と和牛生産者の肥育技術が、非常に高レベルであると感じる一方、ロース脂肪でいうと50%に達しているということを意味しており、健康志向が高まっている中、改良の方向性を検討しなければ、消費者にそっぽを向かれるのではないか。共進会でも不飽和脂肪酸という一つの方向性が見えていた。飼料価格が高騰の状況下では、少ないエサの量で家畜を増体させる改良も非常に受け入れやすく、それ以外にも分娩間隔の短縮も、エサの量の減少や環境負荷の低減につながる。関係団体と農林水産省がこれまで以上に密接に連携して、この問題にも取り組んでいただきたいと思う。
◯小山委員
隣の地域で、水田も活用した子実用トウモロコシの生産が行われ大きな話題になった。子実用トウモロコシ生産の方法についてより知りたいと考えており、農林水産省の取組にも期待している。
私の農場では、長年、水田で放牧を行っている。水田は飛び地である場合が多いことや、湿地で土地の条件が悪いが、放牧なら対応可能。放牧に適応可能な牛を生産することが非常に大切である。耕作放棄地は水田より、畑地化の方が行いやすいと以前より考えてきたところであり、農林水産省の畑地化の政策は、農地の利活用や保全に非常に良いものであると思う。
現在の子牛の価格について、子牛が安い時代で過ごしてきた自分たちであっても、今の価格は安いと感じ、我々より高齢の繁殖農家は、ある程度高い価格で販売できたから頑張れた部分もあった。この子牛価格が安い状況が続くとは思われるが、なにより牛好きだから頑張っていこうと思える。
◯串田委員
生乳生産量は畜産クラスターの活用により飛躍的に伸びてきた中で、コロナ禍やロシア・ウクライナ情勢による円安等により、需給のバランスが短期間で大きく崩れてしまった。さらに多くの食品の値上げし消費が減退しているため、R4年度下半期とR5年度において、さらなる生産抑制という苦渋の決断に至った。北海道酪農だけでは需給調整はできないため、改めて全国での需給調整をお願いしたい。
脱脂粉乳在庫について、改めて現段階での今後の在庫対策の取組内容についてお聞かせ願いたい。
配合飼料価格について第3四半期については、予備費による補塡や基金の積み増しがあったが、第4四半期以降についても、所得確保に向けた支援をお願いしたい。
畜安法について、全国的な生産抑制が重要な局面において、自由な契約の中で自由にさせると国が対策を打ってもなかなか効果が見えてこないのではないか。改めて、畜安法と今後の取組についてご答弁いただきたい。
11月から飲用向け乳価引き上げに伴い消費が落ち込むことが予想される。私たちが安心して経営でき安定して牛乳乳製品を消費者の元に届けられるよう、食料安保の観点からも今後の対策や抱負をお聞かせ願いたい。
◯駒井委員
消費者は頃合いのサシの入った手頃な価格の牛肉を求めているということを改めて申し上げる。国内の消費者のニーズに応えるため、高級牛肉以外の牛肉を供給する努力も必要。
光熱水道料の高騰も卸売市場の経営を圧迫している。前年同月比でみたガス単価が2倍以上になった事例もあり、3.5%の手数料での運営であるため、価格転嫁は容易ではなく、大変苦しい状況にある。
輸出認定施設になること及びそれを維持すること、特に米国、EU等先進国への認定施設となることにはまだ課題があり、卸売市場のうち米国への輸出可能となっているところは15か所にとどまっている。具体的な課題の解決並びに、継続的な技術面、資金面での支援をお願いする。
原皮については、卸売市場での価格は極めて低い水準にとどまっている。産業廃棄物とせず、消費者に使われる商品の原材料として供給し続けられるような方策を準備しておく必要がある。
豚熱、アフリカ豚熱等、家畜疾病の水際対策、防疫対策については、全世界での発生状況に合わせた、しっかりした対策をお願いしたい。特に約10年前に起きた口蹄疫などが海外から侵入しないように、厚労省にも頑張っていただきたい。
◯角倉委員
現在の酪農情勢は、酪農を始めて15年の中で例を見ないほど厳しい状況にある。貴重な収入源であるF1や雄子牛も価格が半分まで低落している。さらに体格が小さい子牛は市場に持って行けないから農場で殺してくれと言われる。(涙を滲ませながら)自分たちで大切に育てた子牛を処分しなければいけない現状は非常に残念である。生産量を落とせと言われたため、初妊牛を出荷したが価格も半分くらいにしかならず、来年も減産しなければならない。この先に明るい未来があるのか、搾りたいときに搾れる時が来るのか。何か生産者にとっての希望があればと思う。
農水省も牛乳スマイルプロジェクトに取り組んで頂いているが、PJに対する認知がまだまだだと感じる。牛乳を積極的に消費していただいていることが分かったが、そういった部分が知られていない。このままでは生乳を捨てざる得ない現状をご理解頂きたい。
◯畠中委員
全畜種の中でも採卵鶏は飼料価格高騰の影響を強く受けており、これまでの貯蓄を吐き出し融資を受けながら経営している。鳥インフルエンザが今年6例目と、この時期では異例である。もし鳥インフルが発生したら、再生産が可能になるまでが大変であり、再生産できるようになったとしてもその時に市場があるのか、雇用が守れるのかも分からない。また、育雛も行っているため、自分の農場で発生したらサプライチェーン上なし崩しになってしまう。
農水省は現場のことが分かっていないように感じる。以前、鶏糞(マッシュ)を利用する人がいないため、堆肥施設を縮小した。しかしここにきて、堆肥利用の促進となっても、自費では施設整備する余裕もなく、施設の更新は助成対象でないため、堆肥の購入希望者がいても供給できない。
鶏卵生産者経営安定対策事業については、生産者の間でかなり評判が悪い。経営が苦しいときに発動せず、何のために加入しているのか分からない。空舎延長事業など取り組みたいと思っても廃棄業者が受け入れてくれないため参加できない事例をよく耳にする。また、6次産業化している農家だと証拠書類の保管が非常に大変であり、改善が必要だと思う。
◯羽田委員
畜産農家における年間平均労働時間について、建設業では残業を含めずに年平均2080時間であり、酪農ではICT導入などによる負担軽減がうかがえる。しかし、長い休日をとれているかというところが異なる。休日をとれる働き方という観点を組み込んでもいいのではないか。
売上げを伸ばすことが真の成長なのかということは考えていくべき。売上を減らしても利益を増やすといったように、コストを考慮しながら付加価値を上げていくことについて、日本全体で新しい観点としてとらえるべき。
◯馬場委員
飼料価格高騰について、予備費を活用した飼料価格高騰対策を措置いただいたことに御礼申し上げる。配合飼料価格が高止まりするなか、生産者のコスト負担の上昇を回避する影響緩和策や、粗飼料価格の高騰や副産物価格の下落などの影響も受ける酪農経営の改善に向けた支援策について、今後も適切な対応をお願いしたい。
また、補正予算でも基金の積増しを措置されたが、民間財源の枯渇も懸念されるなか、配合飼料価格安定制度の安定的な運営に向けた運用改善などについてもご検討いただきたい。
食料安全保障の観点からも、飼料穀物や、稲わら・牧草など国産粗飼料の生産・流通・利用の拡大をはかることは非常に重要である。しかし、圃場の基盤整備に加え、流通・保管体制の整備や利用拡大に向けた耕種農家と畜産農家の連携など、数多くの課題があると考えている。行政による十分な支援をお願いしたい。
消費者理解について、中長期的には再生産に配慮された水準で価格形成がされることが、安定的な畜産物の供給のためにも重要である。JAグループは、国民理解の醸成と適切な価格形成の実現に向けた全国運動を実施しているが、限界がある。政府としても、広く国民への働きかけをお願いしたい。また、今、基本法の見直しの議論がされており、再生産に配慮された適切な価格形成をはかるための仕組み作りついても検討いただきたい。
生乳について、今年度は昨年度以上の消費減退が懸念されている。全国の生産者団体は、さらなる生産抑制を含む懸命な需給調整や在庫削減に向けた努力を続けている。酪農経営・生乳需給の安定に向け、現行制度の需給調整上の課題をふまえ、必要な対応をお願いしたい。また、年末に向けて、加工原料乳生産者補給金の単価設定など、急激に厳しくなっている直近の生産コスト等の動向をふまえ、適切な対応をお願いしたい。
本年は例年になく早い時期に高病原性鳥インフルエンザが発生しており、現時点で昨年と同水準となるほど相次いでいる。JAグループとしても生産現場への注意喚起を行っているが、行政も含めて関係者が連携し、農場へのウイルス侵入防止等に徹底して取り組む必要があると考えており、国からも引き続き適切なご指導をお願いしたい。
◯彦坂委員
卵価は上昇しているが配合飼料に加え、物流・包装資材・エネルギー・人件費等、様々なコスト上昇により、高卵価のメリットは相殺されている。
鶏卵生産者経営安定対策についても、現場の仕組み等について業界と共通認識を持って行うことが重要である。本事業はセーフティーネットとしての位置づけと認識しており、補償基準価格の設定に生産コストが反映されるべき。また、配合飼料等のコスト変動をよりタイムリーに反映する仕組みを検討いただきたい。我々も経営努力や価格転嫁を含め努力するべき課題が多くあるが、行政には様々な政策を組み合わせ、畜産農家へできる限り支援いただきたい。
◯福永委員
現在色々なものが値上がりしているが、畜舎建設に係る経費がここ数年で3割程度上昇している。現在では畜産クラスター事業等措置していただいているが、自己負担額が大きくのしかかってきている。対象事業費の見直しと併せて、なんとか補助率も2/3以内を検討していただけないか。また、人手不足や働き方改革等により、エ期が伸びてきていると聞くため、現状を考えて当初予算で確保して欲しい。
配合飼料価格安定制度については、予算確保と高止まりした場合にも畜産農家が安心して経営継続できるように制度の見直しをお願いしたい。
自給飼料生産に取り組むには効率的な機械が必要だが、補助事業では更新は認められていない。農家は機械を更新しながら機能向上を図っている現状をご理解いただきたい。
繁殖雌牛増頭支援について。国の政策目標では平成30年から令和12年にかけて牛肉生産量が約20%増加を目標に掲げており、引き続き繁殖雌牛の増頭支援や継続をお願いしたい。
農地等の名義について。農地の名義変更が進んでいない土地は,畜舎建築をする等、その事業を完了するしかなく、なんとか有効に事業を活用できるよう制度設計をお願いしたい。
規模拡大を進める中で堆肥化処理施設の整備がおろそかになってきている。共同利用施設や所得向上を図るとなると、現状では厳しい。堆肥化処理施設が不足する経営体が堆肥舎を整備しやすい事業を措置して欲しい。
◯二村委員
様々な資材、エネルギー等の価格が上昇しており、生産現場が大変だということが非常によくわかったが、消費者の方も諸物価の高騰のなかで食費をできるだけ抑えたいと思うのはとても自然なこと。こうした社会の変化の中で、農業というものが産業的に強くなっていくことは非常に必要。緊急的な対策も必要だが、中長期的に見て、政策がうまく機能しているのかどうかということの点検が非常に重要であると思っている。
国産の飼料を増やしていくということは、食料の安定保障の点で消費者としても心強く思うところ。生産した飼料が実際に使われるまでの過程の課題についても、分析やヒアリングが必要ではないか。生産者と利用者の間の課題があれば教えていただきたい。
また、家畜伝染病の記載が少なかったが、今日現場の皆様からご発言があり、引き続き心配な状況ということがわかった。きちんと対策をとっていただくとともに、発生時の対応、ダメージを受けた地域の経済、事業者の方に対するサポートが重要と思うため、情報があればいただきたい。
農業や畜産の現状を多くの消費者が知るということは重要だと思うが、畜産の場合、消費者が現場を見たり知ったりすることが難しく、畜産業は消費者から遠いという実感がある。何かいい形での情報発信をご検討いただきたい。
◯前田委員
子実用トウモロコシについて、私たちは畑でやったということもあり、反700kg採れたが、稲作農家の圃場では反250kgほどになった。
品種育成、原原種子、原種子生産、保証種子生産は海外で行われていると聞いている。また国内の流通は、試験研究機関、大学および民間種苗会社との連携の中で、将来が見通せる状況に変化しているのかどうか知りたい。足りないところがあれば支援をしていただきたい。いい種を使いたいと思っても、高ければ安価なものを使い収量を落とすということは当然であるため、研究機関等に人材と必要な予算を配布していただきたい。段々日本全体の基礎研究が脆弱になっていると聞くが、農業分野でもその恐れがあり、日本の食を守れるよう即座に取り組んでいただきたい。将来補助金だけに頼るのではなくて、自立ができるような第一歩になりえると思う。中長期的に是非進めていただきたい。
◯正好委員
配合飼料原料の価格高騰は、畜産物の販売価格まで適切に転嫁されなければ、畜産物の再生産ひいては食料安全保障は不可能。農畜産物の適正な価格転嫁について、政府の継続的・強力な対策が必要。欧米の畜産物価格は日本の倍とも聞くが、欧米ではどのような政策・対策が取られているのか、次回、ご教示願いたい。
第2四半期の補塡により、異常補塡基金の財源はほぼ枯渇するが、第3、第4四半期はどのように対応されるのか。飼料メーカーに積立する力はないので、現行制度とは別立てで全額国費による直接的な生産者への支援をお願いしたい。さらに、半世紀前に始まった現行の配合飼料価格安定制度を持続可能な制度となるよう抜本的な改革を行っていただきたいと強く願う。具体的には、令和6年度を目途に、他の価格差補塡制度と同じく、国と生産者とが毎年度決められた単価に従って財源を積み立てる方式に移行することとし、このための検討の場を直ちに立ち上げていただくようお願いしたい。
昨年の飼料用米の生産は過去最高を記録し、今年も史上最高を記録するものと思われるが、畜産サイドはまだまだ受け入れることは可能。引き続き、国には一貫性をもった助成措置の継続を強くお願いしたいが、畜産局として飼料用米の今後の生産振興と安定供給について、どのようにお考えかお聞かせ願えないか。
家畜の飼養に当たって、アニマルウェルフェアに配慮することは当然だが、良質な畜産物を国民に安定的に供給するという視点も重要であり、生産現場の実態とかけ離れた過剰な規制により、生産が縮小したりすることのないようバランスの取れたものとなることを期待申し上げる。
◯松田委員
酪農家が経営を継続することにより国産の牛乳乳製品を安定的に提供できるよう、生産者からの要請を踏まえ、飲用等向け乳価について、11月からキロ当たり10円引き上げることとした。企業努力によるコスト削減努力だけでは吸収しきれないことから、他の食品と同様に消費者の皆様にご負担いただくこととしたところ。ただし、需給が大幅に緩和している中での製品価格の引き上げであり、さらなる需要減少への緊急の対応が必要となることに加え、結果的に生じる可能性のある様々な課題への対応策の検討も必要であると考える。
飲用等向け乳価の引き上げに伴い需給がより一層緩和し、乳製品向け乳量が増加すると想定されることから、この年末・年始や年度末などには、これまで以上に高い確率で処理不可能乳の発生が懸念される。
乳業者としては、これまでにも増して最大限の努力をしていくが、行政関係者の皆様にも、当事者感覚をお持ちいただき、より一層ご協力いただくようお願い申し上げる。
需給が大幅に緩和している中で生産者団体において既に取り組みはじめている増産抑制だけでは不十分であり、相当の生産抑制が必要になる。生産者の負担が大きくなり過ぎないよう、生産基盤を大きく棄損させないためにも、行政による生産者間の公平性にも配慮した強力な指導と効果的な支援が必要であると考える。
飲用等向け乳価の引き上げによる影響として、生乳の流通が混乱することが懸念される。生産抑制に協力していただけない生産者が、北海道から都府県の飲用向けに生乳を移送する動きを活発化させるのではないかと懸念する声が高まっている。需給調整の実効性を高めるためにも、行政による適切な指導と生産者間の公平性の確保が図れるような制度運用の改善を図っていただければ幸い。
脱脂粉乳の在庫について、乳製品の国際価格の高騰に加え円安の効果もあり、かつてなく乳製品の内外価格差が縮小し、かつ長い期間続いている。このため、業界の自主財源による支援措置により、当初の想定を超えて在庫が縮小する可能性も見えてきたところ。しかしながら、このような想定外の状況が長期的に継続することは考え難いことに加え、需給は、価格改定によりさらに緩和することが想定されている。このため、来年度においても支援措置を継続していただきたい。
併せて、乳業者が必要量を超える大幅な過剰在庫を抱えることについて、関係者への説明が困難となっていることから、一定の過剰在庫については、市場からの隔離についても検討をお願いしたい。
特に脱脂粉乳の在庫は需給が均衡しない限り積み上がり続けるため、需要を拡大するか生産を抑制することにより、根本的に需給を均衡させる必要がある。そのために、乳業者としては、新商品の開発等を通して需要拡大に努めて参る所存。その上で、生産基盤を棄損しないためにも、チーズ等の輸入品との置換えなど、行政による一過性でない需要確保対策もご検討いただきたい。
併せて、更なる生産抑制も必要である。生産抑制については、生産者による自主的な努力だけでは中々実効性が伴わないため、生産抑制に対する強力な指導と支援対策も併せてご検討いただきたい。
◯三輪委員
長期的なトレンドをみると、安い飼料を海外から輸入するということは崩れ、海外で買い負け、海外から品質の良い飼料を輸入できないというリスクがある。このため、国産飼料の増産は避けては通れなくなっている。
国産飼料の付加価値や、もたらす効果というのはもっと見える化を行っていくことが大切。国産飼料を農業者の方が使いたくなる、もしくは消費者の方が評価する仕組みも含めて考える必要があるのではないか。
国産飼料を使うことでどんなメリットがあるか、耕畜連携も含めて地域経済に貢献できるのかを消費者が評価できると良いと考える。サプライチェーン全体での取り組みが必要なのではないか。
◯天野課長
持続的な畜産物生産について、有意義ではないかというお話をいただいた。色々取り組んでいるところではあるが、参考資料の最後のページにある通り、消費者への情報伝達や理解醸成に向けた取組がまだまだ行われていない。それを踏まえ引き続き取組を進めてまいりたい。
◯関村課長
酪農経営の労働時間軽減については、休日に関するデータはないが、家族経営だと酪農ヘルパーを利用して休日を取る形になる。酪農ヘルパーの利用状況は、R2年度で年間23.7日間取られているところ。
畜産クラスター事業は、TPP対策ということで措置された事業であり、かなり多額の予算を確保させていただいている。これは補正予算だから確保できていた部分であり、当初で高率の補助はかなり困難な状況であることをご承知いただきたい。ただし、基準事業費・特認事業費については、見直しが必要ということで実績を調べて現在財務省に折衝中。実態に応じた単価になるよう、できる限り努力してまいりたい。
繁殖雌牛の増頭支援についても、増頭奨励事業という形で計画的に生産基盤強化に取り組んでいるところ。引き続き必要な予算確保に努めてまいりたい。
農地等の名義については、財産が関連する話でもあるので、逆に整理をする際に名義変更等できる限り更新していただくような取組を行っていただきたい。
◯犬飼課長
肉用牛の改良に関して、配合飼料価格の高騰により、牛肉の生産コストが上がっているため、令和5年度の予算要求で、肉用牛の肥育期間の適正化や早期出荷の取組を支援するための予算を要求している。農家の収益性を上げることは、必ずしもBMS12目指すことではないと考えている。
頃合いのサシの入った手頃な牛肉を求めているとのお話があったが、輸出する部位がロイン系の部位に偏ってしまうため、それ以外の部位をどうやって国内で消費していくのかが重要な課題。輸出で得た利益を還元する形でモモなどの部位を手頃な価格で提供していくことを関係者の理解を得てやっていくことも含め今後考えていきたい。
家畜排せつ物について、2年前に肥料取締法を改正し、堆肥と化学肥料成分を混ぜやすくする取組などを行ってきた。肥料そのものを撒く作業が大変だとのご指摘をいただくことも多く、一回で十分な肥料成分が得られるような改良を進めている。
堆肥の販売先については、化学肥料メーカーを介することで、畜産の排泄物から得られる窒素、カリウム、リンを有効活用できる体制をつくっていきたい。
家畜排せつ物は廃掃法上の産業廃棄物になるため、その処理は排出者責任となっているため、おろそかにしてきたのであれば、自ら是正していただく必要がある。
堆肥の高品質化やペレット化に対し、1/2補助をする事業があるが、家畜の排せつ物は産業廃棄物であるため、これ以上手厚い支援を行うのはハードルが高い。一方、生乳需給や子牛価格の下落の状況を踏まえ、増頭要件を外すことで財務省と折り合いがついた。今後そのさらなる周知を行う。
また、堆肥センターのような共同で処理をする施設についても、当課の事業で増頭要件を外し、少し使い勝手を良くしている。農畜産業振興機構の事業において、堆肥舎を補修する資材を供給する事業もあるため、具体的にどういったことで困っているのか、農政局や直接当課に教えていただければ、こちらでも使えそうな補助事業をお知らせしたい。
アニマルウェルフェアについて新しい飼養管理の指針のパブコメを実施したところ、たくさんの幅広い意見がでており、一つ一つをどのように反映できるのか丁寧に整理しているところであり、最終的なものを出すにはもう少し時間がかかる。
OIEコードは乳牛の断尾の禁止など日本の現場の実態とかけ離れているものもあるため、現場では時間をかけて努力をしてもらう必要がある。また、施設整備を伴うもの等については、畜産物のコストに響くため、きちんと消費者に理解していいただき、どのように実現していくか検討していく必要がある。
◯冨澤課長
自給飼料生産拡大については、水田を活用した飼料用トウモロコシの生産拡大、畜産農家の負担軽減に向けたコントラクター等の飼料生産組織の多角化を進めている。
これまでは粗飼料中心でやってきたが、濃厚飼料原料として子実用トウモロコシは一つの重要な作物である。子実用トウモロコシを試験的に栽培するための乾燥調整装置等の機械導入についても支援しているところであり引き続きこのような取組が続くよう支援してまいりたい。
また、放牧にとり組むことは、低コストかつ労働負担が少ない形で生産を行うことができる。我々は、放牧のための電気牧柵等の支援も行っている。また水田活用についても、畑地化の取組を進める方向で検討されている。今後も放牧等に積極的に取り組んでいただきたい。
自給飼料生産に取り組む機械について、単純更新は経営の中で取り組んでいただくことになる。補助事業で実施するに当たっては、要件の中では、飼料生産受託組織の場合、作業受託量を5%あげると、その分機械を効率の良いものに更新しなければならないことに対して支援をさせていただいている。畜産クラスター事業の機械導入についても、必要な要件を満たしていただきながら、機械の効率を上げて、工夫してご対応いただくのが1つかと考える。
今後国産飼料生産に取り組んでいくことが重要であるが、一方で耕畜連携には課題が多くあるとご意見いただいている。先般、閣議決定された総合経済対策の中でも、飼料自給率向上に向けて総合的に対応していくと決めたところ。畜産農家と耕種農家の連携強化や耕地改良による生産拡大、国産飼料の流通体制構築の支援を考えている。
配合飼料価格安定制度について、これまで665億円を積み増したが、残りの01月02日を配合飼料メーカー等のご協力により665億円負担いただくことに感謝。また、予備費で飼料の生産コスト削減や飼料自給率向上に取り組んでいる生産者に対してトン当たり6,750円を全額国費で支払う緊急対策を措置し、実質的な飼料コストを軽減できることとなった。これら制度のほか、牛マルキンや子牛補給金等の経営安定対策とその他金融対策で農家の皆さんをご支援していきたい。
なお、飼料メーカー等の将来の積立の負担による苦しい状況についてはたくさんお話を聞かせていただいている。生産継続のためどのような対策ができるのか色々とご相談させていただきたい。
また、配合飼料価格安定制度の見直しについて、補塡を受け取る生産者等からは価格の高止まり時に補塡がでるようにと要望がある一方、飼料メーカーや生産者団体の一部からは、後年度負担の懸念から財源の範囲で補塡を行うことを検討すべき等ご意見がある。このような様々な御意見があることに加え、畜種ごとの経営安定対策との関係も含めて、検討するべき課題であると認識している。早期に結論を出すことは難しいが、検討に向けた着手してまいりたい。
種子の関係では、原原種については、国内で農研機構等の研究機関や種苗会社で品種改良を行い、その後、原種生産は国内で増殖し、海外に持って行く。国内で原原種として品種改良しているものは、シェアで約4割。元々外国から輸入してくるとうもろこしのような種子は6割弱くらい。飼料生産の種子は、農研機構、種苗メーカー等と連携しながら、種子の備蓄や性能評価等を支援している。特に子実とうもろこしについては、農林水産省において、委託プロジェクト研究という子実とうもろこし生産を国内で定着させるためのプロジェクトが始まっている。現在国内で流通している青刈りとうもろこし用の種子の中で、子実とうもろこしとして我が国で適応しているものを選び出すプロジェクトがあり、そのようなことで予算要求を始めている。国内で湿害に強い等の子実とうもろこしの品種改良についてのプロジェクトも、担当技術会議事務局にもお伝えし、取り組んでいきたい。
◯大熊課長
需給調整については、今年度全国の生産者と乳業メーカーが協調し在庫対策に拠出し、国もその取組について支援している。今後については、北海道は更なる抑制を決定しており、都府県においても追加的な生産抑制に取り組むことで、全国での需給調整が行われると承知している。国としてもこうした状況を踏まえ、どういったことができるか検討して参る。
脱脂粉乳の在庫対策については、生産者団体と乳業メーカーの新たな取り組みが円滑に進むように、スタートアップ時に限って措置したところ。また、コロナ前の水準に戻すことを目標に支援をしてきたが、現在政府としてはウィズコロナの方向に舵を切っている中、同様の予算措置をすることは困難である。一方で、生産者団体の方で、11月の乳価引き上げによる生乳需要の減少に伴い発生する脱脂粉乳等について支援を検討していることは承知しており、国としてもそれに対して何らかの支援を検討しているところ。
また、脱脂粉乳在庫の積み増しを避けるためにも国産チーズ市場を拡大することは重要。国産チーズ原料の乳質向上等の取り組みを継続的に支援している。
畜安法について、畜安法改正前から農協の事業を利用するか否かは酪農家個人の自由であり画一的な需給調整を指導することはできないと考えている。生乳出荷先が指定団体であるか否かに関わらず、酪農家自身が変化する需給状況等を理解し、需給緩和に適応できるよう需給情報等を発信していきたい。
酪農の経営改善や生産基盤棄損の回避のためには、コスト上昇分を適切に価格に転嫁することが必要。まずは需給ギャップの解消を図って環境を整えることが重要と考えているところ。
乳業界に対しては、生乳増産を強く主張された経緯を踏まえれば、何らかの支援を要請することもあり得ると考えている。なお、生産者団体が行う生産抑制の取り組みついて、半ば強制するような形で国が公平性を担保することはできないが、いずれにしても必要な対策は検討してまいりたい。
また、牛乳スマイルプロジェクトについて、数10の企業・団体に直接おもむき営業活動するなどした結果、190を超える企業・団体等にメンバーになっていただいているところであり、価格転嫁に対する消費者の理解醸成についても国民に幅広く働きかけていきたい。
◯猪口課長
子牛については、肉用子牛生産者補給金で本年5月からの子牛価格の低下を受け、本年12月までの緊急対策として優良肉用子牛生産推進緊急対策事業を措置し、生産者を支援しているところ。年末の需要期に向け、今後も子牛価格を注視してまいりたい。
電気料金の上昇に対する対策として、今般決定した緊急経済対策において、家庭・企業に向けた思い切った負担緩和対策を講じることが決定され、その具体的な施策について検討が行われているところである。こうした支援により、食肉処理施設の負担軽減が図られることを期待。
対米輸出認定を受けた食肉処理施設における血斑発生対策のための設備の改良・導入を新たに支援することとしており、引き続き、必要な予算を確保し対応する。
原皮については、海外の需給動向に大きく影響を受ける。引き続き、取引価格や需給動向を注視していく。畜産副産物である原皮が産業廃棄物として処理されないようにゼラチンなど新たな需要開拓に向けた業界の取組を期待しているところ。
採卵経営については、需給への対応がしやすいため卸売価格は例年よりも高く推移している。一方で、経費の中で飼料にかかるコストの割合が高いことから、配合飼料価格高騰の影響を強く受けていることは承知している。鶏卵の経営安定対策事業について、本年度は基金残があるため、生産者負担金を免除することで生産者の負担軽減に努め、経営安定のために引き続き支援していく。
小規模経営の農家が経営安定対策事業に参加しづらい現状については、小規模生産者に限り成鶏の出荷期間拡張など、事業により参加しやすいよう現在予算要求をしている。証拠書類の提出が大変であるとのお話があったが、具体的にどのような点に課題があり、どういった対応ができるのか是非相談させて頂きたい。
鶏卵生産者経営安定対策について、補塡基準価格は鶏卵価格や配合飼料価格等のコスト変動を勘案し、ルールに沿って策定していく。
自給率が非常に高い鶏卵においては、国内の需給は国産だけで決まる。ここのため、生産費を基に補塡を行った場合、需給が緩和して価格が低迷しても需要に見合った生産が行われず、更なる価格下落を招く恐れがある。昨今の極めて異常な状況の中でも、業界だけでなく有識者を交え検討会を行い、頂いたご指摘を踏まえ事業について方向性を定めているところ。引き続き、関係者の皆様と共通意識をもって努力してまいりたい。
◯谷口危機管理官
消費者の理解が得られるような国産飼料ということで、農業資材審議会の中で温室効果ガスの低減を目的とした、飼料に添加する資材を飼料添加物として整理することが了承され、評価を行うための基準を定めたところ。消費者の理解や応援が得られるような飼料の開発の推進に寄与したい。
◯石川課長
豚熱の水際対策について、都道府県と連携して使用衛生管理の指導を徹底しているところ。当省としても消毒機器等の整備等、消費安全対策を引き続き支援していく。口蹄疫やアフリカ豚熱などの海外伝染病については、国内の侵入を防ぐために動物検疫所における家畜防疫官の増員、国際郵便などの水際対策の強化をはかっている。
鳥インフルエンザの早期発生について、シーズン前に北米や欧州において発生が多い情報があり、例年以上に早い時期から現場への注意喚起をしていた。引き続き最大限の警戒が必要であり、早期発見かつ早期対応が重要であると考える。JAグループを含め地域一体となった取組が重要である。引き続き関係者と連携して取り組んでまいりたい。また、養鶏家の方には月1回の自主点検をお願いしており、今後も関係者と連携し、発生予防、蔓延防止に努めたい。
疾病発生に係る、発生農家へのサポートについて。殺処分した家畜の所有者に対しては、原則として家畜の評価額の全額が手当金として交付される。また経営再開に要する資金の融資制度がある。その他、家畜防疫互助基金支援事業では、経営を再開する際に、家畜の導入を完了するまでに要する固定経費相当分を支援する仕組みがある。
◯渡邉局長
我が国の畜産業は経験のしたことのない大きな局面の変化にある。現在、基本法の検証や食糧安全保障の政策のあり方を検証しているが、基本法ができて20年経ち、当時は、国力がありエネルギー等が安定的に入ってきたなかで畜産業のビジネスモデルをつくってきた。ここにきて中国が台頭し、日本は買い負けしている。また、アメリカやEUではインフレや賃金の上昇があるが、日本は賃金の上昇がなく、このまま状況は変わりそうにない。畜産についていえば、国内で生産される飼料に立脚することが急務であり、大きく舵をきることが求められている。これは緊急でできることではなく中長期的な課題だが、今回の補正ではしっかりと支援をおこなっていく。酪農については、生乳の需給が緩和した中で緊急対策をやったが、中長期的に実施する対策と並行でやっていくものである。
生産コストが上がった分は適切に価格転嫁が基本であり、資材費が上昇した中で、消費者がお金を支出しない分を国が出すというのは不可能である。今後、畜産業が産業として持続的に発展できることが必要であり、そこに支援を行っていく。さらに、基本法の検証の中でこのような議論を行っていきたい。
(以上)
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