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令和5年度第3回畜産部会議事概要

令和5年度第3回畜産部会議事概要 PDF版(PDF : 517KB)

1.日時

令和6年1月29日(月曜日)13:56~16:03

2.場所

農林水産省 第3特別会議室(web併催)

3.出席委員

小針美和部会長、二村睦子委員、宮島香澄委員、石田陽一委員、小椋茂敏委員、小山京子委員、駒井栄太郎委員、
里井真由美委員、庄司英洋委員、畠中五恵子委員、羽田香弥子委員、馬場利彦委員、彦坂誠委員、前田佳良子委員、松田克也委員
(二村委員、宮島委員、駒井委員、里井委員、馬場委員はリモート出席)

4.概要

各委員からの主な発言内容は以下のとおり。


〇小針部会長
資料4の5ページにあるチーズ向け乳価のグラフの抱き合わせについて解説をいただきたい。
また、その結果現在どういう状況にあるのか。

〇須永課長
図のとおり、国内のチーズ向け生乳量のうち25%がソフト、35%が抱き合わせのハード、40%が抱き合わせ外のハードとして使われているのが現状。抱き合わせの利用数量は、関税割当の枠、または、関税割当外でも関税割当で国産と抱き合わせるよりも有利になるかどうか、といった取扱事業者の判断によって決まってくる。

〇小針部会長
「チーズへの仕向けを増やすほど生産者が受け取る平均乳価が下がっていく状況にある」というのは、仕組みとしてそうなる、ということなのか、実際の価格の推移の説明なのか。

〇須永課長
現状(の仕組みとしてそうなると)の話。国産生乳をチーズの原材料として使おうとすると、輸入原料チーズと直接競合するので、どうしても国産生乳の乳価を下げる必要がある。 

〇二村委員
資料4の21ページの労働力不足の箇所について、一頭当たりの年間平均労働時間が酪農では減少しているが、それ以外の畜種で増加している要因は何か。 

〇木下課長
生産費調査で内訳が出ているが、子牛だと敷料の搬入・厩肥の搬出、自給牧草生産、その他で疾病予防の衛生管理等で労働時間が増えていると推察される。肥育牛であれば、飼料の調理や給与にかかる時間が増加しており、配合飼料費が上がっていることから、それ以外の飼料を調達しようとしたことも一因ではないかと推測される。
肥育豚はその他が増加しており、疾病の予防として飼養衛生管理基準の遵守に費やすための時間が増えていると推察される。 

〇前田委員
労働時間の増加要因についてはしっかりと把握することが施策の検証のためにも重要だと思う。 

〇小椋委員
労働力不足は農業に限らずどの分野でも起こっており、労働コストの削減の努力はしているものの、それ以上に労働対価が上がっており、削減は難しいというのが現場の認識。 

〇里井委員
小針部会長と同じく、資料4の5ページについてお聞きしたかった。飲食団体連合会や消費者の目線から見てもソフトチーズの需要は高まっており、生乳に関してチーズの国産力をどれくらい高めていくのか関心があったが、先ほどの説明により状況を把握することができた。
また、飲食団体連合会の方でも労働力不足について議論している。今までも現場で様々な取組がなされてきたと思うが、例えば搾乳はロボット化で対応出来たとしても、ロボット化出来ないところや外国人材では対応が難しいところが現場にあるはずなので、きめ細やかな対応が必要。そのためには、ロボット化や外国人材の採用後のヒアリングや労働力不足解消の状況の把握などについての長期的な記録が大事になっていく。 

〇小椋委員
2つ意見を申し上げたい。
まず、コスト高、飼料高に対して、自給粗飼料の拡大の話があったが、拡大して生乳の原価や肉牛のコストを下げるのは当然のことだ。しかしながら、機械・燃料・人件費等もコストが上がっている状況。機械に関してはクラスター事業の01月02日リースがあるが、単純更新は認められておらず、要件の見直しが必要。粗飼料の収穫の際には、自前のトラックで輸送するパターンもあるが、地元の建設業のダンプに委託することもあり、コストは多方面で上がっている。粗飼料拡大に対しても何かしらの対策が必要なので、協議していきたい。
2つ目に、配合飼料価格安定制度について、通常補塡や異常補塡、緊急補塡等様々な対策を打っていただいた。緊急補塡も一旦終了とのことだが、一時よりも価格が下がったものの飼料価格は全畜種平均で9.5万円のまま。今の為替だとしばらく高値は続きそうだが、安定基金も現在銀行から借り入れをしている状況。配合飼料価格安定制度について、来月関係者を集めて説明会と協議の場を設けるとのことだが、これだけ高止まりしている中では先が見込めない。近いうちに何かしら制度を構築して欲しい。 

〇庄司委員
配合飼料価格安定制度について、別途検討会を設けて議論するという事について賛成。飼料工業会としても協力したい。その上で、いくつかの論点がある。
価格上昇時の激変緩和と高止まりの際の生産者支援の考え方、基金がマイナスに陥ることによる生産者間の不公平感、飼料価格高騰への支援とマルキン等の経営安定対策のあり方、中小農家の支援と食料供給バリューチェーン全体の自律的・持続的発展、民間と政府の補完のあり方等、複雑かつ多岐に渡る課題があるため、しっかりと議論していくことが大事。資料4の19ページにもあるが、特に現在の基金について、大部分が民間負担であり、飼料メーカーも緩衝材にはなっているものの、最終的に飼料価格に織り込まないと会社自体がつぶれてしまう。
負担や仕組みに対する理解度が低い生産者・関係者は、とにかく補塡ありきという方向に走ってしまっている面もあるかと思う。その中で、制度と精神を業界全体で正しく理解した上で議論することが必要。基金は、令和7年4月から新しく4年間の事業年度が始まる。その際、生産者と基金で契約をする中で、特に異常補塡については、現在600億円の借金を抱えている中で生産者と新たに契約をしても良いのか、かなり切実な問題になっている。今後しっかりと議論して、持続可能な制度を作ることで日本の畜産を支えていきたい。

〇馬場委員
配合飼料価格が高止まりする中、生産現場では緊急補塡も含めて配合飼料価格安定制度により危機を乗り越えてきた。様々な意見があるとの説明であったが、生産現場からはこの制度を評価する声も多くあることから、必要な制度だと考えている。畜産・酪農経営にとって重要な役割を果たしているということを十分に踏まえつつ、関係者の意見を聴きながら生産現場の納得感がある結論を得られるよう議論を進めていただきたい。 

〇前田委員
配合飼料価格高騰緊急特別対策の緊急補塡については、連続した3四半期で補塡金が出たが、2024年に入ってからの4四半期目は補塡金が出ないという事業になっている。
一方で、1~3月は豚価が上がらない時期であり、11年間発動がない豚マルキンが出るのではないかという状況である。
そうなると、配合飼料価格安定制度及びマルキン制度については、その両制度に人件費や事務処理が必要になるため、間を取り持つ飼料関係団体は煩雑な事務作業をせざるをえない状況になる。
そこで、マルキン制度をベースとして飼料基金を取り込んだ一本化した制度とすることで、無駄な人件費や事務費を省きつつ、シンプルでスピード感のある制度ができないだろうか。
マルキンをベースにするとなると、タイムラグにより支払いが遅れることを心配される方もいるので、公庫のセーフティネットの上限を撤廃するなり、新たな仕組みを作り、総合的に畜産業界が守られる公平な制度とするべきだと考えている。これにより、国産飼料の作付けも増えていく可能性もある。よく考えないと良い制度にならないと思うが、抜本的な改革が必要と考えている。 

〇松田委員
乳業関係について全体的な意見を申し上げる。まず1点目として、少子高齢化、人口減少が起きているという点を踏まえ、生産抑制を回避するという観点から、新たに需要を確保するための新商品開発、あるいは輸出の拡大に取り組むことが重要であると考える。
2点目として、世界で人口増加や異常気象が起きているなか、飼料価格の高騰、円安の進行などにより、食料・農業・農村基本法の検証作業において、食料安全保障が重要な論点になっていると認識している。今後の畜産酪農政策検討の立案にあたっては、不測の事態はいつでも起こり得ることを前提に、具体的な政策による裏付けのある食料安全保障を確立する必要がある。
3点目として、チーズの関税がゼロになることについて。チーズの関税率と関割制度の問題は食料安全保障の議論とも関係するので、将来の酪農生産、とりわけ北海道の酪農生産を考えると最重要課題の一つと認識している。関割制度を廃止すると、約25万トンの生乳の行き場が失われ、改めて追加の生産抑制が必要ということになりかねず、生産者の意欲を大きく損なうことが懸念されるため、具体的な政策による裏付けのある対応策の検討が必要である。
4点目として、2018年度に改正された畜産経営安定法の下、生産者が生乳の出荷先を自由に選べるようになるとともに、それまでの生産基盤強化対策により2019年度から生乳生産が拡大した。
ただ、同年度末にはコロナ禍による乳製品需要の減退により需給が大幅に緩和したため、系統内取引を行っている生産者は乳製品の過剰在庫処理対策費を負担し、かつ生産調整にも取り組んだところである。他方で、系統外取引を行う生産者は対策費を負担することなく、生産も逆に拡大をしているため、それにより生じる需給調整コストは系統内取引を行う生産者が負担させられている状況。生産者負担や財政負担も含め、全体的な需要調整コストを抑制するためにも生産者間の公平性が確保されるような運用の改善が必要と考える。
5点目として、国際的な課題であるSDGsについてだが、酪農分野においては、昨今の生産事情や経営環境が非常に厳しかったため、ほとんど検討されていなかった。
しかし、国による対策や生乳取引価格の引き上げの効果もあって、徐々に経営状況が改善しつつあることから、今後は生産者の取組について、その方向性を明確に示し、指導・支援していく必要がある。 

〇廣岡課長
配合飼料価格安定制度により5,660億円という多額の補塡を行ったことは、畜産経営への激変緩和という観点で重要な役割を果たしたと考えている。
一方、この制度は、巨額の財源負担を要する仕組みであるため、その持続可能性に課題があることから、検討会ではそのあり方について検討してまいりたい。
この制度についてはこれ以上の借り入れをしてまで補塡はしなくても良いのではないかとの意見がある一方、この制度により引き続き補塡をしてほしいという生産者の方々もいるので、そのような声をしっかり聞きながら検討してまいりたい。
また、特に酪農・肉用牛について、自給飼料を生産していく必要があるというのはおっしゃるとおりであり、我々としては、コントラクターの拡大、耕畜連携への支援に加え、品質表示した国産飼料を販売した際への支援を新たに加えるなど、引き続き自給飼料生産、国産飼料生産の利用拡大に向けた対策を行っていく。 

〇木下課長
小椋委員から自給飼料の拡大のために、様々なコストを下げていかなければいけないとの話があったが、そのとおりと認識している。
畜産クラスター事業では、機械の単純更新が認められないというご意見をいただいたが、国としては、補助事業は、リスクのある新たな取組に対し、そのリスクを回避するために補助をすることで生産者の方々に前向きに取り組んでいただきたいという考えであり、機械の単純更新については、基本的には減価償却費等の計上により対応いただきたい。
この考え方については、畜産に限らず他の業種においても同じであり、前向きな御議論をお願いしたい。 

〇彦坂委員
近年、子実用とうもろこしに取り組まれている方は多いが、飼料用米から子実用とうもろこしへ置き換わるだけで国産の飼料原料の総量は増加しないということがないように、子実用とうもろこしを増産しつつ、飼料用米についても引き続き飼料原料として生産されれば有難い。私は採卵養鶏をやっており、鶏と米は親和性が良いと感じている。庄司委員にお聞きするが、昨年の与党への政策要求の場で、日本飼料工業会から飼料用米について政策の要求があったが、飼料用米をどのように考えているか教えていただきたい。 

〇庄司委員
飼料メーカーとして、競争力があり、栄養価がとうもろこしと同等のものを絶えず探している。
その中で飼料用米はとうもろこしの急激な価格上昇の局面において、競争力があると認識しており、偶然、国が進めていた飼料用米拡大の政策とマッチした。
我々は、日本の国土、気候と米の相性は良いと感じている一方、子実用とうもろこしは、日本の国土や気候ではなかなか単収が上がらない地域も多く、農機具も新たに導入しなければいけない大変な道と認識している。彦坂委員がおっしゃったように、両面で進めてもらえると、飼料メーカーとしては、それを生産者の方々に供給する選択肢が広がるので要望させていただいた。 

〇小椋委員
配合飼料価格安定制度の見直しについて、進め方や財源のあり方など、様々な意見があるとは思う。
資材の物価高騰を全て生産物に価格転嫁ができれば配合飼料価格安定制度も必要ないが、現実はそうなっておらず、価格転嫁できない部分を配合飼料価格安定制度や国の事業で吸収しているのが現状。
借入を行っている制度ではあるが、どのような仕組みにしていくかの協議をしつつ、今後も制度を継続していただきたい。 

〇畠中委員
昨年の配合飼料価格に対する補塡のおかげで何とか経営している一方で、生産者は今後どうなるのだろうという不安の中にいる。
他の方々からも意見がある通り、制度をしっかり見直して、今後につなげていただきたい。
労働力不足の問題について、労働時間が増えることは当たり前になっている。酪農関係は平成元年に比べて機械化等されて省力化が進んでいるが、養鶏は当時既に機械化が進んでいたこともあり、
ここ30年間であまり変わっていない。それにも関わらず、衛生管理や高度な管理により作業時間が増え、消毒等のコストも増加している。
また、疾病対策で分割管理の案も出てきているが、今まで省力化してきたことを元に戻すことになり負担が増える。加えて、人件費も上がっており、現場でのコスト削減は非常に厳しい。
価格への転嫁ができない生産者も多いと思うため、生産コストは年々上がっていく前提で議論をしていくことも重要。コストを削減できなくても経営継続できるような農業政策をしていただきたい。
もう1点、地域計画の作成について、私の地元でも会議が始まったところであるが、地元の農地所有者は「みどりの食料システム戦略」や「人・農地プラン」といった言葉も知らないため、議論にならないのが現状。自給飼料を作付けしてくれる農地が増えることを期待しており、現場で議論ができるよう国や地方行政などにリーダーシップを発揮してもらい働きかけをお願いしたい。 

〇馬場委員
能登半島地震の支援パッケージについて、感謝申し上げる。支援内容を十分周知の上、復旧・復興に向け対応をお願いしたい。
今通常国会で審議される改正食料・農業・農村基本法のもと、持続可能な畜産・酪農経営の実現を通じた生産基盤の維持・拡大、食料安全保障の確立に向け、十分な議論が尽くされることを期待する。
畜産・酪農経営における目下の最大の課題は生産コストの高止まりである。耕畜連携の強化や自給飼料の活用、生産性向上のための新技術の導入、事故率低減、家畜改良などあらゆる方策によって、
所得を確保できる畜産経営の道筋を描くことが必要である。
さらに適正な価格形成の実現、万全な経営安定対策の確立が必要であると考える。
コスト低減策には、国産飼料の生産・利用拡大が鍵となると考えているが、現場の実態を踏まえて課題の洗い出しが十分行われるよう、農水省全体で議論を進めるべき。
生乳や牛肉の需給については、人口減少によって需要減が想定されるが、食料安定供給の観点から前向きな議論を行っていくためにも、中長期的な需給を見通す際には需要創出や輸出の拡大等も含め検討が必要と考える。
生乳の需給調整のあり方については、畜安法の省令改正に係る検討や系統・系統外の意見交換会など具体的な対応を進めていただいている。酪農家間の不公平感や地域の分断が生じているという現場の声があるため、一定のとりまとめに向けた検討をお願いしたい。
また指定団体以外の生乳の取扱いが増加している。
系統・系統外に関わらず、全国の生産者、乳業者、国が一体となった需給調整が今後ますます重要になると認識している。国産バターの消費量が伸びる中、脱脂粉乳が足枷とならないよう、今後も需要拡大や業界協調の取り組みへの後押しをお願いしたい。 

〇石田委員
今回の配布資料にはなかったが、2024年問題の物流費について、畜産経営にどれくらい影響があるのかという情報が現場に降りていないのが現状。
酪農ではローリー車がないと出荷できず、コントロールができないところでコストが上がっていくと思うが、それがどれくらい経営に影響するか読めていない。
2024年問題が酪農経営にどれくらい影響あると分析されているのか、またその対策について教えていただきたい。 

〇須永課長
2024年問題については、残業時間についての労働基準が変わるということで、各現場でお付き合いのある物流事業者との間で今後何が起きるかについて対応を考えていただくことが必要。
単に値上げしますという話にはならないと思う。どのような物流体制がよいのか、工夫ができるのかを考えていただくことになると思う。
我々も昨年末に対策を決める際に、合理化の取組を進めていただきたいという思いで対策の一部にその考え方を入れている。 

〇廣岡課長
配合飼料価格安定制度については今後検討会で検討させていただきたいが、本制度は全畜種一律の制度で、輸入穀物の価格変動だけで発動するかどうかが決まるものであり、
あくまで急騰に対する激変緩和ということを改めてお伝えさせていただく。
地域計画については、九州のある自治体では飼料作物を入れた地域計画を既に提出しているところもある。
自治体によって取組に差があることは事実かと思うので、飼料作物を入れた地域計画が作られるよう促していきたい。
また、飼料用米や稲WCSについては、米の生産調整との関係で多大な財源の投下がされていることも考慮すべきと考える。 

〇宮島委員
財政との関係から見ると、今般の配合飼料高に対する配合飼料価格安定制度のような短期的な支援策は必要だが、短期で終わらない事象については、中長期的に考えていく必要がある。
また、短期的な激変についても、変化が持続すれば国費が投入され続けてしまうため、業界のほか国民を含めた全体の納得感が得られなければならない。
配合飼料については、大幅な円高も見込めず、労働力が減少して国力が落ちている中で、今後開催される検討会では中長期的かつ綿密なデータや全体的な予測データを出して、どういうことをやれば持続性が高いかを検討する必要があると思う。需要に応じた生産をしない限り世の中の同意の下の支援というのは困難なため、こうしたことも含めて検討してほしい。 

〇小山委員
牛肉の価格は、一般にサシの具合によって格付けされるが、ブランドによってはサシが少なくても価格が高いものがあり、(肉の風味を左右する)オレイン酸含有量等もいずれ加味してほしい。
繁殖農家の多い中山間地域は飼料生産に適した土地であるため、地域計画を利用して自給飼料の生産を伸ばせるよう支援をお願いしたい。
生産者としては自分の農地で作った飼料で育てていきたいという思いがある。

〇羽田委員
これまでの議論を踏まえると喫緊の課題は飼料価格と理解したが、飼料価格のほか光熱費等あらゆるコストが上がっている中で、販売価格への転嫁が難しいという話をよく聞く。
どうすれば価格転嫁が実現できるのかを考えるべく、何が要因でコスト転嫁が難しいのか委員の皆様から考えを伺いたい。
課題を挙げることで、解決策について考えるきっかけになると思う。

〇小椋委員
生産コストの上昇分をすべて店頭価格に転嫁していただけるのであれば、基金等の様々な支援は必要なくなるかもしれないが、消費者が受け入れてくれるかどうかが課題。
消費者は安心・安全で安価なものを追求するのが当然。流通にかかる包装資材等の製造コスト上昇分等は売価に転嫁できていると聞くが、農畜産物はこうした理由から価格転嫁が難しい。 

〇彦坂委員
食肉については輸入品との競合があるため一概には言えないが、鶏卵では様々な販売の仕方がある。
私の農場では相場で取引しているものは全体の40数%で、残りは取引先と固定価格で取引している。
相場が上がったから高く買ってもらうのではなく、飼料価格が上がっているから価格を上げてもらうよう交渉することもある。
一方、物流費については相場価格を決める際に価格への転嫁を検討してもらえないか交渉しないと生き残れない時代になるのかもしれない。実際に認めてもらえるかは別として、まずは商談の場で交渉してみることも必要なのではないか。需給で価格が決まることも重要だが、その下支えをするような仕組みは今後必要だと考える。
ただ、運送屋としては、価格交渉をしたら契約しない、取引をやめますという事情もあると聞いている。 

〇小針部会長
価格転嫁について、石田委員はご自身の農場でジェラートを販売されているが、価格設定はどのようにされているのか。

〇石田委員
いわゆる6次産業化をしている生産者について、個々で販売している分には価格転嫁はそこまで難しくない。実際に私も商品の価格は10年前の約2倍の価格設定としている。
ブランディングの観点でターゲットにする客層を変えたため値上げをしても客の総数は変わらず、単価は上がっているので経営の改善が図られた。
しかし、これはターゲット層を自分でコントロールできるからであり、自給率の観点で言えば国産の価格が高くて買えない人は輸入品を買えばよいという問題でもない。
最終的には消費者の所得が上がり、コストを価格転嫁しても買ってもらえるよう、農業施策と経済施策をセットで考える必要があり、プロダクトアウトな生産だけでは難しいと考える。 

〇二村委員
価格転嫁について、単純にコストを転嫁して買う人がいなくなるのではいけない。
価格を適正に上げて、それが需要に結び付くよう工夫することが必要。コストが上がったからコスト分を転嫁するという単純な話ではなく、商品の品質や販売時期等、消費者がどのようなものを求めているかを考慮した上でそれに見合った価格にするというきめ細やかな対応が必要。
国産飼料については自給率を向上させる面で非常に重要。様々な施策がされているが、ここ数年飼料の自給率は横ばい。
今後は自給率の目標をしっかりと定めたうえで、公的な支援を行うところと市場の原理に任せるところを考えていく必要がある。 

〇駒井委員
牛肉の輸出については輸出対象国も増え、輸出量も増えているが、アメリカやEUへの輸出の際に処理施設に課せられるハードルが高く、資金面、技術面での課題が多い。
とりわけスポット(血斑)が大きな問題となっている。
また牛肉の需給の観点で言えば、新型コロナウイルスや円安による物価高騰により家庭消費にシフトしたが、最近は元に戻ってきた。
一方豚肉と鶏肉の家庭消費は継続して増加している、これらの動向は一時的なものなのか、ある程度定着するものなのかを見極めることが重要。
多様な消費者ニーズへの対応について、研究者、改良現場で脂肪交雑偏重是正の努力があることも承知しているが、食肉卸売市場ではA5の牛肉がA4、A3よりも高く取引されている実態がある。生産サイドだけではなく、流通サイドも巻き込んだ対策が必要。
食肉処理施設の再編・整備について、食肉卸売市場も産地食肉センターと同様に老朽化や敷地が手狭であることにより処理の高度化が困難な状況にあるため、公的な支援が必要。

〇前田委員
濃厚飼料の輸入が滞った場合、牛は粗飼料を給与する事ができるが、豚や鶏は濃厚飼料を給与しなければならない。
飼料用米や子実用とうもろこしの生産への支援もあって技術的には豚も鳥も50%までは(飼料用米を)利用することができると考えているが、100%にできない以上、
子実用とうもろこしの生産を増やしていかなければ餌として完成しない。
重ねて、大豆かすや菜種などの生産も増やしていかなければ国産飼料100%で生産することはできない。彦坂委員からも発言があったが、水田活用の直接支払交付金を飼料用米と子実用とうもろこしで取り合っている状態。飼料用作物への転換について水田は黒字になり得るが畑での黒字化は難しい。
日本の農地は水田55%、畑45%。畑に補助金を出すことが難しいことは理解するが、種や防除等に対しての継続した支援を検討していただけないか。軌道に乗るには最低でも3年はかかる。
従前のルールに縛られず一歩踏み出して考えれば、飼料穀物の生産も増えるのではないか。 

(以上)

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

担当者:請川、河田、松山
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

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