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令和6年度第1回畜産部会議事概要


令和6年度第1回畜産部会議事概要 PDF版(PDF : 941KB)

1.日時

令和6年4月12日(金曜日)14:00~16:30

2.場所

農林水産省 第2特別会議室(web併催)

3.出席委員

小針美和部会長、椛木円佳委員、二村睦子委員、石田陽一委員、井上登委員、小椋茂敏委員、小山京子委員、駒井栄太郎委員、里井真由美委員、庄司英洋委員、畠中五恵子委員、羽田香弥子委員、馬場利彦委員、彦坂誠委員、前田佳良子委員

4.概要

各委員からの主な発言内容は以下のとおり。

食料・農業・農村政策審議会 令和6年度第1回畜産部会 概要

 

【日時】令和6年4月12日(金) 14:00~16:30

【場所】農林水産省 第2特別会議室

【出席委員】小針美和部会長、椛木円佳委員、二村睦子委員、石田陽一委員、井上登委員、小椋茂敏委員、小山京子委員、駒井栄太郎委員、里井真由美委員、庄司英洋委員、畠中五恵子委員、羽田香弥子委員、馬場利彦委員、彦坂誠委員、前田佳良子委員

【ヒアリング御協力者】上鶴広己氏(株式会社上鶴畜産)、野元勝博氏(株式会社野元牧場)、髙橋勝幸氏(株式会社蔵王ファーム)、岩﨑正典氏(株式会社岩﨑食料農業研究所)

【当省出席者】渡邉畜産局長、関村審議官、三野畜産局総務課長、新井畜産総合推進室長、木下企画課長、郷畜産振興課長、廣岡飼料課長、須永牛乳乳製品課長、猪口食肉鶏卵課長、星野畜水産安全管理課長、大倉家畜防疫対策室長 ほか

 

<概要>

(株式会社上鶴畜産 上鶴氏からの発表概要)

○     鹿児島県で繁殖雌牛237頭、育成牛12頭、和子牛144頭を飼養。

○     稲WCS等の自給飼料生産にも積極的に取り組む。

○     分娩監視カメラ、哺乳ロボット等を導入し、繁殖管理技術の大幅向上とともに省力化を実現。

○     研修等にも積極的に参加し経営管理能力を高め、計画的な規模拡大や歳入歳出の綿密な管理により飼料高騰や子牛価格下落でも収益を確保。

(意見交換)

馬場委員:飼料価格高騰や子牛価格下落の中で所得率33.4%は素晴らしい経営。現在の所得率を実現した一番のポイントは何か。また、自給飼料確保が課題とのことだが、中山間地での自給飼料拡大において、今後どういう施策が必要と考えるか。

 上鶴氏:所得率については、牛舎や施設、機械にあまりお金をかけず、入札をして少しでも安く入れることでコストを抑えることを意識している。自給飼料については、耕畜連携で得た飼料を多く入れ、濃厚飼料を少しでも少なくしている。また、種付けする血統を検討する等で子牛市場での価値を高め、少しでも高く売る工夫をしている。
自給飼料の拡大については、周辺のたばこ農家が撤退してきているため、空いた畑を活用したいと考えている。また堆肥を耕畜連携で活用し、WCS等を増やして自給飼料の確保に向けて取り組みたい。

 庄司委員:専業の繁殖としては大規模経営で、更に拡大していこうという取組だが、繁殖経営は兼業や小規模の方も多い。やはり規模を拡大しないと難しいとお考えなのか。また規模拡大できない方はどのようにしていけば良いと思うか。

 上鶴氏:今は飼料費等の経費が上がっているので増頭を控えている。ただ自分としては今後規模拡大して400頭規模で年間365頭出荷を目標にしていきたいと考えている。
雇用が増えると頭数を増やさなければやっていけないが、雇用を増やさなければ少い頭数でも経営は成り立つため、家族経営で少ない頭数を飼養するのも今の時代は策かと思う。

 二村委員:法人化をしたときに苦労したことは何か。哺育ロボットはメンテナンスが大変ではないのか。使っていて課題があれば教えてほしい。

 上鶴氏:規模拡大するには信頼性の面で法人化が必要と感じた他、息子に経営継承する為にも法人化するのが良いと考えた。法人設立にあたっては県の支援事業を活用したので特に苦労したことはない。
哺育ロボットのメンテナンスについて、固定式のロボットは特にメンテナンスはいらないが、移動式ロボットは3年おきに入れ替え等が必要。また、外国製であるため修理も大変。例えばホースを変えるために100万円近くかかるが、コスト以上に省力化のメリットも大きい。

 小山委員:自分も繁殖和牛経営に切り替えて30年になるが、自分が切り替えたタイミングは子牛の価格も安く、所得確保に苦慮した。上鶴畜産ではしっかりと所得を確保されており非常に素晴らしい経営であると思う。

 椛木委員:北海道で酪農経営をしており、自分も和牛受精卵を導入して年間何頭か産ませている。酪農家が和牛を生ませると子牛の管理で苦労する。ホルスタインは丈夫で飼いやすいが、和牛は病気になりやすく周りでも苦労している農家が多い。子牛の管理で苦労している点はあるか。

 上鶴氏;やはり和牛は乳牛より体が弱く下痢等の病気が多い。特に私の牛舎は古いことから常在菌があり病気になりやすい。頭数が70頭以下の時は親牛と子牛を一緒にしていたが下痢や肺炎が酷く、不調に気付くのも遅れていた。今は大学の先生方に依頼してワクチン接種を行う等いろいろな取組をしており、下痢や肺炎、RSウイルスも出ていない。和牛は管理が難しいが慣れてしまえば問題無い。

(株式会社野元牧場 野元氏からの発表概要)

○     子牛価格の高騰を背景に一貫経営をはじめ、現在は肥育期間の短縮に取り組んでいる。

○     飼料費低減に向け、エコフィード(キノコ廃菌床、ビール粕)や自給飼料を活用。

○     牛舎内の環境改善のために農場HACCPを取得し、現在はブランド化を検討中。

○     地域の農地の担い手や規模拡大に向け、エヌプロ(株)を設立し、地域のニーズに合わせた作業受託を行っている。

(意見交換)

彦坂委員:キノコ廃菌床を飼料に使われているということだが、取り組み始めたきっかけはどのようなものか。地元で生協が農福連携でしいたけの栽培を行っており、菌床の処理が課題となっている。飼料として有効であれば紹介できると考えた。

 野元氏:以前から廃菌床を使った餌はあったが、場所が遠くて自家運搬ができず、船賃も掛かるため手に入れられなかった。最近になって飼料メーカーから紹介され、知人も給与して評判がよかった事から取り入れている。廃菌床に単味とうもろこしを混ぜており、それが肉質の充実に繋がったと思っている。なお、菌床の原材料にのこくずを使っていると牛が食べられないため利用は難しい。

 小山委員:牧場全体の飼料自給率はどの程度か。

 野元氏:端境期の2~4月は自給飼料が不足しているが、それ以外は自給飼料を使っており、一年のうち約9カ月分は自給できている。残りの3か月間を自給飼料で賄える体制を作りたいと思っている。

 二村委員:エヌプロ(株)の担い手を島外から積極的に雇用したいが、住居の確保が課題とのことについて事情を伺いたい。また、島外から移住するに当たり地域の課題はあるか。

 野元氏:空き家は多くあるが、島の人は貸したがらないし売りたがらない。小学校等も少なくなっている。県の公舎も空いている部分があり、振興局に相談しているが、県の担当課が動いてくれない。それらを活用できればもっと人を集めることができるのではないか。

 小椋委員:エコフィードや青刈りとうもろこしのサイレージの給与など、飼料費を低減しつつ短期肥育を行う、大変素晴らしい経営をされているが、枝肉の格付けはどの程度か。また、肥育牛にサイレージやエコフィードを給与しても脂肪は黄色くならないのか。

 野元氏:最近は種牛の能力が高いので、24ヶ月齢でもA5のBMS10番は出る。4等級以上が7割程度で、2等級はほとんどない。
また、脂肪の色についても、全く問題ない。自家産は白すぎて困っているくらい。青草を主に給与していた農家から経産牛を導入すると、6カ月肥育しても脂肪が黄色いままで、単価が落ちることが多い。サイレージのベータカロテンの量は分析していないが、青草でもサイレージにすることにより脂肪色に影響を及ぼす事は少なく、ちょうどよい色になる。

 井上委員:業界でも短期肥育は推奨されているが、市場にもっていくとどうしても競り負けてしまう事からなかなか踏み切れない。どのような販売戦略を取っているのか。

 野元氏:セリではどうしても競り負けてしまうので、自家産の肥育牛は相対で取引している。市場に出すと買い叩かれる可能性が高い。

 井上委員:マルキンや子牛基金などの恩恵や影響を受けると思うが、今の経営支援に対する思いがあれば伺いたい。

 野元氏:マルキンは大変ありがたいが、北海道と長崎だと交付金の額が違う。これには子牛が安いことが影響しており、不利な立場で生産していると思っている。子牛は高く売らないと儲からない。肉用子牛の平均販売額は長崎だと55万円程度だが、7、80万円程度の兵庫と肉用子牛生産者補給金の補塡額は変わらず全国一律。その差はどこでどうやって生まれ、どのように考えているのかお伺いしたい。

 猪口食肉鶏卵課長:肉用子牛生産者補給金は、全国平均価格が保証基準価格を下回った場合、全国一律の補塡金が支払われる仕組み。理由の1点目はこの制度が輸入自由化対策であり、輸入自由化の影響は全国一律である事。2点目は、皆が高く売る努力をしている中で、安く売られた分だけ補塡すると、より高く売る努力が阻害される事。それらの観点から全国一律で補塡している。一方で、地域により子牛に価格差が生じていることを踏まえ、臨時経営支援事業では全国を4ブロックに分け、ブロック別の価格で算定しており、兵庫県などの標準偏差が2を超えるような地域はブロック算定から除くなど算定の見直しを行っている。


(蔵王ファーム 髙橋氏からの発表概要)

○     繁殖から肥育・加工・販売までの一貫体制を構築

○     一部の農場で農場HACCPとJGAPを取得し、経営改善に取り組む

○     耕畜連携等による環境保全や働きやすい職場改革を始めとしたSDGsへの取組を積極的に行う

○     消費者に選ばれる和牛肉を生産し、ブランド化・輸出の促進等に取り組む

(意見交換)

石田委員:弊社も農場HACCPとJGAPに取り組んでいる。農場HACCPはPDCAが回るシステムとして経営改善の実感があるものの、JGAPの方はまだ上手く活用しきれていないという課題がある。認証を受けている農場とそうでない農場において実際に製品力・ブランド力に差があるのか。また、JGAPの取組に対するメリットを伺いたい。

 髙橋氏: ISO22000のマネジメントシステムにより運営・社員のレベルを上げることができた経験を踏まえ、牧場でも取り入れたいと思い、認証を目指した。また、当時東京オリンピックを控えており、選手村などで自社の肉を取り扱ってもらいたいという目標もあったことから取り組んだ。取り組むメリットは、外国の方にアピールができるところ。また、労働安全面において、従業員の視点では気づけなったことが見え、事故の少ない牧場を目指すことができた。牛の健康管理の徹底を社員一体となって取り組めるのは非常に価値があること。
ブランドも農場HACCP、JGAPもまだ知名度はないが、販売する際にもっとアピールをしなければいけないと感じる。シールを貼るなど消費者にその価値を伝えていく必要がある。

 前田委員:一貫した経営とSDGsや地域の取組、さらに規模も大きく、非の打ち所がない内容だった。その中で生産から加工販売を一貫して行うにあたってどのような苦労あったか伺いたい。私たちも加工販売を始めたばかりだが前途多難。何かアドバイスがあればいただきたい。さらに自社内以外の販売先の状況についても伺いたい。

 髙橋氏: 自分たちで生産したものを販売まで一貫して行うのは大変だとは思うが、コツコツと生産を拡大し、販売力をつけるということを少しずつやってきた。加工品等はこだわって作った商品をしっかりとアピールしながら販売するとファンがつく。そうすると相場に影響されない価格で買ってくれるお客様も増えると思う。販売先については食肉の専門店や量販店を始め、地元の旅館、飲食店に卸しており、ギフトとして全国にも発送している。

椛木委員:消費者は赤身を好む傾向にあるとのことだが、農場の方では血統的に脂肪が少ない牛を増やすような動きがあるのか。また、農水省としてそのことをどのように捉えているのか。A5の肉が高く取引されるものの、消費者にとってはそこまで好まれないとなると一体この先どうしていくべきか気になるところ。

 髙橋氏: 弊社では霜降りが入らない肉を生産するという動きはない。弊社としては、どうすれば霜降りが美味しいとされるのか考え、様々な取組をしているところ。実際、霜降りが多いのはロースと肩ロースのあたりであり、他の部位においてはやはりA5の価値が高い。6割以上が脂になっていることは問題だと思っており、4割程度に抑えながら、良い霜降り牛肉をどう作るかというのも1つのポイントになっている。

 郷課長: 国としてどういう和牛を目指すのかについてであるが、まずどういう肉をどういう人に売るのかという点においてニーズにかなり違いがある。海外では霜降りが好まれているが、国内には買いやすく美味しい牛肉を好む人もいるようにニーズが分かれていると認識している。さらに取引方法の違いによって、自分が売りやすい牛を作るという見方と、市場で評価される牛を作るというのは必ずしも一致しない。そのうえで令和2年度の家畜改良増殖目標においては、脂肪交雑は現在程度を維持する目標を定めた。これからの方向性については、皆さんの意見も聞いて、しっかり議論していきたい。

 大山委員(事務局代読):牛肉の嗜好性について、肥育期間の短縮により、今よりも赤身の程度は向上するだろうし、現在の黒毛和種の素質を考えれば、それでも十分なサシが得られるのではないかと考える。一方で早期出荷のデメリットとして味への影響を上げられているが、これは一定の肥育期間を経ないと得られない味があるということか。具体的にどのようなものを指しているのか。味に肥育期間が必須であれば手は出せないが、肥育期間が短くても十分に味のある牛肉があることがわかれば、改良に取り組む価値があると思うし、肥育開始月齢を早めることで達成できる可能性もある。消費者が求める牛肉に適切な価値が付くようになるためにも、出荷月齢以外の指標が必要。

 髙橋氏:ブランド牛として販売すると、消費者は肥育期間が短いものよりも長いものを好んで購入する。肥育期間が長い方がいい肉だという、わかりやすさがあるのかもしれない。また、長い肥育期間を売りにしてブランド化している生産者がいるのも事実である。肥育終盤では脂がつくようになり、正肉歩留りが悪くなる傾向にあるが、肥育期間が長くなれば当然枝肉重量は増える。枝肉重量×単価で売値が決まるので生産者はどうしても肥育期間を長くして重量をとりたいという考え方になる。
また、肥育期間を短縮した、リーズナブルな値段で食べられる和牛の需要はあると思うが、やはり生産者として販売金額を考えると、その選択肢を選ぶ人は少ないのが現状。これを解決するためには相対取引でストーリーをしっかりと伝えながら、再生産できる価格で買ってくれるところと協力して、消費者を掴むことが必要。

(株式会社岩﨑食料農業研究所 岩崎氏からの発表概要)

○     今年度の穀物需給バランスは、世界的にも安定しており、消費に見合った生産や供給が実現している。

○     ここ最近3年間で海上運賃も落ち着いてきているが、今問題なのは円安。為替の推移と穀物のCIF価格はほぼ同じ動きをしている。

○     日本は畜産業と穀物生産が分離されている。円高下では輸入飼料に頼った方が有利であったが、最近はそう言えなくなってきている。

○     現在の所得補償制度の仕組みは、何か起きた後に補償するもの。経営計画の段階で、販売や購入を前もって約束できるような仕組みを検討する事も一つの手ではないか。

(意見交換)

馬場委員:海外依存度の高い飼料価格について、以前の水準まで戻る可能性はどうか、結局は為替次第か。また、現在の配合飼料価格安定制度やマルキン等の評価を教えていただきたい。

 岩崎氏:安値が安値を癒すということわざもあり、市場価格に反応して、「こんな値段ではもう(飼料生産を)やっていられない」という農家の声もあるので、価格が底だという感じは次第に出てくるのではないかと思う。一方で、世界では現状のドル高がかなり悪さをしている。国際取引がドルベースで行われている限り、ドル建て価格の相場がいくら安くなろうとも、自国の通貨で支払われる高値の方が嬉しいとする、輸出国の農家に増産意欲が高まる。
制度については、全くの素人のためコメントできない。

 彦坂委員:需給だけを考慮して生産するのではなく、自国の農業生産を守るための農業政策にあわせて畜産をやっていかなければならないと覚悟をしており、かつての、とうもろこし3万円/トンの時代は来ないだろうと思っている。そういった価格の考え方について教えていただきたい。

岩崎氏:為替が1ドル100円とすると、3万円/トンは300ドル/トンということ。それは可能だが、1ドル100円という為替に戻るのは考えにくいのではないか。輸入インフレを農業分野だけが負担するものではなく、国全体で考えていかなければいけない時代になっているのではないかと思う。

 

(以上)

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

担当者:請川、河田、松山
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

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