令和6年度第9回畜産部会議事概要
令和6年度第9回畜産部会議事概要 PDF版(PDF : 933KB)
1.日時
令和7年1月28日(火曜日)9:30~12:00
2.場所
農林水産省第2特別会議室(web併催)
3.出席委員
小針美和部会長、椛木円佳委員、宮島香澄委員、石田陽一委員、小椋茂敏委員、小山京子委員、里井真由美委員、庄司英洋委員、畠中五恵子委員、馬場利彦委員、前田佳良子委員
4.概要
<資料に沿って農水省側から説明。その後各委員から意見を聞き取り。><概要>
【新たな酪肉近の構成案及び基本的指標関連】
小椋委員
基本法が改正され、基本計画も年度末に策定の見込み。基本法で食料安全保障が謳われており、新たな酪肉近構成案の総論でも、「食料安全保障の確保」、「国産が基本」という文言を入れる必要があると思う。また、「C.持続可能な酪農及び肉用牛生産に向けた取組」の「1酪農経営」の方向性において、「飼養戸数の減少率の悪化を抑えるためには、基本的には、酪農経営を安定させることが重要」との記載がある。それは当然であるが、離農が加速する理由と、具体的に必要な対策の記述が必要と考える。加えて、生産者自らの経営分析が重要という言及もあるが、これも当然であり、肉用牛経営の部分にも記述するべき。
次期酪肉近は5年をめどに目標を定めるとのことだが、経営安定、需給安定等の検証なしには次の酪肉近の策定はできないと思う。何年先に検証するか、明確な文言の記載が必要ではないか。
馬場委員
酪肉近は、基本法改正を踏まえる必要がある。現在、基本計画の骨子案が示され、幅広い項目において、目標実現のためのKPIが示されることになっているほか、合理的な価格形成についても明記されているところ。畜産分野でも、実効性のある、評価検証とコスト改定の環境整備について、酪肉近にも盛り込むべき。
酪肉近の構成案において、生産目標数量の方向性や全体的な考え方について記載がある。5年後目標の一方で、「参考として長期的な姿も検討」とあるが、これは10年後の理解でよいか。その上で、生産数量目標の長期的な姿として、生乳は現行酪肉近目標並み、肉用牛は現行をやや上回る水準と提示されている。5年前と比較しても厳しい需給状況の中、国内需要や輸出の拡大に向けた最大限の政策を前提として、生産現場の意欲を損なわないよう、目標の更なる検討をお願いしたい。
また、国産飼料について「粗飼料を中心とした優位性の向上」との記述があり、粗飼料の国産化は重要であるが、濃厚飼料を少しでも国産に転換することも重要。地域の選択に基づいて、子実とうもろこしや飼料用米など、濃厚飼料の生産を推進する旨も記載して頂きたい。
酪農の生産基盤について、飼養戸数の減少率悪化を抑えるために酪農経営の安定が重要であることが示されているが、真に実効性のある酪農政策がどのようなものか、既存の枠組みにとらわれず不断の評価・検証をお願いしたい。
資料6の肉用牛繁殖経営のモデルについて、繁殖経営は、コストの上昇に加え、子牛価格の低迷により厳しい情勢が続いている。国でも様々な施策を講じて頂いているところ、価格向上に資する取組を通じて、持続的な経営を実現する経営モデルを提示いただきたい。
石田委員
新たな酪肉近構成案の全体像に記載がある、「後継牛の種付率を生産者自ら判断できるような客観的なデータの情報発信」とは、具体的にどのようなデータか、またどのような情報発信をするのか教えてほしい。生産現場では、すでに民間の牛群管理システムを利用しているが、国として、そういった部分を強化するのか、あるいは民間のデバイス普及の支援なのか。
また、飼料生産について、酪農、肉用牛ともに国産飼料を基盤とした経営は必須と思う。自分は神奈川県内の都市近郊で、稲作農家と連携して稲WCSを利用しており、昨年の1.5倍まで拡大を目指して準備していたが、昨今の主食用米の供給不足に伴い、目標通りの利用拡大はできなかった。飼料生産は農業全体の課題であり、包括的に解決する必要があるが、特に耕作地が限られている地域においては、考慮いただきたい。
木下課長
小椋委員から、基本法改正を踏まえて基本計画に記載される事項を踏まえ、酪肉近にも「食料安全保障強化」や、「国産が基本」等の文言を記載すべきとの意見があった。基本計画の中で全般的な記載がされるという前提の上で、更にどのような記載ができるか、皆様からの御意見を頂きながら検討したい。
馬場委員、小椋委員からの評価・検証の御意見について、基本計画では5年後の目標を設定し、都度検証をすると聞いている。その上で、新たな酪肉近について、畜産部会において専門的な見地から、その都度評価・検証していくことができれば良いかと考えているところ。御意見を頂きながら記載していきたい。
価格転嫁についても、基本的には品目横断的に対処しており、今国会で改正法案が提出されるものと認識している。まずは基本計画があり、さらに深堀りしたことを畜産で書くような形で検討したい。
馬場委員から「長期的な姿」について、御質問があった。酪農・畜産はその生産サイクルとして、種付けから5年程度の期間がかかるため、5年後の畜産物生産には今の生産基盤が影響する。そういう意味では畜産分野においては長い期間の姿を示すことが必要かと思う。意見を聞きながら検討していきたい。
須永課長
石田委員からのご質問について、民間のデバイスに対する支援を念頭においていたわけではない。酪農経営では、自己の経営内で後継牛を確保することが基本であるが、販売のために後継牛・肉用牛を生産する生産者もいる。その生産にあたり、目の前の相場だけではなく、中長期的な需給バランスをよく考え、マクロに先を見通した種付けを行うことが重要。そのためのマクロの需給情報を提供する事を考えている。具体的な発信内容は今後詰めていきたい。
金澤課長
馬場委員、石田委員から、国産飼料の生産振興について御意見があった。濃厚飼料を排除しているわけではないが、土地の制約条件から、粗飼料がより優位性があるために記載したところである。他の部分では、もちろん濃厚飼料も含め、国産飼料生産全般の重要性について言及している。また、石田委員から、WCSについて言及があったが、WCSは水田で生産する特性上、耕種農家に生産してもらう場合に主食用米の需給の影響を受けてしまうのは、致し方ない面もある。一方で、農地や農業者の確保は耕種農家でも課題であり、水田政策の見直しも含め、省全体で議論してきたい。また、地域計画の中で、地域全体で考えていくことは重要。
廣岡課長
馬場委員から、繁殖経営のモデルに関して御意見があった。まさに、コストを下げつつ、子牛価格を上げるモデルを示したつもりでいる。肉用子牛の価格を上げるには、子牛関連の事業だけでなく、家畜市場においても飼料の改善や獣医師指導の支援等様々な取組が行われているところ。それらも踏まえ、適切な飼養管理技術の導入について、どのような書き方ができるか検討していきたい。
小針委員
小椋委員からの経営安定の御意見について、p6以降の「4関連事項」の担い手とも関連してくる部分かと思う。そのため、とりわけ酪農分野が該当するものについては、酪農の経営安定の部分に、全般的な担い手関係の事項は、担い手の部分に記述してもよいと思う。
里井委員
資料3のp1「外部の支援に必要以上に依存せず…」の「外部」とは何を指しているのか。他業界のことかと思ったが、後半に「他業界との整合性を保ちながら」と書かれていたため疑問に思った。酪農・畜産だけではなく、他業界との整合を保ちながら、産業が発展する目標を示すことが重要だと考えている。
また、資料5の酪肉近構成案のp2の「A.総論」について、項目の順番に何か意味はあるのか。読む順番で印象がだいぶ異なるが、特に必要性が高まっている部分から説明を受けた方が、読みやすいと思う。前向きな項目から始め、問題点を解決していく方が、共感を得やすいのではないか。
椛木委員
資料5の「4関連事項」の(2)で人手不足や担い手不足について記載されているが、コントラクターやTMRセンターなどの外部組織における人員不足についても、これまでと同じように対策を行っていても人は定着しないため、国として具体的な対策があるか気になった。外国人が機械に乗れるようになるためのサポートや支援など具体的な対策があれば教えてほしい。
また、(7)の災害について、この5年間でコロナも災害級の影響を生産現場に及ぼしたところ。そのような緊急的な事態が起きたときに、生産現場が不安定にならないような考え方や対応方向を示してもらえると安心して生産できると思う。
資料6の経営指標について、スマート農業の推進は重要であり、北海道でも導入している経営体を見るが、こんなに全員がロボットを入れてしまったらメンテナンスがうまくいくのかとか、財源はどうするのか気になるところ。労働力軽減は大事だが、これが基本的指標になってよいのか疑問に思った。
また、石田委員からのご質問に関連して、須永課長から牧場経営の中での種付けを経営者の判断で決めていくという発言があったが、後継牛を自分の牧場で残したら、その後の和牛の種付け等についても国から情報提供をしてもらえると使いやすいと思う。
前田委員
酪肉近構成案p7の(3)の(ウ)に、「獣医療提供体制の整備」とあるが、ペット業界に獣医が流れている状況。既に対応されているかもしれないが、在学中の獣医学生に対して、特別な支援を行った方がよいのではないか。また、産業動物獣医師が法人化するケースも増えてきているが、新人を雇用した際に3年間支援する等、具体的な支援ができないか。産業動物や行政における獣医の地位や給料が低いのではないかと懸念しているので、他分野に負けないような給与や立場を備える必要があるのではないかと思う。豚熱対策や鳥インフルエンザ対策、水際対策の強化にもつながるため、公務員の獣医や産業動物に係る獣医への支援をお願いしたい。
また、p6の「3飼料生産」に、新たに子実とうもろこしの生産についても記載頂けないか。どの畜種でも活用できる濃厚飼料であり、検討してほしい。
木下課長
里井委員からご質問いただいた、資料3の「外部」については、宮島委員から御意見いただいたもの。基本的には、他産業との関係を見つつ、産業として自立していくべき、政府からの支援が過度にならないようにしないと、若者も魅力に感じないという観点から意見があったものと承知している。
また、総論の記載についても、今回の構成案はまだ箇条書の段階であり、項目の順番もそこまで厳密に並べたものではない。今後肉付けしていく上で読みやすさやストーリー性が生まれる部分もあるかと思うので、検討していきたい。
宮島委員
資料とする上で丸めた部分があるかと思うが、自立した畜産業が、場合によっては補助金頼みになってしまうと、この先どうかという問題意識があった。外部の他産業との連携を視野に発言したわけではなく、端的に言うと税金を投入するだけ(の産業)になってしまうと、税金を納める国内人口が減少する中、その持続性に不安があるのではないかと思ってお伝えした。ここで「外部」という表現では違う捉え方になる可能性があるが、「税金の過剰投入」では直接的すぎるかと思うので、表現はお任せする。
金澤課長
前田委員から、子実とうもろこしの御意見をいただいた。国産飼料については、子実や飼料米など様々御意見を頂いているところ、どのような形で反映できるかは検討したい。
冨澤課長
椛木委員から、生産者自らが種付け率を判断できるような客観的なデータの情報発信強化に関連して御意見をいただいた。牛乳乳製品課長からもあったように、種付け条件や乳牛の牛群の年齢構成などの情報発信をしていくことになると思うが、経営に結び付く情報等については畜産クラウドを整備していきたいと考えており、その中の情報を活用しながら、民間団体や民間サービスと連携して情報提供をしていきたい。
廣岡課長
椛木委員から、労働力不足について御意見をいただいた。人材不足はあらゆる業界で課題となっており、農林水産省としても、新規就農者、ヘルパーやコントラクターなど従事する人材を増やすことについて支援をしているところ。なかなか画期的な案はないが、例えば外国人の方が働きやすい環境整備の支援など着実に取り組んでいく必要がある。また、資料6の酪農の経営指標について、主に北海道のモデルとして挙げている3つのモデルの中で搾乳ロボットを導入する経営は(ア)のみで、記載はしていないが、(イ)ではミルキングパーラーで搾乳をすることを想定している。骨子案では、どのような書き方の工夫ができるか考えていきたい。
木村総括
前田委員からの産業動物獣医師の御意見について、我々も産業動物獣医師は地域の防疫や畜産の安定性の確保という点で非常に重要な役割を担っていると考えており、これまでも、確保に向けて様々な支援をしているところ。地域で産業動物獣医師に就職することを条件に、獣医学生の修学資金を支援するといった取組も進めている。一方で、この分野に入るかはお金の問題だけではないと考えている。ペット業界をイメージして入学する方が多いが、大学の教育を通じて、産業動物獣医師の魅力や、やりがいに気づいていただくことも重要。学生時代に関心を高める取組として、インターンシップや研修、授業や実習の中で興味を引くような取組を行っている。また、最近は獣医学部に入学する女性の割合が半数を超えていることから、女性が産業動物獣医師の分野でも活躍できるような取組も考えているところ。都道府県等の職員の給与について我々が直接関与することは難しいが、県とも連絡を取り合いながらできることを考えていきたい。
宮島委員
取りまとめに向けて、全体として誰をターゲットにし、どんなことを伝える文書にしたいかについて意見を述べる。外部からこの文書を見た印象として、特に総論では業界が抱える大きな問題を俯瞰的に提示し、今後の大きな方向性をしっかり伝える内容にすべきだと感じた。冒頭の総論次第で、畜産に少し関心がある程度の人々はその後を読む意欲を失うことになる。
現在の内容では、脱脂粉乳の余剰、生産性向上、環境が論点となっているが、業界の抱える問題全体に対する記述が不足しているように感じる。特に私が問題意識を持っているのは、人口減少と労働力不足であり、これは様々な業界において最大の課題だが、総論にはその問題意識が反映されていない。本体でも人口減少について触れられているが、「担い手」のパートにおいても、新規就農を促すと簡単に記載されており、その後すぐに外国人材の話になってしまっている。
新しい力を呼び込むために、業界が何をするのか、どのような変革が必要かを示すメッセージが欠けており、現状維持を続けるような印象を与えている。産業人口を増やす難しさはどの業界にも共通しているが、この総論からはそういった点が伝わりにくい。もし、この総論が皆の議論の総意を反映したものであれば、それも一つの方向性として受け入れるが、これまでの議論では、大きな枠組みにおける畜産業界の方向性や変わるべき点について話があったと思う。総論ではその視点で検討いただきたい。
小山委員
先ほど耳の痛い話で補助金の話題が挙がった。確かに補助金はありがたいが、そもそもこの現状を作ったのはどうなのかという点は思うところがある。
和牛農家としては、美味しい牛肉を消費者に届けたいという気持ちが一番。そのためには何をしなければいけないか、何ができるかというところで、酪肉近構成案のp4にオレイン酸の記載があるが、これが将来の消費拡大のための最大の要素かと思う。牛肉を美味しくするためには脂肪のオレイン酸含量を数値化できないか、またそういう方向で各県が取り組み始めているかなど、少し気になった。
後継者問題に関しては、やはりスマート農業とは切り離せないと思う。そういった点に魅力を感じて継ぎたい、就農してみたいといった若者たちが地元で出てきている。ただ親元就農では補助金をもらえないなどの様々な複雑な問題があり、これは今回の文章と違う議題ではあるが、そういう現状があることも知っておいてほしい。
庄司委員
資料の取りまとめに感謝。皆さんの話と重複してしまうので、特に今回意見はない。
畠中委員
私も特に具体的な部分について意見はない。皆さんがおっしゃったようなところで国産飼料についても、また私は獣医なので産業動物獣医師の確保という点についても、非常に先々のことを心配しているところなので、この辺りについてはよくよくお願いする。もう一点は全般的なこととしてだが、畜産業を守るためだけではなく、国の食料安全保障を担うという意味で酪肉近の取りまとめを行っているということを念頭においてほしい。総論にしても、私達畜産農家が生き残っていくためだけではない、国の食料を守るためでもあるということを念頭に置いて、更に力強く発信いただけたらと思う。よろしくお願いする。
新井室長
宮島委員から御意見頂いた総論の部分については、御指摘の通り。まだ構成案の段階であり、ボリューム等、少し足りない部分があるかと思う。基本方針のターゲットや人口減少に関連する課題の部分についても意識していきたい。総論については、頂いた意見を骨子・本文案に盛り込むことで、今後の姿やストーリーを示せるようにしたい。
冨澤課長
小山委員からオレイン酸について御意見いただいた。現在4等級以上の割合が九割を超える状況になっており、それを踏まえて新たな改良目標においても、脂肪交雑は現状を維持する程度とし、オレイン酸等の質の面での改良を進めていくようなことを検討している。オレイン酸の数値については、測定する機械が特定の食肉センターに配備されており、任意ではあるが、数値を測定してデータを提供する取組も進んでいるので、そういったところを通じて推進していくことを考えている。
廣岡課長
宮島委員から、今後の人口減少による担い手の減少を背景に、畜産業の維持が大きな課題だとの指摘があった。まさにその通りで、これまで畜産業は堅調な需要に支えられ、農業分野の中でも堅調に伸びてきたが、今後の人口減少と労働力減少下でどうするか、重要な問題となる。特に酪肉近構成案のP5に示した「生産者が自らの経営を分析し改善を図る取組が重要」は酪農に限らず全ての畜種で重要だと考える。省力化や機械化、人手サポートとともに、経営分析と改善が必要であることを再認識したい。養豚ではこの自らの経営を分析し改善を図る取組がかなり進んでおり、厳しい状況でも優良な経営が実現されている方が実際にいる。これらを養豚の基本方針に盛り込む予定であり、参考までに紹介する。
松田委員
今回、農水省から示された構成案は、需要拡大対策や生乳取引に係る規律強化の推進など、概ね意見が反映されており評価している。
そのうえで、酪農・乳業関係者が共有する意見をより的確に反映していただく観点から、4点意見を述べる。
1点目は、総論としての食料安全保障の強化について、異常気象の頻発や国際紛争の発生等により、飼料や食料について、価格面を含め輸入による安定的な確保が困難となっており、食料安全保障の強化は最重要課題である。そのため、基本方針の総論として、飼料を含め国内生産を基本とした食料安全保障の強化が重要であるという論点を、是非加えていただきたい。
2点目は、国際貿易協定による影響の最小化について、チーズの関税撤廃等の影響を最小限にとどめる努力をすることは国の責務。その対策として、チーズ競争力強化対策が講じられているが、2033年度に向けて主要なチーズ関税は漸減・撤廃されるため、間もなくプロセスチーズ原料用ナチュラルチーズの関税割当は持続不可能となり、その結果、現行対策だけではチーズの生産が大幅に縮小し、生乳生産抑制で対応せざるを得なくなる可能性が高いと考えられる。農水省の、食料自給率向上の努力を踏まえれば、将来的な需要の伸びも期待できるチーズの生産維持・拡大策を検討することは、食料安全保障強化のために合理的であり、このことが「生産数量目標の方向性」に反映されているものと受け止めている。
なお、ソフト系チーズについて、「高い乳価を支える」と強調されているが、チーズ向け乳価は最も低いだけでなく、枠内関税率撤廃に向けて引き下げられていくことを踏まえれば、今後の交渉により決定される乳価に言及するのは適切でないと考える。
3点目は、生産数量目標の方向性の考え方について、基本的な方向性に異論はないが、5年間は現行水準を維持し、その後増産するという不規則な目標となる。生産現場が混乱する懸念もあることから、生産数量目標を提示する際には、実現に向けた対応策の考え方も併せてご提示いただきたい。
4点目は、合理的な費用を考慮した価格形成について、農水省内で議論が進められており、その法案が本年の通常国会に提出される見込みと聞いている。その中で、コストを考慮した取引については繰り返し議論されているものの、結果的に大きな影響が生じると見込まれる需給に関する議論はほとんどなされていない。価格と需給は表裏一体の関係であるため、法制化された場合の需給調整のあり方についても、一定の言及があってもよいのではないか。
丸橋委員
酪肉近の構成案について、当方が関係する「牛肉の需給事情の変化と対応方向」と「肉用牛及び牛肉の流通の合理化に関する基本的な事項」については、これまでの議論が反映されていると考える。今後、骨子案、本文案と検討を進める中で、資料3でまとめられたこれまでの議論が反映されるようにお願いしたい。
食肉処理施設の再編整備については、価格形成機能を持つ卸売市場にも留意すること、輸出施設の整備運営に関しても資金面、技術面の支援が必要なこと、今後さらなる技術者の人手不足が予測されることから、食肉処理・加工施設の機械化を推進することが重要。
また、原皮の需給が中長期的な課題である。アニマルウェルフェアについては、生産現場での課題のほか、生体家畜の輸送も関連するため、留意が必要。
伊藤課長
丸橋委員からのご意見について、食肉処理施設の再編整備にあたっては市場も含めて留意すること、今後の労働力不足が懸念される中での人材確保、そして、その機械化についても留意して進めていきたい。
原皮については、牛皮は約半数、豚皮はほぼ全量を輸出している中、国際的な相場は下がってきている状況。業界関係者との意思疎通を図りながら進めていきたい。
須永課長
松田委員からのご意見について、今後酪肉近で触れるかどうかは分からないが、生乳の生産に関しては、国産飼料の使用状況を踏まえなければ、食料安全保障の議論とは結びつかないことを念頭において議論していきたい。
小針部会長
酪肉近構成案のp4「飼料の需給状況の変化と対応方向」について、前提となっており記載されていないのかもしれないが、現在の飼料の需要量を基に、それをどれだけ自給するかという事を前提として、主食用米の需給等短期的に影響を受ける部分と、長期的な消費動向により必要な飼料生産量を区別して、飼料生産基盤が必要であることについて言及する必要があるのではないか。足元だけを見ている訳ではないことを示す意味でも必要。
また、p4の「畜産物の生産性向上にともない輸入に依存する濃厚飼料の給与割合の増加」とあるが、この文章では理解し難い。
p7(1)担い手の確保について、「従事者数」は飼養戸数を見るのか、それとも法人、個人のようなことを定義するのか。農業経営全般として法人化が進む中で、法人経営の中で雇用をどうするのかが一つの論点。様々な論点を出した上でその中で重要なものを取捨選択して最終的に記載することになると思うが、必要であればこの論点も記載してはどうか。
AIやDXについて、今後の農業経営においてデータ活用は重要となっており、具体的な記載が必要になると思う。データについて言及しているのはp7(1)「自治体や農業組織によるICTや獣医組織を活用したデータに基づく指導の推奨」であるが、経営とは結びついていないことから、経営に結びついたデータ活用についても記載が必要ではないか。
p8(6)「環境と調和のとれた畜産経営」について、現行酪肉近では、畜産環境に配慮するための糞尿処理が記載されているが、糞尿処理等の環境対策をどのようにするのか、バイオマスとしてどう活用するのかという論点はあるため、記載した方がよいのではないか。
暑熱対策について、p8(7)「災害等に強い畜産経営の確立」に含まれているが、これは経営安定において重要な技術・分野である。今後の気候変動等への対応という意味合いもあるため、項目建てをする等、記載箇所を再考してもよいのではないか。
酪肉近の全体の構成として、今後、前書きで情勢の変化や大きな課題等について記載されるものと認識している。ここ5年で起きた情勢変化等を振り返った上で、今後の方向性を整理することが重要である。
また経営については、ミクロとマクロの両面で、どのような状況になっていくのか示す必要がある。それぞれの経営に対してマクロな視点でどのように変化していき、そのためにどうするのかを考えてもらうためのメッセージが重要であることを認識したため、そのことについて意識していく必要がある。
色々と申し上げたが、骨子案を作るときに優先順位等を整理していただくことになるかと思う。その結果、核となるものが見えてきて、今後、どのようにブラッシュアップしていくかという議論を進めていけるかと思うので、よろしくお願いしたい。
冨澤課長
畜産環境の対策について、主に堆肥化した後の利用について記載しているが、どのように適切に処理して、それを農地にどのように還元して循環型の畜産を進めるかという観点で、ご指摘も踏まえて記載していきたい。
スマート農業の中について、例えば牛については、さまざまなデータについて、個体識別情報に連携できるかや、それを経営にどう活かすかを検討中であるので、そのような観点でも記載するよう工夫したい。
金澤課長
国産飼料については、農地で何を作っていくのか、また、他の作物が作れないようなところで家畜生産が根付いていることを踏まえて、将来的に飼料生産基盤をどのように守っていくかが非常に重要。需給事情も踏まえ、土地基盤を利用した家畜生産をいかに持続可能なものとしていくのかは重要な視点。飼料生産には多くの重要な側面がある。様々なご指摘も踏まえたうえで、今後検討したい。
新井室長
部会長からご意見頂いた前書きについては、骨子案を固めてからになるかと思うが、いずれお示ししたい。
【新たな食料・農業・農村基本計画の骨子案関連】
庄司委員
「国産飼料への転換」とあるが、今後畜産物を増産するには、国産飼料だけでは賄えない。国内の飼料原料も重要であるが、輸入原料を使用した配合飼料も増産しないと目標の畜産物の生産数量は満たせないため、「国産飼料の増産」とすべきではないか。
金澤課長
庄司委員のご指摘通り、配合飼料原料は輸入に頼らなければ賄えない。
ここでいう転換は、増産という観点も含まれており、完全に輸入原料に頼らないという意味ではなく、国内の米の消費量が減少傾向にある中で、農地をいかに活用していくかという観点で「転換」としている。
小針部会長
飼料については、基本計画の骨子案において多くの箇所に記述がまたがっているが、食料安全保障の確保として、「安定的な輸入」についても記載されていることを補足したい。
記述については外部からミスリードされないように見直すとともに、また、畜産業にとって、よりよい飼料の安定供給につながるような記述となるようにしたい。
(以上)
お問合せ先
畜産局総務課畜産総合推進室
担当者:請川、松山、細川
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568