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農林水産省

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令和6年度第10回畜産部会議事概要

令和6年度第10回畜産部会議事概要 PDF版(PDF : 961KB)

1.日時

令和7年2月20日(木曜日)14時30分~17時00分

2.場所

農林水産省第2特別会議室(web併催)

3.出席委員

小針美和部会長、宮島香澄委員、石田陽一委員、小椋茂敏委員、小山京子委員、里井真由美委員、羽田香弥子委員、畠中五恵子委員、前田佳良子委員、丸橋弘資委員

4.概要

<資料に沿って農水省側から説明。その後各委員から意見を聞き取り。>

 

<概要>
【酪肉近の骨子案について】

(総論)

馬場委員(代読):食料・農業・農村基本法の改正を踏まえ、また、厳しい情勢にある生産現場に前向きなメッセージを示すため、次期酪肉近では「目玉」となる国の施策の方向性を強調することが必要。長期的な生産数量目標をしっかりと確保することとあわせ、業界・国ともに需要喚起に全力で取り組み、国内生産の増大に結びつけていくことを1つの「目玉」として強調いただきたい。その上で、全体像の「目指す方向性」にも明記をお願いしたい。また、前回も申し上げたが、基本計画と平仄をあわせたKPIの設定についてもご検討いただきたい。

 

大山委員(代読):⽬標設定を5年後とすること、⽣産数量⽬標を現⾏酪⾁近並みの⽔準で検討することに関しては賛成。前者はPDCAサイクルのうち、CAが疎かになってしまうことを防ぐという点で⼤きな意味がある。後者の⽔準設定には様々な意⾒があるとは思うが、現在のような⼈⼝減少局⾯では、これまでと同じ需要を維持することが難しいことは容易に想像でき、現⾏の⽔準を維持するということは、⼀⼈当たりの消費量という点では拡⼤基調となり簡単に実現できるとも思えない。したがって、⽬標は現実的な⽔準に設定し、それに向かって具体的な施策を展開すべきだと考える。

 
小針部会長:馬場委員のご意見については、最後にメッセージとしてどう加えるのか、中身を詰めた後に議論することとしたい。大山委員のご意見についても、生産数量目標等は調整中のため、次回以降に議論することとしたい。

P1総論<食料・農業・農村基本法の改正>の18行目より畜産の意義の記載があるが、人間が効率的に摂取できる良質なたんぱく質を供給できることについて記載すべきではないか。食料安保の観点からも合致すると考える。また、「~が重要である」との記載が繰り返しあるため、意義と方向性が分かるよう書きぶりを検討いただきたい。
<生乳や牛肉の需要に応じた生産の推進>にはこの5年間における需要の変化について記載しているが、P2の6行目より経営の話が入っている。需給と経営で書き方を整理した方が良いのではないか。<生乳や牛肉の需要に応じた生産の推進>にこの5年間における需給の変化を記載し、<従来の生産手法の見直しを含む生産コストの低減・生産性の向上、国産飼料の生産・利用の拡大を通じた輸入飼料依存度の低減>に生産コストをめぐる状況の変化等と今後の対応方向について記載した方が分かりやすいと思う。
 

木下課長:小針部会長からご意見のあった、畜産が良質なたんぱく質の供給に貢献していることについては、従来、酪肉近も含め重要性を謳ってきたものと認識しており、ご意見を踏まえ記載したい。需給と経営に関する書き分けについても、分かりやすい記載となるよう対応したい。

 

小針部会長:現行の酪肉近策定時と比べ、今回は情勢が大きく変化している。はじめにそのことについて説明しておかないと、現行の前向きな方針から、新たな酪肉近ではなぜこのような方針になっているのかが伝わりにくいと思う。そこも含めて伝わりやすい総論にして欲しい。

 

里井委員:前回畜産部会で議論した構成案の総論では否定的な印象を受けたが、今回の骨子案はとてもよくなっていると感じた。読みやすいという第一印象を持った。

 

宮島委員:検討中の「まえがき」について、一般の方に、畜産がどれだけ重要で、産業として魅力的であるかが伝わるよう、簡潔に書いていただきたい。一般の方は基本法改正の詳細を知らないと思うため、普段、牛乳やチーズを食べている人々にとって畜産業がどういったものなのか、また現在の課題について簡潔に書いていただきたい。さらに、日本の人口が減り需要が落ちるという大きな課題をしっかりと捉えた上で、人口減少により畜産業に就く人も減ると思われるため、畜産業の魅力も伝わるようコンパクトにまとめていただきたい。

 

(酪農関係)

小椋委員:p11の13行目の経営安定に関して、「国による支援の規模には限りがある」という文言がある。国の予算が限られていることはよく理解しているが、この文言をわざわざ書く必要性はないと考える。受け取り方によっては、国の姿勢が後ろ向きであると捉えられかねないので、この文言に対する取り扱いに関して提案させていただく。

 

里井委員:今後きめ細やかな対応を希望されている中で、数値的なことについて、決め付けすぎなくてもよいのではないか。例えばp12の35行目「10年に一度の周期でやってくる酪農経営危機」という文言について、酪農経営における共通の感覚かと理解するが、生産者は経営危機に関して様々な思いを持っており、今後突発的な事象も起こりうることを考慮すると、あまり断定しすぎない方がよいのではないか。

 

須永課長:ご趣旨は承知した。今回は皆様から様々なご意見をいただき、より伝わりやすい表現について検討していきたい。

 

石田委員:p12の32行目に「経営者が総合的な経営力を高めるため、自らの経営を分析し、改善を図る取組を推進する」と書いてあるが、まさにその通り。個々の経営者が農家から経営者にレベルアップしていくことが重要。これは以前の畜産部会でも提案したが、特に繁殖成績については、経営の内容を立体的に把握できる良質な情報である。そういった情報の活用を推進してもらえるような情報発信をお願いしたい。

 

松田委員(代読):酪農部分について、3点、意見等を申し上げたい。1点目は、現行酪肉近と今回の骨子案を比較すると、需給事情等の違いによるものかもしれないが、現行の酪肉近は総じて前向きな表現が多いのに対し、今回の骨子案には相対的にネガティブな表現が多いように思う。目標数量の方向性とは裏腹に、生産者に前向きな気持ちが湧いてこないのではないか。例えば、現行酪肉近の対応方向には、「チーズは8割を輸入するなどチャンスロスが生じている」「国内需要を可能な限り国産生乳により賄うため(中略)都府県酪農の生産基盤の回復と北海道酪農の持続的成長、全国の酪農経営の持続的な経営展開が最重要課題である」とあり、今回の骨子案と比較すると非常に簡潔で前向きに感じられる。記載内容を簡潔にするなどの工夫を期待する。
2点目は、生乳の需給事情の変化と対応方向について。現行酪肉近との長期見通しのように、主力の飲用牛乳からはじめ、乳製品の中でも需要の大きいものから順に記載していくのが基本的ではないか。今回の骨子案はチーズから記載されているだけでなく、チーズに関するネガティブな記載の比重も大きく、ややバランスを欠いているように感じられる。また、経営安定のためには価格が重要であることは理解できるが、現行酪肉近にはほとんど記載がない価格に関する記載が非常に多い点も違和感がある。なお、「国産に優位性があり高い乳価を支えるソフトチーズ」という表現や類似の表現がでてくるが、「品質保持期限等の観点から相対的に競争力を有するソフト系チーズ等」のような表現の方が適切ではないか。
3点目は、その他違和感のあるいくつかの表現について。p5の5行目「輸入品と競合しやすいプロセスチーズに一定量を仕向けることも必要である。現在のTPP対策は、これらの観点に応え得るものとなっている」との記載があるが、これは現行の関税割当を前提とした評価であり、関税割当が持続不可能となった際にも「応え得るものになっている」という評価には疑問を感じる。先を見通した、もう少し工夫した表現が必要ではないか。P11の9行目「国による支援の規模には限界があるが、(中略)酪農においては、乳価の形成が最も重要である」との記載があるが、生産者団体の要請を打ち消すための記載であるように感じられる。国が基本方針にあえて記載する必要はないのではないか。p11の28行目等「生乳1kg当たりの収支を最大化」等の表現がしばしば見られるが、やや違和感がある。多くの生産者にとって基本乳価は同一水準であることを踏まえれば、従来どおり生産コストの削減等の表現の方が適切ではないか。



須永課長:いくつかはご意見として承るということで良いかと思う。1点言いたいこととして、我々は乳業団体との意見交換を求めているが、なかなかお互いの話を交わせていないと思う箇所がある。1つはチーズに関して。我々からするとご主張は、乳価を下げてほしいと仰っているように聞こえる。本日御欠席のため真意は不明だが、生産者にとっては乳価が大切だと仰っている乳業側の声と今回のご主張はどのように噛み合っているのか。こういったことについて何度となく議論を求めているが、お答えいただいていないと認識している。加えてTPP対策について、現在は抱き合わせによる国境措置があるが、為替の影響もあり、この効果はコロナ直前に一度消えているが、その時でも一定程度乳価を支える効果はあったと考えている。今後も引き続き支えられるように内容面の工夫も重ねているところ。そういった評価が抜けた上で一方的に申されているのではないか。これらも以前説明したが、今回このようなご意見をいただいていることもあり、ぜひ考えをお聞きしたい。
最後に1kg当たりの収支に関して、「生産者の基本乳価は同一水準」と意見されているが、どれぐらいの1頭当たり乳量を目指し、そのためにどれほどの餌を与え、コストをかけ、どのような乳質を狙うかは個々の経営選択の話であり、単純に牛を飼っていれば同じ乳代が得られるものではない。この辺りも認識を合わせていく必要がある。

 

羽田委員:規模拡大ではなく、経営資源に見合った規模の選択が重要というような書きぶりがあった。まさにその通りで、データに基づいた記載かと思われるが、結論として何を言いたいのか伝わらない。これ以上農家戸数が減少しないように、みんなが規模に見合った経営をすればよいというメッセージを示したいということか。そこまでの記載をするかどうかも教えていただきたい。

 

須永課長:戸数については非常に重い問題と認識している。個々の経営者が、様々な事情によって、最終的にやめるかどうかということについては、経営者のご判断であるため、強くコントロールしたり、メッセージを出し切ることは無責任になるかと思う。一方で人や土地などの、経営資源に見合った経営規模の選択が経営の安定につながり、個々の経営体がより長く経営を続けていただけるという思いがあり、このような記載をした。

 

羽田委員:今お話しされたことを、メッセージとして今後もう少し明確に記載されるということでよいか。

 

小針部会長:私はそう理解している。マクロでは、需給緩和により価格が下がる一方で、需給を引き締めるためには需要に見合った生産が重要である。その中でミクロの経営として、生産・供給サイドはそれぞれの経営が持ち得る資源の中で、どのように、より効率的な経営を目指すのかということ。その要素として、今一番重要になっている飼料生産をどうするか、その先に担い手、環境問題というように結びつく形で、最終的に酪肉近が構成されていけばよいと思う。

 

小椋委員:p24の25行目の生乳の生産数量目標の方向性に関して、5年後の生産数量目標は現状の生産量並み、長期的な姿は現行酪肉近の生産数量目標並みを目指すことを検討というように書かれており、5年後と10年後の2段階的に数字を示すことになるのかと思う。現行水準というのは令和4~6年度並みの生産量を指し、長期的というのは10年後という捉え方かと思うが、急激な曲線を描かれても生産現場では対応できない。また、日本の人口は少子高齢化によって減少している一方で、世界の人口は右肩上がりで増加しており、2030年度には輸入乳製品が不足するであろうというデータも出ている。今回の審議会では目標の数字は出さないということだが、今お話ししたような現状を農水省としてどう捉えているか、御説明お願いしたい。

 

須永課長:数量目標については次回に向けて検討していく。今後アジアを中心に需要が高まり、世界的に生乳が不足するという報告があることは承知している。一方で、我々がよく認識しなければいけないことは、世界の主要な輸出国の生乳の価格帯と、国産生乳の価格帯の差であり、この問題をクリアしないとうまくいかないものだと思う。だからこそ比較的付加価値を伝えやすく、保存期間も短い飲用牛乳の需要が最近アジアで伸びてきているということだと思う。出口の需要拡大は国内だけが対象ではない。この出口を拡大しながら、同時に生産を考えていくことがしばらくは重要かと思う。出口がないまま生産してしまうと、価格が急激に下落してしまう懸念もあり、そのバランスをどう表現していくかということ。

 

小椋委員:需要と供給のバランスについては私も同じように認識している。一方で、コロナ禍以前と比べて脱脂粉乳の需要はかなり改善してきており、消費される状況になってきていると思う。それらを勘案した上で、5年後10年後の数字を出していかなければならない。また先ほどお話したような生産数量目標の急激な曲線には現実的に現場が対応できないので、そういった指標は出すべきでないと考える。その辺りも十分踏まえた中で数字を出していただきたい。

 

須永課長:そのことについても今後の需要見通しを我々がどう推計できているか、数字を見ながらお話していくことかと思う。また酪農が生産体制を変えるのに3~5年かかることは我々もよく理解している。全体に通じる話だが、1度目標を定めたら5年間何もしないということではない。需要がしっかり確保される姿を作り、そこを目掛けて生産をどのような順番で考えていくのか、それを明らかにしていくことが必要だと思う。改めて数字を目の前に置きながら議論をさせていただきたい。

 

(肉用牛関係)

丸橋委員:本基本方針が生産側中心の検討にならざるを得ないのは承知しているものの、生産者と消費者を結ぶ加工・流通側が抱える課題にも触れていただけないか。これまでの部会の中でも議論があったが、食肉施設の老朽化や稼働率が低いことに加え、技術者不足、原皮の需要も課題となっている。アニマルウェルフェアについて、生産現場での課題のほか、生体家畜の輸送も今後の輸出振興上の課題になると認識している。

 

小山委員:P13の29行目「(2)経営安定」に関する記載のなかで、内容としてはこの通りという認識だが、文章として固い印象をもってしまう。もう少し柔らかい言葉にすれば頭に入りやすいと考える。
また、スマート農業技術を活用した飼養管理についての記載があるが、田舎では(通信状況が悪く)スマホが使えない地域が多い。担い手確保の面でも、その理由で農業をしたくないという人もいるということを、ご認識して頂きたい。

 

大山委員(代読):飼料の利⽤性を改善していくことも畜産業の近代化を図る上で中⼼的なテーマではないか。昨今の国際情勢の下、国産飼料の増産を喫緊の課題として位置づけることはもちろん賛成だが、同時に飼料利⽤の効率を上げていく改良⾯での取組と、その成果の現場への普及も⼤切と認識している。家畜改良増殖⽬標では、かなりの紙⾯を占めているが、酪⾁近においても明確な⾔及があっていいのではないか。

 

廣岡課長:小山委員から御意見頂いた、スマホの電波について、以前の畜産部会において畠中委員からも同旨の意見があり、その後開催されたスマート農業の各省連絡会議の際に、当省から電波環境の改善について意見を申し上げたところ。酪肉近に電波について書き込むことは難しいが、今後もそのような機会があればお願いしていきたい。

 

小針委員:P13「(1)生産基盤」に関して、生産基盤とは繁殖経営を指すという理解で良いか。肉用牛の生産基盤というと肥育経営も含まれるものと思うが、肥育経営については情勢変化がないために記載がないということか。

 

木下課長:生産基盤と言った時に、肉用牛では繁殖経営が基盤となり、その後肥育経営へとつながることから、まずは繁殖雌牛の頭数を見る事が基本であり、次いで、飼料が重要という認識を持っている。人や畜舎の数等については肥育経営も関係するが、そのような理由から繁殖経営をメインで記載しているところである。

 

冨澤課長:大山委員から御意見いただいた飼料利用性について、その改善は生産コスト低減の面で重要と認識している。家畜改良増殖目標において、飼料利用性の指標化、実用化に向けた検討に取り組むという段階であることから、酪肉近において、具体的にどう使うかという記載については今回見送っている。家畜改良増殖目標で検討した後、今後活用していただけるかを検討したい。

 

小針委員:私も大山委員からの御意見については、論点として非常に重要だと思っている。今後ご検討いただきたい。

 

石田委員:P14の11行目の経営安定に関する「取組の方向性」について、適正規模に注目していくという事は、私の解釈では売上ではなく、利益を見ましょうということだと認識している。売上を上げるのは分かりやすいが、その分コストもかかり、結果的に収支が合わないということがある。利益を見るためには、生産者は、毎月の収支をモニタリングする習慣が必要である。生産者自ら毎月会計を損益計算書やバランスシート等により分析できるような指導を酪農でも肉用牛でもお願いしたい。

 

小針委員:酪農、肉用牛のどちらにおいてもその点が示されているが、「4関連事項」の「(1)担い手の確保、技術・経営の指導」にもつながる部分である。石田委員から意見があった会計の重要性について、「4関連事項」の「(1)担い手の確保、技術・経営の指導」に記載したうえで、酪農と肉用牛の両方で記載していただくと良いと感じた。

 

小椋委員:P14の22行目において、短期肥育・早期出荷の推進について記述がある。文言自体は問題ないと思うが、流通業者の理解が必要と感じている。今の格付では、脂肪交雑で価格が決まるが、短期肥育・早期出荷によって枝肉単価が下がってしまってはいけないと思う。そのような点で流通業者の理解醸成をしていくなどの文言を記載するべきと考える。

 

伊藤課長:短期肥育・早期出荷を行った牛肉の評価は確かに定まっておらず、流通業者の理解醸成が必要と認識している。P14の23~25行目では「収益性や安定した品質の確保が重要であることから、科学的根拠に基づいたデータを基に、生産・流通の関係者の認知度向上や理解醸成を図る。」こととしており、現在、早期出荷に取り組んでいるものについて、食味等の分析を行っているところだが、流通業者の理解醸成を進めていきたい。

 

(飼料関係)

畠中委員:現行の酪肉近には、飼料用米について記載されているが、今回の骨子案にはその記載がない。水田政策の見直しの議論もあるなかで記載が難しかったと思うが、畜産クラスター事業等で堆肥を活用して飼料用米を生産するなど、現場では資源循環型畜産がやっとうまくいき始めたところで、農林水産省が梯子を外すようなことはやめていただきたい。現在のように輸入穀物価格が高止まりしている状況では、飼料の確保は食料安全保障にも関わるため重要であると考える。

 

小椋委員:国産飼料の増産と、飼料生産コストの低減は当然進めていくべきである。青刈りとうもろこしと耕畜連携も進めていかなければならないが、これまで飼料用米や子実用とうもろこしの生産を推奨し、生産側と利用側でやっと定着してきたため記載するべきである。水活の見直しにより飼料用米の記載が消えてしまったのかと思うが、全く理解できない。青刈りとうもろこしだけでなく、他の飼料も一体として推進していく姿勢を明記し、全国の生産者にメッセージとして発信していくべき。

 

石田委員:稲WCS、飼料用米の記載がなくなったことに失望している。青刈りとうもろこしを生産、利用している身として、非常に良い飼料であることには同意するが、一本足の記載はよくない。青刈りとうもろこし一辺倒であると、病気のまん延のリスクや、業務時期の集中といった作業体系としての懸念もある。繁忙期と閑散期の差が激しいと通年雇用も難しく、刈取り時期を分散させる観点でも、バランスをとった飼料作物の生産が重要ではないか。
p15の「飼料生産を地域計画の中で位置づける」の記載は評価する。自身も地元の農業委員会で農地を探していたが、飼料を生産するには最低でも2反あるいは3反は欲しく、生産性向上のためにも一定規模の面積が必要であるため、地域計画の中で位置づけることは重要である。

 

前田委員:子実用とうもろこしの生産をしているが、梯子を外されるのかと思っている。飼料用米も1000トン使っているが今年の契約は大変苦労した。これから5年先、10年先を見据える中で、青刈りとうもろこしだけで耐えうるのか心配している。運搬コストを考えると、身近にいる畜産農家のニーズにこたえるべきであるし、それぞれの品目を記載し、各地域の生産者には現状を踏まえて選択してもらうことが重要である。

 

庄司委員(代読):配合飼料価格安定制度の改革について、農林水産省が公表した「中間的総括」では具体的な解決策とはなっていないため、7割を超える市場シェアを持つ商系の生産者と配合飼料メーカーは不安を感じている。令和7年度以降に異常補塡が発動する事態となった場合、民間の基金積み立てが十分に確保されるまでは、農林水産省による暫定・特例措置の実施をお願いするとともに、食料安全保障の観点から、同制度が持続可能となるような改革に向けた関係者による集中的な議論を継続していくようお願いする。国産飼料用米については、昨年農林水産省の関係局長宛ての要請書を出したところである。食料安全保障の抜本的な強化が求められる中、配合飼料に関しては、飼料用米が数十万トン単位での供給が見込まれる唯一の国産濃厚飼料原料となっているほか、我が国の風土に適した形での水田活用を通じて国土保全にも重要な役割を果たしている。 これまでの生産・流通・消費関係者による各段階における利用拡大に向けた取組の成果・蓄積にも拘らず、今後、供給が大幅に縮小する状況になっており、国産飼料用米の安定供給が将来にわたって確保できるような十分な支援の継続について、政策方針として明らかにした上で着実に実施して頂きたい。

 

馬場委員(代読):濃厚飼料の生産について、「需給事情の変化」では「濃厚飼料原料をすべて国産で賄うことは難しい」との後ろ向きな表現の記載がある。耕畜連携への貢献や省力的な農地利用など、飼料用米や子実用とうもろこしといった濃厚飼料も含めて飼料生産が果たす役割は多くあり、現場の努力を阻害するようなメッセージとならないよう留意いただきたい。また、農地確保や労働力不足が課題となるなか、耕種農家による生産も含め、省力的な飼料生産を推進することはますます重要である。食料安全保障の確保を柱とする改正基本法をふまえ、水田政策の見直しにおいて国産飼料生産への支援をしっかりと位置付け、酪肉近でそうした内容を明記するなど、省内でも農産局などと十分連携いただき、飼料自給率の向上を図っていただきたい。

 

金澤課長:前田委員と庄司委員から、飼料用米の調達についてご意見があった。まず、飼料用米については、水田活用交付金をもとに生産されているところ。主食用米の需給状況によって、作付けが変化することはご理解いただかざるを得ない。飼料用米の多収米への転換を進めており、その割合は増加しているが、一般品種もまだあるため、それが変動要因になっていることもある。
各委員から、飼料用米、子実用とうもろこしを記載することについてご意見をいただいた。しっかり受け止め、記載について調整していきたい。水田政策の見直しについて議論されているところであるが、稲作農家の高齢化も進み、今後大幅な減少が見込まれる中で、一例として青刈りとうもろこしを掲げさせていただいたところである。もちろん適地適作で、地域の実情に合ったものを進めていくことが肝要である。固有名詞ではないが、p15の36行目に、飼料用米も子実用とうもろこしも含めて「飼料用穀物」と記載している。食料・農業・農村基本計画でも同様の御指摘をいただいているところであり、農産部局とも連携して検討していく。
庄司委員からご指摘があった配合飼料価格安定制度の改革について、一度ご説明させていただいたところであり、今後議論するべきところは議論してまいりたい。令和7年度以降に異常補塡が発動する事態になった場合のご懸念であるが、我々も同じ認識であり、対応策について関係当局と調整含め対応しているところである。運用改善をしっかり行い、実効性を見ながら検討してまいりたい。
石田委員から、地域計画についてご意見があったが、地域でしっかり話し合うことが肝要である。年度末に向け地域計画を作成していただいているところであるが、飼料生産についても組み込んでいただけるように酪肉近でも記載したい。

 

前田委員:水田政策の見直しに反対していない立場である。全国の田畑に光が当たる政策が始まると聞いており、日本全国の農土や地域を守ることにつながるため、非常に良いことだと思う。バランスの良い政策になることを期待している。

 

小椋委員:飼料用米と子実用とうもろこしは、認知度も上がってきたところであり、方向転換するべきではないと考える。今後の文言等は考えていただきたい。

 

小針委員:水田政策の関連について非常に難しいことは承知している。基本法の中で、食料安全保障の確保、食料自給率の向上、飼料自給率の向上と、その飼料用の農地拡大が重要であることは全体でも言われているところであり、これらを進めていけるような記載をしていただきたい。p14の「3飼料生産」については、「飼料生産」だけでよいのか疑問。作る側と使う側が連携し、資源が循環することに価値があり、そこに支援する形が理想である。また、今まで取り組まれているものを定着させることが重要ではないか。石田委員のご意見のとおり、国産飼料を上手く利用するには、地域内で利用できる国産飼料をどのようなバランスで給餌していくかが重要だと思うが、その記載が少ない印象がある。バランスよく耕畜連携を行うことで、飼料費の安定や経営の安定にもつながるため、記載について検討いただきたい。

 

金澤課長:ご指摘を受け止め、議論してまいりたい。酪農、肉用牛の箇所にも、自給飼料を活用していく旨を記載しているところであり、まとめ方については検討してまいる。

 

木下課長:小針委員ご指摘の、「飼料生産」のタイトルでいいのかという点について、例えば「国産飼料の生産・利用」が考えられるかと思う。

 

羽田委員:畜産農業の経営安定、資源循環の視点において、国産飼料は非常に重要である。畜産経営者に国産飼料を利用する意思はあるが、国産飼料を作ってもらえないため、国産飼料の利用が進まないと考える。乳業メーカーが、国産飼料の利用の有無を意識して生乳を購入することが、国産飼料の利用拡大の一助になるのでは無いか。現在の流通経路を考えると、乳業者は国産飼料の利用の有無を考慮せずに生乳を購入しているし、消費者も国産飼料で生産された牛乳かどうかわからず消費している。国産飼料のメリットを感じることができれば、国産飼料の利用拡大につながるのではないか。現在の骨子案では畜産・酪農生産者と飼料生産に係る対策しか記載が無いが、国産飼料のメリットを理解してもらえるように打ち出していくべきではないか。

 

金澤課長:消費者に国産飼料の重要性が理解されない点について意見があった。飼料用米や子実用とうもろこしといった濃厚飼料の大宗は輸入穀物であり、頼らざるを得ない側面もあるが、鶏卵、豚肉、牛肉の一部で、国産飼料で差別化を図り、生協ルートで販売している例もある。流通の面では、適正な価格で消費者に届ける必要があり、国産飼料を利用した畜産物だけを分別管理すれば高コストになるため、完全に分けることは難しい。牛が食べる粗飼料の8割は国産であり、国産の粗飼料を多く食べている乳用牛の牛乳を飲むことが国産飼料利用の推進に繋がると言える。

 

羽田委員:国民は、ほぼ国産飼料だけを食べている牛乳を消費しているということか。

 

金澤課長:粗飼料の自給率は約8割である。酪農の飼料自給率は高いが、乳牛も配合飼料を食べるため、その部分は輸入になる。

 

羽田委員:酪農の飼料自給率を更に上げるにはどうするのか。国産飼料の利用拡大には乳業メーカー、流通業も巻き込むことが必要と考える。乳業メーカーとも連携して、国産飼料の利用を進める事をご検討いただきたい。

 

須永課長:書きぶりについて検討してまいる。本日は不在だが、書面意見でもあったように乳業協会としても、酪農生産者をどのように支えていくのかという観点で考えを持っているかと思う。乳業メーカーは、国産生乳の価値を伝えていくのが乳業の仕事であるとおっしゃっているところ。脱脂粉乳を使うヨーグルト、チーズの需要拡大の取組みを我々も応援したいと思っている。需要拡大する中で、国産生乳の価値をどこに見出し、どのように伝えていくのか、乳業、生産者、小売を含めた関係者全体で探っていくことが重要である。酪農・乳業界では、川上のウエイトが大きいので、我々のマターとして認識しているため、今回の酪肉近にもよく書き込んでいきたい。

 

小針委員:牛乳は合乳されるために差別化が難しいという事について、地域で飼料生産に取り組んでいるという価値をみんなに知ってもらい、所得につながることが理想である。その取組を作っていくことが課題になると思うので、盛り込んでいただきたい。

 

(関連事項)

畠中委員:骨子案P17「(3)家畜衛生対策の充実・強化」について、水際検疫や国内防疫の徹底といった、発生前の対応についての記載はあるが、家畜疾病発生後の経営再建等の生産者側に寄り添った内容がない。鳥インフルエンザだけでなく、牛に関しても過去にBSEや口蹄疫の国内発生があり、今後、国内未発生の疾病が入ってくる可能性もある。P18の12行目に早期の通報について記載があるが、生産者が早期に通報できるよう、発生後の経営再開やサプライチェーンの維持といった、発生後の支援体制の強化についても記載いただきたい。強く要望する。

 

大倉室長:生産者のためにも、疾病を発生させないよう、発生する前の備えが何よりも重要だと考えている。そのため、発生予防について重点化して記載しているが、畠中委員のご意見のとおり、発生後に経営再建に至らないと通報をためらってしまうこともあると思う。過去の疾病発生を踏まえ、家畜伝染病予防法における支援も充実してきた。早期通報を前提とした経営支援をどのように書けるか検討したい。

 

小椋委員:P16(1)「担い手の確保、技術・経営の指導」について、酪農・畜産に関わらず、担い手をどう確保していくかは全国共通の課題である。14行目にリタイアした場合の減少見込みについて記載があるが、そうなってしまうと、酪農・畜産は成り立たなくなる。どのように担い手を確保していくのか、具体的に記載する必要があるのではないか。16行目に省力化の推進等の記載があるが、これだけではなく、所得が確保できる経営体となるよう導かなければいけないのではないか。後継者のいる農家が廃業したり、新しい担い手が参画しないのは、今の状況では所得が得られないからであり、これは大きな問題である。所得があって営農ができるよう、文言を入れてもらいたい。

 

馬場委員(代読):「持続可能な酪農及び肉用牛生産に向けた取組」の「経営安定」の項目では、適切な飼養管理や内部留保を高めるなどの記載が盛り込まれており、こうした生産現場の取組も重要なことと考える。生産資材価格が高騰・高止まりする厳しい状況のなか、骨子案の段階では、直面する課題に対応する国の施策が見えづらいという印象。本文案に向けては、例えば「4(9)の経営安定対策等の安定的な運用」の項目などにおいて、酪農・肉用牛ともに具体的な施策を含めて掘り下げて記載していただき、国としての「中小・家族経営を含めて生産者の経営安定に万全を期す」といったメッセージも盛り込んでいただきたい。

 

大山委員(代読):消費者の理解醸成について、消費者に畜産業の意義を理解してもらうことに加え、国産畜産物の価値と魅⼒を知ってもらうことも重要だと思う。その⽅策の一つとしては、学校教育への位置づけなど、省庁横断的な施策も必要ではないか。幅広い取り組みを期待する。

 

小針部会長:小椋委員からのご意見について、P16の「(1)担い手の確保、技術・経営指導」を、骨子案の全体像に合わせて、「担い手の確保、経営能力の向上」として、経営力を上げるために何をするのかということを記載するなど、記載を工夫していただければと思う。また、P20「(6)環境と調和のとれた畜産経営-1.資源循環型畜産の推進」について、堆肥を活用して国産飼料を作るといった、家畜のふん尿を地域で循環させることは、P14 「3 飼料生産」の内容と並びを取って記載を検討いただきたい。これは、食料安保や環境と調和のとれた農業経営といった基本法の流れとも合致すると考える。

 

冨澤課長:小針部会長からの、家畜排せつ物を適切に処理し、草地や飼料畑等の地域内で利用し耕畜連携を図ることは重要とのご意見については記載を工夫したい。

 

宮島委員:小椋委員のご意見とも繋がるが、全体的に、畜産業に担い手を確保する、魅力を発信して理解してもらうというインパクトを感じない。P16「(1)担い手の確保、技術・経営の指導」において、酪農・畜産における従事者数の減少について極めて厳しい数字を記載しているにもかかわらず、みんなで頑張って若い担い手を確保しようという意気込みが見えない。あらゆる産業が若手を確保しようと苦労している状況で、畜産業はヘルパーを活用してICT化を進めることで、担い手不足を乗り越えられるのか疑問。農業大学校の人と話す機会があり、若い担い手を確保するには、ICT化だけでなく、地域の空気感や取組方法といった業界そのものが変わらないといけないと感じる。これらの課題を乗り越えて担い手を確保しようとの意気込みを感じない。また、国民と畜産業の関係は消費者と生産者だけではなく、畜産業を消費以外の面でも応援してもらえるようなアプローチも必要だと考えるため、P23「(10)消費者の理解醸成」に関連して記載しても良いのかもしれない。

 

小針部会長:宮島委員から、消費者は買うだけではないとのご意見があったが、生産者である石田委員に、畜産業の魅力を伝えるための取組や、若い方々を酪農・畜産に呼び込むための取組ついて、何かご意見あればお聞きしたい。

 

石田委員:酪農を経営している立場として、地域の方々にどう理解してもらえるかを大切にしている。生産現場は生乳を出荷してしまえば消費者と交流する機会もなく、売上げはもらえるが、誰のために毎日朝から晩まで家畜の世話をしているのか本質を忘れがちになる。地域の子供たちや人々と交流することで、誰のために生産しているのかという意識が生まれ、活力となったり、まわりまわって収益の改善に繋がることもある。消費者側から見ても、乳製品は身近な食品ではあるが、牛から乳がでる仕組み等の生産現場のことを知る機会は少ないと思うので、子牛が生まれたり、牛の温かさや毛並みの柔らかさなど生産現場のことを知ってもらえると、臭いや家畜の鳴き声などのデメリット面も理解してもらえる。若い方々への畜産業の魅力の発信については、農家だけの力では限界があるので、漫画やドラマ等のメディアに取り上げていただけると、畜産の大変さや素晴らしさが伝わるのではないかと思う。

 

廣岡課長:担い手の確保について厳しい御意見をいただいた。宮島委員からご意見のあった畜産業の魅力の発信については、現在も取り組んでいるため、P16「(1)担い手の確保、技術・経営の指導」にどのように記載できるか考えたい。また、ヘルパーに関する記載については、ヘルパーに従事していた人が酪農に従事する事例が着実な道としてあるため、それを推していきたいと考えており、書き方は工夫したい。

 

(以上)

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

担当者:請川、松山、細川
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

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