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農林水産省

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令和7年度第1回畜産部会議事概要

令和7年度第1回畜産部会議事概要(PDF : 636KB)

1.日時

令和7年11月27日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

農林水産省第3特別会議室(web併催)

3.出席委員

秋元里奈委員、小針美和委員、関千鶴委員、石田陽一委員、上本吉伸委員、小椋茂敏委員、小山京子委員、齋藤利明委員、佐藤雅俊委員、髙安恵子委員、藤間則和委員、野元勝博委員、畠中五恵子委員、羽田香弥子委員、三田謙二委員、森田満樹委員

4.概要

<資料に沿って農水省側から説明。その後各委員から意見を聞き取り。>

 
〇各委員からの主な発言内容は以下のとおり。

小椋委員:酪農について。ここ2~3年、脱脂粉乳の在庫削減対策に伴う乳価引き上げにより、1,600億円ほど収入が増えているが、経費の高止まりにより所得は増えていない。牛肉について。コロナ禍の消費低迷により価格低迷が続いている。次年度も和牛の消費拡大対策が継続されるなど、様々な対策をしていただき感謝している一方、ホルスタインはなかなか価格転換できていない。経費が販売価格を吸収できず、牛マルキンがあっても所得を確保できていない状況。今後様々な場面で現場の意見を聞くと思うので、それらを踏まえ畜産物価格決定に臨んでほしい。

藤間委員:4点申し上げたい。1点目、酪農経営安定対策について。酪農は高齢化とコスト高騰で大変厳しい状況。生産費が高止まりする中でも酪農経営の再生産や将来に向けた投資ができるよう、加工原料乳生産者補給金制度について、十分な単価水準と総交付対象数量を設定いただきたい。特に集送乳調整金は近年の輸送コスト上昇を踏まえ、単価引き上げをお願いしたい。
2点目、生乳需給調整の在り方について。脱脂粉乳の在庫削減対策など酪農・乳業の協調した取組が報われるようクロスコンプライアンスの対象の拡大等を進めてほしい。また、牛乳・乳製品の需要拡大に向けた万全な対策をお願いしたい。
3点目、肉用牛の経営安定対策について。直近では子牛価格は上向く兆しを見せているが、これは子牛頭数の減少によるものであり、飼料代の高騰、離農の加速化など、依然として繁殖経営は厳しい状況。生産基盤の維持に向け、肉用子牛生産者補給金制度の補償基準価格について、生産コストの高止まりを踏まえ、再生産が確保できる水準に設定すると共に、酪肉支援資金等も含め十分な対策をお願いしたい。
4点目、自給飼料対策について。飼料用米、WCS等の作付面積が減少している中、畜産農家が必要とする飼料作物を安定供給していくために、耕畜連携の推進、国産飼料を活用した畜産物生産等、生産者と実需者の連携に対し一層の支援をお願いしたい。
最後に、今年度新たな酪肉近で定められた生産数量目標等の実現に向けては、需要拡大対策と合わせ、食料安全保障の確保や生産基盤の維持・強化に向けた施策を、着実に実行していく必要がある。今後とも行政と関係団体の連携を密に、こうした諸課題に取り組み、畜産・酪農の発展につなげていってほしい。

石田委員:2022年からのロシア・ウクライナ情勢によるエサの高騰について。自分自身も周りの農家も経営が大変厳しかった。脱脂粉乳対策や乳価引き上げや関係機関の支援により、なんとか危機は脱することができたが、依然円安や国際情勢の不安定化が高まっており、予断を許さない状況。自身の経営としては、危機を脱した次のステップとして、両親の高齢化や施設の老朽化に対応するため、スマート農業技術活用促進法に基づく計画認定を活用し、搾乳ロボットの導入を決めた。来年4月の稼働に向け準備を進めているところだが、畜産クラスター事業において酪農分野では施設整備について制限があったため、ロボット導入のために牛舎を新設するハードルが高かった。何とか解決していただけるよう今後支援してほしい。
また、搾乳ロボット1台分の収支を合わせるためには、更なる飼料自給率の増大が必要。自分自身は耕畜連携により飼料用米とWCSを近隣の農家と生産しているが、今年は主食用米の需給ひっ迫により、作付面積を増やせなかった。主食用米とWCS双方の増産は両立できる取組だと思っているので、国産飼料の更なる利用拡大に向け、支援をお願いしたい。

佐藤委員:今年策定された酪肉近と情勢変化を踏まえ、R8年度に必要と考えられる対策について3点述べたい。
1点目、牛乳乳製品の需要拡大と国産チーズの生産維持について。新たな酪肉近においては、現状の生産量を維持していくだけでも、飲用需要を10万トン以上拡大させること、さらに脱脂粉乳の4~5万トンの在庫削減対策の継続又はそれに代わる需要拡大が不可欠であることが明記されており、非常に厳しい評価と受け止めている。現在、生産者への影響を極力回避するため、業界一体となって需要拡大に向け対策を検討し、既に実施に移している。品目全体の需要拡大は商品個々の需要拡大対策と異なり、単年度で実績を上げるのは難しい。乳業者としては、各社の新商品開発、個別商品の需要拡大により、脱脂粉乳とバターの需要不均衡の解消等に努めていきたい。行政にも、引き続き品目全体の需要拡大による生乳生産の安定を図るための予算確保等をお願いしたい。また、チーズ向けの生乳需要量は現状維持の見通しが示されている。乳業としても、ソフトチーズの需要拡大に取り組んでいるが、乳価の引き上げに対応した製品価格の引き上げもあり、厳しい状況となっている。また、チーズ関税の段階的な削減に伴い、関税割当制度がまもなく持続不可能になる。有効な対策を講じなければ将来約20万トン、最大で50万トン近くの生乳が危機にさらされる。国産チーズ生産奨励事業等の有効活用により、生産者への影響が生じないよう、適切な対策をお願いしたい。
2点目、業界の脱脂粉乳在庫対策について、支援継続をお願いする。2022~23年に引き続き、今年度も6月に乳製品向け、8月に飲用向け乳価の引き上げが行われた。乳用牛の飼養頭数は減少傾向だが、粗飼料の品質が良好であることに加え、酪農経営が好転し、配合飼料の給与量が増えたことにより、1頭当たりの乳量は増加傾向。生乳生産は前年を上回って推移している。ただ、乳価引き上げにより、消費は減退している。結果、生乳需給は引き続き緩和しており、脱脂粉乳の在庫は年間で3万2千トン程度増加する見込み。このため、生処共同で今年度から基金を造成し、酪農乳業需給変動対策特別事業を実施している。まだ十分積立ができていないが、さっそく発動しなければならない状況。本事業を継続的に運営していきたいと強く思っているので、脱脂粉乳を飼料として販売する取り組みに対する支援措置を早々に発動していただきたい。また、業界一体で取り組んだにも関わらず、需要拡大ができなかった場合に生産抑制により対処されることが回避されるよう、引き続き予算確保をお願いしたい。
3点目、生乳需給安定クロスコンプライアンスについて。生乳需給の安定のためには、業界が一体となって課題解決に取り組む必要がある。しかし、生乳流通制度改革とその後のコロナ禍により、生乳需給が大幅に緩和し、需給調整が系統生産者にしわ寄せされている。こうした課題を踏まえ、酪農関係補助事業について、全国的な需給安定のための取組として、クロスコンプライアンスが導入されたのは高く評価したい。このことにより、乳製品の過剰在庫処理のコスト負担については、生産者間で公平性を確保する基礎ができたと思っている。しかし、系統外生産者の多くが全国的な生乳需給安定のための取り組みに拠出することになったとはいえ、系統生産者との不公平感は払しょくされていない。乳製品在庫処理にかかるコスト負担について、生産者間の公平性を確実なものにするため、より多くの酪農関係補助事業を対象に加え、加工原料乳生産者補給金制度も対象としてほしい。

須永課長:全体として、ご意見をよく受け止めて今後の政策を検討していきたい。加工原料乳生産者補給金や集送乳調整金について、現場の声を聴き、現場の実感に近づけていく努力をしていく。
佐藤委員から、酪肉近についてご発言があった。需要について、業界を挙げた取組を支えていきたい。個社の商品が売れなければ生乳の価格も支えられないため、個々の乳業と指定団体が意識を共有することが重要。そのうえで発生する脱脂粉乳の在庫については、引き続き業界の判断を支えていきたい。
チーズのご意見について、TPP合意によって生じた課題は、TPP対策によってこれまでも海外との競争力を上げる対策をしてきており、特に輸入品との競合性が弱いソフトチーズの需要を拡大させていく。ハードチーズに比べ乳価も高く、生産者の所得も支えられるため、ソフトチーズの需要と生産を地道に上げていくことが必要。しかし、現状では実質賃金が下がっており、各乳業メーカーにおいても苦しい状況と承知している。他方で、ソフトチーズの需要が以前に戻ることは考えにくいため、市場を支えながらチーズ全体の仕向け量を維持していくことが重要。
クロスコンプライアンスのご意見について。現在生じている脱脂粉乳在庫の主たる要因は牛乳需要の減少にあると理解している。牛乳需要は、酪農家の所得に直結するものであり、すべての酪農家に影響を及ぼすもの。したがって、すべての酪農家が脱脂粉乳対策に参加し、国内の生産量を維持していくことが必要と考え、今年度からクロスコンプライアンスを始めた。段階的に導入しているので、引き続き現場の声を聴きながら強化に向けて検討していきたい。

上田室長:小椋委員から、乳用種牛肉の需要拡大のご発言があった。コストを上回る価格で売るのが理想。現状、乳用種牛肉と競合する輸入牛肉の価格が高くなっているためチャンスと考えている。昨年度の意見交換も踏まえ、ALIC事業で需要拡大対策を措置しており、今年はレシピ集等の作成も支援しているがまだまだやるべきことはあるのではないか。これらの取り組みを通じ、我々も出口対策を支援していきたい。
藤間委員から、肉用子牛生産者補給金についてご発言があった。生産費、物価動向を踏まえ、適切に算定していきたい。

金澤課長:藤間委員と石田委員より、耕畜連携及び自給飼料の生産拡大についてご発言があった。国産飼料の生産拡大はしっかり進めていく必要。飼料用米については、今年の作付面積は半減している。来年度の作付けに向けては、農産部局と連携を取りながら対応していきたい。R9年度以降は水田政策の見直しも予定されている。現在は各種実態調査も行っているため、皆様から幅広い意見を伺いながら議論していきたい。実態調査はインターネット上で11月末まで実施しているため、出席いただいている生産者の皆様も是非回答いただきたい。

廣岡課長:石田委員から、施設整備でハードルがあったとのご発言があった。石田委員は、都市近郊で自給飼料を確保しながら着実に経営されていることに敬意を表したい。クラスター事業は、畜産の生産性向上のために機械導入や施設整備をする事業。令和4~5年度は酪農の需給状況を考慮し、支援を停止していたが、令和6年度から段階的に再開している。搾乳牛舎は今も支援していないが、どう再開していくか今後検討していかなければならない。これまで、クラスター事業で規模拡大は着実に進んだが、同時に輸入飼料の依存が進み、経営が不安定化したケースがある。こうした課題を踏まえ、生乳需給が再び緩和するようなことが無いよう、ご意見を受け止め、考えていきたい。

西浦委員(代読):家畜の育種改良は現場での実用化まで時間を要するため、先を見据えた対応が重要。家畜改良増殖目標に関して、現行目標に加え、長命連産性や健全性、飼料利用性改善、GHG排出削減、暑熱対策など多様なニーズに備える必要がある。
ICT機器やロボット技術は、現場での利用だけでなく、育種改良に不可欠な大量データ収集のツールとしても重要。乳用牛群検定と連携した大量データ収集のツールとして利用でき、改良の加速に大きく貢献できる。現場データの収集を推進していただければと思う。

羽田委員(代読): 「牛肉の新たな指標」の検討に関心がある。A5=最高級というイメージが定着しているため、生産事業者、消費者のためにはそのイメージを払拭する必要がある。
今年度は牛乳・乳製品関連が主要議題で、短時間の説明では理解が追いつかない。制度や仕組みをより深く理解し、議論を円滑に進めたいと考えているため、内容理解へのご助力をお願いしたい。

宮内委員(代読):畜産・飼料産業を巡る課題として、配合飼料原料に係る食料安全保障の観点から、配合飼料原料の多角的な調達確保と調達コスト抑制に農林水産省として取り組むよう要請する。飼料用米は、国産飼料原料として重要であり、数十万トン単位で供給可能な唯一の国産の配合飼料原料穀物である。このため、畜産稲作の生産関係者や消費者団体とともに長年にわたり飼料用米の流通・加工インフラの整備を進めその利用を定着してきたところ。令和9年度の水田政策見直しにあたっては、このような経緯を踏まえ、実需者が求める飼料用米の需要へ継続的に応え、水田活用と国土保全にも結び付く国産飼料用米の持続的な供給対策を確立するようお願いしたい。また、飼料用米は輸入とうもろこしの代替原料であることから、政府保有米を配合飼料向けに販売するにあたっては、輸入とうもろこしと同等またはそれ以下の価格で継続的に供給されるようお願いしたい。
飼料用小麦・大麦に係る証明事務の合理化について。飼料用麦は、食糧用への横流れ防止規制が50年間見直されず、工場で大きな人的業務負担を招いている。飼料用麦については、飼料用とうもろこしと同様の運用となるよう証明事務の簡素化・電子化等により大幅に合理化し、コスト削減を図る措置を早急に講じてほしい。さらに、国産子実用とうもろこしの供給体制構築には、輸入品との混合保管やカビ検査など流通インフラ整備をして欲しい。これらの政策については、日本飼料工業会会長の名で要請済みであり、速やかな実現をお願いする。

小山委員:春から子牛の値段が上昇し、今月は全国的に高値となったが、この状態がいつまで続くのか現場として心配。私の地域では、繁殖農家が70軒から60軒まで減少したが、優良繁殖雌牛更新加速化事業によって、36頭の新しい牛を導入した農家がおり、これは農水省の政策の効果だと思う。
減反により牧草地へ転換してきた中で、今年はWCSから主食用米への転換が進んでいる。また、秋には、米を作りたいから田んぼを耕して返してくれという声があり畜産農家的には負担だった。
後継者の問題については、2000年から女性繁殖農家のお母さんたちの会(モーモー母ちゃんの集い)があり、2年に一回全国集会をしている。今年の鹿児島大会では、若いお母さんたちの姿に勇気づけられた。この会を存続できるか不安だったが、2年後は全国集会を北海道で開催予定と知り、バトンタッチができていると実感し、前向きな気持ちになった。

和田室長:西浦委員から家畜改良関係でご発言があった。改良は非常に時間を要するので、家畜改良増殖目標では10年後の目標を立てている。したがって、先を見据えた改良の方向性を示す必要があり、関係者と連携して新たな技術を活用すること、需要動向や消費者ニーズ、生産を取り巻く情勢など見極めながら、データ収集も含め必要な取組・準備を進めていきたい。
羽田委員から牛肉の食味の新たな指標について期待をしているとのご発言があった。取組を進めながら改良につなげ、さまざまな消費者ニーズへの対応を図り、国産牛肉の需要拡大に繋げていきたい。
小山委員から繁殖雌牛の更新事業について評価いただいた。引き続き、繁殖基盤の強化に向けて対応していきたい。

須永課長:羽田委員からのご意見について、より理解を深めたいという方がいれば、別途の機会を設けて対応する。

金澤課長:宮内委員から、令和9年度以降の水田政策の見直しに向けてご発言があった。現場の実態を踏まえて議論を深めていきたい。政府所有米穀については、省内の担当部局に要望を伝えていきたい。飼料用麦の横流れ防止についても、引き続き検討を進めていきたい。
続いて、国産の子実用とうもろこしについてご発言があった。現状の生産は、国内の気象条件等で課題があるが、技術実証の取組を支援している。また、流通インフラの整備についても、引き続き対応していきたい。
小山委員から、WCSから食用米に戻ったことに加えて、牧草地を耕して水田に戻してほしいと言われているというご発言があった。全国的に飼料用米から食用米へ戻ってきている傾向にあるが、稲WCSや牧草、飼料作物への取り組み状況に関しては地域差がある。米の需給状況は刻一刻と変わっているため、現場の実態を踏まえながら、対応を考えていきたい。

廣岡課長:小山委員から女性の活躍についてご発言があった。全くその通りだと思う。統計的にはわからないが、女性が経営をコントロールして、うまくいっている事例をよく耳にする。モーモー母ちゃんの集いも存じているが、牛だけでなく畜種横断的に中央畜産会が事務局を担当している「全国畜産縦断いきいきネットワーク」もあり、高い熱量で活動していて、圧倒される。女性が経営に参画していくことは重要だと考えている。

秋元委員:牛肉の規格について、A5イコール高級というイメージがあるなかで、消費者のニーズは様々である。最近だと脂が乗った肉よりも赤身肉の方が人気の傾向にある。赤身肉のおいしさが消費者にも伝わって高く売れる企業も出てきている。ぜひ規格以外の付加価値について検討していただきたい。
国産飼料の生産利用拡大について、より多くの生産者が国産飼料を積極的に活用していくためには、消費者から選ばれやすいような付加価値をつけていくことが重要だと考えている。野菜で言えば有機作物のような、わかりやすく端的に消費者に伝わる見せ方について検討していただきたい。

関委員:自給飼料生産の重要性の議論が高まってきた一方で、今までよりも難しい局面を迎えている。内地での自給飼料生産は耕地面積が狭く、中山間地では傾斜のある圃場も多いため、オペレーターの技術も要する。また、親子間の技術継承の難しさも感じている。こうした状況において、地域で助け合い今ある農地を維持・活用し、情報の共有を行っていくことが重要と考えている。そのためには、飼料生産における担い手、人材の育成、地域に適した栽培技術の習得や、こんな状況下でも酪農家が重い腰を上げられるような支援の在り方、支援内容の的確な情報の発信など農協や行政、民間企業とも連携しながら後押ししていただければと思う。安心・安全で良質な国産飼料で作られた牛乳を、酪農乳業関係者が自信をもって消費者にお届けする循環型酪農を通して、地域の資源・自然に貢献しているなど、魅力のある誇り高き産業になることが今後の酪農発展カギとなるのではないか。

上本委員:肉用牛において特に黒毛和種は、近年の枝肉重量やBMSについて、市場の多くがA5と格付けされている。今後、原種の能力を十分に発揮できるような飼料管理を進めていくことが特に重要。例えば短期肥育など、今の枝肉重量やBMSの質を維持しつつ、生産費を抑える取組が重要。
また、乳用牛においては長命連産性を高めていくことが非常に重要。その一方で平均除籍産次は低下しており、その理由の多くが疾病による死亡や淘汰、繁殖障害となっている。このことから、疾病に対する育種の重要性について考えている。
肉用牛、乳用牛ともに共通していることとして、現在ある問題に対して研究者の立場から解決していくためには、関連データの収集が必要不可欠。肉用牛の場合は短期肥育を行った際の枝肉成績、乳用牛の場合は日々の疾病記録である。このようなデータに限らず、畜産物生産に関する問題に対応していくために、様々なデータ収集体制の構築を考えていただきたい。

野元委員:日頃の消費拡大の助成金や、肉用子牛生産者補給金制度に関する取組に感謝。離島に関して、生産コストが高いことが課題。また、国境に面した島は安全保障の確保が重要であるため、住みやすい環境づくりを農水省だけでなく国一体となって考えていただきたい。
飼料生産に関して、青刈りとうもろこしを肥育牛に給与している。作付けや収穫作業にあたって、補正事業を活用し機械を導入することにより、順調に進んでいるところ。今後何か問題があれば、農研機構や畜産試験場と相談して対応していきたいと考える。また、未利用資源の利用拡大について。キノコ廃菌床を発酵飼料として繁殖牛に与えており、嗜好性が高く効果的。また、成分を解析するとリンとカルシウムが高く、畑に散布すればカルシウム剤の追加添加も不要となる。
早期肥育・出荷について。うちの牧場では、25~6か月で出荷を行っている。雌は枝肉重量が取れないが、発酵飼料を与えて配合飼料を減らしても一定程度の脂肪交雑が確保できると考える。
繁殖雌牛の飼養頭数の減少について、飼料が高く頭数が増える環境にないと考えており、自給飼料や未利用資源の拡大を進めていただきたい。
水田活用の見直しについて、特に、昨今の猛暑により、作っても水がない状況もあるため、青刈りとうもろこしなど粗飼料生産・利用の拡大をするべきではないかと考えている。

伊藤課長:秋元委員から牛肉の規格についてご発言があった。消費者ニーズが多様な中、これに応えていくことが生産・流通を行っていくうえで重要。牛肉については、種類や部位によりバラエティーに富んでいる中、消費者・流通事業者、生産者が一体となってニーズに対応できるように国としても後押しをしていきたい。
野元委員から子牛対策、離島の現状についてご発言があった。肉用牛については離島や中山間地域において大切な産業基盤になっているため、我々としても必要な対策について今後も検討を続けていく。

金澤課長:秋元委員から国産飼料の生産利用の拡大のための理解醸成についてご発言があった。資源循環を含めた理解醸成は重要であるところ、我々としても引き続きご相談に乗っていただきたい。
関委員から飼料生産関係についてご発言があった。人手不足の中、今後空く農地を含めどのように飼料づくりを定着させていくかは非常に重要な課題であると考えている。地域計画の中でも、地域でどのように農地を利用していくかといった議論を全国各地で進められるように我々としても対応していきたい。
野元委員から飼料用とうもろこしの利用についてご発言があった。飼料用とうもろこしは生産性が高いということで肥育にも使用していただいているとのこと、新たなチャレンジとして応援したい。
続いて、未利用資源である廃菌床の再利用についてご発言があった。当課の事業では未利用資源の積極的な利用の実証を支援しており、引き続き後押ししてまいりたい。また、水田の利活用についてご発言があった。今後、各地域で労働力不足が予想されることに加え、水田については主食用米の需給状況もあると思われる。各地域で条件が異なる中、どういった形で飼料生産による農地利用をしていくか検討していきたい。

冨澤課長:上本委員から肉用牛、乳用牛の改良の面からのデータ収集・構築についてのご発言があった。我々としても、牛に関しては家畜個体識別番号をキーとして畜産クラウドを利用したデータベースの改良を勧めており、これに基づきデータの収集・構築の取り組みを進めていきたい。
野元委員から25~26か月で早期出荷が実現できているとのご発言があった。我々としても、全国的な取組となるようモデル事業を進めており、飼料コストが抑えられる効果もあると思われるので、データの収集も含め、これらの取組を押し進めていきたい。

畠中委員:飼料自給率について。私どもはグリーンコープ生協と飼料用米を契約買取している。この飼料用米に関して、2023年度が9,700t、24年度が7,900tの契約を行っていたが、今年度は3,500tに留まっており、不足分は輸入トウモロコシで補塡しているという状況。このように自身の農場だけでも、自給率が下がっている現状を共有したい。
配合飼料価格安定制度の見直しについて。鶏卵農家の場合、飼料価格には配合飼料価格安定制度、卵価には鶏卵生産者経営安定対策が両輪として支援策があるが、他の畜種のように生産費に対する保証がなく、昨今の飼料価格の高止まりに対する支援がないところ。昨年の鳥インフルエンザの影響により鶏卵価格が上がっているためなんとかなっているが、支援策がないことについては不安。こうした中、配合飼料価格安定制度の見直しの現状についてお聞きしたい。
鳥インフルエンザ対策について。鳥インフルエンザに係る生産者支援対策としては、殺処分に対する国からの手当と、国と生産者が積み立てる家畜防疫互助基金支援事業がある。家畜防疫互助事業に関して、これまで三年積み立てで実施されていたが、昨年から単年度積立になった。鳥インフルエンザが大量発生した年は、積立額が足りない事態が発生していると聞いている。これはセーフティネットとしての機能が果たせず、本事業への加入率が低下してしまうことを懸念しているが、現在の加入率をお聞きしたい。また、加入していない農家が何故加入していないのか、その理由を把握し共有することも今後の課題だと考える。
国内での鳥インフルエンザワクチン使用に関して現状をお聞きしたい。

三田委員:国産飼料の安定調達について。コープデリでは、豚の飼料に、飼料用米を使用した「お米育ち豚」をブランドとして販売している。昨年度には飼料用米の配合割合20%に向けた調整を進めていたが、今年度は5%までに落ちている。元来休耕田を減らすためにやっていた飼料用米の利用が、飼料用米を作ることが目的になっていたように感じる。国内自給力をあげる目的のために飼料用米や子実コーンを利用できるよう、目的に沿った取組を展開して欲しい。
新規就農者支援について。新規就農者が生活を持続するための環境整備が実施されていないことが問題だと感じる。農産でも僻地で学校がない等生活ができない環境もあるため、新規就農を支える地域づくりについても目を向けてほしい。
消費拡大に向けた取組について。小売りや生産者への協力を仰ぎながら、取組の枠組みや情報共有をいただきたい。
アニマルウェルフェアについて。日本でのAWを普及していくための経済的な支援、補助について検討していくべきではないかと考える。

森田委員:食料品価格の高騰ついて。例えば牛乳乳製品では令和4年度以降の乳価改定がいつまで続くのか、消費者の立場からだと不安に感じる。多くの要因が影響しているとは理解しているが、価格高騰が続くと需給バランスにも影響するのではないか。
畜産物の安定供給について。様々な対策や関係者の努力により畜産物が安定的に供給されていることを知り、感心した。他方、消費者に伝わっていないのが現状。これは、大規模化の影響や防疫の観点から、生産現場と消費者の距離が離れていることが要因だと感じる。
AWや環境負荷低減について。こうした世界的な潮流に乗るためにはコストがかかってくるため、様々な対策の積み重ねが必要だと感じる。
食品ロス削減について。牛乳の消費期限を延長して、シェルフライフを長くするといった取組について消費者庁が指針を出しており、業界でも取り組んでいる。このような細かい取組に関して消費者にアピールしていくべきである。
消費者ニーズについて。例えば自分自身も赤身牛肉が好きだが、国産で赤身肉の選択肢は少ないと感じる。今回は、脂肪交雑についてお話があったが、脂肪交雑の多い肉に消費者のニーズがあるのかという疑問はある。消費者の嗜好を分析した上で、新たなマーケットを作り出すことが重要だと感じる。

冨澤課長:三田委員と森田委員からAWについてご発言があった。WOAHが定めた国際的なAW基準に基づき、令和5年7月に国内の飼養管理指針として策定し、現在推進を行っている。直近では普及状況のアンケート調査を行っており、調査結果を踏まえ、生産者にAWの取組を普及するとともに、消費者への理解醸成もあわせて推進していきたい。また、これらのAWの取組に対する支援も措置しているのであわせて御活用いただきたいと思う。

金澤課長:畠中委員、三田委員からの国産飼料に関してご発言があった。現場からの貴重な情報として受け止めて、引き続き検討していきたい。
また、畠中委員から配合飼料価格安定制度の現状についてご質問があった。ロシア・ウクライナ情勢以降、通常補塡及び異常補塡について、借入をしながら多額の補塡をしており、制度の持続性について懸念があったところ。これに関して、昨年基金団体等と検討会で議論を行い、発動に堪えられない現状を踏まえ、今まで以上に積み立てを行えるよう本年4月から運用見直しを行っている。現状は、借り入れをしているため、返還しつつ本制度を適切に運用していく。基本的に本制度は激変緩和対策であるため、飼料価格が高止まりの場面では発動しないが、上昇局面になれば、発動する構造なので、制度の趣旨に関してはご理解いただきたい。制度の在り方に関して、引き続き状況を把握しつつ、議論していきたい。

武久室長:畠中委員から家畜防疫互助基金支援事業についてご発言があった。令和7年度の加入率は、採卵鶏の羽数ベースで85%となっている。本事業は、令和6年度から単年度事業に変更し、払いきりの形で運用している。本事業については、その在り方について、中小規模生産者の加入率の低さも含めて、業界団体と意見交換を行い、事業設計について検討していく。
鳥インフルエンザワクチンの検討状況についてもご発言があった。本年8月に第1回技術検討会を開催。本検討会では、ワクチン効果やサーベイランスなどについて議論に上がったところ。引き続き意見を踏まえながら、検討していきたい。

廣岡課長:三田委員からの新規就農についてご発言があった。新規就農を支える地域を作るべきとの意見が出たが、まさにその通りである。畜産については、新規就農に当たって初期投資が大きい中で、施設や機械導入への支援だけでなく、地域による新規就農者の経営、技術、生活面のサポートも重要であると考える。

髙安委員:本年初めて千葉県でCSFが発生、また、台湾ではASFが発生したこともあり、農場は緊張状態にある。農場では立ち入る人を必要最低限に制限しており、学校などから見学の依頼もあるが、断っている状況。食育の機会の提供をできないか今後考えていきたいと思っている。
水際対策について。空港や港の肉製品の持ち込みの検査を見学した際、初回であれば書類に記載すれば許されるように見られた。初回においても罰金等、対応の強化をお願いしたい。
豚肉枝肉卸売価格について。夏に酷暑による出荷頭数の減少の影響で850円という高値がであったが、10月には400円台まで低下した。現場では400円台では再生産可能ではないと話をしていたところ。再生産可能な価格となるよう願っている。

齋藤委員:鳥インフルエンザのワクチンを少しでも早く許可して欲しい。
今年は酷暑の影響により、鶏卵は全国どこでも足らない状況であり、生産者の立場からすると、この価格であれば再生産可能な価格だと考えている。しかし、将来を考えると、新しい鶏舎の建て替えのための生産資材がかなり高騰している。例えば、10万羽規模の鶏舎で20億かかるという見積もあると聞くので、畜産クラスター事業の拡充をお願いしたい。
養鶏農家の現状として、農家戸数は1,500戸を切っている状況であり、中小規模農家を支えていただきたい。

小針委員:本日、皆様の意見からは、現場の様々な苦しい情勢を伺った。防疫の関係など、事業者だけではできることが限られることもあるが、現場の前向きな取組もあったところ、こうした取組をどう支援していくかは重要である。
飼料に関して、酪肉近には、国産飼料を使った畜産物を販売するうえで、その意義や価値を伝えるということを盛り込んでいる。本日の委員の話は、そこにつながる点もあったため、今後、国産飼料基盤に立脚した酪農・畜産経営の確立に向けてどうつなげていくのかが重要だと思う。
最後に、委員からも畜産の制度について理解を深めたいという意見があった中で、畜産関係の非常に多い情報を委員に分かりやすく伝えることを事務局に考えていただきたい。

武久室長:髙安委員から食育や検疫についてご発言があった。食育に関しては、農場に入らなくても、出張事業といった形で対応するという工夫もされているという話も聞くので、そういった方法も組み合わせながら、消費者への養豚に対する理解を進めていただきたい。
水際対策については、令和2年に違反畜産物を持ってきていた場合、廃棄命令ができるようにするなど、罰則を強化している。他にも、水際対策の在り方については検討を進めているところだが、例えば、AI技術を活用したX線画像解析装置を使用して違反畜産物を検査するような技術の導入も検討しているところ。こうした取組を推進し、水際対策の強化を図りたい。
齋藤委員から鳥インフルエンザワクチンについてご発言があった。これについては、家禽生産者からの要望を様々伺っているところであるが、整理が必要な部分もあるので議論をしっかり進めていきたい。

三上課長:委員から畜産をめぐる情勢について、より詳しく知りたいという声があった。部会として実施するには手続き等負担もある中、希望される委員には、オンラインで担当課長より説明する機会を設けるなど対応を検討していきたい。
 

(以上)

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

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