このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

食料・農業・農村政策審議会(平成27年10月22日)議事概要

    1. 日 時:平成27年10月22日(木曜日)10時00分~11時50分

    2. 場 所:農林水産省 7階講堂

    3. 出席者:

        (委員)生源寺会長、安齋委員、伊藤(雅)委員、臼井委員、奥野委員、近藤委員、里井委員、武内委員、中嶋委員、藤井委員、松本委員、横田委員

   (農水省)森山大臣、事務次官、官房長、総括審議官、総括審議官(国際)、技術総括審議官兼技術会議事務局長、報道官、政策課長、消費・安全局長、食料産業局長、生産局長、経営局長、農村振興局審議官、政策統括官、外

 

1. 開会

 

2. 我が国の食料・農業・農村をめぐる現状等について

        【意見交換概要】 

(安齋委員)

  • TPP対策として、農産物の輸出を考えていると思うが、福島県の場合は、輸入禁止としている国が多い。働きかけをお願いしたい。
  • TPPによって、安心・安全なものが安く買えるということは消費者の立場からすると良いこと。
  • 一方、農業の後継者は、山間地だけでなく平地においても減少しており、農家で働く労働者も不足し、地域では大きな問題。
  • 福島では全品検査を行っているが、こうした検査を行っていることすら知らない若者も多い。引き続き、福島県産品の安全性の周知に取り組んでいただきたい。

 

(伊藤(雅)委員)

  • TPPは、日本の農林水産業の大きな構造変化のきっかけになると思う。農業が国内において次の時代にふさわしい形をつくっていく一方で、海外で農産物の販売を拡大するといった、農業の産業化を想定した新しい構造を作っていくことが重要。
  • TPPが10~20年かけて完全施行されていく中で、次の20年で農業を競争力があり魅力的な仕事にどう変えていくか。農業を、重労働、高齢者に依存している実態から、機械化などで組織化された若い人が集まる魅力的な場所に変わっていくようなサポートが必要。そういう未来の農業・農村のグランドデザインが、国民がわかりやすく想像できる形になれば、みんなが応援するのではないか 。
  • 地球規模でグローバル化が進み、世界中で自由貿易が促進している中で、日本だけ例外というのはありえない。世界中で進んでいるグローバル化は、まさに国の発展の原動力。必要なところはきちんと守りながら成長する必要。そのためには、自分の売るものの特徴をしっかり持つことが大事。
  • 食品産業と農業は一体。農産物の3割は家庭用、7割は加工外食向けに使われている。家庭用に購入される生鮮品は、生食されるものもあるが、そのほとんどは、加工食品や調味料を用いて調理されて食べている。1つの加工食品で使われる生鮮野菜や精肉の消費は年間で相当な量になる。まさに、農業の繁栄は、食品産業の繁栄のベースとなるもの。

 

(臼井委員)

  • TPP対策として、競争力の強化が全面に出ているが、グローバルな考えのある若い世代と比べ、生産の中枢を担う親世代が農業の引退を考えるきっかけとなることが懸念される。
  • 日本全体で高齢化が進む中、定年のない農業は、65歳でも現役で働ける魅力のある業態。働きたい限り続けていける環境を整えることは、国内生産を維持する上でも重要。その上で、グローバルに活躍する若者を支えていくことも重要。 
  • TPPについては、関税だけでなく、他の要因による影響もあるはず。TPPにより、どのようなプラスの効果が考えられるのか調べて、このような場で示していただきたい。特に、世界に打って出ようとする若者はこうした分析を必要としている。

 

(奥野委員)

  • 台風15,18号など、昨今、異常気象が続いており、農家は大きな被害を受けている。そのような中、今回問題となったのは、収穫前の米と倉庫で保管している米は、水稲共済の適用対象となるが、農家が自宅に保管していた米には救済の道がないということ。異常気象が続く中で、今後どのような救済策を打っていくか知恵をだす必要がある。
  • 新たな食料・農業・農村基本計画については、JAグループとしては、全力をあげて実現に取り組んでいきたい。先日のJA全国大会では、農業者の所得増大、農業生産の拡大ということを一義的にあげて確認したところ。
  • TPPについて、全体のグランドデザインがなければ国民が納得しないとの伊藤委員の意見については共感する。臼井委員の離農のきっかけになるのではないかとの話については、まさしくその通りだと思っている。若い農業者の中には、今回の大筋合意をうけてがんばっていくために、何が必要か真剣に考えている方もいるが、地方からはたくさんの抗議の声が届いており、不安や怒りを早く解消する必要。今後20年、30年先の農業考えていくような、息の長い施策について我々も提言していきたい。
  • どんなものにもメリット・デメリットがあると思うが、今はデメリットが全面に出ている印象。そのあたりの説明も含め、我々も提言をしてきたい。

 

(近藤委員)

  • TPPで現場にどういう影響が及ぶのか、現場によく伝わっていない。影響の試算については、いろいろな見方があると思うが、消費者の立場でいうと、食の安全があるのか、ないのか、関税撤廃による消費者メリットがどうなるのかなど。生産対策だけでなく、新規就農を給付金で育てている状況において、TPPが不安材料となり後継者が育たなくなるのではないかなど、議論する必要がある。
  • 農業を継がせるかどうかは、多くは親が判断するものであり、これまでの農業では安心して継がすことはできないと考える方が加速するのではないか。
  • TPPはこれまでの経済連携に比べ、圧倒的に品目数が多いため、影響試算については、農家が対策を立てられるよう、品目別、地域別に、中山間地域あるいは地域全体への影響も含め、できるだけ早めに示していただきたい。

 

(里井委員)

  • 消費者目線を大事にして委員をつとめたい。消費者の価値観は、昨今非常に多岐に亙っているが、消費者理解が重要。また、生産者も消費者も継続的に繁栄していくことが大事。
  • 消費者の立場として考えていることとして、TPPに係る農林水産分野における基本方針の中で体質強化や高付加価値化という説明があったが、まさにその通りだと思う。いかに日本の農家が作るものが品質的に強いか、それをどうブランド化していくか、私も委員として明確化していければと考えている。
  • 食の自給率が高いということは、国の安全保障につながるもの。国の強さを計るものは、命を支える食。その食の自給率が高い国が実は一番安全なのではないか。
  • ジャーナリストとして「難しいことは優しく、優しいことは楽しく、楽しいことは深く」ということを心掛けている。政府のHPや発言で使われる言葉は難しく感じる消費者も居るかと思う。委員として、国民に優しく、わかりやすく伝えていければと思う。

 

(櫻庭食料産業局長)

  • (安齋委員の発言について)福島県産品の輸入禁止国は、中国、台湾、香港等と、主に近隣国であるが、定期的にモニタリング結果を相手国当局に送付しているところ。また、SPS委員会や大臣が外遊した際にも、安全性を訴えているところ。福島県産品を扱う国も増えてきているので、引き続き安全性のPRを続けていきたい。

 

(小風消費・安全局長)

  • (近藤委員の発言について)TPP協定における食の安全の部分については、科学的根拠に基づくWTO・SPS協定を踏まえたものとなっている(資料5月3日、P.17)。厚生労働省が行っている検疫、農林水産省が行っている動植物検疫については、引き続きしっかり取り組んでまいりたい。また、輸出戦略にあわせた検疫協議も引き続き進めてまいりたい。

 

(大澤総括審議官(国際)) 

  • (臼井委員、奥野委員の発言について)輸出においては、関税だけでなく、税関におけるルールがはっきりしておらず、せっかく輸出しても販売できないなどの課題があり、透明性のあるルールを決めることが重要であった。今回、そういったルールの分野にTPPによるメリットの部分があふれていると考えている。知的財産や日本ブランドの維持、労働環境基準についてもメリットがある。今後とも、事業者が協定全体を使いやすくなるよう、情報発信に努めてまいりたい。ルールの詳細については、近々公表できる状態になるので、説明を工夫したい。

 

(佐藤総括審議官)

  • (伊藤委員、奥野委員の発言について)今回のTPPに関連する対策については、政府一体となって万全の措置を講ずるということ。その際には、納税者であり、消費者である国民の理解と納得が得られるような対策を構築していくということは大事と認識。
  • (奥野委員の発言について)現場における抗議、不安の声の解消に関して、10月9日から地域ブロック別分野別に説明会を行っているところ。その際に、今回の合意内容を詳細に説明するとともに、どのような対策が必要か要望も伺っているので、こういった声を踏まえ、政策大綱をなるべく早くつくりあげていきたい。
  • (臼井委員、近藤委員の発言について)影響試算については、TPPの経済効果を総合的に分析して国民にわかりやすく説明していくということが大事と認識。経済効果分析は内閣官房が中心となって行うこととなっており、農林水産分野について農林水産省も積極的に協力を行っていくこととしている。経済効果分析については、関税削減効果だけでなく、投資やサービスの自由化がもたらす効果、グローバルバリューチェーンの創出がもたらす生産性向上効果を含めた総合的な評価をするということで着手しつつあるところ。その際、データの整理等で一定の時間を要するが、なるべく早く、TPP協定を国会で審議するまでにはお示ししたい。

 

(武内委員)

  • 昨今の酪肉近の見直しにおいては、農畜連携や畜産クラスターの構築、農業者の体質強化などを盛り込んだが、この時点ではTPPとの関係は十分考慮していなかった。畜産小委において酪肉近とTPPとの関係を検討し、いずれ本審議会においても検討結果を提案したい。
  • 地球環境小委員会は、地球温暖化対策について、農林水産分野への影響を議論するが、今までは事が起こってから分析することが多かったが、これからは何か起こる前に影響等を予測し、計算し、分析することが重要であると考えている。
  • また、小委員会で気候変動に関して農林水産分野における適応計画を議論したが、残念ながら生態系サービスが異常気象に対し、どう緩和しているかについて深く議論できなかった。山林や農地そのものを災害抑止の場として評価することはこれから議論したい。
  • 世界農業遺産の関係で、ミラノで5地域ウィークが行われ、イタリアで高く評価された。これからも、我が国の豊かな環境と食文化をセットで発信していくことが重要。
  • 都市農業の話だが、今までは都市農業は農林水産分野の対象外となっていたが、例えば空地を都市農業の場として利用し、高齢者の生きがいにするなどの取組が重要だと考えている。従来こうした農地を守ろうとしていたが、現在は都市の一部として位置付けることが必要だと思う。

 

(中嶋委員)

  • TPPが日本の農業に与える影響は、制度が変更されるずっと前から現れるのではないか。これは、関係者が影響を予測して事前に行動をとるためであるが、UR合意のときよりも農業者の方々の反応は早いのではないか。当時よりも経営者の経営能力も非常に高まっている。間近のことと将来のことをバランス良く見据えながら自分の経営を判断しているという方、また、大規模な農業者の方も非常に多くなっている。それでこのような行動を起こすと、生産の状況のフレが大きくなると考えられるので、早く対策を実行するとともに、正しい情報を早く提供していく必要。
  • こういった対策は、国民の支持があって有効な手段となる。国民には納税者としての財政支援や、消費者として買い支えることへの理解をしていただかなければならない。そういった二面性は政策立案の際に、考慮する必要。国民に支持していただくためには、対策が有効で、農業及び食品関連産業が国民の期待に応じてくれると予想されることがポイント。
  • 国民の期待というのは、食料の安定供給と多面的機能の確保。特に食料の安定供給の実現を信頼してもらえるかどうか。支援を実行し、効果が発現し、この信頼が醸成する、そして下支えしていただける。こういった支援、信頼は互いに関連している。信頼があるから支援しようと思い、支援がされたから確実に安定供給され、信頼が生まれる。こういったある種の相互関係、循環構造を断ち切らないようにする必要。
  • 食料自給率については、今回の基本計画では、現在の豊かな食生活を前提として、45%に向上する目標を定めている。TPPが入ることによって、それが揺らぐことが心配されているが、まず現在の40%をきちんと維持した上で、目標の45%に向けた行動をすすめていくことが必要。今後、人口減少により確実に消費は減っていくので、国内の生産水準を維持すれば、わずかでも自給率は上がっていく。基本計画で定めた生産努力目標を目指し、生産の向上をすすめ、自給率目標を達成できればという考え。
  • 目標の策定では、グローバル化を念頭においていたが、TPPを前提にしたものではないので、45%を達成するのは、今の行政資源の再編成ではなく、想定以上の行政資源の投入が必要。
  • 食料自給率には、カロリーベースと金額ベースがあるが、それぞれの目標値の持つ意味を理解して、TPPの影響を両指標の観点から評価していただきたい。その目標を達成するための対策を今後慎重かつ迅速に検討していただきたい。

 

(藤井委員)

  • TPP合意を受けて今後、対策が策定されることと思う。一方でTPP合意を踏まえたものではない基本計画を推進していくとなると、農家にとってTPP対策と基本計画の2つの指針となり、分かりにくいのではないか。分かりやすい情報発信をお願いしたい。
  • 基幹的農業従事者の半数以上は女性であり、女性農業者がどれだけ力を発揮することができるかが鍵である。基本計画においても女性農業者が能力を最大限発揮できる環境の整備が定められていることから、この点に着目していきたい。

 

(松本委員)

  • TPPは大変幅広い分野に亘るかつてない関税削減であり、政府として十分対応を行う必要がある。基本計画に掲げられた目標の実現については対策を打ったとしても果して大丈夫なのかという意見もあると思うが、きちんと検証する必要があると思っている。
  • TPPの大筋合意については、様々な制約もあった中での合意内容だろうが、現場ではしっくりこないという思いが鬱積している。この思いを早く政策的に払拭していく努力が必要であり、将来の担い手となる若い人のやる気をそいではならない。
  • TPPの影響試算を行い、対策を打つ際に、長期的な観点で政策を打ちだすことは行政として大変重要である。一方で、最終的に関税が撤廃された時点における長期的な影響だけではなく、一定の中間点における影響を見える化し、そこに向かって政策をやっていくという戦略はどうか。
  • これから攻めていくにあたっては、関税だけでなく、非関税障壁の分野も重要。農業者や事業者の努力だけでは課題解消できない分野なので、一度、課題となっている非関税障壁を整理してみてはどうか。
  • 対策については、バラマキではなく将来役立つ政策が必要と言われており、それはもっとも。一方、UR対策では6兆100億という予算が積まれたが、この対策が結果的にどうだったのか、今一度思い起こした上で、対策を立てるべき。

 

(横田委員)

  • 現場で中山間地の農業を多く見てきた。よく強い農業や攻めの農業という言葉があるが、結局これをやるのは人であり、担い手がいなければ攻めに打って出られない。
  • 今回のTPPについては、現場の人の中には、自分達には関係ないと思っている人も多く、実感がわいていないと思われる。TPPにより外国から入ってくる野菜や果物について、消費者は目を肥やす必要がある。
  • 女性の農業者が多くなっている現在、支援を行っていく必要。
  • 地域の小規模な農業からでも自給率を上げていくことができる。
  • 国は強い、大規模の農業を中心にすえた政策を打ち出すが、これに現場は振り回されてしまうことも多い。ぜひ中山間地の農業も踏まえた議論をお願いしたい。

 

(櫻庭食料産業局長)

  • (松本委員の発言について)攻めの分野の整理については、輸出戦略に関し、国別品目別に検疫や通関の問題を整理したレポートを今年初めて出したところであり、皆様にお配りしたい。

 

(岩本農村振興局審議官)

  • (武内委員の発言について)都市農業振興基本計画については、現在国交省と内容を調整中であり、また審議会において御指導をいただきたい。

 

(佐藤総括審議官)

  • (中嶋委員の発言について)TPPによる国内農業への影響・対策と、基本計画の関係については、よく検討してまいりたい。
  • (松本委員の発言について)中間点におけるTPP影響試算については、影響試算に用いるGTAPモデルが関税だけでなく、投資サービスやグローバル化等の影響も織り込み、経済構造調整を終えた均衡点における影響を見るものであること、また関税削減の期間・ステップが品目により異なることを考慮すると、技術的に可能かどうかという問題がある。
  • UR対策の一部の事業に批判があったことも十分認識した上で、国民の理解を得られるような大綱の取りまとめにむけて、検討してまいりたい。

 

(生源寺会長)

  • TPPと基本計画に関連する目標、酪肉近等の数値を設定している個々のビジョンの関係については、本審議会としても重い問題であると認識している。
  • TPP影響試算については、GTAPモデルのような総合的な枠組みとしてのマクロの評価も重要だと思うが、一方で品目別の影響についても十分に考える必要がある。

 

    3. 食料・農業・農村政策審議会における部会の設置についての一部改正について

        食料・農業・農村政策審議会における部会の設置についての一部改正について、原案どおり了承された。

 

    4. 閉会

 

お問合せ先

大臣官房政策課

代表:03-3502-8111(内線3086)
ダイヤルイン:03-3502-5515

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader