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令和5年度第1回畜産部会議事概要

令和5年度第1回畜産部会議事概要 PDF版(PDF : 582KB)

1.日時

令和5年11月22日(水曜日)9:30~12:17

2.場所

農林水産省 第2特別会議室(web併催)

3.出席委員

椛木円佳委員、小針美和委員、二村睦子委員、宮島香澄委員、石田陽一委員、井上登委員、大山憲二委員、小椋茂敏委員、
小山京子委員、川田光哉委員、里井真由美委員、庄司英洋委員、畠中五恵子委員、羽田香弥子委員、馬場利彦委員、
彦坂誠委員、前田佳良子委員
(椛木委員、二村委員、宮島委員、井上委員、川田委員、里井委員はリモート出席)

4.概要

各委員からの主な発言内容は以下のとおり。



 ◯宮島委員
日本の畜産業界は大規模化、効率化により現在の状況になっていると考える。特に円安や飼料価格の高騰、物価高により畜産農家は大きな困難に直面しており、これらの課題への対策を講じなければならない。最も重要なことは、現時点での要求に応えることは勿論だが、日本が将来目指すべき畜産業の姿に向かう改革を行うことである。将来世代から見て悪影響があると判断される政策であれば一旦見直すか、実施後段階的な改善を行う必要がある。
農業関連の会議に参加して思うのは、他の製造業と比較して、議論が関係者内で閉じている側面がある。税金を使う以上、他業界、ひいては国民の皆様から理解が得られる支援を構築するための議論が必要。そのために、国民全体の需要に敏感である必要がある。

 ◯石田委員
酪農の経営状況は去年から厳しい中で、国・県・市には様々な支援をしてもらっている。地元の神奈川県からの支援は対応が早かった。しかしそれらの支援を受けてもなお、首の皮一枚で繋いでいる状況。
都市近郊型の酪農家は狭い土地でどれだけ飼料を自給するかが課題。配合飼料の価格は現状落ち着いてきているが、粗飼料、特にビートパルプの価格は高く、これらの飼料が自給できない農家を中心に離農が起きている。自身も経営状況の改善のため、2年前までは50頭飼養していたところを、今年の夏に13頭淘汰し規模を03月04日にした。当然収入は減るが、それ以上に淘汰による生産コストの抑制の効果が大きく、キャッシュフローは改善した。それだけ飼料価格の高騰は深刻であり、淘汰による経営改善は私のような小規模の酪農家では可能だが、雇用者がいる農家やクラスター事業による規模拡大を目指している生産者が同じ手法を取ることは難しい。
自給飼料の増産についても、自分自身ほぼ借地での生産を行っているので、今後作付面積を増やせるのか先が見えない。

 ◯井上委員
肉用子牛生産者補給金制度における、生後2カ月以内までに個体登録をするという規定を緩和してほしい。北海道では和子牛も初生の段階で市場取引が行われることが増えたが、和子牛は売り手と買い手双方の利益が大きい2カ月齢前後で取引される。その結果、売買のタイミングにより2カ月齢を超え、制度に加入できない子牛が出てくる。初生段階で取引された子牛については、制度への加入条件を売買成立から2カ月以内にするべき。
また乳用牛への和牛受精卵移植事業が、この1年急速に縮小していることを危惧している。先日の国会では増頭事業を停止し子牛の需給バランスを取る旨の発言があったが、この方針は現在の和牛枝肉を取りまく状況の繰り返しになりかねない。現在の1頭の平均販売価格は110115万円という決して安くない数字のはずだが、マルキンは発動しており、7・8・9月は肉用子牛生産者補給金も発動した。そのうえで、和牛の精肉は1,000/100gという消費者にとって手の届きにくい価格になっている。これは現在出荷される和牛の素畜価格が7080万円と高額であったことに起因している。和牛の子牛生産頭数は減らさないことが最重要であり、むしろある程度増産することで1頭5560万円の適正価格帯を維持するべきである。このため、和牛受精卵移植事業は今後も継続してほしい。

◯廣岡課長
石田委員より、自給飼料に関するご発言があった。土地に制約がある中で自給飼料生産を行っていること、自身の経営を状況に応じて見直されていることは大変意義のあること。輸入粗飼料に対する支援は難しいが、国産粗飼料の生産拡大に対する支援により皆さんの営農を支えていきたいと考えている。令和5年度の補正予算では、国産粗飼料の品質表示を行った上で流通・販売した際の支援事業を盛り込んでいる。 

◯郷課長
井上委員より子牛改良と酪農経営のために受精卵移植の支援を継続してほしい旨のご意見があった。子牛価格の急落は、買い手側である肥育農家に、飼料価格の高騰、過去に高値で導入した素畜の出荷時期であること等、様々な要因が関わって起きている。生産構造上、大きく子牛の生産頭数を減らす必要があるとは考えていないが、一方で高齢母牛から生産される子牛の価格が安すぎると考えている。高齢母牛の更新により血統の古い子牛の改良を促進することで、生産基盤を大きく損なうことなく子牛価格が上がるよう支援していく考え。現在審議中であるが、令和5年度補正予算にて本事業を実施予定。

◯猪口課長
井上委員より肉用子牛生産者補給金制度の加入時期についてのご要望があった。本制度は繁殖雌牛から黒毛和種を生産する生産構造を踏まえて成立しているものである。現時点で明確にお答えすることはできないが、現場でどのような課題があるのか今後聴き取っていきたい。

◯関村審議官
増頭奨励事業に関して補足する。昨日の国会でも「今後増頭奨励事業は継続されるのか」という質問があったが、宮下大臣の答弁の通り、本事業は見合わせることとしている。子牛を増やすという対策を見直し、高品質の子牛に置き換えることで生産基盤を強化していく方針にご理解をいただきたい。

◯大山委員
和牛生産の視点で話をさせていただく。枝肉と子牛価格が低迷しているが、その原因が飼料価格の高止まりと消費の低迷である。一方で、このような時こそ肥育期間の短縮や飼料の改良に力を入れていく好機と思っている。これらが進んでこなかったのは、経済的なメリットを示せていなかったことが原因であると思うので、経済的なメリットを数字として把握し、農水省としても推し進めていただきたい。
消費拡大としては、消費者の求めている牛肉を作ることができているか生産者が自問自答するべきであり、消費者が求めている牛肉を生産することが大前提。脂肪交雑について、消費者に訴求できるものなのか考えなければならない。最近の和牛のBMSについて、平均が8を超えており、半分以上が5等級。等級に頭数の偏りが生じてきている結果、等級間の価格差がなくなっているのが現状。20年前は4等級と5等級の価格差が500円ほどだったが、今では200300円ほどの差しかなくなっている。枝肉の価値を違う視点で見られる指標が必要。特に新しい評価の軸として脂肪の質や脂肪交雑の細かさなどがあると思うが、これらの指標の導入によって多様性の維持にもつながっていくと思う。豚では脂肪の質を計測する機械が導入されているため、牛にも活用していけるのではないか。生産者、流通、消費者が一体になって取り組むべきテーマであり、農林水産省にもご協力いただきたい。 

◯小椋委員
私自身酪農を営んでいることから、現場目線での話をしたい。まず、今の酪農現場は資材高騰により大変厳しい状況。年末に向けた借入金の返済や、乳牛償却費、それ以外の償却費を合わせると一戸平均で約2000万円のマイナス。これをセーフティネット資金等の借り入れをしながら一年間の収支を埋めているという状況。こういった状況を踏まえ、3点話したい。1つ目は集送乳調整金について。来年の2024年問題は避けられず、北海道内での輸送やメーカー間への転送、都府県への輸送に大きな問題がある。輸送業者からも既に価格改定の要請が来ている。これらの現状を踏まえ、集送乳調整金についてはよく議論していただきたい。また、経営の状況を踏まえて補給金と限度数量の枠を算定していただきたい。
2つ目は脱脂粉乳の在庫対策について。脱脂粉乳は、国・メーカー・生産者団体が三位一体となって処理している。ヨーグルト等の人気が爆発的に上がれば自然に解消されるが、現在そういう状況にはない。チーズは需要の伸びしろが約20万トンあるといわれており、補正予算の中でも国産チーズの奨励対策として61億円の予算を打っていただいたが、今まで生乳1kgあたり8円の補助だったものが6円になっている。この部分がどこに行くのか、全体の予算の割り振りがどうなるのか見えてこないのでしっかりとした説明をお願いしたい。LL牛乳の輸出についても相当な伸びしろがあることから、輸出の発信を強くお願いしたい。
最後に畜安法について。不足払い制度から畜安法に改正したときに需給調整を農水省が行うということで承認されたと認識しているが、実態としては指定団体が需給調整をすることとなっている。生産者団体だけでは需給調整はできない。畜安法をしっかりと検証して頂き、不公平感のない法律にしていただきたい。

◯小山委員
宮城県加美町で和牛繁殖農家を営んでいる。繁殖牛の餌の多くは粗飼料であることから、地元の仲間たちとの耕畜連携を進めることが重要と考えている。和子牛価格の下落は、酪農家の経営努力の中での受精卵移植による頭数増の影響も大きいとは思うが、いずれこうなることは目に見えていた。良血統の子牛には値段が適わないのが現実だが、良血統の子牛を導入するにはよい機会だと捉えている。しかし、牛肉の消費拡大には不安を覚える。脂が多いことから、女子大生が牛肉を嫌うという声も聞いた。消費者あっての畜産業であることから、和牛が日本の食卓のご褒美であってほしいと心から思う。今年の暑さにより死亡したり、弱ってしまう子牛が多いそうだ。普通血統の雌子牛は上手に育てないと赤字になってしまう。これまで多くの支援をしていただきありがたいと思っているが、消費拡大に更なるご支援をお願いしたい。

◯川田委員
私からは小売りの現状について変化していることを話したい。コロナが終わって、牛肉の消費回復が一番遅い。鶏肉や豚肉については、売り上げが昨年を大きく超えてきている一方で、輸入牛肉は為替の影響もあり各社値上げも行っていることから、数値が落ちている状況。国産牛については、買いやすさから各社ホルスタインに力を入れている状況にあり、和牛は消費者の買いづらい値段になっている。いい和牛を価値に合った値段で販売したいという思いはあるが、年末やお盆以外の時期については、お客さんの手が出ない状況が続いている。小売り側からしてもロスが多いことから儲からず、企業的にも牛肉は赤字になってしまうことから各社困っている。
一般客は肉や卵などの畜産物を工業製品的なものと考えている人が多く、なぜ値段が上がっているのか理解していない。値上げの要因を客が理解しないと、客が離れてしまうことから、店としては値段を安くせざるを得ず、業界はデフレ傾向になる。生産者から小売りまで一体となって畜産を持続可能にしたいと考えていることから、畜産の状況を一般の人にもわかりやすいような施策に取り組んでいただきたい。

◯郷課長
大山委員から牛肉の改良やニーズに合ったものを作っていく必要について質問があった。令和23月に家畜改良増殖目標を作成し、その中で食味に関する不飽和脂肪酸についての新たな改良形質を検討・推進することとし、それに基づいて牛肉については脂肪交雑一辺倒ではない方向性で検討してきた。今後令和7年に制定される新たな家畜改良増殖目標に向けて審議会でもご議論いただくことになると思うが、その際には改良が進んでいる現状を踏まえて脂肪の質や細かさについてもご議論いただき、我々も勉強させていただきたいと思う。

◯猪口課長
各委員から、適度な脂肪交雑や値ごろ感のある牛肉を求める消費者ニーズについてご意見があった。酪肉近の中でも脂肪交雑の多い牛肉の生産推進に加えて、肥育開始月齢の早期化等により出荷月齢を早くしていくことも掲げられており、来年度の予算要求の中でも肥育期間の短縮や出荷月齢の早期化などにむけたモデル事業を要求しているところ。生産者の収益性も考慮しながら多様なニーズに対応しうる牛肉の供給体制モデルを考えていく中で対応が可能になっていくと思う。一方で今夏に和牛の値段が大きく下落した際に、A5A4の価格差が大きくなったという事象が見られた。関係者によると、A5が安くなると消費者がA5を購入するようになることから、適度な脂肪交雑よりも値ごろ感が重視されていることも考えられる。井上委員からも言及されたように、どの程度の素畜価格で、どの程度の価格の牛肉を販売するのが最適か考えていくことが重要。
小山委員から牛肉の消費拡大について懸念があるとの話があった。現在審議されている補正予算の中でも和牛の需要開拓の事業も措置している。今の危機を乗り越えるために必要と考えており、引き続き輸出促進についても頑張っていきたい。
川田委員から畜産現場の課題を消費者に伝えることで牛肉等の価格上昇につなげられるとのお話があった。今年の春先にも畜産局において関係者間で議論し、畜産現場の課題を消費者に伝えることが重要であるとのご提言をいただいたところ。飼料高騰の影響等を一般の消費者に向けてどのように発信していくか考えながら取り組んでいるところだが、引き続きご意見いただきながら取り組んでまいりたい。 

◯須永課長
小椋委員から3点ご質問、ご意見があった。まず補給金については算定ルールに則って算定していくことになるが、算定に必要なコストデータがまだ出ていない。状況をよく伺いながら対応してまいりたい。
また、脱脂粉乳に端を発する需給全体の問題の話があったが、脱脂粉乳については補正予算を措置している。これにより脱脂粉乳そのものの対策をしていくとともに、需要拡大を目的とした国産チーズに係る対策も措置している。このチーズの予算については効果的に執行できるよう今後、関係各位と相談しながら進めていきたい。また、LL牛乳の輸出については我々も期待している。先般、輸出の品目団体についても認定されたことから、この団体ともよく連携しながら輸出を後押ししていきたい。
最後に畜安法について。需給調整については、生乳に携わる全員が需要に応じた生産に取り組んでいくという共通の考え方の中で進めていくことが重要であり、それぞれの取組を支えていきたい。更に系統内外に関わらず需給調整自体が重要であることをよく理解し、それぞれの取組を深化させていくことが重要。その上で、農水省としては系統内外の方々との意見交換を積み重ねていく。畜安法の中で一定の対応ができないか公取委も含めて検討しているところであり、生産者の意見を伺いながら対応を進めていきたい。

◯郷課長
大山委員の肥育期間の短縮等を含めた経済メリットについて、数値で把握することが大事であるというご発言について、現時点で詳細なデータが十分に把握できていないが、事例の研究データについての数字を集めて進めていきたい。 

◯里井委員
メディア関係の状況等を踏まえて発言させていただく。まず、施策を進めていくうえで消費者をいかに巻き込むかが非常に重要になることはご存じのとおりだが、それに加え、生産者の後継者を繋いでいくという事は今後も一番の課題となる。また、国産食材の価値を高めていくことについて、特に価値を感じているのは値段であると思っており、消費者には値段ありきでの美味しさや健康面等のバランスを見る人が非常に多いことを踏まえ、まずは適正価格について話し合っていきたい。
さらには、消費者からするとチーズは非常に人気な食べ物であるという認識。一方で、購入する際に価格の高さを感じてはいるものの、現場の大変さを感じ取れていない消費者がいるということを常々感じている。国産チーズの競争力強化対策については非常に素晴らしい予算をとっていただき心強い支援であるが、この事業に取り組むにあたっての方向性や国が支援してくださることを生産者がどこまで理解されているのかは不明であり、施策の背景や思いをどの媒体で伝えるかにより、この支援が与える影響は変化すると考えている。 

◯庄司委員
今回の飼料価格高騰により、令和4年度までに通常補填を合わせて過去最大の4,129億円が支出され、本年度も緊急補填が継続している。当然、既存の積立金では間に合わず、民間負担として最大1,265億円を借り入れ、この先、令和13年度までの長期にわたって返済する状況となっている。
特に過去に借金経営のなかった異常補填は、安定した財源に裏付けられた持続的な制度とは言えない。
これまで、当会としては、畜産経営の安定を図るという目的に即して、持続可能な制度となるように、抜本的な改革について現在農林水産省にお願いしているところ。令和7年度から新たな契約年度に入る。財源が借金で基金を出すという新たな契約が許されるのか。まずは意見交換会という形で早く検討いただきたい。
日本標準飼料成分表については、2009年以降改訂がされていなかったが、ようやく検討がはじまったところ。家畜の育種改良が進み、配合飼料もそれに合わせたものに変化していることから時代とずれたものになっており、より畜産を効率化するための改訂が必要だということを申し上げている。こちらを引き続き進めていただきたい。
最後に物流問題について、配合飼料メーカーは、食品業界では最大の数量となる2400万トンの飼料を港湾から山間部まで運ばなければならないというインフラを背負っている。農林水産省のご支援や地方自治体との話になった際の調整をお願いしたい。 

◯畠中委員
昨年の部会でも申し上げたとおり、近年の養鶏業界は非常に生産者が疲弊している。飼料価格は高止まって卵価は低迷している状況であり、何か対策を考えないと大変なことになるという趣旨の話をさせていただいた。その後、鳥インフルエンザの大発生により、結果的に卵価は相当上がった。発生していない農家においては、飼料価格のアップ分もまかなえるようになり、飼料価格の高止まりも忘れがちになるくらい経営自体は良くなっていると思われる。今年において鳥インフルエンザの発生状況はまだ見られず、このまま発生せずに終われば需給バランスは大幅に崩れ、年明けの相場への不安がある。そのため配合飼料価格安定制度の在り方や、今後この会で審議する鶏卵の補塡価格については非常に重要な議論となると思っている。
農場の資金繰りについて、現在は殺処分した場合の手当金、その後の再建に対する家畜防除互助基金支援事業があるが、昨年の鳥インフルエンザの発生状況を踏まえて考えると、8人で1人をまかなうような状態になっている。昨年レベルの発生が起きた場合にもしっかりと対応できるような踏み込んだ支援をお願いしたい。 分割管理について、目先の効果としてはいいものだと思うが、長い目でみると実際に効果があるかどうか分からない。また、それを取り入れられるような環境をもっている農場はかなり限られていると思う。疫学調査についても同様の考えであり、ワクチンに関しても、現状は無理だというのは重々承知のことだが、そこを議論していかないと対策は進まないと思っており、将来的に効果のある様々な施策を強くお願いしたい。

◯羽田委員
中小企業診断士として発言させていただく。畜産分野と同様に、中小企業でも生産コストや人件費の増加分をどのようにして価格に転嫁するかという課題を抱えている。中小企業だけでなく畜産農家においても、付加価値をあげていくことで価格転嫁が可能になると思う。農林水産省として、付加価値の付与についてサポートを続けてほしい。
畜産物の魅力をアピールする必要性について意見があったと思うが、農林水産省としても、商品となったものに対してアピールすることは難しいと思う。流通や小売業界にどう伝えていくか、経産省等と連携し、何か対策をとっていただけたらと思う。 

◯廣岡課長
今般の配合飼料価格高騰に対して、国だけでなく民間の方にも協力していただきながら、様々な対策をとってきたところであり、生産者の経営継続において、大きく貢献してきたと思っている。配合飼料価格安定制度に関しては、生産者や生産者団体の方からは、補填が増えることにより将来の負担増加を懸念する意見を頂く一方で、より多くの補填を求める意見も頂いている。今後も様々な意見を取り入れることが重要と考えている。
日本標準飼料成分表の改訂について、農研機構を事務局とした飼料成分表部会において、庄司委員からの意見も共有し、議論を進めていきたい。
飼料の流通について、運送業界の方、飼料生産者、飼料メーカーが構成員となっている会合等で意見交換を行い、対応していきたい。 

◯大倉室長
鳥インフルエンザ発生農場における再建のための支援策として、家畜防除互助基金支援事業を用意している。農林水産省としても、過去に類を見ないような流行を踏まえ、業界の方、事業実施主体の方を含めて、事業の在り方や生産者の方に扱いやすいものなのかといったことを検討しているところ。
農場の分割管理について、農林水産省としても、持続的かつ安定的に疾病の影響を最小限にしていくことを念頭に置き、生産者を含め、どういった管理方法が良いのか意見交換を行い、9月にマニュアルを整備したところ。現在審議中ではあるが、令和5年度補正予算においても、分割管理に要する施設整備等への支援策を講じているため、活用していただきたい。
疫学調査について、7月末に農林水産省から、昨年の調査を踏まえた知見を出させていただき、これを都道府県の方が分かりやすいように説明を進めてきたところ。
ワクチン接種については、注視しつつ技術開発を進めていきたい。 

◯三野課長
価格転嫁について、食料・農業・農村基本法の中でも課題となっており、畜産分野では現在飲用牛乳がテーマになっている。流通業界や小売業界から意見を頂いているが、非常に多くの課題があるため、この場で方向性について述べることはできないが、引き続き議論を深めていきたい。 

◯馬場委員
補正予算に数々の支援策を盛り込んでいただき感謝。成立後は早期に生産現場に周知し取組を加速化いただきたい。
適正な価格形成について、将来にわたってフードバリューチェーン全体の持続性を確保するためにも、政府主導で関係者間の具体的な議論をすすめ、法制度の早期実現をお願いする。
加工原料乳生産者補給金について、生産コストの上昇を踏まえて適正に設定いただきたい。集送乳調整金は物流2024年問題等で輸送環境が厳しくなることを踏まえた設定をお願いする。十分な交付対象数量も必要である。
生乳需給が緩和し、需給改善に取り組む中で、生産抑制する生産者とそれ以外の生産者で不公平感が生じて全国的な課題になっているため、系統外も含めた関係者の十分な議論や畜安法の運用改善など国の強いリーダーシップをお願いする。
肉用子牛価格が下落する中、繁殖基盤を維持するため、肉用子牛生産者補給金制度は再生産が確実にできる水準の確保をお願いしたい。また現在、和子牛生産者臨時経営支援があるが、持続可能な肉用牛生産を実現するため、令和6年も臨時的なセーフティネットを講じていただきたい。
次期酪肉近策定に向けて、生乳需給調整のあり方、肉用牛生産基盤強化をどのように図っていくかなどをしっかりと検討する必要があると考えている。

◯彦坂委員
飼料価格やエネルギー、物流費の高騰によって、2年前とは異なるステージで畜産経営を行うことになっており、鶏卵生産者経営安定対策事業の発動の算定方法が現在の経営の実態と大きくかけ離れているのではないかと思っている。算定の継続性は非常に重要だが、現在の経営環境を反映した算定方法で検討を進めていただきたい。
家畜伝染病予防法による殺処分の手当金が、8カ月~1年後に支払われている状況であるため、一部を早期概算払いするような仕組みを検討していただきたい。融資や雇用調整金も、補完的な制度として重要であるが、そういった制度も査定等があり、すぐに支払われるようなものではない。
鶏卵の需給状況について、近年特に在庫が積み上がった昨年9月を上回る在庫状況であり、これは加工・外食の需要回復の遅れが最大の原因であると考えている。鶏卵業界全体で何らかの対策を行わないと回復しない可能性がある。農水省も業界をリードしながら加工・外食をどのような取組みをするべきか検討いただきたい。 

◯前田委員
豚熱が佐賀県で発生し九州全域でワクチンを接種することとなり、農水省の様々な支援に感謝。防疫強化を徹底的に取り組んでいるが、諸経費も上昇し続けているため大きな懸念である。
今年度は自社工場と耕種農家と協力し、国産飼料化に取り組んでいる。水田だけの支援ではなく畑地に対しても継続的に生産ができるバランスの良い支援制度の必要性を痛感している。今年度も飼料課の事業を活用したが、今年度の補正予算にも新たな対策事業が含まれており期待している。
熊本県ではTSMCを中心に都市化が急速に進んでおり、あと何年同じ場所で畜産事業が続けられるのか懸念している人もいる。国家プロジェクトでもあり、協力したい考えは持っているが、農業者の生産環境をしっかり作っていただき、例えば半導体産業や農業、住居などゾーニング的な施策政策など、持続可能な農業および畜産事業について、関係者としっかり協議する場が必要である。 

◯大倉室長
家畜伝染病予防法に基づく手当金の支払いの早期化について、都道府県を経由しての手続きであり、都道府県と生産者の方々との間で必要書類を整える時間を要していると聞いている。農林水産省もQAを用意したり、個別の問合せに逐一対応したりすることで早期支払いに対して工夫してきているところであり、今後も検討してまいりたい。
ワクチンの経費も大きくなっていると聞いているが、色々な生産者の取組に対して支援策も用意しているため、そういったものを活用いただきながら防疫体制と整えていただくようこれからも進めてまいりたい。

◯猪口課長
肉用子牛の保証基準価格についてまだデータが揃っていないが、ルールに基づいてしっかりと価格の算定を行い、次回の審議会でお示ししたい。
子牛の臨時対策については令和5年限りで、12月末までの対策である。来年1月以降の対策については、肉用子牛価格の議論と合わせ、現在の課題も踏まえて検討してまいりたい。
鶏卵生産者経営安定対策事業については、昨年外部有識者も含めて検討会で議論をしており、発動基準の引き上げや価格差補填事業の負担割合の拡充などについて見直しを行い、今年度から新たな事業期間が開始したところ。一方で足元の生産コストの増大に対し、これまで配合飼料対策の激変緩和措置を講じてきた。鶏卵は他の業種に比べ、代替の食品も少なく輸入割合も小さいため、比較的コストを価格転嫁しやすいということも踏まえ、消費者の理解をいただきながら、コストに見合った価格での取引が行われることが重要である。情勢の変化に応じて、政策を見直すことは必要と考えており、次の事業期間に向けて引き続き関係者と事業見直しの必要性を検討してまいりたい。
鶏卵の加工向け需要は、昨年の鳥インフルエンザで加工向けの鶏卵が不足した際に需要が減少し、それが戻りきっていない状況である。加工向けの鶏卵については流通の強靭化を図る必要があると考えており、農林水産省としても今回の補正予算で粉卵の製造施設に支援を行うことで、長期保存可能な粉卵の流通量を増加させ、国産原料卵を使うユーザーにとって持続的な安定供給元になることを期待している。 

◯廣岡課長
子実トウモロコシを含め、国産の飼料作物を生産・利用拡大を図っていくことは非常に大切なことと考え支援を行っている。特に生産の外部化や新規栽培や拡大に支援を行っており、今回の補正予算の中でも販売・流通の拡大等も盛り込んでいるところ。飼料作物は出来るだけコストを抑制し省力化して生産することが重要であり、そういったところにも支援を行ってまいりたい。
熊本の件については、しっかりと関係者が協議していくことが重要であり、まず誘致した自治体等が効果、影響を踏まえて企業進出と営農の継続の調整を図っていくことが重要である。熊本県も支援チームを作って営農継続に向けた代替農地の確保等検討されていると聞いている。九州農政局も定期的に情報交換を行っていると聞いており、相談に応じてまいりたい。 

◯松田委員
乳業者の立場から、令和6年度に必要と考えられる酪農乳業対策と需給問題等への対応について、4点、意見を述べさせていただきたい。1点目は、チーズ増産による需給の改善について。脱脂粉乳の過剰な在庫や配合飼料価格高騰等による生乳生産コストの急増がある中、2年連続で生産抑制型の取り組みを行ってきており、酪農経営には大きなダメージ。こうした状況で生産抑制の取組を3年連続で行うことになれば、生産者の意欲は損なわれ、消費者の皆様への牛乳乳製品の安定的な供給にも支障が生じる可能性があると危惧している。需給の改善をより確実にするためには、チーズの増産に切り替えるのが適切ではないか。
2点目は、水田を活用した自給粗飼料の生産拡大について。輸入粗飼料価格も高騰し、高止まりしている状況となっている。このため、行政から配合飼料価格安定制度を通じて緊急支援措置を講じていただき、乳業としても、脱脂粉乳の飼料転用や輸出等により需給改善に取り組み、乳価の引き上げを行ってきたところ。しかし、粗飼料も輸入に依存している都府県の酪農経営においては、以上の対応のみでは不十分であり、コストの低減や環境問題の改善にも資する自給粗飼料の生産を推進することが重要。水田活用対策として、青刈りとうもろこし等の飼料作物を生産しやすい仕組みに改善すれば、都府県の酪農と稲作の課題を解決する一石二鳥の対策ともなり得ると考えられるため、ご検討いただきたい。
3点目は、中長期的な生産の安定化について。具体的には、乳用雌牛出生頭数の急減への対応が必要ではないかということ。現在のように対前年比10%程度の減少が続いていると仮定すると、来年以降は次第に2歳以上の雌牛頭数が減少傾向を示し、2025年以降は加速度を増して頭数と生乳生産が減少していく可能性がある。したがって、生産者の方には、後継牛の安定確保に向けた交配を行っていただきたいと考えているが、乳業メーカーから情報発信しても響かないので、国から適時適切な情報発信をしていただきたい。
4点目は、地球温暖化への対応としての暑熱対策の推進について。都府県においては、従来より相応の暑熱対策が講じられてきたが、北海道においては十分な対策が講じられていないとの話を聞く。生乳生産が減少傾向にある中で、最需要期における生乳需給の逼迫を回避するためにも、改めて暑熱対策の強化が必要ではないかと考える。 

◯二村委員
消費者の立場からの意見を述べさせていただく。畜産分野では安定供給ということが消費者の関心事だと思う。近年、飼料の高騰や輸入リスクが知られてきており、飼料の国産化が重要である。他の委員からも意見があったが、政策の有効性の評価が必要だと思う。また、安定供給のことを考えると、経営の安定化、後継や新規就農等がしやすいような環境が大切である。ただし、今後の人口構成の変化や人口減少のことを考慮すると、必ずしも需要は増加するとはいえず、消費者が何を求めているのか考えなくてはいけない。規模拡大だけでなく、効率化が重要になってくるだろうと思う。
また、質問だが、畜産分野における環境対策について、この畜産部会でどう扱うのか、また、政策全体でどう扱うのかお聞きしたい。

◯椛木委員
私は、北海道の十勝で搾乳牛が50頭ほどの酪農経営を行っている。最近では地域でまとまってがんばろうということが薄まっていると感じる。その中で生産者の間で不公平感が無いよう畜安法を見直していただきたい。去年のリタイア事業についても、多くの酪農家が扱えるような事業ではなかったと感じており、余った予算は何に使われるのかも疑問に思う。
酪農を営農していく中で、振り回されていると感じており、この先どうすればよいか分からない。生産者が目標をもって、安心して生産できるようになればと思う。農林水産省には現場の意見をもっと聞いていただきたい。畜産分野について、消費者にも説明できるようになればと思う。 

◯宮島委員
様々な委員から、持続可能な農業についてのご発言があり、大変心強く思う。現場の農家においては単に国や自治体に支援を求めるだけでなく、個人や組織や地域としてどのような営農戦略を組み立てているかを発信し、国民の理解を得ることが重要。

◯小針部会長
畜産や酪農をめぐる環境について、飼料や疫病等、生産基盤を揺るがす事態となっている。食料安保において、分野別にリスクを把握し、どう対応するのかまとめているが、畜産や酪農の分野ではどうしても現場でないと分からないことが多くあるため、一度整理した上で、議論することで解決するのではないかと思う。農林水産省としてやっていただきつつ、業界全体でも取り組む必要があると、今回の議論で感じた。 

◯郷課長
二村委員から環境負荷について、部会でどう扱うのかという質問があった。部会での扱いについては簡単には答えられないが、他方で、これまでの取り組みとしては、水質汚濁防止法や家畜排せつ物法等がある。しかし、現在、法規制がない環境問題について、例えば、畜産分野ではメタン等の温室効果ガスがあげられる。どうすれば、温室効果ガスを削減できる飼料添加物を畜産の現場で使ってもらえるのかということについて、議論の場を設けているところである。引き続き現場の方と意見交換をさせていただきたい。

◯木下課長
二村委員から後継者や新規参入者が増えるような環境を整えていただきたいという意見があった。畜産の場合は、元になる家畜を導入してから生産物になるまでに長い期間を要することがあり、生産物を売る際に経済状況が変化するリスクが大きいため、生産物になるまでの期間やリスクに応じて経営安定対策を用意している。加工原料乳生産者補給金や肉用子牛生産者補給金、牛マルキン、豚マルキン、鶏卵生産者経営安定対策事業等で基本的な経営安定を図っているところ。さらに、状況に応じて基本的な対策とは別に対策をたて、経営安定を図っていきたいと考えている。 

◯須永課長
松田委員から、脱脂粉乳の在庫問題やチーズ、後継牛の確保についての意見があった。補正予算でも、脱脂粉乳、チーズ、長命連産について予算を確保しており、効果的な執行をしていきたい。また、椛木委員からの需給調整の意見については、生産者の声を聞きながら、まず進められる点と更なる議論をしていく点を整理し、後者について、酪肉近でも議論を進めていきたい。リタイア事業については、様々な意見をいただいている。また、予算の内、執行されなかった分は、すぐに他の予算に流用できる性質のものではないため、企画する段階で現場の方の意見を取り入れつつ考えていくことが重要と考えている。

(以上)

お問合せ先

畜産局総務課畜産総合推進室

担当者:請川、河田、松山
代表:03-3502-8111(内線4888)
ダイヤルイン:03-6744-0568

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