令和5年度第1回(令和5年9月5日)議事録
日時及び場所
令和5年9月5日(火曜日)13:30~17:01
農林水産省 第2特別会議室
出席者
委 員:三輪委員(部会長)、宮島委員(Web参加)
臨時委員:里井委員(Web参加)、中宮委員
専門委員:有田委員、上江洲委員、惠本委員、小椋委員、上國料委員(Web参加)、嵩原委員(Web参加)、田中委員(Web参加)、松谷委員(Web参加)、森本委員
オブザーバー:高橋様、村上様
農林水産省:平形農産局長、松本農産政策部長、石田地域作物課長、伊藤砂糖類調整官、地域作物課課長補佐(阿部、梅島、澤本、白倉、豊井、菊池)
議事
(第1部)
砂糖及びでん粉をめぐる現状と課題について
令和5砂糖年度に係る砂糖調整基準価格(案)及び令和5でん粉年度に係るでん粉調整基準価格(案)について
糖価調整制度の持続的な運営を図るための取組について
(第2部)
関税・外国為替等審議会の答申への対応について
概要
石田課長:それでは定刻となりましたので、ただいまから食料・農業・農村政策審議会甘味資源部会を開催します。
委員の皆様におかれましては、御多忙中にもかかわらず御参加いただき、感謝申し上げます。
私は本部会の事務局を務めます地域作物課長の石田です。よろしくお願いします。
まず初めに、本日の開催方式について。お手元の議事次第にもあるとおり、本日は議事が大きく二つに分かれるということで、2部制での開催とさせていただきます。
また、委員の皆様の参加状況です。お手元に委員名簿をお配りしておりますが、オンライン併用での開催とさせていただいており、本日は6名の委員がオンライン参加となっております。具体的には、宮島委員、里井委員、そして専門委員の上國料委員、嵩原委員、田中委員、松谷委員です。
また、里井委員におかれては、本日、所用につき遅れての御参加となります。
そして、本日は松田委員と矢野委員と荒川委員のお三方が御欠席となっておりますが、現時点において専門委員を除く審議会委員及び臨時委員3名の方に御出席を賜っておりますので、食料・農業・農村政策審議会令第8条第3項において準用される同条第1項に規定する本部会の開催に必要な定足数を満たしていることを御報告申し上げます。
なお、本部会は公開とされております。資料、議事録についても全て公開することとされておりますので、よろしくお願いします。
それでは開会に当たり、農産局長の平形から御挨拶を申し上げます。
平形農産局長:農産局長の平形です。委員の先生方にはいつも大変お世話になっており、お礼を申し上げます。
また、本日は御多忙中にもかかわらず、また酷暑の中御出席を頂き、感謝いたします。甘味資源部会の開催に当たり、一言挨拶を申し上げます。
砂糖・でん粉をめぐる情勢ですが、主要な国の天候不順等により、国際糖価というのは歴史的な水準、高い水準になっており、これがなかなか下がってこないという状況にあります。また、ウクライナ情勢、円安等の影響もあり、燃油、肥料など様々な原料や資材が高騰している状況です。一時よりは落ち着いておりますが、こういう状況の中で、価格は少しずつ高くはなってきているものの、関係の皆様方の御努力において、砂糖・でん粉の安定供給に尽くしていただき、感謝申し上げます。
このような中、農林水産省では現在、食料・農業・農村基本法の見直しの審議・議論を行っております。この中でも食料安全保障の確保というのは柱の大きな一つであり、食料安全保障の確保のためには持続可能な食料システムの構築というものが必要です。そのためには、各事業者が適切に価格転嫁をしていくということが大変重要なものだと思っているところです。
簡単に「価格転嫁」と申し上げましたが、このコストの掛かった部分を転嫁していくためには、生産者の方、それから集荷の方、製造業者の方、小売の方と、各段階においてこれをつないでいっていただくというのは大変なことではございますが、この糖価調整制度をめぐる関係者の皆様におかれては、これまでもそのような努力をしていただき大変ありがたいと思っており、今後とも持続可能な食料システムが構築されるように農林水産省としても運用ほか、様々努力を尽くしていきたいと思っているところです。
このような中、昨年12月の審議会では、糖価調整制度の持続的な運営を図るため、てん菜糖の国内産糖交付金の交付対象数量をこれまで64万トンから令和8砂糖年度にかけて55万トンに調整するということを内容とする「持続的なてん菜生産に向けた今後の対応」について、この部会でも御意見を賜りました。その方針を農林水産省として決定したところですが、方針どおりになかなかいかないところもございます。これは生産の部門というよりも、最近の国際糖価が、方針決定当時からも非常に高騰しております。また、円安の進行も秋に1度あって、その後若干落ち着いていたところですが、また足下において円安が進んできております。
砂糖勘定の収支は、昨年12月に予想した以上に悪化をしているということを本日御報告しなければいけませんが、このようなてん菜をめぐる方針の決定に続けて、糖価調整制度の健全な運営のために、収支改善に向けた更なる取組を検討して実施していかなければなりません。我々も含めて、関係者の方々に努力をしていただかなければならない状況にあると思っているところです。
本日はその一つとして、令和5砂糖年度からの異性化糖に関する方針を御説明いたしますが、制度に関わる皆様におかれては、糖価調整制度の持続的な運営に向けて、なお一層御理解と御尽力、御協力を賜るようお願い申し上げます。
本日、課長の石田からも話がありましたが、前半の第1部、例年どおり令和5砂糖年度に係る砂糖調整基準価格及び令和5でん粉年度に係るでん粉調整基準価格について御審議いただくとともに、糖価調整制度の持続的な運営を図るための取組として、てん菜方針に基づく交付対象数量等の検証内容について御意見を賜ります。
加えて、後半の第2部の方では、昨年12月に取りまとめられた関税・外国為替等審議会の加糖調製品の暫定税率引下げに関する答申への対応についても御意見を頂きたいと考えております。
長時間となりますが、委員の皆様方におかれましては、それぞれのお立場から、どうぞ忌憚のない御意見を賜りますようよろしくお願いし、冒頭の挨拶とさせていただきます。
石田課長:カメラの撮影はここまでとなりますので、もしいらしたら、今後の撮影については御遠慮願います。
それでは、第1部の議事に入ります。三輪部会長に議事進行をお願いします。
三輪部会長:皆様こんにちは、三輪です。本日、部会長として議事を進行させていただきます。よろしくお願いします。
本日は、先ほど御説明いただいたように二部構成となっております。第1部においては、輸入粗糖などから徴収する調整金の水準を算定する基準となる砂糖及びでん粉の調整基準価格について農林水産大臣から食料・農業・農村政策審議会に諮問がございます。このことと、昨年12月に決定した「持続的なてん菜生産に向けた今後の対応について」における令和8砂糖年度までの交付対象数量及び指標面積に係る検証等について併せて御意見を伺いたいと思います。
なお、諮問内容については、委員の皆様方からの御意見、御質問を頂戴し、最後に議決を採らせていただきます。
本日の審議を踏まえた当部会における議決は、規定により、食料・農業・農村政策審議会の議決とみなされることになりますので、よろしくお願いします。
それでは、まず諮問の前に、砂糖及びでん粉をめぐる現状と課題について、事務局より御説明をお願いします。
石田課長:それでは、資料を御説明させていただきます。
ウェブ参加の方がいらっしゃいますので、右肩に振ってある通し番号を申し上げながら進めてまいります。
まず資料1-1についてです。
8ページからです。
まず、砂糖の需給の動向についてです。輸入原料糖が100万トン、国産糖が70から80万トン、合わせて170から180万トン程度が供給されている状況です。
輸入糖の価格については、冒頭の御挨拶で申し上げたとおり、国際糖価、為替の影響、さらには主要産地の天候不順があり、直近では93円と、歴史的に高い水準となっているところです。
また、砂糖の消費量ですが、低甘味嗜好により減少傾向で推移しており、加えて、コロナの影響により大きく減少したところです。ここ2年間、直近では経済活動の回復等によって増加してきておりますが、コロナ前から比べると大きく減少している状況です。
次に9ページです。砂糖の原料としてのさとうきびとてん菜の位置付けです。
さとうきびは、鹿児島の南西諸島と沖縄県、これら地域における代替の利かない基幹作物です。
てん菜についても、北海道畑作の輪作体系を構成する重要な作物です。
また、地域の雇用・経済を支える重要な役割を担っているところです。
10ページ、さとうきびの生産動向です。
令和4年産については、収穫面積はほぼ横ばいで、単収は干ばつ等の影響で前年を下回り、生産量も前年をやや下回っております。
生産構造については、1ヘクタール未満の農業者が戸数割合で5割以上を占めており、零細規模の農家が大宗という状況にあります。
11ページ、さとうきびの生産状況です。
生産費については、物財費、これは作業委託費等が含まれますが、これが増加傾向にある一方、労働費の方は減少傾向にあります。
また、作付体系として、株出栽培への移行が進んできておりますが、適切な栽培管理が行われていないということで、単収は低迷しております。担い手等を育成の上、基本技術の励行を進めていく必要があります。
12ページ、さとうきびの生産性向上に向けた取組です。
一つはスマート農業です。南大東島、徳之島に加え、沖縄本島などでも取組が進められており、徐々に拡がってきております。
また、新品種です。機械収穫や株出栽培に適した新品種「はるのおうぎ」は、令和4年産から種子島で生産され始めていますが、いよいよ令和6年度、来年産からは大島地域においても原料生産が開始される予定となっております。
13ページ、甘しゃ糖工場の状況です。
コストですが、工場の老朽化に伴う施設更新、あるいは人件費等の掛かり増しの経費、こういったものの影響でコストが押し上げられており、直近の令和4年だと106円/kgという状況です。
今後ですが、引き続き操業率の安定化、あるいは歩留りの向上、製糖工程の自動化等によりコスト削減を推進していくことが必要です。
14ページ、甘しゃ糖工場の働き方改革の関係です。
時間外労働の上限規制について、5年間の猶予期間が設けられたところです。いよいよ本年が最終年という状況であり、様々な設備の導入、人材の育成・確保等の取組を進めていただいているところです。農林水産省としても、内閣府等の関係省庁と連携し、支援を引き続き行ってまいりたいと考えております。
15ページ、てん菜の生産動向です。
令和4年産については、前年から2,300ヘクタール減の5万5,400ヘクタールとなったところです。
作柄については、8月の多雨が影響し、収量、糖分が低下し、産糖量については56.2万トンとなったところです。
また、昨年12月に決定した「持続的なてん菜生産に向けた今後の対応について」の方針に沿った取組について、北海道の生産者の皆様に御尽力を頂き、てん菜から他作物への転換が進められ、5年産の作付面積は5万1,300ヘクタールとなる見込みです。これは6月時点ですので、直近では更に精査され、5万1,080ヘクタールの見込みと伺っております。
16ページ、てん菜の生産状況です。
農家戸数が減少する一方で、作付規模の拡大が傾向として続いております。
直播栽培も徐々に拡大し、令和4年で約4割まで普及率が伸びてきており、更に推進していく必要があります。
生産費については、肥料費、農業薬剤費、これらが物財費の約半分を占めており、これらの上昇等によって、物財費が増加してきている状況です。
17ページ、てん菜の生産性向上に向けた取組です。
こちらについてもスマート農業の取組ですが、カメラ画像とAI、これらを用いて、病気の部分を検出するシステムについて実証実験が進められております。
また、資料の右側ですが、特定の除草剤に耐性を持つ品種「KWS 8K879」、これは北海道の優良品種に認定されましたが、除草剤は従前では複数回蒔き、なおかつ補完する手取り除草が行われておりましたが、これが1回の除草で済むということで、相当省力化等に寄与することが期待される品種です。5年度から一般栽培が始まっております。
18ページ、てん菜糖工場の状況です。
まずコストですが、エネルギー価格の高騰等があり増加しております。令和4年産で83円/kgとなっております。
また、工場の体制です。本別の製糖所が令和5年1月をもって生産を終了し、7工場体制となったわけですが、従前、本別製糖所で処理していた原料は、地図で言うところ、そこから西側にある日甜の芽室製糖所、北側にある北糖の北見製糖所、これらで引き続き処理されます。
また、てん菜糖業の抱える在庫、これが増大し、経営を圧迫している状況にありましたが、砂糖の仕向先変更事業、これは令和4年補正予算によって進めているものですが、こういった事業等により、在庫は4年末で12万トン程度まで減少する見込みとなっております。
ただ、糖業の経営状況は、赤字幅は縮小してきておりますが、引き続き厳しい状況です。
19ページ、精製糖工場の状況です。
「最近の再編の動き」ということで資料の右側に書いていることをここ1年を振り返っても、DM三井製糖ができ、ウェルネオシュガーホールディングスができ、さらに塩水港精糖と大東製糖の業務提携が行われるなど、企業合併等々による経営体質強化の取組を進めていただいているところです。
20ページの物流の関係は、砂糖の業界においても大きな課題となっております。産地においてトラックドライバーが不足するという問題がありますが、このことに対応し、鹿児島県のトラックドライバーが北海道でてん菜を運ぶという取組が行われたり、あるいはてん菜の集出荷のピーク時におけるトラック台数を減らすということで、ストックポイントを導入するという取組が行われております。
また、消費地で荷役の問題もあり、紙袋規格の変更も進められているところです。
この物流の問題については政府全体の大きな課題で、物流革新に向けた政策パッケージ、これが本年6月に関係閣僚会議で決定されたところです。このパッケージを踏まえ、精糖工業会、あるいは日本ビート糖業協会において自主行動計画の作成を現在進めていただいております。今後、取組を前倒しで実施される予定と伺っています。
21ページ、需要拡大の関係です。
農林水産省で、砂糖の正しい知識の普及を図るということで、SNS等を通じた情報発信を行う「ありが糖運動」、これを関係業界の方とも連携しながら進めているところです。
また、右側に記載がある令和4年度からの原料原産地表示、これが本格施行されたところです。これを契機とし、輸入の加糖調製品から国産の砂糖の方へ置き換えを促す、そういった取組の支援も進めております。
中段にあるお菓子については、輸出を促進しているところですが、順調に伸びてきている状況です。
さらに、甘味資源作物の将来的な他用途利用の可能性を探るということで、具体的にはSAF(持続可能な航空燃料)への活用可能性、この調査・検討も進めているところです。
以上が砂糖です。次の22ページからがでん粉です。
まず位置付けです。
でん粉は、御案内のとおり糖化製品を始め、多くの用途で使用されております。
供給の状況です。
右下にグラフがありますが、多くは輸入とうもろこしから製造されるコーンスターチですが、国産のものとして、ばれいしょでん粉が15.3万トン、かんしょでん粉が1.5万トン供給されているという状況です。
次に、23ページのでん原かんしょ・ばれいしょの位置付けです。
かんしょについては南九州、ばれいしょについては北海道輪作、そういった観点でいずれも重要な役割を果たしている作物です。
24ページ、でん原かんしょの生産動向です。
農家戸数の減少等により、作付面積も減少傾向にあります。また、単収ですが、サツマイモ基腐病の影響により、近年2トン前半、あるいは2トンを切るような低水準で推移しており、令和4年産の生産量も過去最低で5.5万トンとなっています。
生産費です。機械化がなかなか難しい状況にあり労働費の削減が進んでおらず、基腐病の対策の関係で薬剤費等も増え、物財費も増加傾向にあります。
25ページ、基腐病の関係です。
南九州で著しい被害が続いており、本年産、5年産の生産に当たっても様々な対策への支援を進めているところです。
なお、右下にございますが、基腐病抵抗性品種の開発が農研機構において進められております。焼酎・でん粉原料用品種の「みちしずく」に加え、新たに先日プレスリリースされましたが、青果用の新品種「べにひなた」というものが開発されたところであり、今後これらの普及を進めてまいりたいと考えております。
なお、「べにひなた」については、初めての基腐病の抵抗性が“強”という品種であり、でん粉と直接関係していないようにも見えますが、産地全体の基腐病菌の濃度を下げるという意味で効果が期待されるのではないかと考えております。
26ページ、かんしょの生産性向上ですが、早植え・マルチ栽培等の基本技術の徹底、あるいは多収性新品種「こないしん」の早期導入等を進めているところです。
27ページ、かんしょでん粉の生産動向、あるいは工場の状況です。
令和4年産については、先ほど申し上げたとおり、でん粉の生産量は1.5万トンで、操業率は29%という状況です。こういった中で工場再編の取組を、徐々にではありますが、進めているところです。
28ページ、ばれいしょの生産動向です。
1戸当たりの作付面積が拡大していますが、やはり労働負荷が高いということで、作付面積は減少傾向にあります。
ただ、令和4年産は、作付面積が前年から増加に転じ、単収も前年に比べて増えたことから、生産量が約8%増加したところです。
生産費です。物財費の増加、加えて労働費の方も若干増加傾向にあり、全体として増加しているという厳しい状況にあります。
29ページ、ばれいしょに関するシストセンチュウの状況です。
こちらも品種を抵抗性のあるものに置き換えていくことが重要です。現状、北海道においては令和3年産の段階で48.2%まで来ております。引き続き、この品種転換を進めていかなければならないと考えております。
30ページ、種子用ばれいしょの供給の関係です。
ばれいしょは10倍、10倍ということで、増殖率が低い品目であり、また病気に侵されやすいものでもありますので、この健全無病な種を安定供給することが課題です。ただ、手間が相当かかるということで作付は減ってきております。特に手間がかかる部分は多々ございますが、病株の抜取りというものがプラスアルファで発生しております。こういったものを省力化していくために、右側にあるAI等を用いて病気の部分を検出するといった技術、こういった実証の取組を進めているところです。
31ページ、ばれいしょの省力化に向けた取組です。
種ではなく、一般のばれいしょの方ですが、やはり植付け、収穫の部分の労力が相当かかっております。特に収穫の部分については、現状主に普及しているハーベスタでは、ハーベスタに複数人乗っかり機上で選別するという体制を組む必要がありますので、これが必要なくなるオフセットハーベスタによる体系、この普及を進めていくことが必要と考えております。
32ページ、ばれいしょでん粉の生産動向と工場の状況です。
操業率は現状62%という状況にあり、工場再編の取組について、徐々にではありますが、進められてきているところです。
33ページの物流の関係は、でん粉についても大きな課題になっており、特に現状、手積み手降ろしが今なお行われている工場等がございます。これをパレット輸送に切り替えていくということで、統一規格を決める、あるいは荷崩れ防止対策を検討・実証する取組を行うとともに、消費地側の受入れ体制についても検討が進められているところです。
なお、こちらについても、政策パッケージを踏まえ、業界の各社ごとに「自主行動計画」の作成が進められているところです。
続いて、35ページからは制度の関係になります。
糖価調整制度は、輸入の精製糖、これを高い水準の国境措置を通じて阻止するということで、関連産業が成り立つようにして砂糖の安定供給を確保していく仕組みです。
具体的には、輸入の精製糖に高い水準の関税・調整金を課す、また粗糖を輸入する精製糖企業から調整金を徴収し、これによって輸入粗糖の価格を引き上げる一方で、これを財源として、甘味資源作物の生産者や国内産糖の事業者に対して交付金を交付し、これによって国内産糖の価格を引き下げて調整を行うものです。
また、輸入粗糖等を原料として、精製糖企業が国内で精製して消費者に供給するという流れになっております。
続いて36ページです。本日御審議いただく調整基準価格の関係もここにあるので、若干補足いたします。
砂糖の調整金ですが、調整基準価格と平均輸入価格、この差に調整率を乗じて単価が決定されます。
調整基準価格については、この価格調整の基準となるものですが、特に効率的に製造された場合の砂糖のコスト、これを基礎として算定されます。
37ページ、加糖調製品の状況です。
TPP協定の発効、これに合わせて施行された改正法に基づき、調整金の徴収がスタートしております。
輸入状況は一貫して上昇傾向にありましたが、28年をピークに近年は減少し、直近約1年を振り返ってみると、粉乳調製品の減少等によって11%ほど減少しているところです。
38ページ、ALIC砂糖勘定の状況です。
冒頭、局長からの挨拶の中でも申し上げたとおり、極めて厳しい状況にあります。
令和3砂糖年度で、単年度109億円、令和4砂糖年度では、これに国際糖価の高騰、円安の影響等も加わって、調整金収入は更に減少しております。そういったこと等により、単年度収支が118億円の赤字で、累積差損としては563億円の赤字となる見込みです。
そして、39ページです。このような厳しい状況にある中で、また砂糖の消費量が減少し、てん菜糖業の抱える在庫が増大し、厳しい経営状況にある中で、「持続的なてん菜生産に向けた今後の対応」を昨年12月に決定しました。てん菜糖の交付対象数量を令和8年度に55万トンにすること、あるいは需要のある作物への転換等を内容とするものですが、左下のところに書いてある交付対象数量等について甘味資源部会で毎年度検証を行うこととなっておりますので、この後、事務局の案をお示しし、御意見を頂戴したいと考えております。
なお、5年産の作付面積については5万1,300ヘクタールと、指標面積を下回る状況となっております。
この資料の最後、40ページ、でん粉勘定の状況です。
令和3でん粉年度での単年度収支は17億円の赤字であり、令和4でん粉年度においては、引き続きとうもろこしの国際相場の高止まり等ございますが、単年度収支は3年度に比べるとやや改善傾向の6億円の赤字です。累積差損としては1億円の赤字となる見込みです。
資料1-1は以上です。
三輪部会長:本日付で農林水産大臣から食料・農業・農村政策審議会に諮問がございますので、事務局より諮問文を読み上げていただいて、併せて資料の説明もよろしくお願い致します。
石田課長:それでは、通し番号41ページ、資料1-2を読み上げさせていただきます。
5農産第2084号
令和5年9月5日
食料・農業・農村政策審議会会長大橋弘殿
農林水産大臣野村哲郎
諮問
砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律(昭和40年法律第109号)第3条第3項(同法第26条第3項において準用する場合を含む。)の規定に基づき、令和5砂糖年度に係る砂糖調整基準価格及び令和5でん粉年度に係るでん粉調整基準価格について、貴審議会の意見を求める。
以上です。
また、併せて、その内容について、資料1-3により御説明させていただきますので御覧ください。
通し番号43ページです。
砂糖調整基準価格・でん粉調整基準価格については、先ほど申し上げたとおり、輸入品、国産品の価格調整を行う、その基準となるものです。
具体的には、特に効率的な原料作物の生産費に特に効率的な製品の製造経費、これを加えた額を基礎として算定するものです。
砂糖については、甘しゃ糖について原料さとうきびの特に効率的な生産費、これに特に効率的な製造経費を加えた額を算出し、下の図の右側のてん菜糖についても、てん菜の特に効率的な生産費、これに特に効率的な製造経費を加えた額、これらをそれぞれ算出した上で、供給量の割合によって加重平均することで一本価格として調整基準価格を算定します。
なお、でん粉調整基準価格についても同様であり、かんしょでん粉とばれいしょでん粉の効率的なコスト、これらを加重平均することで算定します。
そして、次のページ、通し番号44ページを御覧ください。具体的なこれらの価格の水準です。
砂糖調整基準価格については、15万3,200円/製品トン、前年同ということで算出しております。これは、傾向としては、てん菜糖については、てん菜生産費の方が直播の普及等によって減少し、コスト全体が減少しています。甘しゃ糖については、ほぼ横ばいという状況ですが、相対的にコストが低いてん菜糖について、令和5砂糖年度、てん菜の作付面積は減少してきており、加重平均する際のてん菜糖の供給割合が低下するということで、相殺されて、結果として前年同となります。
一方、でん粉ですが、17万9,340円/製品トンということで、前年に比べ3,580円/製品トンの増ということ算出しております。こちらについては、ばれいしょでん粉について、特に製造経費の方が電力費の上昇等により増加しており、コスト全体が増加傾向にあります。また、かんしょでん粉については、かんしょの生産費が基腐病対策等のために増加するとともに、製造経費の方も電力費の上昇等があり増加しており、コスト全体が増加しております。その結果として、前年から増となっているところです。
説明は以上です。御意見を賜りますようよろしくお願いします。
三輪部会長:資料1-4も併せて御説明をお願いします。
石田課長:併せて資料1-4も説明させていただきます。通し番号46ページです。
まず、てん菜方針を踏まえての検証(案)です。左側の中段の枠に「検証内容」とありますが、調整金収支の状況や砂糖の需給、てん菜生産、糖業の経営、こういった状況等を踏まえ、甘味資源部会において、交付対象数量、指標面積について検証することとされております。
各項目の状況ですが、調整金収支については、令和4SYで単年度収支118億円の赤字、累積563億円の赤字ということで、引き続き悪化し、厳しい状況に変わりはありません。
そして、砂糖需給の動向ですが、直近令和4SYについては経済活動の回復などによって増加する見込みではあるものの、コロナ前と比較すると大きく減少している状況にあります。
てん菜の生産状況については、5年産の作付面積が北海道の生産者の皆様の御尽力を賜ったこと等によって、令和4年産に比べて約4,000ヘクタール減、5万1,300ヘクタール程度となっており、交付対象数量を換算した面積である指標面積の5万4,500ヘクタールを下回る見込みとなっているところです。
そして、糖業経営の関係ですが、経営を圧迫していたてん菜糖の在庫については12万トン程度まで一定程度減少してきている状況にあります。
以上、このような状況を踏まえて、その下段の部分で3段落目に記載しているとおり、引き続き、昨年決定した「てん菜方針」に沿って、関係者の御協力を頂きながら、交付対象数量等を見直すことなく、各取組事項に取り組んでいくことが必要ではないかということで整理しております。
続いて47ページ以降です。冒頭の挨拶の中でもありましたが、異性化糖の調整金に関して運用見直しを行うことを考えておりますので、そのことについて御説明させていただきます。
まず、甘味全体の需給です。全体として減少傾向にある中で、異性化糖の需要、上のグラフの緑の部分です。やや増加から横ばいということで推移していますが、下段の方の調整金については22年が最後で、23年以降は発生していない状況です。
なお、加糖調製品の関係です。需要が長期的に増加傾向で推移してきていたところですが、30年以降は調整金を徴収しております。この需要量については、先ほども申し上げたとおり、ここ数年は減少傾向に転じているところです。
次に、48ページです。異性化糖調整金の仕組みと運用見直しの概要を整理しております。
この異性化糖調整金については、砂糖の販売価格を異性化糖ベースへ換算した異性化糖標準価格、これと異性化糖の販売価格である平均供給価格、これを比較した上で調整金の単価が設定されるというものです。砂糖の価格の異性化糖ベースへの換算に当たっては、異性化糖の方が温かいとなかなか甘みを感じにくいですとか、液体で、なかなかハンドリングという点で難しい面があるのではないか、そういったこと等を踏まえ、今「砂糖より劣る」という評価をしているところです。
その結果、図の真ん中にあるとおり、異性化糖の平均供給価格と異性化糖標準価格の関係、平均供給価格の方が高くなっており調整金が発生していないという状況にありますが、今々の異性化糖の用途をよく見てみると、例えば、鍋つゆなどの調味料などでも使われるなど用途が拡大してきているという状況にあります。こういった状況を反映させ、この換算に用いる係数を見直すこととします。その結果、その異性化糖標準価格は上昇し、調整金の発生を見込んでおります。
なお、見直しの実施時期ですが、13年ぶりの発生となるため、私どもは異性化糖の安定供給というのも重要と考えており、この調整金について円滑に価格転嫁が行われていくということも当然重要な政策課題であるため、その周知期間等を考慮し、令和6年4月から行うということを考えております。
49ページについて、この異性化糖調整金が発生することによって、どういった影響・効果があるのかというものです。この異性化糖調整金は、具体的には「1次調整金」と言われるものです。これが発生しないと2次調整金も発生しないこととなります。2次調整金は、割当数量、これを超えて供給・販売される場合に適用されるものであり、異性化糖の需給調整機能を有するものとなっております。この度、異性化糖調整金が発生するということになると、この需給調整機能についても働くこととなります。
なお、輸入粗糖については、今1次調整金が恒常的に徴収されており、2次調整金による需給調整も機能しているため、異性化糖に係る需給調整が行われれば、砂糖の販売供給の方にも影響があり、制度の関係業界全体の健全な発展ということにも寄与するのではないかと考えております。
また、右側にグラフがございますが、この調整金が発生しない中にあっては、割当数量を超えて販売されるというのが、コロナ等の時期を除くと、ほぼ恒常的に行われてきていたところです。
以上です。
三輪部会長:それでは、ただいまの事務局からの御説明を踏まえて、委員の皆様に御意見をお伺いします。
それに先立ちまして、本日御欠席されておられる荒川委員から事前に御意見書を頂いておりますので、事務局より代読をお願い致します。
石田課長:それでは私の方から、お預かりした意見書を読み上げます。
日本スターチ・糖化工業会の荒川です。所用により令和5年度食料・農業・農村政策審議会甘味資源部会に出席できず申し訳ございません。失礼を承知で、文書により弊工業会の意見を申し述べさせていただきます。
まず、本日示された令和5砂糖年度の調整基準価格(案)及び令和5でん粉年度のでん粉調整基準価格(案)については、異存ございません。
しかしながら、特にでん粉調整基準価格につきましては、令和4でん粉年度において製品トン当たり17万5,760円だったところ、今回の算定案では同17万9,340円と、3,580円、率にして約2%上昇しています。昨年度につきましても、製品トン当たり9,790円引き上げられ、直近2年で1万3,370円、約8%の引上げとなっており、国産いもでん粉の製造コストの抜本的な抑制対策の検討が必要ではないかと考えます。
コスト上昇の主な要因につきましては、一つはサツマイモ基腐病対策の実施により苗代等が増加したこと、二つ目はでん粉工場の電力費等が上昇していることにあると理解しております。農林水産省におかれましては、でん粉原料用かんしょについては、サツマイモ基腐病に強く、かつ、多収性のある新品種「こないしん」について、でん粉原料用ばれいしょについては、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種について、一層の普及を図るなどにより農家の経費負担の軽減をお願いします。
また、でん粉工場の電力費等の上昇につきましては、工場側の努力だけではいかんともし難いところがあることは理解しておりますが、でん粉製造コストの増加に拍車をかけているのが、でん粉工場の操業率の大幅な低下であると考えられます。
本日の資料でも、令和4年産のかんしょでん粉工場の操業率は29%、ばれいしょでん粉工場の操業率は62%と非常に低い状況となっておりますので、近年の原料いもの供給量に見合った工場数への適正化に向け、再編の取組について一層のスピードアップを是非ともお願いいたします。
次に、本日の議題に挙がっております、糖価調整制度の持続的な運営を図るための取組について、意見を述べさせていただきます。
報告のあった異性化糖調整金につきましては、令和4砂糖年度の期末残高が563億円の赤字となることが見込まれ、糖価調整制度の安定運営に支障を来すことが危惧されることから、今般、農林水産省として、異性化糖調整金に係る糖価調整制度の運用を見直し、需給調整機能の実効性を高め、同制度の安定運営に寄与せしめることを目指すものと理解しています。
弊工業会といたしましては、異性化糖は、過去、用途の拡大はあったものの、砂糖と異性化糖は甘味の特性や取扱いの利便性に違いがあり、主な用途である飲料において既に砂糖との棲み分けが確立していること、また、近年、砂糖の需要減少が顕著な用途における異性化糖販売量が限定的であることを考慮すると、砂糖需要の減少理由を異性化糖との需給競合に帰することは無理があるのではないかと考えております。
そもそも、見直しの原因となりました砂糖勘定の赤字残高の増大と異性化糖業界の関連性は極めて限定的であることから、糖価調整制度の運用見直しを通じ、異性化糖業界が新たな負担を強いられること自体納得できるものではありませんが、糖価調整制度及び異性化糖に係る政策の健全性を確保するためには、事情やむを得ないことを理解し、協力させていただくとの結論に至っています。
見直し後の運用の実施に当たりましては、制度変更に関しては、異性化糖ユーザーが適切に認知し、異性化糖調整金の末端消費者への健全な転嫁が担保されることが極めて重要となることから、農林水産省の主催による、異性化糖ユーザーを対象とした説明会を開催いただき、丁寧な説明を実施いただくことにより理解を得ていただくことを重ねてお願いします。
また、農林水産省が見込む四半期毎の需要量の範囲内の販売であるにもかかわらず、異性化糖製造事業者間の一時的な販売量の移動により、異性化糖2次調整金の負担が発生するような事態になることを避けるため、異性化糖製造事業者各社に通知する一定数量については、特段のご配慮をお願いします。
最後になりますが、業界を取り巻く情勢は、新型コロナの影響により、令和2年度において異性化糖の販売量は前年度から1割減少しました。本年5月に新型コロナが5類に移行したことから、今年の夏は人手が回復することを期待しておりましたが、7月以降、現在も続いている記録的な猛暑により、水分の摂取がお茶などの無糖のものに一部移行していることもあり、異性化糖の販売量は昨年を下回って推移しており、需要の回復に至っておりません。しかしながら、気温が下がってくる秋を控え、今後は海外からの観光需要を含め、順調に人流が回復し、異性化糖需要の挽回につながっていくことを切に期待しております。
以上です。
三輪部会長:続いて、御出席いただいている委員の皆様から御意見を伺います。
会場の皆様は挙手、若しくは合図頂きますようお願いします。オンラインで御参加の委員の方々は、画面上の挙手ボタンを押していただければ、こちらの方から御指名をさせていただきます。
会場とオンラインで少し順番が入れ違いになるところもあるかと思いますが、御容赦ください。
なお、オンラインの方は、御指名させていただいた際に、カメラとマイクをオンにして御発言を頂き、終了後にオフにしていただきますようお願いします。
それでは、御意見のある方、よろしくお願いします。
それでは、森本委員、お願いします。
森本委員:諮問された令和5砂糖年度の砂糖調整基準価格について、15万3,200円/製品トンということで異存はございません。
また、「糖価調整制度の持続的な運営を図るための取組」について説明がありましたが、「てん菜の交付対象数量及び指標面積に関する検証」については、意見はございません。
一方、異性化糖調整金の運用見直しについては、事柄としては異存ございませんが、意見を述べさせていただきます。
異性化糖の負担の問題については、精糖工業会としては、糖価調整制度における「公平性・公正性」の担保を確保する上で最大の課題の一つとして、長年にわたって早急な是正を求めてまいりました。
私たち精製糖業は、取り扱う輸入糖が三十数年間で約170万トンから約100万トンまで減少する中で、企業の合併や工場の統廃合などの製造コスト低減に向けた努力は既に限界に達しており、昨今は資本系列の枠を超えた経営統合等を図るなど、抜本的な改革をせざるを得ない状況下、身を削る自助努力を続けているところです。
これに対して農水省が昨年末に「国内産糖と輸入糖の供給アンバランスの解消」に向け、てん菜糖の交付対象数量を段階的に削減することを決定されたことは大きな前進でありましたが、全てを解決するには程遠く、農畜産業振興機構、ALICの砂糖勘定の累積差損は2022SY末には500億円半ばに達することは確実であり、借入限度額800億円に迫るゆゆしき事態です。
この中で今回の運用見直しは精糖工業会が要請してきた、その他の残された課題である「輸入糖、異性化糖、加糖調製品の負担の公平性の確保」、「国内産糖生産者等への支援における国庫負担の拡充」の一つについて、農林水産省がその是正に向けて大きく一歩を踏み出したということで、大いに評価させていただきます。
ただ、本日の説明をお聞きした範囲では、異性化糖調整金の運用見直しがどれだけの効果があるのかが明確になっておりません。輸入糖が約100万トンで、異性化糖は砂糖換算で約80万トン、にもかかわらず、輸入糖は最近まで年間約500億円の調整金を負担しており、この2年間でも379億円、293億円の負担になっています。
過去30年間で砂糖の需要は、異性化糖への代替が進み、輸入糖と異性化糖の数量比率が、砂糖換算で170対80から100対80まで狭まっている中で、異性化糖の調整金が2010SYの第3四半期以降、12年間全く徴収されていない状況は異常と言わざるを得ません。
2018SY以降、調整金の徴収が始まった加糖調製品が、2021SYにおいて砂糖換算で約35万トン、調整金が84億円であることと比較してもバランスを逸していることは明白であり、我々精製糖業界からすれば許し難い状況です。
砂糖の需要量約170万トンのうち、70万トンはビートと国内甘しゃ糖は交付金を受け取っている側ゆえ、調整金の負担する側は、輸入砂糖約100万トンに対して異性化糖約80万トンと比較するべきと考えます。
精糖工業会としては、今後とも異性化糖に対して砂糖換算に見合う調整金の負担を求めるものです。
資料にありましたように、異性化糖ベースでの換算に当たって、異性化糖が砂糖より劣ることを前提にしておりますが、異性化糖業は、異性化糖の用途がタレ等で拡大しているのみならず、多様なでん粉の製品の製造により、砂糖との比較において競争力のある価格で提供できる業界の構造を有しており、考え方を根本的に転換する必要があると考えます。
今回の異性化糖調整金の運用見直しで、異性化糖に1次調整金が課されることになれば、一定の数量を上回る場合、生産禁止的な2次調整金が課せられることとなり、ようやく糖価調整法における重要な機能である「価格の調整」と「需給の調整」のうち、後者についても制度的に担保されることになります。
これまで異性化糖は12年間にわたって1次調整金が課されていないために2次調整金もかからず、需給調整が働いていない一方で、輸入糖は1次調整金の割当数量を超えれば、輸入禁止的な2次調整金が課せられ、実質的にはそれ以上の輸入はできないことから、一方的に削減せざるを得ない状況になっておりました。
精製糖業も異性化糖業も巨大な装置産業である中で、精製糖業のみが足かせをかけられて大きなハンディとなっていたことから、今回の見直しの効果については期待しているところです。
ただ、今回の見直しが所定の効果を上げるには、甘味全体の需給状況を踏まえて、適切な1次調整金の割当数量が設定されなければ意味をなしません。
言うまでもありませんが、農水省におかれては、過大な割当数量とならないような運用を求めます。
いずれにしても、異性化糖調整金の運用見直しが中途半端なものにとどまれば、砂糖業界は引き続き調整金負担において大きなハンディキャップを背負わされ、異性化糖への代替が更に進むことは確実です。
精製糖業界はバリューチェーンのど真ん中に位置する基幹産業として、約50年以上にわたり調整金負担を通じて、甘味資源作物の生産者や国内産糖業を支援する糖価調整制度を足下で支えてまいりました。
私どもは、日本の農業にも調整金の負担を通じて最も貢献してきたと自負しております。決してその使命と責任を放棄したいと主張しているわけではございません。今後も責任を果たしていくために、ダブルスタンダードのような行政の状態を是正し、対等な立場で共通のルールの下で競争できる環境を整えるよう要請いたします。
異性化糖業界は、これまで低い価格を武器に砂糖の需要を侵食してきました。そして、また現在のように、本来ならば価格転嫁を進めなければならない局面においても、異性化糖の存在が砂糖の価格転嫁の阻害要因になって砂糖業界全体に悪影響を与えており、スピード感を持った対応が求められるところです。
今回の異性化糖調整金の運用見直しがALICの砂糖勘定の赤字解消という観点でもどのくらいの効果を上げるのか。精製糖業界としては、膨れ上がったALICの累積赤字の拡大について、農水省がどのように食い止め、解決していく方針なのか、大いなる関心を持って注視しております。
精糖工業会は深刻な事態を招きかねないことを予期して、制度疲労が顕在化した糖価調整制度やその運用において、輸入糖のみに過度な負担を負わせている「不公平・不公正」を是正するよう、再三再四要求してまいりました。それに対し、農水省はこれまでに何もしてこなかったまでは言いませんが、実質的には何ら効果を上げるに至っておらず、結果としてこのような状態を放置してきたことは行政の重大な不作為と考えます。
農水省は、この2年間で矢継ぎ早に大きな改善策を打ち出してきておりますが、ALICの砂糖勘定を破綻することなく累積赤字を解消することは、所管官庁である農水省の責任です。
あり得ない話とは考えますが、消費者やユーザー、特約店の皆様の視点を無視し、更に輸入糖に調整金の負担を負わせることでこの問題を解決しようとすれば、砂糖の価格を更に上昇させることで、更に砂糖の消費が減少するという「負のスパイラル」を加速化させかねません。そもそも糖価調整制度は国策であり、鹿児島県、沖縄県のさとうきびや北海道のてん菜といった甘味資源作物は国家の重要品目とされる農産物で、食料安全保障、国家防衛、離島振興という観点から対応すべきであって、くれぐれも砂糖消費が減少し、縮小した精製糖企業の調整金へ負担を転嫁することのないよう求めます。
また、今回の価格の諮問内容については、農水省として以上のことを十分に認識していただいたものであることと推察します。
その他の重要な課題、国内産糖、生産者等への支援における国庫負担の拡充、高甘味度甘味料の問題などにつきましては、本年8月25日付けで精糖工業会として農林水産大臣宛てに要請書を提出しておりますので、今回は以上といたします。
最後になりますが、これまで何度となく同じ発言をさせていただいておりますが、砂糖をめぐる情勢は極めて厳しく、政府、生産者、国内産糖業、精製糖業、流通、そして異性化糖業界も含め、甘味に関わる関係者全体で現状を直視し、個別の利害を超えてコンセンサスと相互理解と献身、公平な負担の下、速やかに対策を講じることが不可欠です。農水省に対して糖価調整制度の維持及び安定的な運用の観点から、甘味全体で「公平性・公正性」を確保された負担を実現するよう責任ある対応を、重ねて要請します。
以上です。
三輪部会長:続いて、有田委員、お願いします。
有田委員:私どもは異性化糖の生産をやっている全日本糖化工業会ですが、先ほどのスターチ・糖化工業会が97%、私どもは3%というような生産比率です。
そうした中で異性化糖への調整金の一律課徴導入に対しては、私どもは反対しております。
その理由は、砂糖調整金勘定の赤字発生の根源を解消することが、まず第一であろうと考えるからです。異性化糖への砂糖調整金の一律課徴を行ったとしても、巨額の砂糖調整金の累積損失に対する寄与は僅かだろうと想定されます。まずは砂糖調整金勘定の赤字発生原因を精査し、赤字発生の根源を解消すべきと思っているところです。
現在までに砂糖勘定の赤字解消のため、支出側のてん菜の生産抑制が実施されている状況にあると承知しておりますが、一方で人口減少、少子高齢化等による砂糖需要の減少から輸入糖の減少により、砂糖調整金の主たる収入が減少しているわけです。現行法による砂糖需要の減少に比例する砂糖調整金収入源の減少構造は砂糖調整金の大きな赤字要因となっており、この赤字構造を根本的に改善することが必須と思料されます。
また、日本国内の砂糖製糖業の工場設備の稼働は、原料作物であるさとうきび及びてん菜の収穫時期のみにほぼ限定されている状況になっており、この国内製糖工業の極めて低い工場稼働率は、製糖工場経営の大きな赤字要因となっております。このため、経営合理性にかなった高効率の工場稼働率となるよう、国内の輸入糖精糖事業を含めた議論を深めるなど、赤字体質からの脱却に向けて抜本的な改善が必須と思料されます。
以上の理由から、異性化糖の一律課徴導入に対しては、赤字発生の根源を基本的に解消できるとは思いませんので反対しているところです。
それから、専業糖化企業と、スターチ・糖化一貫製造企業が製造する異性化糖のコスト差についてです。
現行の砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律においては、輸入でん粉の種類や輸入とうもろこしから製造されるコーンスターチについて、それらのでん粉種や乾粉、乳液の形態を問わず、でん粉平均輸入価格として、でん粉種等の加重平均により平均化された、一律のでん粉平均輸入価格によりでん粉調整金が課せられているわけであります。でん粉等輸入企業は、国内の原料でん粉いも生産農家の保護等のため、でん粉調整金を負担しておりますが、でん粉の売戻価格よりも原料でん粉の輸入価格が安価でも、高価であっても、一律のでん粉調整金の負担義務が生じる実態は、不公平だと言わざるを得ません。
この原料でん粉のコスト差は、異性化糖の製造においても、専業糖化企業にて構成される弊会企業が購入する乾粉ベースのでん粉と、一貫製造企業が購入するとうもろこしから製造されるコーンスターチにおいて、極めて大きいと思料されます。
専業糖化企業は、乾粉ベースのでん粉を購入し、それを乳液として異性化糖を製造しております。しかし、一貫製造企業は、とうもろこしを輸入し、自らが自社製造するコーンスターチを原料としていますが、多大な経費を必要とする乾粉工程を経ることなく、コーンスターチの分離工程後の乳液を原料としております。
このため、弊会が購入する乾粉ベースのでん粉と、一貫製造企業が利用する乳液ベースのコーンスターチでは、絶対的なコスト差が生じていると思料されます。
しかしながら、農林水産省が算定を行う、でん粉種等の加重平均により平均化された一律のでん粉平均輸入価格は、専業糖化企業が購入する乾粉ベースのでん粉価格とほぼ同等の価格であることから、でん粉調整金の負担に関し、弊会の専業糖化企業は一貫製造企業と比べて多大な不利益が生じていると思料されます。
異性化糖調整金は、でん粉種等の種類を問わない一律のでん粉平均輸入価格を用いた異性化糖平均供給価格により算定されます。しかし、そもそも弊会の専業糖化企業と一貫製造企業間での原料でん粉コスト差が大きいことから、異性化糖調整金の負担に関して、専業糖化企業と一貫製造企業が同額の異性化糖調整金を負担することは極めて不公平な状況にあると言わざるを得ません。
でん粉調整金が導入された平成19年の法改正以来、糖化業界では、専業糖化企業と一貫製造企業との間で長年の利益と不利益が蓄積されていると思料され、不利益が蓄積された弊会では、異性化糖製造業から撤退する事業者が発生するなど、糖化事業の存続が困難な極めて深刻な状況に至っております。
以上の状況から、専業糖化企業と一貫製造企業への調整金の一律課徴の導入に反対します。
次に、砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律の改正に関する要望をさせていただきます。
上述のとおり、現行法によるでん粉調整金の算定は、輸入でん粉の種類等を問わず、一律のでん粉平均輸入価格に基づき行われておりますが、でん粉の価格は、でん粉の種類や乾粉や乳液の形態により大幅な差異があるのが実態です。
本来の法律の趣旨である、輸入でん粉の価格に応じたでん粉調整金の負担を実現するため、輸入でん粉種及び乾粉、乳液の形態ごとのでん粉価格に基づいたでん粉調整金の算定が行われるよう、法律の改正を要望します。
異性化糖調整金についても、でん粉種及び乾粉、乳液の形態ごとに算定されるでん粉輸入価格を用いた、でん粉種及び乾粉、乳液の形態ごとに算定される異性化糖供給価格に基づき算定されるよう、法律の改正を要望します。
また、国内甘味資源作物生産者及び国内産糖業への永続的な支援に関する法律改正要望についてですが、現行法による砂糖の価格制度は、国内甘味資源作物生産者及び国内産糖業への支援を行うものとして、国民への透明性が欠く中で、異常とも思われる内外価格差による負担を、国民、一般消費者に強いているのが現状です。
上述のとおり、人口減少、少子高齢化等の砂糖需要減少傾向の実態を踏まえ、輸入糖による調整金が減少しても、支援機能が破綻することがないよう、長期的なビジョンに立ち、制度の透明性を確立し、国民が十分納得した上で国内甘味資源作物生産者及び国内産糖業への支援が継続して行えるよう、現行法の抜本的な改正を要望するものです。
以上です。
三輪部会長:続いて、小椋委員、お願いします。
小椋委員:北海道中央会の小椋です。よろしくお願いします。
日頃より、てん菜糖及び国内産糖に対する支援、またでん原ばれいしょ等に対する支援を頂いていることに、関係者の皆様にまずもってお礼を申し上げます。
先ほど説明があった調整基準価格に対する意見です。
砂糖及びでん粉の調整基準価格については、提案のとおり異論はございません。執り進めていただければと思います。
一方で、てん菜対策の検証で少しお話をさせていただきます。
てん菜の交付対象数量及び作付指標についての検証ですが、今後取組事項に執り進んでいくということに異論はございませんが、昨年、農水省より令和8年産のてん菜糖交付対象数量を55万トンとする提案がされたところです。
先ほど説明があったように、我々北海道生産者は、この提案を受け止めた中で令和5年度の5万1,080ヘクタールという作付面積、また他の作物への作物転換を実際に執り進めてさせていただきました。
私は十勝ですが、十勝においてもビートの作付減少が7%という、今までにない大きな作付変更を執り進めたところです。
こういう北海道全体でビートの作付減少、他の作物への転換を執り進めているわけですが、既に農水の皆さんも御存じかと思いますが、我々十勝では4品で作物を回しており、オホーツクにおいては3品で回しているわけであります。この輪作というものがいかに大切かということは皆さんそれぞれ御存じかと思いますが、病害虫あるいは品質・収量を確保するためには、安定的な輪作体系を持たなければ品質の確保、あるいは収量の確保もできていきません。そのためにはビートの作付、というのは大きな位置付けになっているところです。
したがって、一方的なこれ以上の大幅な作付減少というものは今後においては受け入れ難い状況になっております。
一方、調整金収支の改善ですが、今今の状況では改善には至らないのかなと思っているところです。
また、先ほど説明があった異性化糖調整金ですが、13年ぶりに改めて発動するという説明でありました。こちらも、先ほどお話ししたように、てん菜の作付が減少しておりますので、てん菜に対する調整金の運用というのは間違いなく減ってくると思われます。一方、輸入糖に係る財源収入、こちらも減ってくれば、調整金の中身は一向に変わらない状況かと思いますし、そこで異性化糖調整金という運用を考えられたのかと思いますが、いずれにしても、この調整金制度の収支が改善されなければ、一向に内容・中身は変わらない状況かと思いますので、農水の皆様におかれては、今一度調整金制度の内容、運用を十分に執り進めていただきたいと、改めて切にお願いするところです。
また、でん原ばれいしょについてです。
こちらも、先ほど説明がありましたが、我々は安定的なでん粉、でん原ばれいしょの生産に取り組んでいるところですが、作付をするためには、何といっても種ばれいしょの生産が重要です。これはでん原もそうですし、食用・加工においても同じです。種ばれいしょの生産というのは、一般のばれいしょと比べて、特に病気の関係が大きく依存するわけですし、収益性の改善もそうですが、種ばれいしょの生産、これには国、植防もそうですが、農水の対応、こちらがなくては、我々生産者だけでは種子ばれいしょの生産というものはできませんので、今後においてもでん原ばれいしょのみならず、食用・加工の種子ばれいしょの生産に農水省としても今まで以上のアドバイス、あるいは支援・対応を切にお願いするところです。
私からは以上です。よろしくお願します。
三輪部会長:続いて、上江洲委員、お願いします。
上江洲委員:日本分蜜糖工業会の上江洲です。
まず、本日の調整基準価格については異存ございません。
来る砂糖年度における沖縄県のさとうきび生産量は、面積の減少により昨年を下回る72万4,000トンと推定されておりますが、7月末から6月初めにかけて長時間滞留した台風6号の被害により70万トンを切るのではないかと懸念されているところです。
糖価調整制度についてですが、糖価調整制度は砂糖の内外価格差の調整、国内産糖を優先とする需給調整に加えて、離島におけるさとうきび農業及び糖業の維持・発展を図る役割を果たしております。本制度により、さとうきび産業は国境離島の島民の定住化に寄与し、外部からの侵入を防ぐ国防、安全保障機能の維持、海底資源や水産資源を確保するための排他的経済水域の設定など重要な役割を果たし、国益に貢献しております。
本制度は、砂糖消費量の減少や円安などによって調整金収支が悪化し、大変厳しい状況にあります。私どもは現行制度の枠組みを維持した上で、糖価調整金収支の改善が図れないかと考えています。
てん菜糖の生産調整が行われ、次は異性化糖の調整金運用の見直しが予定されております。調整金収支の改善と併せて、てん菜糖の在庫処理や異性化糖の安売り防止策など業界の体質強化が図られるものと理解しております。
私どもも砂糖の消費拡大に努め、これまで以上にさとうきび生産費、砂糖製造コストの削減に取り組む所存です。
さて、ここで沖縄の分蜜糖工場についての大きな問題について述べさせていただきます。
沖縄の分蜜糖工場は8社9工場ありますが、多くの工場が築60年を経過し、老朽化が著しく、頻繁に故障や修理が発生し、一刻も早い対応・対策が必要です。そこで問題となるのが人手不足に対する対応です。
総務省の調査によると、これまで増加を続けてきた沖縄県の人口が2022年10月1日の時点で日本復帰以来、初めて減少しました。15歳から64歳の労働人口は既に2012年から減少しており、今後も人口減少は続き、労働者の確保はますます厳しいものになっていきます。
一部の工場では内閣府の事業を活用して、宿舎施設の整備を行い、外国人を技能実習生や特定技能外国人として採用するなどして対応しております。しかしながら、我が国全体が人手不足であり、他の産業との競合が懸念されます。既に沖縄県の分蜜糖工場では資格を有する職員がホテルや他の職業に転職する事例が増えています。働き方改革による時間外労働の削減で収入の減少が予想される季節工の方々の募集がまた難しくなるのではないかと懸念しているところです。
したがって、老朽化対策を行うに当たっては、省人化・省力化が必要です。既に多くの工場で令和6年4月から働き方改革関連法における時間外労働の上限規制に備えて、農水省や内閣府の事業を活用して人員とコストの抑制に取り組んでいます。しかしながら、現在の工場内での施設設備の更新を行うには、旧建設基準法で建設されていることもあり、旧施設の取壊しを含めて、莫大な費用が掛かるにも関わらず、十分な対応ができておりません。
そこで、幾つかの工場では、地域の原料生産計画に基づいた規模の新工場建設に取り組んでおります。しかしながら、工場の建て替えには、平均でも数百億円の費用が必要とされ、産地生産基盤パワーアップ事業で6割の補助を頂いたとしても、一企業の力では残りの4割の資金調達のめどが立っておりません。沖縄県に支援要請を行い、関係市町村とも協議中です。
新工場の建設は安全操業の確保やランニングコストの削減などの面から、中長期的に生産性向上につながります。離島においては製糖工場の存否が離島社会の存亡に関わるため、何としても新工場の建設を実現しなければなりません。御理解、御支援のほどよろしくお願い申し上げます。
以上です。
三輪部会長:続いてオンラインで挙手を頂いている、私の方で確認させていただいた順番で、上國料委員、続いて田中委員の順番で御発言いただきます。
はじめに、上國料委員、お願いします。
上國料委員:JA鹿児島県中央会の上國料です。よろしくお願いします。日頃よりさとうきび、でん粉原料用かんしょに対する御支援を賜り、厚く御礼を申し上げます。
先ほど御説明いただいた令和5年度の砂糖・でん粉に係る調整基準価格については異存ございません。
さて、本県のさとうきび及びでん粉原料用かんしょの生産状況等について御報告させていただきます。
令和4年産のさとうきびについては、沖永良部島が干ばつの影響により、前年比85%と、約1万3,000トンの減少となりましたが、台風等の大きな気象災害もなく、おおむね順調に生育し、生産量は前年比98%の53万3,000トン、面積は前年比101%の9,566ヘクタールとなりました。
今年産については、収穫見込み面積が7月1日現在の調査で、昨年度より各地区で微増しており、合計で9,647ヘクタール、昨年に比べて81ヘクタールの増となっております。
また、生育状況はおおむね順調に生育していると思っておりますが、先月の8日、9日に襲来した台風6号により、種子島地方を中心に倒伏や葉の裂傷などの被害が発生しました。幸い折損は少ないことから、今後回復できる可能性は大きいと思っております。
また、塩害の心配もしておりましたが、台風後に降雨があったことから影響は少ないのではないかと思っております。
引き続き今後の生育状況を注視してまいりたいと考えております。
次に、でん粉原料用かんしょについてです。令和4年産は収穫面積が大幅に減少しました。令和3年産が4,110ヘクタールであったのに対し、2,490ヘクタールと、1,620ヘクタール減少したところです。基腐病の影響や焼酎用など他用途の引き合いが強かったことが主な要因と考えておりますが、その結果、生産量は令和3年産より2万100トン減少し、5万3,500トンと大変厳しい実績となりました。また、ここ数年、でん粉用としての原料が大幅に減少していることから、でん粉工場の経営も大変厳しい状況となっております。
令和4年産のサツマイモ基腐病対策については、県が中心となってプロジェクトチームを組み、関係者一丸となった対策により、一定の発生抑制の効果が得られましたが、発生前の単収には回復しておらず、防除作業等で農家への大きな負担が続いている状況です。
令和5年産のかんしょ全体の作付状況は前年と同程度の約1万ヘクタールを見込んでおります。前年度同様に栽培面積の減少や他用途との競合関係、基腐病の影響が続けば、でん粉原料用かんしょの確保が危惧されるところです。
令和5年産の基腐病の状況について、昨年同様、現状では基腐病の発生を抑え込めている状況です。しかしながら、8月上旬に襲来した台風6号の影響や今後も台風・長雨などの気象条件によっては被害の拡大も懸念されるため、県が設置したプロジェクトチームを中心に、引き続き圃場の状況を注視しながら、持ち込まない、増やさない、残さない対策を進めていく必要があると考えております。
最後になりますが、さとうきび、でん粉原料用かんしょとも、肥料や燃料等の生産資材価格が高止まりし、経営が圧迫されている厳しい経営環境です。また、農家は高齢化が進む中で国の生産振興対策等の支援を頂きながら、生産量拡大に向けて懸命に営農に励んでいます。国におかれては、食料安全保障の強化の観点からも、農家が営農をやめることなく、意欲を持って生産に取り組めるよう、また新規就農者がやってみたくなるような支援対策による基盤強化のための環境整備を含めて、引き続き御指導、御支援を賜るようお願い申し上げ、私の方の御報告とさせていただきます。
以上です。
三輪部会長:続いて田中委員、あとオンラインでお二方に挙手いただいていると思いますので、随時こちらの方から御指名させていただきます。少々お待ちください。
それでは、田中委員、お願いします。
田中委員:日本甘蔗糖工業会の田中です。先ほど農林水産省から御説明があった内容については、異存はございません。
発言の機会を頂きましたので、鹿児島県南西諸島における、さとうきび産業の課題について少しお話をさせていただきます。
国内甘味資源を支える糖価調整制度の累積赤字が563億円を超えるに至り、危機感を抱いている中、糖価調整制度の持続的な運営を図るための諸施策について伺い、心強く感じるとともに、さとうきび産業においても、産業全体の効率化を推し進めていかなければならないと強く感じております。
鹿児島県のさとうきび生産農家は、高齢化や後継者不足が続き、農家戸数は年々減少し、ますます担い手不足が深刻になっております。そのため、少ない労働力で安定したさとうきび生産を実現できるようにすることは喫緊の課題となっています。労働力を必要とする採苗と植付けの機械化も含めたさとうきび栽培の効率化を推進していかなければなりません。
特に収穫面積の7割以上を占める株出し圃場の単収向上が必要ではありますが、収穫時期は春植えなど多くの作業が重なるため、株出し管理が行き届いていないのが現状です。この課題を克服するためには、農作業の受委託を管理し、圃場管理作業の分担化を促し、地区・エリアでの協同作業化を目指し、地域全体での生産性を向上させる仕組みが必要と考えています。
種子島では作業量が重なる春植えから夏・秋植えへのシフトが進んでいると聞いておりますので、年間を通した新植管理の検討も今後必要と考えます。
また、つい先日、島で聞いた話ですが、さとうきび栽培を引退しようとした生産農家が大規模農家に圃場の委託をお願いしたところ、その大規模農家が「小さな圃場ではこれ以上引き受けることができない」と断ったということです。その理由が、管理している圃場に飛び地が多く、小さな圃場では管理効率が悪く難しいからとのことです。
もし、このような事案が多くなりますと、放棄地が拡大していき、さとうきび収穫量の減少を招く大きな問題です。そのためには、大規模農家や法人化農家、農協が管理する圃場の飛び地を解消することであり、圃場の集積・集約を促し、エリアでの農家の大規模化を推し進め、農作業の効率化を目指す必要があります。現在、地域計画の策定が進められていると伺っておりますので、協力していきたいと考えています。
これらさとうきびの収穫量に関わる課題は、ある程度の原料であるさとうきび量が維持できなければ運営が成り立たなくなるため、我々製糖会社にとっても重要案件であり、さとうきび産業の一員として積極的に貢献していきたいと考えております。
一方、製糖会社の製造コストの削減は、助成事業を活用した製糖工程の自動化や生産効率の向上に向けた投資を行いながら、継続して進めているところですが、設備の老朽化更新も含めた投資がコストアップ要因となっています。
また、生産年齢人口の絶対数の減少並びに自衛隊基地建設など大規模工事が発生している島や世界自然遺産登録に伴い、観光関連の事業が拡大している島では、人材の奪い合いの状況となっており、製造コストのアップ要因となっています。
このような状況ではありますが、安定した操業と歩留りを向上させることで製造コストの削減に努めてまいります。
さとうきびの生産性向上に向けた取組の中で御紹介のあった新品種「はるのおうぎ」ですが、種子島で植付けを開始し、本年度本格的に収穫をしています。茎数が多い品種ですので、台風に対して倒伏しにくく、単収も良好であり、収穫量の向上と農家収入の向上が期待できます。
一方で、さび病には弱い様子であり、観察が必要でもあります。
また、既存品種に比べ、収穫後の劣化が大きく、新鮮原料の搬入が求められます。
工場においては、繊維質が多く、硬いきびですので、工程管理に工夫が必要であり、バガス発生量が多いところもあり、課題ではありますが、対応できるものと考えています。
今後は、ほかの島での特性を調査しているところです。
働き方改革関連法案に伴う残業時間80時間以上規制については、7工場のうち5工場は既に3交代制を導入しており、2交代制を維持している2工場については原料処理量も少ないこともあり、操業を中断する期間を適宜設けて対応していくことで、目途をつけているところです。
最後に、鹿児島県の離島は沖縄県とともに地政学的に重要な地域として位置付けられています。また、さとうきび生産は食料自給、すなわち食料安全保障にも少なからず貢献しているものと考えております。
私ども製糖会社は離島の経済を支え、食料自給に貢献し、国土を守るさとうきび産業の運命共同体の一員として自負を持って業務に取り組んでいます。さとうきび栽培から始まる「さとうきびの運命共同体」の一層の効率化を地域の皆様とともに推進してまいる所存ですので、島ごとに置かれている状況や優先順位を考慮していただき、きめ細かな御支援を引き続き継続してお願いします。
私の方からは以上です。
三輪部会長:続いて、嵩原委員、お願いします。
嵩原委員:JA沖縄中央会の嵩原です。
まず、日頃から沖縄さとうきびの生産に関して様々な御支援を賜り、大変感謝を申し上げます。
先ほど御説明のあった調整基準価格については、私どもとしては異論ございません。そのとおり進めていただければと思います。
また、糖価調整制度の運用に関して、昨年来、北海道のてん菜の生産調整、そして今回は異性化糖の調整金の運用の見直しということで、いろいろ御提案があることに対して、委員の皆さんからも様々な御意見がございますが、我々沖縄のさとうきび生産を担う者としては、この糖価調整制度がある意味生産を支えていただくための生命線でもありますので、今回の運用の見直しについても前向きの御検討、御理解を是非お願いします。
この安定運用の下で沖縄の生産は支えられておりますので、そういうことについても関係者の皆さんの協力に感謝を申し上げます。
それから、今回御説明のあったさとうきび生産の状況の内容に関連して、若干気になる点がありますので、少し意見を申し上げさせていただきます。
まず、さとうきびの生産コストの御説明があり、令和4年度は前年度を下回るという統計上の数字が出ておりましたが、我々原料を作る側として、何よりも現下の資源、それから資材のコスト上昇の中において物財費は確実に上昇しているわけです。労働時間の短縮という効果でコストが下がっているという御説明でありましたが、実際支払いが生じるコストについて負担が高まっているということもあり、生産者の実感として、まず所得が圧迫をされているということが先に来ますので、なかなかこのコスト引下げの結果というものが理解し難い、理解するとしても納得しづらいというところがあります。
今沖縄の生産者の状況を見ると、先ほど鹿児島の方からの御説明にもありましたが、高齢の農家の割合というのが依然として高くなっております。生産の規模がそれほど大きくないという状況の中で、今のようなコストが高い状態の中では、生産を拡大しようという意欲になかなか結び付かないだけではなく、これからさとうきび生産を始めようとする若い担い手の参入にもつながらないというところで強く懸念されるところです。かえって離農が進んでしまうのではないかという懸念もありますので、現状の生産の状況に照らし合わせて、依然としてコスト上昇のもとで何とか生産を持続させようと努力しているというところも御理解をお願いしたいと思っております。
加えて、今年はさとうきびの生産面に関しては地域によっては干ばつがひどく、なかなか雨が降らない状況です。南北大東においては40年ぶりの干ばつと言われているほど、非常に水不足の状況にあえいでいるところです。加えて台風の被害も、8月初旬の台風6号で非常に大きい被害もあったわけですが、今期、まだこれから台風が来るという状況の中で、重ねて被害を被る懸念もありますので、そういう非常に厳しい状況の中で生産を続けているというところについては、引き続き御理解をお願いしたいと思います。
また、併せて、地政学的な要因を背景として、沖縄南西諸島の方面については、現在、防衛力の強化ということで様々な動きが進んでいるわけですが、農業の生産を通じて、地域社会、定住社会を守っている我々の立場からすると、当然国としては防衛力の強化という側面は避けられないかもしれませんが、農業の生産をそういう環境下で続けていくということに関しては、若い担い手の育成、あるいは高齢農家の島からの移住、そういうところに作用するのではないかということで、生産基盤が縮小していくのではないかというところで、少なからず懸念を抱いているところでもあります。
さとうきびの生産そのものが国策で支えられているという一面もあるわけですが、その重要性という意味においては、地域経済を守るという役割というのもますます高まっていると認識しておりますので、何とかその現状についても御理解を頂いた上で、制度・政策的な御支援と、重ねて食料安全保障の観点からも、さとうきび生産の持続性が確保されるように、政策的な御支援をお願いしたいと思っております。
最初に申し上げたとおり、糖価調整制度の安定運用というのがその背景にしっかりと守られているということも前提でありますので、その件に関しても、関係者の皆様の御理解、御協力をお願い申し上げて、私どもの意見といたします。よろしくお願いします。
三輪部会長:続いて、里井委員、お願いします。
里井委員:里井です。日本飲食団体連合会理事とフードジャーナリストをしています。よろしくお願い申し上げます。
まず最初に、令和5年に係る砂糖調整基準価格に関しては、異議はありません。その旨、よろしくお願いします。
今回は、事前説明を受けながら、自分なりに感じたことを幾つか申し上げさせていただきます。
非常にすばらしいと思った点は、未来を見据えながら様々な取組をされているという点も非常に把握できました。例えば、持続可能な航空燃料、SAFの導入促進に向けた取組ですとか、トラックドライバーの産地間の連携をされているなど、今は石油やいろいろなものの価格が上がっていることも踏まえて、砂糖の生産だけにとどまらない問題というのが広がっているのだろうと思います。
そんな中、未来を見据えながらも、広い取組姿勢というものが感じられましたので、事前説明を受けていて、非常によかったなと思っている点です。
あとは、その状況でいろいろな施策を考えていただく中で、具体的にどのような連携が取れるか、そういう施策と同時に、具体的にこのようになっているという、小まめな振り返りというのか、情報共有というのを引き続き頂けたらと思っています。
また、一番の問題にあるのは、今後の生産者さんが担う、個人的には若い方にも魅力ある農業、生産場であってほしいと非常に思っています。例えば、スマート農業に関する支援なども非常に頂けている様子がうかがえ、今後の労働者の方々にも明るい未来が見えるような施策というのを引き続きお願い申し上げると同時に、こちらも同様に、その施策が現場の方と意見交換されながらの振り返りで小まめに情報を共有していただけたら、私なども、そこからも発信などもしやすいのかなと思っています。
もう一つが、私も積極的に参加させていただいている「ありが糖運動」です。正にありがとうで、一般企業様からも「応援させていただきたい」ですとか、「連携を取りたい」というお声を直接頂いたり、あと事務局の方にも直接御連絡があったりなど、砂糖というものに関しての興味が徐々に広がりつつあるのかなという気もちょっとしています。まだまだなのですが。今後も明るく情報発信しながら、若い方々含めて、未来ある取組につながっていければと思っています。
いずれにしても、消費者、国、皆さん専門家の方々の連携が取れていないと、うまくいくこともなかなか進まないのだろうと非常に思っていますので、小まめに連絡を取り合い、情報共有もし合いながらの連携を取っていければと思っています。
事前説明でも非常によかった点も多かったので、その辺りを今回の意見とさせていただきます。
以上です。引き続きよろしくお願いします。
三輪部会長:続いて、同じくオンラインで御参加の宮島委員お願いします。
宮島委員:日本テレビの宮島です。よろしくお願いします。
まず一番最初のテーマである調整金については、私も皆さんと同様、異存はありません。賛成します。
そして、去年から調整金の制度の問題や今の危機についていろいろ議論はあると思いますが、そんな中で産地の方々が様々な努力をされているということは受け止めました。転作にしても、工場の生産性、あるいは流通の努力、そういったことに手を付けられているということで、「身を切る努力」ともおっしゃっておりましたが、同じような共通の危機感の中ですごく努力されているということを理解しました。
砂糖というものを考えたときに、一般の人がどう思っているか。
まずスーパーに行って、砂糖がちょっと高いから買わないというものではないかなと思います。だから、値段が需要にどのぐらい影響するかというところは若干微妙だと思いますが、逆にそのぐらい意識されないから、砂糖そのものへの関心は、例えば米とかに比べて高くなりにくいものかと思います。更に言うと、私たちからしても米のように、さあ、食べましょう運動をするかというと、健康との関係からも、砂糖の消費を物すごく増やしましょうという運動もしにくいところがあって、今の状況の様々な打開策が非常に難しい状況にあるなと思っています。
そんな中でも人口減とか円安という日本全体の共通のテーマの中で、消費者に砂糖の今の課題を知っていただくことも非常に重要だと思っていますので、ここは関係者の方々の最大の努力を引き続き示していくこと、そして制度の公平性を保っていくということは非常に重要なのではないかと思います。
そんな中では、どの業界もそうなのですが、自分たちの業界とほかの業界の動きを比べることも大事ではないかと思っています。つまり、人口とか円安は今共通の課題であり、みんな苦しい。もっと言うと、日本全体苦しいなと、様々な業界に接する私は思うのですが、そんな苦しい中でどういった打開策をとるかを、一歩でも二歩でも先取りしてやろうというところは国民の理解が得やすいのではないかと思います。具体的には、農業全体では─まあ、日本全体もそうですが、デジタル化、デジタルを生かすというところはまだまだ後れているのではないかと思いますし、労働条件も良くするということで努力すれば人を引っ張ってこれるというレベルを超えるぐらいの人口減が考えられる中で、いろいろな意味での制度設計や労働環境の転換というものが必要なのではないかと思います。
生産性向上は非常に厳しいテーマではありますが、そんな中で一歩でも二歩でもほかの業界に先んじる新しいアイデアを打つことで、できるものもあるのではないかと思います。今本当にぎりぎりの努力をされていると私も承知していますが、更に考えられることがないか、産地の方々の、普通の人たちとの危機感を共有しながら努力をしていただければと思います。
現状で、今の制度は、まずは維持できることを考えるということが必要だと思っています。
以上です。
三輪部会長:では、惠本委員、中宮委員の順番でお願いします。
惠本委員:日本ビート糖業協会の惠本です。農林水産省を始め、関係者の皆様には日頃より、てん菜及びてん菜糖に対し、格別な御理解と御支援を賜っていることに厚く御礼申し上げます。
砂糖調整基準価格及び糖価調整制度の維持・持続的な運営を図るための取組については、異存はありません。
さて、当協会としては、危機的状況にある糖価調整制度維持のため、昨年12月の甘味資源部会で示された「持続的なてん菜生産に向けた今後の対応」に則り取り組んでいるところですが、本年の面積の減少幅、この4,000ヘクタールというのは製糖工場1工場分に相当する面積であり、工場操業の低下など、糖業経営への深刻な影響を危惧しています。
また、本年の作況、生育状況ですが、前半は非常に順調だったのですが、ここのところ、皆さん御存じのように非常に高温で局所的な雨ということで、いろいろな病気が出るのではないかと危惧しているところです。
また、この10月から昨年1月で北糖の本別製糖所が生産をやめたということで、その部分を北糖の北見製糖所と日甜の芽室製糖所、これに搬入して砂糖を作るのですが、これに万難を排すと、生産者の方に御迷惑かけないということで、今一生懸命取り組んでいます。
先ほど石田課長の方からいろんなお話があり、砂糖の在庫についてもいろいろな制度の御支援もあったり、人流回復による経済活動の回復とか原産地表示、そういったものもあって回復しているということで、これについても皆さんの御支援に感謝します。
てん菜は北海道農業の輪作に欠かすことができない基幹作物であり、製糖工場は地域経済の維持・発展に重要な役割を果たしているということで、製糖、てん菜糖業をいかに持続していくかということは、やはりコストを下げるということ。これは一つには糖業のコストを下げるということと、もう一つは生産者のコスト低下、また労力を低下させるということが一番重要なことだと考えています。
そういう意味では、先ほどもありましたが新品種、これは特定の除草剤、これに耐性を持っているものであり、これも従来、複数回の除草剤散布、また手取り、人間がこうやって引き抜くのですが、そういったことを省略することができるという意味では、スマート農法ではないかと思っています。また、いろいろな病気が出てきていますので、今後はそういったものに適応した品種、そういったものを作っていくということも重要だと考えています。
また、てん菜の可能性、これを広げるために、今SAF、持続可能な航空機燃料、これの研究もやっています。それ以外にもいろいろなものに取り組んでいきたいと考えています。
また、ビート糖業協会としては、食育授業、小学校への出前授業、そういったもので砂糖のことを知ってもらうとか、今年の8月には久しぶりに新千歳空港で「北海道ビート糖フェア」を開催し、てん菜、てん菜糖、またお砂糖全般、これについて正しい知識と情報を道内外の皆さんに紹介して、より多くの人から好評を頂きました。また、来年もやっていきたいと思っています。一番受けたのは綿菓子でした。子どもはいろいろ非常に喜んでいました。
ということで、てん菜糖業は非常に厳しい状況ですが、持続可能なてん菜糖業、北海道の農業を発展させていくということに、中央会さんとも一緒に取り組んでいきたいと思っていますので、今後とも御支援、御指導を賜るようお願い申し上げます。
以上です。
三輪部会長:それでは、続いて中宮委員お願いします。
中宮委員:金沢の和菓子屋・森八の中宮です。本日は感謝申し上げます。
砂糖・でん粉の調整基準価格については、異論はありません。
私が今回特に感じたところは、輸入粗糖が減ったり、円安の影響があったり等で糖価調整金の入ってくるものが減っているというお話がありました。その中で国産砂糖の生産をどうやって守っていくかというところの議論に、より力を入れなければいけないなということを感じました。
近頃は、海外からずっと安定的に食料が入ってくるとは限らない時代になってきました。このコロナ禍や海外情勢によって、今まで海外の砂糖を使っていたというチョコレートや洋菓子屋の業者さんともお話をすると、品薄だったり、リードタイムの問題もあり、国産砂糖に切り替えたという話も周りでは聞いています。
近い未来に国産砂糖の需要が増えた場合、調整金がなく、国産砂糖の生産を守っていくことができなくなるのではないかなということを私は近年感じています。
国産砂糖の生産コストを輸入品の調整金で全て賄うということが難しくなってきているのが現状なのではないかというところを問題に感じています。
調整金を増やす、国費で賄うなど、議論もたくさん出ると思いますが、それ以外に策はないのかというところの議論をもう少し力を入れていけないかと感じています。
私もだが、一般の製造販売の会社だと、人件費、材料費、光熱費などをかけて製造したものを販売する、そしてその利益で会社を維持して次の製造に回していく、そして運営していくというものが一般的かと思いますが、このコストが上がっているというのは一般企業でも全く同じことが起こっています。それが回らなくなってきたというところは、人件費だったり、光熱費、機械の設備費など、今皆さん見直しをしているところかと思っています。
一般企業の製造しているものと国の策で守られている砂糖・でん粉などとは全く同じとは思いませんが、余りにも調整金、国費に頼っていては、国産の砂糖・でん粉が破綻してしまうのではないかというところを心配しています。砂糖・でん粉の生産・製造に関わっていない一般の人からどれだけ理解が得られるかというところが、調整金制度を維持していく上で大変重要な点になっていると思いますので、多くの方から理解を得られる使い方をできるように、そこを議論の中心に持っていけたらと思っています。
以上です。
三輪部会長:オンラインで御参加いただいている松谷委員、もし御発言があったら頂けますか。特になければ、その旨を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
松谷委員:本日お示しいただいた令和5砂糖年度の砂糖調整基準価格(案)及び令和5でん粉年度のでん粉調整基準価格(案)については、いずれも異存はないので、よろしくお願いします。
以上です。
三輪部会長:時間が過ぎているところ恐縮ですが、最後に私も委員の立場で一言だけ申し上げたいと思います。
まず私も調整基準価格(案)については、異存はありません。また、砂糖勘定の破綻を防ぐために、今回、てん菜の作付を減らすというところに関しては、北海道の方々に御協力いただいたことを、私の方からも改めて感謝申し上げます。
今すぐ、短期という形ではないと思いますが、てん菜の作付量を減らしたことによって、先ほど複数の委員からも御指摘を頂いておりましたが、例えば地元の輪作体系にどういう影響があるのか。それは生物学的な影響もそうですし、あともう一つは経営の収支に与える影響、そちらを定期的にモニタリングするということが、てん菜を減らしていただいた御協力に対して、それをしっかりと見ていくという必要なアクションかと思いますので、是非御検討を頂きたいと思います。
もう一つは、今中宮委員も御指摘されましたが、まずは今の制度をしっかり維持していくというところで、今回適切な手をどんどん打っていっていると思いますが、ここから先の未来を考えたときに、今の制度がずっとそのまま続くとは限らないと思います。その中でいくと、逆に、今の制度が破綻していないときだからこそ、未来志向の新しい話というのも並行する形でできるかと思います。これは早急に、急ぎ拙速にやるものではなくて、長い時間をかけてやるべきものかと思います。そういうようなことを事務局の方でも随時御検討いただければと思います。
今国際情勢が大きく変わってきています、日本の経済状況が必ずしも相対的に優位な状況ではない、買い負けも起きる、海外の需要が伸びている中で品薄なものも出てきているという状況を考えると、安いものが安定的に入ってくるという前提条件、調整金であったり、例えば小麦のマークアップとかもそうだと思いますが、作っている制度がこれから数十年というスパンで堪え得るものなのかというところについては、やはりリスクを含んでいるところかと思います。
今後、国際情勢であったり、経済状況、農産物の需給状況がどういう形で変わっていくかというのは当然未知数ではありますが、より厳しい方向に振れた場合に備えての議論というのは必要だと思います。
前回のてん菜の作付面積を減らすときにも、一部のマスコミの方でも御指摘されていましたが、自給率を上げよう上げようというときに特定の品目を減らすということはどうなんだという御意見を頂いたと思います。今は安定的にてん菜の生産、若しくはさとうきびの生産をするために制度をしっかりと維持するということが最大のプライオリティだと私も理解していますので、適切な手を打ったと思っていますが、そのことを10年後も続けるのが適切かというと、恐らく違うような議論も出てくるかと思います。
今日の議論とは少し外れたところかと思いますが、こういう機会でないと、向こう10年、20年見ようということはなかなか申し上げにくいところだったので、少し差し出がましいところではありますが、御発言を申し上げました。
それでは、各委員からの御意見を頂いたところです。時間が超過しているところで恐縮ですが、事務局から各委員の御意見に対して特段、回答であったり御発言等がありましたらお願いできればと思います。
石田課長:様々な御意見を頂戴したことを、まず御礼申し上げます。
個別に何点か申し上げたいと思っています。
まず、異性化糖の調整金の関係です。
私が読み上げさせていただいた、荒川委員からは、「やむを得ない」ということで事情をご理解頂いて、「協力する」というコメントを頂きながら、ただ価格転嫁は課題で、説明会等を行う必要があるという御指摘を頂いたところです。
また、森本委員からは、競争条件を整備するという観点から必要だということの御指摘を頂きました。
有田委員から、また別の観点も含めて、厳しい、反対だという御指摘も頂きました。
これについては我々、この制度を担当する者として、法律の規定に沿って適切に運用していくということが何よりも大事だと思っています。この異性化糖の調整金に係る運用については、砂糖と異性化糖の性状、用途、価格等、そういった差を踏まえて換算していくということでありますので、それに沿って適切にやっていきたいと思っています。
ただ、その上で有田委員が御反対されているところの要因の一つでもあると思いますが、調整金負担によって、これが異性化糖の供給に影響を及ぼすことがあってはならないと我々も思っており、円滑な、あるいは適切な価格転嫁ということに向けての説明会等々、しっかりやりたいと思っています。
あと森本委員からは、制度の課題、他の委員の皆様からも制度の維持が重要であるということ、これは皆様の共通認識なのかなと思いながらも、併せて危機的な状況ということ、これも共通認識なのだろうと思っています。これはシンプルに入りか出かしかないものですが、てん菜の関係、あるいは異性化糖の関係について取組を進めていますが、これにかかわらず、取り得る対応というのを引き続き検討を進めてまいりたいと考えており、この点、制度関係者の皆様に御理解、御協力を賜ることがあろうかと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
また、有田委員から、この場でシンプルにお答えするのがなかなか難しいような様々な御提案、御提起を頂きました。これは、また今後引き続き意見交換する中で、またいろいろとお知恵を頂きながらと考えていますので、よろしくお願いします。
それと、個別の意見になります。
森本委員から、異性化糖の関係で需給見通しを適切にというお話がありました。これは我々も関係者から広く意見を聞いた上で適切に需給見通しを定めて運用していきたいと考えています。
一方で数量の関係について、荒川委員の方からは、物流の関係だと思いますが、企業ごとの供給量に結構変動が起きるだろうと想定されていらっしゃり、年間の供給量、あるいは四半期ごとの供給量の中で、事業者間での移動というものについて配慮をという意見を頂戴しましたので、その点、状況をよくお伺いした上で、どのような対応ができるかというのを考えたいと思っています。これは全体の量を増やすとかではなく、全体の量の中でどう調整するかというお話でもありますので、異性化糖の安定供給を図るという観点からの必要性が、それなりに認められるものかと思っており、この点、またよく状況を踏まえて、何ができるか考えたいと思っています。
それと、小椋委員の方から北海道の状況等、御指摘をいろいろ頂戴しました。三輪部会長からもお話がありましたが、輪作というのは極めて重要であることは我々も十分認識しているところです。
一方で、需要のある作物の生産というところ、これもまた重要であり、これをどうバランスを取っていくのかということなのだろうと思っています。
今てん菜から転換を進めていただいているのは、例えば加工用ばれいしょです。こちらは、皆様、ポテトチップスの裏側を見ると分かりますが、従前は「国産」あるいは「北海道産」と書かれているものばかりでしたが、今は「米国産」と書かれているものもちらちら見かけるようになっている状況にあります。一方でメーカーは、やはり国産を志向しているところがありますので、ここはやはり需要にしっかり応えていくということ、これも安全保障という観点も含めて重要かと思っています。
輪作ということと需要という点、両方併せながら対応を検討していく必要があろうかと思っています。そのときに農業者の方でいろいろと追加的な御負担、投資等々、生じる場合があると思っています。今もその点について補正予算等での御支援を用意させていただいていますが、また今後の取組に向けて必要な支援については引き続き考えてまいりたいと思っています。
種ばれいしょの関係においても、私ども、増産に向けて大変重要であるということを認識した上で、植物防疫課も含めて、よく産地の皆様と意見交換、どのような対応ができるかを検討してまいります。
たくさんご意見を頂きましたが、まず生産者団体の皆様からのご意見についてです。
上國料委員から、きびとかんしょの鹿児島における生産状況の話、あるいは資材費の高騰の状況とか、基腐の状況についても御報告を頂き、感謝いたします。
資材の関係についてですが、これはさとうきびだけではなく、ほかの品目にも共通する課題です。今私どもの方で、資材費が高騰している部分に着目して、肥料ではありますが、高騰分の7割を支援するという施策を進めていますので、こういった施策の現場での活用についても、しっかり対応してまいりたいと考えています。
また、嵩原委員からも資材の高騰のお話がありましたので、同様な対応を進めてまいりたいと思っています。台風被害についても御指摘を頂きましたが、こちらはセーフティネットの基金を用意していますので、こちらを適切に発動して、台風の被害をできるだけ抑えていくということ、これを進めてまいりたいと考えています。
また、各糖業者団体の皆様からも御指摘を頂戴しました。
上江洲委員からは、いろいろな沖縄の糖業者の皆様の取組について、あるいは生産状況について御意見を頂戴しました。
中でも新工場建設に関していろいろと検討を進められているというお話がありました。10分の6の支援で、残りの手当てが難しいということがありましたが、10分の6は最高水準の補助率なので、そこを更にというのはなかなか難しい状況にはあります。では残りをどうするのかといったところ、沖縄県も含めて、地域の関係者の皆様の話合いというものを、我々も入って、それが進むように助言等々をしてまいりたいと思っています。まだ計画が具体化していない部分もありますので、計画策定に向けた助言等もしっかり行ってまいりたいと考えています。
また、田中委員から地域計画の関係、あるいは新品種の関係、様々な現場の状況について御指摘を頂戴しました。特に「はるのおうぎ」の関係です。やはり1品種に特化するということ、これはこれで産地の脆弱性を招くと思っていますので、複数品種を組み合わせて最適な形を志向していくということが必要なのだろうということを改めて感じました。感謝申し上げます。
また、惠本委員から北海道における、生産者団体とも連携した取組について情報等をいろいろ頂きました。本別の終了があっても、しっかりてん菜が処理される体制を構築いただいているということでした。私どももその際に必要な設備の投資等々については支援、いろいろ活用いただいたところですが、今後もコスト低減等の取組、効率的な生産体制の構築、そういったことに向けて必要な対応等があれば、また様々な御指摘を頂戴しながら施策の具体化を図ってまいりたいと考えていますので、よろしくお願いします。
宮島委員から消費拡大について身を切る努力もしながら自ら取り組む必要があるということを指摘いただきました。これは農水省もその一員として、業界の皆様とともに取り組んでまいりたいと思っているところです。
また、DXも含めた新たなアイデアをというお話がありました。おっしゃるとおりです。地域作物であるがゆえに、スマート農業等々については、ほかの品目について後れている面もありますので、他作物における新たな技術、あるいは他産業における新たな技術、こういったものについても製糖業分野も含めて取り組めないかということは、常にアンテナを高く張ってまいりたいと考えています。
そして、里井委員から、砂糖生産、製造業だけでなく、広い姿勢で連携をというお話がありました。おっしゃるとおりで、物流の関係などは、結構他作物、他品目と共通するものでもありますので、そういった点でもいろいろと他産業分野の取組も参考にしながら、必要な連携もしながら取り組むということで努力してまいりたいと考えています。
また、スマート農業の関係です。現場でしっかり情報共有をというお話がありました。実証するときには研究機関や行政機関等だけでなく、必ず農業者の方に入っていただいて、意見を聞きながら、評価を頂きながら取組を進めているところです。こういう形で現場の方々、農業者の方々とともに実証を進めるということ、これは引き続き留意してまいりたいと思っています。
また、「ありが糖運動」について、拡がりつつあるということで御評価いただいたこと、お礼を申し上げます。また、取組に当たっていろいろ御助言頂いていることも改めてお礼を申し上げますが、若い方向けということが重要だと思っています。我が課にも、いわゆるZ世代の職員がいて、若者のアイデア、そういったものを活かしながら、この運動を更に発展させてまいりたいと考えています。
また、中宮委員からも、この制度の根幹を正に御指摘いただいたと思っています。制度の維持、あるいはこれに当たって何よりも大事なのは、負担の更に先にある消費者なり納税者の方々の理解だと思っています。この点、我々この場も公開でやっていますが、様々な場で私ども国、あるいは関係業界それぞれにおいて、この状況等、あるいはそれぞれが取り組んでいる努力について積極的に情報発信をして、理解を得ていくこと、これが必要なのではないかと思っており、肝に銘じてまいりたいと思っています。改めて感謝申し上げます。
三輪部会長:それでは、特段の御意見がなければ、こちらで議論を終了させていただければと思います。
本日は各委員の皆様から、それぞれのお立場に立った貴重な御意見を頂戴しました。
本日、農林水産大臣から諮問があった調整基準価格(案)については、本部会としては事務局から御説明があった案で異議なしという形で議決させていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
それでは、御異議ないということですので、本件については適当と認める旨を議決させていただきます。
また、冒頭申し上げましたとおり、本部会の議決については審議会の議決という形になりますので、食料・農業・農村政策審議会として農林水産大臣に適当と認める旨の答申をさせていただきます。
なお、農林水産大臣への答申については答申文にて行うということになっていますが、形式的なものになりますので、大変恐縮ながら、文面については私、部会長の方に一任を頂ければ幸いです。
また、資料1-4「糖価調整制度の持続的な運営を図るための取組について」のうち、まずてん菜糖の交付対象数量及び指標面積についての検証については、事務局の説明がありましたのでおおむね異論がないという形での御意見を承ったと理解をしています。審議会にて了承したという形で問題はないでしょうか。
それでは、農林水産省において、委員の皆様から頂いた御意見をしっかりと参考にしていただき、今後の制度運営に当たっていただくように、改めてお願いを申し上げます。
それでは、進行を事務局の方にお戻しします。
石田課長:それでは、第1部はこれにて終了とさせていただきます。一旦休憩の上で第2部ということですが、今は大体50分ですので、10分休憩を取らせていただき、4時からの再開とさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
(休憩)
石田課長:それでは会議を再開し、第2部に入らせていただきます。
委員の参加状況ですが、松谷委員は所用により御退席されておりますことを御報告申し上げます。
第2部においては、オブザーバーとして、関税・外国為替等審議会関税分科会の委員でいらっしゃる高橋様、村上様のお二方に御参加を頂いております。よろしくお願い致します。
ここから議事に入らせていただきます。引き続き、三輪部会長に議事進行をお願いします。
三輪部会長:それでは、第2部についても引き続きよろしくお願い申し上げます。
第2部においては、加糖調製品の暫定税率の検討に関する関税審議会の答申への対応について事務局より御説明を頂いた後、委員の皆様方から御意見を賜りたいと思います。
それでは、御説明をお願いします。
石田課長:それでは、資料2を御説明させていただきます。
通し番号で言うと一番最後のページの87ページ、参考4です。こちらをお開きください。令和5年度、本年度適用されている関税改正への要望についてです。
こちらは令和5年度の関税改正要望の概要を整理したものですが、TPP11交渉の結果、関税割当ての枠内の税率、これが段階的に削減していくこととなっています。これは粉乳調製品の例ですが、年々0.1%ずつ下がっていくという状況です。この状況に合わせて、枠外のもの等に適用される暫定税率、これを引き下げていくというものです。
これがどのような意味があるのかということですが、この枠外のもの等から徴収する調整金の幅、これを拡げていくというものです。
令和6年度についても、関税改正要望をしていくに当たっての様々な考え方について、本日御意見を頂戴したいと思います。
それでは、資料の初めの方に戻っていただき、通し番号の53ページ、「A.-1.関税審関税分科会における主な意見」というページをご覧ください。
昨年の10月31日に開催された分科会において、この加糖調製品における暫定税率の引下げに関して活発な議論が行われたところです。その意見の概要をこちらに示しています。順に御紹介したいと思います。
まず、糖価調整制度を維持していくために、ステークホルダー全体で相当の努力をしていかなければならないということ。
2番目、糖価調整制度の問題は、市場やシグナルが必ずしも生産現場に伝わらないということ。これは需要が減ったとしても、国際糖価が上がれば、品代が上がるということですが、そういったことを指しているものと理解しています。そういう中で、意識的に関係者に努力していただく必要があるということ。
3点目、暫定税率を引き下げて調整金の徴収の余地を広げるということについては引き続き必要ということ。あわせて、ステークホルダー全体の努力ということを期待したいということ。
4点目、国家的な安全保障の問題にも関わるということで、鹿児島・沖縄、そういった地域での定住を進めていくことも国策として必要という御指摘。
次に、砂糖の需要の減るスピードはなかなか見極められないわけですが、引き続き産地における合理化の努力、あるいは菓子の輸出に取り組むなど、できることは頑張っていただきたいという御意見。
最後です。これは当時、てん菜方針について議論がされる中でということでしたが、食料安保の観点からも日本の砂糖の生産はどれくらいを目指してやるのか、そして転作をどのぐらい求めるのかということを精緻に現場に伝わるようにしてほしいという御意見。また、農業に関わっている現場の方々がしっかりとした理解をされて努力をされるということに期待したい、こういう御意見でした。
次に、通し番号の54ページをお願いします。こういう議論を経て、12月の審議会の場において、暫定税率の引下げが適当という答申がなされたところです。あわせて、検証、報告が求められたところです。赤の枠内のところを読み上げます。
農林水産省は、糖価調整制度の目的に照らして、国内産糖への支援の原資となる調整金を拡大する方針であること等を総合的に勘案し、加糖調製品について、調整金の拡大が可能となるよう、令和5年度のTPP11税率の設定状況等を踏まえ、暫定税率を引き下げることが適当です。
また、この暫定税率の検討に当たっては、毎年度、加糖調製品と国産砂糖の価格差及び需給の動向、国内産糖に係る競争力強化の取組状況、暫定税率の引下げによる政策効果、さらには加糖調製品と国産砂糖の制度に関する今後の中長期的な在り方と実現に向けた具体的取組等について、消費者の視点も踏まえつつ、農林水産省に検証と報告を求めるということであり、本日、ここで御意見を頂いた上で、今後の関税審への要望、あるいは説明等について検討を進めてまいりたいということです。
関税審での説明の進め方という点で、これで適切かということをまた御意見を頂戴できればと思っています。
次に56ページをお願いします。「加糖調製品の調整金徴収制度」です。
上の枠の中の3番目の文章になりますが、平成30年12月30日(TPP11の発効日)から、加糖調製品について調整金の対象としており、この徴収した調整金を国産砂糖の支援の財源に充当するということ。これによって、国産砂糖の競争力の強化を図っているということです。
57ページをお願いします。「砂糖と加糖調製品の需給動向」です。
加糖調製品は、輸入が自由化された平成2年以降、大幅に増加して、国内の砂糖の需要を代替してきたということです。
ここ数年、若干減っていますが、令和4砂糖年度で40万トンということですので、引き続き相当量の輸入がなされていると認識しています。
次に58ページの「甘味全体の需要量」です。
砂糖、加糖調製品のほかに異性化糖等があり、これらも含めたものとなります。甘味全体の需要については、人口減、あるいは低甘味嗜好等があり減少傾向にあります。そういう中で、加糖調製品も近年減少に転じているところですが、右側のグラフのとおり、用途、仕向先を見てみると、砂糖と結構共通する部分が多く、引き続き砂糖と加糖調製品が競合関係にあるものと考えています。
59ページ、「直近の輸入動向」です。
一番右側の赤枠内を御覧ください。直近約1年の動きになるが、量では11%ほど減少しています。特に粉乳調製品について輸入量の減少があるということです。これは国産の粉乳、そちらについても供給余力があったということ、そういったことも影響してのことだと分析しています。
一方で、価格については、国内でも砂糖の価格は相当高くなっていますが、CIF単価の方は前年に比べて2割ほど高くなっているという状況にあります。
次に60ページ、「加糖調製品からの調整金収入の状況」です。
暫定税率引下げによって幅が拡大していること、また先ほど申し上げたCIF単価の上昇、こういったことが相まって、直近1年間、94億円と大きく増加しているところです。
このうち、暫定税率の引下げということについても、大体2ないし3億程度寄与しているものと試算しています。
この調整金については相当額になっていますが、右側にあるとおり、今、輸入原料糖からの調整金を軽減する、あわせて、国産糖の支援の財源としても充当するということで、競争力の強化に使われている状況にあります。
次に61ページです。
では、今なお価格差があるのかということです。こちらは今も分析中ですので、「説明の方向性」ということで整理しています。
まず昨年の状況ですが、令和3年輸入加糖調製品は135円から155円程度で供給されていたということ。一方で、国産の砂糖は調整金の軽減措置等、あるいは関係者の皆様の合理化の努力、そういったことを含めて、155から205円ということで、20円から50円ぐらいの差があったのであろうという中でやはり暫定税率の引下げが必要ということで求めていったわけです。
今今の状況、こういった状況を更新しながら説明してまいりたいと思いますが、ブラジル等主産地でエタノールへの用途転換、こちらが進み、砂糖の方について供給がなかなか厳しくなってきているという状況がありました。そういう中で砂糖の国際相場が上昇し、国産の砂糖の価格も上昇する見込みとなっています。
一方で、加糖調製品についても、白糖の国際相場は上がっており、輸入原料糖と同じように海上運賃の高騰の影響等も受けるので、こちらも上昇が見込まれています。
それぞれ上昇するということが見込まれているわけですが、この価格動向を具に丁寧に分析して説明を行ってまいります。その上でこの価格差が引き続き存在するという場合には、引下げ措置を求めていくということとしたいと考えています。
次に62、63ページです。各ステークホルダーによる合理化の努力、そういったものが求められており、また報告の対象としても位置付けられています。
63ページの方でコンパクトに、原料作物、あるいは製糖の段階での取組状況を整理しています。
さとうきびについては、機械収穫への移行が進められており、労働時間は減少傾向、労働費も減少してきているということです。
甘しゃ糖工場の方です。なかなか人件費の掛かり増しもある中ではありますが、自動化設備の導入等によりコストの低減というのにも同時に進めていただいている状況です。
てん菜、こちらについては直播への切替え、それによる生産の効率化が進められています。
てん菜糖工場については、原料輸送効率の向上、あるいはてん菜糖工場の再編ということで、コストの低減を進めていただいている状況です。
64ページから、これから更に進めていく取組ということで、原料・品目等ごとに整理しています。
まず、さとうきびです。収穫作業については機械化が進んでおりますが、植付けですとか、収穫後にもう一回生やす株出しの管理、そういったものについては機械化がまだ十分でない状況にあります。それらを進めて、労働時間を低減していくということを進めていく必要があります。
また、新品種「はるのおうぎ」とかスマート農業、こういった実証等についても注力してまいりたいと考えています。
65ページ、てん菜の生産コストの方です。
直播栽培の拡大、これは引き続き進める必要があるかと思っていますが、あわせて、てん菜については肥料費や農業薬剤費、これらが相当掛かっている品目であり、例えば除草剤耐性を持つ品種の普及ですとか、減農薬あるいは減肥料によるコスト低減についても併せて進めてまいりたいと考えています。
また、農薬の関係については、カメラ画像とAIを活用して、農薬のコスト、あるいは散布回数を下げるという取組、こういった実証についても引き続き取組を進めてまいりたいと考えています。
次に66ページ、甘しゃ糖の製造コストの関係です。
設備更新によるコスト増大、あるいは人件費の関係でなかなか難しい状況はありますが、引き続き省力化設備の導入によるコストの低減、あるいは、今はまだ検討段階ではありますが、離島間の糖業の連携といったことで、例えば資材の共同購入、そういった取組についても検討を進めていくことが必要ではないかと考えています。
次に67ページがてん菜糖です。
こちらについては、まず流通、原料輸送の方を、トラックドライバー不足もありますので、流通の合理化を進めるということと省力化設備の導入ということ、先ほども申し上げた再編合理化という点については本別製糖所が生産終了したわけであり、本別製糖所で処理していたてん菜は芽室、あるいは北見で処理するということで、更なる効率的な生産体制の構築に努めていただいているところです。
次に68ページの精製糖工場の状況です。
右側に「再編の動き」ということで整理していますが、企業合併等による経営体質の強化が進められているところです。
以上、国内の砂糖に関係する各セクターによる取組状況、方向を整理しています。こういった内容をまた関税審の場でも説明してまいりたいと考えています。
次に、「中長期的な在り方及び実現に向けた具体的な取組」です。
70ページ、砂糖勘定の収支の状況です。
4砂糖年度、単年度収支は118億円の赤字で、累積差損は563億円と、極めて厳しい状況にあるということは先ほどの第1部でもありましたが、関係者共通の認識になっているところです。
そういう中にあって、収支改善を図るということで取組を進めていますが、まず1点目が71ページのてん菜生産の関係です。
昨年の12月に「持続的なてん菜生産に向けた今後の対応について」というものを決定し、令和8年度に交付対象数量を55万トンとすることを決定したところです。あわせて、てん菜から加工用ばれいしょ等への転換も進めているところです。
現状、北海道の関係者の皆様の努力により、今5年産では5万1,300ヘクタールの見込みです。
5SYですと、交付対象数量が60万トンです。これを面積換算したものが5万4,500ヘクタールですが、それを下回る見込みになっています。
また、左側にありますが、甘味資源部会で検証を行うということで、第1部でそのことを審議いただきましたが、この方針に沿って引き続き取り組むということが確認されたということも併せて申し上げます。
次に、72ページの「異性化糖調整金の運用見直し」です。
異性化糖の需要については、この間、やや増加ないし横ばいで推移してきている中で、平成23年以降、調整金が未発生ということでありました。
そういう中にあって、令和5砂糖年度から、この異性化糖調整金の算定方法について運用見直しを行い、5SYからの調整金発生を見込む状況にあります。こういった取組等を進めることで、調整金の収支の改善を図ってまいりたいと思いますが、当然これだけで十分だという認識は私どももないわけであり、引き続き関係者による取組を御理解、御協力を得ながら進めてまいります。
次に73ページです。
その他の課題として、物流についても中長期的に大きな課題となってくる中で、トラックドライバー、鹿児島の方が北海道で季節雇用されて、てん菜を運搬する、ピーク時のトラックの台数を減らすためのストックポイントを導入する、そういった取組についても進めていくということを申し上げたいと思っています。
続いて74ページ、SAFの関係です。
こちらについては関税審の場でも若干やり取りがありましたので、詳細に検討状況、調査の結果等を報告したいと思っています。
まず、官民一体で取組を進めているSAFの官民協議会というものが資源エネルギー庁、国交省が事務局となって今動いているところです。農林水産省もこのメンバーの一員として、当該検討・協議に参画しているところです。
右側にグラフがありますが、2030年に「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」ということで、具体的な需要量としては171万キロリットルということで目標が設定されましたが、現状は石油元売等による供給見込みは、これを上回る192万キロリットルとなっているところです。この中には国産のさとうきび等々というのは原料として含まれていないところですが、今は1割ですが、また更に上乗せされていくということも想定しながら我々は検討していく必要があるのではないかと思っています。
次に75ページです。
このような中で農林水産省において、SAFの利用の可能性について調査・検討を進めてまいりました。どれくらいSAFが供給されるのか、あるいはコストがどれくらいか、そういった検討・調査です。
調査結果は、次の76ページに整理しています。
まず、下の左側の表に需要量があります。例えば沖縄だと86.4万キロリットルの需要があり、鹿児島でも7.3万キロリットルの需要がありますが、今沖縄・鹿児島で作られているさとうきび、仮に全量をSAF製造に仕向けた場合、16万キロリットルということであり、ごく一部に限られるということです。また、その下段にありますが、規模の大きな島が仮にSAF製造に切り替わることとなった場合、1.6万キロリットルであり、規模が小さいと0.25万キロリットルにしかならないということです。いずれにしても、需要に対してごく一部に限られるだろうということを、まず前提として認識する必要があろうかと思っています。
また、右側はコストです。試算してみると、規模によって変わってまいりますが、規模の大きな島、規模の小さな島、いずれにしても、国内で製造されるSAFと比べると2倍以上コストが掛かることが見込まれているところです。
こういう中にあっての今後の進め方として、77ページですが、地産地消モデルという形が必要なのだろうと思っています。国内で製造されるSAFの一部にこうした国産のSAFを混合するようなサプライチェーンを検討していく。そういう中で、コスト以外の価値、それもちゃんと評価される、そういうサプライチェーンができる。それを構築する中で検討を進めていくものだろうと思っています。農林水産省としては、石油元売りですとかエアライン、様々な関係者との協働で初めて物事が進むものですので、引き続きそういった者との意見交換を進めてまいりたいと考えています。
続いて78ページ、需要拡大に関する取組です。
左側にある、「ありが糖運動」ということで、砂糖の正しい知識などをSNS等を通じて情報発信を進めているところであり、右側の真ん中の方にクリームの絵がありますが、乳原料代替のクリーム原料需要に対応するということで、おからを原料とした国産の加糖調製品、原料、こういったものを開発していく取組を進めたりしているところです。
また、お菓子の輸出の関係です。こちらは農林水産省としても、輸出の取組の一環として、お菓子についても目標を定めて推進しており、コロナが明けてから、じわじわと回復しているところです。
次のページに、お菓子の関係を更にブレークダウンして、データ等、また事例を整理しています。
右側の事例を御覧ください。例えば、これはサブレ、クッキーの事例ですが、砂糖も小麦粉も乳も全て北海道産にこだわって、北海道を強調したパッケージで売られていて、輸出が伸びているというものです。北海道ブランドというものが海外でも評価されているということを伺っています。
また、その下の例ですが、冷凍技術というものが進んでいます。冷凍しても品質は落とさないということで、こうした大福等の手軽な和菓子についても輸出が伸びているといった事例です。
ただ、左下の方に国別のデータがありますが、第1位が中国で、第2位が香港となっています。御案内のとおり、今様々な輸出に関しての影響が懸念される状況です。今今、特に買い控え等の影響は見られていませんが、こういった点、よくよく事業者とも連携しながら、アンテナを高く張って情報を把握してまいりたいと考えています。
その上で関税要望ですが、81ページを御覧ください。
今後の対応方向(案)ということです。令和6年度においても、引き続き関税改正要望を行ってまいりたいと考えています。
2番目のパラグラフにありますが、糖価調整制度は調整金負担という実需者負担型の仕組みであるからこそ、まずは国産の砂糖価格を引き下げることで国民の負担の軽減を図り、消費者から支持されることが重要です。
このため、生産者、製糖業者のそれぞれがコスト削減に向けた不断の努力を進めるということ。
また、加糖調製品からの調整金収入を国産の砂糖の支援に充当することを通じて、国産の砂糖の買いやすい環境を整備する必要がある。
ということで整理しています。
その上で中長期的な観点からですが、制度の持続的な運営に向けては、まずは国産砂糖への切替えですとか菓子の輸出等を通じて需要拡大を図るということがありますが、一方で砂糖消費量の減少は続く状況にあるので、制度の存続も危ぶまれているということから、輸入糖と国内産糖のバランスの確保。
具体的には、先ほど申し上げた「てん菜方針」のことを整理しています。
また、異性化糖調整金について、用途等の現状を踏まえて運用の見直しを行うこと。
さらに、砂糖の消費量が減少を続ける中で、SAFの関係についても実現可能性について広く検討すること等が必要だと整理しています。
このような取組を進めていくことを基本としながら、最後に一言加えていますが、「砂糖は、国民に消費されることを通じ、国境離島における代替の利かないさとうきび、あるいは我が国最大の畑作地帯の輪作体系の維持に欠かせないてん菜の生産を支えているということで、なかなか経済合理性のみでは評価できないという背景があるということについても留意する必要がある」ということを付記して、この関税の改正の要望を行ってまいりたいと考えています。また御意見を賜れればと思います。
以上です。
三輪部会長:それでは、ただいまの御説明を踏まえて、委員の皆様から御意見を伺いたいと思います。
なお、オンラインで御参加の方で御意見がある場合は、挙手ボタンを押していただければ、こちらの方から御指名させていただきます。
それでは、森本委員お願いします。
森本委員:関税・外国為替等審議会の答申への対応の考え方についてですが、本件について御意見を申し上げるのは3年目となります。
TPP11、税率の設定水準に応じた算定税率の引上げについては、精糖工業会としては、TPP11交渉を受け入れる際の政府の約束として、農水省には引き続き措置されるように改めて求めたいと思います。
また、暫定税率の引下げは、国産の砂糖の価格引下げ要因の一端を担っているものであり、制度本来の趣旨に沿って、昨年度と同様に本年度も適切な算定に基づき、輸入粗糖の軽減額を拡大すべきです。
あわせて、農水省は一昨年から補正予算も含め、原料原産地表示の施行に伴って国産の砂糖への置換えを進めていますが、引き続き有効な対策を求めます。
ただ、加糖調製品の問題は関税審議会の御指摘のとおり、暫定税率の引下げだけでは到底解決できるものではなく、第1部の異性化糖の問題で発言したように、糖価調整制度は異性化糖や加糖調製品などが増加すれば砂糖の需要が減少して、輸入糖の負担が更に増加し、事業者や消費者の負担が増えるという仕組みになっており、「負のスパイラル」に陥っています。
繰り返しになりますが、糖価調整制度における公平・公正な運営こそが何よりも基本です。
本日は資料2の28ページで業界団体の砂糖の需要拡大の取組が紹介されていますが、砂糖の需要が右肩下がりになる中で、その拡大は業界としても最大の課題ですので、簡潔に補足させていただきます。
2018年4月に業界8団体が一緒になって協議会を設立し、「シュガーチャージ」の推進に取り組んでいます。「シュガーチャージ」とは、仕事、勉強、スポーツ、趣味など、「毎日のアクティブな生活で消費したエネルギーを砂糖の入った食品や飲料でチャージしよう!」という考え方で、SNSなどを利用して、この考え方を理解し、賛同してくれる仲間を増やすことに努めています。「ご近所スイーツ自慢」や「手作りスイーツ自慢」など、参加型の投稿キャンペーンを行い、その結果、協議会の公式ツイッターのフォロワーは本年6月下旬には10万の大台を超えており、大手食品メーカーと比較して遜色のない賛同者を頂いています。砂糖に対するクイズ、動画を始め、動画全体の視聴率も600万回を超えています。
また、砂糖や健康については、我が国特有の間違った認識があり、かえって健康を害するような誤解を招いているため、精糖工業会として、正しい砂糖知識を普及啓発する調査・広報活動に継続して取り組んでいます。
例えば、小学校の授業で活用していただけるよう、2016年度から中高学年層をターゲットにした啓発パンフレット「なぜ?なに?さとうのはなし」を制作しており、昨年度は全国1万8,482校のうち799校から応募を頂き、5万4,735部を配布しました。
精糖工業会はウェブサイトの充実化にも努めており、昨年度の訪問回数は5万1,840件となっています。
以上です。
三輪部会長:それでは、惠本委員お願いします。
惠本委員:日本ビート糖業協会の惠本です。
今回の関税審議会の答申への対応については、異存はありません。
加糖調製品の暫定税率を段階的に引き下げ、それにより確保した調整金を原資として、国内砂糖の競争力を高める取組については、TPPなどによる国内の砂糖生産への影響を軽減するための措置と理解しており、感謝申し上げます。
てん菜は北海道農業の輪作体系において重要な基幹作物であり、てん菜糖業は砂糖の製造・販売活動を通じ、地域経済にも大きな役割を果たしていますが、これを持続可能なものにするために、糖価調整制度の維持は必要不可欠です。
そのためには、まず製糖工場のコストの削減、また生産者のコスト削減、労力削減につながる新品種の開発も必要です。
また、てん菜の有効活用と可能性を追求する取組も必要です。
てん菜は、これまで主に甘味資源や飼料用途として利用されてきました。今後は、てん菜のCO2高吸収作物という側面に注目し、てん菜が吸収したCO2を新たな製品の生産に利用することで、てん菜の耕作面積の維持と地球温暖化対策に向けた取組を考えています。
具体的には、てん菜糖蜜を活用した微細藻類によるバイオ燃料「SAF」の研究、また、てん菜によるCO2の長期固定化対策として、てん菜の食物繊維を活用したバイオプラスチックの開発にも参画しています。これは未来への挑戦と考えています。
このように、てん菜には未知の可能性が秘められており、今後も新たな用途開発について探求していきたいと考えています。
以上です。
三輪部会長:小椋委員お願いします。
小椋委員:北海道中央会の小椋です。よろしくお願いします。
今ほど提示された関税審議会の答申への対応の考えについてですが、TPP等関連政策大綱に基づき、加糖調製品の暫定税率引下げを求めることについては賛同するところです。
また、輸入加糖調整金の一番の優位性は国内製造砂糖との価格差にあると思うので、加糖調整金を活用し、輸入糖の調整金負担軽減を継続していくことが重要だと考えていますし、国内製造砂糖の更なる消費拡大に向け、輸入加糖調製品から国内製造砂糖への切替えが今後も継続するよう、国、農水としても執り進めをよろしくお願いします。
甘味の消費が減少を続ける中、国民に対する砂糖を始めとした甘味の供給の在り方、またそのための制度の在り方について、今後検討が十分必要な時期に来ていると思いますし、現在、食料・農業・農村基本法の検証・見直しを執り進めている中、食料安全保障の観点に向け、将来的なこの国の砂糖の在り方、ここをどうしていくかということ、今後広い視点で検討をよろしくお願いします。
私からは以上です。
三輪部会長:有田委員お願いします。
有田委員:全日本糖化の有田です。
私はどうも理解ができなくて、逆に教わりたいと思っております。
私どもは異性化糖をやっていて、これ一体いつまでやれるのか、赤字もあるしと思っています。大体、工業というのは、赤字ならやめるか、工夫をするしかありません。ただ、これは農業が絡んでやっていますので、農業が本当に独り立ちできるのか疑問に思っています。国が所得補償するとか、あるいは何かをやらなきゃやっていけないのではないかという話が余り出ていません、実際問題。国はどう考えているのか、よく分かりません。農林水産省の話とか、今回は関税審議会の話ですが、私には、この国は一体何を考えているのかよく分かりません。
例えばスイスなんかは所得補償をしています。アメリカなんかは膨大な金をつぎ込んで輸出をしています。もう綿花なんか、ともかくエジプトも勝てなきゃ、インドも勝てない。全く商売になりません。アメリカがただみたいに出しますから。
一方で、私はタイに工場がありますが、「タイでタピオカ使って何かうまい方法ないかな」と言ったら、「一体どこを相手にするのだ」と問われて、「いや、アメリカだ」と答えたところ、タイの次官から「アメリカだったら絶対やらない」と言われました。だから、日本はこれから一体どうするのかが分かりません。
私は群馬県なので、周りじゅうが田んぼですが、もう農耕放棄地がいっぱいです。もうそこらじゅうに何か雑草をばらまいている状態ですが、一体これはどうするのかと思います。
砂糖の問題ですが、砂糖に対してどうするのかな一体。今は調整金を取っているから、消費者がみんな負担しているわけですが、これからどうしていくのかがよく分かりません、実際問題。
議論の中に入ろうとしているが、一体何を議論していくのかがよく分かりません、実は。
まあ、途中でこんな形の質問というのがいいのかどうか分かりませんが、やっぱり真剣にやっていく上でいけば、これからどういう方向に行くのかというのが、一番重要な気がしますし、どうしたものかなと考えます。
私は、6月はアメリカにずっと1か月ぐらいいましたが、アメリカの空を飛んでいると、どの国も農業でアメリカに勝てるとは思えません。何しろ、とうもろこしなんかは、人が誰もいない中で、自動でどんどん刈り取っていってサイロに入れちゃうんだから、それは勝てません。どこも勝てません。その中でどうするといったら、もうアメリカでやっている部分とは付き合わないというのも、一つ有りかなとも思います。
上毛新聞というのが群馬県にありますが、そこに東大の女性の教授が何か投稿していて、それを読むと、要するに遺伝子組換え農産物を世界で一番食べているのは日本人が飛び抜けているが、遺伝子組換えをやらないのも日本人だと、こう言っています。これはもうさっぱり分かりません。
遺伝子組換えで農業はどんどん変わっています。殺虫剤なんか要らないよという意識で変わっています。だから、そういうことも考えて、一体どうすべきなのかなというのが、一番よく分からない学問のような気がしています。
昨日出席した会議では、もう令和27年には世界で核融合の発電実験が行われ、もう間違いなく成功するだろうと、そして、2050年以降には、核融合の商業発電が行われるだろうなどと言っているから、エネルギー問題として、そういうことも考えていかなきゃならない。CO2を出さないわけだし、原発みたいに放射性物質を大量にも出さないわけだし。
というぐらい大きな変化が起きる状況にあるのに、これから日本の農業、砂糖をどうしていくのか、私にはちょっと分からないので、逆に聞きたいなと思っています。
以上です。
三輪部会長:続いて、中宮委員お願いします。
中宮委員:森八の中宮です。こんにちは、よろしくお願いします。
今のお話とも少しかぶる部分があると思いますが、どこに向かっているのかが分からないというところ、私も思ったところがあります。
今の御説明でも、通し番号53ページの「関税審関税分科会における主な意見」の一番最後のところを見て特に思ったのですが、「日本の砂糖の生産がゼロになっていいということではないと思うので、どれぐらいを目指しているのか」というところがありますが、先ほどの第1部でのお話のときとかに、ここに集まっていらっしゃる皆さんは、国産の砂糖をどんどん増やしていこうというところで、調整金をどのように使っていって、どうやって維持していこうかという話をしていたように私は思ったのですが、こちらの53ページのお話では、みんな増やすことは目的ではないが、ゼロにしちゃいけないということだよねと書いてあるように私には見えました。
というところで、ここに集まっている方と、この関税審関税分科会にいらっしゃる方と、国産砂糖をどこら辺まで生産するか、需要を伸ばすかというところで、もう意識の差があるのではないかというところを感じました。
同じ話をしているようですが、着地点が全然違っているように感じたので、どこら辺、どれぐらい国産砂糖の需要を伸ばすか、どういうところを目的としているかということを、ここに集まっている方だけではなく、農林水産省、国の方針としてどういうところを目指しているかという目的地をまず明確にしなければ、どうやって制度を維持していくか、どのように収入の税を増やしていくかという議論には至らないのではないかというところを感じましたので、発言させていただきました。
三輪部会長:それでは、上江洲委員お願いします。
上江洲委員:これは質問になりますが、加糖調製品の税率を引き下げて、それによって調整金が増加する。その調整金を使って糖価調整制度における調整金収支は改善され、糖価の引下げによって消費量が増え、あと精製糖企業の経営が安定する。
しかしながら、これによって国内の砂糖生産の努力が下がるのではないかという危惧があります。これに対して、「工場の自動化とか集中制御」や「さとうきびの手刈りから機械収穫へ」等の取組を具体的に示さなければいけません。
それでそれが、消費者のためになっているのかという話が出ているのだと思いますが、調整金を使って精製糖企業が合理化して、いわゆる国内で作られる砂糖を下げるということに使えれば、消費者の利益にもなり、砂糖関係者は反対する人はいないと思います。
これは所謂、暫定税率と調整金をプラスした協定税率になりますので、国庫に入る分から直接調整金勘定に入ると理解していいのでしょうか。
石田課長:ミシン目が変わるという意味ですので、関税として国庫に入るのか、調整金として機構に入るのかというところのミシン目が変わるという、そういう意味のあるものです。
上江洲委員:そうすると、関税として国庫に入る分が減るという形になり、その減った分を消費者に還元しなければならないという話があるのでしょうか。
石田課長:ある意味、特定財源として使うわけですので、その是非が問われているということだと思います。
そういう意味で、まずは関係者が自ら努力して、競争力強化に取り組むと。できるだけ取り組んだ上で、その上でこのような措置を加えて、競争力の強化を補おう、そういう趣旨なのだと理解しています。
三輪部会長:オンラインで御出席の委員の皆様、もしあったら挙手ボタンをお願いします。
また、会場で御参加のオブザーバーの先生方も何か御意見等があったら頂ければと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、村上様お願いします。
村上オブザーバー:私は関税審議会の分科会で、最初の頃から参加させていただいていますが、関税審議会から見たこの制度の受け止め方についてお話をしたいと思います。
まず、当初の一、二年ぐらいは、この制度そのものについてなじみがないということ、それから理解するに非常に難しいということがあったと思います。
それから、この仕組みが消費者や実需者負担に大きく依存しているということがあったと思います。
もう一つは、関税制度として見ると、全て一般財源とするのが原則の中で、特定財源という形で、砂糖の調整金にしろ、加糖調製品の調整金にしても、原則からの例外であるという事実があります。
消費者負担、実需者負担を軽減していかなければいけないのではないか。こういう負担関係にあるものについては、国内の関係者が努力して、合理化なりコスト低減を図っていく必要があるのではないかという意見が出てきているということではないかと思います。
かなり回数を経るごとに、これ以外にやりようがないのかなという受け止めになってきた感じがします。
実需者負担なり、消費者負担を減らしてしまうと、財政負担になってしまうわけであり、それは現在の状況の中ではなかなか難しいということもあるし、関係団体、関係業界のそれぞれの立場というのがあって、それを総合的に勘案していくと、この暫定税率を引き下げていく手法というのを当面認めていくしかないのかなという受け止め方が一部の委員に広がっているのではないかと私自身は感じています。
そういう意味で、関係者の努力でこの制度が何とか維持されて、改善されていくということを私自身も期待しているところです。
以上です。
三輪部会長:続いて、高橋様、もし御意見があったら頂けますか。
高橋オブザーバー:私も関税審議会に二、三年参加させていただいていますが、確かに難しい問題で、ただ砂糖をたくさん作ったらいいのかと言えばそうではなく、作り過ぎると輸入が減ってしまって財源が減ると。
しかし、砂糖の自給率を考えると、もうちょっと欲しいなと。今は円安や、海外の方でインド等が砂糖を輸出しないと言っていたりするので、本当なら砂糖もどんどん作って、それを日本で使い切れなければ途上国に送るとか、そういう制度ができればいいなと思いますが、そうすると砂糖の値段はとても上がりそうだし、消費者に届くものもどんどん高くなってくる。
そういうことを考えていると、作っていらっしゃる方を守りたいという気持ちは皆さん一緒の考え方だろうと思います。
今砂糖勘定の赤字が増えている中で、このままではこの制度はちょっと難しそうだなと思って、そうすると財政をもうちょっと出動していただけたらいいなと思います。
三輪部会長:もしほかになければ、私の方からも一言申し上げたいと思います。
こちらについても貴重な御意見、またオブザーバーのお二方からも頂戴して、感謝します。
私の一委員としての意見のところですが、今お二方から頂いたところを含めて、今後もこの形でずっといいのかという、実は第1部でも申し上げたのですが、そこのところについては常に厳しい目、温かい目含めてしっかり見ていく必要があると思っています。
その中でいくと、今私自身は食農審の基本法検証部会の委員もやらせていただいており、今度、答申のタイミングがいよいよ近付いてきていますが、これから先の日本の農業が変わっていく。その背景には日本の置かれている状況が変わってきているところを踏まえると、今ある制度とできたときの外部環境と随分違う中で、それは今の輸入糖の値段の高騰、若しくはコストのところでいくと燃料費とか資材費が上がっているとかというところで、一番最初に描いたモデルというのが今後も永続的かというと、非常に危ういかなと思っているところです。そこは我々部会の中でも随時見ていく必要があると思います。
関税審の中でも、もしかしたら語弊があるかもしれないが、外から見た上での妥当性、若しくはゆがみの部分というのを御指摘いただくというのは非常に大事なプロセスなのかなと思っているところです。
その中で1点申し上げると、今回、関税審関税分科会の方でも御指摘いただいているのですが、特に沖縄・鹿児島の離島対策という観点でさとうきびというのは非常に重要な作物ですというところについては御理解を頂いているところかと思います。53ページの中でも、これがなくなったらどれだけ防衛費が掛かるのだとか、若しくは国土をきちんと守れるのかといったリスクがあるというところであり、私個人的な意見としては、以前よりも防衛等のリスクが高まっている中で、そこのリスクを御認識いただいている上で、それに対しての対策、正にさとうきびの農家の方、若しくは関連産業の方がそこに住んでいるということのためのコストというのを、我々砂糖関係のサプライチェーンの中で、まあ、消費者も含めてですが、その中だけで負担すべきものなのかというのは少し疑問に感じているところです。農業においては多面的機能というのがあり、その中では防衛というところはもともと入ってはいないところなのですが、さとうきびについてはそのような特殊な事情というか、特殊な効果、経済学的に言うと外部経済があるので、そこのところについては必要に応じて、砂糖の業界の中の財布ではない形でのものを充てるといったこともあるのではないかと思っています。
最近も民間企業のいろいろな取組が行政の肩代わりをすることによって、そこを行政の予算を充てるようなファイナンスの手法というのは国内外で取られているというところですので、そういうことも含めて、より幅広い視点で見ていくという中で、今回、まず今の現状的な措置としては、暫定税率引下げの上、調整金のパイを広げていただくというのは非常にありがたいところかと思いますので、是非そのような形で進めていただければと思っているところです。
私のコメントが長くなってしまい、すみません。
ほかに会場及びオンラインで追加で御意見等はありますか。
それでは、皆様から御意見を頂き、感謝申し上げます。こちらの御意見に対して、事務局から回答等があれば頂きたいと思います。よろしくお願いします。
石田課長:皆様から頂いた意見、糖業等の努力等の部分、いろいろ補いながら資料を作っていきたいと思っていますが、今の高橋様と村上様から頂いた意見と部会長の方の取りまとめに収れんされていると思いますが、しっかり未来を見据えながらということを常に検討していくという、毎年毎年単に要求するということであってはいけないのではないかということを改めて認識したところです。
この先どう進むのか、どこを目指すのかという話がありましたが、しっかり国内生産を維持していくということが重要です。糖価調整法の目的は国内の砂糖の安定供給を図るということですので、それがまず何よりも重要ですが、そのためには何よりも制度の維持が重要だということで、そのバランス論等が出てきているものと承知しているところです。
基本は需要が伸びてくれば、それに合わせて国産を伸ばすという部分も当然あってしかるべきだと思っており、需要の拡大というものも基本にと記載しているところです。
それとあわせて、部会長の方から国費のお話がありましたが、現状、この糖価調整制度の運用に当たっては、でん粉の方にはありませんが、砂糖については100億円程度の国費が今も投入されている状況にあるわけです。需要が減っていく中で、この規模を維持するということについて、様々な皆様のこの場での意見も踏まえながら予算要求等を行っているところです。それで足りているのかどうかという議論はありますが、我々も一定の国費の投入もしながら、制度を運用していくものと考えているところです。
ただ、御意見を頂戴しましたので、引き続きこの資料をよりブラッシュアップして、関税改正の要望に臨みたいと思っています。
三輪部会長:糖価調整制度の上にぽこっと乗っている部分が国費ですね。
それでは、今御説明、御回答いただいたところで特段の御意見はありますか。
それでは、この辺りで議論の方を終了させていただければと思います。
本日事務局より御説明があった内容について、今皆様から頂いた御意見も踏まえて、本年秋に開催される関税審議会において、加糖調製品に係る暫定税率の検討の議論において御説明いただき、関税審議会委員の方々の議論に資するものとしていただき、最終的に暫定税率引下げの御理解が得られるようにお願いしたいと思います。
また、先ほど申し上げたように、基本法が改正される中で、今度はそれを我々甘味資源の分野でどう変えていくのか。大きな国のグランドデザインが、今新たなものが描かれたところですので、砂糖業界でも引き続き議論を、この当部会含めて委員の皆様から引き続き御意見をどんどん頂ければと思っておりますので、改めてお願いを申し上げます。
本日は貴重な御意見を頂き、感謝申し上げます。
進行を事務局にお戻しします。
石田課長:最後に事務連絡です。
本日の資料は、第1部で御了承いただいた砂糖・でん粉の調整基準価格、これを反映したものを含めて、この後速やかに農林水産省のホームページにて公表させていただきます。
また、議事録についても委員、あとオブザーバーの皆様に御確認いただいた上で、発言者の御氏名とともに公表させていただきますので、引き続きの御協力等をお願い申し上げます。
それでは、本日の甘味資源部会は以上をもって閉会とさせていただきます。
ー以上ー
お問合せ先
農産局地域作物課
担当者:澤本、新藤
代表:03-3502-8111(内線4843)
ダイヤルイン:03-3502-5963