令和2年度第1回(令和2年9月11日)議事録
日時及び場所
令和2年9月11日(金曜日)13:30~16:20
農林水産省 第2特別会議室
出席者
委員:髙野委員(部会長)、三輪委員(Web参加)
臨時委員:里井委員、中宮委員、松田委員、矢野委員(Web参加)
専門委員:有田委員、上江洲委員(Web参加)、惠本委員、太田委員、小野寺委員(Web参加)、田村委員、嵩原委員(Web参加)、樋口委員(Web参加)
農林水産省:天羽政策統括官、平形農産部長、小林地域作物課長、地域作物課課長補佐(後藤、金子、中谷、舘澤)
議事
令和2砂糖年度に係る砂糖調整基準価格(案)及び令和2でん粉年度に係るでん粉調整基準価格(案)について
概要
冒頭、政策統括官から挨拶が行われた後、髙野部会長の議事進行の下、小林地域作物課長から砂糖及びでん粉をめぐる現状と課題及び令和2砂糖・でん粉年度の調整基準価格の事務局案について、それぞれ説明があった。
その後、委員による意見交換が行われた。その意見交換の概要は以下のとおり。
三輪委員:調整基準価格については、異論はない。
非常に分かりやすく現状と、制度について説明していただき、よく理解させていただいた。説明いただいた中から、2点御意見を申し上げる。
1点目は、昨年度、一昨年度と比べてありが糖運動について具体的なアクションが進んできたことについて認識をもった。今後、より一層SNS等を活用していくとのことなので、より短期に色々とチャレンジしていきながら、より多くの人を巻き込んでいくことが重要。当初、ポスターやウェブサイトを作るというところから始め、SNSも始めたということで、もっと広めていくような仲間をどう巻き込んでいくか、インフルエンサーのような方をどう巻き込んでいくかを、戦略を立てて進めてほしい。
2点目は、スマート農業の導入については、現在、実証事業をやっているとのことで、私自身も運営委員として参加しているが、事業で出てきた成功と課題を他の事業者・農業者・他の地域にいち早く広めていくための戦略を検討していただきたい。
里井委員:調整基準価格については、異論はない。
甘味資源部会以外に畜産部会などの委員でもあるが、コロナで大勢の人が集まることはなかった。2月以降顔を合わせての意見交換は今回が初めてであり、多くが資料の配付で終わっていたが、こうして皆様と活発に意見交換ができ、改めて感謝申し上げる。
フードジャーナリストとして、そしてありが糖運動のアンバサダーとして発信を続けている観点から意見2点と、お願いごとを1点申し上げる。
コロナの影響により甘味資源の業界においても、消費量が減少しているということを、説明を聞いて実感した。一方、消費者としての目線からの意見を申し上げると、食べ物、食生活、食べること等に関して、考え方がずいぶん変わってきた。フードジャーナリストとして、外食・中食・内食すべての食の発信をしているが、内食・中食・お取り寄せスイーツというジャンルの消費がとても伸びた数ヶ月間でもあった。甘味資源という大きな枠の中で意見交換をしていると、どんどん消費が低下しているという一方で、小さな範囲ではあるが、スイーツをこよなく愛し、スイーツの情報発信を続け、それをお取り寄せする人々、それからインフルエンサーなど情報発信するという世界は、実は活発に行われている。砂糖について誤解されている人も多いため、砂糖の良さ、スイーツがもたらすおいしさや楽しさを浸透させ、甘味資源そのものの底上げが図られるよう、根気強く消費者との連携を私自身発信していきたい。
ありが糖運動の報告としては、日本を代表する辻口博啓シェフが筆頭にたっていただいて、自分と連動して、ありが糖運動のロゴを店頭に置いていただき、一緒に発信している。こうしたリーダー的なシェフの方がありが糖運動に賛同して、一緒に活動をしていただいているので、長い目で見ていただきたい。今後もプレッシャーはあるが、若い人も含め、うまく皆様と連動していけたら考えている。
野菜や果物は応援の意味を込めて産地直送でお取り寄せができ、それを家庭で料理したり、野菜の苗を自分で購入して、育てるようになったりと、消費者の心理が変化した期間であった。しかし、砂糖については、原料を取り寄せたり、自分で育てて砂糖を作ることは不可能。砂糖は直接食べるものでなく、砂糖を使用したものを食べるという食生活をしているので、砂糖は生産者・流通・工場に頼るしかない。物が足りなくなったコロナ禍の中、砂糖が足りなくなることは一切無かった。買い占めにより、粉物、バターなどが足りなくなることはあったが、砂糖が足りなくなることは全くなかった。このことは、生産者・流通業者・工場の方々がいかにしっかり供給してくださっているかについての証明にもなる。
このことを考えると、一点お願いごとになるが、生産者の高齢化への対応、機械化の進展が進んでいない、労働費の削減が進んでいないなどの諸課題がたくさんある。畜産などの委員会では担い手不足等の話題などが説明資料のページの多くを割いているが、甘味資源部会については、資料の説明においてこの部分が比較的少なく感じた。次の世代へいかに甘味資源を残していくかという切り口や工場の働き方についてなども皆様と討論していくことも重要であると感じている。
中宮委員:菓子製造業にとって年間を通して砂糖は大量に使用するため、国内の砂糖がリーズナブルな価格で、安定的に供給されることはきわめて重要。製品を作るだけでなく、一般の消費者と直接接している立場として意見を申し上げる。
菓子の原材料について、消費者は非常に敏感になっていると感じる。具体的には、菓子の製造者、製造場所、さらには原材料の原産地にまで関心を持っている方がたくさんいる。数年後には義務化されるが、筆頭原材料については原産地を表示しなければならないということになっている。我が社では石川県で採れる宝達葛という特徴のある原材料については、法改正の話が出る前から表記している。砂糖に関しては、ビートもさとうきびも両方使用しているが、ビートであれば、国産100%というような形で表記している。国産原料を大きく謳う商品に関しては、原産地も国内にこだわってビートを使用している。さとうきびの砂糖ももちろんたくさん使用している。さとうきびの砂糖を選択する際は、商品の特性によって選択しているが、さとうきびは国産100%と表記できるものが実質選べない。仕入れ側、その先の消費者からするとさとうきびがどこで作られているのか、ビートがどこで生産されているのかについて、関心を持った方が増えていると思う。そういうところが選べたら、お菓子としての付加価値を高めていくことにつながるのではないかと思う。砂糖消費の拡大ということも議題でたくさん上がっていたが、量だけではなく、付加価値というところで高めていくことも砂糖業界の利益を大きくするポイントになってくるのではないか。付加価値の高い和菓子を作るためには付加価値の高い原材料を手に入れられるような仕組みがあると非常に良い。
SNSを使った需要拡大というお話しがあったが「ありが糖運動」をSNSで検索してみたところ「ありが糖」や「ありが糖運動」など色々な表記があった。SNS上ではタグ付けの表記を固定しないとなかなか検索にはヒットしない。そのため、ありが糖運動に参加してもらう方には、例えば「ありが糖」と表記してもらうようルールを決めたり、アンバサダー以外の方にもこういう条件を満たせばタグやロゴを使ってもいいというように広くみんなが使えるようにすることによって、タグやロゴを使った菓子職人なども価値が上がるようにブランディングがあれば良いと思う。SNSを活用していくのはこれからの時代では重要になってくるのではないかと思う。
松田委員:砂糖の調整基準価格、でん粉の調整基準価格について異論はない。
先ほど里井委員もおっしゃっていた担い手の問題について、機械化が進んでもそれを使うのは人間で、高齢者だと機械についていけないこともあるかと思う。そのため、やはり若手を導入していく必要があると思う。提案として、例えば農業大学校に現場の人が出向いて砂糖作りの魅力を講義したり、インターンシップで砂糖の生産に関わる機会をつくるのはどうか。現在我々の栄養業界でもインターンシップは多く行っている。インターンシップを導入することで作物を作ることの面白さ、魅力をアピールしていくのが良いのではないか。
砂糖の消費が落ちているという話があったが、私どもの大学で学生に食事記録をつけさせているが、やはり砂糖そのものは食べていない。お菓子、飲み物、ジャムを食べている人は多い。料理をしても砂糖を使う人は少ない。煮物もめんつゆで作っている。記録を見ると最近の若い人はコンビニスイーツをよく食べていることが分かる。そこに踏み込んでいくのも良いかと思う。栄養学的には、砂糖は食べなければならない食品ではない。肉、卵、魚、豆・豆製品、乳・乳製品、野菜、芋、果物、穀物、油脂は、1日に食べるべき量が示されているが、砂糖は、食べるとしたら1日に食べて良い目安量が示されている。このようなことも砂糖の消費が減少する理由になっているのではないか。栄養学を教育する者として、適切な甘味資源の知識の普及を心がけたい。
スマート農業で機械化を導入しているということだが、何年くらいを目処に考えているのか。また目標は掲げているのか。目標がないとなんとなく導入して終わってしまう。評価もしづらくなってしまう。
じゃがいもの病気(シストセンチュウ)について、それは外から入ってくるものなのか。例えば段ボールに卵がついていたりとか。もし、外国などから入ってきているとしたら栽培の際に対策をするのではなく、水際対策が必要ではないか。
矢野委員:調整基準価格について異論はない。
本日の説明を受けて改めて近年の不安定な気候や新たな病害の発生、生産農家の減少など様々な問題を抱える一方で、製糖工場に対するコスト低減など様々な取組をなされている関係者の方々のおかげで、砂糖やでん粉の安定的な供給が日々達成されており、また、国産の原料農産物を生産されている地域農業の維持が果たされていることを再認識した。調整金制度がそのようなことを維持するための基本的な仕組みであり、重要なものであるということも認識した。その上で意見を2点述べさせていただきたい。
まず、本日の説明でもあったが、砂糖の需要喚起は制度維持のために不可欠である点は周知の上で、ありが糖運動の継続的な活動により、広まりつつあるという現状は認識している。しかし、砂糖食品の需要減少は止められないという現状にあることに関して、研究者の視点から今後は砂糖の需要に関する細かい分析も必要になってくるのではないかと感じている。具体的に砂糖を利用・使用しているのは誰で砂糖を使用していない・食べていないのは誰なのか、需要増のためにはどの対象にどんな形で砂糖を摂取することを望んでいくのかというところの分析が必要。また、砂糖と甘味資源の需要は似ているが、それぞれ異なった戦略が必要になってくるのではないかと感じている。
現在私が関わっている共同研究のグループでは、日本を含めたアジア全体の所得階層別の食料消費実態、また各国の農業、各国で生産されたものがどこで消費されているかの相関や関連を調査している。この視点から、日本の現在の砂糖需要を改めて概観すると、家庭での砂糖需要に関しては、所得と砂糖需要が反比例する。つまり、低所得者層ほど、家計の支出としては砂糖の購入量が多いという数字が出ている。一方、お菓子の需要は、所得と比例しているので、高所得者層ほど、和菓子洋菓子含めて、甘い食べ物への支出額が多い。総じて、砂糖の需要は全体的に減っているが、家計における砂糖の購入量は、高所得者層ほど減少率が大きくなっている。こういったことを考えると、一般的に低甘味嗜好によって砂糖の需要が減っていると言われているが、その傾向はより高所得者層について強いのではないかと思われる。その原因が何かというと、健康志向であるかもしれないし、外食や家の外での砂糖需要の方に移動しているようなことも考えられるが、そういった現状をもう少し細かく分析すること、どういった形で需要を増やしていくかを戦略的に検討することが必要なのではないかと感じている。
2点目は、今回の新型コロナウイルス等の影響である。例えば先ほどの説明にもあったが、お菓子に限らず近年インバウンドの需要や、海外への輸出への依存や期待、あるいは貿易自由化等を推進する中で、安価で安定的な輸入品に大きく依存した経済活動、経済構造というのが強まっていたように思う。そうした制度の危うさを、今回新型コロナという一つの出来事を契機に私たちは体験しているところである。実際、新型コロナウイルスに限らず、こうした緊急事態の発生が、調整金制度にどういう影響を与えるのか、という点をリスクマネジメントの観点から検討しておく必要があるように思う。制度維持と、それを通じて、国内の生産者あるいは、国内産糖の調整金の交付金を受けている方々の経営に大きな影響がなければいいなと感じている。今年度砂糖の輸入が大きく減っているというお話が最初の御挨拶のところでもあったと思うが、こういった調整金の収支がどのようになっていくのかというのを少し心配している。
最後に質問として、本日の資料ではでん粉の調整金の収支について触れられていなかったと思われるが、今後の検討のために教えていただきたい。
樋口委員:先ほど御説明のあった、令和2砂糖年度の砂糖調整基準価格については、153,200円ということで、異論はない。
さて、この度の新型コロナウイルスの感染拡大は、御存知のとおり、全世界、全産業に甚大な影響を及ぼしており、砂糖業界も、例外ではない。精糖工業会の会員各社は、この未曽有の環境下においても、国民の基礎食品である砂糖の国内への安定供給に努めるとともに、調整金の負担を通じて糖価調整制度における責任を果たしてきているが、感染終息の目途が立たない中で、関係者全員が、先の見えない不安を強く感じている。本日は、この場をお借りして、このコロナ禍の砂糖消費の現状と、今後に向けて、一言申し上げたい。
今回のコロナ感染の拡大に伴い、緊急事態宣言の発出により、経済活動が事実上停止し、あらゆる業界が壊滅的な損害を受けている。砂糖についても、家庭用の袋製品の販売は、当初巣ごもり需要により健闘したものの、やはり外出自粛による外食や観光産業の低迷、外国人の入国制限によるインバウンド需要の消滅により、菓子・飲料等の売上が激減したということで、4月から6月の砂糖出荷量は、対前年比約13%の減少となった。7月以降の消費回復を期待していたが、御存知のとおり、新型コロナウイルスの感染再拡大、第2波により、夏休みの行楽需要や、帰省に伴うお土産・飲食需要が激減し、7月、8月においても対前年比10%弱、8%程度、減少している。現在、令和元砂糖年度の農林水産省の消費見通しは、前年度が183万5000トンに対して、6万5000トン減の177万トンとなっているが、現在のコロナの感染拡大後の推移と消費状況によっては、更なる消費減少も現実的に予想せざるを得ない大変心配な状況。昨年もこの会で申し上げたが、砂糖の消費量は、長年にわたって減少が続いており、特に、平成28砂糖年度から、平成30砂糖年度までの3年間で、約9万トンと大変大きな減少となり、本砂糖年度では1年間で、6万5000トン以上の大きな減少が見込まれるという極めて由々しき事態。そもそも、本砂糖年度は、東京オリンピック・パラリンピックの開催により、観光やインバウンド需要の増加による砂糖消費の拡大に大いに期待をしていたが、このコロナ禍により、全く逆の状況となり、砂糖消費の減少にここ数年の傾向にさらに拍車がかかってしまったことで、業界には、大きな衝撃と失望感が広がっている。
私は、精糖工業会会長として、一昨年及び昨年のこの部会において、砂糖消費の減少の構造的な要因は、調整金負担の不公平さによる異性化糖や加糖調製品の価格優位性にあり、その点、見直しをお願いしたいということを申し上げた。また、この糖価調整制度自体が、砂糖の原料の生産者や国内産糖製造事業者を保護育成する国策である以上、運営財源については、国庫の負担をもっと拡充することが必須であると申し上げ、その内容について、一昨年の12月、そして今年の3月と8月に、農林水産大臣宛てに要請書を提出した。
糖価調整制度の運営財源である調整金の9割近くを負担している精製糖事業者としては、今回のこの会議においては、これまでの要請に加え、国内産糖と輸入原料糖のバランスが悪化して、制度運営上大きな問題点となっている点を指摘させていただきたい。先ほど御説明したとおり、砂糖の消費の減少に伴い、輸入原料糖は、年々輸入量が減少し、それに見合って、調整金の収入が減少する事態となっている。砂糖の消費量減少に伴い原料糖の輸入が減少し、調整金の収入が減少している一方で、国内産糖はてん菜糖を中心に堅調であることからバランスが崩れ、収支が悪化しているとともに、それが砂糖の価格の上昇、砂糖消費量の減少につながるという負のスパイラルを起こしている。また、現在のてん菜の交付金上限は平成19砂糖年度に64万トンになって以降据え置きとなっているが、国内の砂糖消費量は平成19砂糖年度の214万トンから177万トンと17%減、調整金の原資となる輸入原料糖は約22%減になる見通しとされている状況。そのため、精糖工業会としては、こうしたアンバランスが制度の崩壊をもたらす可能性が高いことから、てん菜の交付金の対象数量の見直しを重ねて要請しているが、まだ実現していない。糖価調整法を安定的に運営するためには、国内の消費量に見合った国内産原料糖及び輸入原料糖のバランスを維持することが何よりも重要。国内の砂糖消費量の増減に応じて、てん菜糖の供給量を設定するという仕組みを再構築するようにお願い申し上げたい。
コロナ渦という非常事態の中、今こそ、制度の公正公平な運営のため、全ての砂糖関係者が等しく痛みを分かち合い、それぞれの立場で尽力するべきと考えられる。農水省におかれても、業界と同じ危機感を共有し、制度の健全な運営に向け、時代に即した抜本的な対策の構築を早急に取り組んでいただけるようお願い申し上げたい。
精糖工業会としても、これまでどおり制度における責任を果たしていくとともに、砂糖需要を下支えすべく、関係団体とシュガーチャージに引き続き取り組み、ありが糖運動とも連携を進めていきたい。
太田委員:調整基準価格については、制度の中で算出されたものであり、異存なし。
輸入原料を使って製品を作っている業界であるため、一部は樋口委員と同じく調整金を支える立場。業界を取り巻く原料、製品等、市場の動向について報告させていただく。でん粉の主原料である米国産のとうもろこしについて、8月の米国農務省の穀物需給報告によれば、単収がよく生産量が上方修正されたところだったが、一転して小雨による単収の低下、中国の旺盛な購入意欲から、原価の相場が急上昇している状況。米中摩擦の中ではあるものの、中国国内でのツマジロクサヨトウの発生等によるとうもろこしの生産減から、中国による米国産とうもろこしの輸入は今後も増える見込み。世界的な異常気象等により、全体的にその他穀物原料も含め原価が高めで推移していること、新型コロナウイルス感染症の影響により経済が収縮していること等により、製品への価格転嫁が進まず、糖化業界のみならず穀物加工業の収益は圧迫されており、今後もその状況が続いていくことが予想される。
次に、製品の動向について、主力の異性化糖の用途は概ねが清涼飲料向けであるため、天候、観光等の飲料需要により左右されるが、本年は、オリンピック・パラリンピックの延期、新型コロナウイルス感染症の拡大によるスポーツ、観光の外出自粛等から、砂糖と同様に、4月から7月の生産実績は対前年比91%程度と大幅に落ち込んでいる状況。一昨年に比べても相当程度減少しており、装置産業である業界の収益を逼迫している。
糖価調整制度については、米に次ぐ自給率を支える砂糖を守り、希少なでん粉の国内原料を守っているという観点、消費者への安定供給、国内農業の維持を担っているという観点から、重要な位置付けにあることを深く認識しているところ。この認識に立ったうえで、改めて申し上げさせていただくが、異性化糖と砂糖の関係については、異性化糖の需要や用途は、異性化糖の持つシャープな清涼感や低温下による甘味度の増加、液状等の特性により、主に飲料向けに素材として定着しているものであり、その棲み分けは十分にできていると認識している。今年のコロナ渦における異性化糖の低迷が、それをまさに裏付けるものであると考えている。需要縮小の中において、清涼飲料分野を中心に熱中症対策製品、カロリーオフ製品など、分野は多岐に分かれていることから、その動向を注視するとともに、無糖製品への移行や高甘味度人工甘味料への移行動向等を積極的に調査、分析していく必要があると考えている。このような業界を取り巻く原料、製品等の状況を御理解のうえ、調整金負担などの制度運用については、引き続き十分な配慮をいただけるようお願い申し上げたい。
また、これまで委員からも話題に上がっている砂糖の需要拡大・高付加価値化について、スイーツが伸びているなかで、特にコンビニのスイーツ製品は伸びている状況にあると認識している。その他の製品の需要は、インバウンド需要減等により、全くと言っていいほど無くなっている現状。このようなことも含め、どのように需要を喚起していくのかを考えていく必要。国産糖の需要喚起に向けた問題点として一つ考えられることは、コンビニは製造メーカーとの共同開発製品が多く比較的積み上げ型で製品を作っていくが、一方で、現在業績のいいスーパーマーケット業界の一部では、どちらかというと販売単価ありきで製品を作っているという認識があり、それが高付加価値の製品を作っていく上での障壁となっているのではないかと考えている。当業界としては、そういったことにも目を向けていただけると幸い。
有田委員:調整基準価格については、砂糖・でん粉とも異存なし。
太田委員と同じく異性化糖業界であり、異性化糖のみならず多岐にわたるでん粉製品を作っている。20年以上この部会に携わっている中で、資料のP30の「でん粉の位置付け」について、当該資料は当業界の内容、とりわけでん粉の利用という観点ではよく整理されていると思うが、当初は国産でん粉を原料として業界の中でやってきたものの、糖化製品では、現在は輸入とうもろこし由来のコーンスターチを原料としたものが97%を占め、国産でん粉原料はほぼなく、そのまま利用される製紙や段ボール用も、ほとんどがコーンスターチで、大きく原料が変化してきているのが状況。
一方、国産でん粉は、ばれいしょでん粉とかんしょでん粉があるが、生産量は漸減している現状であり、そのような中で、コーンスターチがなぜこんなに増えてきたのかを考えると、アメリカにおいて遺伝子組み換えによる単収増加、病害虫耐性などの大きな技術革新があったからこそ、世界中へ伸びることができたことは間違いない。しかるに、日本においては、この部会に携わっている20年間においても、同じ図や表しか出ておらず、いい知恵が出ていないというか、制度の大きな改変が行われていないということが大きな原因。
てんさい糖や甘しゃ糖についても基本的に同じ問題が起きている。世界では、原糖もでん粉も生産がものすごく増えている中で、日本はもっと明るい方向へ政策変更していくことが必要ではないか。
私どもの業界でいくと、コーンスターチが主力になってるため、糖化用に国産でん粉を使おうとした場合、調整金をかけたとしても、とても使い切れない。価格はあと半分くらいにしなければ使い切れない。だから我々は、割り当てられても困ってしまう。こういうようなところまで来てるのが実態。
私どもは、化学品を7割くらい、食品が3割くらいなので、化学品でみると、もっと激しく、我々は、自動車産業や電子産業もやっているが、かつての日本の業界水準に対して、現在の日本に残っているのは、もう6割を切っているというくらい、製品移動が激しく、生産は海外にどんどん出て行っている。
食品でも同じで、生産でも、製品でも、より機能を発揮するよう変化させていくことを基本的に考えるべきではないか。そして、それを具現化する政策が必要ではないか。
惠本委員:砂糖調整基準価格については、異存はない。
北海道におけるてん菜糖業の現状や取組について、お話しさせて頂きたい。
その前に先ほど、精糖工業会の樋口委員の方から、調整金収支の関係で、砂糖消費量の中に占めるてん菜糖の量が大きくなっていることが問題である、というお話があった。収支均衡ということが、本来の目的であろうと思っている。これで、農林水産省、ALICが非常に御苦労をされているということを理解している。我々ビート糖業として、やはり一番に考えなければいけないのは、受け入れ設備、製造設備、そういったものを合理化して、いかにコストを下げていくのかが重要と考えている。そのことによって、交付金の負担を軽減していくことが糖価調整制度を維持していく意味において、我々ビート糖業の義務であろうと考えている。
日本のてん菜糖業の成り立ちについてお話しさせていただく。日本のてん菜糖業は、明治13年、今の北海道の伊達市で官営紋別製造所が作られたのが起源。明治3年には種子を輸入して、研究が始まったと聞いている。明治21年、今サッポロビール園がある赤煉瓦が、札幌製糖株式会社の名残。もう100年以上、ビール園になっているが、これについては、原料ができなかったことなど、様々な事があり終焉をした。その後、大正8年に、北海道十勝で、北海道製糖が作られ、工場は大正9年、ちょうど100年前。日本のてん菜糖業100年の間、非常に苦しい時期もあったが、国、北海道、様々な支援があり、また、生産者の栽培技術の向上、又は機械化、種子、いろんなものが、相まって、今や、てん菜は、北海道農業の輪作体系に欠かすことのできない基幹作物となっている。また、製糖工場は、地域経済の維持・発展に欠くことのできない役割を果たしていることを御理解いただきたい。
先ほど、22ページの資料にもあったが、作付面積は、高齢化や労働力不足により、ずっと減って来ている。昨年、令和元年は、56,700ヘクタールで、最低の面積となっている。しかしながら、作柄は、生産者の営農努力と天候にも恵まれ、651,000トンと豊作になった。その関係もあり、今年の作付面積は、約400haほど増加している。また、労働力不足の対応や、コスト削減のために、直播、これは畑に直接種をまくことだが、昨年が27.9%、今年は31.2%に上昇している。今後、この比率はもっと伸びていくと考えている。
糖業を取り巻く環境は、トラック不足や人手不足、費用の値上げ、こういったものについては、農林水産省並びに北海道の御支援、御理解もあり、必要な設備を整備し、働き方改革や労働環境の改善に取り組んでいるところ。また、SDGsも踏まえ、社会的責任を果たすべく取り組んで参る所存。
一番の問題点は、砂糖消費量が非常に減少しているということであると考えている。私どもの会社、ある株主から何枚にも渡るお手紙をいただいた。「あんたのところの会社は、いろんな報告書に、砂糖消費量は減っていると書いてあるけど、なんかやっているのか。」という、これはお叱りであり、また期待である。「株主優待の砂糖を使うと、非常においしいものができるが、そういったことを発信してるのか。」というお叱りも頂いており、もっと発信しなければ、と考えている。農林水産省のありが糖運動、また、精糖工業会のシュガーチャージ推進協議会、そして北農中央会の天下糖一プロジェクト、こういったものに心から感謝申し上げる。また、当協会でも、昨年、千歳空港を一週間借り、北海道ビート糖フェアを実施した。また、十勝では、小学校で食育授業を行い、砂糖の正しい情報発信をやっている。新型コロナウイルスの関係で、今年は、北海道ビート糖フェアはできなかったが、空港の方にはお願いしてあり、感染状況を見ながら、またやっていきたい。
続いて、今年のてん菜の生育状況をお話しさせていただく。春先は、ほぼ平年並みに植付け作業が終了した。その後、多少乾燥傾向で経過したが、生産者の努力によって、順調に、平年並みで推移している。今後天候に恵まれ、出来高を迎えることを願っている。今年の製糖は、10月からまた始まる。トラックの確保など様々な問題もあるが、今年はやはり、新型コロナウイルス対策が重要。製糖が始まったら、止めるわけにはいかないので、いろんな対策を取り、安定生産を行い、ユーザー様に供給していく責任があるので、これを果たしていきたい。てん菜糖業は、生産や流通など、いろんな問題で苦しいが、今後も北海道の地元に根ざした企業として、てん菜糖の安定生産に努めると共に、糖価調整制度の健全な維持を図るため、関係者の皆様と協力し、取り組んで参りたい。引き続き御支援、御指導をお願い申し上げる。
上江洲委員:本日の調整基準価格については、異存はない。
私からは、さとうきび生産と働き方改革に伴う、製糖工場の改革について、少し、お話させていただく。
まず、さとうきびについては、九州から台湾に至る海域に点在する、南西諸島の島々において、他に代わるもののない基幹作物として、製糖工場と共に地域経済を支える重要な役割を果たしている。そして、これらの島々が、我が国の南方の国境地帯であることから、さとうきび栽培によって、住民が島に住み続けることで、他国からの侵害を防ぎ、国防上の安全保障の機能を果たすとともに、経済活動を行う事により、海洋資源を守るために必要な排他的経済水域が確保されるなど、多くの国益に貢献していると考えている。
近年の沖縄県のさとうきびの生産量は70万トン前後に低迷しており、令和元年産の生産量は67.5万トンであり、増産プロジェクトの目標である82.5万トンと大きな開きがある。この差については、収穫面積が、単収が高い夏植えから株出栽培にシフトしたことの影響が大きく、未達成生産量の99%以上が夏植えである。さとうきびの生産については、農家の所得向上が第一であるから、夏植えよりも生産コストが低い株出栽培にシフトをすることは正しいことであり、今後は早期肥培管理や土づくりなど、株出栽培の単収向上に努めるとともに、株出栽培の効率化のために株出管理機や植え付け作業効率化のためにビレットプランターなどの導入を行い、所得向上を進め、10年、20年と生産を続けることが出来る若手の担い手の育成が急務であると考えている。
近年、各地で集中豪雨による災害が頻発し、また、台風の大型化や進路変更など、大きな気候変化が起きている。これらは、地球温暖化によるものと言われており、さとうきびの生育にも大きく影響していると思われる。新たな気象変化に対応して、防風林の設置や畑地灌漑の普及や作型の改良など栽培方法の全般を見直して、どのような自然状況でもさとうきびが栽培できる体制の構築が必要であると考えている。また、この度、さとうきび増産基金の発動要件に複数の要因を追加して頂き、様々な活用が出来るようになり感謝申し上げる。
製糖工場については、働き方改革関連法の制定に伴い、これまで沖縄及び鹿児島の製糖工場に免除されていた時間外労働の上限規制が適用される。2交代制操業を実施している大半の工場では月100時間、複数月平均で80時間の上限規制を達成するためには、3交代制勤務に移行させなければならず、コストの増加が懸念されている。人員の増加を抑え、時間外労働時間の上限を達成するのに望ましいのは、工場の老朽化を踏まえると、これらの状況に対応した新工場の建設である。いくつかの会社が検討しているが、資金不足の影響で厳しい状況となっている。先ほど21ページには、沖縄の島は南大東1島が掲載されているが、そのほかの多くの島の工場でも、農林水産省や内閣府、沖縄県の支援事業を活用して、工程の自動化や制御室の統合などの工場の効率化、資格取得や技術研修などの従業員の技術向上により、工場の人員の増加を抑えて、残業時間の削減に努めている。また、沖縄県においても高齢化が進行し、15から64歳までの労働人口が急激に減少しており、3交代移行に伴う新たな労働者の確保は厳しい状況にある。更に、時間外労働による残業代の減少は、離島で働いてもらっていた労働者の方々が去ってしまうことが懸念されており、スキルアップに対する給与の増加を検討する必要がある。
最後に、新型コロナウイルス感染症について、申し上げたい。さとうきび産業は、医療体制が脆弱な離島にあるため、新型コロナウイルス感染症の拡大は大きな影響を与えると思う。離島で一人でも発生すれば、工場の稼働に支障を出すだけでなく、離島医療体制そのものに影響を与える。現在、次期製糖期に向けて、島外や県外から来る季節工員の方々へのPCR検査の実施を、市町村に要請するとともに、非接触体温計による検温やアルコール消毒の実施、万一の発生に備えてマニュアルの作成など感染予防に努めている。さらに、感染者が発生した場合、コロナ感染者の島外への移送について行政機関と調整中。新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、国際的な食料の輸入制限下でも、自国民の食料を供給する食料自給力が注目されている。国産の甘味資源作物の安定生産を図り、食の安全と食料自給率の向上に努めている糖価調整制度がますます重要になっている。糖価調整制度の維持・安定化のためにコスト低減を図り、消費者負担や国民負担の軽減に努めて参るので、御指導のほどよろしくお願いする。
田村委員: 先ほど説明があった調整基準価格については異存はない。
せっかくの機会なので、鹿児島県の南西諸島について、さとうきびの育成状況と、この地域が抱える砂糖産業の課題についてお話する。さとうきびの収穫面積は29年度に1万ヘクタールを割り込んだ後は3年連続して減少してきたが、今期はやや増加する見込み。また、梅雨が例年よりも15日ほど長かったこともあり、夏の干ばつ被害も軽減される分、日照不足となったが、梅雨明け以降に挽回し、茎の長さが伸び、茎の本数も増えている。台風10号の影響だが、台風の影響を考えるとき、最大瞬間風速が40メートルを超えたか、超えないかが重要である。40メートルを若干超えたのが喜界島と種子島ということだが、茎の欠損や潮害は深刻なものにならない見込み。しかしながら、鹿児島県のさとうきび生産は構造的に厳しい状況。前年は台風や干ばつなどの気象災害による影響がほとんどなかったにもかかわらず、さとうきびの生産量は50万トンを下回り、期待を大きく裏切られた。1つには収穫面積の減少があったが、農家の生産意欲の低下、高齢化、担い手不足などで管理作業が十分ではなく、多数回の株出作業の増加もある。株出ほ場を含め、単収が伸びていない状況。この状況は今期も変わっていない。またその前の2年間は9月以降の台風により極度の不作となり、交付金基準とならない糖度基準のさとうきびが全体の6割から7割程度となった。こういう状況により、農家の生産意欲が減退し、新しく植える新植面積の減少を招いている。
こういう状況にあって、種子島においては、新品種である「はるのおおぎ」に対する農家の関心が高いと聞いている。新品種の提供が農家の生産意欲の向上になると考えている。農林水産省をはじめとする関係機関の支援を頂いている。セーフティーネット基金をはじめ、生産性向上に必要な機械導入や土づくり、機械の大型化などの対応できる新品種の導入に支援頂いていることに感謝。
高齢化や担い手不足に対しては、農作業の機械化や効率化が重要であり、収穫作業が機械化された現在、関係者と協力して、植付作業の機械化を検討している。また農作業の効率化で注目されるのは、農作業の受委託化であり、受委託の中間組織であり、受託者と委託者の中間組織が入ることで、飛躍的に向上すると考えている。既に、沖永良部島や徳之島では、関係機関が協力して、組織を立ち上げている。
関係機関がこれらに協力して進めているが、構造的問題である収穫面積の減退にはなっていない。農家はさとうきびが儲からないので継がせることができない、他の作物に転換農家が後を絶えない。特にこの9年間のうち8年も不作になっている。一方、農家の物財費の8割を占める薬剤費や肥料代、燃料費が膨らんでいる。そのため、農家の生産意欲は確実に失われている。交付金単価を2年間で440円上げてもらい、交付金が上がらないと考えていた農家を刺激し、意欲がわき、一定の効果があった。鹿児島県の南西諸島のさとうきびの収穫面積は、29年度産で収穫面積は1万ヘクタールを割った。昨年産では、9千ヘクタールまで減少した。今後、9千ヘクタールを割れば経営の岐路に立つ製糖工場の企業が現れる可能性がある。製糖企業も様々な努力をするが、大きく減少したさとうきび農家の生産意欲が向上するように、所得向上に繋がる支援を実施してほしい。
最後に、製糖企業として、コロナウイルスへの対策についてお願い。他の産業と同様に、補助事業による設備の設計・施行に遅れが出ており、補助事業には年度の壁があり、配慮してほしい。
小野寺委員:糖価調整制度のもと、国内産糖への御支援に感謝。また、国内産原料ばれいしょに支援いただいている関係者の皆様にも厚く御礼申し上げたい。
ただいま説明のあった、砂糖及びでん粉の基準価格について異存はない。
最大の問題は新型コロナウイルスである。日本全国同じだろうが、北海道もインバウンド需要の喪失、個々の外出自粛の影響により砂糖及びでん粉の需要が大きく減退しているところであり我々の生産している砂糖、でん粉の消費について心配している。今後新型コロナウイルスの収束が見通せない状況の中で、今現在生産現場でも不安に思っているところが大きい。今後、コロナの早い収束によってそれぞれの業界が回復していかなければならないと思っている。砂糖では業界をあげて消費拡大もやっているが、依然として需要回復になかなか結びついていない。今回の新型コロナウイルスの影響を受けた需要激減に対してはこれまでの対策に加え、抜本的な対策を行わなければならない。北海道では、先ほども話が出ていたが、天下糖一プロジェクトを立ち上げ、生産者自らが消費拡大に取り組み、そしてこれらを一般消費者の方々にも強くしている。これらについて今年、また将来にわたって功を奏し需給の拡大がされることを願うものである。
砂糖と競合する甘味との問題。価格面での公平性の確保が大切だという話をいつもさせていただいている。これについても引き続きお願いしていきたいと思っている。加糖調製品は、糖価調整制度の改正により調整金徴収の対象となったが、依然として価格水準は変わっておらず、砂糖に対しての価格優位性が直っていないと伺っている。次に異性化糖についてだが、調整金徴収の対象となっているが、平成22年以降、調整金徴収されていない実態があると聞いている。この部分についてもぜひお願いをしたい。また、人工甘味料について、食品衛生上の問題もあって、食品添加物の扱いであり、農林水産省の所管ではないが、砂糖との競合関係からすると公平性の確保が大切なので、関係省庁ではないということではなくて、食品の、砂糖との競合品であるという扱いとして取り上げていただきたいと思っているのでどうかよろしくお願いする。
北海道のばれいしょ、てん菜の生産者の立場として言わせていただくと、まずてん菜の振興については、国内で生産された砂糖が円滑に流通消費される環境が必要と思っている。先ほど恵本会長からも話があったが、私ども北海道の生産者にとってこのように流通、消費ができる環境が一番必要だと思っているし、てん菜糖のあり方に関する情報交換会もあるが、生産者、糖業一体となった議論できる場を作ることを引き続き設けていただきたい。
でん粉については、近年慢性的な供給量不足ということで、回復に努めるべく、国からの支援制度を活用させていただいて、ようやく現場にて生産振興に努める機運がもり上がってきた。また、一部でん粉工場の統廃合を実施し、それぞれコストの低減に向けて現場は血を流しながら頑張っていることをぜひ御理解いただきたい。
最後に引き続き国内産砂糖及びでん粉の安定的な供給に向けて全力で取り組むので、国の皆様の御理解、御支援お願いする。
嵩原委員:本日提示ありました基準価格について、異存はない。
合わせて、沖縄のさとうきびの生産者として、糖価調整制度で生産の安定性をしっかり支えていただいていることについて心から感謝を申し上げる。
今般のさとうきびの生産の状況についての概要を簡単に報告させていただきたい。
今期のさとうきびはおおむね順調に推移してきたところだが、ここにきて久米島、南北大東島で台風の被害が生じている。沖縄といえば台風というある意味宿命的なところもあるが、近年条件に恵まれていたところもあり、久しぶりの台風の被害ということで、生産者及び関係者に心理的なダメージが残らないか多少懸念が残るところ。さとうきびは台風等災害からの回復力があるということで、先ほど資料の中でも説明があったが、おおむね七割は生産が確保されると言われているが、今回非常に強烈な台風だったので、大東島で受ける被害の度合いが、さとうきびが根こそぎ抜かれてしまっているところもあり、非常に大きな影響が懸念されているところ。
また、一方の課題としては、さとうきびの生産現場の高齢化の問題。委員の皆様にも御指摘いただいているところだが、生産者の高齢化でリタイヤが始まってきており、この先、どのように生産を続けていくかということが待ったなしの状況。機械化、ハーベスターの導入が進んでおり、重労働からは解放されてきているところだが、一方で植付け作業や夏場の管理作業は高齢者にはまだまだ負担の重たい作業。特に植付け作業については体力の低下に伴い、生産者の手が回らなくなってきており、生産量を回復させていくことにおいて大きな課題となっている。この対策として、国の事業により、スマート農業の実証も南大東で始まっているところだが、いろんな取組においてスマート農業の技術は大きな期待があるところ。沖縄本島でも、比較的大きな面積のある北部地域や中部地域の圃場で取組が始まっている。今はまだ点での取組だが今後面的に拡大していくには色々な課題もある。少なくとも生産回復に向けて生産者側に前向きな動きが見えているというのは明るい話題ではないかと思う。植付け作業の自動化もそうだが、ドローンによるセンシング機能で欠株の植替えをやる等、現場の人が色々と応用可能なので、生産量を確保する取組や解決策を共有しながら進めて参りたいので、国の支援もお願いしたい。
また、作業受託の問題について、農作業受委託の体系を確立して生産を持続させることも大きな課題であり、一部の生産法人を中心として農家の作業を受託するという流れも始まっている。特に沖縄の中でも、沖縄本島は減少率が高く、いよいよ崖っぷちに立たされていることから、このたび関係者で増産に向けての取組を始めており、法人を中心として作業受託の取組をスタートさせていこうという動きが始まっている。効果については、今期でなく来期以降にしか出てこないが、何もしないで見ているわけにはいかないので、今後前向きな取組をしていく必要がある。
また離島において、さとうきびは無くてはならない作物であり地域を支えているが、視点を変えると、さとうきびは地球温暖化の対策としても非常に有効な作物だと言われている。C4作物であり炭素吸収力に優れていると言われている。温暖化の問題が大きなテーマとなる中で、さとうきびの生産を将来的に続けていくためにも、さとうきびの生産が甘味だけでなくて温暖化において機能を持っているところも関係者の方には伝えていただければと思う。コロナの関係でSDGsの動きというのはやや滞っているといった感じはあるが、グローバルな課題を解決するためにも、沖縄の離島でさとうきびを作っていくことが一つの貢献になっているという認識は大切なことだと思う。
また、消費について、委員の皆様からの色々な御意見があり、私も同感するところがあった。甘味という大きな括りの中では、減少傾向にあるが、それを詳細に分析していけば、甘味資源それぞれの競合関係もあり、うまく棲み分けができていない部分もあるのではないかと思っている。また需要から見ると比較的業務用が多いわけだが、年齢階層別に砂糖の需要がどうなっているのか、日本という国は高齢社会でありシニア層で砂糖がどういう形で消費をされているのかも含めて、もう少し掘り下げた分析が必要だと思っている。また、一方で健康への関心が非常に高まっているので、砂糖、あるいは人工甘味料、異性化糖も含めて健康面に与える影響についても一定の分析、あるいは研究が必要と考えている。この点について、もう少し体系的に整備する必要があると思うので、色々と分析していただければと思う。
最後になるが、新型コロナウイルスの影響について、さとうきびの生産では、今のところ直接的な影響は出ていないが、これから製糖のシーズンが始まれば、先ほど分工会の上江洲会長からも発言があったように労働者の移動における感染防止対策と併せて生産に影響を生じないような対策を講じる必要があると思っている。
冒頭にも申し上げたが、糖価調整制度の下でさとうきびの生産が支えられているという点は、沖縄の生産者の皆が共通の認識を持っているので、今後も持続的にさとうきびの生産が支えられていくように安定的な運用を関係者の皆様、それから農林水産省の皆様に心からお願い申し上げて、当方の意見とさせていただく。
髙野部会長:それでは、委員から御発言を賜ったので事務局から回答をお願いする。
小林課長:各委員の皆様から多岐に渡る御意見、御質問いただき感謝する。多くの委員の方が砂糖の消費拡大について、御発言があったと思う。我々も今年の4月からありが糖運動のロゴマークの普及、またSNSを使った幅広い情報発信を行っているところ。まさに各委員から御発言のあったとおり、砂糖そのものを消費するということはなかなか無いということもあるので、菓子等のユーザーの方と一緒に取組を進めていかないとなかなか伸びていかないということはあると思う。コロナの関係もあり、今年は菓子の販売促進事業を行っているが、本事業では、特に和菓子の関係ともタイアップをしているが、砂糖を使った製品をアピールしながら需要の回復に努めていきたい。また、SNSを使った配信については、そもそも砂糖がどのように作られているか、消費者の方は知らないのでさとうきびやてん菜そのものの情報発信もやっており、ある程度好評いただいているところ。砂糖がどういった原料からできているのか、あるいはどうすれば砂糖自体を料理やスイーツ等、御家庭で使っていただけるのか、動画配信等PRしながら創意工夫を凝らして引き続き情報発信をしていきたい。
スマート農業について、三輪委員から成果をどのように現場に浸透させていくのかといった御質問があった。また松田委員からスマート農業について目標があるのかといった御質問もあった。スマート農業については、2025年までに農業担い手のほぼ全てが、データを活用した農業を実践することを政策目標として取り組んでいる。これは、さとうきび、ばれいしょだけでなく品目横断的に農林水産省として進めているところ。先ほど紹介したさとうきび、ばれいしょのスマート農業については、昨年と今年の2年間で実証試験を進めており、その成果がまとまり次第公表することにしている。
また、中宮委員からの砂糖の表示の関係について、現在は加工食品の原料原産地の表示の義務が課せられ、経過措置の期間ということもあり、なかなか原料原産地表示がされていなかった例もあった。御発言のとおり、てん菜を原料とする砂糖については、てん菜糖工場が国産のてん菜を仕入れて一貫工程で製糖しており北海道産と表示することが可能となっている。一方でさとうきびを原料とした砂糖については、産地の甘しゃ糖工場で原料糖を生産し、その後消費地に近い精製糖工場がそれを仕入れ、最終製品として砂糖が製造されていることもあり原材料名としては原料糖あるいは粗糖、国内製造の場合はその表示が義務として課されるようになったところ。しかしながら、精製糖工場で仕入れられる原料糖について、国内で収穫されたさとうきびが原料である原料糖だけでなく海外から輸入された原料糖を使って製造されるものもあるので、なかなか表示をするのは難しい面もあるが、少量で国産のさとうきびを原料として製造される砂糖としてアピールし販売する商品も出てきている。各メーカーごとに食品表示法等を遵守した上で、委員の御発言にあった砂糖需要の拡大に向けた取組として、食品表示上の工夫をしていく必要。また、SNSへのタグ付け、表現のルールについては、我々も勉強していきたいと思っている。ロゴマークは悪用する組織でない限り、申請していただければ使えるもの。基本的に需要拡大の趣旨に賛同いただける方々に広く普及していきたい。
中宮委員:申請は必要ということか。
小林課長:必要だが、HP上からできるもの。悪用を防ぎたいので、排除させていただくところもあるが、それほど厳しい審査でもない。我々の取組の内容、趣旨に賛同していただくということが重要だと考えている。
中宮委員:ロゴマークを普及させるということで、こんなハッシュタグを使うように等指定していただいたり、砂糖の収穫の場面を発信したらすごい評判がよかったとのことなので、3秒くらい動画で流す等、フリー素材で流したり、このハッシュタグを使う方には、HP上で使用しても良い等規定を設けるのがよいのではないか。菓子屋としては、お客様に伝えられることができる上、フリー素材として写真を提供していただければ普及することができるし、価値を感じると思う。
小林課長:出来ることは検討し、これからも継続的な情報発信に努めていきたい。
担い手の確保について、農業大学校で砂糖づくりの魅力を発信したり、インターンシップでさとうきび生産、砂糖づくりの体験をさせてはどうかと、松田委員の御指摘があった。また、鹿児島や沖縄では担い手育成が課題となっている中において、作業受託組織が育成されていると承知。省力化を進める上で、機械を入れることで作業受託組織が育成される面もあるので、引き続き、機械を導入しながら、共同して作業をする取組を推進していきたい。産地では、糖業が主体となって組織されている場合や、地域ぐるみで、JA、市町村、それから生産者団体が一体となって組織している場合もあると承知している。受け皿組織の育成と相まって、担い手の育成のために必要な施策を、産地ともよく議論させていただければと思う。
シストセンチュウについて、昭和40年代から入ってきたが、その原因については不明。また、シロシストセンチュウは、平成27年頃から蔓延しており、北海道等で緊急防除が進められているところ。
矢野委員から砂糖の需要に関する分析を進めるべきとの意見があり、おっしゃるとおりだと感じる。より需要拡大先のターゲットを絞ることも出来るし、何ができるか考えていきたい。
でん粉の調整金収支についてお尋ねがあったが、令和元年産の見通しで28億円の黒字。単年度で見ると5億円の赤字。
糖価調整制度の維持について何名かの委員から御意見いただいたが、近年、砂糖の消費が落ちていることから輸入糖が減少し、調整金収入が減少しているが、国産糖を支えることが崩れていくことが懸念される。糖価調整制度については、関係者の御理解の下に運営されているので、どう制度を回していくべきか関係者との意見交換を通じてしっかり考えていきたい。
スイーツの関係では、コンビニ等で売上が伸びている。価格のあり方が違うのではないかとの御意見もあり、今後研究していきたいと思う。
惠本委員からは、てん菜糖における製造経費削減に取り組むことが大切という話があったが、交付金の支出が増えないように引き続き努力いただきたい。いろいろ方法があるが、スマート農業や機械を導入することも考えられ、生産者ともよく相談しながら進めていきたい。
働き方改革の関係で、令和6年の3月までに達成しないといけないが、P21の記載について、上江洲会長がおっしゃたように、我々農水省の事業のみの記載で失礼した。内閣府の事業を活用していることは承知しているので、引き続き、達成に向けて取組をお願いしたい。
人工甘味料や加糖調製品について、人工甘味料は農水省の所管ではないが、医薬用としてカロリーを低減させる目的で利用されているものが多いと聞いている。そのため、コスト削減のために砂糖の代替をしているとは言えないと考えている。砂糖とは風味が異なるので人工甘味料で替えることはできないとも聞いている。近年の人工甘味料の輸入実態としても、平成25年くらいまでは伸びていたが近年は減少していると認識している。
加糖調製品について、平成30年12月末から調整金の対象に追加されたが、調整金を取る前に駆け込み需要があったことと、あるいは国内における甘味需要が落ちたということで輸入量自体が減少している。価格差は依然としてあるが、対応するためTPP対策として措置した対策を引き続き運営していきたい。
異性化糖の調整金徴収について、平成23年以降発生していない。海外からのとうもろこしの相場によって発動水準が変わるが、とうもろこしの相場が高いので徴収できていないが一定のルールの下で徴収するものであり、御理解いただきたい。
台風の被害について、まずはお見舞い申しあげたい。さとうきびのセーフティネットの活用も含めてしっかりと対応していきたいと思う。
最後に砂糖及びでん粉の調整基準価格について異存ないということで、その意向で進めさせていただく。
髙野部会長:ありがとうございました。ただいま事務局から御回答をいただきましたが、このことについて何か御意見、御発言があればお願いしたい。
(※特段の意見無し)
それでは、御意見等がなければ、議論を終了させていただいきたいと思う。本日は委員の皆様方から各々お立場に立った貴重な御意見をいただいた。本部会としては、事務局から説明のあった調整基準価格案については、異議なしということでよろしいか。
(※特段の意見無し)
ありがとうございました。今後、事務局におきましては、必要な手続を進めていただきたい。
小林課長: それでは、本日の甘味資源部会を閉会させていただきたい。長時間にわたる御審議に感謝申し上げる。
ー以上ー
お問合せ先
農産局地域作物課
担当者:後藤、原田
代表:03-3502-8111(内線4843)
ダイヤルイン:03-3502-5963