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農林水産省

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食料・農業・農村政策審議会果樹・有機部会(果樹関係)現地調査 意見交換 概要

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1.日時

令和元年11月5日(火曜日)
第1部 10時40分~12時00分
第2部 14時10分~15時00分

2.場所

JA松本ハイランド 本所 等

3.出席者

  • (委員)
    上岡部会長、徳田委員、佐藤委員、柚木委員、稲住委員、岩下委員、甲斐委員、 菊地委員、木元委員、鈴木委員、高梨委員、中村委員、西本委員、前山委員(14名)
  • (現地関係者)
    【第1部】JA松本ハイランド、全農長野、長野県
    【第2部】りんご生産者4名(JA松本ハイランドりんご部会)、JA松本ハイランド、 全農長野、長野県

4.議事概要

(1) 開会
(2) 挨拶
(3) ア 長野県の果樹生産振興について
イ JA松本ハイランドの概況
(4) 意見交換


【第1部】

上岡部会長

  • 精力的に新品種・新技術の導入をされているが、一方で担い手や高齢化の状況はどのようになっているか。
  • 高齢化していくなかで、新技術・新品種の導入の際に、組合員の皆様にご理解いただくための工夫はあるか。

JA松本ハイランド

  • これまでの栽培方法は高度な技術が必要であり、後継者も育ちにくいという状況であったが、高密植栽培や新わい化栽培などの新たな技術は、高度な技術を必要とせず誰でも取り組めるため、新たに取り組む産地が見られ、後継者も育ってきている。その他、後継者への支援として、親元へ就農した後継者に対しての支援をJA松本ハイランド独自で行っている。
  • 新たな事業を始める際には、生産者で構成されているりんご部会において話し合いを行いながら進めてきた。特に、若手生産者の協力により苗木生産を産地として取り組んでおり、年間1万本の苗木を生産し、購入苗と併せて生産振興に取り組んできた。

徳田委員

  • 高密植栽培はどの程度導入されているのか。試験研究等では非常に効果があるとされているが、導入には初期投資が大きいので、うまくいかない場合は負担になることも考えられるが、実態として問題を抱えている方はいないか。
  • 傾斜地等の条件の悪いところではなかなか導入しにくいかと思うが、条件が悪い地域での導入の状況、それに対する対策はあるか。

長野県

  • 新わい化栽培、高密植栽培の導入には、専用のフェザー苗が必要であり、安定生産、供給体制に向けて進めているが、10アールあたり300~400本という苗木が必要なことから、必要本数を供給できていない状況である。
  • 条件不利地域については高密植栽培の普及は進んでいないという実態はあるが、平坦地において、作付けできるところを中心に導入の拡大を進めている。
  • 高密植栽培の導入に際し、現場と相談しながら対応しているところであるが、従来の栽培方法とは着花量も異なっており、隔年結果を避けるために摘花・摘果の技術を構築していく必要がある。

JA松本ハイランド

  • 松本ハイランド管内は盆地にあり、どちらかというと平坦地で高密植栽培を推進してきた。麻績という地域はりんごの産地であるが、ここでは5度くらいの傾斜地で高密植栽培を導入している園地がある。大半の機械が5度未満の傾斜で利用できる仕様になっているが、その機械も十分に使えるという状況である。
  • 高密植栽培の導入の実態としては、やらなければいけない作業が出来なかったり、寒さにより樹が枯死してしまった場合など、うまく行かない場合もあるが、マニュアル等により指導を行ってきた。
  • 生産者への聞き取りによると、台風等による果実の落下率も、従来のわい化栽培より低く品質も揃うことから、全体として収益性はかなり上がってきている。

柚木委員

  • 親元就農への助成をしているということで、効果的な取組だと思った。後継者を確保したくてもできないという方の樹園地を第三者への継承していくなど、産地として担い手への継承に対する取組はあるか。
  • 樹園地の集積については、全国的にも立木の問題があり難しいところではあるが、樹園地集積に関する考え、取組はあるか。

JA松本ハイランド

  • 園地の継承については、担い手が栽培されなくなった園地を借りて改植しながら面積を維持しているが、高齢化が進み、荒廃園地もでているところ、地域によっては、地域協力隊と連携して園地の継承を図っている。
  • 若手の担い手により協同せん定の組織をつくり、高齢の生産者等のせん定作業を請け負うといった取組もある。
  • 園地の集積としては、平地ではドリフトの問題等の農産物の安全・安心の観点から、野菜と果樹の圃場が混在していることも課題であったため、園地の集積を進めている。

長野県

  • りんごの栽培面積が減少している中で、高密植栽培と新わい化栽培の栽培面積はH26の257㏊からH30には306㏊と増加している。生産量を維持するためには、単収を上げ、生産性を向上させることが重要と考えている。

中村委員

  • 資料4において個人格差という言葉があるが、個人格差が生じる原因と、格差を是正していく中で、変えることができて一番大きな問題はなにか。

JA松本ハイランド

  • 個人格差については、植付や栽培技術のほか、農家の意識により生じるところがあり、講習会の開催や営農技術アドバイザーによる指導等により、農家レベルの均質化を図っている。

西本委員

  • みかん産地でも収穫期の労働力が課題となっているが、りんご産地においては、品種による分散を行っているようであるが、労働力は十分にあるのか。
  • みかんについては、間伐をしながら品質を安定されているが、りんごについてはどうなのか。

JA松本ハイランド

  • 収穫については、着色面や熟度面を気にしながら収穫するため、臨時雇用を入れにくい状況。一方、加工向けの契約栽培については、品質等大きな問題がなれければ、入れていく。
  • 収穫期の労働力については、ほとんど家内労働が主であり、臨時的な雇用は、摘果・葉摘み等の時期に行っている。これには、行政主導によるアグリサポート事業があり、一般市民の方に作業をお手伝いいただくという取組を行っている。
  • 高密植栽培については、それぞれの樹が牽制して大きくならないという特性もあるため、計画的間伐ということはしていない。

【第2部】

意見交換者(りんご生産者):上條(章)氏、上條(松)氏、野村氏、田中氏

西本委員

  • 高齢化が進んでおり、生産に特化した農業法人化等をして穴埋めをしていく必要があると考えるが、法人化への取組はあるか。
  • 青色申告、収入保険、果樹共済の加入率はどの程度か。

田中氏

  • 法人化については、息子が就農する際に検討したが、相当苦労なことだと考える。経営は安定するが、人手不足により労働力の確保に苦労するという話も聴いており、現状で十分に経営が成り立っていることから、この地域ではあまり法人化しているところはあまりない。

JA松本ハイランド

  • JA松本ハイランドでは青色申告会という会を組織しており、加入者は700名を超える方が加入している。全体としても半数から6割程度が申告している状況。
  • 果樹共済の加入率は県下の中でも高く、6割を超えており、収入保険の加入率は松本ハイランド全体で果樹、野菜等販売農家のうち34名。

徳田委員

  • 園地の流動化が課題となっているが、園地を借地されている方は、どのような経緯で借地されているのか。
  • 高齢化で雇用が難しいと聞いているが、雇用の状況についてお伺いしたい。

上條(章)氏

  • 借地については、りんご、ぶどうについて借り受けており、借りる際には改植の可否を確認した上で、りんごについては、高密植栽培へ改植した。
  • 労働力については、知人を通じて確保しているが、高齢化により高所作業が出来なくなってきた方も多く、今後の労働力の確保が課題となっている。

野村氏

  • 研修生として1名雇用しているほか、摘果や葉摘み時期に臨時的に、農協から紹介してもらっている状況。

JA松本ハイランド

  • 農地の集積・賃貸借については、中間管理機構への移行を推進しているところであるが、事務が煩雑であり、進んでいない状況。

田中氏

  • 自分の園地のうち中間管理機構を活用した借地もある。新規就農者を研修生が地域で10人ほどおり、借地斡旋をしているところ。地域としても耕作放棄地が増えてきているものの、新規就農者に頑張ってもらい、現状維持出来る見込み。

柚木委員

  • 研修生を受け入れている場合、独立の際には園地を借地すると思うが、高齢者等の貸す意向がある人の、園地のストックがそれなりにあるのか。
  • 樹園地を借地する場合、果樹は永年作物であるが、賃借期間は平均でどれくらいなのか。
  • サラリーマンから就農されたとのことですが、就農するきっかけ等についてお伺いしたい。

田中氏

  • 私の地区の人たちはとても協力的で、高齢の方の機械を安い価格で譲っていただいたり、農協の制度も非常に手厚いので、非常に営農しやすい地域であると思う。

JA松本ハイランド

  • 借地の利用権は基本的に単年度で借りて更新している。中間管理機構を活用した場合は、3年で更新している場合が多い。

上條(松)氏<?p>

  • 就農のきっかけは、父の体調が悪くなったことから、地元に異動し、手伝いながら仕事をしていた。その後、仕事を辞めて、就農。果樹農家は収入の時期が偏っていることに戸惑いがあったし、大変な部分もあった。収入の面で、サラリーマンと違う部分について補助できる制度があればいいと思う。

野村氏

  • 高校から大学まで農業関係で、最終的には農業をやろうと思って、就職後、36歳で親元に就農した。気象により左右されるので安定した収入は難しいが、就農してよかったと思っている。

上條(章)氏

  • きっかけは、親が怪我をして農業を出来なくなったので、後を継ぐかたちで就農した。就農当時は度重なる自然災害により大変な思いをしたが、改植をして、現在では6割ほど高密植栽培を行っており、経営は安定している。

稲住委員

  • JA松本ハイランドのりんご部会では、生産量の維持のために、技術的には高密植栽培の導入という取組をされているようだが、その他、施策として取り組んでいることはあるか。

上條(章)氏

  • りんご部会では、部会員は減少しているものの、高密植栽培プロジェクトに取り組んでおり、今後の生産量の増加が見込まれる。また、優良品種への転換の推進にも取り組んでいる。

JA松本ハイランド

  • 選果機の更新を予定しており、消費者ニーズに沿った荷造り規格の出荷と、生産者の負担を減らした出荷体系とすることを目指している。生産と販売を一体として取り組んでいかないと産地として生き抜いていけないと考えており、生産者と話し合いを重ねて、方針をつくっている。

前山委員

  • 高齢化が進んでいる中で、共選所で働く方も年配になってきているということだが、共選所の作業員を確保出来る体制をつくっていけそうか。
  • 高密植栽培の導入により省力化を進めているところかと思うが、高密植栽培以外の省力化できそうな取組はあるか。

JA松本ハイランド

  • 共選所の人員の確保については、高齢化もあり厳しい状況。現状でも、施設間で人員を共有し、通年確保できる体制などに取り組んでいるが、依然として課題はある。今後は新聞の広告等での確保や、農福連携も視野に、労働力確保に取り組んでいきたい。

上條(章)氏

  • りんごについては、高密植栽培で少しでも労働力を減らすということが一番であり、コンパクトにして、その面積の中でどれだけ栽培能力を上げるかということを考えている。
  • ぶどうについては、短梢栽培というのがあり、管理を少しでも楽に出来るということで取り組んでいる。
  • 加工用の契約栽培の紅玉などでは、葉摘みや玉回しなどの作業が必要ないことから、摘果と薬剤散布をしていれば収穫するだけということで、品種の中でも省力化となる。

上條(松)氏

  • りんごについては、黄色い品種というのもあり、着色管理がいらないため、葉摘みの作業が省かれるので、そういった品種も組み合わせて栽培している。

田中氏

  • 収穫には作業用の機械を導入し、その上で作業することで、かごの上げ下げなどの作業を減らし、省力化している。

佐藤委員

  • イタリアへはどのような経緯で視察にいったのか。また、国内ではどういうところに視察にいくのか。
  • 高密植栽培にもデメリットがあるのではないか。
  • 高密植栽培は省力化になるということであるが、どれくらい作業時間を短縮できるのか。

田中氏

  • イタリアへの視察のきっかけですが、長野県には果樹研究会という組織があり、そこの中信支部で、先進的な技術を取り入れた方がいいんじゃないかという意見があり、ネットワークを持っている方もいたことから、一番栽培に優れた場所ということで、イタリアへ視察にいった。また、国内では青森県に行くことが多い。

JA松本ハイランド

  • 高密植栽培のメリットとしては、せん定が単純であること、作業時間が短縮でき、従来の栽培方法が10aあたりの年間の作業時間が260時間程度とされているところ、高密植栽培に取り組んでいる生産者に聞き取り調査を行ったところ、123.5時間ということで半減できること、早期成園化が可能であることなどがある。一方で、対応年数が15~20年と見込んでおり、従来の樹形に比べて経済寿命は短くなると考えている。そのため、改植の推進等をしていく必要がある。

以上

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