令和6年度食料・農業・農村政策審議会 果樹・有機部会(第2回果樹関係) 議事録
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1.日時及び場所
日時:令和6年12月17日(火曜日)9時31分~12時26分
会場:農林水産省農林水産技術会議委員室
2.議事次第
- 開会
- 議事
(1) 第1回果樹部会及び現地調査における主な意見と論点の整理
(2) 第1回果樹部会を踏まえて御議論いただきたい事項
(3) 委員からの話題提供
・七條委員
(4)意見交換
(5) その他 - 閉会
3.議事録
午前9時31分 開会
- 羽石グループ長
それでは、定刻になりましたので、ただいまから食料・農業・農村政策審議会果樹・有機部会(第2回果樹関係)を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、大変忙しい中、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。
私、当部会の事務局を務めております農産局果樹・茶グループ長の羽石と申します。この後議事に入るまでの間、司会を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
本日の会議は、御案内しましたとおり、資料はお手元のデバイスで御覧頂きます。委員の皆様のデバイスで御確認ください。
まず、議事次第。それから、座席表、配布資料一覧、続きまして、資料1、委員名簿でございます。それから、資料2としまして、第1回果樹部会及び現地調査における主な意見と論点の整理でございます。資料3、第1回果樹部会を踏まえて御議論いただきたい事項でございます。資料4、七條委員説明資料でございます。それから、資料5、今後の審議の進め方について、それから参考資料と、最後に稲垣委員から御提出いただきました資料でございます。
以上を保存し、閲覧できる状態にしておりますので、御確認いただきまして、ファイルが見当たらない、開けないなど、不具合等ございましたら、お近くの事務局員までお声掛けください。
続きまして、委員の御出席の状況でございます。
本日、赤松委員、竹下委員、堀切委員、髙羽委員が所用により御欠席ということになっております。
本日、現時点で、委員及び臨時委員18名のうち14名に御出席いただいておりますので、食料・農業・農村政策審議会令第8条第1項の規定による3分の1以上の出席を満たし、本部会が成立していることを御報告いたします。
それでは、ここからは林部会長に議事進行をお願いしたいと思います。林部会長、よろしくお願いいたします。 - 林部会長
皆様、おはようございます。朝早くからありがとうございます。先日は、現地調査、ありがとうございました。
それでは、これより私が議事を進めさせていただきます。
議事次第を御覧ください。
本日の議事は、1、第1回部会及び現地調査における主な意見と論点の整理、2、第1回部会を踏まえて御議論いただきたい事項、3、七條委員による話題提供と、稲垣委員資料の御説明をお願いした上で、4、意見交換、5、その他の5点となっております。
まず、議題1、第1回部会及び現地調査における意見などの整理、及び議題2、御議論いただきたい事項の提示について、事務局より御説明をお願いいたします。 - 羽石グループ長
それでは、お手元の資料2、3に沿って、御説明させていただきます。
まず、資料2でございます。
第1回果樹部会及び現地調査における主な意見と論点の整理ということでございます。
まず、目次を御覧ください。
目次、左側に果樹農業の生産基盤強化の加速化に向けた施策の推進、それから右側に、2としまして、新たな需要への対応、それから3としまして、流通・加工の合理化の推進ということで、第1回果樹部会、それから現地調査におきまして、委員の皆様から頂きました御意見を分類しまして、その御意見に対応した論点を整理するという形で、このような項目立てで整理をさせていただきました。
次回の果樹部会におきましては、新たな果樹の基本方針の骨子を御説明することになりますけれども、その骨子の構成の土台となる項目立てということになりますので、項目立てがこれでよいか、それから抜けている論点がないか等につきましても御意見を頂ければと思っております。
次のページでございます。
まず、生産基盤の強化ということで、1つ目としまして、労働生産性の向上ということでございます。ここにつきましては、これからどんどん人手が減るという中で、少ない人数で大きな面積を対応していく必要があるということで、基盤整備、それから省力樹形、スマート技術の導入ということで、これを進めていく必要があるのではないかということでございます。下の1ですけれども、それに当たりまして、現在進めております地域計画に基づいた園地の集積・集約が必要ではないかということでございます。
次のページにまいりまして、基盤整備の推進ということでございますけれども、基盤整備を進めていくことは必要だということですけれども、例えば水田跡地であれば、排水性の改善ですとか、それから急傾斜地であれば、その傾斜を緩和する方法が必要ですとか、あるいは中山委員からは、基盤整備に当たっては水や土砂の流入の問題もあるというようなお話もございましたので、地域に合った基盤整備を進めていく必要があるのではないかという論点にさせていただいております。2につきましては、省力樹形の導入ということで、省力樹形をはじめとする省力的な園地への転換を進めていく必要があるというふうにさせていただいております。
次のページにまいりまして、スマート農業、機械化の推進ということで、なかなか果樹の分野におきましては、自動収穫など難しい部分があるわけですけれども、スマート技術の導入は今後進めていく必要があるということでございます。
それから、5ですけれども、今後労働生産性を飛躍的に上げていくためには、大規模な経営体の育成により効率化を進めて、生産性を上げていく必要があるのではないかということで、大規模な法人経営体の育成・参入、それから、省力的な園地への転換、これをスピード感を持って進めていく必要があるのではないかというふうにまとめさせていただいております。
続きまして、次のページですけれども、労働生産性を上げることは必要なんだけれども、一方で、その生産物の付加価値を高める、あるいは地域にとって地域経済に貢献するというような付加価値も必要ではないかという御意見をたくさん頂きました。これを受けまして、右側の論点ですけれども、若い人たちに魅力のある産業とするため、所得を向上させるとともに、地域経済を守る観点から加工や輸出など関連作業への波及、雇用の創出、地域の活性化など、地域の基幹産業としての果樹農業の付加価値を高めていく必要があるのではないかというふうにまとめさせていただいております。この点につきましては、後ほど、資料3の方でも御説明させていただきます。
続きまして、次のページに移りまして、ここからは担い手・労働力の問題でございます。1つ目、新たな担い手の育成ということで、先日、信州うえだファームを見ていただきましたけれども、果樹特有の高度な技術が必要であるとか、園地の確保、それから未収益期間等の新規参入のハードルが高いということに対応できる果樹のトレーニングファームの取組を進めていくことが必要ではないかということでございます。
続きまして、次のページですけれども、そのような新規就農を促進していくに当たっては、今、果実の価格は上がっているけれども、なかなかその経費も上がっていて、後継者確保のためには再生産が可能となるような形が必要ではないか、あるいは農業の将来に可能性を感じられる経営を示すことが必要、あるいは所得だけではなく重労働の問題もあるというような御意見をたくさん頂きましたので、新たな担い手が果樹農業に魅力を感じるような労働生産性の高い果樹農業の姿を示していくことが必要ではないかという論点を、1つ立てさせていただいております。
続きまして、3多様な担い手ということでございまして、これは現地調査の場でも出た意見だったんですけれども、認定農業者だけではなく、兼業農家、小規模農家が一体となってその地域を守っていくことが必要ではないかという論点でございます。4労働力不足への対応ということで、果樹特有の労働ピークが非常に激しいということに対応しまして、サービス事業体などを活用するという対応も必要ではないかということでございます。それから、5、これは先ほどと重複しますけれども、今後担い手が不足するという中での対応としまして、大規模経営体に関連産業から参画していただくということを進めていく必要もあるのではないかということでございます。
続きまして、次のページ、(3)温暖化対応等の安定生産の脅威となる事項への対応ということでございます。
1つ目、気候変動対応でございます。第1回果樹部会でもたくさんこの点について御意見を頂きましたので、これについても次の資料3で御説明したいと思っておりますけれども、生産減少の大きな要因となる温暖化の影響に対して、資材、機材による対策、品種構成の見直し等の検討を進めることが必要ではないかということでございます。
続きまして、病害虫・鳥害獣対応ということで、病害虫も温暖化に伴ってその影響が大きくなるという面もございますので、引き続き、病害虫・鳥獣害への対応についても一層進めていくことが必要ではないかということでございます。
次のページ、3でございます。第1回部会でもいろいろ御議論いただきましたけれども、苗木・花粉の確保ということで、今後、省力樹形を進めていくには苗木も非常に量が必要になるということで、苗木・花粉につきまして供給力の強化とともに、需給のマッチングを進めていくことが必要ではないかという論点にさせていただいております。
続きまして、生産基盤の最後の論点ですけれども、新品種・新技術の開発ということで、気候変動や労働生産性の向上など、果樹農業が直面する課題に対応した品種技術の開発、それから、AIなど他分野からの技術の転用も進めることが必要だろうということで、論点とさせていただいております。
続きまして、次のページからは新たな需要への対応ということでございます。
まず1つ目、新たな需要への対応ということで、若い人たちは皮や種があることを食べにくいと感じているとか、消費者の立場からは果実の価格が高く、もう少し質を下げても手に入りやすくできないかというような御意見、いろいろ頂きました。これを踏まえまして、国産果実の需要喚起のため、手頃で日常的に摂取してもらえるような生果実や加工品などの、新たな需要に対応していく必要があるのではないかという論点にさせていただいております。
次のページですけれども、国内需要の喚起に当たって、砂糖が大量に添加されたような加工品、こういうものもございますので、その消費促進のメッセージを出すときには留意が必要というような御意見も頂いておりますので、栄養バランスや機能性などの観点も踏まえて、需要拡大の取組を進めていくことが必要ではないかというふうにまとめております。
次のページに移りまして、海外需要でございます。
輸出ということで、更に日本の果実の高品質という強みを生かしながら、更なる海外需要の開拓を図るとともに、輸出先の規制やニーズに対応した産地を形成していく必要があるのではないかということでございます。それから、2ですけれども、知的財産の活用ということで、ここは企画部会の方でも議論になっておるところでございますが、競争力のある新品種を開発し、海外市場を開拓していく、技術や知財でマネタイズすべきではないかというような御意見を頂いておりますので、果実の輸出と併せまして優良品種を海外で品種登録するなどしまして、そのロイヤリティを新品種の開発に還元して、更に生産者に還元していくということや、苗木のリース方式の活用やシステム管理による流出抑止、ブランディングの推進、こういうものも進めていく必要があるのではないかというふうに論点を立てさせていただいております。
続きまして、次のページからは流通・加工の合理化の観点でございます。
1つ目、1集出荷の効率化ということでございまして、ここも幾つか御意見を頂きましたけれども、流通分野におきましても人手が不足するという中、集出荷施設、選果場の再編・集約、合理化を進めることが必要ではないかということでございます。2果実輸送等の合理化ということで、果実や段ボールなどの出荷規格の見直し、それから、共同輸送あるいはトラックから鉄道などへのモーダルシフトなども検討を進めていく必要があるのではないかということでございます。
続きまして、次のページ、最後、加工でございます。
加工についてもたくさん御意見を頂きました。1ですけれども、加工原料用果実は儲からない農業の象徴となってしまっているので、新しい儲かる加工についてカテゴリーすることができないか、あるいは果実を加工することで付加価値を付けていくことを検討する必要がある、このような御意見を頂いておりますので、地域の基幹産品となるような加工品の創出など、付加価値の高い加工仕向けの取組が必要ではないかということと、2ですけれども、加工原料用果実の確保もなかなか厳しい状況になっているという状況でございますので、規格外品を加工用に回すというだけではなく、契約生産など価格を決めて、最初から量をある程度加工に回せるような二段構えの生産構造が必要ではないかという論点を立てさせていただいております。
最後のページでございます。
果樹にとって5年のスパンは短く、10年を見越した検討が必要という御意見を頂きました。正におっしゃるとおりでございますので、10年先を見越した基本方針の検討が必要ではないかという論点を立てさせていただいております。
資料2につきましては、以上でございます。
続きまして、資料3を御説明させていただきます。
資料3につきましては、第1回果樹部会を踏まえて御議論いただきたい事項ということで、2つ論点を挙げさせていただいております。目次の次のページでございますけれども、1つ目は気候変動への対応ということでございます。もう1つは労働生産性の向上だけではなく、付加価値も上げていかなければならないという御意見を幾つか頂きまして、この2つにつきまして特に資料を作成して、御説明させていただきたいと思っております。
次のページ、まず、気候変動への対応でございます。
本年、非常に暑かったということで、ここにございますとおり、みかん、りんご、なし、かきにつきましては、果実の日焼け、あるいはみつが入る等の影響によりまして、出荷量も平年より1割減少から3割減少という影響を受けたところでございます。それから、うめにつきましては、開花前の冬の高温により、開花期が大幅にずれて、雌しべの発達が不十分なうちに開花してしまったということで、平年より5割減少ということになっております。おうとうにつきましては、昨年夏の高温の影響により、双子果が発生し、更に今年の収穫期の高温により障害果が発生し、こちらも5割減少ということになっております。果樹は永年性作物であるということから、高温等の影響が当該年度にとどまらず、長期に及ぶことを踏まえた対策が必要と考えております。
次のページが、現在考えております対策でございます。
左側から、直射日光を遮断するための遮光ネットの設置、あるいはマルチやかん水設備による適正な水分管理・施肥管理ということでございます。こういうことによって短期的にこの高温の対策を進めていかなければならないと思っておりまして、ネットやマルチ、かん水設備、細霧冷房機、このような高温対策に資する資材、機材の導入につきましては、現在国会で御審議いただいておりますけれども、6年度の補正予算で支援対策を措置できないかと考えているところでございます。
真ん中、2ですけれども、産地で取り組んでいただきたい事項としまして、高温のリスクを分散させるために、品種構成を見直して高温被害を受ける果実のリスクを分散していただきたい、あるいは着色のために日光に果実を当てるために、葉を落とすということをやっておりますけれども、逆にこの日焼けを防止するために葉を落とさない「葉とらずりんご」などという取組も進んでおりますので、こういう栽培方法の見直しについても検討していただけるように、産地が判断いただけるような考え方、基準の設定を私どもも考えていかなければならないと考えております。
それから3、右側ですけれども、このまま温暖化が進む場合には、温暖化に適応した品目への転換ということも考えていかなければならないということで、パッションフルーツやアボカド等熱帯果樹への転換ということも、今後戦略的に考えていかなければならないというふうに考えているところでございます。
続きまして、次のページ、付加価値の点でございます。
左側の箱が、前回第1回部会で御説明しました内容ですけれども、現在のペースで担い手の減少が続くと、多くの産地が消滅に向かうおそれがあるということで、担い手を確保し、産地を維持して、需要に応えていくためには基盤整備、省力樹形への転換、スマート農業技術の導入を集中的に進めていく必要があるのではないかということでございますけれども、これに加えましてたくさん御意見を頂きました。地域を支える果樹農業という観点から、地域を支える果樹農業の衰退はそのまま地域の衰退につながるおそれがあるということで、農業という枠組みだけでは労働力も限られるという中、地域の輸出や加工等の関連産業、あるいは定年退職者等の地域住民、これらの果樹生産への参画を求めて、果樹農業の地域における基幹産業としての付加価値を高めていくという取組も重要ではないかということでございます。
次のページからは、6つ、事例を御紹介させていただいております。
1つ目、左側ですけれども、こちらは大区画化で省力樹形を入れて、選果機も導入し、輸出等につなげていくという労働生産性をどんどん上げていこうという取組でございます。右側につきましては、同じように大規模に面積をやるんですけれども、超省力的に加工専用に契約栽培で適正価格で取引していただくということで、地元の加工業者と契約出荷を行い、適正価格で取引、加工原料用に特化した生産を実現しているという例でございます。
次のページの左側ですけれども、こちらはカボスですけれども、カボスを加工原料用として必要とする食品加工産業からも参入していただいて、自ら生産に携わるということで、遊休農地が活用され、地域に就農者、雇用創出というような地域経済への活性化が起こっているという事例でございます。右側につきましては、醸造用ワインということで、日本ワインの評価上昇に伴いまして取引単価も向上し、地域のワイナリー、観光との連携ということもございまして、粗放栽培で面積を拡大し、離農園地の活用にもつながっているという事例でございます。
最後のページですけれども、そのような大規模な生産ができないという中山間地や島嶼部においても、左側は山椒ですけれども、比較的軽労な作業で、比較的高単価に取引されるということで、荒廃した山間地を活用して、地域全体に付加価値を裨益させているという事例でございます。右側につきましては、瀬戸内海の島嶼部ですけれども、柑橘類を原材料とした粗放的な加工仕向けの省力栽培、地場の食品加工企業と全量委託ということで、こちらも粗放的な栽培で雇用も創出され、地域経済が活性化しているという事例でございます。
このような基盤整備、省力樹形、スマート化という労働生産性を上げていくということをベースにしながら、このような地域を支える果樹農業として付加価値を上げていく取組、これを推進していかなければならないという方向でいかがでしょうかという御提案でございますので、これについても御意見を頂ければと思っております。
駆け足でございますけれども、資料2と3の説明は以上でございます。 - 林部会長
ありがとうございました。
資料2、3についての質疑応答、意見交換は後ほどまとめて行いたいと思います。
続きまして、議題3、委員からの話題提供としまして、まず、七條委員から、資料4を基に御説明をお願いいたします。 - 七條委員
大分県の七條です。よろしくお願いします。
話題提供のお時間を頂きまして、ありがとうございます。こういった場での話題提供ということで大変緊張しておりますが、よろしくお願いします。
私からは、大分県の果樹振興について紹介させていただきます。
次を御覧ください。
大分県農業の概要です。大分県、耕地面積の約7割が中山間地域に位置しております。右下の円グラフを見ていただきますと、令和4年度農業産出額なんですけれども、上から畜産、野菜、米に次いで果実となっております。
次を御覧ください。
大分県の果樹についてです。主な品目として、なし、ぶどう、カボス、ハウスみかん等を挙げております。海岸部に柑橘類、内陸部に落葉果樹の産地があります。見ていただくとおり、大分県は果樹産地として大きい産地ではないかとは思います。
次を御覧ください。
こちらは、県南柑橘研究会という、県内の部会組織の会員数の推移になります。オレンジ部分がその実数になりまして、平成21年には800人近くの会員がいましたが、どんどん減っておりまして、令和5年に300人を切っています。部会組織は平均年齢が70歳を超えているところも多く、ピンク色の部分は今後の会員数予測ですけれども、このままだと高齢化もあり、さらなる減少が予想され、担い手は激減していると言えます。部会としての存続がこのままでは大変厳しい状況にあるかなと考えております。
次、お願いします。
こちらは、新規就農者の就農実態に関する調査の結果です。見てのとおり、新規就農者は野菜を選択することが分かります。また、果樹を選択する新規就農者につきましては、全国データは左下で15%ですが、大分県は一般的に果樹産地という印象が強くないといった背景もあり、地域にこだわりなく果樹で農業を始めたい方からは選択されにくく、僅か9%となっておりまして、状況はさらに厳しいと言えます。
次を御覧ください。
野菜と比べ果樹の新規就農者が少ない原因としまして、果樹の農業の現状等でもお話があったと思いますが、果樹には壁、参入のハードルがあると考えています。1つ目は未収益期間の存在、2つ目は広い農地が必要となること、3つ目は剪定など高度な技術が必要であること、4つ目は機械化が進んでおらず手作業が多いことです。省力樹形の導入で3や4というのは将来的に解決できる可能性もあり、1や2への取組が必要と考えております。
次を御覧ください。
「2050年の未来はどうなる?」題しておりますが、将来、超人口減少社会になるといろいろなところで言われています。そういう状況の中で農業ではどうなるかということを考えたときに、基幹的農業従事者の激減、ロボットやAI機械の普及・一般化、生産作業の省人化、1経営体当たりの面積増大が予想されます。
そこで重要な視点ということで、2つ挙げております。1つ目は、スマート農業など新技術を導入することが可能な圃場が必要であるということ、2つ目は、人口減少で従事者が減少する中で産地としての物量を維持するためには産地面積を維持していく必要があることです。
次、お願いします。
そういった背景から、大分県では果樹振興の取組としまして1、ターゲットの明確化、2、基盤整備による作業効率の良い園地の造成を進めております。ターゲットを明確にして新たな担い手を確保していくこと、併せて効率的な園地をつくっていくことで、農業従事者が減少する中でも維持可能な産地づくりというのを目指しております。また、第1回の際に選果場整備に関する意見を出させてもらったんですけれども、省力化・効率化という観点で選果場の集約化、AI搭載選果機の導入というのは必要になると思いますので、そういった取組もあわせて、1経営体当たりの面積の大規模化を進めていきたいと考えています。
次、お願いします。
まず、1つ目、ターゲットの明確化です。今まで活動の主体として、一緒に取り組んでおりました既存部会・高齢生産者に関しましては、もちろん現主力でありますが年齢的な部分もあり、普及対象ですが、新たな推進対象ではないかなと。既存部会は地域のリーダーが多く、非常に頼りになりますので、ピンクの部分で囲っている新たな担い手を一緒に地域に受け入れて、サービスを与える側となってもらう、一緒に取組を進めていく協力者として位置付けています。これからの主なターゲットとして、1つ目は、後継者・新規就農者ということで、当たり前かと思いますが、これからの産地を支える新世代ですので、部会活動の主力にすべき存在と考えています。2つ目が参入企業ということで、産地の中の多様な担い手の1つとして位置付けをしております。こちら新たな担い手ということで1つ位置付けが最重要であると考えています。これらピンクの部分の、担い手を対象にした施策の増強が必要であると考えます。いかに今まで農業に関わってきていない非農業者にアプローチをして、産地に取りこんでいくかが重要と考え、取組を進めています。
具体的に、次を御覧ください。
新規就農者確保の取組ということで、ファーマーズスクールの取組です。平成29年から果樹のファーマーズスクールという農業経験のない人が就農するために必要な技術や知識を身に付けるための就農システムを設置しております。こちらは毎年安定して新規就農者確保につながっており、効果を上げておりまして、継続実施が必要です。一方で、現在進行形で減している生産面積をカバーできるかというと、これだけでは厳しい状況です。必要な取組ですが、これだけでは十分ではないと考えております。
次、お願いします。
そこで、大分県では企業参入確保の取組を行っております。平成19年度から異業種企業の農業参入等積極的に推進しております。年間20件程度参入実績があり、こういった企業に果樹を推進しております。担い手の要望に応じて、経営計画の作成であったり、農地の確保だったり、オーダーメイドでの支援を行っております。
次、お願いします。
2つ目は基盤整備による作業効率のよい園地の造成です。大規模園地で省力技術が導入できる園地を造ることを目指しております。急傾斜地や、段々畑ではどうしても労力が掛かりますので、こういった既存園地の継承では省力化は困難です。右側のように列植で作業道をしっかり確保して、全面乗用機械での管理が可能となる園地を造っていくことが重要であると考えています。
次、お願いします。
具体的な取組について、はじめに農地調査です。こちらは地元でできる最初のステップだと考えております。農業委員会や中間管理機構、部会、JA、市町村、県等、地元の関係者でチームをつくりまして、遊休農地を中心に候補地の調査を行っております。そういった候補農地を参入希望している担い手に案内しまして、担い手のそこに参入したいという要望を受けて、次のステップに移ります。右側、農地集積から整備合意ということで、長野県の現地調査でもお話があったとおり、最も時間が掛かる部分だと思っております。1筆ごとに、多いときには100~200筆以上あると思いますが、地権者一人一人確認して、その方々への連絡、説明、合意を経て、3、4、5、6と進めていき、地権者の整備同意書受領をもって、やっと基盤整備事業に進めることができます。地元の協力は必要不可欠なので、時間は掛かりますが丁寧に取り組む必要があると考えています。
次、お願いします。
こちらが基盤整備による新規団地整備の事例です。取組前は上の写真のように、元柑橘園ですが、耕作放棄地となり雑木が繁茂しているような状況です。こちらを基盤整備事業の中で、まず雑木を伐採しまして、下の写真のように面が出てきた形となります。
次、お願いします。
造成で表土処理、徐礫、整地等を行いまして、最終的に下側写真、基盤整備事業が終わった後に、果樹経等補助事業を使って植栽を行っております。全面機械化体系で管理できるよう列植を基本としています。
次、お願いします。
担い手に応じた支援体制の構築についてです。関係者で、参入支援PTを組織し、話し合いをするのが基本ですけれども、行政機関は縦割りで様々な部署で業務が分かれていますので、事前に行政協議を行って、方針案をもって、担い手と会議をするようにしております。
次、お願いします。
基盤整備最大の課題ですが、どうしても長期間を要します。地元の人が担い手として設定されている場合は、そこに家があったり、既に農地があったり、時間は掛かっても待てると思いますが、新規参入者は待てないと考えます。
次、お願いします。
そこで、大分県では果樹基盤整備に向けた2段階推進を行っています。基盤整備をする際に、左側の水色の部分に、実体化に向けた初動対策ということで、地域外からの担い手に対してはなかなか土地が集まらなかったり、基盤整備の許可が下りなかったりと、うまく進みにくいこともありますので、まずは補助事業を主体に地域で実体化してもらうことを進めております。2ha未満の一部圃場を先行して整備して、早く営農を開始した上で、平行して基盤整備事業を進め、最終的に全ての園地が準備できるような流れで進めております。
次、お願いします。
新規プロジェクトと題しておりますが、今新植しないと、二、三十年後、果樹園地が残らないと考えておりまして、果樹園地整備の取組を県内複数か所進めています。大分県では手法を平準化して、県内で広く進めていきたいということで今取組を進めているところです。中央果実協会の今年度の後継者・担い手育成事例調査の方で、大分県のカワノが詳細版を発表しており、ユーチューブに残っておりますので、あわせて御確認いただければと思います。
すみません、駆け足の説明になりましたが、以上です。 - 林部会長
ありがとうございます。
それでは、続いて、稲垣委員から資料提供を頂いておりますので、御説明をお願いいたします。 - 稲垣委員
稲垣でございます。
この資料は、夕べ、今日の招集状に、委員からの話題提供という項目があることを初めて気が付き、何か出さなくちゃいけないのかと思って、慌てて作ったものです。余り練れていませんが、今の私の問題意識をまとめて、この後の御議論の参考になればということで報告させていただきます。
今回、この果樹部会の議論に参加すると同時に、企画部会の方にも私入っておりまして、新聞報道等でもその基本計画を議論する際に、企画部会の11月6日に農水省が経営体と農地面積の試算、推計を出して、2030年には経営体が半減し、農地も90万haぐらいたしか減るという、かなりショッキングな数字が出てきているわけであります。その際、企画部会で配付された果樹の部分を、今日はここに張ってきたということです。
問題意識として、この部会でもその基本方針をこれから策定するわけですし、あと企画部会でも基本計画を作るということで、その方針、計画を作ることは大変大事で、これはしっかり作らなくてはいけないですが、同時にこういう状況が2030年に推計として出ている以上、若干の手戻りは覚悟の上でその方針なり計画策定と同時に、具体的な行動を起こしていく、そういう問題意識があるということです。
どんな行動を取るべきかという、これは私の考えですけれども、2ページにございますように、やはり今いる経営体が持続的に維持できるということと、今いる経営体がしっかり継承できるということを講ずる必要があるという問題意識です。その際、作業としてやるべきことは、現在公表されている全国ベースでの推計、数値なわけですが、これは当然農水省の方で統計を積み上げたものですので、都道府県なり市町村別にこの経営体なり、農地面積がどういうふうに減るのか。かつ、その中で果樹というものを絞り込めるのであればなおいいのかなということであります。
それから、あと認定農業者が平成5年3月の数字でちょっと古いんですけれども、全国で22万件います。果樹の単一経営が1万8,000います。あと複合経営はその中でも果樹が第1位の経営体とかいうのを明らかにした上で、認定農業者というのは5年後の経営改善計画を立てて、それを市町村と関係団体で支援するということですから、ある意味虎の子の経営体なわけです。ここの動向なり経営改善計画をしっかり進捗管理し、支援するということと、認定農業者の、4割が65歳以上ですので、個別の経営改善計画達成とあわせて、その認定農業者の経営継承問題、イコール新規就農対策とドッキングした手立てを講じていく必要があるということであります。認定農業者は個人、法人かかわらず、これは個別の経営なわけですけれども、地域的な広がりということで産地を生産部会という単位でやるのか。産地というものをしっかりグリップして、その産地の園地補助、それから産地の構成員の動向を踏まえた対応をしていく必要があるという問題意識です。
そして、3ページ目は、これは10月のこの部会に私出席できなかったので、資料をお出ししたものと、それからあと11月20日の企画部会でも発言したのですが、地域計画の取組とドッキングさせていく必要があると思っております。御案内のように地域計画は来年3月31日に向けて、市町村の農政部局と農業委員会が中心になって、今策定しているわけです。11月20日の企画部会の中でも発言させていただいたのですが、今約1,700弱の市町村で、2万3,000からの地域計画を作るということで頑張っていただいているわけですが、私の耳に入る限りでも畑作、それから果樹の地域計画を作るのが難しいということをよくお聞きします。その際、私の素人的な立場で、果樹であれば産地部会なり、JAさんなり、そういうところでグリップをされているわけですから、そういうところとコラボしながらやってはどうですかということを申し上げているのですが、やはりなかなか苦戦をしているというのが、感覚的に否めないと思っています。であれば、行政ルートでその産地に対して、地域計画との取組とうまくドッキングできるような指導というのか、働き掛けが必要なのかなと思います。産地であれば、組合員なり、またその人がどこの園地を耕しているかという情報があると思いますので、そういうものを今やっている地域計画の取組にうまくコラボしていく必要があると思います。
地域計画は、農水省も、私どもも、来年3月31日で終わりではなくて、むしろそこからがスタートだと思っておりまして、来年3月31日に設定したところで足りない部分の地域計画を継続的に作っていくという中で、是非この産地とのドッキングをしていく必要がある、そういう問題意識を持っています。
そのほかの対応ということで、先般見せていただきました現地、長野市の事例と、信州うえだファームの事例は非常に参考になる取組であると思います。特に長野の場合は、改めて基盤整備の重要性、園地が整えば遊休農地もなくなると同時に、若い人が入ってくるということが如実に示された事例であると思います。ただ、これは樹園地だけではなく、基盤整備をする際の課題である同意の手続とか、所有者不明農地の問題を、これは果樹だけではなくてオールジャパンの問題として早急に解決しなければいけないのかなという認識を持っています。
信州うえだファームの取組は、JA関係者の方の前で言うのも口はばったいんですが、JA事業の1つの方向性なのかなと思います。信州うえだファームなかりせば、十数年の間に50ha近い農地が遊休化するおそれがあったものを、組合員の農地に研修生を入れて、しっかり地域に根付かせて、組合員を増やしているということは非常に刮目すべき事例なのかなと思います。JA又はそれに関係する農業委員会、農地バンク及び地域の連携を改めて構築していく必要があると思います。
それから、今大分県の方の御報告にもありましたが、各地でトレーニングファームであるとか、そういうシステムができておりますので、これのプラットフォーム化というか、新規就農の取組として全国農業会議所が1987年から新規就農の相談センターを立ち上げ、それが今のいろいろな新規就農の取組につながっているわけですが、誤解を恐れず申し上げますと、やや新規就農というのは、ラッキーな面がないと最終的な相談から就農までいっていないのかなと思います。もう少し相談から就農まで、フランスではそれをベルトコンベヤーに乗るみたいに就農するというような表現をされておりますが、その際にやはり各地のトレーニングファームなり、先ほどの大分の取組のようなものがもう少しプラットフォーム上に乗っかるような取組が今後必要という問題意識を持っております。
それから、今後、基本計画の方で議論をし、またこの部会でも議論をされるわけですが、基本計画には農業経営モデルというものが全作目ごとに網羅されているわけですが、そこに載っている果樹のモデルの妥当性といいますか、どのようなモデルをそこに載せていくのかということが、大きな課題になってくると思います。
それから、農水省の御説明にもありましたように、やはり畑で果物を作るということは当然なわけですが、カットフルーツであるとか、新規需要事業、輸出等を見据えたサプライチェーンとして、果樹の生産から流通、末端までのチェーンを考えていく必要があるということであります。
最後に、これは弘前市が現在進めている離農をしたい方、それから新しく拡大なり就農したい方がシステム的な取組がされているということで、こういう取組を丁寧に探せば、全国各地にありますので、トレーニングファーム的な取組のプラットフォーム化とあわせて、こういうマッチングシステムのプラットフォーム化といいますか、横展開をしていく必要があるということを、夕べ1時間ぐらいの間にぱたぱたっと作ったもので、非常に粗雑な整理ですが、この後の議論の参考にしていただければ幸いです。
私からは以上です。 - 林部会長
ありがとうございました。
それでは、事務局及び七條委員、稲垣委員からの御説明を踏まえて、委員の皆様から御意見、御質問を頂戴したいと思います。特に資料2は次回の果樹部会で議論する予定の果樹の基本方針の骨子の土台となることから、この骨子の構成の観点で、項目立てへの御意見、また、論点の立て方への御意見についても頂戴したいと思います。
前回、第1回と逆の順番で、まず、中山委員からお一人、4、5分ほどで御発言いただければと思います。一巡した後で、フリーディスカッションの全体意見交換の場を設けさせていただきます。
それでは、中山委員、よろしくお願いいたします。 - 中山委員
皆さん、おはようございます。熊本の中山です。
私は、代々続いている農家の担い手ですので、担い手の立場からでの目線といいますか、率直に感じることを皆さんにお伝えさせていただきたいと思っております。
これはこの資料ごとに自分が思うことを伝えてもよろしいでしょうか。 - 林部会長
もし必要であれば、事務局からおっしゃったページを映していただきますので、御指示いただければと思います。 - 中山委員
まず、この事務局の方から出されている資料2の4ページの労働生産性の向上の中でのスマート農業、機械化の推進、まずこれで、私が住んでいる地域になりますけれども、40年前から基盤整備が3回行われております。その基盤整備に取り組んでいることにより、将来の展望の方が開かれて、少しずつではありますけれども後継者を育てていくことが今できている状態です。
この基盤整備計画を行うことにより経済的な成功体験によって……すみません、私は後でフリーディスカッションのときにまとめて発表させていただきたいと思っていますので、やっぱり基盤整備が一番重要だなと考えております。
いつも発言させていただきますとおり、基盤整備に関しては水の対策、かん水設備だったりとか、水害とかそういうことに対しての対策が一番だ、重要だと思っております。温暖化だとか、そういうことに関しての考えとか、そういうのはまたフリーディスカッションのときに伝えさせていただきたいと思っておりますので、後で、まとめたことを発表させていただきます。 - 林部会長
ありがとうございます。
それでは、続いて、永岡委員、お願いいたします。 - 永岡委員
おはようございます。おてつたびの永岡と申します。
私からは、人材のマッチングサービスを行っておりますので、担い手・労働力の確保という点で、1点だけコメントさせてください。
先ほど大分県での事例のお話、ありがとうございました。そちらでもあったように、いかに農業者を取り込むかという論点は非常に重要だと思っておりまして、今回、是非こういった視点もあるといいなと思ったのが、今、農業の関心層というところは、前回もお伝えさせていただいたように、弊社のプラットフォームだけでも70%の方が農業に興味があるという方々はいらっしゃるという中で、おてつたびを通じて関心や興味を高められている方も多いのかなと思いますし、弊社のサービスだけではなくて、農業との接点というのはいろいろな民間企業さんであったり、農水省さん、市町さんの取組で増えているかなと思うんですけれども、一方で、結構関心層との接点を点ではなくて線に変えながら、どう育んでいくかという視点がまだまだ抜け落ちてしまう点も多いのかなと思っておりますし、私たちもまだまだちょっとそこが力不足だなと感じている部分があります。実際に弊社のサービスを活用して就農された方や担い手に向けて動かれている方は、やはり市町の方がサポートがその後あることが多かったり、前回、上田に伺ったときもやはり市町のサポートが最終的に決め手だったということをおっしゃる方もいらっしゃったのかなと思ったときに、こういう関心を持ってくれた方々が線になりながら、担い手に最終的になっていただけるような動線をつくるというのは重要だなと思いますし、そういった視点があるといいのかなというのは、官民連携というところだと思うんですけれども、以上になります。 - 林部会長
ありがとうございました。
続いて、寺地委員、お願いいたします。 - 寺地委員
おはようございます。資料2の9ページ、第1回目の果樹部会の中で発言をさせていただいて、うまくまとめていただいたなと思っているんですけれども、ちょうど今しがたなしを作っておりまして、今剪定の時期に入ったところです。ようやく剪定です。普段でしたら既に剪定が始まるんですが、11月は非常に暖かかったということで、落葉がなかなかできなかったということで、今剪定しながら考えるんですけれども、やっぱり気象変動のことを常に考えております。
1回目では、今の対策として必要だよねということをたくさん言わせてもらったんですけれども、よくよく考えたときに、気象変動に対する対応というのは、下手にやれば対処療法的な方法で終わってしまうんじゃないのか。例えば、気象変動に強い品種の開発をお願いしますといったところで、しょせん品種ですので、なしとてなしの品種しか頭に浮かばないわけです。ところが現場としては、やっぱりなし産地はなしでずっといきたいなという思いの方もたくさんおられる。
ところで、もう既に鳥取の場合はみかん産地だと言われておりまして、我が家にもみかんがあるんですけれども、非常にうまくなったんですよ。ところがそれをなしからみかんに農家が一斉に変わるかというのは非常に難しい問題もあろうと思います。長年培ってきたもう既に歴史、文化ですので、そのあたりで気象変動に対する対応というのは、引き続いて同じ品目が作れるような対応が何かないのか。環境を取り戻すというのを21世紀に叫ばれて既に25年経ったんですけれども、何一つ前に進んでいなくて、だんだんと温暖化がひどくなってきている。ここで温暖化をストップさせないと本当に幾ら気象変動の対策をしたところで、追っかけっこになるんだろう。言い方を変えると、時間は掛かるんですけれども、昔のような地球を取り戻さないと到底無理ではないのか。新しい品種、技術開発する年数と、いかにして昔の環境に近づけるかは、どっちが早いかよく分かりませんけれども、国民一人一人、地球人一人一人が考えていかなければならない問題だというのを、今考えながら仕事をしているところでございます。
また、後ほどフリートークのところでお話しさせていただきます。 - 林部会長
ありがとうございます。ここまでのところで、事務局からコメントがあればお願いします。 - 羽石グループ長
ありがとうございます。羽石でございます。
中山委員からありましたとおり、将来の展望を開き、後継者を育てていくために基盤整備が一番重要ということで、正に私ども、今回、論点として整理させていただいているとおりでございまして、水の対策とか、場所場所に合った基盤整備を進めていかないといけないというふうに考えているところでございます。
それから、永岡委員からお話がありましたとおり、うえだファームでもそうでしたけれども、やはりサポートがあるということが決め手になるというところは大きいと思いますので、私どもでもこれからどんどん進めていきたいと思っておりますトレーニングファーム、それから、労働力確保の取組においてもそういうきめ細かいサポートができるようなことを心がけてやっていけたらと思っているところでございます。
それから、寺地委員からございました気候変動対応ですけれども、御指摘のとおりでございまして、農林水産省としましてもみどり戦略等に基づいて、温暖化対応を進めていかないといけないということで、日本の農林水産業としても温室効果ガス排出削減ということに取り組んでいくわけでございまして、日本全体としてもそうですけれども、なかなかこれをストップさせて、昔に戻すということとどちらが早いかというと、これは分かりませんので、まずは短期的な対策としては資材、機材での対応、それから品種構成とか、なしからみかん、あるいは熱帯果樹へという品目転換しないでも済むようにということだと思いますけれども、まずはそういう取組を果樹部門としては進めていかないといけないのかなというふうに考えているところでございます。 - 林部会長
ありがとうございます。
続いて、鈴木委員、お願いいたします。 - 鈴木委員
私の方から2点ほど発言いたしたいというふうに思います。
まず、このスマート農業についてでございますけれども、果樹農業を維持していくためには、農業経営で安定した生活ができるような労働生産性を上げていくことが重要だと思いますし、そのためにはスマート農業の導入、機械の導入を可能にするための基盤整備、この辺が非常に重要になってくるというのは、全くそのとおりだというふうに思っておりますけれども、ここ数年、ほかの生産品もそうですけれども、機械の値段が非常に高くなっています。物によったら30%、50%値上がりしている。ここ2、3年で値上がりしているというような状況ですので、農家の方では機械のために農業をしているんじゃないかというような発言まで出るような状況であります。
ということなので、限られた特定の作業だけの機械でなくて、もう少し汎用性のある安価な機械の開発も必要なんだろうなというふうに思ってございますし、特に新規就農者、機械の導入の初期負担が非常に大きいということでございまして、新規就農ではいろいろな支援制度があって、圃場ですとか住宅の確保にはいろいろ支援もあるわけですけれども、そのほかに農業機械の導入費用だとか、あるいは作業場、倉庫、納屋、こういったものも必要でございますので、その辺の初期費用が非常に高いというようなことで、なかなか大きなハードルになっているのかなというふうに思ってございます。
それと、トレーニングファームでございます。現地調査で見せていただいた信州うえだファームの取組は非常にすばらしいものだというふうに思ってございます。産地の維持のためにも、もっとJAが積極的に取り組めばいいというふうに思うわけですけれども、このトレーニングファーム的なものがなかなかJAの事業としては乗りにくい面が実はございます。というのは、農業協同組合という性格上、組合員のための事業の実施というのが建前でございまして、そうでなくてもいろいろ国の方から員外利用の制限だとかいうこともだいぶありますので、その時点では組合員でない新規就農希望者に対しての事業展開はなかなか、農協の事業としてはそぐわない面があるのかなというふうに思います。そのため、信州うえだファームもそうだったんですけれども、別会社、子会社設立というような形で実施しておりますので、全国各地にこのようなトレーニングファームを設立していくためには、そういった設立しやすい環境整備が必要なんだろうなというふうに思います。会社の設立なり運営に何らかの支援が必要なのかなと思います。
以上でございます。 - 林部会長
ありがとうございました。
続いて、神農委員、お願いいたします。 - 神農委員
それでは、私の方から。まず、先日は長野へお越しいただきまして、大変ありがとうございました。現地の皆さんも大変、委員の皆さんに来ていただいて感謝を申し上げるというようなことでございます。
実は2点とも、成功事例を見ていただいたわけで、できてしまえばうまくいったで終わってしまうような話になるんですが、ちょっと違う、要望事項みたいになっちゃうんですけれども、まず基盤整備の組合のあの場では言えなかったけれども、できれば採択する要件を緩和してもらった方が、今大分県さんで随分やっていただいているような、バックアップを強力にやっていただいている県はいいんですけれども、どうも何十か所も視察に訪れたり、講演に行ったりしている先進事例として若穂綿内の代表の方はおっしゃっていましたけれども、私が幾ら説明したって、最初からもう無理だという、ハードルが高過ぎて、さっきの七條さんの説明の流れがありますよね。もうその先の段階で駄目になって、その次に今度、対象者の了解というのがなかなかうまくいかないで、それで苦労してやっとこぎ着けるというところまでいかなきゃ駄目だというのがあるので、できれば入り口ぐらいはもう少し広げていただきたいなと。
一例をいうと、認定農業者というのがくせ者で、要件の中に入っているんですよ。だけれども先ほどの議論の中にありましたけれども、農業をこれから守っていくためには、認定農業者だけではやらなくて、農業外の方も御協力いただきたいと思っているし、今高齢だって言われていますけれども、その方たちもまだまだ頑張っていただいている。それから小規模農家も協力していただく中で、やっぱり要件の中にそれが入ってしまうと大変になるということも言われました。
それから、上田の件なんですが、実は農協関係の人が一人顧問で残っていただいて、技術指導をやっているんですけれども、その方がしみじみ言うのは、簡単なものじゃなかったよ、お金を随分使ったという、農協がね。JA信州うえだが地元の市町村が大変理解があって、担い手をどんどんつくらなきゃいけないということで、だからできたのかもしれないっていうぐらい大変だったようです。うまくいった人っきり集めて、発言していただいたものですから、こんなにうまくいくんだってなるけれども、そんな簡単にいくんじゃないということをあえて言ってほしい、そんなことであります。これは基本計画には余り関係ないと思います。
最後に、気候変動の件で、実は今年の果物の推移は生産量の減少で、単価は堅調で推移してまいりました。これはずっともも、ぶどうとこうなっていたんですが、久しぶりにりんご農家が単価がよかったものですから、春からずっと良い流れできて、ふじで少しお金を取ってもらいたいなと思っていたら、大変な自然災害といいますか、なかったのに胴割れという、普段はちょっと考えづらいんですけれども、カンカン照りの後、大雨が降って、りんごの一番堅い晩生種のふじの胴体が割れてしまうという現象が、信州で2割ぐらい。りんごの木って2割が欠損しますと全滅に見えるぐらいな被害なんです。見た目がうんと悪くて、さっきの加工にも回せない。こんな状況になってきていることがあります。
したがって、この部会の中で、自然災害対応というのを十分に書いていただいておりますけれども、ちょっとそんな狭いものじゃなくて、天変地異にふさわしいぐらい果樹はいつもリスクを背負っているというのを認識しながら、今後も議論を頂ければなというふうにも感じておりますので、それはお願いでございます。
あと、これから何かやっているときに、いろいろな面で省力化というのがありますが、これは菊地さんがこの間言ったとき、言おうかなと思ったけれども、「葉とらずりんご」というのはもう40年も50年も前に長野県でやったんです。売れませんでした、全く。売れっこないんだよね。というのは、要するに低等級の評価になっちゃうんですよ。要するに真っ赤なりんごのところに真っ白に斑点が残るわけで、葉っぱの形で。ところが菊地さんがおっしゃるとおり、葉っぱがあった方がうまいんです、りんごっていうのは。だけれども流通には乗らない。規格外になっちゃうんですよ。それをさっきも書いてありますけれども、理解をしてもらえれば、こんないいことはないと思います。ここに書いてあったとおりなんです。ただ、難しい。
りんごは昔は袋かけたんですよ。有袋っていってね。それで無袋にした。サンふじという名前で売った。ところが100%の収穫の中の20%はもうその瞬間にロス、もう枝ずれ、いろいろ外敵や何かがありますからね。それでも流通に乗らないんですよ。そこへいっぱい自然災害、日焼けね。いろいろと出てきますので、そこら辺もちょっと難しい。
後ほど、また菊地さんがそうだろうなっておっしゃってくれると思いますけれども、そんな状況です。
どうもいろいろとありがとうございました。 - 林部会長
ありがとうございました。
続いて、七條委員、お願いいたします。 - 七條委員
大分県の七條です。
私の方からは、資料2の担い手の確保の部分、P6からなんですけれども、1の新たな担い手の育成というところで、基本的には果樹専業農家、新規就農者を確保する視点での記載になっていると思います。果樹の大産地であれば、そういった視点なのかなと思っているんですけれども、先ほどの話題提供の中でもお話しましたとおり、大分県では新たな担い手というところに、専業農家と参入企業等も同列で地域の新たな担い手として捉えておりますので、そういった視点で、今5番に分かれて記載されていると思うんですけれども、同じ視点で考えていけるといいなと思っています。
そうした中で、専業農家である、新規就農者で使えて参入企業では使えない制度資金等があり、新たに投資をして果樹を始めるという点ではどちらも同じだと考えていますので、同様の支援が得られるといいなと感じております。
また、16ページです。加工用原料果実の確保と記載がありますが、国産の加工用果実は需要があり、必要なものであるという認識です。しっかり加工用果実を生産していくことが必要だと思っています。既存生産者は市場で単価の取れるA級品を作る栽培管理・経営をしておりまして、それに伴った経営規模であると思っています。なので、その中から加工割合が増えると経営が成り立たない、お金にならないというのは当たり前で加工品=儲からないと考えるのは仕方ないとは思います。もちろんしっかりA級品を作る経営体は必要ですが、あわせてB級品果実で量を取って、省力的に管理する経営体、記載にありますとおり、最初からある程度加工に回す前提で管理をする経営体、そういった様々な経営体が産地にいるのが理想で、役割分担ができるといいのではと思っています。多様な担い手というふうに記載があるように、それぞれの目標とする果実・経営によって生産の方法が違う中でも、一定量が集まることで、販売・流通様々な点でスケールメリットを発揮できると思いますし、生産物を余すことなく価値のあるものに変えることができるのではないかと思います。そういった意識改革ができるといいのではないかなと個人的には考えており、そういった産地は強い産地、継続する産地になるのではと思います。
あと需要拡大という点で、輸出等、海外のマーケットを開拓していくことは必要だと思っていますので、引き続き取り組んでいければいいなと思っています。
以上です。 - 林部会長
ありがとうございました。
それでは、ここまでについて、事務局からコメントをお願いします。 - 羽石グループ長
ありがとうございました。
鈴木委員からございましたとおり、機械の価格も上がっているということで、新規就農時の初期負担が非常に大きいということで、機械のところについても支援の制度があると思うんですけれども、汎用性のある安価な機械の開発、これは非常に難しい問題だと思いますけれども、関係部局と考えていきたいと思います。
それから、トレーニングファーム、なかなかJAの組合という性格上難しいという面があるということでございますので、別会社を設立してやるという方法がやりやすい環境の整備、ここもどういうことができるのか、少し考えさせていただければなと思っております。
それから、神農委員からございましたとおり、基盤整備が成功事例だったということで、新規農業者の要件は、例えばほかの補助事業においてもこういうところで参入が難しいという話もありますので、ちょっといろいろ考えていきたいと思います。
それから、JAもいろいろお金を使われたということで、実施計画を策定する段階等のそういう活動にも使える活動資金の支援等もあるというふうに考えておりますので、そういうことも御紹介していければなと思っております。
それから、気候変動、今年はこれまでにないふじの胴割れ等があったということで、気候変動への対応につきましては今回の基本方針でしっかり書き込んでいきたいと思っております。
あと「葉とらずりんご」につきましても、これも着色なのか、日焼けを避けるのかということで、正におっしゃるとおり、どう理解をして、消費者側に理解をしていただけるのか、流通外にならないようにできるのかということを考えていかなければならないというふうに考えております。
それから、最後、稲垣委員からございましたとおり、新たな担い手という書き方につきまして、この部分は新規就農者というつもりで書いておったんですけれども、参入企業も新たな担い手ということで同列ではないかということでございますので、言葉の使い方については改めて考えさせていただきたいと思っております。
それから、加工用果実は、前回の部会でも寺地委員からも高品質果実の生産を進めてきた産地に、加工用果実を作れと言ってもなかなか難しいという話もございました。やはり、そういう高品質果実の生産を進めていくところと、先ほど説明しましたけれども、加工原料用に専用でやっていく産地とか、あるいは加工用原料が必要な加工業者がもう自ら参入する、そういうような形で、加工原料用果実の生産も同時に並行して進めるという形を目指していくべきなのかなというふうに考えているところでございます。
以上でございます。 - 林部会長
ありがとうございます。
それでは、ここで休憩時間を設けたいと思います。11時から再開いたしますので、よろしくお願いします。
午前10時55分 休憩
午前11時02分 再開
- 林部会長
それでは、時間となりましたので、審議を再開いたします。
前半に続いて、ここからも御意見を伺ってまいりたいと思います。オンラインで御参加の小林委員、お願いいたします。 - 小林委員
小林です。よろしくお願いします。私からは4点、意見を申し上げたいと思います。
1点目ですが、最初の労働生産性のところの付加価値額についてなんですが、付加価値額が上がる要素は2つで、1つ目が差別化力、もう1つが価格転嫁力なので、その2つの観点から資料に記載の事例がなぜ付加価値額、付加価値労働生産性が上がっているのかという背景を、是非農水省さんの方で深掘りいただいて、教えていただけたらありがたいなと思っております。というのも、単に事例の紹介だと、どうしても地域でいろいろな方々と連携してやっていく中で、その地域だからうまくいったんだよねという、ある意味外部環境というか、特殊性みたいなところがあって、なかなかエッセンスを汎用的に活用できないという課題があるので、そこを深掘りいただけたらうれしいなと思っております。
2点目が、国産果樹の需要喚起のところですが、栄養バランスとか機能性の観点から対策が必要というところは、正にそうだなと思っていて、ただこれの根本的な背景、問題として、特にこの分野が、柔らかく言うとすごく意思決定プロセスが固定化されてしまっているという問題が、そもそも根本的にあるのではないかと思っています。つまり、同じ人がずっと同じことをやっているので、なかなかこれが需要があるだろうと思い込んだものから離れられないという課題がどうしても出てきていて、例えば私たちの地域は、あんぽ柿が特産品なんですけれども、あんぽ柿、今いろいろな研究で例えば美容にいいとか、女性特有の健康課題にもいいというのはいろいろなエビデンスが出てきているものの、どうしても訴求方法として二日酔いにいいという一択になっちゃうようなこともあるわけなんです。そうすると、例えば味が濃いとか、砂糖がたくさんとか、添加物がいっぱい入っているとか、それの何が嫌な人たちがいるのかということがどうしても産地側で把握しようとする人たちが少ないんじゃないかなという感覚を持っています。
そうすると、女性の意見を聞けばいいのかということで、農業女子とか、女性部とかでいろいろ考えたりもすることがあるんですけれども、だけれども結局ビジネスとして成長産業としての農業の在り方というのを、もっともっと社会につくっていかないとやっぱり成り立たないという部分があると思うので、この農業を取り巻く担い手だけじゃなくて、農業に関わる人の多様化、意思決定プロセスをどうしていくのかという論点は一個考えざるを得ないところなんじゃないかなとは思っております。
3点目、気候変動についてなんですけれども、私たちも今年度、ももで農水省さんの環境負荷の軽減の見える化の取組で、星3つ取得させていただいたんですけれども、これをやってみて、私たちの地域で環境負荷を軽減していくような栽培方法をちょっとやってみようみたいな広がりも徐々に増えてきているんです。それはなぜかというと、やっぱり高く売れるからという、消費者の需要を捉えているというところが非常に大きいところだと思います。なので、環境負荷の見える化の農水省さんの取組とかも、消費者の認知度をどう上げていくかという、気候変動の部分で生産サイドだけではなくて、消費者の理解、認知度みたいなところも一個論点として必要なんじゃないかなというふうに感じました。
最後に、それらを踏まえて、項目立てについてなんですけれども、項目立てについて4点ありまして、付加価値額のところとか特にそうだと思うんですが、誰が一体稼げるようになるのか、稼げるようにしていくのかというところから、単に大企業が稼げればいい、地域にお金が落ちないという状態ではないと思うので、これからの地方の農業というところを踏まえれば、何らか地方創生に特化した項目というか、特記事項みたいなところがあって、それを各地方の方々が、ああ、そういうことねというふうに、地域のためにはこれがいいよねというようなことが分かるような特記事項も入れていただいた方がいいんじゃないかなというふうに思いました。
2点目が、担い手のところで、担い手の多様化とかに触れていただいていると思うんですけれども、農業のサプライチェーン全体に関わる人材の多様性、先ほど申し上げた意思決定プロセスの固定化みたいな問題もあるので、そこの農業に関わる人たちの多様性みたいなところも御検討いただいた方がいいんじゃないかと思っております。
3点目で、気候変動に関する消費者への理解、見える化の取組というのがいいのかどうか分からないですけれども、消費者の理解も同時に向上させていくんだということを一個入れた方がいいんじゃないかなと思っております。
最後に、もう一個、担い手のところで、ちょっと分からないんですけれども、外国人材の受入れについては論点として検討しないでいいのかなっていう素朴な疑問がありまして、結構農水省さんも大使館の方にいろいろ行かれていると思うんですが、私たちも大使館からお話を頂いて、外国人材の農業分野での受入れについて意見交換をさせていただいています。私たちもやったことがなかったので、非常に先入観を持っていたなということを、意見交換だけでもすごく気付かされていて、そこも国内でどんどん人口が減っていく中で、外国の方々とどう連携していくのかというところも、一個の論点として検討すべきなのかどうかというところは一度考えていただきたいなと思っております。
以上です。 - 林部会長
ありがとうございます。
では、続いて、会場の菊地委員、お願いいたします。 - 菊地委員
おはようございます。山形の菊地と申します。よろしくお願いします。
私の方からは、かなり資料はまとまってましてすばらしいなと思っていますけれども、4点くらい、質問とかお願いとかさせていただきたいと思います。
まず、スマート農業についてですけれども、いろいろなスマート農業のやり方がありますが、果樹栽培にとってやっぱり薬剤散布の防除というのは結構大変な仕事だと思っています。その1つにドローンでの防除があります。しかし、まだまだ落葉果樹対象の農薬の登録品目がなく、ドローンでの防除が出来ない状況です。そこで、出来るだけ早く落葉果樹に適用する農薬の承認、開発をお願いできたらありがたいなと思っているところであります。
また、気象変動に関しましては、私なりの考えとして、それぞれの果樹の品目にいろいろありますけれども、その品目の品種開発、特に暑さに強い品種を農研機構などと協力しながらやっていただければ、これが一番の近道かなと思っております。
また、担い手確保につきましても、先日、長野県にお邪魔したときにも、これから担い手確保の本当の理想じゃないけれども助けになるのが基盤整備だったり、あと信州うえだファームのトレーニングファームの事例なんかを参考にしながら、全国的に広げていったら、それなりに担い手確保になるのかなと思っておりました。
あと果樹栽培とは違いますけれども、農水省で果物を200g推進というのをかなり前からやっていますが、ある会のときに、糖尿病学会の偉い先生方から、果物は血糖値にはあまり影響がないという話を聞いたんですが、地元のお医者さんに行きますと、私もちょっと血糖値が高いので薬を飲んでいますが、その都度あまり果物を食べるなと言われるんですよ。そこら辺をもう少し具体的にじゃなくて、糖尿病学会の偉い先生から全国のお医者さんに言っていただいて、いわゆる糖尿病だったり、糖尿病予備軍の人たちにもまだまだ果物を食べていいんだよということを奨励していただければありがたいなと思っています。
あと苗木生産者の立場もあるんで、それについてお話しさせていただきますけれども、前回の会合でも苗木ってそんなに不足はしていないという話をさせていただきました。ただ、需要と供給のバランスがあって、なかなかマッチングがうまくいかず、その年によっては多少足りないものもありますけれども、中には寺地さんがよく言っています、なしのジョイント栽培とか、りんごの高密植栽培については、特にりんごの高密植栽培苗木については4年掛かるので、とても今の単価では採算が合わないのかなと思ってなかなか作る人もいない。なしのジョイント栽培に関しては、産地から2m50、3mの苗木を作れと言われるんですけれども、苗木を作ることは可能なんですが、それを発送する手段、運送屋さんはそんなに長いものを持っていかないので、その辺が必要な場合は現地で作るのが一番かなと思っています。
また、ワイン用の苗木、垣根栽培に仕立てるワイン用の苗木も結構今高密植で植えるんで、これもなかなか足りない部分がありますが、これは先ほど言ったとおり、前もって言っていただければ十分に確保できるんじゃないかと思っております。
以上です。 - 林部会長
ありがとうございました。
続いて、川久保委員、お願いいたします。 - 川久保委員
東洋大学の川久保です。よろしくお願いします。
私は加工の話を少しさせていただきたいと思います。加工原料を作っていて儲かるかどうかというのは、原料を幾らで買ってもらえるか。結局のところ、それがどういう価格の商品で売れるか、その商品力に懸かっていると思っております。そういう意味でいかにヒット商品を作るかということに尽きると思うんですけれども、御紹介の中にあるように、島嶼部における地場産業ですが、これに載っている写真というのは、はっさくゼリー、広島県の因島の話です。私は因島の隣の生口島というところによくレモンの調査に行くんですけれども、単品ではこのはっさくゼリーで6億円ぐらい売り上げているというので、ものすごい数字なんですね。おかげで販売している農協は高く原料を買えていて、80円ぐらいで買えている。昔はもっと安かった。もっと高くすれば、もっと原料は集まるかなと思うくらいで、原料が不足している。あと3割ぐらい増えてもいいという話を聞いたことがあります。はっさくは割と高齢者にも作りやすい、粗放的な栽培をしても実が成る品種なんですね。そんなこともあって、高齢者が最後に残す柑橘の品種がはっさくであったりするようです。なので、高齢者が粗放的に作る加工原料で、そこそこの値段で買ってもらえる。だから続けられるという側面があると言っていました。
ただ、これだと非常に消極的なんですけれども、実際、専業の法人化した大きな農家も2~3反の部分については、じゃあ、加工用に作ろう。そんなに売れている産地の顔だったら協力しましょう、そういうふうな形で作ってくれたりする。つまり、非常にヒットすれば、皆さんモチベーション高く加工品を作るというのも現実にあるのではないかと思っています。
先ほど個別事例は普遍的なものにならないと言われ、そうかもしれませんが、いろいろな芽が各産地にあると思いますので、努力されることが大事かなと思います。
あともう1つは、和歌山県に100人規模のジュース会社、地元からの起業の工場があるんですが、そこは完全に非農家というか、大卒の従業員が集まってきて、実際に農業にも従事して、会社の自社園で働いている。農業を好きになって、スピンアウトして、農家になるのも応援します、というようなことを言っているんですね。
ですので、入口として加工の会社に入り、自社園で働いていく、そういう道もありますので、地元の企業に限らず域外から誘致した企業がそれをしてもいいんですが、加工は農業と直接的には違うようですが、実はつながっているということですので、大分県さんの事例は正にそうだと思うんですが、企業が入ってくる、地元から育つということについて、政策として今までどういうことをやってきて、どんなことができるのかということもよく分からないので、お聞きできればと思います。 - 林部会長
ありがとうございました。
続いて、岩波委員、お願いいたします。 - 岩波委員
農研機構の岩波といいます。省力樹形を中心とした技術開発をしていますので、そこら辺の観点で幾つか意見を述べさせていただきます。
省力樹形は、特に私はりんご栽培が専門ですので、りんごの栽培は海外の事例を結構用いているんですけれども、手を抜こうと思えば、省力的にやろうと思えばやれる樹形ではあるんですけれども、ただ品質の面で海外と日本では全然求められているというか、使われている品質が違っていて、日本で海外のまねを同じように省力的に管理をしたりんごの高密植栽培をやろうとすると、果実が小玉になったりするというようなところがあります。
何でかというと、日本で結構伸び伸びと育てた木で、水を吸えばそれだけ果実も太って、みずみずしいジューシーな果実ができるんですけれども、それをあえて高密植にするということで、枝を伸ばさないでコンパクトにしようしようとすると、品質的にちょっと今までおいしいと言われているりんごのものではなくなる。より一般的な海外のものにだんだん近くなってくるというところはあります。
ただ、労働力が減っている中で、省力樹形を導入して省力的に管理するという流れは私はいいと思います。それが耕作放棄地の解消につながるというふうに思います。
差別化なり、日本の輸出、オリジナリティを考えたときに、より海外と同じような品質のものを作って勝負できる、売れるのならそれはそれでいいと思うんですけれども、それを例えば日本の高品質と言われている大玉でジューシーでみたいなところをアピールするならば、そこはちょっと考えなきゃいけないのかなというふうに思うところはあります。
一方で、機械化というのを考えたときに、機械化するには海外と同じような木の形で作る方が有利だと思っています。それは海外の機械でも使えますし、日本でメーカーが作ったときもそれが海外展開できる。そうすると海外と同じような樹形で作るということが必須になるんですけれども、そうすると今までの木の作り方とはちょっと変わってしまうので、そうなると品質もちょっと変わってきてしまうというところがあるので、どこら辺が落としどころなのかなと私もいろいろ研究をしながら思っているところはあります。
あともう1つ、省力樹形で、何で省力的に管理しないのかというと、雇用の問題が結構あると思っています。日本で、海外と比べて時間が掛かるというのは摘果作業と着色管理なんですけれども、それは摘果は早くすればするほどいい品質のものができる。果実が大きくなってというのはいい品質なものができるので、それは早めに摘果をしたいんだけれども、それを早くやればやるだけすごい時間が掛かります。最初に花がたくさん咲いて、その後、放っておけばだんだん実が落ちてくるんですけれども、その実が落ちる前に、人手で一生懸命着果制限を掛けるので、すごい時間が掛かってしまう。海外はそんなことはしないで、摘果剤をまいて、自然にぱらぱら落ちた段階で、最後着果数を制限するという感じなので、全然摘果管理、着果管理に掛ける時間は違う。でもそれをやってしまうと小玉になって、今まで国内のマーケットで求められている品質のものができなくなってしまう。例えばそれを省力樹形でやったとしても、やはり摘果でそのぐらい時間を掛けてしまうと、省力樹形といえども時間は掛かってしまう。省力にはならないという面はあります。
あと着色管理なんですけれども、着色管理は収穫するときに人手が必要なので、人を雇用するんですけれども、毎日収穫があるわけではないので、収穫がないときには着色管理をする。そのことによって果実は高く売れるので、それだけ人手を掛けた分高く売れるということで、その雇用には意味がある。これを短期間、本当に収穫だけのピンポイントでもし人を雇用できるのであったら、その分、集中的にやれば、着色管理をどこまでやるかという話はあるんですけれども、それは雇用がある期間、収穫期間の3か月から4か月ぐらい雇った中での作業の一環、収穫作業がないときにいかにその労働力を無駄にしないかというような感じの観点もありますので、そこが海外の等級で言ったら、着色が25%以上、50%以上、75%以上って3段階ぐらいしかないので、それが国内でも受け入れられるのであったら、そこまで着色管理には手を掛けなくてもいいだろうし、そこで必要な収穫のときだけにピンポイントで人が雇えれば、今よりも労働時間は減らせるというところがあるので、栽培の観点からいったら、そこら辺の点をどうすべきなのかなという考えどころはあります。
なので、人の雇用の問題と、あとできた果実がちゃんと売り先があるかというところが、栽培側としてどういう樹形なり、栽培を選択するというところがあるのかなというふうに思っています。 - 林部会長
ありがとうございます。
それでは、ここまでの御意見について、事務局からコメントをお願いします。 - 羽石グループ長
御意見、ありがとうございました。
まず、小林委員からお話がございました労働生産性のところですけれども、6つ事例を御紹介しましたけれども、それぞれについて、差別力と価格転嫁力を深掘りしてということで、今、川久保委員からも1つお話がありましたけれども、分析をして、その地域だからできたんじゃないかという話にならない事例として紹介できるように考えてみたいと思います。
それから、健康バランス、栄養という観点というところにつきまして、これは意思決定プロセスが固定化されているということで、難しい問題なんですけれども、ここはまた御意見を詳しくお聞きさせていただいて、考えたいと思います。
それから、環境負荷軽減の見える化ということで、これは「みえるらべる」かなと思いますけれども、あと項目立ての中で気候変動への対応、消費者の理解・促進ということで、消費者の理解を得ていくというところも1つ論点としてはあるのではないかということでございますので、ここは1つ考えさせていただきたいと思います。
それから、項目立てについて、誰が稼げるようになるのかというところですけれども、これは正に労働生産性を上げていくということとともに、今回、地域を支える果樹農業、地域の基幹産業として地域経済に貢献する果樹農業として付加価値を上げていくというお話をさせていただきましたけれども、そういう観点で特記事項はあった方がよいということで、その点も書かせていただければと思っております。
それから、担い手についても広く関わる人、多様性ということで、ここについても正にいろいろお話が出ていますとおり、認定農業者だけではなくて、小規模農家なども重要ですし、それから周りの加工や流通、輸出に携わる関係業界ということも含めて、地域として重要だということを書いていきたいと思っております。
それから、外国人材ということで、ここも重要な論点だと思っておりますので、検討させていただきたいと思います。
それから、菊地委員からございました薬剤散布、ドローンでの落葉果樹の薬剤がないということで、これにつきましては登録の拡大を進める作業はしていると思うんですけれども、現場から声を上げていただいて、県を通じて農水省に要望をしていただくと、これは農薬メーカーに開発していただかないといけませんので、マッチングですとか、あるいは県から要望があれば優先的に審査するというような仕組みもありますので、そういうことでやっていければと思っております。
それから、気候変動の品種開発ということで、暑さに強い、それから着色がよい、こういう品種の開発というのは農研機構を中心に進めているところでございます。
それから、担い手につきまして、基盤整備をしてトレーニングファーム、こういうもので正に全国に広げていきたいと考えております。
それから、200g運動の件ですけれども、ここは糖尿病学会と医師の先生で見解が違うということなので、事実関係といいますか、実際どうなのかというのを見てみたいと思います。
苗木につきましては、非常に大きい苗は発送する手段がないとか、いろいろございますので、これも苗木産地の供給力を上げるだけではなくて、どこでどういうものが必要で、どこに供給力があるのかというようなマッチングを考えていかないといけないなと思っているところでございます。
それから、川久保委員からございました加工の話ですけれども、正に御指摘のとおり、加工も産地とつながっているということで、加工業者が生産に従事し、スピンアウトして、生産に入るというお話もございましたので、正にこういう加工といった関連産業からの参画も進めていきたいと考えているところでございます。
最後、岩波委員からございました省力樹形の問題ですけれども、確かに小玉傾向になるという面があると思うんですけれども、私が個人的にこれまで見た中では、省力樹形のところでなっているりんごも十分に大きいのかなと思っていることと、本当に贈答用のような非常に大きいものというのは従来の樹形でやる必要もあるのかもしれませんけれども、それとここまで「葉とらずりんご」とか、いろいろお話がありましたけれども、着色がよくないけれどもおいしいものに対しての消費者の理解を得ていくということで、着色管理に非常に時間が掛かるというところも何らかの対応ができるかもしれないという面も含めまして、いろいろなところで出ていますけれども、消費者の理解をというところも1つ論点としてあるのかなというふうに考えているところでございます。
以上でございます。 - 林部会長
ありがとうございました。
それでは、続いて、内藤委員、お願いいたします。 - 内藤委員
日本農業の内藤と申します。各論のところで4点と、総論のところで1つ、お話しさせていただければと思います。
各論のところの1つ目は、七條委員からもありましたところと重複するんですが、ルールと運用の両面で企業の農業参入に当たって、制度融資だとか、制度資金だとか補助金だとかというところで優遇をする必要もないと思いますけれども、ほかの参入だとか地域の担い手、兼業農家さん、皆さん重要ですが、企業も重要だと思いますので、同様の運用がされるようなルール及び運用の徹底というところが重要になるんじゃないかなというところが、1つ目です。
2つ目が、これに関連するところでもあるんですが、今後対応されていくところもあるとは思うんですが、果樹経営支援対策事業等で、5haという上限があったりもすると思いますので、稲垣委員からの資料でもあるように、今後、特に果樹は農地がどんどんなくなっていく中で、企業の農業参入で投資意欲があるような場合に関しては、必ずしも5haというキャップを設ける必要はないと思いますので、そういったところ、大規模化のキャップを多くのところで外していくというところが必要なんじゃないかなというところが、2点目です。
3点目が、こちらも事業の運用上、これは果樹だけではなくて、やっぱり行政のタイムラインが4月から3月という年度の区切りがあるとは思いますが、果樹は、人間が決めた4月、3月という区切りではない区切りで動いています。例えば青森県でりんごを定植するにしても、雪解けの前の秋に、例えば高密植栽培ですと、支柱等を着工を10月、11月にして、そこから苗木の定植というのを3月の後半から4月の後半にかけて行う。なので、果樹のタイムラインだと4月から3月というのはまたぐタイミングが必ず出てきます。これをまたがせないように1年遅らせるだとか、いろいろと人間のつくったタイムラインに合わせて、スピード感が遅れるようなことが出てきてしまっていますので、しようがない部分はあると思うんですが、七條委員からの発表もあったとおり、やはり時間軸というのは非常に重要で、今の産地の疲弊している状況だと、1年でも早く拡大していくことが重要だと思っていますので、こういった果樹に関しては植えるタイミングが決まっているので、4月から3月から外れる特例というものがあるとより多くの投資が活性されるんじゃないかなというところが、3点目です。
4点目が、省力樹形が活性化されることで、果樹の在り方というのは変わってくると思っています。具体的にどう変わるかというと、これまでは苗木の数も少なかったので、未収益期間というのは、収益がないというところがリスクでしたので、未収益期間のサポートがあれば大丈夫だったのですが、保険のところです。これまでというのは結果樹になってから、気候のリスクとかで収量が落ちたときに保険が適用されますが、結果樹になる前に獣害だとか天候の被害で木が著しく損害したような場合は、それが対象になるような保険、共済というのは今メニューにないという認識です。
これはもともと苗木が少ないときというのは別のそこのダメージというのは大したことなかったかもしれないですが、ここに省力樹形として挙げられているようなものというのは、おおむね1haでいうと数千万円の投資が掛かるものですので、これが結果樹になる前に不慮の事故によって全損したときに、そこに保険が掛かっていないと、個別の農業者としては著しく大きいダメージを受けてしまうというところ、これも省力樹形への転換を妨げる要因になっているのかなと思いますので、果樹の在り方が変わった以上、保険の在り方も変わるべきかなというふうに思っています。
各論の最後、すごく細かい話になってしまうのですが、岩波委員の話とか、皆さんの発表とかを聞きながら、すごく細かいんですが省力樹形という名前が、今はもう単語として存在している以上、変える必要はないかもしれないんですけれども、ふと思うと、この高密植栽培やジョイント栽培等の省力樹形と呼ばれているものの肝は、省力なことではなくて収量が上がらない、収益性が上がるものなので、省力樹形という名前だと力を省く、それゆえに品質が落ちるんじゃないかとか、本当の意味でのいいワーディングかというと、英語で省力樹形みたいなワーディングはないですし、高収益なのか、高収量なのか、本質的にはそっちだなと思ったみたいなところです。
というのが各論の論点の話で、最後に総論のところをお話しさせていただくと、私も個社としては基盤整備が更に活性化されることは非常にありがたいですし、メリットを享受できるんですが、ステップバックしたときに本当に基盤整備なのかどうかというところは、政策のコストパフォーマンスみたいのを常に考えなければならないのかなとは思っています。例えば長野の事例ですと、数字で単純化すると冷たい話になってしまいますが、たしか事業費が13億円で、23haが収益性の高い畑に変わりましたというところで非常にすばらしいと思うんですが、13億円で23haが変わったという、そこのコストパフォーマンスというところは常に、これがいいのか悪いのか私は分からないですが、見ていく必要があるというふうに思っています。
ちなみに、稲垣委員の資料にあったような、今20万haが11万haになるから、9万haなくなってしまうという、9万haをここの13億円を投下して23haを変えるというやり方で、全て補おうとすると、9万haを補うのに5兆円掛かってしまうみたいな桁感ですので、真の意味で農業をどうしていくかと考えたときに、本当に基盤整備は非常に重要だと思うんですが、例えば基盤整備をして、そこに収量の低いやり方を定植してしまうと、13億円掛けたところで単収2tやるんだったら、そこの単収6tをやっていれば、同じ23haでも3倍の生産性が違うわけで、そうしたときに本当に基盤整備が食料安全保障を守る上で大事なのかというと、もしかしたら計算をしてみると、今単収2tで作っているところを、物すごい手厚い改植補助のお金を投下することが、全て単収を2倍から3倍にした方が、生産量を増やすためには農地を増やすのか、農地当たりの生産性を増やすのかですが、農地を増やすというところにお金を投下するよりも、実は生産性を上げるところにかなり多くの予算を投下した方が圧倒的にコストパフォーマンスがいいみたいなことも生じるとは思いますので、基盤整備もいいと思うんですが、多くの施策についてそれぞれ幾ら投下することで、どの効用を得られるのかというところの数字の整理をしながら、リソースも限られていると思いますので、効率のいいところに積極的に投下をしていくというような考え方は、全体を通して行政のところでは必要な考え方、民間では一般的な考え方だと思いますが、そういう考え方は非常に重要なのかなと、総論として考えているところです。
以上になります。 - 林部会長
ありがとうございます。
それでは、オンライン参加の井上委員から、御意見をお願いいたします。 - 井上委員
御指名ありがとうございます。委員の井上です。音声聞こえておりますでしょうか。ありがとうございます。本部会が初参加となります。前回以前は部会を欠席して申し訳ございませんでした。
私は、山梨県北杜市で有機栽培にて露地野菜の生産を行っている営農法人の代表です。県外からの非農家出身の新規就農者です。基盤整備を中心とした農地の集約と地域全体を牽引する若手法人経営体への投資が急務と考えております。
まず、背景として果物の消費量が目標200gに対して、現状は100gとなっていまして、消費額でいうと果物で1世帯当たり年間で4万1,000円、果物の加工品は3,600円ほどです。当然のことながら国内マーケットの縮小は避けられないですし、果樹はもちろん農業界全体においての国内での販売機会損失回避と、輸出戦略の策定を急ぐ必要があると考えております。国内での消費喚起について農林水産物全てに言えることですが、消費を促すには求められる簡便性に対応した形で商品を作ることが重要と考えます。
資料3の3ページの1-2、果実の需給構造、国内生産で輸入の内訳と推移や、ページ17の6、果実の加工の資料に示されているとおりだと思います。加工原料のみならず、生産基盤の確保のためには農地の集約、担い手と労働力の確保、集荷場や加工場などの集約を図ることが必然だと考えております。
私の住む山梨県は、ぶどう、もも、すももの産地です。令和4年実績で山梨県全体での新規就農者が、果樹で就農した割合は77%と非常に高い数値でした。しかし、担い手不足は続いておりますし、耕作放棄地も増えている一方です。個人農家からの課題としては、極端な労働期への対応が難しいと聞き及んでおります。若手の果樹農家の中ではタイミー、デイワーク、おてつたびの活用が進んでいるとのことですが、高齢の生産者にはいまいち浸透していない印象です。法人経営体においては山梨県、山梨市に所在するシャインマスカットの生産、集荷、輸出に取り組むアクベル株式会社では、離農する生産者からの農地の引継ぎを行った場合に、圃場が点在してしまい集約労働が困難になると聞いております。対応すべく生産ほ場を拡大したいが、集約化された農地を見つけることが難しいと伺いました。
改めて、省力樹形もスマート農業も農地の集約化があってのことだと感じました。産地形成の一翼を担う経営体へ、農地集約という形で成長機会を創出することが中長期的な課題解決につながると感じております。
また、双方に共通しての課題としては気候変動による収量の減少や収穫タイミングがそろってしまうことによる集荷場の混雑です。毎年記録的な猛暑や豪雨が常態化しております。みどり戦略の連動はもちろんですが、気候変動による農産物への価格影響だけが取り上げられがちですが、生産現場では何が起きているのか、流通業者と消費者にも理解の醸成が必要と考えております。生産者は直接被害を被るので、気候変動に対しての危機感を持っていますが、それだけで社会全体の行動変容につながるとは思えません。関係省庁全体での食料安全保障を意識した気候変動対策の推進を希望いたします。
まとめですが、サプライチェーンの川下から考えたマーケットインでの販売戦略を設けて、地域計画の進め方とそれぞれの産地特性に合わせた川上である基盤整備の実行が急務だと考えます。プラスして、冒頭に申し上げました地域全体が考えられる若手法人経営体への投資というところは急務だと考えます。
発言は以上です。 - 林部会長
ありがとうございました。
続いて、稲垣委員、お願いいたします。 - 稲垣委員
質問を2つと意見2つさせていただきます。
質問の1つは農水省に対する質問です。それからもう1つは意見に絡んで七條委員に教えていただきたいと思います。
質問の最初はいわゆる産地は、農水省で幾つあるのかということを押さえているのですかということです。問題意識として冒頭に申し上げましたけれども、13万の経営体が6万5,000になる、20万haが11万haになるという、数値の議論はもちろん大事なのですが、認定農業者、産地等、要するにフォーカスする先をしっかり見極めた議論をする必要があるというときに、産地、産地と一般に言っているわけですが、その産地の一覧表なり、そういうものがあるのか否かということです。
それから、意見として、資料2の8ページの、要するに担い手に絡んでの意見なのですが、8ページの3多様な担い手の維持・確保というところで、「認定農業者だけでなく、兼業農家や小規模農家も一緒になって役割分担をしながら農村を守っていくことが必要」、これはこの間の現地視察で青木さんが言ったことですが、これが正に現場の農家の感覚ですね。要するに認定農業者だけではなくて、兼業農家もみんなで農業をやっているんだよという思いというのは、多分現場の意見なわけですが、そのときに混乱を来しているのが、農水省の担い手という言葉の使い方ですね。農水省で担い手と言うとき、基本法の26条の第1項の効率的かつ安定的な農業経営、これを担い手と定義して、いろいろな施策も集中させています。農水省で言うところの効率的かつ安定的な農業経営=の担い手は4つしかないわけですね。認定農業者と認定新規就農者と集落営農と市町村の基本構想到達者、この4点を効率的かつ安定的な農業経営=担い手と称して、いろいろな政策対象にするわけですが、現場で担い手といったときは、それは多様な担い手ということで、正にこの8ページの青木さんが言うように、要するに効安経営だけではなくて、兼業農家も小規模も地域で農業をやっていれば、これは担い手、だから多様な担い手ということが農業現場なり農家感覚からいうと非常に腹に入りやすい言葉なんですが、そこに決定的に農水省の言う担い手と、現場の担い手が混乱するわけです。
ですから、「多様な担い手」という言い方ではなくて、「多様な農業者」というような言い方をしないと、何か議論が不毛なところで行ったり来たりしているなと思います。
そう考えると、やはり冒頭申し上げましたように、今いる経営者をしっかりフォーカスして、2030年までに経営体が減る、農地が減るということを考えたときに、やはり認定農業者というのは政策に基づいてエントリーされているのですから、認定農業者、認定新規就農者、集落営農、それから市町村の基本構想の到達者、それは固有名詞が分かるので、そこにしっかりした手立てを講じていく必要があるということと、冒頭申し上げました産地というものが、しっかり固有名が分かるものであれば、そこにしっかり手を講じていくという観点でこの問題を考えていく必要があるということです。そして、新規就農、新規参入と、今いる多様な農業者との調整をどうしていくかということが、本当に大きな課題になるわけで、そういう中で質問したいのは、七條さんの大分県で新規プロジェクトを250haを数十か所ということをもう既にやっていらっしゃるということで、非常にすごい取組だなと思っているわけですが、そういう取組をする際に、既存の農業者、既存の担い手との調整をどのようになされたのかというのが、1点目の質問です。
それから、意見というよりは、2ページに1の2つ目の私の発言の真意は、事前説明のときに申し上げたことが書かれているわけですけれども、私の認識は、果樹に限らず、離農とか耕作放棄地というのは突然起きる、その年になって突然起きるという認識があります。私は1980年代、昭和の最後の5年間、愛媛県の西の方にモノラックを付ける仕事を結構やっていたのですが、要するにみかん園のモノレールですね。あれを付ける仕事をやっていたんですけれども、2010年頃でしょうか、30年近くたって現場に行ってみたら、もう一面の耕作放棄地になっておりまして、もっと驚いたのは2月に行ったのですが、2月にみかんがなっているんですね。そこはもう収穫されずに、その年から耕作放棄されるということで、申し上げたいことは耕作放棄とか離農というのは徐々にじゃなくて、ある日突然起こる中で、2ページに書いたことは、今年9月に北陸地方のあるなしの産地に行った際に、そこは面白いルールがありまして、離農する際に自ら木を伐採するというルールがあるところでした。離農するときは自分の責任で木を伐って後に任せるということがルール化されていまして、そこは主に選果場を中心にその産地を維持している明治時代からのずっと古い産地なんですけれども、近年は今申し上げましたように、離農する際には自ら伐採をするんだというルールができておりまして、そこに県の普及センターの人が非常にそこに関与していて、その普及センターの人が何をやるかというと、毎年年末に離農する人を把握して、伐採するのは切ないですよね、伐採するよりも新規就農の希望者のリストがあるので、全部伐採するんじゃなくて、一部伐採して、新規就農の方に古いなしは使ってもらって、伐採した部分に新しい木を植えるみたいなことをやっている。申し上げたいことは、いろいろな地域で、意向調査をいろいろな機関が農業委員会がやったり、市町村の農政課がやったり、JAがやったり、ここの場合は普及センターがやっていたということですが、要するに2030年までに大量な離農と、それによって農地が出てくるということですから、今地域計画をやりながら、意向調査を綿密にやって地域計画をおつくりになっている地域と、地域計画をやる際に必ずしもその意向把握が完璧にできていないけれども、地域計画をつくっている、とかなり差がありますので、果樹という観点でいきますと、産地の方で今申し上げました北陸のなしの産地のように、意向把握をきっちりやっていくということで、突然離農とか、突然廃業になるということを防ぐということを地域計画で既に意向把握をしたよというのであれば、それはいいんですが、もしもしていないとすれば、行政ルートから産地に対してそういう意向を2030年なり来年も含めて把握をしていくということが大事じゃないか。全てそこから始まるのではないかなという思いがあるということであります。 - 林部会長
ありがとうございました。
最後になりますが、私からもコメントをさせていただきたいと思います。
前回も今回も、また現地調査においても全ての委員の方から、本当に核心を突いた御意見を頂いて、教えていただいたと思っております。かなりの粒度で、皆様の課題認識と方法論というのは共通しているのではないかと思っています。これをいかに具体化するかが非常に重要と思います。絵に描いた餅にならないような形にする意味で、現在、企画部会で議論されている農業基本計画においては、今度初めてKPIを設けようということが言われております。果樹の基本方針、この部会で今策定しようとしている基本方針においては、これまでKPIというのはなかったかもしれませんがが、全部についてではなくても、やはり農地集約、基盤整備、トレーニングファームとのマッチングといったところを、今日七條委員からもお話があったように、その手法の標準化、平準化、また、プラットフォーム化して、どうやって進めていくかというところのKPIをつくれたらなというのが私の希望、意見であります。
それでは、事務局よりコメントがあれば、お願いいたします。 - 羽石グループ長
ありがとうございました。
まず、内藤委員から、様々なルール、運用の点でお話を頂きましたけれども、新規参入の障壁にならないように、補助事業の運用ですとか、面積の上限とか、こういうところについてはできるところを早急に対応していきたい。それから、4月から3月のこの年度の問題もございまして、非常に難しい問題なんですけれども、繰越しとかやれる対応がないのかどうか、これも検討させていただきたいと思っております。
それから、省力樹形で果樹のあり方が変わるということで、結果樹になる前に保険の対象にならないという点につきましては、関係部署と話をしたいと思っております。
それから、省力樹形という言葉がよいワーディングかどうかということ、これは我々の内部でも時々議論になりまして、また考えてみたいと思います。
それから、基盤整備が本当にコストパフォーマンスがよいのかという点につきましては、正に基盤整備しなくても省力樹形への転換でしっかり高収益に変えられるところもあるというお話も伺っておりますし、それから七條委員のお話の中にもありましたけれども、今農村振興局でやっている大きな基盤整備ではなくて、私どもの改植事業の中でできるような小規模な基盤整備で済むところもあるということだと思いますので、この減ってしまう農地を全部基盤整備でやっていくということではないと思っておりますので、その辺はケース・バイ・ケースで最も効率的な方法を考えていくということかと思っております。
それから、井上委員からございましたけれども、基盤整備と農地集約、それから地域全体を考える若手法人経営体、これが急務だということでございまして、正に私ども今回論点にまとめさせていただきましたとおり、基盤整備をして農地の集約、集積、それから省力樹形とスマート農業ということと、今後は新規就農者以外に関連産業からも含めまして、そういう法人経営体の育成、参画が重要だと考えているところでございます。
それから、稲垣委員からございました産地が幾つかあるのかというところでございますけれども、これは次の担い手の話とも絡みますけれども、果樹の産地、各県、市町村、JA等から成る産地協議会というのを560程度、今全国に産地協議会がございまして、そこで産地計画というのをつくっておりまして、ここでこの産地は集出荷施設とか、選果場を中心とした生産者の塊を単位として、市町村が単位になったり、市町村の中の一部であったり、あるいは市町村をまたいだり、いろいろなケースがありますけれども、それが560程度と考えておりまして、ここでどういう品目、どういう品種を推進していくのか、今後5年でどういう人がそれを担っていくかというようなことを定めておりますので、これを産地と考えているんですけれども、これが今回地域計画をつくるということになりますので、これとの関係をどうしていくのかということを含めてよく考えていきたいと思っているところでございます。
担い手という言葉の使い方については、私どももよく考えないといけないというところがあると思いますので、言葉のワーディングを再検討したいと思います。
それから、最後、部会長からございましたKPIですね。KPI、果樹の基本方針におきましても、これまでも果樹の品目ごとの生産量等について目標を立てておりまして、今回も食料・農業・農村基本計画と連動してKPIを立てることにしておりまして、基本計画の方は品目は果樹に限らず全てということでございますので、そちらと合わせまして、こちらの方でもKPIの設定をしていくということでございますけれども、どういう点についてKPIを設定しようか、これもまた御相談をさせていただきながら、検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。
以上でございます。 - 林部会長
ありがとうございます。
それでは、委員からの御発言が一巡しましたので、これよりは全体意見交換の時間にしたいと思います。予定では12時25分ぐらいまでなので、20分ですけれども、ちょっと延びても約30分ぐらいできればと思います。
御意見のある方から挙手にて発言をお願いします。すみません、ウェブ参加の方については事務局から、手挙げ状況を教えてください。
では、中山委員、お願いします。 - 中山委員
すみません、先ほどはうまく説明もできず申し訳なく思っております。
何分、本当に不慣れですので、今回この課題についてまとめさせていただいていますので、それを読ませていただこうかと思っています。
最初に申し上げましたとおり、飽くまでも私は代々続く農家の担い手としての目線での意見ですので、その意見として聞いていただければと思っています。
まず、私の地区でも40年前から3回の基盤整備が行われています。基盤整備を行うことによって、その後の後継者の就農が増えました。これは園地を集約することができたこと、点滴かん水施設や防風ネット、高品質のみかんの栽培が可能な高畝、あと不織布素材のシートマルチを効率的に行うことができる体制が整ったことにより、高品質栽培に取り組みやりやすくなったというのが一番だと思っております。この基盤整備を通じて、今後の経営の展望を見いだすことができたことは後継者が増えた要因であると私は思っております。
私の考える担い手を増やしていく条件として、現経営に携わっている私たち親世代が未来に明るい展望を見出せなければ、後継者は育たないと思っています。農家の子供たちは、本人が農業をしたくないというより、私たち両親から百姓はせんでよかとか言われて、別の道を選んでいるように思われます。
昨年、私たちの地区の3回目の基盤整備の造成が終了いたしました。この取組を推し進めたのは、これまでの2回の基盤整備計画の経済的な成功体験によるものです。
現在、気象変動が私たち農業者にとってとても大きな障害になっています。地球温暖化によって、本年のような猛暑が当たり前になってしまうのではないかと常に心配しております。温暖化対策に対応できる品種の育成はもちろんなのですが、まずはかん水対策だと考えております。私たち人間にはもう気温をどうすることもできませんので、水による対策が必須であるように思っています。実際、20年前の基盤整備園内のかん水施設を活用することによって、本年においてもほかと比べると品質、収量ともに随分差がありました。りんご農家さんと同じで、今年は干ばつと突然の雨で、みかんがぱきぱき割れて、本当に10月ぐらいまでずっと続いていました。ですから、例年の収穫量でいくと4割から5割ぐらいしか収穫もできなかったような感じです。
現在、新規就農者に対しての補助金はとても充実していて、農家の後継者にはほとんどこのような資金を活用できていなかったんですけれども、後継者をつくるためにはそれなりの準備と資金がとても必要です。先日発表された基本方針で、農家の後継者にも活動がしやすい補助金の拡充がなされるという方針が示され、大変うれしく思うとともに、感謝いたしております。
私たちは、みかんの一流産地を目指して地域ぐるみで取り組んできました。今後、生産に集中し、安心して出荷できる拠点ができればと思います。一番未来の日本の農業を支える屋台骨は農家の後継者であることは揺るがないと思っています。経営者が安心して、子供たちに農業を引き継げるように、今申し上げた基盤の強化と集荷、選果の拠点づくりをお願いしたいと思っています。地域づくりを一番に考えて農業者は頑張っています。私たちの地区は20年ごとに基盤整備を行い、その都度、時代に合わせた営農の取組にチャレンジすることができたおかげで、今の将来への展望が見いだすことができています。おかげで、ほかの地区と比べ、若手の営農者が多い地区でもあります。
気候変動など困難ことにおいても、みんなでの仲間意識が大きな支えとなって、若手のやる気のある営農者が大規模な基盤整備された環境に集まって、農業ができることが未来につながる農業の形でもあると思っているんです。価格転嫁ができない、ほかの資材経費が上がっても、農家の手取りは上がらず、産業の中では一番最後にしかよくならず、バブルのときでさえ農家に恩恵はないのに、バブル崩壊後の影響は一番に農家にありました。流通の問題、これはとても大切だと思っています。運送費の高騰、ガソリンの高騰、人件費、これらを解消するには拠点づくりがとても大切だと思っています。トレーニングファームでも2年から3年、本気で農業をやる人にしか、農業者には私はなれないと思っています。想像しているものと現実はかなりの差があります。こつこつ雨の日も台風の日も、暑い日も寒い日も同じことを時にはきついことを地味に繰り返して、私たち果樹農家は366日を費やし、たった1年に1度だけの収穫のために、たった1個の果実を収穫するために全力を尽くしています。トレーニングファームを上手に活用して、立派な農業者が育ってくれたら、とてもすばらしいことだと思っています。
50年後もやっぱり未来も安心して営農できる政策を心から願っております。
少し余談になりますけれども、有害鳥獣対策なんですけれども、今狩猟免許を取得するのに大体2万円ほど掛かっています。この更新時は毎年で1万5,000円ほど個人負担で掛かっておりまして、これは地域の課題として捉えて、個人の負担をなくしてほしいという要望があります。
それと先ほど少し出ました外国人の実習生ですけれども、我が家にも外国人実習生が今3人います。この外国人実習生制度が始まった当初から入れておりますけれども、この制度について緩和する方向で検討していると聞いております。私たち農家としては初めてこの子たちを受け入れるときに、大体諸費用で住宅とか、あと受け入れるための資金、そういうので大体200万から300万円の費用が掛かります。そして、3年ごとに1人帰り、また1人受け入れるということで、大体最低でも1人に付き40万円ほど費用が掛かります。渡航費に1か月分のトレーニング中の給料とか諸費用が組み込まれていて、ここに居住空間としては本人の体さえあれば、仕事にとか、そういうのとか全て私たちが準備して仕事ができるような環境で、生活できるような環境を準備して迎え入れているような状態です。
実習生が今度自由に実習先を変更できるようになると言われていますけれども、これはちょっと考え直していただきたいと思っています。多額な費用を負担して、実習生を受け入れている私たちは、実習生が自由に行き来できるように保証されると、ただ、日本に来るためだけにお金を使うだけの自分たちになりかねないので、これは制度の見直しが必要ではないかと考えています。
うまくまとめることができませんけれども、私の意見として聞いていただければと思いました。ありがとうございました。 - 林部会長
ありがとうございました。
先ほど、稲垣委員から七條委員に御質問があった点について、既存の担い手、農業者との調整はどのようになさってきたかという御質問だったんですけれども、よろしければ、七條委員からお願いします。 - 七條委員
既存生産者との調整ですが、新規就農者等が新たな担い手として入る場合に関しましては、ファーマーズスクールというシステムがあると紹介をしたんですけれども、こちらは就農コーチとして地域の農家の方がコーチを務めていて、新たな担い手を受け入れる体制が部会、地域にあるというイメージであります。
企業等が新たな担い手として入ってくる場合、例えば自社で使う果実を生産するために参入するパターンが初めは多かったんですけれども、そういう場合は最初からJAの組合員になってもらって、例えば選果場を利用したり、既存のブランドと一部一緒にやったりとか、そういった形で既存の部会と一緒に取組を進めているような状況です。
また、最近増えているのは、市場出荷前提で部会の一員として企業が参入するパターンです。市場出荷前提とした参入を誘発することで、既存産地にとって出荷量の増加につながり将来性が増し、メリットとなりますので、既存部会も受入れに対し協力してくれると考えています。
以上です。 - 林部会長
ありがとうございます。稲垣委員、何か追加はありますか。 - 稲垣委員
その新規就農であれ、企業であれ、それを入れたい、入れてもいいよという現場の話合いなり、持っていき方、地域によってまちまちなんでしょうけれども、特徴的な事例、こうやってうまくいったみたいのがあれば御紹介いただければと思います。 - 七條委員
簡潔に言いますと、既存部会の人数推移の表をお見せしたかと思うんですけれども、ああいった形で現在の部会の状況、部会委員数もそうですし、面積、生産量の部分含めて、地元の部会、関係者と一緒になって、しっかり認識して、その上でこれから何が必要かというところから始めています。 - 林部会長
ありがとうございます。
では、川久保委員、お願いします。 - 川久保委員
今の大分県さんのお話の関連なんですが、企業が大規模に参入したというのは、それだけ大きな農地を用意できたということが大きいと思っています。それは、先ほど七條委員からお聞きしたことでいいますと、旧開拓、国営の開拓農地で膨大な遊休地があって、その中の一部が基盤整備されたということのようですけれども、このパターンをほかのところでもできないのかなと思ったりします。国営の開拓地というのは、非常に大規模であるがゆえに遊休地も非常に多くて、今から考えれば、道が近く、傾斜もゆるく、日照面でもよいところが遊休地になっていることも多いと思うんですよね。もちろん地権者はいるんですが、先祖代々の農地でないので、結構手放すことに障害が低いと思いますし、また、かつて国営農地は8割以上の補助率で造成されているはずですので、そこまでしていただいて荒らしてしまった、この際、農業をしたいという人に譲りませんか、というような形で勧めるというか、交渉するというのは非常にしやすいのではないか。
農地中間管理機構に任せて再生しませんかというような形で、まとまったいいところが見い出されてくれば、これは農地を掘り起こすという言い方でいいと思うんですが、それはできないのか。企業が参入する、大規模は個人じゃ難しいんだけれどということですが、企業が仮に20haを持ったら、3~4haは加工専用につくってもいいよという発想を持つと思うんですね。そうすれば、第1回の部会で言われた竹下委員が佐賀県は原料になるみかん、ジュースがないので、アイスクリームを作れなくなりましたというのは、ある意味解消される可能性があると思うんですよね。
そういうに旧開拓農地は九州だけで、農水省が以前につくられた農用地開発事業総覧を見ますと、大分の事例は400haでした。佐賀県の鹿島では600haでした。熊本の天草地域では370haという開発をやったという記録があって、それがみかんだけという縛りで残っているわけがないんですよね。そういうところを積極的に見いだして、土地改良区が管理していると思うんですが、そこを掘り起こすような形にできないのかな。大分県さんがどういう形で農地を見いだしたのかという具体的な話は分からないんですが、ほかの地域でも、それをやれるところはあるのではないかというふうに思ったりしています。
ですので、資料2の目次のところが基本計画の骨子になるということなんですけれども、1番の(1)の1と2が関係する話だと思うんですが、ここには農地の掘り起こしというニュアンスがないと思うので、もし可能であれば、そういう発想もありではないかと私は思っております。
以上です。 - 林部会長
ありがとうございます。これ、まだこの目次は主な意見と論点の整理なので、このまま骨子になるんではないと私は期待しております。企画部会の方の基本計画も、KPIは決して生産量のKPIだけでなく、構造改革のKPIを示してくださるものと期待しているところではあります。
なので、今、川久保委員から御意見があったような点も含めて、今度の基本方針の骨子について御意見を頂ければと思います。
ほかにいかがでしょうか。ウェブの方の御参加の方、手は挙がっていないですか。大丈夫ですか。 - 稲垣委員
1点、よろしいですか。 - 林部会長
稲垣委員、お願いします。 - 稲垣委員
KPIであるとか、方針、計画でKPIをつくって、PDCAサイクルを回していくというのが今の農業だけではなくて、日本国の政策推進のお作法みたいになっているので、そういうことで政策を進めることはありとは思いますが、一方で、KPIなり方針が現場に下りてきたときに、実際それを誰がこなすんですか、その目標がはなから「何ですか、この目標は」ということにならにように、現場実態、現場がのみ込めるようなものをつくらないと、それこそ絵に描いた餅なり、また最近の政策手法としてはそういうKPI等の達成度に応じて、いろいろな事業とかを割り振っていくとすれば、かえって足を引っ張ることになりかねないわけですので、その目標設定をするときは、やはり現場の方が「よし、これでやるぞ」と思えるような目標設定なり、KPI設定というものに心掛けていただければなと思うわけであります。 - 林部会長
ありがとうございます。
ほかに御意見ございますか。よろしいですか。
ウェブの方も大丈夫でしょうか。
それでは、およそ想定の時間となりましたので、以上をもって意見交換を終わりにしたいと思います。本日も大変貴重な御意見を頂き、議論を頂いてありがとうございます。委員の皆様には本当にお忙しい中、朝早くからお集まりいただきまして、ありがとうございます。
最後に、次回の日程について、事務局から説明をお願いいたします。 - 羽石グループ長
本日は、誠にありがとうございました。
次回の果樹部会でございますが、事前の日程調整によりまして、1月30日木曜日に開催させていただきたいと思っております。次回の部会につきましては、これまで御議論いただきました内容を踏まえまして、事務局から基本方針の骨子の案をお示ししまして、御意見を頂戴したいと考えております。
以上でございます。 - 林部会長
ありがとうございました。
議事が終了いたしましたので、本日の審議は以上となります。
年末のお忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございました。次回の資料がまた会議の前には来ると思いますので、今度、より具体化した基本方針について、皆様と議論させていただければと思います。ありがとうございました。
それでは、最後に事務局から、一言お願いいたします。 - 佐藤生産振興審議官
今日は、本当に3時間にわたり、長時間の御議論ありがとうございました。果樹農業というのは、ある意味装置産業でありまして、農地の上に樹体があって、そこで生産する人がいて、軌道に乗ればきちんと稼げるというものなんですけれども、部会長からも御指摘がありましたように、今まで基本方針の中でのKPIというのが生産量と面積ということでありましたが、装置がしっかり稼働するそれを実現するために取り組まなければいけない部分、そこにKPIというものを新たに設定していくということで、今日頂いた御意見を総合すると、そういった対応が必要なのだろうというふうに強く感じたところであります。
次回、骨子ということでありますけれども、是非こういったKPIが必要だということについても、御意見を頂戴できればというふうに思います。
本当に長時間にわたり、ありがとうございました。 - 羽石グループ長
それでは、本日御多忙の中、長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございました。
今回の議事録につきましては、前回と同様に、委員の皆様に御確認を頂きました上で農林水産省のホームページに掲載したいと考えております。よろしくお願いいたします。
事務局からは以上になりますけれども、何か御質問等ございますでしょうか。大丈夫でしょうか。
それでは、本日は誠にありがとうございました。次回も引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
午後0時26分 閉会