地球環境小委員会 合同会議 第34回 議事概要
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1 開催日
令和5年5月11日(木曜日)
2 開催方法
書面による開催
(各委員へ事前に資料を送付し、議事次第について書面で意見を求めたもの。)
3 委員(50音順、敬称略)
- 食料・農業・農村政策審議会企画部会地球環境小委員会
秋山 博子、岩村 有弘、大津 愛梨、大橋 弘(座長)、亀井 誠、髙岡 透、千葉 康伸、釣流 まゆみ、中本 純子、橋本 禅、夫馬 賢治、宮島 香澄、吉高 まり 計13名 - 林政審議会施策部会地球環境小委員会
小山 由希子、立花 敏、出島 誠一、中崎 和久、日當 和孝 計5名 - 水産政策審議会企画部会地球環境小委員会
木村 伸吾、谷 綾一、山口 敦子、山下 東子 計4名
4 議題(議事次第(1)~(2))
5 委員からの意見
(議題1)2021 年度における地球温暖化対策計画の進捗状況について(農林水産関連施策)
資料1「地球温暖化対策計画における 2021 年度の農林水産分野の地球温暖化対策・施策の点検結果(概要)」に関して、以下の意見等があった。
【総論】
- 各目標に対して、2021 年度で結局どれぐらい CO2 を削減したのか、目標の横に示してはどうか(大津委員)。
- バイオ炭にしても、中干し期間の延長にしても、J-クレジット制度の対象になったのは良いものの、バイオ炭資材費等の費用がかかるため、結局、小中規模の農家には手が出ないものと考える。このため、排出権取引市場の創設など取引価格の向上に向けた取組みが必要(大津委員)
- 水田からのメタン発生について、それを温暖化ガスの排出源とすると、モンスーンアジアは基本的に「温暖化ガス発生国」になってしまうことに対し、そもそも国際基準が欧米視点でつくられていることから、見直しが必要だということを、日本が国際社会に対して投げかけていくべきと考える。肉と違って主食をつくっているため、世界的な人口増加を前に、「田んぼ=温暖化ガス発生源」とカウントするのはおかしいのではないか。洪水や土砂崩れ防止、生物多様性など、水田の多面的機能、産業革命以前から続いている営みだということなどを踏まえると、見直して良いと考える(大津委員)。
- 地球温暖化対策・施策の取組みが、GX 推進法などの制定によって更なる取組みの強化が期待される中で、農林水産分野にとどまる対策・施策よりも、他産業とのシナジーを生み出す対策・施策をより比重を置いた取組みを進めることが重要ではないか。そうした視点は、農林水産分野への異業種参入を促すことにも繋がり、農林水産分野における産業基盤の強化にもつながることになる。一例として、遊休農地でソルガムを栽培し、バイオ燃料として活用することで、航空・石油産業とのシナジーを生み出すようなことが考えられる。脱炭素社会において、農林水産業が日本のリーディング産業として再興する契機をみどり戦略などを通じて見出す取組みを、省横断で進めてもらいたい(大橋委員)。
- 農地土壌など、排出削減が目標に届いていないものがみられる。その旨記述があるが、さらに原因を深ぼりして達成に努力することを期待する(宮島委員)。
- 【省エネ機器等の導入促進】化石燃料にどうしても頼らなければならない機器も多い(漁船などの電化は安全性の担保を考えれば難しく、バイオ燃料の価格を鑑みれば、漁獲量の減っている漁業において困難も多い)。しかし、メタントラクターや、水素トラクターなど、水素利用の促進などのイノベーション施策も合わせて、積極的に前倒しするための技術革新が可能な分野でもある。前倒しでできる施策を期待する(吉高委員)。
- 【農地土壌】水田から畑地への転用が進まないのも、D の要因の1つであろうか。水田からクレジットを生むことにより、補助金を減らすという相殺の考え方も整理する他、根本的政策も考慮の上、D から C になるよう努力していただきたい(吉高委員)。
- 【森林】カーボンクレジットの対象として最も期待される分野。しかし、吸収量を増やすためのさらなる政策を期待したい(吉高委員)。
- 地球温暖化対策・施策の点検結果について、農地土壌(水田メタン、化学肥料 N2O)に関する目標については、「2030 年度において目標を下回る」見通しとなっているが、現状と目標値にかなり差がある状況であり、当初設定した目標が現状に対して高い目標となっていたのではないか(秋山委員)。
- J クレジット制度に水稲栽培における中干し期間の延長が採用されたので、今後水田メタンについて目標値に近づくことを期待したい。また農業分野における J クレジットの取組数の拡大について、ぜひ推進いただきたい(秋山委員)。
- 温室効果ガス削減の目標達成が、農地面積の減少や農業生産の減少で達成されるのは本末転倒であるので、目標値の達成よりも原単位の減少を目指すほうがよいのではないか(秋山委員)。
- みどり戦略における有機農業や肥料・農薬削減の目標については非常に野心的な目標となっているが、収量への影響および食料自給率向上の目標達成への影響も考慮される必要があるのではないか(秋山委員)。
- 食品製造企業においては、サプライチェーン全体での CO2 削減に取り組むことが期待されているが、今回の点検結果の内容については、調達する原材料由来の CO2 排出原単位を減らす施策となり、また多くの施策においては目標水準を達成できる見込みとしており評価したい。ただ、比較的大きな削減目標を立てている農地土壌排出削減(水田メタン)が目標水準を下回るとされていることから、J クレジット活用の認知度を高めるなど、より一層の取組み強化をお願いしたい(亀井委員)。
- 「農地土壌排出削減」の取組みに関して、取組みを更に進める必要があると理解した。今後、
・生産者への周知・コミュニケーションの更なる強化
・土壌排出削減農法導入=経営利益に直結するかの不確実性払拭
・土壌排出削減農法を導入するために障壁となっている課題の解決
が重要なのではないかと考える。生産者だけでは解決できない問題や課題もあると思うため生産者様と定期的にコミュニケーションがあり、作物を販売させていただいている立場の小売企業として、なにか協力できることがないか、農林水産省、生産者と産官連携して脱炭素の推進速度を増すことができればと思う(釣流委員)。 - 【全体を通して】1 項目の評価が上がったことについて、関係の皆様の努力に敬意を表する。しかし D 評価が残る一方、B、A 評価が見込める施策はまだなく、本計画全体として 2030 年の目標達成はまだ厳しいと考える。IPCC 報告でも気候変動対策において 2030 年までの CO2 削減の重要性が示されており、本計画において一つでも多くの施策が D 評価→C 評価、または B 評価へと評価アップが実現できるよう期待する(中本委員)。
- 2030 年に向け国際的にさらなる削減を求める努力が続けられる中、今回の進捗評価でCとD の評価が多くなったことは非常に残念(夫馬委員)。
- 特に今後、幾何級数的に導入目標が大きくなる「省エネルギー性能の高い設備・機器等の導入促進(農業機械)」と「農地土壌に関連する温室効果ガス排出削減対策(一酸化二窒素)」で進捗に遅れが出てきているところが非常に気にかかる。みどりの食料システム法に基づき、行政と事業者の双方での注力が不可欠(夫馬委員)。
- 各業界団体の「低炭素社会実行計画」一覧に関しては、パリ協定と整合性のない目標を掲げているところもあると見受けられる。他省が所管する省エネ法のようにパリ協定整合性の目安値を示す等を行い、各業界団体に目標のレビューを自主的に行われる対策が必要と考える(夫馬委員)。
- 山側の意見として、持続可能な林業経営が可能となる山元立木価格なくして再造林は進まないと考える(中崎委員)。
― 以上 ―
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