議事録(第25回)
1.日時及び場所
平成31年2月27日(水曜日)10時00分~12時09分
農林水産省 第2特別会議室
2.議事
(1) 脱炭素社会に向けた農林水産分野の基本的考え方について
※ 外部有識者等3名によるプレゼンテーション含む
(2) その他
3.議事録
- 大臣官房政策課環境政策室長
おはようございます。まだお越しになられていない委員さんもいらっしゃいますけれども、定刻となりましたので、ただいまより食料・農業・農村政策審議会企画部会地球環境小委員会、林政審議会施策部会地球環境小委員会、水産政策審議会企画部会地球環境小委員会、第25回合同会議を開催いたします。
本日、司会を務めます私、大臣官房政策課環境政策室長の中川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
昨年、3月に開催してから、およそ1年ぶりの合同会議でございます。その間、昨年12月に食料・農業・農村政策審議会の企画部会の地球環境小委員会の八木専門委員が退任され、白戸専門委員が新たに任命されております。また、本年2月に林政審議会の改選があり、葛城委員、土屋委員が退任され、小野委員、立花委員が新たに任命されておられます。
なお、本日の出欠状況でございますけれども、食料・農業・農村政策審議会の根本専門委員、橋本専門委員、白戸専門委員、林政審議会の小野委員、立花委員、塚本委員、水産政策審議会の柳内委員におかれましては、所用により本日ご欠席との連絡を受けてございます。
上岡委員、中田委員におかれましては、少し遅れるとの連絡をいただいてございます。
それから、本日は、千葉エコ・エネルギー株式会社の馬上代表取締役様、それから、住友林業株式会社、筑波研究所の村田様、2名の外部有識者をお招きしておりますので、ご紹介させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の会議につきましては、公開とさせていただきます。ただし、カメラ撮りにつきましては、冒頭挨拶までとさせていただきます。
また、議事録につきましては、会議終了後に整理し、委員の皆様にご確認をいただきました後に公開をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、開催に当たりまして、別所技術総括審議官からご挨拶を申し上げます。 - 技術総括審議官兼技術会議事務局長
おはようございます。技術総括審議官をしております別所でございます。よろしくお願い申し上げます。
委員の皆様方、大変お忙しい中、ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。 また、日頃より農林水産行政につきまして、ご理解、ご協力いただいておりますことを併せて感謝申し上げたいと思います。
会議の開催に当たり、一言ご挨拶申し上げたいと思います。
もう既に、皆様ご案内のとおり、気候変動枠組条約に基づくパリ協定においては、全ての締約国が温室効果ガス低排出型発展のための長期的な戦略を作成し、2020年までに提出するということになっているところでございます。既に各国、そういった戦略づくりが随分進んでいるわけでございますけれども、我が国におきましては、未来投資会議におきまして、安倍総理からもはや温暖化対策というのは、企業にとってコストではなく競争力の源泉であると、これまでの常識にとらわれない新たなビジョンで策定をしてもらいたいというご発言もいただいておるところでございます。
また、総理の下、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会が設置されておりまして、有識者の方々による議論が進められておるところでございます。そういった懇談会での提言を踏まえ、これから政府としての長期戦略の策定していくことでございますけれども、こういった情勢の下で、食農審・林政審・水政審・地球環境小委員会合同会議を開催させていただきます。
競争力のある農林水産業、また、魅力ある農山漁村を実現する。そのためにも、2050年以降の脱炭素化社会に向けてしっかり取り組んでいかなければいけないと考えてございます。
農林水産分野からの温室効果ガスの排出削減、また吸収源対策、あるいはバイオマスの利活用、様々な論点があろうかと思いますが、いずれにいたしましても非常に野心的な考え方で、積極的な検討の下にしっかり取り組んでいくということが非常に大事であると考えておるところでございます。
本日、事務局からの説明以外に先進的な取組を行っているお三名の方々から話題提供をいただくことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。
これからの検討は非常に農林水産分野の中での気候変動対応についての基本的な考え方をまとめていくということで、非常に大事な議論になろうかというふうに考えております。皆様方の忌憚のないご意見賜りますようお願い申し上げまして、開会の挨拶とさせていただきます。
本日、どうぞよろしくお願い申し上げます。 - 大臣官房政策課環境政策室長
それでは、カメラ撮りの皆様はここでご退室をお願いしたいと思います。
では、まず初めに、配布資料について確認をさせていただきます。
農林水産省では、審議会のペーパーレス化を進めており、本日の本委員会では紙での資料説明を行わず、タブレットパソコン上での資料にて説明をいたしますのでご確認をお願いしたいと思います。
一番左から資料1 パリ協定及び長期戦略にかかる国内外の情勢について、資料2 脱炭素社会に向けた農林水産分野に関する基礎資料、資料3 脱炭素社会に向けた農林水産分野の基本的考え方についてでございます。それから、外部有識者説明資料1 地域におけるソーラーシェアリングの導入、外部有識者説明資料2 イオン脱炭素ビジョン2050となっております。なお、議事次第、委員名簿、タブレットパソコンの操作説明資料、宣伝でございますけれども本年5月に滋賀県で開催します気候変動に対応する農業技術国際シンポジウムのチラシをお手元に紙の資料として配布をしてございます。よろしいでしょうか。 もし審議中にタブレットパソコンの操作でご不明な点ございましたら、挙手して事務局の方に申し付けいただければ、すぐに参って対応いたしますので、よろしくお願いいたします。
それでは、以降の議事進行につきましては、渡邉座長からお願いいたします。
それでは、渡邉座長、よろしくお願いいたします。 - 渡邉座長
皆さん、おはようございます。この合同会議の座長を仰せつかっております京都大学地球環境学堂の渡邉でございます。年度末が迫ったお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
この合同会議、先ほど別所統括審議官からご説明もありましたが、この合同会議で急ぎ取りまとめないといけないということがあるようです。これにつきましては、後で事務局からご説明あろうかと思いますが、次年度の初めにかけて3回会議が予定されており、それに向けて円滑な審議、意見交換、取りまとめが進むように心がけたいと思いますので、どうぞご協力よろしくお願いいたしたいと思います。
それでは、早速議事に入りたいと思います。議事次第に沿って進めたいと思います。
まずは、議事1脱炭素社会に向けた農林水産分野の基本的考え方につきまして、まず事務局からご説明いただきます。その後、先ほどご紹介のありました外部有識者お二人の方及び本委員会の専門委員であります椛島専門委員からご説明いただき、委員の皆様からご意見、ご質問を伺いたいと思いますが、よろしいでしょうか。
では、そのように進めさせていただきたいと思います。
では、まず事務局からご説明いただきます。 - 大臣官房政策課環境政策室長
それでは、パソコンの資料1をお開きいただければと思います。パリ協定及び長期戦略にかかる国内外の情勢について、資料1、2、3までまとめて説明して参ります。委員の皆様のご発言の時間をできるだけとりたいと思いますので、極めて簡潔にご説明させていただくことをお許しいただければと思います。
それでは、1ページ目及び2ページ目をお開きいただき、海外の情勢について説明いたします。皆様、よろしいでしょうか。
パリ協定の概要、これはもう皆様ご案内のとおりでございまして、2015年にCOP21で採択されたということでございます。
目的は、世界全体の平均気温の上昇を工業化以前より、摂氏2度高い水準を十分に下回るものに抑えること、並びに摂氏1.5度の高い水準までのものに制限するための努力をすることとなってございます。
目標としましては、上記の目的を達成するため、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と吸収のバランスを達成するということでございます。
それから、各国の目標ということが義務付けられていまして、各国は、約束を作成・提出・維持する。削減目標の目的を達成するための国内の対策をとる。削減目標は、5年ごとに提出・更新し、従来より前進を示す。これはもう既に日本政府として、温対計画に従って、2013年比で2030年度に26%の削減を約束してございまして、これについては毎年フォローアップをこの委員会でもしていただいているところでございます。
今回の主テーマである長期戦略の項目では、全ての国が長期の低排出開発戦略を策定・提出するように努めるべきとなっており、COP決定では2020年までの提出を招請されております。我が国は2050年までに80%を削減することとしていますが、この長期の低排出開発戦略については、まだ提出していない状況でございます。
3ページ目は今の話をもう少し詳しくしたものですので、これは割愛させていただきます。
4ページ目は、G7各国の長期戦略の概要でございますけれども、各国の長期戦略は、大胆な気候変動対策により成長につなげるものということで、例えばドイツでは80から95%削減、フランスは4分の1に削減、カナダ、英国、米国はそれぞれ80%ないしは80%以上削減という目標を出してございます。
それから、5ページ目から農林水産分野の長期戦略のポイントについてまとめさせていただいております。ドイツにつきましては、我が国も含めて同じ共通の悩みを抱えておりますが、農業生産及び畜産は生物学的なプロセスを伴うため、他の部門とは異なり、農業部門の排出量をゼロまで削減するのは不可能であるということでございます。
一方で、化石燃料をほとんど、あるいは全く使用しないような持続可能なバイオ資源ベースの経済活動への転換、一酸化二窒素の排出の削減のための窒素施用量の抑制、家畜の餌による窒素効率の改善対策、再生可能な資源としての木材の建物部門への利用や化石燃料への代替などが書かれてございます。
6ページ目はフランスでございます。
一番上の方に全体をまとめて書いておりますが、窒素肥料の使用抑制によるN2O排出量の削減、主にエネルギー生産のための糞尿の有効活用や反芻動物の飼料改善によるメタン排出量の削減、土壌・バイオマス中への炭素貯留及び化石燃料由来排出量のバイオマス活用への移行ということが主に書かれてございます。
7ページ目のカナダでございます。農業部門は他の部門の排出削減を支援するため、再生可能エネルギーのソリューションとバイオ製品を提供する可能性があり、カバークロップの利用拡大、バイオチャーの利用、精密農業の利用が将来の農業炭素吸収源の維持に役立つとのことです。また、他の国と同様、その畜産部門でのメタン排出量の削減などが書かれてございます。さらに、バイオエンジニアリング、精密農業、センサー、ロボット工学、こういった技術が農業のGHG排出削減に有効であるとのことです。バイオマス由来のエネルギーや製品活用、森林バイオマスを利用することで、大幅な緩和がもたらされる可能性がある。こういった内容にカナダはなってございます。
それから、国内情勢について少しご紹介をさせていただきたいと思います。
9ページを開いていただければと思います。
まず、環境省の第五次環境基本計画が平成30年4月17日に閣議決定されてございますが、その中で地域循環共生圏という概念が書かれてございます。右上の絵に書かれてございますが、農山漁村と都市ということで、農山漁村からは自然資源・生態系サービスとして、自然エネルギーなどを都市に供給し、都市からは資金・人材などを提供します。こういった地域循環共生圏により、各地域がその特性を生かした強みを発揮して、地域資源を生かし、自立・分散型社会を形成し、地域の特性に応じて補完し支え合うといった内容になってございます。
それから、経済産業省の長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書が平成29年4月7日に策定されてございます。持続的な発展が地球温暖化対策の大目的ということで、地球温暖化防止のためには、地球全体の温室効果ガスの削減が必要であると書いてございまして、地球儀を俯瞰したような温暖化対策を長期戦略の核としていく必要があるといったコンセプトを報告書で書かれてございます。
それから、11ページ目から長期戦略懇談会での検討状況でございまして、内容は12ページ目からご説明させていただきたいと思います。
パリ協定の目標達成のための長期戦略の検討状況ですが、先ほど申し上げましたように、 2020年までに提出することが必要ということで、総理指示によりまして、2018年8月よりパリ協定長期成長戦略懇談会において議論中でございます。今まで4回開催されております。
そこで議論されている内容についてご説明させていただきたいと思います。このフリーディスカッションペーパーは第1回から第3回までの委員の発言をまとめているものであり、今回特に注目していただきたい点について下線を引いてございますので、そこを中心にご説明させていただきたいと思います。
まず、14ページ目をお開きいただければと思います。
長期的なビジョン・ゴールの必要性ということで、着実に進んでいくという積み上げ方式でなく、野心的な目標を掲げ、それに向かってチャレンジするやり方が進みつつあるということでございます。脱炭素という長期目標の効用の1つは、我々が目指す未来、社会像の実現に向けて、どこにイノベーションが必要かを見せてくれるということでございます。
15ページ目の全般でございますけれども、日本や地域の将来像を描き、それを見据えたバックキャスティングの手法を活用することが重要であり、長期戦略において国内の地域の将来像をそれぞれの立場で共有することが必要ということ、地球温暖化問題は一国に閉じた問題ではなく、「地球規模の課題」であり、地球温暖化問題の解決は国境で完結できるものではなく、地球規模での対策が求められるということでございます。
16ページ目、環境と成長の好循環の関係ということで、もはや温暖化対策は企業にとってコストではない。競争力の源泉であるということ。環境と経済の好循環により、対策に熱心な企業に人材も投資も集まる国、イノベーションが加速する国を目指したいということでございます。
17ページ目、30年かかったものを10年以内に実現できなければ競争力がない。そのスピード感をもって進めていく支援ができるようなプログラムを考えていきたいということでございます。
18ページ目、野心的な目標とされる1.5℃を宣言するくらいのことが必要であるということでございます。
19ページ目、S+3Eのバランスを確保したエネルギー転換のためには、再エネの主力電源化や安全性確保を大前提とした原子力の活用が不可欠。再エネの主力電源化に向けて、劇的な低コストや調整力の確保、分散型の電源の最大限の活用につなげる。技術・制度面でのイノベーションと投資の促進が重要であるといったことが書かれてございます。 21ページ目、分散型エネルギーシステムの関係でございますけれども、再生可能エネルギー等の分散型エネルギーの活用は重要であり、地産地消型エネルギーシステムの構築支援など、分散型エネルギーの普及を後押ししていきたいということでございます。
23ページ目、地域とくらしということで、解決すべき課題、少子化・高齢化や山の問題を逆手にとってやっていく。大きな、多彩な、多様な資源と、地域を発展させようという住民の思い、そこに行政の条件整備をしていく。そういう中で、農山村の真に豊かな生活を実現する価値観を変えていくことも必要ということでございます。ガソリンスタンドが著しく減少し、将来なくなるということが想定される中山間地域のEV社会化が必要である。地方においては、農業のEV車両やEVトラクター、農機具など、人口減少や少子高齢化に対応する農業機械の自動運転化や、冬期間の積雪、凍結対策として、中山間地域でのドローンを活用した物流面でのイノベーションも必要ということでございます。
24ページ目、政府は、官民連携の下、持続可能なエネルギー産業の展望を描き、それに向けて、規制制度を初めとする環境整備を行うとともに、民間だけではとれないリスクを補う役割を担うことで、開発・投資を促進するということなど書かれてございます。
25ページ目、分野横断的な対策・施策ということで、生まれるイノベーションを市場化し、商業化する戦略、つまり受けとめる側の市場、インフラ、制度のイノベーションこそが重要。民間がそこに資源を投入する環境を整えること、そして生み出された脱炭素のイノベーションを社会のあらゆる場面で選択されることを需要側に促す施策というのが必要であるということが書かれてございます。
27ページ目、グリーン・ファイナンスということで、イノベーションに向けた投資ということで、2℃目標実現に向けたイノベーションには、民間だけでは負い切れない事業リスクを伴うことがある。安定的かつ多様なエネルギー源を確保していく観点から、巨大リスクを官民でシェアするスキームを今後検討していく必要があるといったことが書かれてございます。
31ページ目、製品・サービス等の製造・提供段階で排出されるCO2のみに着目するのではなく、資源・素材等の調達、流通、整備の使用段階、廃棄・リサイクル等といった、バリューチェーンの上流から下流までのあらゆる段階を対象に、CO2の削減の貢献を目指すべきということでございます。
懇談会での論点を少しご紹介させていただきました。
足早で恐縮でございますけれども、資料2をお開きいただければと思います。
脱炭素社会に向けた農林水産分野における基礎資料でございます。
1ページ目、これは我が国の温室効果ガスの排出の状況でございます。全体で約13億トンでございまして、そのうち農林水産業は約4%のシェアということでございます。
2ページ目にその内訳が書いてございますけれども、一番多いのがメタン、次が二酸化炭素、それから一酸化二窒素ということでございます。最大の発生源は燃料燃焼、次に稲作に伴うメタン発生、それから家畜消化管内発酵いわゆるゲップです。
3ページ目、先ほどの排出源について削減目標を書いています。これは毎年フォローアップをしていただいているので、皆様ご案内のとおりかと思います。
4ページ目、2050年に向けたGHGの排出削減イメージでございます。2030年度までは既に定まっている削減目標であり、そのまま2050年度までに引っ張っていくと、あまり大きな削減にはならないのですが、脱酸素社会に向けた新たな対策として、赤い印で書いてございますように大幅に削減していくこととしております。さらに、農山漁村地域外、他産業、海外への排出削減などに貢献していくというイメージを考えてございます。
5ページ目、農山漁村の再生可能エネルギーについてですが、再生可能エネルギーにより農山漁村から得られるメリットは、「経済貢献」と「機能貢献」の双方があるということでございます。
6ページ目、再生可能エネルギーのポテンシャルを書いてございます。
7ページ目、これは本日、馬上代表からお話しいただけるということで、割愛させていただきます。
8ページ目はバイオマスの活用ということで、木質バイオマスの大きな可能性があるということでございます。
9ページ目、Cross Laminated Timber、CLTと呼ばれている新たな木製品の活用ということでございます。
10ページ目、国産スギに含まれているマテリアルを利用して、例えば車のいろんな部品などにも活用されるとのことです。さらには、資源作物としてエネルギー利用をしていくような技術も出てきているということでございます。
11ページ目、鹿追町のバイオガスの活用事例ですが、バイオガスから水素を製造・利用するような実証事業も進めているということが特徴的でございます。
12ページ目、下川町の例でございます。非常に地域全体で持続的な課題解決に向けた取組を進めているということで、日本全国で非常に有名な木質バイオマスの活用の事例でございます。
13ページ目、農林水産省としてCO2の見える化の推進について書いてございます。
14ページ目、多くの国民の方が地球環境問題に関心を示している一方で、15ページ目に書いていますように、それが購入の際になかなか消費行動につながっていないという問題があるということでございます。
16ページ目、サプライチェーン全体による排出削減については、今日、椛島委員からお話があるということでございますので、ここは割愛させていただきます。
17ページ目、開発途上国の温室効果ガスの排出量ついては、日本では約4%なんですが、世界に目を転じると約4分の1が農林漁業、その他土地利用からの排出ということです。特に開発途上国では、農林業からの排出が非常に多いということでございます。
それでは、次に参りたいと思います。
資料3を見ていただければと思います。脱炭素社会に向けた農林水産分野の基本的考え方ということでございます。
1ページ目、脱炭素社会に向けた農林水産分野の基本的考え方の検討ということで、先程より、説明させていただきましたように、政府として長期戦略を策定する予定でございまして、この小委員会で脱炭素社会に向けた農林水産分野の基本的な考え方について検討・取りまとめを行うこととしたいと考えてございます。
合同会議においてご議論いただきたい点は、地球温暖化対策の観点から、2050年以降の脱炭素社会に向けて、農山漁村における資源を最大限に活用し、農林水産業の脱炭素化を目指した農林水産分野の基本的考え方についてご議論いただき、4月中に取りまとめをしていただきたいというふうに考えてございます。
ここで取りまとめたものにつきましては、政府全体で作る長期戦略に反映させていくということを考えてございます。
最後に少し対応方向のイメージを書かせていただいてございます。
2ページ目、農林水産業の脱炭素化及び脱炭素型農林水産物の提供ということで、農林水産物の生産プロセスの脱炭素化。それから、2つ目は、農地・畜産の温室効果ガスを大幅な削減。3つ目は、消費者への脱炭素型の農林水産物の選択機会の提供ということでございます。
3ページ目、再生可能エネルギーの創出・活用・供給及びバイオマスの活用ということで、農山漁村における再生可能エネルギーの創出・利用及び域外・他産業への安定的供給、エネルギー集約型のマテリアルのバイオマス由来マテリアルへの転換への促進ということでございます。
4ページ目、世界の農林水産業からの温室効果ガス排出の削減ということで、技術貢献などによって世界全体の温室効果ガスの排出削減に貢献するということでございます。
私の方からは以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
先ほども申し上げましたが、ご質問は後ほど伺いたいと思います。
それでは、続きまして、千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役の馬上丈司様からご説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 - 馬上氏
ただいまご紹介にあずかりました千葉エコ・エネルギー株式会社代表の馬上でございます。
私の方からは、本日、皆様の方にデータでお配りされております、地域におけるソーラーシェアリングの導入ということで、プレゼンテーションをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
では、着席にて失礼いたします。
お手元の資料を見ながら、皆様、私のプレゼンテーションを聞いていただければと思います。1ページ目、水田に太陽光パネルが並んでいるような写真ですが、私どもが今事業として取り組んでおりますのは、水田、畑、果樹園、牧草地、様々な農地を活用した自然エネルギー、再生可能エネルギーの創出の取組をさせていただいております。
2ページ目は秋田県の井川町というところで、2017年からアキタコマチの圃場で水稲と太陽光発電を両立させている取組なのですが、農水省では営農型太陽光発電ということで定義をいただいておりまして、一般ではソーラーシェアリングということで、営農を継続しながら再生可能エネルギーを創出するというモデルでございます。
3ページ目は私の簡単なプロフィールです。肩書としては企業の経営者なのですが、私自身は博士課程まで学位をおさめておりまして、主にエネルギー政策を専門としております。各地で自治体の委員等もやらせていただいていますが、立場としては、研究者であり、実業家であり、会社としては農業にも参入をしておりますので、農業者としての視点も含めて、今日はお話をさせていただければと思います。
4ページ目の企業の概要はちょっと省略させていただきますけれども、簡単に申し上げれば、私が大学院に所属しておりました千葉大学の大学発ベンチャーということで、特に再生可能エネルギー全般です。太陽光発電、本日の営農型太陽光に限らず、畜産系のバイオガスもそうですし、木質系のバイオマス、それから農業用水等を活用した小水力等、農林漁業にかかわったエネルギー開発というところを幅広くサポートさせていただいております。
5ページ目。この営農型太陽光発電になぜ取り組んでいるかというところを簡単にご説明します。私が千葉大学で自分の指導教官とともに、永続地帯という、国内の全ての市町村の再生可能エネルギーと食料自給の現状を13年にわたり、毎年統計情報として取りまとめて公表しております。
この中で明らかになったこととしては、再生可能エネルギーの実際の普及、導入のポテンシャルというものは農村に行くほど高い傾向にあること。これは当然ながら、自然から資源をとる以上、太陽光を含め、あらゆる資源が農村に行くほど賦存量が高いということは、一定の考えとして得られると思うのですが、それを実際に両立させていく仕組みや、さらに普遍的に適用できるものは何かと考えたときに、この営農型太陽光発電というものに注目し、千葉県の匝瑳市、千葉県千葉市、その他全国でプロジェクトにかかわっているところでございます。
6ページ目、なぜ営農型太陽光発電かというところを少し焦点を絞ってお話をさせていただきたいと思うのですが、従来とそれから将来という2つのフェーズに分けて整理をさせていただいております。
従来というのは、2013年3月31日に農水省の方から通知を出していただいて、この営農型太陽光発電の設置というものが制度化されて以降、どういった目的を持って、少なくとも事業者も含め、これに取り組んできたかという視点が従来でありまして、将来は、これは私が今回お話をさせていただく、営農型太陽光発電の可能性ということになります。 従来のところは、まずは農地の多面的利用、従来型の営農を継続しながら発電事業による売電収入を農業者が得ることによる所得の向上。耕地ないしは耕作放棄地、荒廃農地等を活用した、再生可能エネルギーである太陽光発電の導入拡大。そして、荒廃農地自体の再生による耕地面積の拡大。この3つが大きな視点でございました。
それに加えて、昨今、ここ1年ぐらいの動向としましては、1つは今日のお話にもいろいろ出ておりましたけれども、農業分野における低炭素化を進める契機として、農地において低炭素な電源が創出され得ることです。おそらく今まで全くなかった視点でございますし、太陽光発電という形態をとることによって、バイオマスや小水力と違って、立地の制約が非常に少なく、日照があるところであれば、その電源創出が可能であるというところの可能性を感じております。
それから、エネルギー生産地としての農村の再評価。これは私自身が日本の電気事業史を全てひも解いた研究もしておりますけれども、やはり日本の電気の普及というものは、都市圏以外にも農村部分から自発的に電気事業というものが始まってきた歴史がございます。その時の電源の大半は水力発電からスタートしておりまして、これは明治期、大正期の技術からすれば当然なのですが、当時は農村が電源を開発し、それから高圧、特別高圧の送電技術が開発されたことによって、都市部に電源が供給されました。
一番顕著な例でいえば、日本で初めての高圧送電は岐阜の水力発電所から名古屋に向けて行われましたし、東京の山手線の電源は福島の猪苗代の水力発電から送電されたということも歴史的事実でございます。農村が食や食以外でもエネルギー供給地として支えてきた、その形が改めてこの営農型によって可能となるのではないかと考えております。
3個目としては、この地域共生型の再生可能エネルギーモデルの拡大ということで、今、特に太陽光は様々批判にさらされるところではあるのですが、営農型モデルの場合は、これは農業の密接なかかわりが前提となりますので、外から事業者が入ってきて、勝手に全てやるというよりも、地元に根差した農業と一体となった地域創生のモデルとして拡大し得る。これが将来の視点として私は考えております。
7ページ目以降、実際に、私自身がやっている取組も簡単に紹介させていただきます。
これは、私が自分の会社で、農業法人として、一般法人ではございますけれども、農業参入を果たした契機となった事業でございまして、千葉市の緑区、千葉市の中心街から車で30分ほど東に行ったところにある設備ですけれども、ちょうど1ヘクタールの農地に、発電出力では625キロワットの設備を設置いたしまして、FITでの全量売電を行いながら、今、耕作放棄地で農業をしております。
農業を化石燃料から解放していくことが、我々自身のテーマになっております。後ほどもう少しお話を差し上げたいと思いますが、一番はこの持続可能な農業を行う時に、農業に投入されているエネルギーというものを転換していかなければならないだろうと。私も経産省の総合エネルギー統計をずっと読み解いてきた身ではありますけれども、特に農業における98%以上の投入エネルギーが化石燃料由来であること。これは油から電気から全てということなのですが、このエネルギーの転換を実現する小さなモデルでも作れないかということを今チャレンジをしております。
9ページ以降、設備を写真でお話ししていきたいと思います。9ページ目は空撮の全景、10ページ目は、初めてのトラクター作業の風景、11ページは私の所属していた大学の学生やいろいろな方々をお呼びした都市近郊農業体験。12ページ目、実際、圃場の管理作業をしている様子、13ページ目、実際にニンニクを育てており、市の農政センターとも相談しながら、作物の作付や出荷等についても今、調整を進めているところでございます。 いただいている時間が短いので、論点整理に入っていきたいと思います。14ページ目、主に気候変動対応やSDGSなど、様々な視点からお話をさせていただければと思うのですが、特にこの営農型、農業と共生する再生可能エネルギーという視点からいきますと、特に気候変動対応、我々自身が自分の圃場でもやっております農業分野におけるエネルギー利用の転換です。今までどうやって農地において電源、油から転換するに当たって電化ということは1つ視点になるかと思うのですが、必要な電源をその場で、あるいは農村の中で確保することが可能になるのであろうと思います。
今、IoT、ICT、様々なデバイスの導入が進んでおりますけれども、リモコン操縦の草刈機の活用とか、EVトラクターというのはなかなかまだ進まないところではあるのですが、農作業自体の省力化・効率化とエネルギーの転換についても進めていきたいと考えております。
今回、あまり論じる時間がないのですが、そもそも太陽光パネルによる一定の遮光環境、特に夏場の最近気候変動下での強い日射の影響緩和というところは、いくつかデータとして実証ができているところでございます。
SDGsの視点もいくつか指摘させていただければと思うのですが、特にこの営農型太陽光発電は、地域の自然環境との調和です。今、太陽光発電という広いくくりで見ますと、特に林地開発による設置が問題視されておりますが、既存の耕地、あるいは耕作放棄地等を活用するなど、農地という既に人の手によって開発された土地を二重活用する形で導入していけば、少なくとも地域において確立された里地でありますとか里山でありますとか、生態系も含めたところを大きく損なうことなく電源を創出することができると思います。
農村におけるエネルギー産業の創出は、農村の持続可能性を高めるものであり、自ら電源を作るという視点もそうですし、食料生産の安定に際して、エネルギーを輸入に頼るのではなくて、自ら手に入れていくということです。
ここにバイオマスや小水力を組み合わせていくことも考えられると思うのですが、この地域に根づいた分散型電源としてのエネルギー安全保障の強靭化に資するということです。これは、分散型電源としての特性、特に我が国における400万ヘクタール以上の耕地と、28万ヘクタールあると言われている荒廃農地の活用、農地というものは全国に広がっておりますので、これを新たな電源地としての活用を図っていくことは重要な視点ではないかと考えております。
実際、導入自体は国内では件数に偏りもありますし、事例も少ない状況ではありますけれども、これから先、太陽光発電の開発も頭打ちのところで、こういった幅広い活用が農地の活用も含めて考えられないでしょうか。そして地産地消の電源ということを考えた時に、地域に根差した特性、その活用の方法として、食料とエネルギーを農村から都市へ供給していく。そういった幅広い都市と農村の連携のモデルが作れるのではないでしょうか。
ただし、農村部分においては、今どうしても電源ネットワークの弱さというところはありますので、ここの構築ですとか、あるいは農村から都市にエネルギーを供給するに際してのインフラの構築というところは、課題があるところだと思います。
それから、地域の合意形成も図っていかなければいけないところでありまして、今まで農業のための農地というところに、電源創出という視点を持ってきますと、どうしても世代ですとか地域によって考え方が異なるところがありますので、この重要性、必要性というものを改めて地方自治体、それから農業者の方々等も交えながら合意形成を図り、これをやっていくことが、農村の振興につながるものであるといったような合意形成を図ることも重要ではないかと考えております。
現状、荒廃農地の28万ヘクタールを最大限活用できないかと考えた場合、もし全ての荒廃農地にこの営農型太陽光発電を適切な規模で導入できれば、おそらく電源としては日本の現在の電力需要の20%程度を賄う規模まで拡大することができるだろうと。恐らく電力供給量は1,500億から最大2,000億キロワットアワーの太陽光の設備が導入できる余地はございますので、私も今後定量的な数値というものを作りながら、皆様にもご提案できればと考えているところでございます。
短い時間ではございましたけれども、これで私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。
(拍手)
- 渡邉座長
馬上様、非常に興味深い取組のお話、どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、住友林業株式会社筑波研究所の村田泰治様からご説明いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 - 村田氏
本日は、貴重な機会をいただきましてありがとうございます。住友林業筑波研究所の村田でございます。
本日は、高層建築物の木造化について話題提供として、弊社が昨年2月に発表いたしましたW350計画についてご紹介させていただきたいと思います。
着席にて失礼いたします。
まず初めに、弊社の概要の方からお話させてください。
W350計画は、これからご説明する内容が全ての基本ということになります。
最初に、328という数字が出てまいりましたが、弊社は今年で創業328年目ということになります。スタートは1691年の元禄4年、歴史は非常に古くて、もともとは四国別子銅山の銅採掘のための備林運営から始まりました。ただ、その長きにわたる経営の中で、過度な伐採と煙害から、一時写真にありますような、山を荒廃させる事態を招きました。その状況を見た当時の支配人が1894年から大造林計画を実行いたしました。その結果、これは同じ場所の写真になりますが、自然環境を守る技術を生かして、山をもとの青々とした環境に戻しました。その木を作り、生かし、育てて、地球環境をよくして社会に貢献することを基本理念に、弊社は今日に至っているというところでございます。
次に、ここから培ってきた事業について、簡単にご紹介の方をさせていただきます。
弊社の事業は、大きく8つのカテゴリーで構成されております。
1つ目が、生物としての樹木を扱う資源環境事業、緑化事業です。次に、材料を扱う環境エネルギー事業、木材建材事業、製造事業、そして建築にかかわる住宅建築事業、あと海外住宅不動産事業、生活サービス事業です。川上から川下まで大きくつながった形での事業を展開するに至っております。
さて、このような状況の中で、弊社は社を挙げて350周年を迎える2041年に、世界一の存在になるという目標を立てました。何をもって世界一の存在になるか、それは森林面積・植林面積やティンバーの取り扱い量ということではなくて、木の価値を高める技術において世界一になるということです。
ただ、この木の価値を高める技術といいましても、抽象的でちょっと理解しづらいところがあるかと思います。それを具体的にするために取り組みましたのがW350計画です。
この計画に関してご理解していただきたいものがございます。
この計画を発表してから、どこで建てるかという事業として捉える方がたくさんいらっしゃったのですが、事業として成り立たせるということではなくて、人と地球の環境を考えて、街を森に変えたい、環境木化都市を造るということを目標にした研究技術開発ということになります。
その構想を具体的に検証して、ビジュアル化したものがこちらの方になります。
まず、全般をご理解していただきやすいように、動画の方をご用意しておりますので、こちらをご覧ください。
今の街並みは、このように無機質な材料で固められております。それを少しでも再生可能な木に置き換えていったら、どのような街並みができるのかということを考えて計画したのが、この350計画ということになります。
これによって、ダイバーシティや働き方の観点でも生活状況が変わっていくのではないか、このように考えています。言ってみると、都市に里山を造るイメージで、リスや鳥、チョウや蛍と一緒に暮らすような街を都市に造りたい、こんな思いが詰まっております。 様々な生き物が共生できる街、それを木材の活用や循環によるサステナブルな社会ということで目指していけないかと。そして、人の価値を高める様々な技術、弊社は研究所ですので、技術を高めることで、安心、安全、快適、健康な超高層木造建築、環境木化都市と弊社では呼んでいるんですが、それを実現していきたいと考えております。
全てを木で造ろうとは思っておりません。一部に異素材を使いながら、木をたくさん、可能な限り使って上げるということを現実化していきたいと考えています。
他社にはない総合力として、グループ会社に日本で一番大きい緑化会社、住友林業緑化という組織を持っておりまして、木造建築というところだけではなくて、都市づくりというところでも貢献していきたいなというふうに考えています。
ただ、弊社は、ご存じのとおり、住宅が大きな事業としておりますので、こういった高層事業というのは、なかなか知見がございません。ですので、今回、日本で一番の設計事務所である日建設計さんと組ませていただいて、2年半プロジェクトを温めまして、今回発表に至ったということになっております。
この350計画を進めることによって、企業として発信する内容は様々ございます。CO2の固定量の増大をどうやるかとか、非住宅の木造化をどう進めてやるか。林業の再生をどう考えていくか。地方の活性化、地球環境負荷の低減ですとか、様々な社会的課題解決への貢献ということを市場に伝えていきたいと考えています。
これらの目標を具体的に表すに当たり、2041年に達成すべき姿、デザインモデルというものを描きました。そして、バックキャスティング手法を用いて、それを実現するための技術的指標を表した技術モデルというのを作り上げました。
建物概要はこちらに示すとおり、場所は東京都の千代田区、建築面積は6,500平米、延べ面積が45万5,000平米です。地上70階の350メートル。用途が、店舗・オフィス・ホテル・住居。設計協力は日建設計さんです。
ここでは、将来のあるべき姿を描きました。実際、この中にはたくさんの課題がございます。その課題をいかに具体的に捉えるかということで、次に紹介する技術モデルというのを描きました。
我々が考えていますのは、今から考えると22年先の話になります。医療で例えますと、22年前には画期的なIPS細胞というようなものもございませんでした。そういった技術と同等に扱うというのは甚だ失礼かもしれないですが、そういった技術は実際なかったのですが、構想とか考えを持って日々切磋琢磨する研究者というのは、恐らく22年前はいらっしゃったと思います。新しい技術を生み出す原動力というのは、いかに夢を描いて、それを具体的に描いて、対処していくかというふうに考えています。その検証を行ったのがこの技術モデルです。実現可能な具体性を確認しております。
一番の成果は、使用する材料の適材適所の考え方をもとに、対応すべき課題と期待する技術を明らかにしたということです。
概要を少しご説明させていただきます。
構造は、使用する材料の特性を生かして、外周部には鋼材のブレースを用いまして、内部にはブレースを使わずに純粋な木材で組み立てた構造ということになっております。その内容を応力変形解析、地震他、各種シミュレーションを行いまして、構造安全性を確認しております。
土地を丸ノ内したのは、精密な地震波を与えるのにどこの場所かというので決まってくるからです。
それにより導き出された材寸というのは、1階部分で柱の材寸が2.5メーター角になりました。イメージしてみると、4畳半ぐらいの断面の柱であり、かなりたくさんの木材使用が想像できますが、これを技術的にいかに小さな材寸にしていくのか、いかに有効的に使えるようにしていくのかというところを課題として捉えて取り組んでおります。
全体ではどれくらいの木材を使うのかということですが、このビル1本では18万5,000立米の木材使用量がございます。当社は住宅事業で年間約8,000棟建てさせていただいております。それとほぼ同じ木材の使用量ということになります。計算すると、CO2の固定量としては、樹種にもよるのですが、少なく見積もっても10万トン以上になると思います。
次に、実現するに当たり重要となる技術開発の方向性について、3つお話ししたいと思います。
第1に、よく言われるのが耐火部材です。建築基準法上、この規模の建物を建てるためには3時間耐火という性能が必要になってまいります。今でも現実、石膏ボードを巻いて、異素材を使って3時間耐火の認定をとれている部材もございますが、弊社では極力、木以外の材料を使わずに、木材だけの力で耐火を実現させたいということで研究開発を進めております。木は燃えるじゃないかと思われるかもしれませんが、今の取組において、木だけで燃えとどまらせるメカニズムというのが見えかけておりまして、この技術の確立を加速させて、3時間耐火に持っていきたいということで今取り組んでおります。
第2に、他社にはない研究開発の大きな違いとして、より良い木を作るためのゲノム育種技術とか、緑に関する研究開発というのも行っております。これで早く育つ木ですとか、より高強度の木、これも遺伝子を組み換えてということではなくて、今取り組んでおりますのは、今ある遺伝子の中をのぞいて、こいつは強そうだな、こいつは早く育ちそうだなというのを遺伝子の中から読み取って、それを選抜するというやり方で進めております。 第3に、人の生産性向上を数値化、エビデンス化する研究というのも進めております。木を使う、木材を使うというと、何かいいよね、過ごしやすいよねと皆さんイメージされると思うのですが、何が良いのか、本当に効率上がるのかが、なかなか明らかにされていません。これを人の脳の脳波を測ったり、実際に作業性がどのように上がるかというところを数字化として明確にしていくという検証も進めております。
実際に、実物件でもこの計画の方を順序立てて進めております。
まず、1つ目、足がかりになりますのが、こちらの新研究棟という建物になります。これがただいまの建築中の建物なのですが、重要な要素として考えておりますポストテンション技術という技術を用いて建設を進めております。
これが今、外部工事中の様子です。約2週間前にとった写真です。3階建てなのですが、高さが15メートルございまして、5階建てぐらいのボリュームがある建物になっております。
内部は今工事中ですが、今見えているこの木材はほとんど全て仕上がっても見える状態ということで、設計をしております。本年8月の竣工予定を目指して工事を進めております。
我々の350計画における具体的な第一歩というのは、先ほどの新研究棟の建設なのですが、それに続いて、六、七階建てクラスの建築を企画しております。我々は、これをW30と呼んで推進にかかっております。
まだ小さい一歩ではありますが、2041年に350計画を実現するというところに向けて、一歩一歩確実に進めております。たくさんのハードルがありまして、弊社だけではなかなか解決できないという部分もあると思いますが、皆さんの力をお借りしながら、少しずつ進めていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
以上で私からの説明を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
(拍手)
- 渡邉座長
村田様、非常に興味深い取組をご紹介いただきまして、ありがとうございました。
それでは、続きまして、本小委員会の専門委員でおられる椛島裕美枝委員からご説明いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。 - 椛島委員
イオンの椛島でございます。着席にて説明をさせていただきます。今日は、私どもが掲げています脱炭素ビジョン2050ということで、お手元の画面を見ていただいて、資料の方の説明をさせていただければと思います。
2ページ目、脱炭素社会を目指してということで、過去にこの2050のビジョンを発表するに至った経緯のご説明からとなります。
もともと2050年のビジョンがいきなり出てきたわけではなく、過去、イオン温暖化防止宣言を2011年まで、またイオンのecoプロジェクトを2020年まで掲げておりまして、その後継として長期の目標といいますか、長期のビジョンが必要であるということで、昨年公表をさせていただいております。
その中身なのですが、大きく3つの視点を掲げておりまして、まず、私ども店舗を持つ小売起点の事業を中核に据えておりますので、店舗で排出するCO2等を2050年までに総量でゼロにします。
また、商品・物流、当然店舗では商品を販売しておりますし、流通業であるため物を動かしたりしますので、事業の過程で発生するCO2についてもゼロに目指すような努力を続けていくということを宣言させていただいています。
また、「お客さまとともに」ということで、我々小売業で直接顧客設定のある事業を行っていて、日々消費者の皆さんと接しているということで、生産者のご努力、メーカーさんのご努力といったものをお客様にもお伝えをしていく責任があるというところで、お客様とともに脱炭素社会を実現していくことに努めるということを宣言をさせていただいております。
この宣言に至った経緯として、ゼロは本当に可能かということはかなり社内でも議論のあったところでございます。
4ページ目、連結売上高というのは2008年から2020年に向かって、延べ床面積とも比例をしてずっと高くなってきております。ただ、対照的に実際の事業におけるCO2の排出量というのは年々下がってきています。当然、当時にはなかったような技術がどんどんと開発をされてきていますので、この後も何らかの形で2050年に向けてビジョンを大きく描くことで、限りなくこの反比例といいますか、連結売上高、総床面積というのが上がったとしても、CO2の排出量というのを削減は可能であろうということを社内で分析をした資料となっております。
5ページ目、中間目標なのですが、2050年の排出ゼロということは、現時点では、全然具体的ではありません。あくまでそういう方向を向かって目指したいということだけですので、現実的な中間目標として2030年に35%の削減を目指すということを具体的に絵を描いているところでございます。
SBT、Science-based Targetsについては、資料では申請中と書いていますが、最新の状況としては認可をされたという状況です。Science-based、2℃未満に抑えるというエビデンスを持った目標であるということで認定をされております。すごくちゃんとした目標として聞こえるのですが、我々の商業施設に関しては、SBTの方から実際にいろいろなツールが出ていて、総床面積を入れると、Science-basedというのはこういう結果ですよというグラフが表示され、こうしなさいと半分言われているようなものですので、認定されて当然だということかもしれません。
実際には、これに向かって取り組むことが大変ということであって、こうするために省エネ、再エネ、いろんな努力を用いてどうやってやっていくかということを社内で議論をしているところでございます。
6ページ目、2030年の目標達成に向けてをご覧ください。
2030年までにCO2排出量35%削減に向けて、我々は当然のことながら店舗を運営しておりまして、CO2のうち約9割が電力由来なっております。日本の大体1%のエネルギーを使っておりまして、恐らく日本で一番たくさんエネルギーを使っている企業でございまして、占用している面積が大きいのでそういった結果になってしまうのですが、当然そういう電力由来のエネルギーをたくさん使っているというところで、ここが一丁目一番地だろうと。ここを削減することを無く他の手段ということはないですので、今最優先で省エネと再エネに取り組んでいるというところでございます。
これ以外にも、先ほど住友林業様からも提案のございましたような木質バイオマスの活用、店舗においても進めております。実際には、私どものコンビニエンスストア、もしくはショッピングセンター等で、地域の木材を使うというような取組もしておりますが、エネルギーとして一番排出量が大きい電力について、7ページ目に省エネと再エネの具体的な計画について記載をさせていただいております。
この取組を達成するに当たっての手段として、次世代スマートイオン店舗の開発、それから、電力の再エネ等の調達、供給をグループ内で行っていく企業として、イオンディライト(株)に事業の中核を担ってもらい、電力事業自体を展開していく取組をしております。
8ページ以降、「自社における具体的な取り組み」を、紹介させていただいております。
9ページ目と10ページ目は、小売事業としてのエネルギーの排出削減であり今この議題に関係ないですので、少しこちらは説明を省略いたします。
11ページ目、よくショッピングセンターで太陽光発電等々ご覧いただくことが多いかと思うのですが、こういった形で店舗全体で創エネということも始めております。
12ページ目、IoTの活用というところ。
13ページ目、先ほど申し上げましたイオンディライトという会社が電力事業自体を直接行っていくというご紹介でございます。実際には卒FIT、いわゆる固定価格買取制度を卒業した方々のエネルギーをどうするかといったところのソリューションも目指しております。
14ページ目、RE100、Renewable Energyの取組、イニシアチブにも参加をさせていただいております。
15ページ目、私どもの本社のビルに関しては、2018年3月より使用電力については東京電力さんの再エネ「アクアプレミアム」を利用させていただいて、100%再エネ化を完了しております。
16ページ目、お店の方にも再エネ100%を目指していきたいというふうに考えております。
17ページ目以降、先ほどのバリューチェーンに当たる商品・物流、そしてお客様に対してというところの取組の考え方を続いてご紹介させていただきます。
18ページ目、商品・物流においては、委託先様、まずはプライベートブランド商品の製造委託先様にCO2の削減目標の制定を要請させていただいております。実際に製造委託先に、目標について具体的にヒアリングをさせていただいております。
またお客様がご使用になることによって、そのCO2削減に間接的に貢献ができるというような商品開発も掲げております。実際には、こういった取組の評価を行い、お客様にそういったものを伝えていくというところと合わせ技で、動いていく必要があると認識しております。
併せまして、先ほど中川様から具体的な説明がありましたが、グローバルでは我々サプライチェーンにおいて、日本で排出をしていなくても、CO2に関して森林が後退することによって木材、パルプ、紙、そしてパーム油等々を使うことによって、ランドユースチェンジが進行してしまうということもあります。こちらはグローバルの小売業とも協業して、森林破壊が進まないような持続可能な調達といった取組をしております。
また、物流においてはメーカー様との共同運行でモーダルシフトを推進するといったような取組についても推進をしております。
続きまして、こちら最後の資料になりますけれども、「お客さまとともに」というところで、物を売る際にできることを、いろんなイベントや商品を通じて生産者、メーカーさんのご努力を伝えていくという活動をして参ります。
具体的には、過去、農水省様ともCO2のラベル等々で協力をさせていただいたこともあって、そういった取組を発信する、もしくはどのようにエビデンスを確保するのかといったことをやらせていただいたこともございます。何をもって低炭素というのか、店頭でお客様が直接見るわけにもいかないですので、生産者の負荷にならない形で、どういったエビデンスを確保して、お客様にラベルがいいのか、どういったコミュニケーションツールを用いるのかを考えて発信をしていきたいと思っております。CO2とは関係ないのですが、水産資源の問題であるとか、非常にご関心が高くなってきていて、ラベルを付けることでいろいろなところで発信をされるというのも以前とは全然異なってきているので、何らか目印になるような、この商品に関しては生産者が低炭素に関する努力をしたということが伝わるような見える化というものを、何らかの形で皆様と協力をしながらやっていければと思っております。
そういう意味では、こういった戦略を立てて、国が音頭をとってくださるのは、非常に感謝をしており、こういった枠組みで国民運動が盛り上がっていくことを期待しております。
また、イオンチアーズクラブというものの展開をしております。店舗にお子様の環境教育をするような組織を持っておりまして、平均30人ぐらいのお子様をお預かりして、店舗の周りの環境を考えるといったような活動をしています。実際に、農業の生産者の現場にも1万人近い数のお子様が来てくださっていて、お母様も参加をされる時があるのですが、実際に木質バイオマスボイラーを見学に行かせていただくような、生産者のところに足を運ぶという取組もたくさんやっていますので、今後こういった取組が進めば、そういった見える化、実際に見に行っていただくこともできるのかなと考えております。
最後になりますけれども、本当に商品戦略として国を挙げて非常に取り組んでいるオーストラリアなどCO2を起点に生産者の産業界、研究機関が協力をして、カーボンニュートラルでいくんだという宣言をされているような国も既に出てきています。日本の生産者の取組がどのように伝えられるのかを考え、日本のいいところ、日本らしい取組を推進して、日本の農産物が低炭素に向けてすぐれているという発表など、海外にも私どもの店舗があるので、海外のイベント等を通じて発信できる機会があればいいなと考えています。消費者、もしくは、その商品を通じて、今後も努力を続けていきたいというふうに考えております。
ありがとうございました。
(拍手)
- 渡邉座長
椛島様、ありがとうございました。
3名の方から今回の取りまとめに当たって、私の個人的な意見ですが、非常に心強い取組、方向性、こういう情報をご提示いただいたと考えます。ありがとうございました。 それでは、これから事務局のご説明を含めて質疑に入りたいと思います。大変申し上げにくいのですが、今日12名の委員の方にご出席いただいていますので、皆様にご発言いただくとするとお一人3分ぐらいしかない、ということを頭に入れてご発言いただけたらと思います。
それから、ご意見、あるいはご質問のある方は、お席の前の名札を立てていただいて、手を挙げる代わりにしていただきたいということです。
どなたからでも、どなたに対してでも結構ですので、ご質問、あるいはご意見ありましたらよろしくお願いします。
では、早速、横山委員から、どうぞ、お願いいたします。 - 横山委員
林政審議会から参加させていただいております横山といいます。自然保護協会に所属をしております。
お三方のプレゼンテーションは大変すばらしいものでしたし、資料の作り方が非常にすぐれていると感銘を受けました。
その中で、初めの営農型太陽光発電の話は、日本中に広がってほしいなと思うのですが、お三方の仕事に共通して、留意していただきたい事項としては、1つ目は、市民とともにどうやってこの活動を進めていくのかという、農地や海浜や森林利用の意図と行動をできるだけ市民とともに共有していくという姿が必要だと思うのですが、農林水産の生産者の方々と地域消費者のパートナシップをどういうふうにつなげていけばよいかという点について、コメントいただければと思います。
それから、もう1点、例えばヨーロッパ辺りの環境の会議に出かけると、温暖化の話と生物多様性の話というのが常に同じメンバーの人たちが両方のテーマにかかわるということを経験するのですが、日本の場合、生物多様性の話は生き物屋で、それから温暖化の話は企業の方々といった、乖離しているところがあり、まずいなと思っております。特に林木のエネルギー利用、バイオマスの利用で、特に電力を創出する時は育成に非常に時間のかかる環境ですので、その場の選択と規模の適正性が非常に重要だと思うのですが、地域完結型を基本にした生物多様性と温暖化施策の両立という、これについてどのように仕事の中に組み込まれているのでしょうか、この2つをお伺いしたいと思います。
以上です。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
何名かの委員からお話を伺ってから回答いただこうと思います。
では、お隣、山下委員、お願いします。 - 山下委員
私は、水産政策審議会に所属しておりまして、自分の所属は大東文化大学でございます。
今日お話をいただいて、いろいろと啓発されたというか、頭の中がびっくりしたようなことでございますけれども、水産に関連することで、1つ話題提供と、それから質問をさせていただきたいと思います。
まずは話題提供ですが、例えば、本日お配りいただいた資料2の2ページ目には、農林水産業では燃料燃焼が非常に大きな割合を占めていること。3ページを目には、漁船が出てきており、漁船は燃料がなければ何もできないものでございますけれども、実は昨年の12月に漁業法の一部を改正する法律というものが成立いたしまして、いわゆる改正漁業法と呼ばれるものの中では、8割の漁獲物について、将来目標ですがIQ、個別割当を導入するということの方向性にかじが切られました。
漁船がどのようなものにエネルギーを使っているかというと、もちろん港から漁場への航行です。この時に早いもの勝ちでとるとスタートダッシュをするので非常にエネルギーを使うんですが、自分は何トンとっていいということが初めから分かっていれば、ゆっくり効率よく漁場まで行くこともできます。それから、光源で結構漁船はエネルギーを使うのですが、これも他の漁船より明るい光源にしてたくさんとりたいという気持ちが働くのですが、これも何トンとっていいということが最初に決まっていれば、これを減らせるということで、改正漁業法は、この省エネルギー、CO2排出削減に貢献するものではないかと思いました。
それから、馬上社長への質問です。農地の多面的利用というふうにおっしゃっていましたが、漁業でも多面的利用というのはあるのですが、実は漁業内での多面的利用に限られているわけです。例えば養殖生けすは、上を黒いネットで覆ったりしているものもあり、遮光するためと、あと鳥に食べられないようにするためなのですけれども、これを太陽光のパネルに替えるというようなことは、結構できるのではないかと思いました。
それに関連しての質問なのですが、先ほど写真で見せていただいたような農地とパネルの合体型というのは、夏のすごい暑い日差しは遮光の役割があるかもしれませんが、通常は太陽光を遮ってしまうので、それだけ100育つはずの作物が40しか育たないとか、そういうマイナスがあるのではないでしょうか。一方で、太陽光パネルも全部に敷き詰めるんじゃなくて、ストライプ型に敷かれているので、同じ面積での太陽光発電の発電量というのも100から比べると何%か劣るのではないかと思います。この両立をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
以上です。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
青柳委員どうぞお願い致します。 - 青柳委員
国立環境研究所の青柳です。よろしくお願いいたします。
私はもう少し、環境研究所なので、あまり生産そのものにはかかわっていないのですが、それ以外の部分で質問いたします。今回、農林水産以前に全体的な概況をご説明いただいた時に、懇談会ではイノベーションという言葉が何度も出てきております。特に経済産業省からの資料でプラットフォーム報告書をご説明いただき、その中に3E+Sということで出てくるのですが、3E+Sというのは、日本のエネルギー政策の大もととなるエネルギー基本計画、昨年発表された第五次計画中でも柱として使われております。第四次まではほとんどなかった水素エネルギーが第五次では非常に強く触れられているという変化がございます。
そうなりますと、農林水産業においても、この水素エネルギーの活用ということがもう少し強調されてもいいのではないでしょうか。今回、鹿追町で水素を生産しているという事例がご紹介されましたけれども、現在、水素エネルギーはその第五次エネルギー基本計画などを見ますと、当初はオーストラリアの褐炭を使うんだけれども、将来的には低炭素を目指すために、再生可能エネルギーによる水素エネルギー、水素の生産ということが柱に書かれております。そのためにはバイオマスとか、太陽とか、風力とか、水力とかいろいろ使うのですが、当然のことながら農林水産産業と非常に親和性が高いと考えられますので、この水素エネルギーをイノベーションの核としてもう少し打ち出してもいいのではないかと思います。いかがでしょうか。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
では、小倉委員、続けて伺います。 - 小倉委員
全国消費者団体連絡会の小倉と申します。千葉県に住んでおりますので、馬上様、イオン様のお話を伺っていますと、2050年に向けて千葉県が脱酸素社会への先端を走っているのではないかと、ちょっとうれしい気持ちで伺っておりました。
資料3について、3点ほど質問、意見を述べたいと思います。
先ほど、イオン様の方からもありましたけれども、消費者への脱炭素社会へ向けてラベリング等を分かりやすい形で提供していくというお話がありました。このラベリング等につきまして、カーボンフットプリントを想定されているのかでしょうか、いくつかの商品で今でもカーボンフットプリントを付けている商品もあるのですが、なかなか消費者側の認知がされていないということと、そのデータを集めるのがとても大変だというお話を伺っております。消費者に向けて、脱炭素社会に向けて、ラベリングを伝えていくということも大事かもしれませんけれども、食品に関していえば、まずはロスをさせない、食品廃棄をさせないといった方向での認知を進めていくということもとても大事なことかと思います。
各国の目標にも入っておりましたので、そちらからのアプローチもとても大切ではないかなと感じております。
それと倫理的消費のとして、消費者の中ではエコバッグを持っていくとか、地産地消を進めていくというようなことは大分進んできていると思うのですが、価格がオンされたものに対してなかなか手が出ないというようなことが、先ほどのグラフでも出ておりました。 そういった中で、1円をどこに寄附しますというような寄附付き商品を作ってみたり、今回とても成功したと思われる、バレンタインデーのチョコレート等で、友チョコとか自分にチョコとかという中で、社会に向けてのチョコ、フェアトレードのような、あなたもちょっと協力してみませんかというようなことが大分進んできたなと思います。 そういったエコの取組であるとか、消費者にアピールしていくということはとても大事なことだと思いました。
あと2つは意見なのですけれども、3ページのところで再生エネルギーを創出していくというところがありますが、この間に、補助金等が随分出されていた取組だと思います。それを評価して、反省をするところは反省し、課題をきちんとした上で次に進めていってほしいと感じております。
次のマテリアルバイオマスなのですが、作物がバイオ素材に回るということをきちんと考え、あるいは森林を切り開いて作っていくということも考えた上で促進をしていっていただきたいと思いました。
以上です。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
では、ここまでのところで、まずご説明いただいた3人目の方からご回答をお願いします。その後、事務局に対して質問と情報提供ありましたけれども、ご対応いただきたいと思います。
では、馬上様からお願いしましょうか。よろしくお願いします。 - 馬上氏
2つ。まず、横山委員からのご質問のところで、市民と進める方法でありますとか、生産者と消費者のところのパートナシップのお話なのですが、特に営農型の場合は非常に特徴的な取組として、まず今、私どもがやっておるのは、畑から提供されるエネルギーと、食料と食品をひも付けるというような活動をしております。今、ブロックチェーン技術で発電所の特定が大分進む中で、今、我々の発電所の電気はいくつかの事業者さんに直接買っていただいているのですが、それが大きい企業さんであると、そのまま、それこそ農産物も全部買う、という話になるのですが、今いくつか取り組んでおりますのは、例えば道の駅に対して電気を給電するに際し、この畑で作った電気で道の駅が運営をされていて、かつそこに、その畑でできた作物が並んでおりますとか、これを切り離してしまうと、特に電気だけだとかなり消費者が実感しづらいところが出ていくのですが、先ほど私も写真を提示させていただきましたが、農作業の場合は自分が参加できる、その上でエネルギーも作られている、場合によっては自分の家もここから電気を買っているというところまでつなげることができれば、その生産と消費の連携、それから市民の参加というところまで、意識の向上が図れるのではないかと考えております。
それから、山下委員の方からお話がありました漁業のところです。まず、養殖場における太陽光パネルをかけるのは、私は11月に台湾で実際に事例を見てきております。淡水での養殖ですけれども、養殖場の上に、そのままソーラーパネルをかけてしまって、そのソーラーパネルを可動できるようにしておいて、下に入る日照をコントロールしながらエネルギー供給もしていくというパターンが1つ、あとは中国ではかなり大規模に、養殖池の上に完全にソーラーパネルを並べてしまって、日照のあるエリアとないエリアをゾーニングするといった事例もあります。ただ、日本国内ではまだ小規模な本当に個人レベルでやっているような養殖のいけすでトライしている方が多少いるような状況と把握をしております。
それから、遮光による生育の影響ですけれども、今日はそこに言及し切れなかったのですが、私どもも水稲から、それから様々な野菜ですとか根菜ですとか、それからイチゴですとか果樹もやっておりますけれども、基本的にはその作物に必要な日照量のデータを学術的なデータから明らかにした上で、これぐらいの遮光条件、これぐらいの日照量の低下であれば生育に影響がないというものが実証されている作物については、今のところ品質の低下ですとか収量の著しい低下は起きない形で作物の生産ができております。
一方で、太陽光発電側から見ますと、当然、面積当たりのソーラーパネルの枚数というものは減少して参りますので、その分、農地を活用する理由は、これは発電事業側からの視点からいけば、要は土地活用に際して土地活用のコストが低い。農地の場合は下で別の産業をやっておりますので、例えば土地の地代ですとか固定資産税を分けて考えることができるとか、そもそもまとまった面積が確保しやすい。結果的に単位当たりの発電量は減りますけれども、事業としての効率性は確保できるというような考えを持っております。
以上、私からの委員からのご質問への回答でございます。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
では、村田様、お願いします。 - 村田氏
市民とともにいかに進めていくのかという、冒頭にご質問いただいた内容が答えやすいと思ったんですが、弊社が考えております350計画もそうなのですが、その大きなシェアで見ると、山で作った木材を加工して、都市で使って、そこでいかに固定してCO2の固定量を大きくして環境に貢献するのか。その手段をたくさん作ってやれば、どんどん固定する量が増えていってよくなるのではないかということが大もとの考え方なんですが、なかなかその大きなところをいきなり回し出すというのは難しいところがありますので、今考えていますのは、例えば都市部、駅前とかに、ミニ環境木化都市と呼べるような木造の施設を造って、そこで従来でしたら木材を切って、例えば住宅にして、そこで30年なり40年固定して熱利用して終わるという循環のところを、少し大きな木造の建築物を造って、それを解体した時に出る廃材をさらに再利用して住宅に使う、内装の木質化に使う、家具に使うという用途を増やして、そこで1つ中大規模の木造が増えるだけでも、50年増えれば、もともとの50年固定していたのが100年になります。そのような循環を市民の方、みんなが見えるところで行っていきたい。そこで出た廃材から出たものを、ちょっとイベント的にはなるかもしれないですけれども、そこで熱利用して、皆さんに仮にちょっと足湯でも体感していただくとか、身近なところで感じていただいて、こういうことが社会全体に広がるといいよねという社会的認識が広がれば、どんどんそういったものをたくさんのところに造っていこうよということで広がっていくと思いますので、まず、そういう小さなところからやっていきたいと思っています。
今、新研究棟の建築をしているというお話をしたのですが、あちらでもそういう熱利用とかはペレットボイラーを使ったりしているのですが、なかなか使用量と実際に出てくるエネルギーというのが均一でありませんので、やっぱりガスを併用しないといけないという現実がございます。そこは技術開発の余地があると思っておりますので、研究所としてはそういったところも取り組んでいきたいなと考えております。
以上です。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
では、質問に対して、椛島委員もご回答いただけたらと思います。 - 椛島委員
まず、横山委員の方からございました市民社会とともにというところで、当然、私どももお客様が買っていただかない限り環境の事業というものが継続ができないので、非常に重要な視点かと思います。
また、担当者が生物多様性と温暖化で企業が分かれているのではないかというご指摘なんですけれども、おそらく、温暖化に関しては、先ほどの中川室長のご説明でもあったように、国内のサプライチェーンで見た時に、排出源が特に森林分野では海外のものを利用している関係で、海外に行くと同じ担当者が生物多様性とCO2を語っているんですけれども、サプライチェーン上、その大量消費というところで国内のバイオマスが活用されていないので、国内の活動としての露出が少ないのが原因ではないかという、見え方の問題ではないかなと思います。
国内のバイオマスが今後、この長期戦略において活用できるような道が開ければ、国内での活動として企業が出ていくという場合、生物多様性においてもCO2においても良い方向になるというふうに思います。
また、小倉委員の方からございましたラベルに関して生産者がデータを提供するのは難しいのではないかというご意見ですけれども、確かにそのカーボンフットプリントになってしまうと非常に煩雑になってしまうというところがございます。ラベルという自体もコミュニケーションの一手段だと思いますので、重要なことは、ちゃんと低炭素であるという、エビデンスがあることと、それをどういう形で伝えていくのかというのを一体的に議論することではないかなと。ラベルはあくまで方法の1つですので、いろんな国民運動のキャンペーンの仕方というのは多種多様になるのかなというふうに考えます。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
それでは、事務局の方から回答をお願いします。 - 食料産業局バイオマス循環資源課長
食料局のバイオマス循環資源課長の片貝と申します。
私は食品ロス、それから再生エネルギーの方の担当をしてございますので、先ほど食品ロスの話と、あと再エネの補助の関係のご指摘がありましたので、それについてお答えしたいと思います。
食品ロスに関しましては、捨てられるものが減るということは、生産でかかっているエネルギーを減らすことになりますので、食品ロスの削減というのが大事でございます。
SDGsでもこの食料廃棄を2030年までに半減させるという目標が出てございます。現在、食料・農業・農村政策審議会食料部会の中で、食品リサイクル小委員会を開催し、事業系の食品ロスをどう削減する目標を立てるかという検討を行ってございまして、間もなくこちらの方に関しましても方向性が固まろうということでございます。方向性としては、やはりSDGsと同じように、2030年までに半減を目指していくことになろうかと思っております。
それから、当然、減らすということも大事ですけれども、リサイクルの方も大事でございます。リサイクルでこれを再生エネルギーという形で利用できれば、この炭素削減にもつながるということでございますので、こちらも特に外食等についてのリサイクルというのが進んでいない部分がございます。ここをいかに促進していくかという活動も併せて方向性として整理をしていきたいと思ってございます。
それから、再生エネルギーの補助の評価ということでございます。当初におきましても、再生エネルギーの補助を従前から大規模にやってきたところでございます。この予算はかなり減ってきてございます。大分集中的な形でやってきてございますので、当然ながら、これまでの補助の評価もしながら、今回のご審議とかも含めて集中的な形でやっていきたいという考えでございます。
以上でございます。 - 渡邉座長
ありがとうございます。
では、林野庁の方お願いいたします。 - 林野庁森林整備部森林利用課長
林野庁森林利用課長の今泉です。
横山委員から特に森林の木質バイオマスの利用と生物多様性の関係についてご質問、ご発言がありました。あと、小倉委員からバイオマスのマテリアル利用に関連して、森林の劣化といったようなことの懸念についてもご指摘がありました。
共通してですけれども、資料3の3ページのマテリアル利用のところの2行目の一番後ろの方に炭素循環社会の構築と書いておりますけれども、これは当然ながらこの炭素循環というものが持続的な循環であるということは当然の前提でありまして、非持続的な炭素循環を目指すというのは当然ないわけでございます。森林の場合は、森林の資源がより健全で多様性を持って豊かな形で整備・保全をしていくということで、これにつきましては、林政審議会で、おおむね5年に一度、森林・林業基本計画というものをご審議いただきながら、国レベルでそういった形でPDCAを回しながら、よりよい森林を目指して整備・保全をしていくということでやっておりますし、地域レベルでもそういったPDCAといったようなことも回せるような体制だとか、人材育成だとか、そういったことを図っていくこととしています。
また、制度的には地域で森林をゾーニングしながら適正な取り扱いをしていくといったようなことで対応しているところでございますけれども、現場レベルではいろんな課題も出てくるということも認識しておりまして、それは逐次、林政審議会でもご審議いただきながらPDCAを回して、制度的な対応も必要であれば、そういったことも含めて改善しながらやっていくということかと思っております。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
今、ご回答も少しありましたけれども、全体としての生物多様性保全とのかかわりと、水素エネルギーの活用の話は、今後の取りまとめに向けて事務局で検討していただくようテイクノートしていただきたいと思います。
委員の方も今までの話を聞いて、さらに意見交換したいと思われているでしょうが、時間の制約がありますので、申しわけありませんが、他の委員の方のご質問に移らせていただきたいと思います。
では、上岡委員、井村委員、中田委員の順でご発言いただこうと思います。上岡委員、どうぞ。 - 上岡委員
東京農業大学の上岡でございます。
皆様のご発言を伺いながら、考えたことをお話しさせていただきたいと思います。
これは意見ですけれども、やはり世界的にSDGsということを目指すということで、これは国民全体で目指していかないといけないのかなと感じているところでございますけれども、3点ほどお話をさせていただきたいと思います。まず1つは、地球環境ということを考えた時に、農業それ自体としては双方向性が地球環境とはあるわけですけれども、その農地をどう残していくかというような、長期的なお話になるかと思いますけれども、1つはやはり都市農業をどう宅地化しない、あるいは他用途にしていかないで残していくかというところがヒートアイランドの防止なども考えると重要なのかなと思っております。 そういった意味では、馬上さんですとか村田さんの方のお話があったと思いますけれども、都市農業の重要性ということを1つ視野に入れていただければと思います。
2つ目に、先ほど来から生物多様性ということが出ておりますが、生物多様性を考えた場合に、先ほど事務局からご説明いただいた資料1各国の長期戦略における農林水産対策のポイントというところでフランスは、今日は取り上げられなかったのですが、2つ目として有機農業の拡大との記載があったかと思います。その有機農業の視点についても是非、視野に入れていただきたいなと思います。
フランスの記載の中には、イオンさんからも出ておりましたけれども、品質ラベルとか環境認証とか、そういった消費者に訴える手法というのもいくつか取り上げられていると思いますので、そういった視点も是非、取り入れていただければありがたいと思います。
それから、3つ目ですけれども、やはり国民全体でということになりますと、人材育成ですとか、次世代の教育ですとか、消費者への理解というところが先ほど来から出ております。事務局からの説明でも商品の属性として環境に配慮したというところが、あまり消費者としては重視していないというところでございましたので、やはり消費者庁のエシカル消費を促進するということもあるかと思いますので、食品ロスも含めた食農教育ですとか、あるいは環境教育といったものも、今後長期的な視点としては必要なのかなと思いました。
以上でございます。特にお返事を求めるものではございません。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
では、引き続いて、井村委員、お願いいたします。 - 井村委員
私も感想を述べさせていただきます。
石川県の金沢と能登の方で環境保全型農業を中心に大規模に土地利用型農業で、水稲・麦・大豆・野菜を作りながら、食品の加工もしておりまして、六次産業化ということをやっております。輸出にも挑戦しております。
農業者として、今日の印象としまして、まず一番最初にこれまでの常識にとらわれないという言葉と、あと競争力の源泉であるという言葉が政府で話し合われている中で出てきた、これは私たちの下の世代の若い新しい農業の担い手達には、すごく響くところがありまして、どんどんお米が安くなるとか、TPPでどうだとか、そういったネガティブなことではなくて、この温暖化の対策が本当に地域農業の国際的な競争力の源泉になるような、そういうダイナミックな何か目標が立てられたら、すごく現場としてはうれしいかなと思います。
今日は、ドイツ、フランス、カナダの例もいただきましたけれども、大変野心的なことが書かれておりまして、日本も今ある農林水産業からの温室効果ガスをどうするという考え方ではなくて、今現場で求められているコストを下げ生産性を上げていくとか、スマート農業のことだとか、いろんなことを日本のいろんな他産業とも連動しながら、日本の農業の構造自体を。農業だけではなくて、食の構造自体を変えるような、大きな流れにしていただければいいなと思います。
その中で、やはりカロリーの60%を輸入していて、その3分の1を廃棄しているという、この国において、先ほどから出ている食育というのもすごく大事だと思いまして、一昨日も金沢市の食育の会議に出ていたのですが、やっぱり健康だとか和食だとか、そういったところは進んでいるものの、このSDGsとか温暖化、こういう要素はあまり入ってこないです。この先、2050年に頑張る若者に対する教育というのもちゃんとやっていければと思います。
それと、やはり低投入型というのが1つポイントになるのかなと思っていまして、今日議論すべき資源を最大限に活用したということになりますと、日本の農村の資源というのはやっぱり水稲を中心とした土地利用型、真水を多く持っていまして、世界でもまれな連作障害のない水稲という作物を持っております。
こういったものに低投入型でしっかりした消費者に対するインセンティブ、優良性を作れるようなお米であるならば、これはGFPではないですけれども、海外の方が日本の米を選択する優良性にもつながっていくのかなと感じています。
日本の農業はすごく私は可能性がある産業だと思っているので、是非、野心的な目標を立てていただければと思いました。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
では、続いて、中田委員、お願いいたします。 - 中田委員
水産研究・教育機構の中田でございます。
今日は本当に興味深いプレゼンテーションを皆さん、ありがとうございました。
農林水産業、いずれにもかかわる課題として、少子高齢化、それから過疎化、そういったことが非常に大きな問題として共通していると思います。そして、今回、長期戦略を作るといった時に、その2050年にどういう農林水産漁村を描くのかを示して今日の話にもあったバックキャスティングして、そのためにどういうことがいつまでに必要なのかを生産と、居住空間の両方で考えていくことが重要だと思いました。
水産の話題はどうしてもこの温暖化の対策関係では少なくなってしまうのですが、一点紹介させてください。
水産庁の事業で、以前ブルーカーボンというのを藻場で見積もるというのを実施しました。世界全体ではありますけれども、非常に狭いアマモ場などの海における二酸化炭素の吸収が、熱帯雨林と同じぐらいあるというのが最近見積り値として出てきております。 例えば、森林であれば寿命が長いけれども、アマモ場などは1年、2年の数年のスケールで生産されて、それが蓄積していく、そういう効果があるために面積が小さくても比較的大きい吸収量になっています
そういうものも吸収源として、是非どこかに出てくるような形を考えていただければと思いました。ありがとうございます。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
小櫃委員、お願いいたします。 - 小櫃委員
すみません、日清製粉グループ本社の小櫃といいます。よろしくお願いします。
貴重なプレゼン、大変興味深いプレゼンありがとうございました。個人的な興味で申しわけないのですが、住友林業さんの木材を使った構築物で、建築基準法や消防法には工夫によって耐えられるんだと思うのですが、W30や350について、従来の構築物と比べて費用のイメージとしてどういうことになっているのかを知りたかったのが1つです。
馬上さんの方は、課題は地域との合意形成とインフラの構築とのことでした。このインフラの構築も規模によっては、その費用対効果を考えなければいけないのかと思ったので、今後の拡大、あるいは拡張のスケジュール等があれば教えてください。
以上です。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
では、増本委員にも伺います。お願いいたします。 - 増本委員
秋田県立大学、増本と申します。
将来の脱炭素社会に向けて農水省として出す上での視点として、やはり都市と農村、農村と都市の視点が大事じゃないかなと思いました。
その中で、資料1の9ページですが、環境省の提案する用語として地域循環共生圏というような新しい言葉も出てきています。私には初めての用語ですが、そういったような呼び方も大変良いと感じています。
しかし、それでどこをイメージしているのか少し分かり難く、そこに都市が入っているのかどうかというのも疑問に思うところです。私は水資源とか水に関連する研究をやっていますが、その視点から考えると、流域とかいう言葉があり、その中には農地は中山間から低平地の農地も入っている、同時に、農村と都市も入っているということがイメージしやすいと思います。
さらに、農村の少子化だとか高齢化の中で、AIだとかドローンという、最近の施策としても重要な新しい分野や言葉も入っており良いのかなと感じます。IoTとかICTもきっと入ってくるのかと考えています。
その中で、地域共生型という言葉がどこかの資料にありました。その定義の中に、都市の視点も入るか、都市も対象にしていますとの考えが、農水省として認識されているかどうかということが疑問に思ったところです。
特に、農地の管理に関して、温室効果ガスを排出するのは農地と畜産からが多いということで、そこから削減しようとしています。ただし、農地はもっと積極的に炭素貯留といいますか、排出削減ではなくて、炭素を多く含む木材チップや有機物等を農地に入れ込むことで、長期間炭素の排出を抑えるような、そういった施策もあります。是非そういった視点も入れ込んでほしいところです。資料にはなかったと思うのですが、そのような積極的な施策もあるように思います。
最後にイオンの椛島さんにご質問したいと思います。大変すばらしい資料とご発言でした。そこでは、顧客としてのお客さんを対象にされていますが、さらに日本だけではなく国際的な販売も行っておられる中で、イオンが実施される施策の中で農村ということの意識をお持ちなのか、さらに地域の再生という意味で農村部を考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
以上です。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
多くの委員から、コメントと情報提供があったと思うのですが、増本委員から少し疑問に思ったこととして地域の表現がありました。それに対して今日お答えいただかなくても、次回以降の対応の中でご提案いただきたいと思います。
それで、小櫃委員と増本委員のご質問に3名の方に回答いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。 - 村田氏
350の費用、コスト的なところについてということで、一応コスト試算をしたのですが、現実は構造部分で鉄骨造だと960億ぐらいになりそうです。木造だと大体その1.5倍ぐらいという試算が出ました。ですので、今ではかなりコストアップは否めない状態です。それも1つの課題というふうに今は捉えています。
じゃ、もうちょっと小さな規模のもの、例えば3階建てのオフィスビルはどうかという試算をしておりまして、これだと大体10%から15%アップぐらい、仕様にもよるんですが、これは付加価値として捉えれば許容できる範囲で実現可能なのではないかというふうに捉えています。
実際、海外でじゃ木造ビルは非常に盛んに建っていまして、やっぱり聞くとコストは少しアップになっています。そこに、例えば賃貸のオフィスビルとかでしたら、どういう企業さんが入るかというと、やっぱり環境を付加価値として捉える、今ですとESG投資なんかも盛んになってきていますので、そういったものをちゃんと意識して事業活動されているところが、例えば3割増しでもテナントとして入られるということで、実際に事業として運営が成り立っているということがあります。もちろん同じところに持っていきたいとは思うのですが、今のところはコストアップが否めないという状況ではございます。 - 渡邉座長
ありがとうございました。 - 馬上氏
私も小櫃委員からのご質問のあった部分ですが、まずインフラ、それから地域合意形成のお話でご質問をいただきましたが、特にインフラへの投資というところ、新たに農村地域において電源を確保するに当たって、送配電網の整備というところが一番インフラの課題にはなるのですが、実は日本の送配電のインフラでいいますと、いままではいわゆる基幹送電網と呼ばれる超大型の鉄塔を建てるところにコストが投じられてきたのですが、恐らくこれは今後二、三十年で更新をしなければいけない、あるいは廃止をするかという大きな課題を抱えております。恐らくそれは不可能であろうと考えております。
国土全域に大規模発電所からの特別高圧送電、超高圧送電で満遍なく電気を行き渡らせるのではなく、この分散型の電源としての電気を供給するだけであれば、二次系、あるいはもっと低い、コストも維持管理もメンテナンスもたやすい、いわゆる地域配電網の整備だけで済みますので、恐らく全体の投資コストであれば従来よりも安価に維持も含めてできるであろうと思います。特に我が国の農村の特徴、私が捉えているところとしては、例えば千葉でも、埼玉でも、横浜でもそうですけれども、都市近郊にかなりまとまった農地があり、そこから地域送配電線での都市部へのエネルギー供給ができるのであれば、おそらくインフラの投資コストは大規模なものを更新するよりは安価に抑えられるのではないかと思われ、今、定量的なものはお示しできないのですが、そのように考えております。
導入のスケジュールは、今2030年に向けて太陽光発電、営農型の太陽光の話をしますと、太陽光全体では設備容量で1億キロワットの導入が今、業界としても目指しているところであります。おそらく営農型は国内では50万キロワットぐらいしか導入がございませんので、これをどこまで増やすか、恐らく定量的な、私の考えでいえば、その1億のうちのおそらく2割から3割をこの営農型で占めていかなければ、太陽光の導入は、林野の大規模開発になってしまうであろうと認識しております。これは何ら根拠があるものではございませんが、数値として挙げさせていただければと思います。
以上でございます。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
予定の終了時刻を少し過ぎていますので、差し支えなければもう数分延長させていただきたいと思います。
では、椛島委員、回答をお願いします。 - 椛島委員
増本委員から農村が戦略に入っているかというご質問だったかと思うんですけれども、私ども、どちらかというと都市というよりは、キツネやタヌキの出るところにお店を作ってきた関係で、農村部のお客様というのもお客様です。もちろん、私どもには秋田県からもお米やいろんな農産物を提供していただける生産者の方々がいらっしゃるということで、農村はもちろん戦略に入っているという状況です。
今年もフォーラムをやらせていただいた時、こちらの小委員会の前座長の武内先生と環境省の地域循環共生圏の施策を総括されている研究総括官の中井様をお招きしたところであり、都市と農村の連携をきっちりとやっていきながら、その次の環境の政策をやっていくというのは非常に重要だと会社としては考えております。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
まだご発言いただいていない方もいらっしゃるのですが、次回はすぐに開催されますので、是非ご出席いただいてご発言いただきたいと思います。あるいは今日の時点のご質問やご意見などあれば、事務局にお伝えいただくということにさせていただきたいと思います。山川委員、鎌田委員、それでよろしいでしょうか。椛島委員も委員としてのご発言をいただけなかったかもしれません。申しわけございません。
それでは、本日のここまでの基本的取組について、皆様からのご質問とご回答を踏まえて、別所技術統括審議官から一言お話しいただきたいと思います。 - 技術総括審議官兼技術会議事務局長
座長、ありがとうございます。各委員の皆様方から大変前向きなアドバイス、またコメントいただきまして、誠にありがとうございます。増本委員からありました農地の吸収源対策については、確かにこの資料3の対応方向のイメージのところをまとめているのですが、国内での吸収源対策、特にその農地土壌の吸収源対策のところが少し弱いというか、抜け落ちている感があるので、ここはよく考え、追加をしないといけないかなと思っております。
それから、いずれにいたしましても、その野心的な目標、将来の姿というものを掲げて、その実現のための道筋を描いていくということが重要というところが、各委員から共通のご見解だと捉えております。
その中で、やはりイノベーションということが実現の道筋のためには非常に大事でありまして、例えば食品ロスの削減には、今、農水省で取り組んでいるのですが、生産から消費までの様々なデータを一元的に共通化するプラットフォームみたいなものを作っていって、そこで消費者の方々のニーズのデータを生産者の方々に的確に提供して、売れないものを生産しないというか、食べていただけるものをきちっと生産するというような形、あるいはその生産のプロセスというようなものを消費者の方々に理解していただくような、情報の双方向の提供を描く中で、食品ロスが削減できないかというような取組も研究開発的な要素ですがスタートしております。また、昨今、土壌微生物ということについても非常に注目を浴びてきており、土壌の低投入型環境において栄養成分の吸収を促進するために、土壌微生物が役に立っているのではないかという研究も見えてきていますので、将来的には温室効果ガスの排出削減、そういったもののコントロールも、そういう生態系の中で考えていくという道筋もあるのかもしれません。
まだまだ漠然としたところもありますけれども、そういったイノベーションの要素も含めて検討して参りたいと思いますので、次回、忌憚のないところのご意見いただけると大変ありがたいと思います。ありがとうございました。 - 渡邉座長
ありがとうございました。
今日のいただいた情報やご意見を踏まえて、さらに検討していくということになろうかと思います。事務局はどうぞよろしくお願いいたします。
以上で議事1を終了させていただきます。次の議事2その他ですが、何か事務局の方でございますか。 - 大臣官房政策課環境政策室長
特にございません。 - 渡邉座長
そうですか。ありがとうございました。
本日の議題は以上となります。進行がまずくて予定の時間に終了できませんでしたことをおわび申し上げます。
それでは、議事進行を事務局へお返しします。 - 大臣官房政策課環境政策室長
本日はどうもありがとうございました。
次回の合同会議でございますけれども、3月19日火曜日、14時から、ここと同じ場所で開催いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の会議はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。