地球環境小委員会 合同会議 第31回 議事録
午後1時30分開会
○環境バイオマス政策課長
定刻となりましたので、ただ今から食料・農業・農村政策審議会企画部会地球環境小委員会、林政審議会施策部会地球環境小委員会、水産政策審議会企画部会地球環境小委員会、第31回合同会議を開催します。
定刻となりましたので、ただ今から食料・農業・農村政策審議会企画部会地球環境小委員会、林政審議会施策部会地球環境小委員会、水産政策審議会企画部会地球環境小委員会、第31回合同会議を開催します。
本日司会を務めます、大臣環境バイオマス政策課長の秋葉と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
委員の皆様におかれては、お忙しい中、御出席を頂き、ありがとうございます。
本年5月に合同会議を書面にて開催して以降、委員の改選がございました。僭越ながら私から読み上げをもって御紹介いたします。
まず、退任される委員の方です。青柳専門委員、井村専門委員、椛島専門委員、白戸専門委員、田中専門委員、増本専門委員、以上6名の委員の方でございます。
続きまして、新たに任命されました委員の方を紹介いたします。大津委員、吉高委員、秋山専門委員、亀井専門委員、千葉専門委員、釣流専門委員、橋本専門委員、夫馬専門委員、以上でございます。
また、林政審議会の村松委員、水産政策審議会の山川委員が退任され、新たに林政審議会では中崎委員、水産政策審議会では木村委員が任命されておりますので、御紹介いたします。
次に、本日の会議の運営に関して御説明いたします。オンラインで御出席の委員の方々におかれましては、途中で回線やシステムに不具合が生じ音声が聞こえなくなる、そういったことがありましたら、チャット機能を用いてお知らせいただければと存じます。
また、本日の会議につきましては公開とさせていただきます。ただし、カメラ撮りにつきましては冒頭挨拶までとさせていただきます。
また、議事録につきましては会議終了後に整理し、委員の皆様に御確認いただきました後に、農林水産省のウェブサイト上で公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。
開催に当たりまして、武部農林水産副大臣から御挨拶申し上げます。
武部副大臣、よろしくお願いいたします。
○武部農林水産副大臣御紹介いただきました農林水産副大臣の武部新でございます。
委員の皆様には、お忙しい中、御出席を賜りまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。日頃から農林水産政策の推進に御理解と御協力を賜りまして、心から感謝申し上げます。
会議の開催に当たりまして一言御挨拶申し上げますが、毎回、当会議におきましては大変熱心な御議論を頂いているとお聞きしておりまして、私も参加するのを楽しみにしてまいりました。
気候変動の対応につきましては、地球規模の喫緊の課題となっております。農林水産業におきましても、私の地元は北海道なのですが、今年は6月、7月、数ミリしか雨が降らず、農作物の品質低下に大きな影響がありました。西日本では豪雨災害が多発し、災害が激甚化しておりまして、大変深刻な影響が出ております。
また他方、地球温暖化研究のパイオニアでございます眞鍋先生が今年のノーベル物理学賞を受賞されました。大変喜ばしいことでございますし、今回の受賞が気候変動問題に対する関心をより一層高めていただけることを大変期待しているところでございます。
農林水産省としましても、今月末より始まりますCOP26を前に温室効果ガスの2030年度46%削減、2050年カーボンニュートラルの実現に向けまして、本年5月に策定いたしました「みどりの食料システム戦略」を踏まえ、農林水産分野の地球温暖化対策を最大限推進してまいる所存です。
委員の皆様におかれましては、本日の会議でお示しする農林水産省地球温暖化対策計画、農林水産省気候変動適応計画の改定(案)につきまして、幅広い御意見を賜りますようにお願い申し上げ、開会の御挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○環境バイオマス政策課長ありがとうございました。
では、カメラ撮りの皆様は御退室いただければと思います。
まず初めに、資料について確認させていただきます。また、会場に御参集の方々はタブレットから資料が読み込めない、あるいはタブレットがうまく動かないなどございましたら、お近くの事務局員までお知らせ願います。
配布資料は画面上でも資料共有させていただきますが、議事次第、委員名簿、資料1から資料5、参考資料といたしまして「みどりの食料システム戦略」についてのパンフレットとなっております。
会場に御参集の方々は配席図、会議次第、委員名簿、タブレットパソコンの操作説明資料につきましては、お手元に紙の資料として配付しております。
なお、資料説明の際は画面上で資料共有をさせていただきます。
以上、よろしいでしょうか。
なお、大変恐縮ですが、会議後半、司会を久保地球環境対策室長に引き継ぎますので、御承知おき願います。
それでは、以降の議事進行につきましては、大橋座長からお願いいたします。それでは、大橋座長、よろしくお願いいたします。
○大橋座長
皆さん、こんにちは。大橋でございます。座長の拝命を受けました。皆さんの闊達な御意見を受けてしっかり議論を進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
皆さん、こんにちは。大橋でございます。座長の拝命を受けました。皆さんの闊達な御意見を受けてしっかり議論を進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日は議事次第のとおり、まず第1に農林水産省地球温暖化対策計画(案)と、第2に農林水産省気候変動適応計画(案)の二つについて御議論させていただきたいと思います。議題の1と2について、資料1から5にまとめておりますので、事務局からまず一括して御説明いただいた後、皆さんと討議をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
それでは、事務局よりお願いいたします。
○地球環境対策室長
事務局でございます。それでは、早速ですが、本日の資料につきまして御紹介をさせていただきたいと思います。
事務局でございます。それでは、早速ですが、本日の資料につきまして御紹介をさせていただきたいと思います。
まず資料1をお手元に御覧ください。今回二つの計画を御審議いただくわけでございますが、まず概略につきまして御紹介させていただきます。
まず一つ目、表の左側、農林水産省地球温暖化対策計画でございます。こちらは農林水産省が自主的に策定するもので、目的といたしましては温室効果ガスの排出の抑制、そして吸収の増進ということで、いわゆる緩和策についての計画です。関連する政府の計画としては、地球温暖化対策推進法に基づく地球温暖化対策計画がございます。こちらの政府計画はCOP26の前に改定をする予定でございまして、今月中に改定ということになっております。省の計画としましても、計画期間は政府計画と歩調を合わせ2030年度までということで考えております。
計画の概要について、後ほど御説明させていただきますが、今回の改定の背景としましては、まず菅前総理から2050年カーボンニュートラルの宣言、そして2030年度までに温室効果ガスを46%削減しようという新たな目標が出されました。そして、私ども農林水産分野においては、本年5月に「みどりの食料システム戦略」という中長期の政策方針を策定したことから、こちらに位置付けられた技術の社会実装の取組の加速化等を踏まえて、しっかり省の計画に落とし込んでいくこととしております。
また、表の右側は農林水産省気候変動適応計画でございます。こちらも同様に農林水産省が自主的に策定するものでして、目的としては、気候変動の影響による被害を回避・軽減するためのものでして、いわゆる適応策でございます。関連する政府計画としては、気候変動適応法に基づく気候変動適応計画がございまして、こちらも今月末のCOP26までに改定予定となっており、それに歩調を合わせる形としております。計画期間は省の適応計画も当面10年程度、およそ2030年頃までと考えております。こちらの改定の背景としては、「みどりの食料システム戦略」に基づくとともに、昨年12月に環境省から「気候変動影響評価報告書」という新しい知見が公表されましたので、このような最新の情報を踏まえて改定するものでございます。
次の2ページ目ですが、こちらは「みどりの食料システム戦略」と両計画についての関係を整理したものでございます。国際約束の下で政府全体で計画を作る。ただし、私どもは「みどりの食料システム戦略」について気候変動のみならず生物多様性、担い手の高齢化・減少といった様々な持続性と、生産力の向上を両立させるための戦略ということで作りましたので、今般はこれに基づいて両計画を改定していく形にしているところでございます。
それでは、まず地球温暖化対策計画の方から、内容について概略を御紹介させていただきたいと思います。
お手元の資料2を御覧いただきたいと思います。今般の農林水産省の地球温暖化対策計画でございます。前計画、現行の計画からの状況の変化としては、まずパリ協定が2020年から本格運用されているというところ。それから先般、IPCCの第6次評価報告書でやはり温暖化に関しては人間の影響が温暖化させてきたことには疑う余地がないという指摘が出されたこと。そして、先ほど申し上げたようなカーボンニュートラル宣言と46%削減目標の表明。そして、「みどりの食料システム戦略」を踏まえ、今般改定をするものです。
当計画の位置付けですが、日本においては、農林水産分野の温室効果ガスの排出は日本全体では3.9%と占める割合は小さいのですが、やはりメタン、一酸化二窒素では農林水産分野の割合は大きい。そして吸収源、これはほぼ森林・農地となっておりますので、農林水産分野の役割は大きいと考えております。一方で世界に目を転じると、農林水産分野での排出の割合が大きいということが言えるかと思います。
こちらは政府計画の目標における農林水産分野の取扱いでございます。政府全体では、現行の温室効果ガス削減目標である2030年度までに26%、これを深掘りして46%にしようという中で、農林水産分野においては排出削減対策、こちら全ての対策を深掘りしております。割合にしてみれば0.2%から0.2%になっておりますけれども、全て深掘りをしております。吸収源対策は森林吸収源と農地土壌吸収源があり、こちら森林吸収源は2.0%から2.7%ということで意欲的に深掘りをしており、吸収の3.3%と削減の0.2%、あわせて農林水産分野の対策でこれまでの2.8%の貢献から3.5%の貢献に深掘りをしていきたいと考えております。
次に具体的な対策の概略を説明します。まず3ページ目(資料3)でございます。農林水産分野で化石燃料を燃やすことでCO2が出ているというところから申し上げると、まず施設園芸については、ヒートポンプ、それから木質バイオマスの加温機の導入。それから地中熱やいろんな工場の排熱等のエネルギーがあり、こういったものを利用して、燃油に依存しない加温施設の導入促進を図っていきたいと思っております。
また、農業機械についても、3年前の地球環境小委のときに、今後広がる機械を考えるべきだという御指摘も頂きましたので、今回自動操舵装置についての普及を対策の中に新たに入れました。また「みどりの食料システム戦略」にも書いていますけれども、農業機械については電化・水素化を今後2050年カーボンニュートラルに向けてやっていきますので、当面2030年度までということで小型の電動農機をしっかり進めていきたいと思います。
それから、農地からメタン、一酸化二窒素出ていますけれども、メタンの排出削減対策といたしましては、中干し期間の延長、それから秋耕を推進するとともに、一酸化二窒素対策としては植物体に吸収されずに残ってしまう窒素を減らす観点から、土壌診断、それから分施、緩効性肥料の利用など施肥量を適正化していく取組を載せております。また、数値にはなっておりませんけれども、廃プラスチック対策も農業分野で重要なものですので、こういったもののリサイクル、それから一層の適正処理の推進をしてまいります。それから吸収源としては農地土壌吸収源対策、こちらは耕畜連携、有機農業などの推進とともに、2019年から国際的にもバイオ炭が農地土壌吸収源対策として認められましたので、これを昨年J-クレジット制度にも位置付けました。こういったことも新たにこの計画に入れさせていただいております。
また、畜産分野におきましては、家畜排せつ物の管理方法を堆積発酵から強制発酵ということで、嫌気性の発酵から好気性の発酵にすることによりメタンを削減していくということや、それからアミノ酸バランス改善飼料など、餌を改善することによって排せつ物からの一酸化二窒素の排出削減に取り組むとか、家畜改良等によって生産物当たりの生産効率を上げていくことで、生産物当たりの温室効果ガスの排出量を削減していく取組を図ってまいります。
また、食品分野につきましては、これは経団連の取組と歩調を合わせて低炭素社会実行計画をしっかり進めていくというところを書かせていただいております。また、あわせて食品ロス対策、こちら納品期限の緩和や賞味期限の年月表示など食品ロスの発生抑制、フードバンク活動等との連携、それからプラスチック等の資源循環及び容器包装リサイクル対策の推進、更には飲食料品の流通に伴う環境負荷低減に向けて、サプライチェーン全体のデータ連携システムや、それから業務の省力化・自動化等も図っていくということを今回入れさせていただいております。
また、森林吸収源ですが、こちら先ほど申し上げましたとおり、2.0%から2.7%という深掘りをしております。この対策としては、「伐って使って植える」という、循環利用を進めることが肝になるかと思っております。適切に間伐を推進する。それから主伐後はしっかり再造林をしていく。再造林の際にもエリートツリーなど成長に優れた苗木を活用していく。そしてやはり何といっても木材を使っていただかないと、この循環が成立しませんので、建築物などの木材利用の推進を図っていく。国民運動も図っていくことで、2.0%から2.7%に深掘りをしていきたいと考えております。
また、水産分野ですが、こちらも漁船で燃油をたいていますので、例えば省エネ型のエンジンを更に導入していく。それから集魚灯としてLEDを一層導入していくというところ。それから漁港・漁場の省エネ対策として、例えば太陽光発電設備と漁港施設の一体的整備を行ったり、それから藻場等の保全・創造も引き続きやっていきたいと思っております。
また、横断的な施策として、バイオマスの活用については、地域が主体となった取組の後押しや、家畜排せつ物、食品廃棄物等を活用したバイオガス発電施設を推進します。農山漁村に豊富に存在する再エネに関しては、農林漁業の健全な発展と調和した形でしっかり導入を図っていくところを書かせていただいています。
また今般、J-クレジット制度の推進の中に、森林由来クレジットの活用拡大に向けた制度改善の検討について、新たに追加させていただいております。また、食品産業等におきまして、気候変動関連リスク・機会に関する情報開示を図っていく、そして可視化を推進していくというところでカーボンフットプリント、TCFDを今回追記させていただいております。
また、農林水産省としても事業者としてしっかり率先的に取組を図っていく。更には少し「みどりの食料システム戦略」の一部を切り取って書かせていただいています。本日パンフレットもお手元に御用意していますが、ここに掲げられた2050年までの技術も踏まえ、まずは2030年に向けての技術開発として、今般新たに、現時点では実用的な技術が確立していない畜産分野における排出削減技術の開発や農林業機械、漁船の電化・水素化に関する技術の開発も入れさせていただきました。また、吸収源として森林・農地と申し上げましたけれども、ブルーカーボンにも期待が高く寄せられておりますので、ブルーカーボンの評価手法及び効率的な藻場形成の拡大技術の開発も進めていきたいと思っております。
また、同じく研究技術開発につきまして、森林・林業分野ですけれども、高層木造建築も視野に入れて、木材による炭素の長期大量貯蔵のための木質建築部材等の開発等を進めていきます。それから、改質リグニンも推進を図っていきたいと思います。
それから、国際協力でございます。やはり世界的には森林減少・劣化に由来する排出というものが世界の排出の1割程度あるということですので、JCM、REDD+のパートナー国の拡大と、案件形成を図っていくとともに、特にアジアの水田地帯を念頭に、水田からのメタンの発生抑制の技術や、その国際共同研究も一緒に進めていきたいと思っております。
また、昨年3月の合同会議(書面開催)において、大橋座長からは食料・農業・農村基本計画との関係について、宮島委員からは農林漁業者への浸透について御意見を頂きました。今般新たに対策の推進に必要な事項ということで新しく項を追加し、所要の記述を追加させていただいた次第です。
次に、農林水産省の気候変動適応計画、先ほどの対比表でいきますと右側の計画についても概略を紹介させていただきます。
お手元の資料4を御覧いただければと思います。先ほど申し上げたように非常に科学的知見というものが充実してきました。特に畜産や水産分野でも知見が充実していますので、各分野に反映をさせております。また、「みどりの食料システム戦略」に基づいて生産安定技術、品種の開発・普及を中心に書かせていただいております。
具体的に資料4の3ページが概略を示した絵にはなりますが、各分野において現状そして影響予測、それから対策をそれぞれにまとめております。
水稲に関しましては今までも気候変動適応計画の中に入れていましたが、今般将来予測がより具体的になりましたので、そちらを反映しております。対策としては、肥培管理や高温耐性品種の開発・普及となっております。
また果樹でございますが、新たな知見としては、日本なしについて、低温要求量、これは気温が一定程度下がっていく必要があるということですが、そういった品種の栽培が困難になる地域が広がる可能性があるという指摘が出ましたので、こういった知見を反映しています。それから逆に、これまで果樹の栽培が難しかった、例えば北海道のような寒地では、最近ぶどうの栽培が始まっています。ワイン用ぶどうということもございますが、こういった果樹の栽培適地の拡大といったような将来予測もございますので、必要な生産技術の対策、それから品種の開発として、例えばぶどうであればグロースクローネというしっかり色が着色するような系統の品種、こういったものの開発・導入を推進してまいります。それから機会の活用ということで、これまで栽培に向かなかった亜熱帯・熱帯果樹のアテモヤ、アボカド等の導入実証を推進するということも書いております。
また、土地利用型作物でございますが、こちらも品目によってそれぞれ影響は違いますが、生産技術と病害虫抵抗性品種の普及・開発といったような内容をそれぞれ書かせていただいています。
それから、畜産でございます。畜産については今回知見が充実した分野であり、夏季に乳用牛の乳量や乳分泌量、乳成分の低下、それから肉用牛、豚、鶏の成育や肉質の低下、採卵鶏の産卵率等の低下というものが現在報告されています。将来予測として、気候変動の進行に伴って暑くなるので、家畜の成長への影響が予測される一方で、餌、飼料用トウモロコシについては逆に今世紀の後半、2080年代には二期作の栽培適地が拡大すると予測されているので、こういった機会も捉えながら適応策を書かせていただいています。暑さ対策としては、畜舎に換気扇を付けること、それから畜舎の屋根に石灰を塗布するといったようなことを書かせていただいています。
また、気候変動に伴い、病害虫・雑草等の分布域が北上するという御報告も頂いていますので、発生予察事業等による総合的病害虫管理もしっかり進めていくということを記載しております。
また、生産基盤ですが、将来予測のところで、雪解け水、融雪の流出量が減少するといった予測、それから降雨の強度が増加する一方で、雨が降らない日も増加するということで、湛水被害のリスク、それから貯水量の回復に影響するといったところも勘案しながら、新たな知見を踏まえた中長期的な予測と今後の施設整備の在り方を検討していくということを、書かせていただいています。
また、冒頭、武部副大臣の御挨拶にもありましたが、最近では山地被害や気候変動に伴う災害が発生しており、中でもやはり流木災害が頻発化しているといったような実情もございます。将来予測も出てきていますので、例えば流木を捕捉するようなダムの設置や、引き続き森林整備を行っていくということを書かせていただいております。
また、少し飛びますが、19ページでございます。水産分野ですが、こちらも非常に知見が充実した分野であり、それぞれ魚種ごとに将来予測が少しずつ出ていますので、これらを踏まえつつ、海洋環境調査も活用して漁場の予測、それから資源の評価というものの高精度化を図ってまいります。また、これらの結果を踏まえて、しっかり環境の変化に対応した順応的な漁業生産活動を可能とする施策を推進していくことを今回書かせていただいています。
また、海面養殖については、海水温の上昇に伴って赤潮発生による二枚貝等のへい死リスクの上昇が予測されていますので、例えば赤潮プランクトンの生理・生態系の特性を把握して発生予察、それから防除等の技術を開発していくといったことを書かせていただいています。
それから、少し飛びまして26ページ目です。それぞれの分野のほかに、研究開発、更には農業は特に屋外ですので、作業する方の熱中症の問題がございます。こういった熱中症のリスク、それから気候変動のみということではないのですが、鳥獣害というところも非常に問題ですので、この計画の中に入れております。
また、予測の中では食料需給についても知見が充実して、より具体的な将来予測がございますので、こういったところも充実をさせた次第です。
また、食品製造業においては、最近、気候変動がビジネス上のリスクも機会ももたらすとされています。これに対するマネジメントが必要だということでTCFD提言の御紹介、それからサプライチェーンにおけるロスの削減、調達の多様化やバックアップについての検討の必要性ということも今回新たに追記をしています。
以上、二つの計画について駆け足でございましたが、概要を説明いたしました。御審議いただいた後、必要な検討を加え、今月中に農林水産省として決定してまいりたいと思いますので、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○大橋座長
ありがとうございます。地球温暖化に対する緩和策と、適応策という二つをセットで御説明いただいたということでございますので、以上の事務局の計画(案)について、是非、様々御質問や御意見を頂ければと思います。今日の会議はハイブリッドであり、会場にいらっしゃる委員の方と、ウェブで参加されている委員の方がいらっしゃいます。会場の方は手を挙げていただくなり、合図を送っていただければ指名をいたします。オンラインの方は手挙げの機能などを活用して教えてもらえば、指名をさせていただきますので、よろしくお願いします。
まずは会場の方からどうでしょうか。千葉委員、お願いします。
○千葉委員
説明がすごくよく分かりやすく、ありがとうございました。
いろいろお聞きする中で、私は農家ですが、ほかの事業と重なることになってしまうのですが、気になったところが何点かあったので質問というか、意見とともに発信したいと思います。
まず、炭素の循環ということで水田における秋耕の推進があったと思いますが、そこの部分に関しては、例えば環境保全型の直接支払等の中では、秋耕ではなく逆に冬期湛水ということを進めて補助をしています。有機なり生物の多様性を確保することによりトキやコウノトリが戻るということで、多様性を重視した方の補助事業が逆にあったりします。こちらを推進する方としては、秋耕となると、秋耕してから冬期湛水しようとすると、逆に未熟な有機物が土壌にそのまま入ってしまってメタンガスが発生する危険性も出てくるので、各農家さんであったり、各行政であったり、地域にしっかり整理をした状態でお伝えすることが大切ではないでしょうか。両方とももちろん意味はしっかりあって、目的がしっかりしているのですが、この二つの事業を併用してしまって、こうやって使おうと考えるところが出てきてしまうと、腐熟度が未熟なものでは逆に環境を壊してしまう可能性があるところを危惧して、今の話をお聞きしておりました。なので、ちゃんと分けてしっかりと説明する必要があると思いました。
それとともに、炭素の貯留とか堆肥の還元という中で、今とつながるんですが、堆肥をしっかりと地域で循環していこうという耕畜連携はすごくすばらしいことで、地域の中でしっかりとやっていくことが必要だと思っているので、まずは地域内でのちゃんとしたコンソーシアムというようなものをしっかりと作って、堆肥をどうして使わなければいけないのかであったり、堆肥はどういう状態が良いのかというところも地域によってかなり差があるのできちんとお伝えすることが大事だと思いました。堆肥も腐熟度があってC/N比がしっかりと高いものと、C/N比が低く、どちらかというと排せつ物がすごく多いものとなってくると、逆に土壌汚染をしてしまうところもありますので、ただ堆肥を戻せばいいということではなく、そこはしっかりとこういうような堆肥をちゃんと作っていきましょうということをお伝えしていくことが大事なのかなと思いました。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
申し忘れましたが、本日、22人の委員が参加されているので、1人3分しゃべっても1時間掛かるという計算ですので、先にどんどん御発言いただければと思います。御意見や御質問をある程度お受けした後に、事務局からお答えいただくという段取りで進めさせていただければと思います。千葉委員、ありがとうございます。
それでは釣流委員。釣流委員の後、立花委員の順番でお願いします。
○釣流委員
御説明ありがとうございました。
今お話を聞いて、本当によく分かりました。私たちは食料品で約6割の利益を上げております。そうすると、原材料である食が大切なことは私たちのマネタリーに直接影響してきます。それと同時に、お客様にきちんとした、安心で安全な食を提供するという責任もあります。そういった中で、地球温暖化は私たちの事業だけに関わらず、地域の方々に大きく影響するものと思っており、とても心配しています。その中でいろんな技術革新が進んでいることで非常に安心した次第ですが、私たちが今、課題に感じていることを少しお話しできればと思います。
私たちは今、地域の中でいかにお客様とコミュニケーションをしながらサプライチェーンをつなぐかということを考えています。その中で、私たちもセブンの畑をしっかり作っているのですが、堆肥を回しながら、採れた野菜を店頭で売るというようなことを小さな単位で始めさせていただいています。その中で課題として感じていますのは、資料の温暖化対策計画の概要の6ページに、サプライチェーン全体でのデータ連携という記載がございました。私たちもいかに安全・安心を目指す中で、トレーサビリティが取れることと、それと作っていただく農家さんがサステイナブルであること。それと私たちが可能な限り持続的に安定的に購入すること。そういったことがあってできるということなのですが、データで結ぶ中で、CO2の排出量もそうですし、実際に農薬の使い方のような必要な情報もあります。そういった意味でデータ連携をしっかりしていきたいと考えています。ただ残念ながら、今の状況ですとまだこれからというところであり、計画の中でデータ連携システムの構築というふうにありますので、ここを是非御一緒に進めさせていただければ有り難いと感じております。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
次、立花委員、お願いします。
○立花委員
御発言の機会を与えていただきましてありがとうございます。林政審議会の立花と申します。
適応計画について意見を申し上げます。将来予測について、いろんな形で提示されていますが、本文の方で是非どういった文献から引用しているかを明記していただきたいと思います。これを見る限りは、どういったモデルが、定量的なモデルから引用しているものもあるようですが、こうではないかという単なる予測とか、こんな傾向があるという一部の事例から引っ張っているところもあるように見受けられて、予測そのものがどのぐらいの期間を持っているのかも含めて、非常に曖昧な感じがします。これは計画ですので、適応計画ということになれば何年の中でどういった適応計画を立てて施策を取っていくかと、大変重要になると思いますので、是非引用文献を、資料を別にしてもいいと思いますので、明示する形で将来予測を示していただくようお願いいたします。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。エビデンスをしっかり持ってほしいという御指摘だったと思います。
続きまして髙岡委員、お願いします。
○髙岡委員
北海道で酪農をしている髙岡です。よろしくお願いいたします。
先ほど堆肥に関して千葉委員の方から御意見が出ましたが、有機農業というところでいきましても、我々堆肥を生産している人間ですから、非常に重要なところかと思いますが、我々のところは耕畜連携がなかなかできない地域です。酪農畜産しかないものですから、なかなか難しいのかなと思いますが、北海道内でも耕畜連携ができるように努力をしていきたいとは思っております。有機農業の推進も書かれておりますが、有機農業を推進していくことであれば、なるべく隣近所に農薬や肥料を使っている農家がいない方がいいわけですから、集落的に、単純に言うと限界集落のようなところに新規就農者を集めて、有機農業を行っていくことも必要なのかと思っております。あとは気候変動によって、今まで経験したことのない病害虫など、いろんなものが北上してくるということで恐怖感を持っておりますので、その辺も農家の人たちに注意喚起をしていただきたいと思っております。また、GHG削減をすることによって生産者がメリットがあるんだということを生産者に知らせていただきたいのと、あと消費者の皆さんの理解も奮起していただきたいというところです。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
次、椋田委員、お願いします。
○椋田委員
ありがとうございます。先ほど御説明をありがとうございました。
まず、農水省の地球温暖化対策計画(案)について申し上げます。近く政府全体の地球温暖化対策計画も改定され、経団連からも既にパブリックコメントを提出しています。こうした中、今般農水省が自主的に農林水産分野における計画を改定されるということで、我々としても大変注目しており、また、心強く感じているところです。政府全体の地球温暖化対策計画(案)に対するパブリックコメントでも申し上げましたが、我が国が掲げる2030年度46%削減の達成は決して容易ではなく、官民の総力を挙げて、あらゆる施策、取組を総動員していく必要があると思います。こうした中、農林水産分野の果たす役割も非常に重要だと思っております。
そこで2点申し上げます。まず1点目として、政府全体の計画(案)では、産業、業務、運輸、エネルギー転換の各部門の取組において、経団連の「低炭素社会実行計画」を対策の柱に位置付けていただいております。今般農水省の計画(案)の本文の13ページでも、先ほど御説明がございましたが、食品分野における対策の冒頭に、「低炭素社会実行計画」を位置付けていただき、経団連として大変有り難く、高く評価しているところです。また、今後の取組として、計画のカバー率の向上を掲げておられますが、我々も全く同様の問題意識を持っていることをお伝えしたいと思います。
なお、経団連では、2050年のカーボンニュートラルの実現を今後目指すべき最も重要なゴールと位置付けて、今年から「低炭素社会実行計画」を「カーボンニュートラル行動計画」と改めます。政府全体の計画(案)にはこの旨の記載を脚注に入れていただいておりますので、農水省の計画におきましても、その旨一言付記いただけますと幸いでございます。
それから2点目ですが、3月の「みどりの食料システム戦略」中間取りまとめの議論の際に、国民・消費者の意識変革・行動変容を図る視点も重要であり、消費者に販売されます農産物等のサプライチェーンを通じた排出量、いわゆるカーボンフットプリントを「見える化」することの有効性について発言させていただきました。今回、計画案の24ページに、今後の取組として、その旨を具体的に記載いただいたこと、感謝申し上げます。また、8月に経産省が取りまとめた「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」の中間整理でも、カーボンフットプリントの「見える化」に向けた基盤整備が掲げられております。農水省には、こうした他省庁の動きとも連携して、国民の行動変容を是非とも図っていただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。私からは以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
次、大津委員、お願いします。
○大津委員
熊本県で水稲と繁殖牛の複合経営をしているO2Farmの大津と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
一つ提案と、それから一つ意見を言わせていただきたいのですが、意見としては、温暖化対策の方の農業分野において、農業機械の省エネルギー対策がうたわれておりますが、私たちの農場では2019年から100%BDFを使って田植をしたり収穫したりしております。BDFだと植物性の燃料ですのでカーボンニュートラルという扱いになりますので、省エネルギーに加えて再エネルギー化も項目として入っていたらよかったというのが私の意見です。
もう一つ提案としまして、2019年に私のO2Farmという農場を単独で、そして令和2年、2020年には私が代表を務めています女性農家の全国ネットワークであるNPO法人田舎のヒロインズという団体でエネルギー診断をしました。熊本のほかに福井、そして北海道の施設園芸、そして芋農家さんがどれぐらい年間でエネルギーを使っているかという診断を行いました。これを省エネ化、そして再エネ化していきたいのですが、まずは把握するところから、農家がどれぐらいエネルギーを投入して、どれぐらいCO2を排出しているのかという、企業でも本当によくエネルギー診断をやられているところが増えてきていますので、そういうことが農家単位でもできるようになっていけばいいと思っています。以上です。よろしくお願いいたします。
○大橋座長
ありがとうございます。
続きまして塚本委員、お願いします。
○塚本委員
御発言の機会を頂きましてありがとうございます。私からは農水省地球温暖化対策計画の森林吸収源対策について意見を述べさせていただきます。
今回の新たな計画におきましては、非常に野心的な目標を立てられ、農林水産分野で3.5%の削減を目指すという内容になっています。うち2.7%を森林吸収源で対応していくということになっており森林吸収源対策は重要な位置にあると認識しています。
今年度、森林・林業基本計画も改定され、育てる林業から転換し伐って使って植えるという森林資源の循環利用を進めることにより、林業・木材産業の持続性を高め成長発展させていくとの基本方針を示され、2050年カーボンニュートラルも見すえた内容になっています。今回の温対計画におきましても、この基本的な方針に沿った内容となっており、今後、様々な政策を総合的にしっかりと実行してただき、是非、目標を達成していただきたいと思います。以上でございます。
○大橋座長
ありがとうございます。
亀井委員、お願いします。
○亀井委員
亀井です。よろしくお願いします。
私の方からは食品製造業の立場としての意見になろうかと思いますが、3点ばかり言わせていただければと思います。
一つ目はScope3の評価の見える化という話で、今回地球温暖化対策計画の中では各分野のGHG削減に向けた対策も相当記載していただいているかと思っています。農畜水産品の原料を使用している製造業としては、これらの原料の調達というのはScope1、2、3のうちのScope3に当たる上流側として位置付けております。これまでScope1、2をターゲットにした省エネやGHG削減に向けた取組が進められて来ましたが、今後はScope3において削減目標を設定することも求められてきているという認識でおります。ですので、今回上げていただいたような対策は今後も是非注目していきたいと思いまして、その取組の評価としては、CO2の削減量の見える化など、何らかの形で定量化できると効果が明らかになってくるのかと思いますので、その辺をお願いしたいというところです。
二つ目としましては、今回新たに記載されておりますTCFD提言への対応ということが製造業のところにあったかと思います。これは気候変動による事業への影響を積極的に開示しろということを強く求められるようになってきているというところです。適応計画の方は、温暖化が進んだケースの原材料の調達のシナリオと対策について記載していただいています。TCFDの情報開示を我々が検討する上では、こうした原料調達に対する科学的な知見から、自分たちの事業についてどんなリスクがあるのか、あるいは気候変動によって機会が導き出せるのか、検討していかなければいけないということですので、こういった記載が指針となり得るのではないかと考えています。ですので、今後も最新情報が出てくると思われますので、このようなことは積極的に公開して頂けたら有り難いです。
3点目ですけれども、関連して、我々食品製造業にとっては原料の調達が非常に重要です。国内の食品製造業は輸入品も含めて、輸入の原材料にも多く頼っていますが、気候変動以外にも多くの障害、例えば今回のコロナのような影響で、労働や物流への影響、国家間の対立、あとは持続可能な調達のための制限により、なかなか安定調達しづらいというのが現実的になってきているという認識です。こうした情報の把握に努めて都度対応しているところではありますが、持続可能性に配慮した国産、輸入原料調達の実現を目指すことにも若干触れられているところなんですけれども、その実現のために、気候変動視点での原材料調達の法規制や何らかの目標値を設定して制限するよりは、より柔軟で持続的な調達ができるように、国際的な対応も含めて是非支援を行っていただきたいと考えております。私の方からは以上になります。
○大橋座長
ありがとうございます。
続いて秋山委員、お願いします。
○秋山委員
秋山です。温対計画の目標の数値についてなのですが、恐らく農水省としては最大限の温室効果ガス削減を目指して挑戦的な目標を上げていると思うのですが、数値目標の全体に対する割合、例えば省エネ農機の導入であれば、全体の機器の何千台のうちの何%が省エネ農機を導入された場合に、この削減量になるかといった記載がされていない項目が結構あるので、このため目標値が高いのか低いのかという規模感が分からないと感じます。
各項目の現在の推定発生量なども併せて記載されると、目標が高いか低いか、それとも妥当なのかといったようなところが見えやすいのではないかと思います。既に目標値が中干し延長のように普及割合という目標で書かれているものもありますので、このような形であれば分かりやすいのではないかと思いました。以上になります。
○大橋座長
重要な御指摘ありがとうございます。
続いて、夫馬委員、お願いします。
○夫馬委員
夫馬といいます。今回から参加させていただきます。よろしくお願いいたします。
二つあります。一つ目、省温暖化対策計画の本文の中にもルールメーキングという言葉がありますが、昨今のルールメーキングは国際間と言われるパブリックな場というよりも、プライベートな場に移ってきている状況があります。例えば今、議論中のTNFDもそうですし、経産省の中で議論が始まっているボランタリー・クレジットも全てこれからプライベートな場でルールが作られていくものであるので、今の書き方だと、国際機関や政府間会議の場を主軸にされているかもしれませんが、是非プライベートの(ルールメイキングの)動向についても明確に書いていただくとよいと思います。
二つ目です。今の話とも関連しますが、今、ボランタリー・クレジットが盛り上がっている中で、日本の森林にクレジット目的で投資していこうという動きを企業からたくさん耳にしています。これから正に吸収源として重要になる森林クレジットをたくさん作っていくため、例えば災害にどれぐらい強いのか、火災や土砂災害、水害もありますが、これらに対するリスクマップや、もっと踏み込むとゾーニング。クレジット創出を活性化させるためのゾーニングという視点も出てくると思いますので、この辺りまで踏み込んでいくと、民間からの投資が促進でき、吸収源の目標も達成できるようになるかと思います。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
続いて山下委員、お願いします。
○山下委員
ありがとうございます。私は水産分野からこの会議に出させていただいているので、水産に関する温暖化対策について二つほど付け加えたいと思います。
対策としては、総まとめのところに、例えば漁船の省エネルギー対策や、それから藻場・干潟の回復や造成、創造があるのですが、漁船の省エネルギー、例えば電力化や水素化も省エネにつながるのですが、一方で、漁業の方法を変えるといいますか、例えば夜に漁業すると、すごく投光利用でエネルギーを使うのですが、それを昼間にやるとか、変えていくことで省エネにもなる。これは特に予算を使わないけれども、省エネにつながっていることを数値化していただけるのではないかと思いますので、それを1点付け加えたいと思います。
もう一つは、藻場の問題です。藻場の造成は二酸化炭素の吸収という意味でこれから注目するということなのですが、そこに卵を産んだりとか、小さな魚の隠れ家になったりということで、実際にはそれが資源の醸成にもつながって、ひいてはそれでたくさんの魚や魚介類がいる状態が海の中に生まれるという、温暖化対策としては副次的な効果もあるので、是非そうすると魚を探し回らなくても魚が獲れるようになり、省エネにもつながりますので、こういった視点についても文章に付け加えてくださいというほどではありませんが、こういう視点もあるということを申し上げておきたいと思います。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
次の中本委員でちょうど半分ぐらいなので、中本委員がお話しされたら、その後事務局から御回答等あればいただき、その後、木村委員という形で続けさせていただければと思います。
それでは中本委員、お願いします。
○中本委員
ありがとうございます。私は消費者団体としてこちらに参加させていただいておりますので、消費者の思いも含めて少し発言させていただきたいと思います。
省温暖化対策計画につきましては、これまでの対策に加えて様々な上乗せをされております。これまでの対策計画の進捗状況を毎年3月に確認しているわけですが、ほとんどがC評価であり、2030年にぎりぎり達成できるかどうかという評価になっております。今回加えられた対策と、これまでの対策を更に深掘りして、2030年ぴったりに目標を達成しなくてもいいわけですから、目標を前倒しで達成できるように是非力を入れて進めていただきたいと思っております。
次に、食品ロス削減対策についてです。今回概要には食品ロスが発生してしまった場合のフードバンクなどが詳しく説明されているのですが、食品ロスを発生させないために、例えば生産段階でどれぐらいにすれば生産量がこれぐらいになって食品ロスが発生しなくなるというような、食品ロスを発生させる前の段階で、自然が相手のことなので難しいことは重々承知しておりますが、予測の精度の向上も、イノベーションを活用して達成できたらいいのではないかと思いました。
また、適応計画の消費者への普及啓発についてなのですが、適応対策で新しい品種であったり、これまでより若干色が変わってしまったり、そういうことが生じてしまった場合、こういう事情でというまではなくていいのですが、こういう品種が新たにできましたとか、こういった品種はこういう形で利用して料理をして召し上がってくださいとか、新しい品種に対する情報提供を頂けると、私たちとしてはたくさん利用することができます。そうすると、生産者もたくさん生産できるようになったり、好循環が回ると思います。農林水産物は衣食住全てに対して私たち消費者の生活に近いところにありますので、メリットも享受しやすいです。是非そういったメリットを私たちに周知していただいて、それに適応したものを利用することによって、私たち消費者もそういった対策に貢献できることが実感できる形で、啓発活動をしていただければと思います。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
それでは、かなりの御意見、御質問も含めていただいたと思いますので、事務局から御回答できるところをお願いできればと思います。
○地球環境対策室長
それでは、地球環境対策室長の久保から回答させていただきます。
まず、貴重な御意見、本当にありがとうございました。
少し順を追って御説明、御回答させていただきますと、まず立花委員からエビデンスをしっかりということがございましたので、書けるところがないか検討していきたいと思います。
それから、釣流委員からサプライチェーン上のデータ連携ということで御指摘いただきました。「みどりの食料システム戦略」にも書かせていただいているものですが、正に内閣府のSIPと連携して今行っているプログラムであり、2022年度に一定の成果を得ることにしていますので、そこで御社含めてこちらの委員の方々とも連携させていただきたいと考えているところです。
髙岡委員から温室効果ガスの削減メリットを生産者に周知する。それから消費者の理解も促進すべきという御意見がありました。更にほかの委員からも御指摘ありましたが、メリットの一つはJ-クレジットということですが、もう一つは、見える化ということであるかと思います。御意見を踏まえて消費者にも伝わりやすく、生産者の努力が反映されるような見える化を考えていきたいと思っています。
それから、椋田委員から経団連で低炭素社会実行計画の名称を変更したという御意見を頂きました。情報が取り遅れていて恐縮でございますが、政府計画と歩調を取って記述を合わせていきたいと思っております。
同じく椋田委員から本年3月「みどりの食料システム戦略」を議論したときに、カーボンフットプリントの見える化について御発言を頂いたところです。更に経産省だけではなく環境省ともよく連携を図っているところですので、引き続きしっかりやっていきたいと思います。
それから、亀井委員からScope3の御発言を頂きました。見える化の検討会でも同じような御指摘を頂きましたので、しっかりと御意見を踏まえながら進めてまいりたいと思います。
それから、TCFDの検討の上で科学的知見が重要だということで御指摘いただきましたので、例えば品目ごとにどういう影響予測があるということをしっかり出していきたいと思います。ただ、情報の更新が一番の課題かと思いますので、その点についてはどういう工夫ができるのか引き続き検討してまいりたいと思います。
また、夫馬委員からルールメーキングについて、パブリックだけではないという御指摘をいただきました。書きぶりについて相談をさせていただきますが、何かしら工夫をしたいと思っておりますのでよろしくお願いします。
私の方から以上でございますが、この後、回答できていません項目について、まず佐藤農業環境対策課長、それから犬飼畜産振興課長、箕輪森林利用課長、それから廣野研究指導課長、そして森食品ロス・リサイクル対策室長からも御回答いただければと思いますので、順によろしくお願い申し上げます。
○農産局農業環境対策課長
貴重な意見ありがとうございます。農業環境対策課長をやっております佐藤と申します。
千葉委員、あと髙岡委員からも頂きましたけれども、堆肥の関係、この後、畜産振興課長の方からも補足があるかもしれませんが、堆肥を地域内でしっかり循環していくという、そのためには畜産側と耕種側のマッチングというのが非常に重要だという御意見を頂いております。正にそのとおりだと思っておりますので、それに向けて先ほどの「みどりの食料システム戦略」の中にも、地域でこれから土作りだとか減化学肥料、有機農業といろいろ取組を地域の中で考えていくという取組を支援していきたいと考えていますので、その中でしっかりそういう取組を形作るようなことにしていきたいというふうに思っております。
また、千葉委員の方から炭素循環の関係で秋耕をやると冬期湛水がなかなか難しいというようなお話、きちんといろいろな取組はあるんだけれども、農業者の方に分かりやすくきちんと分けて、どういう関係にあるのかを説明する必要があるという御指摘を頂いております。これも正におっしゃるとおりだと思います。環境直接支払の方は、ある意味生物多様性だとか環境保全全般についていろいろな取組を掛かり増し経費を支援するという形でやっておりますけれども、先ほどの炭素循環、例えばメタンの発生については中干しの延長、そういうものについても支援はしているんですけれども、これからしっかり地域によっては中干しの延長も秋耕もさっきの冬期湛水もなかなか地域条件、あと取り組んでいる取組の内容に応じてやはり違う取組をしないといけないというか、分けてやっていく必要があると思いますので、我々としても推進するときに事業の説明だとかこういうみどり戦略の推進をやって、地域で同じものを必ず全国一律でやれというつもりは全くなくて、先ほど言ったように地域地域で合ったようなしっかりしたみどり戦略というものを立ててほしいということで、これからも推進していきたいと思っていますので、その中で今、千葉委員から頂いた意見もしっかり丁寧に説明しながら推進をしていきたいというふうに考えております。
あと髙岡委員の方から有機農業を推進するため、集落単位で限界集落に集めてやってみたらどうかという御意見賜りました。ありがとうございます。やはり有機農業をやるためにはどうしてもドリフトの問題だとかいろいろありますので、やはりまとめてやっていくというのは非常に重要な取組だと思っております。今般のみどり戦略でも有機農業の面積を大幅に拡大していくという取組、KPIを掲げておりますけれども、その実現に向けても正に今、委員が言われたような、ある程度市町村の取組をしている方たちをまとめていくような取組を支援をするとか、そういう形で有機農業をまず広げて、今まだどうしても点の取組になっているものを面的な取組、それもある程度固まった取組で、その場合も生産だけではなくて消費、しっかり売り先も確保しながら食料システム全体の中で取組ができるような形で推進していきたいというふうに考えております。私からは以上でございます。
○畜産局畜産振興課長
畜産振興課長の犬飼でございます。
千葉委員からの堆肥の耕畜連携による地域内での循環について御発言がございました。御指摘のように畜産の堆肥、家畜の種類によって、それから例えば床におがくずを敷いているとか、そういった飼い方によっても堆肥の性質や中身が全く違います。そういった情報をもう少しちゃんと伝えるということをこちらも気を付けていかなければいけないと思っております。
それから、熟度の話がございましたが、きちんと好気性発酵をしていないと畑にまいた後嫌気性発酵してしまって、そのことが温室効果ガスを増やすということになりますので、きちんと好気性発酵して熟度を上げるということもやって、今、肥料原料価格も上がっているという話も聞きますので、そういった流れに乗ってもう一度きちんと現場で畜産側も努力をし、耕種側にも使っていただく配慮を頂いて、回っていく取組をしていきたいと考えております。
それから、髙岡組合長から北海道内でも耕畜連携を進めていっていただくという御発言がございましたが、例えばバイオマスの消化液についても、傾斜地や雨の日の翌日はなかなかまけないとか、そういった課題もございます。こういった点につきまして農研機構のスマート農業実証プロジェクトの中で、東京大学を中心としたコンソーシアムの中で濃縮化というような研究もしておりますので、よりうまく使っていけるように技術的な開発にも努めていきたいと思っております。
それから、温暖化に伴う病害虫の問題についても御指摘がございました。特に畜産の飼料についてはいろいろと農薬を広大な面積にまいたりすることが現実的ではございませんので、こういった意味でも予防的な取組というのが大事だと思いますので、引き続きこういった情報の収集と共有については取り組んでいきたいと思います。以上でございます。
○林野庁森林利用課長
森林利用課長の箕輪でございます。森林関係で2点御意見を頂きました。
まずは塚本委員から森林吸収源対策にしっかりと取り組むようにというお言葉を頂きました。森林、皆さん御承知のように、二酸化炭素を吸収しているわけですけれども、今、日本の森林の現状を言いますと、どんどん年を取ってきている、そういう中で単位面積当たりの吸収量というのが少しずつ落ちてきているという状況にあります。そういう中で何をすれば良いかということですけれども、引き続きしっかりと育てていくということは大事なんですけれども、育った木を伐って新しい木を植えていく。そのときには成長の旺盛な木を植えていくということで、若い森林を着実に造成をしていきたいというふうに考えているというところでございます。
また、伐った木を木材として利用するということは炭素として引き続き固定をされるということでございますので、一般の住宅に加えて中高層の住宅、また非住宅と言われる分野にこの木材利用というのを更に進めていきたいというふうに考えてございます。そういうことによって吸収また固定という形でしっかりと森林の機能というのを果たしていきたいというふうに考えてございます。
もう一点、夫馬委員から森林のクレジットについての御意見がございました。資料の10ページでもJ-クレジット制度というのを御紹介させていただきましたけれども、このJ-クレジット制度の中で森林の吸収量をクレジット化するというのも認められておりまして、売買も行われております。また、委員御指摘があったように、最近こういう情勢の中で企業からたくさんお問合せを頂いているのは事実でございまして、それに十分対応できていないというのが現状なのかなと思ってございます。クレジットについてはこれまで公的主体、都道府県、市町村等の取組が多かったわけですけれども、それ以外にも広げようということで、各種森林林業関係者にお声掛けをして今、プロジェクトを作るような取組を進めさせていただいておりますので、そういうものをしっかりと引き続き進めていく。また、ネックがあるのであれば、運用改善というのも併せて進めていきたいというふうに考えてございます。以上でございます。
○水産庁研究指導課長
水産庁の研究指導課長の廣野と申します。
山下委員、コメントありがとうございました。一つ目は漁船の省エネという話だけじゃなくて、漁業の省エネというお話だったかと思います。夜釣っていたのを昼にというのは小型イカ釣りの話ではないかと思いますけれども、そういう例もございます。気候変動に伴って水産庁の検討会をやったところですけれども、大きく二つありまして、気候変動に伴ってこれまで獲れていた魚が獲れなくなってきているというような話の中で、単品、例えばイカ釣りというのはイカばかり獲っているわけなんですが、そういう漁業も含めて今後どうしていくかというのが一つの課題です。一方で、漁船が油を使って魚を獲ってくる中で、燃油の消費を減らしていくというのは、いわゆる誤解を恐れずに言えば、効率の良い漁業に、一定の油でもっとたくさんの魚を獲ってくるような漁業に変えていくということも重要だと思っております。その両面で今後ともしっかり検討を進めていきたいと思います。ありがとうございます。
藻場について、おっしゃるとおり水産庁ではもともと公共事業、それからあとは市民団体なんかが藻の造成なんかもやったりして藻場の造成というのも進めてまいりました。それはもともと漁業にとって良いから、言われたように産卵場にもなります、稚魚の成育場にもなりますからやってきたということでございまして、むしろブルーカーボンみたいな話は最近出てきた話ではないかと思っておりますが、いずれにしても、こちらの方にも役に立つということでございますので、しっかり位置付けながら進めていきたいというふうに考えてございます。ありがとうございます。
○新事業・食品産業部食品ロス・リサイクル対策室長
それでは、外食・食文化課で食品ロス・リサイクルの担当をしております森と申します。
中本委員から食品ロスについて御意見頂戴いたしまして、大変ありがとうございました。食品ロスの削減、非常に重要なことでございまして、現在日本では600万トンの食品ロスが生じているところなんですけれども、こちらについて削減することに取り組んでいるところでございます。御指摘のとおり、ロスが出る前に抑制をするということが非常に重要でございまして、私どもの方では事業系食品ロスの削減に向けて納品期限の緩和といったようなことで、納品期限、商慣習の見直しを行うことで、これまで出ていた食品ロスを削減するといった取組を進めているところです。
また、中本委員からは生産段階で発生させる前に管理をしていくことで食品ロスを削減するということも重要だという御指摘も頂いたかと思っております。こちらにつきましては、冒頭で久保室長の方から言及のありました内閣府のSIPという研究開発プログラムがございまして、こちらの中で精密出荷予測システムの構築等にも取り組んでおりまして、これをデータ連携の中で小売業者等のシステムとも連携をさせることで生産段階においても無駄になるようなことのないようなシステム作りを進めていきたいというふうに思っております。
それから、あと食品産業関係で御発言いただいた椋田委員から、経団連としてカーボンニュートラル行動計画に刷新して取組を進めるというお話を頂きましてありがとうございます。政府段階で御指摘いただいたとおり、低炭素社会実行計画、カーボンニュートラル行動計画、産業界のこの取組が産業界における取組の根幹だというふうに農林水産省の方でも認識をしておりまして、今後とも産業界の皆様と連携を取ってこういった取組を進めていければというふうに思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
また、亀井委員の方から原料調達、輸入原料も含めて持続的な調達に向けて支援を頂ければという御発言を頂いたところでございます。こちらにつきましても非常に今後SDGs等が注目される中で、非常に重要になってくるというふうに思っておりまして、こちらにつきましても令和4年度予算の概算要求において、持続可能な原料調達の先進事例の把握と対応促進ということで、まずは先進事例の調査等から進めて広く皆様に情報提供させていただきたいと思っておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
○地球環境対策室長
二つ私の方から補足をさせていただきたいと思います。
大津委員から頂きましたBDF、バイオディーゼル燃料のお話でございます。大津委員が話をされたBDFの活用、恐らく地域の廃食用油の活用だと思いますが、地域の未利用資源の活用は、「みどりの食料システム戦略」で掲げた取組の中心でもあると思っています。我々としても地域の未利用資源、BDFを含めて大事だと思っていますので、こちらの計画にどのような書き方ができるかについて相談させていただきたいと思います。そのようなスタンスでおりますので、お伝え申し上げます。
それから、秋山委員から、省エネ農機何台と書いてあるけれども、全体の中の割合を書かないと、どのぐらいの規模感かが分からないという御指摘を頂きました。こちらについても、どの程度書けるものがあるのかということを、少し内部で検討させていただきたいと思います。
また、髙岡委員から病害虫について、農家に注意喚起すべきというお話を頂いたと思います。更に御議論いただきまして、この農林水産省の気候変動適応計画ができた暁には、地方の方や現場に少しでも浸透するように、広報活動もやっていきたいと思っていますので、その中でしっかりと対応させていただきたいと思います。
併せて、中本委員からは消費者にもこんな品種ができたということ、こういう品種であるという広報もすべきという非常に心強い御発言を頂きました。気候変動適応計画において、こういった取組をやっているということを含め、少しでも多くの方に身近な食と農の話として知っていただきたく、しっかり説明に務めてまいりますので御指導よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○大橋座長
ありがとうございました。
一定程度お時間頂いて、事務局から御回答いただいたところです。もし追加でありましたら、また挙手等頂ければ指名させていただきますので、取りあえず先へ進みたいと思います。
次は木村委員にお願いしまして、その後に橋本委員、そして出島委員という順で進められればと思います。木村委員からお願いいたします。
○木村委員
どうもありがとうございます。私自身の専門は水産海洋学なのですが、農林水産全てに共通する、陸海に共通する考え方等をお聞きしたいと思っています。
一つは先ほどもありましたが、エビデンスという言葉がよく出てきていますが、エビデンスを支えるものは基礎データです。いろいろな調査や観測などのデータベースが必要なのですが、是非それをリアルタイムなものとして広く一般に提供いただきたい。よく言われるのは、関係機関には周知するけれども、普通のところ、特に大学などには実は余り周知がされていなくて、NGOなどもそうだろうと思います。そういった広い意味での関係機関にも是非提供をいただき、リアルタイムに適応していただいて、エビデンスをしっかりしていただきたいというお願いと、それから検討していただきたいということです。
あと二つ目は、温暖化で問題になってくるのはやっぱり病原体、病原虫、そういったものがどう増えてくるかということだと思うのですが、実は国内に入っているものだけではなくて、防疫と検疫、いわゆるトレード、輸入をする段階において、そういったものが入ってきて、普段であれば問題なかったようなものが、温暖化の影響で広く入ってきてしまうと大きく問題になる。ヒアリなどはその最たるものなのかもしれませんが、そういう意味での防疫・検疫、我々はよく「バイオセキュリティ」という言葉を使いますが、マリンバイオセキュリティについては我々はよく検討しますが、広い意味での「バイオセキュリティ」を農林水産省としてどのように考えているのかお尋ねしたいと思います。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
続いて橋本委員、お願いします。
○橋本委員
ありがとうございます。三つほどコメントがあります。
一つ目が、まず省温暖化対策計画ですが、本文についても、こちらのスライド資料についても、結局2050年までにどうしたくて、今何があるのかということが分かりづらい立て付けになっている。例えば本文で1ページ目から4ページ目までにいろいろ政策的な背景が書いてあって、脱温暖化と書いてあったり、カーボンニュートラルと書いてあったり、ゼロエミッションと書いてあったりします。結局2050年までに農林水産省として何をするのか、その中で2030年は何があるのかということをもう少し分かりやすく書いていただくといい。その観点で見てみると、スライドの11ページ目で、ようやく例えば今回の計画は2050年ゼロエミッションなんだとか、本文だと4ページ目で初めて農林水産省としてはゼロエミッションなんだという表記が出てくる。そこを分かりやすくしていただいた方が、今回の計画の位置付けがもう少しはっきりするということが一つ目です。
二つ目は、温暖化対策計画と適応計画の二つに関係します。国際協力の部分でIPCCアセスメントへの専門家派遣が書かれていますが、同様に生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム(IPBES)も活動しており、気候変動ととても関係が強い分野であります。こちらについても専門家派遣の方を積極的に進めていただきたいということです。
三つ目に、立花委員に関係してなのですが、IPCCレポートの話が何度か参照されていますが、例えばアセスメントレポートの第4次レポートが参照されています。もはや第6次レポートが出ようかというタイミングで、10年前のレポートを参照するというのは情報として古いので、なるべく新しいレポートの方を参照していただきたいというのがリクエストです。
追加でもう一つ、最後です。これは適応計画の関連です。適応計画の中で農業生産基盤分野に関連した話なのですが、土地改良長期計画を見てみると、政策目標で例えば流域治水への対応というのが明確に書かれていますが、今回の適応計画の中では、流域治水の対応というのは山地災害、治山、林道施設という分野でしか言及されていません。農業分野でも流域治水への対応はとても重要な役割を農林水産省が担っておられると思いますので、これについてどう考えておられるのかをお伺いしたいです。それと、もっと広い意味ではグリーンインフラ、あるいはEco-DRRという観点で農村が持っている適応の役割もあると思いますので、その部分について何か言及されないのかというのが、これは質問であります。というのが、適応計画の中でほかの分野ですと漁港と併せて漁村のことが書かれている、そういう形で考えてみると、なぜ農業生産だけで農村のことは書かれないのかということに疑問を持った次第です。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
それでは続きまして、出島委員、お願いいたします。
○出島委員
ありがとうございます。日本自然保護協会の出島です。
計画自体は非常に網羅的に書かれていると感じていました。ただ、これを全て計画として今後実行していくわけですので、やはりメリハリが必要になると感じています。その視点としては、地球温暖化対策ということにアプローチする計画ではあるのですが、そこから生まれる多面的な社会課題にどういう成果があるのかということも、事業の実施に当たっては是非踏まえていただきたいと思っています。
具体的に私の分野で言いますと、適応計画の中にニホンジカの分布拡大ということが書かれています。これは温暖化対策の中には書かれていません。分布が拡大していくと、今、西日本太平洋側が中心であるものが東北地方に広がっていくということですが、そうすると農地の被害も当然東北地方に出る、大きくなって出てくるということですし、森林の生物多様性の保全という意味でも、山の植物がどんどん食べられてしまうという状況になる。食べられるということはCO2の吸収源がなくなるということですので、そういう意味でも問題ですし、林業において苗を植えても食べられてしまうということが西日本、四国、九州では今、大変コストが掛かっている状態です。そういう状態が東北地方に出てくるということになってきます。当然土砂災害についても森林が雨の降水量に耐えていくためには、ある程度の植生が重要だということも明らかになっています。そういうかなり多面的な意味で、ニホンジカの分布拡大を食い止めることや、低密度を維持することは必要です。例えばこう考えると、やはりこれは大事だろうと考えていただいて、事業を進めてほしいと思っています。
例えば課題としてニホンジカのことで言えば、東日本、東北地方においてはシカの肉の利用ができません。原発事故によるセシウムの影響でできないので、西日本以上に難しい状況になると思っています。実際に私たちは東日本、低密度下のニホンジカの対策を進めていますが、西日本の高密度地域での技術がなかなか活用できないという状況もあります。ですので、その辺りは技術開発も必要という課題もあります。
課題はいろいろあるのですが、事業を進めるに当たっては、より多面的な事業の効果ということを評価して、資源を投入していただきたいと思っています。先ほどの藻場の話は正にそうであり、大事な事業ではないかと思っています。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
それでは中崎委員、お願いします。
○中崎委員
全森連の中崎でございます。私からは森林吸収源対策の関係で、私たちの普段の活動、想いを皆さんにお知らせをしたいと思います。
と申しますのは、伐って使って、そして植えて育てる。今、国の方針の中でも収穫する、伐ることについてはどんどん補助事業等があり、機械化がされて、大量に伐採をされています。そして、木材の利用範囲もかなり広くなってきておりますが、残念ながら今、山側では人手が全く足りません。伐った量を植えて育てるというのはどうしても人の手が掛かります。これから私たちが今の体制の中でやっていけるかどうかというのは、山の最大の問題になっております。その辺の対策等についてはこれからどんどん皆さんにもいろいろ研究をしていただいて、進めていかなければ対応できないと思っております。
それから、木の利用ということになりますと、先ほど畜産の関係でもいろいろ木材あるいはのこくずの利用の話がありました。また、現在バイオマス関係ですと、いわゆるペレットや、普段使われないもので、木の皮を使ったバークペレットであったり、そういうものが畜産の敷料でありますとか、様々な面で使われるようになってきています。しかしながら、その生産も非常に厳しい状況にあります。と申しますのは、国の方針の中で木質バイオマス発電に相当な力が入りました。そうすると、ある分野ではそちらの方に原木がどんどん供給されてしまい、本来必要とされる原木の供給がされない地域がたくさん出てきているという現状です。特にシイタケ原木や木炭の原木、薪などに流れてこないという地域の現状もありますので、いかに効率的に分配するかというのは、これから最大の課題と考えています。私は常々木炭でありますとか、薪は最大のバイオマスと思っております。今、東日本大震災から10年余り経過しましたが、それ以降に薪の需要、木炭の需要がどんどん大きくなっています。しかしながら、これを生産することが間に合わないくらい需要が大きくなっておりますので、このことについても、これからの課題だと私は思っております。
それからもう一つは、国産の薪ストーブや煙突の問題であります。残念ながらこういったものに安全基準というものがなく、一方で、欧米の製品では、安全基準があります。例えば煙突ですと二重煙突にして中に断熱材を入れるとか、そういった安全対策が施されますが、国内ではそこまでいっていない。そういうこともありますので、是非これから温暖化対策をやる場合は、薪の利用や先ほどの流木の問題も薪に使ったり様々なものに使えると思いますので、その辺の対策もこれからやっぱり考えていかなければと思っています。以上であります。
○大橋座長
ありがとうございます。
それでは日當委員、お待たせしました。よろしくお願いします。
○日當委員
岩手木産協の日當でございます。発言の機会を頂きましてありがとうございます。私からも森林吸収源対策について意見を述べさせていただきたいと思います。
今回の温暖化対策において、農林水産分野の中で3.5%のうちの2.7%が森林吸収源対策であり、かなりの意欲的な数字を期待されているわけでございます。その中で御説明もあったように、植えて育てて収穫するということで、特にこれがバランスよく行われていったときに最終的には使うところにつながってくるかと思います。この使うところ、ポンチ絵の方では中高層、それから非住宅分野への木材利用ということで、大量に使っていただくことが期待されているわけでございますが、こういった利用が促進されるような国民理解の醸成が必要ではないかと思っています。今後、森林吸収源対策に基づき、森林循環が適切に進んでいき生産量が増えていく。課題はあるかと思いますが、増えていくときに、素材が行き場を失うことのないようにしっかりとしたマーケットを構築していくことが必要ではないかということで、そちらの対策を積極的に進めていただくことをお願いいたします。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
続きまして吉高委員、お願いします。
○吉高委員
どうもありがとうございます。今回から参加させていただいております。皆様の御意見をお伺いして大変勉強になっております。ありがとうございます。
最初の御説明の資料で、みどりの食料システムとそれから国の温暖化対策計画と農林水産省の温暖化対策計画の関係性を見せていただきました。基本的に農林水産省としてはみどりの食料システム戦略が上位にあり、その中の一部は温暖化対策計画と国の計画に共通項があり、かつその中でも農林水産省の共通項があるという認識かと思っていたのですが、矢印とみどりの食料システム戦略の関係がよく分からなかったので、その部分を御確認いただければと思った次第です。
3点ほど私自身疑問に思うところがございまして御質問させていただきたいと思います。
まず、今回の緩和や適応計画で、イノベーションという言葉が余り使われていなかったということです。林業のイノベーションという記載があったのですが、例えば本日、今まで委員の方々がおっしゃっていたところでは、様々な分野でイノベーションが必要になってくるとお見受けしました。例えばICTとかAIという記載があちらこちらにあるのですが、ICTとAIだけではなく、カーボンニュートラルの世界を作っていくには、かなりの技術開発や、また、実装していく必要があると思いますが、国が言っているグリーンイノベーション戦略の2兆円ファンド、これは経産省のファンドですが、国全体がグリーンイノベーションを起こしていくときに、イノベーションで、この分野との関係が見えづらいと思いました。例えばブルーカーボンについて言われているページがございますが、おそらく様々な技術が必要になってくると思います。私自身も幾つかの離島でブルーカーボンのプロジェクトに関わらせていただいていると、まだまだイノベーションが必要だと感じるところもあり、技術的なこと、データを得るための技術も必要でしょうし、イノベーションとの関係を御説明いただければと思いました。
次に、既に何人かの委員がおっしゃっていましたが、国の温暖化対策計画の中でも国民の行動変容が重要な部分を占めております。生産者、消費者に理解を求めてといく必要はあると思いますが、理解を求めているだけでは動かないと思っています。やっぱり行動変容を促す施策がないと、今までの考え方では厳しいということを感じております。行動変容に対する何か施策というものがありましたら、ご説明ください。
私のいる金融グループでも、脱炭素に向けかなりの行動変容が起こっています。金融庁が再改定されたコーポレートガバナンスコードの中で明確にTCFDについて言及されています。このような企業に対する気候変動開示の動向は、金融機関側でも相当マインドセットが変わっています。このような行動変容を起こす施策について教えていただきたいと思います。
最後ですが、私はこれまでカーボンクレジットの関連のビジネスに関わってきました。例えば、世界自然遺産になった奄美群島では、既存のマングローブ量が把握されていなかったのです。これはブルーカーボンにあたるわけですがが、例えば、これは、環境省の担当なのか、水産庁の担当なのか。そういった点では、気候変動の適応計画と緩和計画は分けては考えられないのが農林水産分野ではないかと思っております。まだカウントされていない吸収源や、IPCCではインベントリーとして正式に認定されていない吸収源があるのかというところも是非御説明いただければと思います。
その3点です。よろしくお願いいたします。
○大橋座長
ありがとうございます。御質問は後ほど御回答させていただければと思います。
続きまして山口委員、お願いします。
○山口委員
私の方からも幾つかコメントと、少し質問させていただきたいと思います。
一つは先ほどから出ているエビデンスの件ですが、繰り返しになりますけど、やはり今回の資料に書かれていることの根拠が様々なレベルのように見え、余り正確でないような言葉の使い方や、意味が分かりにくいところもありますので、ここに書かれていることが独り歩きしないように、それぞれ少なくとも文献を示しておくことは絶対必要なことではないかと思っています。
それにつながりますが、もう一つ、先ほどの資料の具体的なところで言いますと、資料4の22ページのところで適応対策の話がありましたが、細かい点ですが、例えば「暖海性魚類の来遊にあわせた漁場整備の実施」とあって、「すみかとなる漁礁の設置」という記載があって、これは恐らくキジハタが書かれているので、まず一つ、キジハタが暖海性魚類かと言われると、かなり疑問に思います。そういう意味に加えて、水産として望ましい生物のすみかを想定されて漁礁を設置することと思いますが、日本周辺で魚だけに関して言っても4,000種以上いるわけで、必ずしもピンポイントでキジハタがすみかとしてくれるわけではなく、今、問題になっている磯焼けの原因種と言われるような植食性魚類のすみかになる可能性も非常に高いと思います。こういった取組をすること自体が果たして本当に望ましいのか疑問もあります。ですので、根拠があるということでしたら、やはり示していただきたいです。問題は、温暖化したとして、本当に望ましい生態系の姿やそのための適応策が何なのかが分かっていないことなので、特に海は陸と違って県をまたがって繋がっていますし、どこかの自治体でよかれと思ってやったことが、ほかの海域にもすぐに悪影響を与える可能性もあるので、特に慎重にしていただきたいと思います。
その点でいくと、同じところで、食害生物の除去とあるのですが、これももともとの生態系の構成要素として、本来重要な役割を果たしている可能性があります。こうした除去が実際に効果があった例があるのか、かなり長く駆除を続けてきたと思いますが、果たして効果があったのかどうか。逆にもともといる構成種を駆除したときの全体の生態系の影響評価をやったことがあるのか、そういったことを視野に入れる必要があると思います。本当の意味での生物多様性や生態系の視点が欠けない対策が重要と思います。問題は温暖化だけではなく、複合的な要素が関わってくることなので、温暖化対策といっても、自然操作というのは特に慎重に行う必要があると思います。生態系への変化は10年、20年先、あるいは50年、100年先に目に見えて現れてくるものだと思います。特に海の中は見えないので、私たちが気付く頃はもう私たちはいないと思いますが、見えない分、特に慎重にそういう視点も持ってやっていただきたいと強く思います。
もう一つは質問です。2050年のカーボンニュートラルに向けてこれからおびただしい数の洋上風力発電機が入れられる予定かと思いますが、海底ケーブルや発電機の設置など、計画どおりであればこれからおびただしい数の工事が入ると思います。ものすごい勢いで入ると思います。何十年かかけて日本各地の海で工事が行われることになると思いますが、工事の際には相当な船が往来することになると思います。海底ケーブルを入れるのもそうですし、電力をどのように調達するか、まだこれから計画する部分も多々あると思いますが、恐らく漁場に風力発電機が入ることになるので、今、私たちは工事の船と漁船とのバッティングの心配をしていますが、まだそこまで検討されていないようですが、そういった状況の中で省エネ漁船を考えられていて、工事でかなりの作業船が入って、あちこち動くようになると考えると、少し矛盾もあるかと思いますが、2050年に向けて、この辺のこととは温暖化対策計画で考慮に入れられているのかをお聞きしたいと思います。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
次、手が挙がっているのは宮島委員なので、宮島委員にお願いした後、谷委員が最後でございまして、御発言を強要するわけではないのですが、せっかくなので御挨拶を頂いてもいいですし、何かご発言頂ければ有り難いと思います。よろしくお願いします。
○宮島委員
日本テレビの宮島です。いろんな方に本当にいろんなお話を頂いて、何よりも日本全体の高い目標、温暖化に対してどう乗り越えていくかということに関して、農林水産分野でどう取り組むかということが相当丁寧に子細に書いてあって、まずこれをしっかり受け止めるということが一番大事だと思います。その上で、現場への浸透というところをこの前もお話ししましたが、特にこの厚い本を全部読み切ることができる方はそんなにいないと思うので、それぞれの現場にとって何が大事なのかということをしっかりとピンポイントでそれぞれの現場に伝えることが、まず何より大事だと思います。
その次に、大抵の政策がそうなのですが、高い目標が正しいということはみんな分かっていても、目の前の別の利害関係やコストが掛かるとか、いろんなことに大体トラブルがあって、遠い目標と近い目標が必ずしも一致しないケースがよくあります。それに対して丁寧にそれを解きほぐす努力というのが多分現実では何より大事だと思います。そうでないと、とてもすてきな計画なのに前に進まないということを、常々とても心配しておりますので、是非お願いします。
そうやって農業の方とか現場の方が努力をした結果は、やはり一般の人が受け止めて初めてできると思いますが、その一般の人が受け止めるにあたって一番分かりやすいのは、先ほど出てきましたカーボンフットプリントや、自分がやっていることが今、エネルギー分野だけではなく、農業や食べ物を通じてもカーボンニュートラルに貢献できるんだという気持ちを国民が持てることが大事だと思います。そうすると、今の分かりやすいことを一刻も早く、これは5年後とか3年後では駄目なので、整備する必要があると思います。実際、今、一般の人はカーボンニュートラルというとエネルギー分野や鉄鋼、製造業というところに意識がいっていると思いますが、いやいや食もそうなんだ。そしてあなたにもこれができるんだと。実際、今までやっていなかった運輸部門が、燃料について、あなたの乗った飛行機は良い燃料なんですよと、それを個人がどう受け止めるかは別ですが、それを示そうとか、そういう具体的な話が相当出てきていますので、農業分野でも一刻も早く具体的に、これをすれば良いことになるということが国民に分かるものを用意する必要があると思います。その辺りはゆっくりやっていると、どんどん先に行ってしまって、途中にまた障害が出てくると思いますので、データ整備を進めるとともに並行してやっていただければいいなと思います。以上です。
○大橋座長
ありがとうございます。
よろしければ谷委員、よろしいでしょうか。
○谷委員
日本遠洋旋網漁業組合の理事をしております谷と申します。
私どもは沖合で漁船漁業をやっており、カーボンニュートラルという話になると、使っている船のエンジンについて、例えばエネルギー源を水素に替えるとか、そういった技術革新を進めていくのに業者として協力できればというところしか、この場でできることを言えと言われれば、そのようなところになるのかと思うぐらいです。ただ、先ほどから、各委員からお話が出ていますが、カーボンニュートラルの目標を事業として進めていく中で、生態系を守りながら、なおかつそうすることがカーボンニュートラルに近付くんだという形で、この事業の根幹を持って話を進めていただければと思っております。
私は海での漁業をなりわいにしているもので、結局海は水が最後に行き着くところだと思っております。山や陸地に降り注いだ雨が川に流れ、川から海に流れていく中で、海洋生物が豊かになっていくことができるような栄養分を運んできてくれている。我々はそれでもって魚が増えればその恩恵を受けているという立場になっているため、こうやって農業、林業、水産業というところで各分野の方々が出てきて話をする際には、是非そうやって水の流れというところをひとつ念頭に置いていただいて、どの山であれ、人間が住む平地であれ、海であれ、豊かな生態系を維持できる形にするもとになっている水をしっかりと良いものにしていくということを是非やっていただければと、希望でしかありませんが、是非皆様にも御検討いただければと思います。以上でございます。
○大橋座長
ありがとうございます。
以上、全ての委員から御発言いただいたところです。余り時間も残っていませんが、どうしても追加で言いたいということがあれば、手を挙げてもらえればと思いますけれども、いかがでしょうか。
ありがとうございます。
それでは事務局より、回答をよろしいですか。
○地球環境対策室長
非常に熱意のこもった御意見をありがとうございます。
まず、いくつか頂いた御意見の中で、みどりの食料システム戦略、それから2050年カーボンニュートラルとの関係、それからイノベーションとの関係につきまして、橋本委員、吉高委員から御指摘がありましたので、私の方から御説明させてください。
本日、「みどりの食料システム戦略」のパンフレットを会場にいらっしゃる委員の方には机上に、オンラインの方々には事前にPDFで送らせていただいているところです。こちら過去2回、地球環境小委で議論をいただいていますので重複になる方には恐縮ですが、少し御説明をさせていただきます。「みどりの食料システム戦略」は、タイトルにもありますように、食料・農林水産業の生産力の向上と持続性の両立を図っていかなければいけない。これまでは農林水産省も生産性の向上というところをやってきましたが、これから先を見据えると持続性というところをしっかり軸足に入れてやっていこう。ただ、この二つはややもすると相反するところも出てきてしまうだろうというところで、ここについてはイノベーションの力も借りてやっていこうというものです。
こちらパンフレットの2ページ目、1枚めくったところですが、我々が目指す姿と取組方向、2050年までに目指す姿を掲げました。こちらの中に農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現ということも一つ書かせていただいています。みどり戦略自体は2050年というところをまず一つのターゲットにしていて、政府全体のカーボンニュートラル、それから先ほど申し上げたように生物多様性の保全といった様々な持続性と調和していこう。それに貢献するための戦略です。KPIに入れているCO2ゼロエミッション化は、化石燃料を農林水産分野でもう使用しない、そこに依存しないということを考えているものです。それがまずKPIの一つです。
なぜ2050年かというところですが、先ほど少し御議論にもありましたが、例えば他のエネルギー分野であれば、何かすぐに対策ができるものもあると思います。ただ、農林水産分野、木が育つにも一定の時間が掛かります。そして、例えば畜産分野に関しては劇的に排出を削減する技術はまだ開発途上にあることを申し上げれば、2030年で非常に高い意欲的な目標を立てることは難しいだろうということで、様々な方々の御意見を頂いて、それを踏まえて、2050年までだけれども意欲的な目標を掲げよう、それに向かって関係者が取り組めるような目標にしようということで作りました。
それに向かって様々な技術の工程表も書かせていただきました。2050年の非常に意欲的な目標を達成するために、鍵となるものは、これまでの生産者だけでなくて調達、生産、加工、流通、消費、サプライチェーンの各段階のみんなと我々一人一人がまず行動変容していくということ。それとともに2030年までの直近は、やはり今ある最先端の技術を最大限横展開して、できる限りのことをする。それで届かない部分については、今後のイノベーションが重要だろうというところで、2040年までに必要な技術開発、イノベーションを起こしていって、それを2040年から50年までの10年間で横展開することで、この14のKPIを達成しようという戦略になっております。
それとの関係で、この戦略の中では、2050年だけで2030年を考えないのかといったら、そうではなく、先ほど申し上げたように、既存技術の横展開でできるところまでやります。2030年までの気候変動に関する技術の短期工程表もいろんな御意見を頂きまして、最後、最終的に付けさせていただきました。そういったものを踏まえた上での今回の「農林水産省地球温暖化対策計画」です。まずみどりの食料システム戦略で書いた姿を長期的には目指しますが、2030年度まではCO2をゼロにすることは難しいので、まずは政府全体46%削減の中で農林水産分野において、短期的にできることをできる限りやって、全体で3.5%まで深掘りしようというのが今回の計画です。
その過程において、先ほど吉高委員から2兆円基金との関係も御発言ありました。2兆円基金については2050年カーボンニュートラルに向けて、私ども経済産業省やNEDOとよく連携し、今、話を進めているというところであり、2050年を見据えた必要なイノベーションに取り組んでいるところです。
その上で、残りの御指摘としてあったもので、橋本委員から個別の御指摘として、IPCCのどのレポートを参照するかという御指摘があったかと思います。この間AR6、第6次評価報告書の第1作業部会のレポートが出たというまでであり、直前の第5次のもので全部がカバーされているかというと、昔ならあったけれども直近のレポートはここの記述がないというところもありますので、できる限り最新のものは書くようにはしておりますが、そういった制約要因があることを御承知おきいただければと思います。
それから、宮島委員から行動変容が重要との御指摘を頂きました。しっかり省を挙げて様々な形での見える化に取り組んでいきたいと思います。それからコミュニケーション、ターゲットごとにどういったことをやるのかということだと思います。今、御紹介させていただきました「みどりの食料システム戦略」を一時のものにしてはならないという思いで、現在、法制化を含めて検討していところです。その中には関係者へのメッセージを考えていますので、それらを踏まえながら、現場とコミュニケーションを図っていきたいと考えている次第です。私からは以上です。
続きまして、バイオセキュリティに関しては犬飼畜産振興課長から、それから治水や鳥獣の観点で農村振興局から、それから林野庁、水産庁からも何か御発言あればよろしくお願いします。
○畜産局畜産振興課長
犬飼でございます。
木村委員からバイオセキュリティについて御指摘がございました。家畜の病気だけではなくて、魚の病気に関しましてもパリに本部がございますOIEという獣医学の国際機関がございまして、こちらの方に重要な疾病の発生については通報して共有をする、あるいはそれぞれの病気の各国の管理体制について評価をする、こういった仕組みがございます。日本もOIEの加盟国でございますので、こういったことで海外での発生状況等について情報を得ているところでございます。
それから国内で未発生の病気を含めまして、アクティブサーベイランスという形で発生状況を監視して、これらを総合的に踏まえてリスク管理を実施しているところでございますが、適応計画の13ページに畜産の記述がございまして、ここのところにアルボウイルスというウイルスが国内で発生した件についての記述がございます。オーストラリアヌカカという本来であれば九州にいないような蚊が発見をされているということ。あるいはアカバネウイルスというアルボウイルスの一種が直接東北地方に入って北海道まで広がってしまったという記述がございます。こういったことがございますので、御指摘のように環境の変化の中で疾病を媒介するような動物や昆虫、こういったものの侵入状況や国内での定着状況につきましても環境省ですとか、こういったことを調べておられる方の情報を加味をして、今後リスク評価をしたり、それから侵入した場合の対策を考えていかなければいけないと思います。
今、豚熱という病気が国内でなかなかコントロールをすることができておりませんが、これも野生のイノシシに入ってしまって、そのイノシシのコントロールが難しいという状況にあることが原因になっております。イノシシにつきましては、出島委員から御指摘がございましたが、福島原発事故以降、これを取って食用にするというようなことが減っているということ、それから温暖化によって子供が生まれてもそれが越冬できる確率が高まっているということで、イノシシの分布も変わってきていると認識をしています。こういったことで、国内外の病気を介在する可能性のある動物、それから昆虫の分布や生態、そういったものをよく加味をしてバイオセキュリティの対応をしていく必要があると認識をしております。
それから、中崎委員から木の利用の関係で畜産の堆肥生産のためのおが粉の利用について、効率的な資源分配が必要という御指摘がございました。好気性発酵をしていく上でもおがくずをしっかりと使えることが好ましいので、今後とも御配慮いただければ幸いでございます。私からは以上でございます。
○農村振興局設計課計画調整室長
農村振興局設計課計画調整室長の松本です。
橋本委員から適応計画の農業生産基盤のところ、14ページですが、こちらに流域治水がうたわれていないのはなぜかという御意見を頂いたところです。対策としては二本立てであり、一つは渇水対策、もう一つは流域治水にも関わる洪水防止・湛水等の対策となっています。ここに書かれています排水機場の整備や排水に係る事業につきましては、流域治水ということが言われる令和元年頃以前から実施してきているものであり、それに関しては次のページの森林分野も同様です。ただ、農業分野の流域治水の対策では、まず、第一に農業用ダムやため池というような、農業用水の確保のための施設において大雨が予測される前にあえて放流し、ポケットを作り、そこに大雨を受け止めるというような一定の条件下での運用が一番のポイントとなっていますので、それをこちらに盛り込むと、片や水が足りないといっているところで、やや混乱したメッセージを伝えることになると考え、こちらには盛り込まないという判断をしたところです。流域治水に関しては、そういった農業用水の確保とうまく両立させながら現場でしっかりと運用を図っていきたい考えています。以上です。
○農村振興局鳥獣対策・農村環境課長
続きまして、鳥獣対策・農村環境課長の藤河です。
出島委員から頂きましたニホンジカの分布拡大の話です。御指摘のとおり、ニホンジカにつきまして、冬が暖かくなりまして積雪が減るということになりますと生存率が増えるということでして、かなり北の方にも分布が拡大しているというのが現場からもいろいろ話が来ているところです。今現在、鳥獣対策につきましては、主に市町村を中心にした地区で対策をやってきているところではありますが、これではこういった新しいところに分布が広がるということについてはなかなか対応がしにくいところ、本年度、鳥獣被害対策に関する法改正が行われておりまして、もう少し広域でしっかりと鳥獣対策をしましょうという法改正がなされております。これから市町村と県が協力をしまして、ある程度分布の広がりなども予測しながら柵の設置であったり、個体数のコントロールといった対策を進めていきたいと考えているところです。
それからもう一点、東北、原発事故の関係でシカのジビエ利用が低調になっているところですが、これにつきましても、やはり駆除を進めていく上では、せっかく頂いた命ですので例えばお肉などにして利用していくということが重要だということで、今、シカの肉についてしっかり検査をしたものは利用を再開できるということにしております。都道府県が今、それぞれの判断になりますが進めておりますし、また市町村単位でも検査をして利用が進められないかということを進めているところです。以上です。
○林野庁森林利用課長
引き続きまして、林野庁森林利用課長の箕輪でございます。
吸収源対策について2名の委員の方から御指摘を受けました。
まず、中崎委員から人手不足の件について御意見を頂きました。委員御指摘のように、現場、特に造林といって木を植える、またその後の下刈りをする者がいないというのが現場の実態としてあるかと思います。そのためには人手を増やす、また作業を少なくするということが大事かと思っておりまして、人手を増やすということについては、緑の雇用事業というもので新規就業者の確保、また育成というものに取り組んでいる、これは引き続きやってまいりたいと思います。また、作業の省力化についてはコンテナ苗、またエリートツリーというものを使うことによって作業の回数を減らす、そういうようなことができると思いますので、そういうところで省力化を図っていく。また中長期的には、自動操作の機械等の開発、そういうものについても取り組んでまいりたいと思っております。以上でございます。
○林野庁木材産業課長
引き続きまして、木材産業課長の齋藤から、中崎委員、日當委員からそれぞれバイオマス発電での原木利用が増えていることの懸念に端を発しまして、おが粉、ペレット、あるいは薪といったマテリアル利用の原料の不足というお話。それから、日當委員からは木材利用の促進に関する国民の理解の醸成に関する御指摘を頂いております。
資料の3の18ページに記載がございますので、後ほど御覧いただければと思いますが、さきの通常国会で公共建築物等木材利用促進法という国、地方公共団体で木造建築物を増やしていくという趣旨の法律がございましたが、これが10年余りを経まして改正されました。趣旨として正にカーボンニュートラルの実現ということを意識しまして、名称も脱炭素社会の実現に資する等のためのうんぬんということで、そういった名前に替わり、かつ基本理念というのを新たに創設しまして、そういった木材利用の促進というのが大変カーボンニュートラルの実現にも効果があるということで、公共建築物のみならず民間の建築物にもそういったことを広げていくということを趣旨としております。正に今月10月が新しい法律によりまして木材利用促進月間ということで、国民の皆様にもそういったことをPRしていく機会というふうに位置付けられたこともございますし、農林水産大臣を本部長といたします木材利用促進本部というのを設けまして、その中で今後の木材利用の方針として、その中にも木材を原材料とする備品、消耗品、あるいはバイオマス利用に関しても発電一辺倒ではなくて熱利用ということをきちっと位置付けながら、いわゆるカスケード利用をきちっとやっていくということも意識して、今後取組を進めていきたいというふうに考えてございます。以上です。
○水産庁研究指導課長
水産庁の研究指導課長でございます。幾つか頂きました。
まず、木村委員から頂いたデータの話。まず海洋の話ではないかと思っております。御指摘のあったことですけれども、海洋観測等の気象データにつきましては、国内では海上保安庁所管のJODCというデータのシステム、国際的にはNOAAが持っていますGTSPPという、御存じかと思いますがデータもあります。それぞれ研究機関の方から、研究機関からは海上保安庁の方に、それからNOAAの方には船からリアルタイムで送るようなシステムになっておりますので、御存じかと思いますが、御活用いただきたいと思っておりますし、また何かございましたら言っていただければと思いますし、研究機関の方もなるべく早く公表できるように努めてきているというふうに承知してございます。
あともう一つ、山口委員から洋上風力の御懸念の話がありました。我々水産サイド、同じように思っておりますし、洋上風力をしっかりやっていく中で漁業者がまさか悪者になってはいけない。邪魔するやつらだというふうに思われたらいけないというふうに強く思ってきているところでございます。御存じかと思いますが、2019年に再エネ海域利用法という法律が施行されまして、促進区域を指定するに当たって、我々農林水産省に協議をされるですとか、地元で漁業者を含めた協議会でしっかり意見を聞くという位置付けになっておりますので、その仕組みをしっかり進めていくようにしたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
○水産庁整備課長
水産庁の整備課長でございます。
吉高委員からブルーカーボンについてお話がございました。ブルーカーボンに関しましては、今、IPCCのガイドラインの中で海草藻場、塩性湿地に関しては吸収量の算定手法というのが定義されておりますが、海の藻である海藻藻場については、吸収量の算定方法がありませんので、現在、農林水産技術会議の方で、調査を行っていただいておりまして、ブルーカーボンとしての位置付けを確認の上、必要な対策をしっかりやっていきたいと考えてございます。
また、山口委員から御指摘ございました。キジハタのところで御指摘いただきましたけれども、私ども漁場整備に関しましては、各都道府県の水産試験場等いろんな方からの知見を頂きながら、温暖化が進んでいる中で水産資源の変化というのが出てきているということで、資源量を何とか確保していくために魚の稚魚から成魚に至る一連の生活史に必要な漁場環境を整えるということで漁場整備を行っております。キジハタにつきましては、暖海性かどうかというのはあろうかと思いますけれども、瀬戸内海とか山口県周辺海域で効果が出ているというふうには聞いてございますが、これを一つの成功例として、地域の実情に応じまして水産生物の生活史を踏まえた漁場整備という形で進めております。
また、植食性魚類に関して、その駆除による生態系への影響ということを言われました。私ども藻場を守るために植食性魚類がそこで藻を食べるという行為を避けたいということで、駆除という言葉を使わせていただいていますが、基本的にはそこに入ってこないようにするという対策を取ってございます。そういった中で、網を仕掛けて掛かった魚については、ここの絵で描かせていただいておりますが、こういったような駆除という形で取り上げるということをしております。そういった植食性魚類の全体を消滅させていくような、そういったような大規模な対策ということでは考えてございませんで、その地域地域の藻場の対策ということで必要な対策を今、進めているということでございます。誤解を生じさせてしまっていたのであれば申し訳なく思います。以上でございます。
○大橋座長
ありがとうございます。皆さんの議論に触発されたのか、事務局の説明の方が長く、結局頂いた時間を大幅に超えてしまって申し訳ございません。ちなみに1人発言し損ねた委員がいて、それが私なのですが、私の発言で時間を延ばすのも恐縮なので、また今度にします。
ということで、今日はここまでとさせていただきます。大変熱心に御議論いただきありがとうございます。事務局にお返しします。
○地球環境対策室長
今日は貴重な御意見を頂きどうもありがとうございました。本日御議論いただいた「農林水産省地球温暖化対策計画」及び「農林水産省気候変動適応計画」の改正については、いただいた御意見を踏まえて、事務局において今月中の最終取りまとめに向けて検討を進めさせていただきます。
それでは、本日の会議はこれにて閉会いたします。ありがとうございました。
○大橋座長
お疲れさまでした。
午後3時48分閉会
お問合せ先
大臣官房環境バイオマス政策課地球環境対策室
代表:03-3502-8111(内線3292)
ダイヤルイン:03-3502-8056