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農林水産省

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令和4年度第1回(現地調査)議事概要

1.日時及び場所

日時:令和4年8月5日(金曜日)
場所:山口県下

2.議事

(1)現地調査の事前説明
(2)意見交換

3.議事概要

議事概要(PDF : 342KB)

(1)現地調査の事前説明

(長谷川委員)

情報化施工のデメリットは、ほ場整備の場合、他の工種に比べて三次元設計データの作成費用、日数がかかるということだが、どれくらいかかるものなのか。

 

((株)川畑建設)

日数は現場の規模や条件で変わるが、同じ面積の設計データを作る場合、ほ場整備と道路では、感覚的には2倍近い日数がかかる状況。設計データを作るのは労務の日数がベースであり、 最初から詳細なデータがあるといいが、ほ場整備は現地を見ながら作成していくものなので、そこを柔軟にできるような技術の改良があればよい。

 

(農村振興局)

建設業においても人手不足が非常に深刻で、今後もその深刻さが増していくリスクがある中で、情報化施工を導入して生産性を高めていかなくてはいけない。農林水産省としても課題を認識した上で検討し、試行しながら進んでいる状況である。ほ場整備は、一般的な土木的な工事と比べると、一枚一枚のほ場に土地の所有者、耕作者の思いがあるので、現場の調整が非常に難しいことが特徴である。

 

(柚木委員)

ほ場整備工事では、ICT建機を使用した場合の供用日数と運転日数の差が大きくてレンタルでの使用は費用が合わなくなることについて詳細を教えてほしい。もう一つ、今お話があったように、こういう情報が最初から入っていればもう少し合理的にできると考えられることや、 将来のことを考えて今の農地情報が共有されるような仕組みがあった方がいいと考えていることがあれば教えてほしい。

 

((株)川畑建設)

供用日数と運転日数の違いについては、不規則な条件が重なることが多いということがある。具体的には、現地の方の思いを設計に反映しなければならないので、発注者からの設計図を基本に、関係者の意見を聞きながら現場で合わせながらやっていくため、 一気に工事が進めることができない。そうした方々が設計図を見てもイメージが湧かないので、どうしても現場が出来上がってからとなる。そこを解決するのがAR技術であったり、最初の設計段階で情報共有できれば、スムーズにいく可能性があると考える。そういう意味で、当初の設計で細かい地形情報が設計図に反映されていないことが、施工データを作る上での障害となっているところがあるので、 簡易的に作って情報共有することが考えられる。

 

(油川委員)

農業農村整備事業の工種の中でもほ場整備は工事できる業者が限定され非常に特殊だと、青森県の現場を見て思っている。ICT 技術を応用するとなると参加のハードルがさらに高まると感じたところであり、特定の業者に依存すると全体としては進んでいかないと思うので、 この技術をできるだけ多くの業者が使えるようになることが望まれる。ICT 技術を導入する上で支援はあるのか。

 

((株)川畑建設)

ICT 建機の購入費用は標準的な建機の2倍と高額なので、経済産業省のものづくり補助金や事業再構築の補助金を充てる企業が増えていると考える。ただ、設備を入れたら ICT 建機が使えるということではなく、ICT 建機は三次元データを作成する過程が大事なので、それを作成する人材の教育や操作するオペレーターの教育が大きな課題である。

 

(西村委員)

三次元データを作るオペレーターは専門性が高いと思われるが、専業となっているのか。リモートワークによりカメラで現場を見るとも聞いたが、その方は現場の情報に触れる機会はあるのか。

 

((株)川畑建設)

現場のデータさえ精密に測量ができていれば、現場にいなくてもPC内で処理することは可能である。現場の施工管理の業務を行う者が、ICT の設計データを作成すると負荷がかかるので、専門的に作業できる方を会社の中で確保することが非常に重要と思う。

 

(牧委員)

南周防地区では全30換地区の調整を国が自ら手掛けており、中山間地域に対する国の対応の表れと感じる。情報化施工は「将来的な活用」や「人材の確保」という命題を担っている。費用をかけても実施する意義につなげるためにその部分をしっかりと説明することが重要と考える。面的なデータは作物の生育状況や肥料の過不足等の状況と連携させスマート農業につなげることもできるのではないか。今後、どうスマート農業に活かしていくか、 その際にネックとなることがあれば合わせてお考えを伺いたい。

 

((株)川畑建設)

ほ場整備によりその農地が盛土か切土かという情報があれば、 耕うん機で作業を行う際に、地盤が悪く感じる部分の原因究明に繋がることもあると思う。また、暗渠排水等の埋設場所がデジタルで管理できれば、 維持管理が効率的に行えるとともに、水が漏れている箇所を探す手間も省ける。そのため、施工中に少し手をかければ簡単に入手できる情報を耕作されている方が欲しいと思えばデータで提供できる仕組みを作った方が良いと感じている。

 

(松下委員)

整備後の計測データの所有者は誰になるのか。

 

((株)川畑建設)

三次元データは最終的には発注者に提出することになっている。

 

(農村振興局)

情報化施工で得られたデータを営農にどう活用していくかについては、 昨年度も当部会で課題として提示しており、検討の途上である。情報化施工の事例自体が多くはないが、これから増えていくので、現地でうまく活用していただく方向で検討を進めてまいりたい。

 

(松本委員)

農業者の立場としては、地権者の意見も聞くことで調整にかかる日数が増えるのは当たり前と思う。山口県では川畑建設のような技術を持たれた他の建設業者も何社かあるのか。

 

((株)川畑建設)

県内において情報化施工を一気通貫でやっている会社は1 社いるかいないかと思う。山口県内だけではなく、中国地方で見てもICT 施工を一気通貫でできる会社は少ないと思う。

 

(平松部会長)

以前、聞いた情報では、情報化施工の施工実績は、昨年度末時点で国土交通省が 2,000 件を超えるのに対して、農水省の農業農村整備分野では 100件以下と少ない現状となっている。少ない理由としては、事業費が高くなり地元負担が増えることが理由と伺っていた。この地区では情報化施工について多くの実績があるが、一番の先行要因は何なのか。

 

(中国四国農政局南周防農地整備事業所)

国のガイドラインができる前から、先進的に取り組んでいこうという事業所の姿勢があり、職員と施工業者で積極的に取り組んできたことが大きな要因と考える。換地区数も30地区と多く、ICT 技術は、 地元説明の際にほ場整備後の形状や施設配置等の理解を深めてもらうためにも非常に役に立つ技術である。

 

(三輪委員)

この事業は、地域の中でどういう方が先導して進めていったのか。事業を推進している者と営農されている者とのギャップが出てくるリスクはないのか、 現場の状況を教えてほしい。

 

(農村振興局)

この事業は、光市、柳井市、田布施町の2市1町のエリアの中で、傾斜地を中心として、耕作放棄されるおそれがある農地等をなるべく使いやすいほ場に整備していこうというものである。主に、過去にほ場整備をしていない地域を対象として、合意形成のもと受益地を決めていったという経緯がある。事業開始後、受益に入れてほしいという場所も出てきて、計画変更を行って現在に至っている。

 

(2)意見交換

(長谷川委員)

石城の里の3人の青年の従業員は元々どういう方で、どういう経緯で入られたのか。また、今後この3人を中心でやっていくことに関して、意見集約の中で、組合員からどんな意見があったのか。

 

(石城の里)

本当は4人いたが1人途中でやめてしまった。3人のうち2人は農業大学校出である。1人は高卒で、その3人が、入社7年目、4年目である。農業大学校出は知識はあるので、彼らを中心に農作業、栽培管理、栽培計画、栽培記録に取り組んでいる。今では3人が全部行っているため、私は結果トラクターには乗らず、ガバナンスと補助作業をやっている。129人の組合員がいたが、ほとんど農業はやっておらず、草刈りを頼んでもやらない。仕方なく3人を中心に農業経営を行っている。しかし、3人で64haは無理なので、来年また2人を雇って5人体制を考えている。5人から6人いないと草刈りできないが、なんとか経営的にはペイできる。

 

(松下委員)

石城の里は株式会社へ移行するとのことだが、その道筋について教えてほしい。

 

(石城の里)

従業員3人の心配は、土地が今後50年間、石城の里の土地として使えるのか、利用権設定できるのかということ。農業をしていない129人の組合員、地権者の顔色をうかがうのではなく、自由に自分たちの儲かる農業をやろうとなった。彼らの危機感から株式会社という話が出た。

 

(柚木委員)

石城の里が長期にわたって安定的に農地を借り受けていくためには、農地中間管理機構を活用しながらやっていくことが重要と思う。石城の里は、昭和50年から平成11年にかけてのほ場整備で一区画当たりの面積はどれくらい変わったのか。中山間地では区画が大きければ大きいほど良いということではないと思うが、どれくらいが適正なのか考えがあれば教えてほしい。あいさいの里はFOEASをやられているが、石城の里でやられているシートパイプとFOEASとはどう違うのか。

 

(山口県)

はっきりと言えないが、当時ほ場整備は、基本的に30a区画でやっている。最近ではもう少し大きい区画になると思う。また、山口県はFOEASを全国的にも早い時期から取り組んでいたが、石城の里では表面排水対策を強く進めたいということからシートパイプを導入した。あいさいの里はFOEASを導入したが、地下かんがいの機能ということで野菜等に効果がある。将来的な維持管理との兼ね合いや地域のニーズにあわせて使い分けている。

 

(松本委員)

あいさいの里は、30haの農地から52haに増加しているが、それに対して人手は足りているのか。また、タマネギ、アスパラ、キャベツを選ばれているが、それは地域に適した作物だからなのか。他の作物は考えていなかったのか。現在の材料費などの価格高騰に対して、農作物は安価であるが、売り先などは工夫しているのか。

 

(あいさいの里)

面積が増えると人数も増え、現在常時雇用が4名いる。農作業は4,5人いれば50haくらいはなんとかなる。肥料等は農協で買っていたが、今は約20法人が集まってできたアグリ南周防株式会社が、肥料の値段を交渉して買っている。たまねぎ、アスパラ、キャベツも地域の特産ではなかったが、現金収入がほしいのと、地域の女性達の雇用のためにアスパラがいいということで始めた。山口県ではじゃがいも、たまねぎ、にんじんの作付に補助金があるので、たまねぎをやっている。

 

(西村委員)

石城の里のシートパイプの表面排水は、野菜が対象になっているのか。また、中山間地域なので、畑をやると雨のときは土砂流亡があると思うがどうか。

 

(石城の里)

シートパイプの設置後は小麦の生産が良くなった。10haだったのが年々増えて今は21haとなった。小麦は、排水さえやっておけばいい。また、大豆も結構できるし、畑作が非常にできる。飼料用米も含め、米と麦と大豆をしっかりやっていく。雨による土砂流亡はない。

 

(あいさいの里)

土砂の流出は特にはない。粘土質の土地なので、堆肥を十分に入れないと畑作は難しい。

 

 

(牧委員)

あいさいの里では、たまねぎ2.5haと結構な面積を作付けされている。たまねぎは高収益作物として期待される一方、難しいとも聞く。導入に当たってご苦労はあったか。また、加工用か生食用か。設備の能力に対して面積を広げていけるのか。また、石城の里では小菊の女性部会という話があったが、JAとの連携があれば教えてほしい。

 

(あいさいの里)

たまねぎは生食用である。12~13年前から作っており、1haから増えて最高3ha。最初は全部収穫して自前で選別、箱詰め、出荷していたが、大変なので収穫のあとは農協が作った選果施設に出すようになった。元々たまねぎづくりの技術はなく、出荷まで3年かかった。

 

(石城の里)

JAではなく地域の女性部会であり、通年女性が働ける場を作るということで、小菊、梨に取り組んでいる。キャベツの草取りなどは女性の力がいるので、通年雇用にすることが目標である。冬はキャベツの出荷、春から夏にかけては梨で、4、5年前から取り組んでいる。売る場所はJAではなく直売所であり、地域の女性達の現金収入となっている。

 

(油川委員)

あいさいの里、石城の里どちらも中山間の地域や農業の活性化に向けた取組だが、異なるタイプであると思った。あいさいの里は地域の活性化に視点を置いているし、石城の里は農業の収益性に軸足を置いている印象を受けた。あいさいの里では皆で役割分担しながらやっていくということだが、将来の担い手の確保という課題に対してどのようなお考えか。また、石城の里は、若い方に農業をすべて任せるといった時に、地域に対する住民の関わりをどのようにもっていくおつもりなのか教えてほしい。

 

(あいさいの里)

多面的機能支払交付金を使って農地の草刈りや水路の掃除を行っており、地域の方と親密に連携している状況である。しかし、高齢化が進み、草刈りに出てこられなくなったため、あいさいの里で草刈り隊を作って5人くらいでやっている。これから地域全体でやっていくことはなかなか無理というのは見えている。一方で、株式会社にしても大丈夫かという不安はある。石城の里では若い人がそろったから考えがまとまると思うが、私どもは50代、80代の理事もいる。全員が歳とったら全て若い者に代えてなんとかしようとは思うが、頑張っておられる理事もおり、少しでも長続きしたいという感じで、地域を盛り上げるために、あいさいの里で手伝っている状況である。その状況はあまり良くはないとは思うが、田舎では、一つが離れると、全部がバラバラの状態となってしまうので、皆が集まって頑張らなくてはいけない。そして話し合いながらやると、なんとかなるのではないかと思っているので、地域のお年寄りには「死ぬまで頑張って働いてください」とは言っているが、この先10年もしたら限界かなと思うところはある。それまではいろいろと考えたいと思っている。田舎に若い人が来る移住など、少ないながら田舎には需要があると言われているが、実感がわかないところ。そのような風が少しでも吹いてくれれば思い、収穫体験や研修等の活動を行っている。

 

(石城の里)

うちの地域は、大手企業の工場がすぐ隣接の地域にあるので、そこを定年になったらやめるという感じで、村落の共同体、地域管理という意識がない。地域の農業をどう守るか考えた時に、専従でやらないと守れないので、青年農業技術者を育てようという発想に至った。ほ場だけではなくて、草刈りまで法人がやらざるを得ない。そこまで腹をくくらないと中山間地域を守れないと思う。若い従業員には「とにかく挨拶しなさい」と言っている。そして、トラクターなど農業機械を使った後は道路掃除をしたり、ヘリ防除する際には集落を回ってお知らせしたり、地域と共存できるようにしている。「地域の田んぼは将来にわたって農事組合法人が守りますから安心してください」という思いでやっている。

 

(平松部会長)

あいさいの里、石城の里どちらも農地の集積を進めているが、中山間地域であるこの地区の場合、進めていくに当たって何が一番障害になっているのか。

 

(あいさいの里)

中山間地域の条件が厳しい農地を預かっているが、鳥獣害がたくさん出る。また里山の方が管理されていないと木が倒れてきたり、竹が繁茂しているほ場もある。機械も大型化しているので、小さいほ場では効率も悪く、広いほ場の方に向くという状況である。山の際では湧水が出ており、FOEASでは対応できないほ場もある。このようなところでは耕作していない状況である。

 

(石城の里)

若い従業員達はこれから集積を進めて広くしても良いという意向である。しかし、問題は水が田んぼに来ない。水が来ないほ場が結構あり、水さえくれば、なんとか集積できる。水路が破損したり、災害により水みちが変わってしまったところもある。そういう部分の水路の整備を検討する必要があり、それができれば、人を増やし、集積は進められると思っている。

 

(平松部会長)

農業農村整備事業に関する要望や意見があれば教えてほしい。

 

(石城の里)

若い従業員の悩みは、この土地が孫の代になった時にばらけて誰のものかわからなくなること。利用権設定を明確にして永続的に耕作できるようにしておかないといけない。現在、利用権設定している約40ha、そして約234枚のほ場は、殆ど法人のものではなく、お借りしている農地である。土地は生産基盤であるので、なくなってしまうのが一番困る。

 

 

(あいさいの里)

扱っているほ場の数はたくさんあり、狭いほ場が多いので、もう少し大きくしてほしい。一番最初のほ場整備の時には、「私は何も農業できないけど、ほ場整備したなら誰かやってくれるからほ場整備する」という方がほとんどだったと思う。このため、どんな田んぼができようが良いという方が多く、作業効率が良くないところがある。機械化、機械の大型化が進み、労働力を補わないといけないので、ほ場を大きく、法面の草刈りは少なくしないと、中山間地のほ場は維持できないのではないかと思っている。

 

(石城の里)

ほ場整備してから30年近くなるが、30年前の規格であり、橋があっても大型化したコンバインが通れない。水路も15cmくらいで鋤簾が入らない。これを補修しなくてはいけないと思う。大型の農業機械も入っているので、少しでも時代に合ったほ場、水路、農道にしてほしい。

 

(農村振興局)

石城の里は、農地バンクを間に入れているとのことだが、利用権の更新に懸念があるとの御発言があった。そのような御懸念については、持ち帰り制度の担当にもお伝えしたい。

また、基盤整備の関係では、水路が損傷して水が届いていない農地をどうするのか、農道が古い基準で整備されており、今の機械は橋を渡れない、更なる区画の拡大ができないのか、法面を小さくできないのか等の意見があった。それぞれに対応できる様々な事業制度を整えているので、別途、農政局からも説明に参りたい。FOEASについては、使い方のほか、補助暗渠とか疎水材が効いていない等の原因があるかもしれないので、事業所からもフォローさせていただく。

 

(中国四国農政局南周防農地整備事業所)

FOEASの件については、現在、本地区で整備しているところであるが、使い方や維持管理も含めていろんなご意見をもらっている。今後、現状や実態を把握し、本地区での適切な利用方法や維持管理の方法等をとりまとめ、地元農家、法人に啓発することが必要と考えている。また実態をお伺いし、ご相談させてもらいたい。

 

(平松委員長)

以上で意見交換を閉会する。大変貴重な情報、意見をいただき感謝。いただいた意見は、今後の検討に活かしてまいりたい。

 

 

以上

お問合せ先

農村振興局整備部設計課計画調整室

代表:03-3502-8111(内線5514)
ダイヤルイン:03-6744-2201

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