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農林水産省

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令和6年度第3回議事録

1.日時及び場所

日時:令和7年1月21日(火曜日)13時30分~16時30分
会場:農林水産省第2特別会議室
(配信会場:同上)

2.議事

(1)土地改良長期計画について(諮問)
(2)新たな土地改良長期計画の審議の進め方(案)
(3)現行土地改良長期計画の実施状況について
(4)改正基本法等を踏まえた今後の農業農村整備の展開方向について
(5)報告事項
     ア 国際かんがい排水委員会(ICID)第9回アジア地域会議及び第75回国際執行理事会の結果報告について

3.議事内容

議事録(PDF : 504KB)

13時30分  開会

○中西計画調整室長  ただいまより食料・農業・農村政策審議会農業農村振興整備部会令和6年度第3回を開催いたします。

  委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御参加いただきありがとうございます。

  改めまして、計画調整室長の中西でございます。どうぞよろしくお願いいたします。議事の開始まで私の方で司会進行を担当させていただきます。

  本日は15名の委員に御出席いただいております。井上委員、山波委員、加藤委員、清水委員、長谷川委員、松下委員はウェブでの御参加となっておりまして、木下委員は所用により欠席と伺っております。

  なお、稲垣委員と加藤委員におかれましては所用のため途中からの御出席、清水委員におかれましては途中での御退席ということでございます。

  それでは、開会に当たりまして前島農村振興局長より御挨拶を申し上げます。

  局長、よろしくお願いいたします。

前島農村振興局長  農村振興局長の前島でございます。

  委員の皆様におかれましては、お忙しい中お時間を頂きまして、誠にありがとうございます。また、日頃より農林水産施策、とりわけ農業農村整備、農村振興施策の推進につきまして格段の御理解と御協力を賜りまして、厚く御礼申し上げます。

  本年度の農業農村振興整備部会といたしましては、8月に持ち回り開催、10月に新潟県での現地調査を行ったところでございます。第3回の本日は農水省での対面開催となりまして、皆様の前で初めて御挨拶させていただきます。オンライン参加の委員の皆様を含め、よろしくお願いいたします。

  昨年、食料・農業・農村基本法が制定から四半世紀を経て改正されました。食料安全保障の抜本的な強化、環境と調和の取れた産業への転換、人口減少下における農業生産の維持・発展と農村の地域コミュニティの維持の実現を目指しまして、新たな基本理念や関連する基本施策等が定められました。この改正基本法の理念を実現するため、現在、新たな食料・農業・農村基本計画の検討を進めているところでございます。

  また、改正基本法第29条におきまして農業生産基盤の保全に必要な施策を講じることが明記されたことを踏まえ、気候変動による災害リスクの増大、施設の老朽化の振興や農村人口の減少等に的確に対応できるよう、土地改良法の見直しを進めているところでございます。

  新たな基本計画の策定、土地改良法の見直しが行われる中、土地改良事業につきましてもそれらの方向性に即して計画的に実施していくため、土地改良長期計画の見直しを行いたいと考えております。このため本日、農林水産大臣より諮問させていただきまして、本部会における新たな土地改良長期計画の審議の開始をお願いしたいと思います。

  本日は、現行土地改良長期計画の実施状況と改正基本法等を踏まえた今後の農業農村整備の展開方向につきまして説明させていただき、御意見を賜りたいと考えております。

  委員の皆様方におかれましては、限られた時間でございますが、それぞれのお立場や専門分野の観点から忌憚のない御意見を頂きますようお願い申し上げます。

  本日はよろしくお願い申し上げます。

中西計画調整室長 

  なお、前島局長及び石川整備部長は、所用のため途中で退席となります。

  続きまして、当部会の公表の方法について説明いたします。

  資料は既に農林水産省のホームページで公表しております。議事録につきましては、内容を確認いただいた上で発言者を明記し、後日ホームページで公表させていただきますので御了承願います。

  本日は長丁場になりますが、16時30分までを予定しております。

  なお、報道関係者のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。

  では、以降の議事進行につきましては西村部会長にお願いいたします。

西村部会長  西村です。本日はよろしくお願いいたします。

  会議次第に従いまして、議事に入らせていただきたいと思います。

  まず、議事(1)土地改良長期計画についての諮問及び(2)新たな土地改良長期計画の審議の進め方について、事務局から説明をお願いいたします。

中西計画調整室長  それでは、資料1及び資料2を説明させていただきます。

  まず、資料1でございます。

  大臣からの諮問になりますので、読み上げさせていただきます。

  食料・農業・農村政策審議会会長、大橋弘殿。農林水産大臣、江藤拓。

  土地改良長期計画について。

  土地改良法(昭和24年法律第195号)第4条の2第1項の規定に基づき、貴審議会の意見を求める。

  続きまして資料2「新たな土地改良長期計画の審議の進め方(案)」でございます。

  現行の土地改良長期計画が令和3年3月に閣議決定され、土地改良事業を計画的かつ効率的に進めていくということでございますが、今般、食料・農業・農村基本法が改正され新たな基本理念や関連する基本的施策等が定められ、令和6年6月に公布、施行されたところでございます。また、基本法の検証、見直しの議論を踏まえまして、新たな食料・農業・農村基本法や土地改良法の改正に向けた検討が進んでおります。

  こうした状況を踏まえまして、土地改良長期計画につきましても、本年1月から次期土地改良長期計画の策定に向けて本格的な検討を進めたいと考えております。

  次のページに具体的なスケジュールを書かせていただいております。

  本日、第1回の諮問を受けて議論を頂きまして、2月に地方懇談会を、年度内にそれらを踏まえました論点整理を行いたいと考えております。そして5月以降、骨子案について御議論いただきまして、6月には計画案の取りまとめ、8月には答申から閣議決定ということで進めてまいりたいと思っております。

  なお、スケジュールにつきましては、今後の議論の状況等に応じて変更される可能性もございますので、その旨、御了承いただければと思います。

  私からは、以上です。

西村部会長  ありがとうございました。

  ただいまの諮問と審議の進め方について、御質問や御意見などあればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

  ありがとうございました。

  では、次の議題に進ませていただきたいと思います。

  続いて、議事(3)現行土地改良長期計画の実施状況について、こちらも事務局から説明をお願いしたいと思います。

中西計画調整室長  資料3に基づきまして、説明させていただきます。

  資料3は、現行の土地改良長期計画の現在の進捗状況を説明する資料です。

  まず、1ページになりますけれども、土地改良長期計画が、土地改良法の規定により食料・農業・農村政策審議会の意見を聴いた上で計画案を作成し、閣議決定するという位置付けであること、更には計画期間は5年を1期とし、土地改良事業の実施の目標及び事業量を決定するといったことを書かせていただいております。

  2ページには、これまで9回策定されてきまして、平成15年以降は事業量重視から成果重視へと転換し、計画期間も10年から5年に見直されてきているという変遷がございます。

  3ページから10ページにつきましては過去の計画の概要が記載されておりますので、ここは省略させていただきたいと思います。

  11ページを御覧ください。

  11ページは、現行の土地改良長期計画の概要になります。

  政策課題が1から3までございます。その中に政策目標が五つ定められていまして、その下には、「・」で示されていますけれども、施策がぶら下がっております。今回、この政策課題、政策目標、施策ごとに現在の進捗を御説明させていただきたいと考えております。

  15ページを御覧ください。

  政策課題1、生産基盤の強化による農業の成長産業化のうち、政策目標1、担い手への農地の集積・集約化、スマート農業の推進による生産コスト削減を通じた農業競争力の強化に係ります施策(ア)、基盤整備の推進という項目でございます。

  この施策の重要業績指標KPIとしましては、基盤整備完了地区のうち米生産コストの労働費を一定程度低減、これは4割程度でございますが、そうした地区の割合を8割以上とする目標に対しまして、R3年度からR5年度の実績で90%でございます。

  その他の活動指標であります担い手への農地の集積率あるいは担い手経営面積に対する集約化率につきましては、こちらも「8割」と「9割以上」ということで、目標におおむね達している状況でございます。こうした取組については、引き続きしっかりと推進してまいります。

  一方で、基盤整備完了地区において設立した農業法人数を2倍以上にするという目標につきましては、現状は1.4倍にとどまっております。ただし、地区内における法人の経営面積は増加してきておりまして、法人への農地集積は一定程度進んでいるのではないかと考えております。

  これにつきましては、関係部局との連携も強化しながら、法人が経営しやすい基盤整備を目指して進めてまいりたいと考えております。

  次に、16ページを御覧ください。

  こちらは同じ政策課題、政策目標の施策(イ)、水田の大区画化、畑地・樹園地の区画整理やスマート農業の推進についてでございます。

  KPIにつきましては、スマート農業の実装を可能とする基盤整備を行う地区の割合を8割以上という目標に対しまして、ちょうど80%の達成率となっております。

  一方で、活動指標となっております地域による農地・農業用水等の保全管理により構造改革の後押し、これは担い手への農地集積率の向上ということでございますが、そちらが図られている地域の割合が10割という目標に対して89%となっております。

  この点、中身を少し見てみますと、やはり未達成の地域は都市的な地域あるいは中山間地域ということで、多面的機能支払組織の活動継続がなかなか難しいところが出てきているということでございます。やはり活動を継続していただくことが一番のポイントだと考えておりますので、そうした点をしっかりと踏まえながら、今後も多面的機能支払の推進を進めてまいりたいと考えております。

  続きまして、17ページを御覧ください。

  政策目標2、高収益作物への転換、産地形成を通じた産地収益力の強化に係るものでございまして、施策(ウ)、水田の汎用化や畑地化を推進し、高収益作物への転換や輸出の促進を進めることについてでございます。

  こちらのKPIは、基盤整備完了地区において高収益作物の生産額が一定程度増加している地区の割合が8割以上という目標に対しまして、現時点で52%でございます。

  また、活動指標の高収益作物の作付面積の増加率につきましても、15%以上という目標に対して6%という状況でございます。こちらにつきましては、調査結果が事業完了翌年度のみを対象としておりまして、完了後すぐの高収益作物の導入が難しい面もございますので、今後、複数年にわたってフォローアップするなどの工夫をしながら、基盤整備完了地区での高収益作物の導入状況を確認してまいりたいと考えております。

  また、基盤整備着手地区において事業実施前後で高収益作物の生産額が一定程度増加している地区の割合は目標を達成しておりまして、また、耕地利用率につきましても、少々足りてはおりませんが、一定程度の成果は上がっていると考えております。引き続き水田の汎用化、畑地化のための基盤整備を進めてまいりたいと考えております。

  次に、18ページを御覧ください。

  政策課題1に関する事業量を一覧で取りまとめております。

  水田の大区画化につきましては3.8万ヘクタールという目標ですが、5年間で割りますと年に0.7万ヘクタールとなります。こちらは実績が令和3年度までしか取れておりませんが、令和3年度の実績は0.6万ヘクタールでございます。水田の汎用化につきましては、8.8万ヘクタールという目標を同様に5年で割りまして、1年では1.8万ヘクタールという目安に対しまして0.9万ヘクタールとなっております。

  一方で、畑地の区画整理・排水改良あるいは畑地かんがいにつきましては、目標を上回る事業実績となっております。

  この点につきましては、水田の汎用化の要望よりも、むしろ畑地の要望量が増えたのではないかと推測しております。

  また、地域による農地・農業用水等の保全管理面積につきましても目標に達しておりませんが、こちらは、新たに取組を開始する地域がある一方で、継続を断念する地域もあるということで、引き続き、活動の継続に向けた組織の体制強化を図りつつ推進してまいりたいと考えております。

  続きまして、19ページを御覧ください。

  こちらから、政策課題2でございます。

  多様な人が住み続けられる農村の振興のうち、政策目標3、所得や雇用機会の確保等についての中で、施策(エ)中山間地域等の特色を活かした基盤整備と生産・販売等施設の一体的推進、施設等の整備を通じた省力化により多様な働き方を実現する農村の働き方改革の推進でございます。

  この施策(エ)につきましてはKPIが設定されておりませんで、事例を紹介させていただいております。これにつきましては、土地改良長期計画というものが土地改良事業を通じて達成するものでありまして、販売施設等の土地改良事業以外によるところが大きいということで、指標の設定がなかなか難しい部分があったと認識しております。そういう意味で、今回ここでは地区事例ということで、2地区を挙げさせていただいております。

  次に、20ページを御覧ください。

  施策(オ)、農業集落排水施設の省エネルギー化、集落道の強靱化、農村の生活インフラの確保等により、田園回帰や関係人口の創出・拡大の促進となっております。

  こちらのKPIにつきましては、小水力発電等再生可能エネルギーによる発電電力量の割合が4割以上、R5年度までの進捗目安が36%という目標に対して、32%になっております。事業量は約4,000万キロワット/アワー、R5年度の目安値2,400万キロワット/アワーという目標に対しまして、1,600万キロワット/アワーに止まっている状況でございます。こちらにつきましては、目標値がエネルギー基本計画などを基に意欲的に設定されているということもありますが、引き続き新規の案件の形成、更新事業の整備に係る事例集の作成、あるいは研修、周知といったことを進めてまいりたいと考えております。

  なお、農道橋でありますとか農道トンネルあるいは汚水処理施設といった指標につきましては、目標を達成しておりまして、こちらについては引き続き整備を進めてまいりたいと考えております。

  次に、21ページを御覧ください。

  施策(カ)農業・農村を支える土地改良区等の多様な人材の参画による組織運営体制の強化でございます。

  KPIにつきましては、地域による農地・農業用水等の保全管理が実施される農地のうち、持続的な広域体制の下で保全管理される割合が6割以上という目標に対しまして、R5年度までの実績で49%となっております。

  更に多様な人材の参画率、保全管理への参加者数も目標値に達していない状況になっております。

  これらにつきましては、令和7年度から活動組織の広域化に関しまして多面的機能支払の中でも加算措置を設けるような事業制度を要求しておりますので、そうした制度も活用しながら、更に組織の体制強化を進めてまいりたいと考えております。

  また、土地改良区の理事に占める女性の割合について、こちらも10%以上という目標に対して1.4%という現状になっております。これにつきましては、今後予定しております土地改良法改正の中でも、理事の選任に当たって年齢及び性別に著しい隔たりがないよう配慮する旨の規定を設けることにしておりますが、現場の声もしっかりと聞きながら、引き続き取組を進めてまいりたいと考えております。

  続いて、22ページを御覧ください。

  政策課題3、農業・農村の強靱化の政策目標4、頻発化・激甚化する災害に対応した排水施設整備・ため池対策や流域治水の取組等による農業・農村の強靱化に係ります施策(キ)、防災重点農業用ため池に関する項目でございます。

  KPIにつきましては、防災重点農業用ため池の防災対策着手の割合を8割以上という目標に対しまして、現状79%ですので、一定程度順調に進んでいるという認識でございます。

  活動指標のハザードマップや事業量につきましても順調に進んでいると考えておりますので、こちらは引き続き、ため池工事特措法等も踏まえながら、対策をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

  続きまして、23ページを御覧ください。

  施策(ク)農業水利施設の耐震対策、排水機場の整備・改修及び既存ダムの洪水調節機能強化、水田の活用(田んぼダム)による流域治水の推進でございます。

  KPIで位置付けました田んぼダムの取組につきましては、R2年度の取組面積4万ヘクタールの3倍以上という目標に対しまして、現在2.2倍でございまして、達成可能なペースで進んでいるという認識でございます。

  そのほかの活動指標であります国営造成施設の耐震対策あるいは湛水被害等の防止といった面につきましても、目標値を上回るような取組の進捗状況でございますので、こちらも引き続き着実に推進してまいりたいということでございます。

  最後、24ページを御覧ください。

  政策目標5、ICTなどの新技術を活用した農業水利施設の戦略的保全管理と柔軟な水管理の推進の施策(ケ)、ロボットやICT等も活用した施設の計画的かつ効率的な補修・更新等による戦略的な保全管理の徹底等についてでございます。

  KPIでございます更新が早期に必要と判明している基幹的農業水利施設における対策着手の割合や、更新事業の着手地区においてストックの適正化等により維持管理費を節減する地区の割合につきましては、目標達成に向けて順調に進んでいるという認識でございますので、引き続きしっかりと対策を進めてまいりたいと考えております。

  資料3についての説明は以上になります。よろしくお願いいたします。

西村部会長  ありがとうございました。

  事前にお伝えしていたと思いますが、本日の会議で一番二番に重要な資料3と資料4については、各委員の皆様から御質問、御意見を頂くことにしたいと思います。ついては今、説明を頂いた資料3について名簿順に御質問なり御意見を頂きたいと思います。

  最初が、井上委員。ウェブですね。

井上委員  井上です。

  資料3の御作成と御説明、ありがとうございます。非常に分かりやすくまとめられていまして、感謝申し上げます。

  まず、資料3においてもKPI管理が非常に分かりやすく、数値から課題が顕在化していることは今後の計画に役立つものかと感じました。ですので、今後も令和7年まで実施していくかと思うんですけれども、このように数値によってひもといていくことが当たり前となっていくように、そんな施策であることを望みます。

  生産者として感じたことを1点申し上げさせていただきます。

  17ページ、政策課題1、生産基盤の強化による農業の成長産業化の赤枠にございます、基盤整備完了地区においての高収益作物の増加についてです。

  目標8割以上に対して実績52%の進捗であると示されておりますが、先ほど御説明にもありましたけれども、整備後の翌年1年における調査による実績数値ということでしたので、引き続きの調査をお願いできればと思います。というのも、これを仮にお米から野菜への転換と考えた場合には、1年で実績を出すことは非常に難しいと考えております。取り組む作物、仮にこの写真に示されております玉ねぎだった場合、排水性もそうですけれども、何より土壌改良というポイントにおいては非常に時間を要すると考えております。土壌改良によってお米から玉ねぎに転作をかけた場合に出来高は非常に大きく変わると思っておりますし、1年で実績を出す場合には52%という数字になってくるかと思うんですけれども、造成3年後ぐらいですかね、およそ土壌改良が終わって3年後の調査では、恐らく52%という数字は大幅に上がるのではないかと予想しております。

  成長産業化を見越した産地形成と収益力強化というこの施策に賛成ですし、この優良なモデルを他産地へ示すことが本政策での成果を生むことと感じております。ですので、少しネガティブに捉えられてしまいがちなこの少ない数値を、もう少し作目であったり環境であったり土壌改良という観点において、複数年において調査を行って、きちんとこの結果が占めせる、そういった数値を当て込んでいくことも考慮していただければと思います。

  発言は以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  すみません、申し遅れました。時間が短くて恐縮ですけれども、本日は議題が多いので、コメントはできれば2分をめどにお願いできればと思います。

  続きまして山波委員。こちらもウェブで御参加だと思いますが、お願いできますでしょうか。

山波委員  山波です。本日もよろしくお願いします。

  今ほどは本当に丁寧な資料と丁寧な御説明、ありがとうございました。

  私も全く同じで申し訳ないんですけれども、一生産者という立場でこの基盤整備、土地改良計画に沿って土地改良してきた中で、一つには、この政策課題1、政策目標2の基盤整備の完了地区においての高収益作物の生産額が一定程度増加している地区の割合、ここを非常に注目しているところであります。

  目標が8割ですけれども、実績では52%。ただ、ここにはちょっと見えていない部分があるということですが、私、新潟県で農業をしている中で言いますと、米を主体とする産地ですと、実際、基盤整備後に高収益作物への転換がどこまで進んでいるかということで言いますと、なかなか思うように面積も販売額も進んでいないのではないかというのが肌感覚であります。ですので今後はこれを基に、こういう数値をきちんと出してくださっているわけですから、またこれから事業を進めていく上で、どのようにしたらこの目標が達成できるのかを米が主産地のところにもきちんと当てはめていただいて、御検討いただければいいのかなと考えております。

  私からは、以上です。

西村部会長  ありがとうございました。

  では、会場で御出席の北室委員、お願いできますか。

北室臨時委員  北海道から参りました北室と申します。

  ただいまは御説明ありがとうございました。

  私は北海道で、新規事業着工検討委員会でいろいろな水利施設の応急処置についての討議などさせていただいてきたのですが、近年、老朽化で緊急に処置が必要になってから審議が始まるようなことを目の当たりにして、もっと迅速にそういった対応がされるべきではないかとひしひしと感じてまいりました。

  ただいまの御説明ですと、水利施設に対しての御対応はかなり進んでいるということで安心しつつも、更に進めていただきたい。また、北海道でも大変雨量が多くなって、そういったところがかなり喫緊の課題になっていることをすごく感じております。

  それから、政策課題2、多様な人が住み続けられる農村の振興のところで、土地改良区の女性理事の割合が1.4%と大変少ないと。農村の女性の方々とお話ししていると、例えばトイレの水洗一つ取っても、農泊とか半農半Xとか、都市若者がいらして交流するといったときでも、最初のトイレが水洗ではないだけでもうアウトみたいな気持ちになってしまって、せっかく農泊に来てくださった家族がすぐに帰ってしまうみたいな悲しいことも女性からよく聞きますので、そういった点で、やはり地域を支える土地改良区の理事に女性がもっと増えてほしいなと非常に感じました。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございました。

  続きまして久保田委員、お願いできますか。

久保田臨時委員  熊本県土地改良連合会常務理事、久保田でございます。今日が初出席でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

  私からは2点、1点目は、先ほど井上委員がおっしゃった事業効果。事業完了の翌年度での効果については、やはり多種多様、今後のいわゆる高収益作物の導入も考えますと、少し効果の年度を御検討いただいた方がいいのではないかと思ってございます。

  2点目、資料22ページ、防災重点ため池の着手率、KPIでございます。

  土地改良施設の1施設のみで、議員立法によってこういった法律ができるのは非常に画期的なことで、我々も現場としてしっかり取り組んでいかなければならないと思ってございます。目標8割でほぼ達成ということで、着手率、これから本格的な整備ということですけれども、この数値を次の長期計画にどういかしていくかというところで、やはり現場では、しっかり整備工事に着手したという感覚はまだそれほどございませんので、これをどう推進につなげるかについては現場としても少し工夫していかなければならないという印象を持ったところでございます。

  以上でございます。

西村部会長  ありがとうございます。

  続きまして河野委員、お願いできますでしょうか。

河野臨時委員  消費者団体から参加しております河野でございます。

  御説明ありがとうございました。

  これまで取り組んできた計画の評価ですけれども、しっかりとKPIを設定してくださって、私のような消費者にも全体概要が確認できる資料だと思っております。ただ、国の施策というのは北海道から沖縄まで全国を見通した形で下りていっているわけですけれども、恐らくその現場、現場で、KPIにまとめられた数字の裏側に現場からの声、現場の真の状況が実はあると推測しております。今後、地方懇談会等も開かれると思いますけれども、このように全体概要としてまとめられた数字の裏側にある本当に現場で御苦労されている農業者の皆様の実態ですとか、それをその地域で応援してくださっている、自治体の農業に関わってくださっている関係者の皆様の生の声等を次期計画にはしっかりと反映していただければと思ったところです。私は消費者として食べさせていただいている立場ですし、昨今の気候変動等を考えますと、本当に我が国の農業、本腰を入れて更に応援していかなければいけないという思いを強く持っております。

  私からは、以上でございます。

西村部会長  ありがとうございます。

  ウェブの清水委員、お願いできますでしょうか。

清水臨時委員  ありがとうございます。

  今回頂いた資料は、授業でもすぐ使えそうなぐらい本当にまとまっていて、有り難く拝見しました。ただ、これまでの土地改良長期計画の変遷を改めて見てみますと、当たり前ですけれども、毎回見直しの度に新しい視点あるいはそのときの時事的に必要な解決すべき課題に取り組んでこられた。でも、実は今もなお、全くと言ってはいけませんけれども、解決できていないまま、名前だけというか表現だけ変えているような、切り口を変えてと言えばいいとは思うんですけれども、解決できていないことを認識しなければいけない課題もあると思うんです。例えば今回、KPIが設定しにくくて設定されていない政策課題2、多様な人が住み続けられる農村の振興において、平らに言うと本当にいろいろな、非農家、あるいは土地持ち非農家だったり、農家ではない方、住んでいるけれども農地も持っていないような人、あるいは高齢で人に農地を貸してしまったけれども御意見番みたいな方、あるいは新規に移住されてきた方などなど様々な方に地域の農地あるいは農業水利施設等の管理に参加していただくことを望ましい形としているとは思うんですけれども、この課題は随分前、平成24年度からの土地改良長期計画の中でもたしか扱われていた問題だと思います。ここにはちゃんと数字が出てこないんですけれども。それが今もなお課題として挙げられているということは、そこに構造的な問題があるのではないか。その構造を変えていくことも必要ではないか、そろそろそういう時期に来ているのではないかと思います。 その中で私が常々思うのは、土地改良区という組織が、果たしてこれから農業農村整備において担い手となり得るか。今のままの組織としてあり続けられるかは課題なのではないかという気がいたします。広い農地を持っていらっしゃる水田中心の地域では、土地改良区というのは本当に確固たる組織だと思うんですけれども、私が現在いる丹波篠山のような小さい農家さん、そしてどんどん離農するような方が出てきて、その一方で新規就農の方がいらっしゃるようなところでは、土地改良区は余りメジャーではなくて、おじいちゃんたちの集まりみたいな感じで、地域の中で声が大きくないです。土地改良区は、地域の担い手となるにはちょっと難しい組織になってきています。そのあたりも踏まえて、これからの新しい農村の担い手について、様々な議論が出ているところですので、改めて土地改良長期計画の中でも受け入れていかなければいけないのではないかと思っています。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございました。

  今、半数ぐらいの委員に意見を頂きましたが、事務局から何かありましたら。

中西計画調整室長 

  各委員から御意見を頂きました。特に井上委員、山波委員、久保田委員から、高収益作物の導入の関係で御意見を頂きました。正に御指摘のとおり、やはり土壌改良等、時間が掛かる部分もございます。加えて、営農を転換していくということで、周りの営農の指導ですとかJAとの協力ですとか、そういったことも複合的に進めていかなければ、高収益作物への転換もなかなかすぐには進まないと思っております。こうした点も今後、関係部局としっかり連携を取りながら進めていきたいと思いますし、フォローアップにつきましても引き続き調査していければと考えております。

  北室委員からは、施設の老朽化が進んでいるという話でございました。これにつきましては、この後、説明させていただきます資料4になりますけれども、今回改正します土地改良法の中でもいろいろと工夫していきたいと思っておりますし、引き続きしっかりと老朽化対策を進めてまいりたいと思っております。

  女性理事の割合につきましても、各地でいろいろ意見交換しながら進めているとことですが、これにつきましても引き続き取組を強化していきたいと思っております。

  久保田委員からは、防災重点ため池の件がございました。今回、我々で「着手」という言葉が「調査への着手」ということで、現場で工事の着手にまではなかなかいっていない、そのとおりの部分があろうかと思います。次の計画では、調査というより工事にシフトしていくような形で内容を検討していきたいと考えております。

  河野委員からは、現場、現場でいろいろと違いがございますということで御意見を頂きました。正にそのとおりだと思います。今後の意見交換の場でもやはりそうした生の声を酌み取って、少しでも次の土地改良長期計画に反映できるように、是非委員の皆様も地方での意見交換のときに積極的に御意見を引き出していただければ有り難いと思っております。

  清水委員からは、非農家の関係ですとか、土地改良区という組織がというお話もございました。これも後で説明させていただきますが、そうした土地改良区の体制等を今後どうしていくかといったことも、次の土地改良法の改正の中で打ち出していくことを考えておりますので、そうしたところも含めて後ほど御説明させていただきたいとと思います。

  また、非農家の方の取込みですとかこうしたことは、やはり多面的機能支払交付金の活動ですとかこうしたことを続けてとやっていくということで、先ほど説明の中でも触れさせていただきましたが、やはり活動継続が困難になっているような地域もございますので、そうした地域がなるべく発生しないような形を、広域的な取組ですとかそうした形でフォローしていくことが必要なと思った次第でございます。

  私からは、以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  では、また委員からの御意見に戻りたいと思います。

  次はウェブで御参加の長谷川委員、お願いできますでしょうか。

長谷川臨時委員  よろしくお願いします。

  丁寧な御説明ありがとうございました。KPIにしても活動指標にしても、非常に分かりやすい形で進捗状況を示していただいたと思っています。

  政策課題1・2・3とありますけれども、特に政策課題3、農業・農村の強靱化については、いろいろな指標がかなり順調に進んでいるようです。今、これだけ気候変動も激しいし、農業に限らず、地域全体で防災とか減災も含めて対策を取っていく中で、非常にいいことだと思います。次の長期計画においても着実な進展を図れれば、と思います。

  一つお尋ねします。18ページの水田の汎用化について、目安値では1.8万ヘクタールのところが0.9万ヘクタールとちょっと低調です。先ほど畑地の汎用化の関連でお話がありましたけれども、説明資料を見ると「目標設定時と比べ資材価格等が高騰したことや」ということで、資材価格の高騰について触れられています。

  公共事業全てにおいてだと思いますが、例えば資材価格の高騰、あるいは今、人手不足も深刻なので、人的なコストの上昇などもあって事業の遂行に影響してくるケースも出ていると思います。その点で、土地改良の基盤整備事業についてはどういう状況なのかを伺います。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  今、質問がありましたけれども、後でまとめてお願いしたいと思います。

  続きまして会場で御参加の藤原委員、お願いいたします。

藤原臨時委員  藤原です。御説明ありがとうございます。

  コメントと感想と質問を混ぜてお話しさせていただきます。

  まず、15ページで説明された法人の数ですけれども、これは確かに説明されたように、私自身も数ではなく農地面積というか、そういうものが増えているか、確保できているかどうかという点で評価していくのがいいのではと思いました。

  それから16ページ、「多面的機能支払交付金の推進を通じて、担い手への農地の集積を後押ししていく」に関して,これは確かにそういうこともあるのかなと思って聞いていたんですけれども、目標値が10割になっているので、そんなに高く設定する必要があるのかなという気がしました。

  それから18ページで、水田の汎用化のところが目標値に達していないということでしたけれども、これも一年一年の目標に対してどこまで追従しているかよりも、事業が完了した後にまとめて検討すればいいのではと思います。先ほどの御説明では水田の汎用化に対して余り要望がなかったということで、畑地かんがいの方にシフトしたとのことでしたが、目標値を決める際にそういう要望等も考慮しているのではないかと思われるのですが,KPIの目標値の立て方の御説明を頂ければと思います。水田の汎用化は、さらに進めていかなければいけないのではないかと私も思っていますので、気になるところです。

  次は単なる感想ですけれども、3番目の政策課題である農業・農村の強靱化。これはKPIの達成がかなりよくて、先ほどの説明だと調査の着手も含むというお話でしたけれども、やはり災害とか防災とか、そういう面では進めやすいというか、一般市民の皆さんの理解も得やすいので進んでいるのかなと思いました。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  続いて牧委員、お願いいたします。

牧臨時委員  御説明ありがとうございました。

  現場で農業水利施設を維持管理している土地改良区が全国に4,200あって、その方たちが日々一生懸命頑張ってやってくださっているのですが、やはりその方たちに続けて頑張ってもらわない限り、その仕事が行政にかかってくることになるとすると、やはり団体の体制強化ですとか機能強化の取組を引き続きやっていくことはすごく大事なことだと思います。

  21ページの理事に占める女性の割合が1.4%、これが非常に低いというお話が出ました。ただ、これは0.6%でずっと来ていたものが、農林水産省がこの取組を始めて、一挙に倍以上の1.4%に上がりました。それまでの0.6%というのは、理事を順番でやっているようなところでたまたま女性がなったみたいなことだったのですが、それが員外理事制度を活用してまで皆さんに頑張っていただいて、全土連の調べですけれども、今は1.9%。以前264人だったのが今、全国で810人です。これは会員の土地改良区だけの調べですけれども、かなり上がってきて、確実に体制強化へと、一石を投じた形になっています。

  私も土地改良区に伺って「皆さん、地域に応援団をつくりましょう。財務省に行っても、男性だけで行くのと女性が行って自分の口で要望するのとでは全然違いますよ」というような話をして、理事長さんにもその気になっていただいて、今、どんどん進めていただいている取組です。引き続きフォローアップまで考えていただけるということで、非常に有り難く感じております。進めるべき施策だと思います。

  もう一点、高収益作物の導入ということで進めていただいているのは経営改善の面でも非常にいいことだと思いますが、それと併せて、水田を今後、水田として利用していく。例えば備蓄米、輸出米、米粉を生産する、こういう形であれば本当にストレスなしに、今までどおりできるんですね。

畑地化も大事かもしれませんが、今まで培ってきた水利システムや保全管理システムの継続ですね、そこをしっかりと将来に引き継いでいけるよう、そんな意味も含めて水田営農をこれからも発展的に維持するようなことを入れられないかなと思いました。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  多分、資料4で関連した話が出てくるのかなと思います。食糧安全保障などで。

  続きましてウェブで御参加の松下委員、お願いできますでしょうか。

松下臨時委員  松下です。よろしくお願いします。

  私からは、質問というより感想に近いんですけれども、KPIを幾つも見せていただいて、おおむね達成できているのかなという感想がありました。ただ、KPIというのは達成することも大事だとは思いますけれども、河野委員がおっしゃっていたかもしれませんけれども、その後ろにある情報等がKPIだけでは分からないところがあって、このKPIを達成することでそもそもの政策目標、若しくは施策にどういった貢献があるのかを今後の長期計画では検討していく必要があるのかなと思います。

  具体的には、例えば23ページですか、田んぼダムに取り組む水田の面積が3倍以上を目標にして、R5年度で2.2倍と書いてあります。これはあくまで面積は増えてきているかもしれませんけれども、実際にこういった田んぼダムが必要というか、災害防止機能が必要とされているところでどれぐらい田んぼダムが進んでいるのか、1か所に集中しているのかちゃんと全国に広がっているのか、必要とされているところとこの数字がちゃんとマッチしているのか、そういった検証はちゃんとしていかないと、数字だけ達成して「よかったよかった」にならないように気を付けていただきたいと思っています。

  また、多くの委員からも指摘があったと思いますけれども、17ページですね。整備完了地区において実績値が52%で、完了間もないタイミングで評価するとこれぐらいになってしまうかもしれないということなんですけれども、これが二年三年とたつと順調に増えていくのか、そうでないのか、そういった分析等々も踏まえて、こういった情報を使ってどういった土地改良長期計画を組んでいくのかという参考情報になるように、しっかりと有益に使っていってほしいというのが私の感想です。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  続きまして会場で御参加の松田委員、お願いいたします。

松田臨時委員  秋田県美郷町長の松田です。

  KPIの目標に対して、未達の項目もありますけれども、全体としておおむね達成しているのではないかということで、感謝と敬意を表したいと思います。

  土地改良事業は私ども自治体も負担がありますので、当該年度の土地改良関連負担がどの程度かということで、取組が順調にいっているかどうかというバロメーターの一つになるんですけれども、私どもの町の状況だけしか知りませんが、順調に展開されているなと思います。

  その順調な展開を支えているのは言うまでもなく予算でありますので、どうか今後とも土地改良事業の予算につきましては、現場が欲する内容を展開できるような予算を引き続き確保していただきますようにお願いいたします。感想に近い要望、要望に近い感想です。

  もう一つ、各KPIについて、これは全国集めてこの目標、また実績であろうと思います。特に未達の部分については、先ほど河野委員や松下委員がおっしゃったように裏にあるもの、あるいはその原因となるものがあるかと思うんですけれども、そうしたことを把握、分析する意味でも、日本は広うございますので、例えば西日本、東日本、あるいは地帯区分で平場、中山間、山間、あるいは積雪地、非積雪地といった区分けの中でそれぞれのKPIの達成状況がどうか比較できるとするならば、その地帯区分の農村がどういう部分が弱くてどういう部分が強いのかといった地域の特色が分かるような気もいたします。そうした際、KPIが未達の部分で底上げを図るためには、先ほど言ったKPIの実績の裏にあるものの実例が分かると力の入れようもあるのかなというのが感想です。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  では松本委員、お願いいたします。

松本臨時委員  ご丁寧な御説明を頂き、ありがとうございました。

  施策課題2の21ページ、土地改良区の理事に占める女性の割合についてですが、10%の目標に対し1.4%に留まっております。長崎県男女共同参画推進委員を10年以上参画してきた立場から、意見を述べさせていただきます。

  多様な意見を取り入れるには、10%では足りないと思います。意見が通るためには世界基準で30%が必要とされていますし、そのためには少なくとも20%は必要ではないかと考えられます。10%というのは「取りあえず1人は女性を入れておこう」という感じがし、女性の意見の反映は難しい気がします。なぜなら、意見を述べても「いいよ」「いいよ」と複数の人が賛同してくれる方がいないと意見が通らないことが多いからです。例えば10人の委員会で1人がいい意見を述べたとしても、賛同する人がいなければ、少数の特殊意見となって沈没してしまいます。私の経験でも、女性の意見を自身のことと捉え、理解し、賛同してくれるのはやはり同じ経験を積んできた女性でした。

  今まで男性が優位だった農業の世界、しかし本来は性別の区別ではなく、それぞれ個人として持つ能力をいかし、その能力を発揮することによって伸びていくのが農業の世界だと思っております。昔よく言われていたのが「自分の息子には農業をしてくれる嫁が欲しいが、自分の娘は農家には嫁がせたくない」という言葉でした。ただただ働くだけを要求され、農業経営には発言権もない農家の女性の本音であったと思います。現在では、経営パートナーとして主体的に経営にも関与する女性が多くなり、農業に生きがいを感じ、楽しむ人も増えており、その言葉は死語となっております。

  10月に土地改良区の女性理事の集いが開催され、ここにいらっしゃいます土地改良広報センター所長の牧様が会全体をしなやかに、的確に、やさしさで包み込み集いの場を仕切られているお姿を拝見し、女性としての憧れを私をはじめ皆さん持たれていました。素敵なリーダーが現れますと、その人がロールモデルとなり、目標達成はできると思います。

  基盤整備を行ったほ場も作業効率がよくなり、頑強な人のみがする農業ではなく、体の不自由な人や高齢者、女性も無理なくできるようにするためには、例えばほ場のどこかに休憩の場を確保するなど、新たに人にやさしい視点等も必要な気がします。このような新たな視点は今までと違った人材、すなわち女性を登用することが必要ですので、10%も達成しておりませんが、新たな視点で土地改良を目指すには、目標を上げることも必要ではないかと考えます。

  私からは、以上です。ありがとうございました。

西村部会長  ありがとうございました。

  私も一つ質問させていただいていいですか。

  事業が完了した後に想定ほど営農法人が増えないという話が先ほどあったんですけれども、今のところここには特段の理由が見られているのかというあたりをお伺いしたいと思います。

  それは、例えば想定以上に大きな規模になったので数としては増えないのか、それとも地域、地域で営農法人を維持するだけの中核的な人が見つからないのか、法人にしてしまうと逆に負担も大きくなってくるので、法人にしないままの方がいいという選択をされているのか、いろいろな理由が考えられると思いますけれども、「特段こういう傾向がある」ということがもしあれば、先々の話と関連して、御教示願えればと思います。

  後半の委員の御意見、御質問に対して事務局からお願いいたします。

中西計画調整室長 

  長谷川委員から、資材価格の高騰ですとか人手不足ということ、ございました。土地改良事業に関しても確実に資材価格の高騰、人手不足がございます。これを解消していくには、これは松田委員のコメントにもありましたが、予算をしっかり確保していくことがこの解決法として最も重要なところだと思っております。

  そのためには、先ほど各委員からも御指摘がありましたけれども、指標を達成すること以上に、やはり出ている効果をいかに訴えて、それを予算獲得に結び付けていくかといった認識を、我々としてもより深めていかなければいけないと思ったところでございます。

  藤原委員から、法人数とか多面的機能支払交付金といった指標についてのコメントを頂きました。こちら参考にさせていただきたいと思います。

  KPIの立て方につきましては、やはり過去の実績も踏まえながら、これから目指すべき方向性といったもの、両方を併せて将来のKPIをつくっていくものだと思っていますので、そうしたところで、将来目指すべき方向と現場の実態が合ってくるものと、なかなか合わなかったという部分があったのかなと思っています。

  牧委員、松本委員から、女性の理事の件で御発言を頂きました。特に牧委員から、今回この指標が現場で一石を投じた形になっているというコメントを頂きまして、我々としてもこれは大変力強いコメントだと思います。一方で、これから伸ばしていくには、この取組は今、緒に就いたところで少しずつ加速がかかってきたと思いますので、これを、松本委員は20%と言われていましたけれども、まずは10%を目指してしっかりと取組を進めてまいりたいと考えております。

  松下委員からは、施策への貢献度について、これも先ほどの繰り返しになりますが、やはり効果というものをしっかりと出していかなければいけないという視点、そのとおりだと思っておりますので、これにつきましては今後どのような形で出せるのか、引き続き検討してまいりたいと考えております。

  松田委員からは、地方の区分ごというコメントもありました。データがどこまで分析できるかということはあるんですけれども、そうした観点も持ちながら検討を進めていきたいと思っております。

  最後、部会長から、法人数が増えないということ、これは部会長の御指摘もありましたけれども、様々な要因があろうかと思います。一つの法人にその地域でその農地が全部集まってしまって、結局数は増えないけれども面積は広がっているとか、あるいは事業を契機に複数の法人がまとまってしまおうという動きもございます。ですので地域、地域で法人数が増えなかった理由は様々あるのかと思っています。

  ただ、一方で、やはり今後、法人が中心になってやっていくような形態になっていくと思いますので、これは藤原委員からもありましたけれども、法人の数ではなく面積という面も含めて集約を進めていくことが重要だと思っておりますので、そちらもしっかりとやってまいりたいと考えております。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございました。

  すみません、一つ失念しておりましたが、本日欠席の委員からもし事前に意見の提出がありましたら、事務局から御紹介をお願いできればと思いますが。

中西計画調整室長  本日欠席の木下委員から御意見を頂いております。

  「農業者以外の多様な人材を農村に呼び込むという方向性は、例えば今、取組が始まった「農山漁村」経済・生活環境創生プロジェクトなどの取組によって今後、活発になっていくことと考えています。ただし、農的交流人口を増やすこと自体が目的と考えるのではなく、それを手段としてどのような社会課題が解決できるかといったことをしっかりと吟味していくことが大切であると考えております」という御意見を頂いております。御紹介させていただきます。

西村部会長  ありがとうございました。

  今の事務局からの回答に対して何か追加でありましたと思いますが、何かございますか。よろしいですか。

  では、次に、議事(4)改正基本法等を踏まえた今後の農業農村整備の展開方向について、まずは事務局から説明をお願いしたいと思います。

中西計画調整室長  では、資料4につきまして御説明させていただきます。

  改正基本法等を踏まえた今後の農業農村整備の展開方向についてでございます。

  基本的に、前半は今回、今後の展開を御検討いただく背景の情報となりますので、説明は適宜割愛させていただきながら、後半を重点的に御説明させていただければと思っております。

  まず2ページは、農地と水を開いてきた土地改良の歴史といったことで書かせていただいておりまして、右の方に現在の農地あるいは水ということで、基幹的農業水利施設等の整備量をまとめさせていただいております。

  次に、3ページになります。

  こちらは戦後の土地改良事業の変遷でございます。特に、平成29年以降、土地改良法の改正も累次行われてきておりまして、その内容について記載させていただいております。

  次に、4ページでございます。

  こちらは農業生産の基礎的構成要素と土地改良事業ということで記載しておりまして、土地改良事業が、農業資源であります良好な営農条件を備えた農地あるいは農業用水等を次世代へ継承していく施策であるといったことを書かせていただいております。

  続きまして5ページ、土地改良事業の概要でございます。

  具体的な事業、例えば工事を伴う整備事業でございますとか造成された施設を管理していく管理事業といったものがございますということを書かせていただいております。

  6ページからは、土地改良事業の効果について順次記載させていただいております。

  まず一つ目の効果としまして、農業生産性向上のうち労働時間の低減でございます。基盤整備、特に大区画化に取り組むと、1ヘクタールを超えれば面積当たりの労働時間が平均に比べて6割程度減るといったことをデータで示させていただいております。

  次に7ページ、農業生産性向上効果のうち、担い手への農地の集積、集約についてでございます。

  アンケート調査によりまして、やはり分散、未整備の農地であることを担い手農家の多くが農地を受け入れられない理由として挙げておりまして、土地改良事業はそれを解決する有効な手段であるということで示させていただいております。

  8ページは、収益力の向上についてです。

  農地整備事業完了地区におきまして、実施前と実施後を比べて平均で農業生産額が1.2倍となっているといったことを、地区事例と併せて御紹介させていただいております。

  次に、9ページは、耕地利用率の向上についてでございます。

  排水改良等により作付品目の選択自由度が拡大し、耕地利用率が向上しているということで、基盤整備完了地区の状況をデータと共に記載させていただいております。

  続きまして10ページ、基盤整備を契機とした輸出の関係でございます。

  北海道の地区事例になりますけれども、基盤整備を契機としまして認証制度の取得、あるいは更なる販路拡大といったことに取り組みまして、米の輸出を伸ばしているという地区事例になります。今後も輸出先の国数や、輸出量を増やしていくという意欲的な計画を持たれている地域でございます。

  次に11ページ、土地利用の秩序化や荒廃農地の解消でございます。

  基盤整備を契機としまして、まずはまとまった優良農地を確保するということがございますけれども、道路用地等の創出のような形でも貢献しているということでございます。また、整備率の高い市町村については荒廃農地の発生が低いといったこともグラフで示させていただいております。

  12ページには持続的な農業生産ということで、化学肥料や農薬の使用料を低減したり、メタン発生を抑えるといった栽培体系を確立する中でも、やはり基盤整備を行っていることでやれる手法が様々あるということを総論で書かせていただいています。

  次に13ページ、農業排水の整備による効果でございます。

  排水状況の改善によりまして機械化営農の展開でありますとか、やはり農業用排水施設の整備が地域の湛水被害の抑制に貢献しているといったことについて、新潟県を事例として紹介させていただいております。

  続きまして14ページ、地域の防災・減災力の強化についてです。

  流域治水に関しましては、例えば田んぼダムの取組を進めることによって流出のピークカットを図る、更には農業用ダムの事前放流を行い洪水の調節容量を確保するといった取組の内容を記載させていただいております。

  続きまして、15ページは農業用水の多面的機能についてでございます。

  農業用水、かんがいに使われる以外にも、環境用水でありますとか防火用水、消流雪用水といった地域用水としての多様な機能を発揮しているという内容でございます。

  続いて16ページは、地域活性化のうち農村コミュニティ機能の維持向上についてでございます。

  右のグラフでは、特に多面的機能支払のカバー率が高いほど集落内の寄り合いの回数が多いというデータを記載させていただいております。

  17ページも地域活性化ということで、6次産業化との連携という項目です。

  こちらは富山県の地区事例を紹介させていただいていますが、基盤整備を契機にエゴマに着目しまして、加工、流通といった体制を強化しまして生産額の向上につなげている事例でございます。

  続きまして18ページ、地域活性化のうち人口増と児童数の増でございます。

  基盤整備を実施したことで地域の農業所得が増加し、新規就労者を含む後継者が育成されたことを通じまして、地域の学校の児童数が増加したという事例を書かせていただいております。

  以上が土地改良事業の様々な効果についての説明となります。

  続きまして19ページからは、今回、土地改良長期計画を改定する背景であります食料・農業・農村基本法改正の内容を書かせていただいております。

  20ページから22ページは、改正の柱の一つ目である食料安全保障の抜本的な強化についてでございまして、20ページには、我が国が小麦、とうもろこし等の食料、あるいは肥料原料を海外に大きく依存しているといったこと、21ページには平時から想定される輸入リスクということで、過去においては日本が世界全体の4割程度の輸入を占めていたんですが、今、それが中国に取って代わられて、もはやプライスメーカーではなくなりつつあるといったこと。22ページには、気候変動によりまして単収減少のリスクが世界的に発生しているといったことを書かせていただいております。

  これらを踏まえまして23ページ、今回の基本法の食料安全保障の抜本的な強化ということで基本理念と基本的な施策ということで整理させていただいます。黄色に着色したところは土地改良との関係性が深いという形で整理させていただいています。

  次に、24ページを御覧ください。

  二つ目の柱であります環境と調和のとれた産業への転換でございまして、農林水産分野の気候変動に対する影響を踏まえた上で、農業分野でもメタンといったものを中心に、削減に向けた取組をしっかりと進めていく必要があるということでございます。

  これを踏まえまして、25ページは基本法の中での位置付けを整理しております。

  基本理念としまして第3条、第4条に、農業施策の中では、環境負荷の低減に資するような生産方式を導入していくといったところに黄色のマーカーを付けさせていただいております。

  26ページから29ページは、人口減少下における農業生産の維持・発展に関してでございます。

  26ページでは、基幹的農業従事者数が大きく減少し、高齢化が進んでいるといった現状、更に将来的にもその減少が進んでいくのではないかといったデータを載せさせていただいています。

  27ページでは、新規就農者につきましても全体として減少傾向にあるということで、60歳以上の定年帰農者の数も今後、大幅な増加は期待できないといったことを書かせていただいています。

  28ページでは農地につきまして、田や畑の面積も減少傾向が続いているといったこと、29ページには、こうした厳しい状況も踏まえながらスマート農業技術の開発、あるいはスマート農業技術を活用、促進する上でのサービス事業体の育成が重要になっていくといったことを書かせていただいております。

  これらを踏まえまして、30ページですが、「農業の持続的な発展」という基本理念の中で望ましい農業構造の確立とか将来の農業生産が目指す方向性といったものをまとめておりまして、右に基本的施策を書いております。

  この中で3番目の、農地集積に加えて農地の集約化とか、あるいはその次の防災・減災、スマート農業、水田の畑地化も視野に入れた農業生産基盤の整備、老朽化への対応に向けた保全、この29条が土地改良の部分でございますが、それ以外にも6次産業化とか付加価値の向上といったことも盛り込まれております。

  続きまして31ページからは、人口減少下における農村の地域コミュニティの維持ということで、31ページには過疎地域における人口減の推移、32ページには農業集落の状況、特に総戸数が9戸以下の集落になりますと、様々な集落活動の実施率の低下が急激に始まるといったことを示させていただいております。

  33ページは、全くの農業用用排水施設の維持管理についてですが、こちらも、集落人口規模が減っていくとその保全管理に関する活動が低下していくことが分かるかと思います。

  これらを踏まえまして、34ページに、「農村の振興」ということで、地域社会の維持、生産条件の整備、生活環境の整備といったものが盛り込まれた今回の基本法の改正、そして右にそれを実際に行っていく上での農業施策として、多面的機能支払ですとか農村RMOの促進といったものが今回、盛り込まれている状況でございます。

  続きまして、35ページからは土地改良事業に関わる政府の主要な方針でございます。

  一つ目は、繰り返しになりますが、食料・農業・農村基本法の関係でございます。

  36ページに先ほどの全体像をまとめていますが、この中の29条が土地改良に関する部分ですので、その部分をもう少し掘り下げて御説明したいと思います。

  37ページでございます。

  上が改正前のもの、下が改正後のものとなっております。改正後のものを中心に、特にアンダーラインを引いたところを見ていただければと思います。

  まず「気候の変動その他の要因による災害の防止又は軽減を図ることにより」といった形で、防災・減災、国土強靱化といった概念を追加させていただいております。また、その次には「先端的な技術を活用した生産方式との適合に配慮しつつ」ということで、こちらは将来的なスマート農業の導入も見据えた農業生産の基盤をつくっていくといったこと、更に下の方に行きますと「水田の汎用化及び畑地化」といったことで、物理的に畑地にしてしまうといったことも一つのツールとして、地元の要望があれば取り組んでまいりたいといったこと。最後のところには、「基盤の整備及び保全に必要な施策を講ずるものとする」ということで、これまで「整備」という一言の中に保全も含まれていたわけですが、今回、維持管理等の概念を含む保全を外に抜き出して記載させていただいている、位置付けさせていただいていることが大きなポイントかと考えております。

  続きまして38ページは農林水産省全体の話で、上から2番目の赤枠の中に、土地改良法についても令和7年国会への法案提出を目指していく旨が書かれているという御紹介でございます。詳細は後々説明させていただきます。

  そして39ページは、二つ目の大きな背景となる国土強靱化の関係でございます。

  令和5年6月に国土強靱化基本法が改正されまして、その1か月後に基本計画も改定されております。その基本計画の中には、下の青枠にありますとおり、様々な農業農村整備関係の事業、防災関係の事業が位置付けられております。これにつきましては今、5か年対策ということで、補正予算等を使ってやってきたわけでございますが、次期中期計画も策定するようにこの中で法定化されておりますので、その次期中期計画の中にもしっかりと土地改良関係のものを盛り込むべく調整してまいりたいと考えているところでございます。

  続きまして40ページ、こちらは水循環基本計画ということで、能登半島地震を契機として前倒しで見直されたものでございます。

  左下に水色のところがありますけれども、例えば一つ目、安定した水供給の確保ということで水インフラの耐震化でありますとか、あるいは3番目、地球温暖化対策といったところで渇水対策などの適応策をしっかりやっていく、更には4番目、流域総合水管理というところであらゆる関係者が取り組んでいくといったことが書かれておりますので、こうしたものも踏まえながら次の長期計画を考えていくことになろうかと考えています。

  以上のような背景を踏まえまして、41ページから、今後の農業農村整備事業の展開方向について御説明させていただきます。

  42ページからは、スマート農業や需要に応じた生産に対応した基盤整備についてでございます。

  43ページにつきましては、現在の水田あるいは畑の整備状況を書かせていただいております。また、稲作労働時間の中でも特に草刈り等管理作業の時間を書かせていただいております。今後の農業従事者の減少を踏まえれば、やはり未整備の農地あるいは小規模な農地が営農上の支障になってまいりますので、そうしたほ場周りの管理作業をいかに軽減していくかといったことが重要になろうかと考えています。

  44ページにつきましては、農村部において情報環境がまだ整っていない地域があるといったことを書かせていただいています。

  これを踏まえまして、45ページ以降から、今後の進め方ということで整理させていただいています。

  まず45ページは、今、策定中でございますけれども、地域計画としっかり連携を取りつつ、スマート農業の導入や農地の集積・集約による効率的な営農に向けて、水田の大区画化あるいは畑地・樹園地の整備を推進していくことが非常に重要であるということ。

  続きまして46ページには、特に大区画化を推進するに当たりまして、農地整備事業の採択において地域計画をしっかり要件化していく、あるいは平坦地において1ヘクタール以上の大区画化を加速していくために、設計指針の策定あるいはそうした地域を優先配慮することを検討していることを書かせていただいております。

  47ページは需要に応じた生産に対応した基盤整備ということで、水田の汎用化、更には地域の要望がありましたら畑地化もしっかりと推進していきたいということを書かせていただいております。

  以上、今、説明させていただいたスマート農業や需要に応じた生産に対応した基盤整備の課題と今後の進め方を48ページにまとめさせていただいています。

  続きまして49ページからは、農業生産基盤の保全管理についてでございます。

  50ページ、まずは基幹水利施設の老朽化が非常に進んでいるという状況、51ページには、老朽化による突発事故が増加しているといった状況、52ページでは、末端農業インフラの保全管理が集落の小規模化、高齢化に伴って難しくなってきていること、更に53ページには、施設管理を担っていただいている土地改良区につきましても、小規模な土地改良区が全体の7割を占めるなど、運営基盤に課題を抱えているようなところも多いといった状況を記載させていただいております。

  これらを踏まえまして、54ページ以降に今後の進め方をまとめさせていただいております。

  まず、54ページにつきましては基幹施設の計画的な更新ということで、今般の土地改良法の改正の中で国等の発意によって事業を実施する仕組みを新たに設けまして、施設の更新を適時実施していくといったことを考えております。

  続いて55ページは、効率的な農業水利施設等の保全管理でございます。

  これは、これまでも進めてきておりますけれども、施設の集約・再編でありますとかICT技術の導入といったことを推進するとともに、土地改良区への技術支援の充実、更には省エネへの取組を一層加速させていきたいと考えております。

  56ページは、末端施設の保全管理の省力化です。

  ほ場周りの草刈り等の管理作業を省力化するための畦畔の拡幅あるいは自動給水栓の設置、あるい、草刈りの省力化につきましては多面的機能支払によってリモコン草刈機を導入するといったことも可能になっておりますので、そうした取組を紹介させていただいております。

  続きまして57ページは、施設保全の在り方に関する協議、土地改良区の運営基盤の強化についてでございます。

  こちらにつきましても今般の土地改良法の改正の中で、地域内の関係者が連携して地域の農業水利施設の保全に取り組むための計画、こちら「水土里ビジョン」という仮称を付けていますけれども、それを策定する仕組みを設け、地域の中での役割分担の明確化、更には将来にわたる農業水利施設等をしっかり保全していくといった内容を盛り込んでいただくことを検討しているところです。

  以上の内容をまとめたのが58ページになりまして、左に課題、右に今後の進め方ということで、先ほど説明させていただいたことを整理しております。

  続きまして、59ページからは防災・減災、国土強靱化についてです。

  まず60ページでは、短時間豪雨の頻発化、あるいは降雨規模が増大しているといった状況を書かせていただいております。

  61ページは農業用ため池の被災についてですが、こちらは豪雨を原因とするものが非常に多いという事実関係をまとめさせていただいております。

  これらを踏まえまして、62ページ以降で今後の進め方を整理させていただいております。

  まず62ページでは、気候変動への対応策といたしまして、これまで過去の降雨実績のみに基づいて行ってきた排水の事業計画において、将来の降雨予測も加味した計画策定手法を導入していきたいと考えていること、加えて田んぼダムや農業用ダムによる流域治水の取組も進めていくこと、また、既存の農業用水路の先行排水といった対応についても取り組まれている事例がございますということで、御紹介させていただいております。

  63ページには、ため池対策ということでまとめさせていただいておりまして、洪水吐きの改修といった豪雨対策を先行して整備し、加えて遠隔監視システムやサポートセンターといった支援も含めて、ハード、ソフトの両面からため池対策をしっかりと進めていく、充実させていくことが重要といったことを記載させていただいております。

  64ページには災害復旧の関係といたしまして、現在も土地改良の中で急施事業が措置されておりますが、次の法改正で考えている拡充内容をまとめさせていただいております。

  具体的には、災害復旧と併せて再度災害防止のための改良復旧を行えるようにする、あるいは突発事故が発生した施設に近隣の類似の事故が起こるおそれがある施設といったものに対しても被害防止対策を実施できるようにする、更には老朽化によって施設の損壊が生じるおそれがある施設の補強あるいは代替施設の新設を実施できるようにするといったことを次の法改正の中で盛り込みたいと思っております。

  以上をまとめたものが、65ページの「課題と今後の進め方」でございます。

  66ページには、これまでの説明と重複する部分は多々ありますけれども、今回の土地改良法改正の全体像を1枚にまとめさせていただいております。詳細は省かせていただきますが、1の中に国等の発意による事業の実施、2の中で水土里ビジョンの策定、3の中で先ほどの急施事業の拡大を記載しています。

  続きまして、67ページからは農村の振興についてです。

  まず、68ページには集落機能の低下について。これは先ほどの繰り返しになりますので、省かせていただきます。

  69ページには、現在取り組まれている日本型直接支払の概要を書かせていただいております。

  70ページには多面的機能支払に関しまして、取組の継続が困難になってきている組織があり、将来的な参加者不足も見込まれているといった現状について書かせていただいております。

  71ページには、農村の生活インフラであります農道橋ですとかトンネルといった施設の老朽化が進行していること、あるいは維持管理に対する負担が増加しているといったことをまとめさせていただいております。

  これらを踏まえまして、72ページ以降で今後の進め方を整理させていただいております。

  まず72ページですけれども、こちらは多面的機能支払の活動組織の体制強化ということで、広域的に保全管理が実施できるような体制の構築や、行政機関による支援の強化、更にはこれまで環境保全型農業直接支払で支援してきた中干し期間の延長とか冬期湛水といった環境負荷低減の取組についてもこの多面的機能支払の中で支援し、地域ぐるみの活動として、その取組を推進していくといったことを書かせていただいております。

  73ページには、農道ですとか農業集落排水といった農村インフラにつきましても計画的かつ効果的な更新が必要であるといったこと、74ページには、農村人口の維持と農村関係人口の拡大を図る上で、農業農村整備と農村政策の連携がより重要になってくるといったことを書かせていただいております。

  以上をまとめたものが、75ページになっております。

  次に、76ページ以降、土地改良事業の推進に当たり踏まえるべき事項ということで2点まとめさせていただいています。

  一つ目は77ページにありますが、DXの取組でございます。これにつきましては、スマート農業を導入するために大区画化を進めて、更にICT水管理施設の導入、加えてスマート農業を実践するために欠かせない情報通信環境の整備といった取組を進めること、更には、ドローン等を活用した測量技術の省力化やICT建設機械を活用した情報化施工、あるいはその過程で得られた3次元データを将来的には営農にも活用していけないかといった内容をまとめさせていただいております。

  続きまして78ページ、こちらは環境負荷低減の取組ということでまとめさせていただいております。

  農業水利施設の省エネルギー化の推進でありますとか再生可能エネルギーの利用拡大、あるいはバイオ炭というものを活用した農地整備、また、土地改良事業によって様々な環境負荷低減の取組が可能になるといったことをまとめさせていただいております。

  最後になりますが、79ページからは大規模自然災害への対応についてです。80ページから、令和6年能登半島地震と9月の豪雨災害への対応状況についてまとめさせていただいております。

  80ページには地域の営農再開につきまして、農林水産省としても地震発生直後あるいは豪雨の発生直後から、MAFF-SATという形で職員を派遣し、更には全国の土地改良事業団体連合会の技術者の皆様、更には民間の業者の皆様の御協力も頂きながら、これまで復旧・復興に取り組んできていることを紹介させていただいております。

  81ページは現在行っている取組といたしまして、農地海岸あるいは農地の地すべりといった地区に対する直轄代行事業ですとか、あるいは農業用ダムなどの直轄災害復旧事業を複数の地区で実施している状況でございます。体制も、現地の組織を活用したり、更には現地に拠点事務所を設けたりしながら、引き続き、国としても地域の営農の再開に向けて積極的に努力していきたいといったことを書かせていただいております。

  以上、長い説明となりましたが、今後の土地改良事業、更には長期計画において踏まえるべき点に関する項目について御説明させていただきました。幅広い御意見を頂ければと考えております。

  私からは、以上になります。

西村部会長  ありがとうございました。

  ただいまの説明について、先ほどの資料3の実施状況と同様に委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと思います。

  やはり時間もありますので、2分程度でお願いしたいと思います。

  委員の退席、出席がありましたので、名簿順ということで稲垣委員からお願いしてもよろしいでしょうか。

稲垣委員  遅刻して申し訳ありませんでした。

  趣旨説明等も丁寧に頂きましたので。私、御案内のように農業委員会の関係の立場でおりまして、農地管理とその有効利用など農地利用の最適化に取り組んでいる立場で申し上げますと、土地改良というのは極めて密接な、隣接領域で、その立場で関連した意見と質問を1点ずつ申し述べたいということと、時間があれば委員の立場で2点ほど御質問したいと思います。

  今現在、全国で地域計画に取り組まれている中で、しっかり地域計画のことを土地改良の中で位置付けていただいて、本当に感謝しているわけですが、土地改良長期計画を改める際には、やはり現在やっている地域計画とのシナジー効果が発現するということに、より御留意いただきたいなというのが1点でございます。

  御案内のように、地域計画は今、約2万2,000地区で策定の大詰めを迎えているわけですが、新年度になりましたら農水省でそれを分析、検証するということが他部局の資料には書かれているわけですが、御案内のように地域計画の3の(3)でしたか、基盤整備事業の取組を地域計画の中にしっかり明記することが、たしか任意ではなく義務の記載事項であったかと思います。そういうことを含めて、どれだけの地域計画が基盤整備事業への取組を書いてくるか分からないわけですけれども、そういうものをしっかり土地改良長期計画でもフォローといいますか、フォーカスしていただく視点が本当に大事なのかなと思っております。

  現在、地域計画を進めている立場で言いますと、10年後に農業をやるエリアを確定したものの、農地ごとに誰が農業を担うか決められずに白地の多い地域計画が少なくないのかなと思っております。その白い地図ができてくるところには2パターンあると思っておりまして、一つは、関係者ができる限り手を尽くし、熟議を尽くした結果、農業を担う者が農地ごとに確定できずに白くなってしまっているところ。それから、地域計画を実際担っているのは市町村の農政部局と農業委員会事務局ですが、これが他の施策、特にこういう土地改良等の施策と連携が取れずに情報を得られず、白くなってしまっているところがあると認識しております。

  近年のほ場整備事業では、事業採択の際に整備前の耕作状況を示す経営形態現況図と整備後の農地の集積・集約化を示す経営形態計画図を義務付けていると認識しているわけですが、それぞれ経営形態現況図は地域計画の現況図でありますし、経営形態計画図に至っては目標地図そのものであるということを、この間、経営政策課と設計課に確認させていただいて、「そうだ」という御了解も頂いているわけですが、そのことを我々レベルから現場に申し上げてもなかなか周知されずに、結果、白いものができてしまうとすると、やはり行政の方での周知が大事なのかなと思うわけであります。

  農業委員会で土地改良の隣接領域にいる身におきましては、日常業務なり事業を進行する中でお互いの乗入れとか連携が密になればなるほどシナジー効果が発揮できるのではないか、些細なことかもしれませんが、経営形態計画図の共有みたいなことも、そういうシナジー効果を発現する一歩かなと思いますので、強調させていただきたいと思います。

  関連して、地帯別の土地改良事業の執行状況で、特に中山間地域のこれまでの土地改良事業の実績と今後の地域計画の分析を踏まえて、地域計画において中山間地域においては特段の取組が必要なのではないかと認識しています。その事業の期間だとか事業量とか事業内容を網羅的に、やはり中山間にはスペシャルな対応が必要なのではないかなと。

  そういうことを考える上で、43ページに水田と畑の整備の状況が出ておりましたが、後ほどで結構ですのでこれを地帯別に、平場、中間地帯、山間地帯で頂けると助かります。

  それから、これは質問ですが、資料4の32ページに集落の農家率のことが書かれていて、その中で「非農家」という書き方をしているわけですけれども、この「非農家」の中には当然、混住化の結果、サラリーマンのように全く農業に関係のない新住民も含まれているかと思いますが、いわゆる農地を全て人に預けて、農政の定義から言うと農家から外れている、そういう方は非農家に含まれているのか、いないのか。非農家の中にも少しグラデーションがあって、全く農業に縁のない非農家と、農地を持っているというすごい根幹的な部分でありながら非農家であります等、そこの対応を少し丁寧にしていったらいいのではないかというお尋ねです。

  2点目の質問としては、土地改良区のお話が出ておりますが、以前の制度改正で準組合員の制度が設けられていたかと思います。この状況なり、この今後の取扱いについてどのようにお考えになっているのかということと、土地改良区の数が5,000であるとか職員の数が丁寧な資料として出ているんですが、何というんでしょうか、なかなか難しいかと思いますが、この目指す姿といいますか理想は幾つぐらいというのがありやなしやという質問をさせていただければと思います。

  私からは、以上であります。

西村部会長  続きまして、ウェブで参加いただいています井上委員、大丈夫でしょうか。

井上委員  御説明ありがとうございました。

  展開方向について結論として感じることですけれども、資料の6ページから9ページに続く成果にあるとおり、ほ場整備、区画整理による効果は非常に大きいものだと感じております。農業生産の基礎的要素である農業資源、農業就業者は同じく重要と考えておりますが、土地改良事業によるスマート農業など効率化を果たした先に成果を想像できる魅力ある農地を準備することが、農業就業者の獲得につながると考えます。なので、農業資源と農業就業者はどちらが先かという議論ではなく、両輪のように相乗効果、シナジー効果を発揮するものだと考えておりますので、この土地改良事業において農業就業者をターゲットとして計画を進めていくのであれば、より魅力的な農地を準備することが非常に重要なことだと考えております。

  この「魅力ある農地」というものがつくり上げられた場合、そして魅力ある農地を目指してチャレンジ精神に富む農業就業者が営農を行った場合に想定できることとしては、結果として優良な経営につながるということがまず一つ。この可能性が高いと考えます。そして、この「優良な経営」というところから更に成長した農業就業者の役割は、農業生産のみならず、農村における様々な課題への対処や解決についても貢献が叶うと考えます。

  総論としてそんなことを感じました。

  各論です。

  資料4の4、今後の農業農村整備の展開方向についてです。ページで言いますと45ページから48ページになります。

  農地の集積、集約を地域計画と連携しながら推進とあります。私は中山間地で農業を営んでおるんですけれども、中山間地域においての農地の集積や集約については感情論で議論が進むことが多くあります。非常に時間が掛かって難しい議論になることが多いのですが、基本のフレームワークの提案が必要だと感じております。地域計画とどのように連携するのか、地域のビジョンが描けた場合にどのようなメリットが地域全体に発生するのか、地方行政や地域住民にも分かりやすいビジュアルでの示し方、可視化されたフレームワークの提案をお願い申し上げます。

  もう一つ、51ページです。

  老朽化による突発事故の発生状況とあります。この資料、非常におもしろいなと思って拝見させてもらったんですけれども、老朽化だけによる突発事故ではないのかなと感じました。というのも、2000年代初頭あたりから「ゲリラ豪雨」という言葉が聞かれるようになりまして、2006年、2007年あたりからゲリラ豪雨が常態化するようになったと記憶しております。この常態化したゲリラ豪雨が2013年、2014年あたりから「記録的な」という表現に変わりまして、以降「記録的な」と付く気候変動による影響が全国各地で発生しております。老朽化だけではなく、中長期で考える農業生産の基盤の保全管理といった立て付けで進むことをお願い申し上げます。

  発言は以上です。

西村部会長  ありがとうございました。

  同じくウェブで御参加いただいています山波委員、お願いできますでしょうか。

山波委員  今ほど井上委員からお話しいただいたことと、私、また被ってしまうところが出てくるかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。

  今回、農業農村整備の展開方向についてということで、これについても非常に分かりやすくまとめていただいて、正にこの展開方向でできたら日本の農業にはすばらしい未来が待っているのではないかと感じております。

  その中で私からは1点だけ、現場に携わる者としてお願いですけれども、ここで様々なデータを出していただきました。国民一人一人の食料安全保障を担保するために、これから農村地域が、そしてそこで農業を営む者たちの経営がきちんと成り立っていかなければならない、そういう中でこの基盤の整備が必要だということで、こうして明確にお示しいただいているわけで、これができたら本当にすばらしいんですけれども、今、様々な議論の中で、落ちているところがあると私は感じています。

  この「基盤を整備する」という決定ですね、地元で合意を得るまでの期間が非常に、やはり地域合意を取るのに大変な状況になっている。それは地域の衰退もあるかもしれませんけれども、農業に関わる方々の減少、そして、この平均年齢を見ても農業に携わる方の高齢化ということで、20年後、30年後を見据えた中で新たな展開を示していけるような地域の盛り上がりがなかなか出てこない。その中で、少数になってきた担い手の方々が一生懸命中心となって話合いを設定し、そして話合いをするんですけれども、人と人なので、なかなか進んでいかないというところが最大のネックになっていると私は感じておりまして、そこのところを農地という、国でも国民一人一人の食料安全保障を掲げている中で、今後「こういうふうに基盤を整備していかなければならないんだ」という方向性をきちんと国民一人一人に理解を頂いて、地権者の方、また地域の方にもその方向性で議論を進めていただくように、この度、地域計画が法定化した中で、これもつくって終わりではなく、また半年後、1年後、定期的に地域でも必然的に話し合うような機会もつくっていただきながら、いち早くこの基盤をつくる、そういう状況に持っていけるような政策をお願いしたいということです。

  以上になります。

西村部会長  ありがとうございました。

  ウェブで参加の加藤委員、お願いいたします。

加藤臨時委員  すみません、講義がありまして遅刻しました。申し訳ございませんでした。

  スライドの38ページで今後政策の進め方について御説明がありました。ありがとうございます。

  今回も、従来の土地改良長期計画の延長上にあると理解しました。それに付け加えて、スマート農業のより積極的な活用と、環境負荷低減の取組推進のところでは気候変動への対策としての適応策あるいは緩和策を土地改良長期計画の中に入れ込んだと理解をしております。

  その中でちょっと気になったのは、スマート農業の導入が飽くまで労働の効率化ですかね、あるいは生産の効率化のみに対応しているようなイメージなんですけれども、スマート農業の応用の仕方、活用の仕方は、必ずしも生産効率のみならず、環境保全に対しても使える可能性は非常に大きいと思っております。特に環境負荷の低減という部分は人間のコントロールだけではなかなか難しいところもありますので、モニタリングとかリモートセンシングといったものと組み合わせて定量的に評価しながらやらないと、今後、カーボンクレジットですとかJ-クレジット、こういったものを導入するのにどうしても不備を生じますので、スマート農業の導入を、やはり生産効率のみではなく環境負荷、若しくは温暖化、気候変動対策としても入れていく。

  その中では、流通とか生産の最後のところに書いてありますけれども、生産のみならず流通ですとか消費といった面でもスマート農業とかAIというものを入れ込んで、データの透明化等、取組の見える化を進めていくように、今回の改正を受けて今後、政策を進めていただけるように、農水の方でもお考えいただければよろしいかと思います。

  以上、コメントになります。ありがとうございます。

西村部会長  ありがとうございます。

  では、会場で御参加いただいています北室委員、お願いいたします。

北室臨時委員  私は、能登の大震災、大規模災害への御対応で、小規模被害のところはもう営農再開が可能で中規模のところは1から3年、大規模被害を受けたところは4から5年という、能登が見放されたとニュース等でいろいろ見る中で、こういった見通しを出していただいて国民としてすごく心強く感じました。また、多くの農業振興技術者の方々が現地に駆け付けて支援なされたということ、本当に心強く思いがしました。

  自分自身、生活していく中で、やはり食料安全保障というものが一番重大な問題だと思っておりまして、戦後80年で、私たちのほとんどが安全・安心なものを食べて生きることが普通で生きてきたわけですけれども、そういった人生を支えてくれたのは日本の農業なんだなと、今日は改めて感謝したいという気持ちになりました。これが続くように今後も取組を強力に進めていただきたいと思います。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  同じく会場で御参加いただいています久保田委員、お願いいたします。

久保田臨時委員  説明ありがとうございました。

  これまでも携わってきましたし、これからも土地改良に携わる立場として、改正基本法を踏まえてこういうことをそれぞれの分野で、私もその一人としてやっていかなければならないんだろうと非常に実感しております。

  その中で、これは自問自答ではあるんですけれども、資料の26ページで、いわゆる基幹的農業従事者、人口減少社会の中でどんどん高齢化していって、農業従事者が減っていく。これは今後もどんどん続いていくだろう。この67.9歳、これを踏まえながら基本法の中で土地改良としてどういったことをやって、農業振興あるいは食料自給率アップ、最終的には合理的な価格形成、いわゆる農業経営の安定につなげるか、本当に難しいところだなと思っております。

  具体的に申しますと、例えば大区画化、畑地化をやるために、国営はもとより県営でいろいろな基盤整備を進めてございます。その中で大区画化をやって畑地化を進める。その中で、年齢は65歳ぐらいが中心になるんでしょうか、担い手に集積して今後の経営安定、生産性を上げていくということですけれども、この67.9歳という平均年齢が劇的に下がるとも思えない。新規就農、もちろん頑張って入れていますけれども、そう劇的には難しい。整備が終わって5年たてば、この平均年齢は恐らく5年上がるんでしょう。そうしたときに、基本法であるところの整備をやって、しっかり保全して農業生産活動を続けながら農業継続、農村振興を図っていくといったときに、先ほど来、出てございます基盤整備をやった後の、いわゆるスマート農業の推進とかICT化、こういったことをより具体的に、今後、基盤整備を契機としてやっていく。

  恐らく所管も違いますのでいろいろな連携があるんでしょうけれども、基盤整備、先ほど山波委員から地域の話合いが非常に重要だという話がございましたけれども、その話合いを受けてほ場整備、基盤整備の事業計画を立てる際には、やはり大区画化を目指す農地基盤対策と、人の後継をする担い手、いわゆる継承対策、これに併せて高齢化対策も、言葉が適当かどうか分かりませんけれども、この3点をパッケージで基盤整備を進めていくような、こういったところまで踏み込んでいかないと、事業完了後の五年十年先、しっかりとした形での農地の保全はもとよりですけれども、今後の食料安全保障につながるのではないかと思っていまして、こういったところもしっかり、これは自問自答ですので、こういったことを計画策定に当たってお願いもしながら、現場ではそういった高齢化対策もしっかり工夫しながらやっていく必要があるんだろうなという感想も含めて発言させていただきました。

  以上でございます。

西村部会長  ありがとうございます。

  続いて河野委員、お願いいたします。

河野臨時委員  本日の御説明、更には事前の御説明で丁寧に今後の方向性をお示しいただきまして、私なりに今後の日本の土地改良の方向性は理解しているところでございます。

  3点、私の感想めいたことをお伝えしたいと思います。

  まず1点目は、農業は農地と水と周辺施設・設備が基本であり、そうしたインフラの整備、保全、活用は物すごく重要だと思っています。ただ、それはあくまでも支える手段であって、本質はどこにあるかというと、やはり新しい基本法でうたわれているとおり、食料の安全保障や気候変動対策や、それにも増して日本の農業がますますしっかりと振興されていくというか、しっかりと食料生産を維持し続ける状況を保っていくことだと思っています。

  そのように考えたときに、やはり公益に何が必要かというと、日本の農業に与えるインパクトとなるプラスアルファの施策が基盤整備に絶対に必要である。先ほどから皆さんもおっしゃっているとおり、基盤整備をした、インフラ整備をしたことと他の施策を上手く併せてどういう効果を上げていくか、そこはやはり今後に向けて整理していただければと思ったところです。

  2点目として、スマート農業についてです。

  先ほど他の委員からも言及がありましたけれども、就業者の高齢化や減少が著しい状況を救う一策としてスマート農業が導入されていくと思います。この部会で検討する対象としては、農地周辺の作業を代替し、補完する目的でのロボットや自動走行農機などでのスマート化が中心となるのは仕方がないことだと思いますが、やはりもう少し視野を広げて、近年大きな問題となっている天候の不確実性対策へのAIの活用ですとか生産計画に役立つ市場動向がリアルタイムで把握できるような仕組みですとか、また、農作物の生育状況を畑からすぐに相談できるオンラインでの営農指導など、農業生産全般に役立つ分野に広げてトータルでのスマート化支援体制を考えてもいいのではないかと受け止めています。

  3点目ですけれども、農業生産を支える施設・設備の維持管理や老朽化等への対策についてです。実際の作業を誰がどう担うかも大事ですけれども、それ以上に、基盤整備の司令塔機能を果たすのはどこかという点がとても気になります。今回は土地改良法を改正して、地域の関係者が連携して地域の農業水利施設等の保全に取り組むための計画「水土里ビジョン」という仕組みをつくるという御提案ですが、実はこれまでも現場では同様の努力が脈々と行われてきたんだと思っています。気候変動や農業者の減少等を踏まえて本気で対策を練るのであれば、地域ごとで最善策を検討することに加えて、全国規模で知恵を共有できるようなプラットフォームを構築して条件入力で活用して、最終的に基盤整備に資する大きなデータベース、データドリブンを活用して農業をやっていく、そういう形を考えていただくことも今の時期では一つの契機として重要だと考えています。

  抜本的な構造改革は、簡単にはいかないと思いますけれども、そういう視点も入れて今後の計画を進めていただければと思います。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  このまま続けさせていただきます。いいですか。では、事務局から。

中西計画調整室長  いろいろと御意見を頂いたので、1度ここでお答えさせていただければと思います。

  まず、稲垣委員から、地域計画と土地改良長期計画のシナジー効果を発揮していくことが必要だという御意見を頂きました。これはもう正にそのとおりだと思っています。そういう意味では地域計画と農地整備、特に農地整備の部分については要件化するなどの取組もしっかり進めていきたいと思いますし、本省の中でも経営局との連携を強めて、行政からのメッセージといったものもしっかりと打ち出していけるように、そのあたりは取り組んでまいりたいと考えております。

  二つ目の、地域別の土地改良事業の実施ということで、中山間地域に対する取組ということでございました。

  これについては、やはりバランスというものがあるのかなと思っています。と言いますのも、平場地域において大規模化していくという面も必要ですし、あるいは中山間地域での省力化を図っていくといったこと、これ両方とも重要なことだと思っています。特に中山間地域では、平場よりそれほど大きくないような地域で、足の速い事業を求められていくことになると思っております。そうした要望が地域計画で上がってきたときにしっかり受けとめられるように、我々としても事業制度の充実などを進めていきたいと思っています。

  3点目は、グラフの「非農家」の中に農地を全て預けた人は入っているかということですが、そういう方もこのグラフの中では非農家の扱いになっているということでございました。

  4点目が、準組合の状況でございます。

  これも以前の土地改良法改正で入れた部分でございまして、準組合員が今、存在している土地改良区数が45地区ございます。それに伴って、準組合員になっている方が4,590名となっています。定款においてこうした準組合員制度を導入している土地改良区は更に多くて、147地区となっております。こうした取組、いきなり取組が進むというわけではないのですが、そうした芽が出てきておりますので、取組の状況もこれから広く周知しながら進めていくことによって、例えば不在村地主の方への対応とか、そうしたものにも活用できるのではないかと考えているところでございます。

  続きまして、井上委員からございました。こちらは人、農地といったものをしっかりとセットで進めていくことと、地域計画との連携をしっかりとビジュアル化して、可視化されたような形で地元に落としてほしいという御提案があったと思います。これも先ほどの繰り返しになりますけれども、経営局ともしっかりと連携しながら取り組んでいきたいと思っております。

  また、老朽化対策のところで、老朽化対策以外の部分も含めて、気候変動等の部分も含めて防災・減災は総合的に対応してほしいという御意見があったと思います。正にその方向性だと思っておりますので、次の長期計画を考える中でも老朽化、あるいは他のことも含めて強靱化、防災・減災といったものを総合的に考えてまいりたいと思います。

  山波委員からは、合意形成を図るまでの時間が掛かるということで、なかなか難しい部分があるということでございました。これは今現在、やはり我々の方でも農地中間管理機構関連のほ場整備事業をつくるとか、あるいは事業計画の中で調査計画の策定を充実させるとか、そういった様々な工夫はしておるわけですけれども、一方で、言われていることも分かりますので、例えばその調査計画をやっていく体制の整備ですとか予算の確保といったものを含めて、支援の充実が図れればと考えておるところでございます。

  加藤委員からはスマート農業ということで、生産効率化だけではなく環境保全に対しても使えるところが大きいといった御指摘を頂きました。これも御指摘の点を踏まえて、今後、長期計画を策定していく中で、そうした点も念頭に置きながら考えてまいりたいと思います。

  北室委員からは、能登の復旧といった形で我々に対してエールを頂いたと思っております。引き続き、能登の復旧・復興に向けて国としてもしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

  久保田委員からは特に高齢化対策ということで、高齢化が進んでいくことを前提に様々な取組を進めていくべきだといった御提案だったかと思います。これにつきましても、スマート農業というとなかなか高齢者の方が取組づらいということもありますけれども、一方で、やはり導入することによって労働力が削減されるようなこともありますので、そういった事例なりをしっかりと現場に落とし込んでいき、スマート農業の活用も高齢者対策の一環であるといったことも踏まえながら総合的な取組を考えていければと思っております。

  河野委員からは3点ございました。

  一つ目に、土地改良に加えてプラスアルファの施策という話がございました。こちらは私の説明の中でも、土地改良長期計画は土地改良に基づくので、なかなか書けない部分が多いんですけれども、言われていることは、そのほかの農村政策との連携とかそうしたものが重要だというのは私もそのとおりだと思いますので、その点はしっかりと踏まえながら、土地改良長期計画を考えていきたいと思います。

  それからスマート農業の関係で、生育状況とかそういうデータの活用という話をいただきました。これは農水省の中でも様々な情報プラットフォームがございまして、例えばWAGRIというのは民間の方がそのデータを使って新しい農業ビジネスを生み出すことを目指し、温度とか気温とか、こうした営農状況でどれだけ収量があったといった様々なデータが入っていたりするんですけれども、その様に農水省の中でもいろいろなデータがございますので、将来的にどこまで一本化できるかというのはあると思いますが、そうした情報の相互交換といいますか、そうしたことも含めながら、我々としても、なるべく農業者の方が一括で見られるような形の取組を進めていければと考えております。

  私からは、以上になります。

西村部会長  ありがとうございました。

  では、委員の御発言に戻りたいと思います。

  ウェブで御参加いただいています長谷川委員、お願いいたします。

長谷川臨時委員  輸出についてお伺いします。

  こちらの資料の中でも、土地改良事業の効果として基盤整備を契機とした農産物の輸出促進が入っていますし、食料・農業・農村基本法の改正の中でも食料安全保障の観点で、供給能力を確保するために輸出が必要だと書いてあります。その点の記述について、もう少しあってもよかったと思いました。

  46ページの水田の大区画化の推進の中で、更なる輸出拡大に向けて、フラッグシップ輸出産地等における整備を推進すると書かれています。さらに新規採択については、フラッグシップ輸出産地に位置付けられた地区を優先配慮する方向だということです。これだけを読むと、基本的にはまず最初に輸出産地に認定された地区があり、その地区に対して土地改良で後押ししていくと読めますが、どこか受け身感があるような印象がします。

  例えば土地改良事業そのものを出発点とするような形でできないのか。輸出の可能性があるのかないのかを事前にきちんと吟味した上で、輸出の拡大を促進していく可能性があるならそれを広げていくような形で計画を策定してもらうといった発想もあっていいのかなと思います。

  私からは、以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  続いて藤原委員、お願いいたします。

藤原臨時委員  御説明ありがとうございました。

  私が最も気になっているのは農地面積の減少でありまして、28ページで示していただいていますけれども、住宅地とか荒廃農地の発生によって毎年3万ヘクタールずつ減っている。これは食料安全保障ということを考えると大きな問題で、できるだけ農地面積は確保しておく必要があると思っています。特に都市近郊の農地は、農地として維持していく方がメリットがあるといった方策を導入していくことが必要ではないかと感じております。

  それから、人口減少下の社会なので、特に平地部においては、書かれていますけれども、1ヘクタール以上の大区画化を推進して、スマート農業を導入することによって労働生産性を上げて、少人数の担い手によって収益を上げる農業経営を展開するという方向は、そのように進めていくべきだと私も思っております。そのためには水田の汎用化とか、地域によっては畑地化を進めていく必要があるのかなと感じております。このようにすることによって宅地転用の防止等の対策になり得るようにも思います。

  一方で、深刻なのは平地に比べて条件的に不利となる中山間地であります。耕地面積とか農家数とか農業生産額がそれぞれ全国の約4割と農水省のホームページにも掲載されていますけれども、大きい割合であります。平地と同じように農地整備できるようなところは労働環境の改善を図って進めていけるとしても、その他の条件が悪いところからどうしても荒廃農地になっていくということがあると思います。人口が減ってくるので全ての農地に手が回らなくなってしまいます。中山間地はどうしても労働生産性が低く人手が必要になってきますので、完全に全てを維持していくことが難しくなってきています。10月に見学させてもらったグリーンファーム清里でお話しされていましたけれども、平野部で農地整備事業をしてもらったおかげで、その節約した労力を中山間地に投入することができるようになった、なので今、中山間地が守られているとのことでした。そういう意味で、平野部での農地整備も中山間地を守っていくことに非常に役に立っている実例であると思います。

  ただ、平野部があればいいのですけれども、山間地だけの場合はなかなかそのようなことは期待できないので、国土保全という観点から、農業生産というよりは景観配慮とか生物多様性の維持といった生態系サービスですね、そういうことを主目的として保全しておいて、食料安全保障で不測の事態が生じたときにはすぐに水田とか畑地に戻せるような形で維持していくという考えが必要ではないかと思っています。そのためにも中山間直接支払とかそういうものをもっと強化していって、農地の面積が減らないような何らかの方法が必要であると思います。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございました。

  続きまして牧委員、お願いします。

牧臨時委員  農業農村整備や土地改良事業とか、国民に対してあまり目立たないような立場だったんですけれども、今回、改正基本法の中で、国民共通の課題として食料安全保障が前面に出てきたので、この仕事をPRする機会として捉えた方がいいと思っています。

  先ほども申しましたけれども、やはり水田を水田としてちゃんと保全していくことは、これからの食料安全保障の面からも非常に大事なことだと思います。水田農業は一朝一夕ではできないので、水利システムや管理主体までも含めてしっかり保全していくということです。新規需要米など、まだまだ日本では足りないものも生産できますので、そこはしっかり取り組んでいくようなことを、うたっていただきたいと思います。

  それから、57ページですけれども、水土里ビジョンとして、農業水利施設の保全管理について地域で相談してという仕組み、これ自体は非常にいい取組だと思います。ただ、やはりそこに実効性を持たせていただけたらと思います。

  私も今回、女性理事登用をメインに、東北から九州まで土地改良区を80くらい回ってきたんですけれども、それぞれの地域によって施設の管理形態が違うんですね。例えば干拓地でしたり水田地帯と中山間とがセットだったりする。水土里ビジョンを策定する協議会を立ち上げるんだと思いますけれども、是非そこに市町村に入っていただいて、しっかり地域ごとに実効性のあるビジョンをつくられた方がいいと思うんですね。今までどおり土地改良区が全部管理するようなものをつくっても仕方がないので、そこはしっかりと地域みんなで支えるような体制で、このビジョンがつくられたらいいと思います。

  そのときに必要なのは、やはり市町村等支援側に対する支援、費用なんですね。そこはビジョンと支援策がセットで示せるように、検討していただけたらいいと思います。

  水利施設の管理というと、後から出てくるICIDの資料の中にもありましたけれども、アジア地域会議の中で水管理における女性の参画がテーマになっているんですね。これからは、やはり今まで担っていた男性もだんだん高齢化してきますので、これまでの管理のやり方では難しいことが出てくると思うんですよ。ですからこの業界も働き方改革を取り入れながら、1人でやっていたところを複数人で回るとか、何かアタッチメントを付けると軽く動くような、何かちょっと簡単にできるようなものを考案するとか、保全管理の面でもなるべく楽になるような、そのようなことを取り入れて保全管理を進めていくような工夫が人材確保の上でも必要だと思います。

  また、事業の開始について、国とか県が申請者に代わってできる、このような取組を進めていただくのはとてもいいことだと思います。非常に大変なんです、土地改良法の手続というのは。ただ、国・県の申請でも同意徴集が依然として残っています。都市インフラは大規模な事業をどんどんやっているわけですね。とすると、経済的要因を併せて検討することは必要だと思いますけれども、ほ場整備以外、公共性が高い事業は同意徴集の必要性をいま一度検討した方がいいのではないか。これほど保全管理でどんどん更新していかなければいけない施設が増えている中で、手続関係に手間をかけている時間はないのではないか。人も時間も必要になってきますので、そのあたりが何とか、より簡素化できないものかと思います。

  それから、一つ質問ですが、現在、都道府県が窓口になって土地改良区の体制強化を進める、土地改良区運営基盤強化協議会が立ち上がっていて、その業務に複式簿記や、女性理事登用の推進などが入っているのですが、水土里ビジョン策定の協議会との連携みたいなものはどう考えられているのでしょうか。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  続いてはウェブで参加いただいている松下委員、お願いいたします。

松下臨時委員  「食料・農業・農村基本法の改正を受けた政策の進め方」ということで38ページにとてもきれいにまとめてくださっているので分かりやすかったと思います。ありがとうございます。

  ただ、一つ気になるのが、例えば食料にしても水、エネルギー、環境、それらは非常に密接な関係にあるので、それぞれの複雑な関係性ですね、トレードオフであったりシナジーであったりそういったものがあると思いますので、可能であるならば一つ一つ独立的に政策目標を立てていくというよりは、包括的、ネクサス的なアプローチでそれぞれの目標について検討していくような形になればいいなと思います。

  具体的にですが、例えばエネルギーとしては土地改良の施設を使った小水力であったり太陽エネルギー等々あると思いますが、そういったものは今、自分たちで使うような電力に使っているのかもしれませんが、J-クレジットだったりカーボンクレジット等でこれからそういった価格も非常に上がっていくことが見込まれている中で、もっと有効に使えるところがあるのではないかと思ったりします。

  また、40ページだったか、流域総合水管理といったものも出てきますが、ここで言う「流域」にはどういったところを含むんだろうか。流域の範囲若しくは利害関係者の範囲、そうんいったものを引っくるめて食料、そして水の安定供給等々も考えていかないといけませんし、農業だけでなくほかのセクターとの水の配分等々も考える必要が、これから出てくると思います。そういったものも引っくるめた効果的、統合的な長期計画を立てていくことができると、よりいいのではないかと感じます。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  では、会場で御参加いただいています松田委員、お願いいたします。

松田臨時委員  説明いただきました各項目について、今後、大切な内容なんだなと改めて認識いたしました。

  その中で、特にスマート農業の推進がより重要ではないかと思いまして、68ページにあります1農業集落当たりの農家率、この実態といいますか、数値とこのトレンドは、農家に一番近いところで仕事をしています私どもからすると、肌感覚でそのとおりだなと思います。

  この実態を踏まえ、将来待っている姿が何かというと、地域の農地を今のように農地としてきちんと管理できるんだろうかという心配です。ほ場整備を契機に設立された法人ですら、近い将来、解散を検討しているところがあります。なぜかといいますと、設立した段階の構成員がそのまま年を取って、後継者がいないからなんです。問題は、解散することはその方々の自己判断ですのでいたし方ないとしても、その法人が請け負っている農地を誰が受けられますかという話になります。そうすると、残っている法人が経営規模を拡大できるような新たな手法がなければ、その農地は誰も受け手がいないという将来が待っているような気がして心配です。

  そうした際に重要なのが、やはりスマート農業、IoTを活用していかに経営規模を拡大できるのかだろうと思います。現実、私どもの近くでRTK基地局を整備した改良区があって、それを利用して自動操舵等のIoTを使ったスマート農業を展開している法人があるんですが、そこの法人は規模拡大しているそうです。ということは、やはり今後、農業従事者が減って1集落当たりの農家率も減ることを見込むと、スマート農業の展開をしやすい制度をどうつくるかが非常に重要ではないかと思います。

  スマート農業、以前、私は、とてもお金が掛かるし高齢者はなかなかそれに対応できないのではないかと思っておりましたが、もはやそんなことは言っていられないぐらい現場では農業従事者が減っていっております。とすると、それを分かってもらうような普及をしながら、かつスマート農業を導入しやすい制度を新たな観点で制度化せざるを得ないのではないかと思います。

  それと、そうした取組を進めるためには、やはり維持管理経費が非常に重要だろうと思います。イニシャルコストだけ補助をしたとしても、それを使い続けていくためのランニングにどの程度の期間、未来永劫はあり得ないとしても、どの程度の期間ランニングコストを支援するかも、イニシャルコストの部分で「では、やってみようか」という動機付けにもつながるような気がしますので、そうした制度設計を新たな長期計画の中では検討してくださると有り難いと思います。

  それから、水土里ビジョンの話ですけれども、基幹施設をどう維持管理していくか、非常に重要なテーマだと思います。ただ、一方で、その水土里ビジョンでテーマとする基幹施設は大概のケース、複数自治体にまたがっているのではないかと思います。そうしますと、市町村が入ることは全く問題なく、やぶさかではないんですが、誰がその調整主体になるのかということだけはしっかりしておかないと、言葉だけが水土里ビジョンとして一人歩きし、実態が伴わないとなってもまずいのではないかと思いますので、そこら辺が懸念かなと思います。

  以上です。

西村部会長  ありがとうございます。

  では松本委員、お願いいたします。

松本臨時委員  御説明いただき、ありがとうございました。

  4-1のスマート農業の導入を推進するために、土台づくり、大区画化、情報通信環境整備を行っていくことについて、中山間地域では地形条件が厳しいことから、平坦地と比較したときに、基盤整備を行っても、法面積が広くなって区画も小さくなります。このような土地にスマート農業を導入するとなると、導入に向けた再整備が必要になってくるのではないかと感じておりますが、中山間地域かつ畑地帯でのスマート農業に適した基盤整備の活用事例を知りたいです。

  もう一点、4-2の、土地改良法の改正により、農業水利施設の更新を、受益農家の申請ではなく国等の発意によって事業を実施できる仕組みを設けるとありますが、ただ、54ページの右下の図を見ると、発意は地元ではなくなっておりますが、結局3分の2以上の同意徴集を行うように記載されております。土地改良法手続上、大変なところは同意徴集であり、そこが変わらない場合、この制度のメリットはどういうところなのかを教えていただきたいです。単に前段の地元の申請事務手続が不要になるだけなのか、補助事業活用の上で負担金等の有利な点はあるのか、また、どのような状況の場合にこの制度を活用するよう考えておられるのか教えていただきたいです。

  私からは、以上です。

西村部会長  ありがとうございました。

  事務局から何かコメントなり回答がありましたらお願いします。

中西計画調整室長  様々な御意見を頂きまして、ありがとうございます。

  まず、長谷川委員から輸出に関連して、土地改良の方でもより積極的な働き掛けを、といった御意見だったと思います。

  我々も、このフラッグシップの計画を持っているところというのもありますけれども、やはり輸出のところについてはそうした営農計画を立てていただいて、輸出をやっていくことが重要だと思っていますので、我々サイドとしても、そうした意欲を持たれている地区に対しては取組を進めてまいりたい。これもうちの部局だけではという話ですけれども、我々サイドの取組も含めて連携を深めて取り組んでまいりたいと考えております。

  また、藤原委員から、農地の確保が必要だということで、今回、農地法の改正等も通じてこの農地という部分は、我々基盤整備の方からもしっかりと取り組み、良好な営農条件を整えて残していくということも含めて、農地の確保にもしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

  特に中山間地域の部分につきまして、委員からも、多面的機能直接支払交付金とか中山間地域等直接支払交付金の活動も強化しつつ、そこに生態系サービスといった概念も含めながら進めてはどうか、といった観点を御提示いただいたと思いますので、今後検討していく中で、念頭に置きながら考えてまいりたいと思います。

  牧委員からは、水田を水田として活用していくということがありました。基本的には需要に応じた生産をやっていくというのがまず一つ大きなことだろうと思いますが、特に水田に関しては、汎用化を進めれば水田のままブロックローテーションという形での使い方もできますので、そうした活用方法も含めて水田をしっかりと残していくといったことをやっていきたいと思っています。

  また、水土里ビジョンの中に市町村にしっかり入っていただくべきというのは、我々も全くそのとおりだと思っています。土地改良区を中心にしながらも市町村、あるいは水利組合、あるいは多面的機能支払の組織ですとか、そうした施設管理に関わっているような方に幅広に入っていただいて、様々な御議論を頂ければと考えているところです。

  それから同意の徴集に関して、これは松本委員からもありましたけれども、例えば、当初計画で同意省略で始めた施設更新事業においても、計画変更をやるときは、これまで同意徴集を行うことが必要となっておりました。それは次の法改正の中で、更新時にも総代会の議決に代えられるような仕組みを入れられないかといったことも含めて幅広に検討している状況でございます。

  それから、現行の土地改良長期計画の策定を踏まえ、土地改良区運営基盤協議会が各都道府県につくられていて、それと今回の水土里ビジョンの協議会との関係性ということですけれども、前回つくられた協議会は国、県、市町村、各県土連といったメンバーが中心となっておりまして、そこで今までも、複式簿記の導入とか、合併等に対する助言・指導をやってこられた経緯がございます。今回、水土里ビジョンの協議会は、県にシニシアチブを取っていただいて、県の中を幾つかのブロックに分けて、その中で複数の市町村、土地改良区、水利組合といった関係者に議論していただけるような場をつくっていくことを想定しています。

  その中では、今まで運営基盤強化協議会が活動をされてきた中で培われたノウハウもありますし、いろいろな知見もあると考えておりますので、是非、水土里ビジョンの協議会にも携わっていただいて、イニシアチブを発揮いただければ有り難いと思っています。

  松下委員からは目標について包括的なアプローチということで、エネルギー関係、流域治水関係とか、多くのステークホルダーが絡むということで、そういった意味で、より包括的なアプローチをするべきという観点を示して頂きました。

  これについても今後、土地改良長期計画を考えていく中で様々関連する部分が出てくると思いますので、幅広い観点からの御指導を頂ければ有り難いと思っておりますし、我々としても念頭に置きながら作業を進めてまいりたいと思います。

  松田委員からは、スマート農業がこれからの農地を守っていくキーワードの一つになるだろうということでした。また、御地元でRTK基地局をつくっていただいて法人が規模拡大に取り組まれているということで、私も秋田県に出向しておりましたので大変嬉しく思っております。ありがとうございます。

  そうした取組を周りに展開していくことが、まず一つ大きなことなのかなと思っておりますし、やはりスマート農業を導入するにも、それを支援して並走していくようなサービス事業体につきましても、今回、スマート農業の開発の中では位置付けられておりますので、是非そうしたところとのリンケージもしっかり張りながら取り組んでいきたいと思います。

  水土里ビジョンの件は、先ほども触れましたが、複数の市町村にまたがるということも選択肢としてはあり得ると思っていますので、是非そうした中で今後の維持管理の在り方を幅広に議論していただければ有り難いと思っております。

  松本委員からは、中山間地域の情報通信の環境等、様々な難しい部分もあるし、あるいは法面が大きくなってといったこともある。そうした際に、中山間地域における優良事例をもう少ししっかりと地元に落としていって、中山間地域にもそういう機運を醸成していくべきということであったと思います。

  これは中山間地域に限らず、様々な分野で、我々、地元に周知する取組が弱い、まだ十分伝わっていないことが多々あると認識しています。例えば今回、私、事前説明の際に久保田委員から、自動草刈機が多面的機能支払交付金の活動の中で購入可能という説明をしたら「私は分かっているんですけれども、それが本当に地元の土地改良区まで落ちているか、多面的機能支払交付金の組織まで伝わっているかというと、なかなかそこまでいっていないのが現状ですよ」といったコメントも頂いております。そうした状況もありますので、そうした優良事例等をしっかりと伝えていくことは、今回取り組まなければいけない一つであると認識しているところでございます。

  私からは、大体以上になります。

西村部会長  ありがとうございます。

  資料3同様に、欠席の木下委員からこちらにも意見があったと思いますので、それをお願いいたします。

中西計画調整室長  木下委員からは、水土里ビジョンの関係で御意見を頂いています。

  今回、水土里ビジョンを作成することになりましたが、その具体化と実現がどのように土地改良区の運営基盤強化をもたらすのか、今後しっかりと注視してまいりたいという御意見を頂いております。

  以上になります。

西村部会長  ありがとうございました。

  時間も押していますので、この議題についてはここまでとさせていただきます。

  次に、議事(5)報告事項ですね。国際かんがい排水委員会(ICID)第9回アジア地域会議及び第75回国際執行理事会の結果について報告いただきたいと思います。

  よろしくお願いします。

鷲野海外土地改良技術室長  設計課の海外土地改良技術室長をしております鷲野と申します。よろしくお願いします。

  私から、資料5に基づいて御説明をさせていただきます。

  昨年8月、今年度の第1回農業農村振興整備部会でICIDの第9回アジア地域会議及び第75回国際執行理事会の対応方針について御審議を頂きましたが、この9月に会議が行われましたので、今回は、その結果について御報告させていただきます。

  では、1ページから御説明してまいります。

  日程、参加者ですが、第9回アジア地域会議と国際執行理事会につきましては、昨年9月1日から7日にかけてオーストラリアのシドニーで開催されています。日本国内委員会から、渡邉委員長ほか本部会の委員でもある加藤委員をはじめ12名の委員が参加されています。また、ICIDの日本事務局である農水省からは、青山農村振興局次長ほか海外土地改良技術室のメンバーで参加しております。

  2、第9回アジア地域会議の概要ですが、この会議は9月1日から4日まで、「予測不可能性が増す気候の中で、経済的に実行可能な食料安全保障と持続可能な都市空間を実現するための灌漑の役割」というテーマで開催されまして、世界から各国の国内委員や若手技術者及び関係国際機関が参加しております。併せて協賛会社による展示会も行われております。

  この会議では、アジア地域の気候変動等の課題に関する国際ワークショップ、また投資、ガバナンス、能力開発等をテーマとしたセッションがいろいろ開催されております。この中で、気候変動下における持続可能な水管理(予測・評価手法等)とか水管理の近代化、環境保全、水管理における女性の参加等に関して、開催国のオーストラリアをはじめ各国から事例発表等が行われております。

  「持続可能な都市空間の実現」をテーマとしたセッションでは、オーストラリアの3団体から、スマート認証を受けた水効率の高い技術による住宅の水使用量削減、競技場や住宅庭園での効率的なかんがい事例の紹介等が行われております。

  下に写真を付けておりますが、開会式、国際ワークショップ、展示会など、大変多くの参加者の下で各種行事が開催されております。

  続きまして、2ページでございます。

  3、第75回国際執行理事会の概要ですが、国内委員をはじめとした出席者により、22の所属する委員会、作業部会等に出席し、情報収集を行うとともに、各委員の知見と経験を活かした貢献と情報発信を行いました。

  ICIDの次年度予算や副会長3名等の役員の承認、また世界かんがい施設遺産の認定等の表彰、今後の国際執行理事会の開催予定の確認等が行われました。

  また、日本国内委員から、作業部会の執行部に4名(議長2名、副議長1名、書記1名)が任命又は推薦されております。渡邉委員長がICID副会長の3年間の任期満了を迎えられました。

  下に写真を載せておりますが、左下は渡邉委員長が任期を終えられて祈念盾の授与などがあったところでございます。

  続きまして3ページ、4、国内委員等関係者の発表内容でございます。

  国内委員及びかんがい排水関係の研究に携わる大学や研究機関の若手技術者が、国際ワークショップ等で水田の効率的な水管理や防災機能等に関する日本の知見を発表しております。この下に一覧を載せておりますが、渡邉委員長、奥田副委員長、また加藤委員ほかから日本の事例や日本の機関における研究成果の発表があったほか、4名の若手技術者の方々から研究成果の発表を行っていただいております。

  4ページに発表の様子を掲載しております。先ほど御説明した発表のほか、右上の写真では松野委員が国際ワークショップの司会進行をしていたり、左下の写真では、青山次長がアジア地域部会ワークショップで開会挨拶をするなど対応しております。

  続きまして、5ページでございます。

  副会長の選挙の結果ですが、副会長は9名おりまして、任期が3年で毎年3名ずつ改選が行われております。中段で黄色くハッチしたところ、任期満了を迎えた副会長3名の後任を決める選挙が行われまして、モロッコ、マレーシア、タジキスタンの序列で新副会長が選出されております。

  続きまして6ページ、6、世界かんがい施設遺産の登録でございます。

  施設管理者等から要望のあった3施設を昨年5月にICID本部に申請しましたが、申請した3施設全てが世界かんがい施設遺産に登録・認定されております。今回登録された3施設、下の日本地図に示しておりますが、兵庫県の西光寺野疏水路、滋賀県の龍ケ池揚水機場、宮城県の南原穴堰でございます。

  日本の3施設のほか15施設が新たに登録されておりまして、国別で言うと中国4、インド4、イラン4、イラク1、南アフリカ1、トルコ1となっております。

  この登録表彰式には、登録施設の関係者として伊藤大崎市長や伊藤豊郷町長ほかが参加されまして、現地で盾と認定証を受領していただいております。

  また、右側に国別の登録数を示しておりますが、今回の登録によりまして世界の登録数は20か国177施設、日本の登録数は世界最大の54施設となっております。

  続きまして、7ページでございます。

  上では、世界かんがい施設遺産に登録された際の新聞報道を御紹介しております。

  また、下は今後の国際執行理事会の予定でして、次回は第76回ということで、今年9月にマレーシアで、来年は10月にフランスで、再来年は中国で開催の予定であることが確認されております。

  8ページ以降に参考資料を添付しておりますが、今回は説明を省略させていただきます。

  私からは、以上でございます。

西村部会長  ありがとうございました。

  ただいまの御報告について、御質問、御意見などあればお願いいたします。よろしいでしょうか。

  では、予定の議事は以上で終了したということで、事務局にお返ししたいと思いますが、最後ちょっと駆け足になってしまいましたので、重ねて御質問、御意見などある委員もいらっしゃるかもしれません。もし何かございましたら会議後に事務局にその旨、連絡を頂ければと思いますが、これはいつぐらいまでに。

中西計画調整室長  またメールにて「いつまでに御意見を頂ければ」ということを様式も含めて御依頼させていただきます。

西村部会長  お願いいたします。

  では、事務局にお返ししたいと思います。

中西計画調整室長  ありがとうございます。西村部会長をはじめ委員の皆様には、長時間にわたり御議論いただきました。我々としてもこの後、引き続き次期土地改良長期計画に向けて議論を深めてまいりたいと思いますので、どうぞ引き続きの御指導をよろしくお願いしたいと思います。

  それでは、以上をもちまして本日の部会を終了させていただきます。

  誠にありがとうございました。お疲れさまでした。

16時30分閉会

お問合せ先

農村振興局整備部設計課計画調整室

代表:03-3502-8111(内線5514)
ダイヤルイン:03-6744-2201

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