新たな土地改良長期計画に関する地方懇談会 北海道ブロック(令和7年2月25日)議事概要
1.日時及び場所
日時:令和7年2月25日(火曜日)13時30分~16時00分場所:札幌第1合同庁舎 10階第1・2号会議室
2.議事
(1)新たな土地改良長期計画の策定について(2)北海道における農業農村整備の概況等について
(3)地方代表者による取組の紹介等
(4)質疑・応答
(5)意見交換
3.議事概要
議事概要(PDF : 249KB)4 質疑応答、意見交換の概要
(岡田氏:岡田農場・(株)更別プリデイクシヨン 代表取締役)
突発的な雨が非常に増えており、例えば大雨が降った時に隣の畑からそのまま土が流亡してくるということも起こる。日本の農地を3Dマップにして、ほ場レベルでシミュレーションした、農業版のハザードマップのようなものが必要になると思う。トラクターなどで簡易的な明渠を部分的に作って、何センチ深く掘ればこっちに流れるといったシミュレーションが作れると、畑への浸水等の影響が大きく減る。デジタル田園都市国家構想推進交付金を活用して更別村の農地は全て3Dモデル化しているが、それ以上のことは進んでいない状況にあるので、そういうことができるようになればと思う。また、防災的な面でも活用できると思う。
中山間地域はネットワークが良くない。更別村はデジタル田園都市の取組みを進めており、農地など電波的な影響のないところではWi-Fiの出力制限等の規制緩和を行うことができないかという検討が行われたが進まなかった。これは、高出力のWi-Fiにより電波不良地帯における長距離でのネットワーク構築を狙いとしたもの。スターリンクを一箇所において、そこからLPWAなどを使ってネットワークを繋げればロボットトラクターでなく自動操舵だけでも使えると考えていた。Wi-Fi HaLowも良いが通信制限があり、LoRaWANだと自動操舵には使えるが、回線速度が遅く制限が多い特徴がある。インターネットインフラの補助が必要で、現在ネットワーク環境が悪いほ場についても確保していく必要があると思う。また、完全無人農業で進めている傾向があるが、どこまで必要かというところは感じている。農作業の繁忙期におけるスマート農業技術の活用をしっかり考えていく必要がある。
(西村部会長(座長)
岡田さん他から話のあった排水不良の件について、マイナーな分野だが、今でも問題になっていることを改めて認識。侵食の話は自分の専門であり、3Dモデルだけでは予測はできず,他に必要な雨や土の入力データについて、ここ10年ぐらい科学研究費助成事業で整備をしてきており、御関心あれば、宇都宮大の教員の方で蓄積をしているので、お声がけいただいたらと思う。
(岡田氏:岡田農場・(株)更別プリデイクシヨン 代表取締役)
進める中で一番の課題は、明渠の雑草である。ノイズが多くて、3D化しようと思った時のデータ処理の難易度が高い。また、法面崩壊や明渠の道路横断も問題となる。それも含めた調査用の予算が必要と考える。
(瀧川水資源課長)
事業の実施に当たっては、将来の降雨予測に基づく排水計画の策定を行えるよう、排水に係る計画基準の見直しを行っている。
また、提案いただいた地図が整備できれば、ほ場のどこが被災しやすいかが分かるので、生産者が営農において取り組めることが増えると思う。まずはモデル的に取り組むこと等を検討したい。
情報通信環境について、地域のニーズに応じた整備を支援することとしている。具体な内容は北海道庁又は農林水産省に問合せいただきたい。
(清水委員)
農家自らが簡易的に明渠を整備するという形で対応できるところはあると思うが、それを許容するような整備水準や整備の仕組みのようなものが必要。防災・減災への対応において自助・共助・公助というものがあるが,それと同様に、体力のある農家が自ら農地を守ることができる自助のように,きめ細やかな対応というのはあるのではないか。農家自らというのは、北海道のような経営規模の大きな農家が多いところだと可能ではないかと思った。
(佐藤氏:佐藤農場・大雪土地改良区 理事)
物価高騰に合わせて基盤整備事業の単価、すなわち受益者負担も上昇している。対応できるよう安定した収入を得るためには、農産物の適正価格の維持が必要だと思っている
また、事業の着工までに年数がとてもかかっている。地元としてもできることは行っていきたいので、早期の事業採択をお願いしたい。
畑地化事業があるが、条件の悪い土地などは畑地にもできず、耕作放棄地になる可能性が懸念されている。今後、そのような農地への支援や対策などをお願いしたい。
土地改良施設が全国的に老朽化している状態で、更新に皆さん苦慮されているのではないかと思っている。単純にただ新しくしていくのではなく、メリハリをつけた更新を国などと連携をとって進めていきたいと思っている。予算も人も必要になるので、施設延命をしながら早期更新に努力していきたい。
(瀧川水資源課長)
合理的な価格の形成に向けては、今国会で法案を審議いただき、取り組んでいくことになっている。
土地改良事業の実施に当たっては、事業種類別に農家負担の軽減のための仕組みを用意しているので、どの軽減措置が適用できるかは北海道庁や開発局の担当に確認いただきたい。制度拡充すべきことがあれば、引き続き検討していきたい。
早期の事業採択に向けて、必要な予算をきちんと確保し、多くの地区が1年でも早く終わるよう努めてまいりたい。
老朽化した施設については、単純に更新するだけでなく、例えばポンプ場を統廃合するなど、維持管理費を低減させながら更新することも進めていきたい。
また、これまで突発事故への復旧については、急施の事業着手を可能にしていたが、今回の土地改良法の改正の中に、事前の事故防止についても急施の事業として行える仕組みを盛り込んでいる。事前・事後の両方の観点から機能保全を図っていきたい。
(沼田氏:北海道農業協同組合中央会JA総合支援部営農支援部長)
農地の確保については食料安全保障上非常に重要な課題であるが、人の問題についても同様。農業者の減少の流れは、北海道においては止められない流れであり、必然的に1戸あたりの経営規模は非常に大きくなっている。省力化や効率化、農地の大区画化、農道の整備、暗渠・明渠排水の整備などの予算について、十分な確保をお願いしたい。
近年の集中豪雨により農地の崩落や堤防の決壊など自然災害が各地で発生。近年一番の被害は平成28年の集中豪雨で十勝とオホーツクが相当な被害を受けた。オホーツク管内では農地崩落などで川に土砂が流れ込み、海に流れ込むということが起きた。農業だけではなく、漁業にも被害が及んでしまう。すでに個人の努力では限界があり、国による対策が必要である。施策の充実と予算の確保をお願いしたい。
(瀧川水資源課長)
昨年、国土強靱化法が改正され、今後は、国土強靱化中期実施計画を策定して、5年単位で予算規模やKPIを定めて防災・減災対策を講じていくことになった。土地改良においても、国土強靱化予算を確保して防災・減災対策を進めていきたい。
(南氏:浜頓別町長)
担い手対策が酪農業の大きな課題。農家戸数もかなり減ってきているが、牧草収穫時のトラック作業員やオペレーター不足も深刻な問題。外国人が酪農現場では今重要な労働力になっているが、その方々の住宅について、どのような支援が可能かを考えている。
農業機械の大型化により、道路の幅や横断管の強度が課題となっており、財政支援や制度の構築をお願いしたい。また、基盤整備事業の長期化も課題である。
エゾシカによる牧草の食害により、大きな損害につながっている。有害鳥獣対策のさらなる強化をお願いしたい。
農業農村整備事業の安定的な予算の確保をしていただいて、未来に繋がる酪農・農業農村の整備をしていただくことをお願いしたい。
(清水委員)
大きな土地改良事業は時間がかかり、要望を実現するまでのタイムラグを改善できるか、考えていかなければいけないと感じた。
情報通信機器などスマート農業の技術の進歩のスピードに比して、土木事業は時間を要するため,タイムラグがあると思う。災害復旧に関しては、迅速に対応しなければならない状況で、どう優先順位をつけるか、どこまで何をやるかということを改めて整理しながら基準や水準を考えていかなければいけないと思った。
(瀧川水資源課長)
現場のニーズに素早く応えるために、まずは必要な予算をしっかり確保していきたい。また、計画を含めて、事業実施にはある程度時間がかかってしまう。農業者の自力施行や共同機械導入に対する支援も用意しているので、これらの活用も検討いただきたい。
(大橋氏:北海道経済連合会理事・事務局長)
排水対策設備等の経年劣化や老朽化が進んでおり、施設も多いことから整備を行い続けなければならないと思うので、しっかりと御対応いただきたい。
大区画化のほかに農道、ターン農道等を含めて、スマート農業の機械がスムーズに動き、機能がフルに発揮できる環境の整備をお願いしたい。大区画化も、まだ道内は8割ほどが1ha以下なので整備が必要であり、しっかりと予算を確保して進めていただきたい。
農業の担い手人材を確保するためには、儲かる農業にすることが重要。国の施策立案においても、そのような視点に立って、どこを重点的にやるのか、受益者負担をどう考えるのかといったところをしっかり対策することで、生産者がやりがいを持って取り組んでいただけるようになると思う。是非、検討をお願いしたい。
(小西氏:フードライター)
農業者の皆さんには儲けていただきたいと思っているが、消費者として、最近の農産物の大幅な価格高騰が気になっているところ。温暖化や異常気象が背景にあると思うが、農業者に必要な整備をお願いしたい。逆に雨が降らなくて、大変という話も聞く。オホーツク地域のたまねぎ農家は、かんがい設備がない地域が多いので、たまねぎがとても小さく育って大変と聞いている。かんがいという部分も目を向けていただきたい。
農産物の価格に対する国民の理解を促進するためにも、農業の今や未来の話を知らせていかないと生産地と消費地の溝が埋まらないように感じるので、情報の出し方も気遣っていただきたい。
取材している中で、農家女性の地位向上には、まだまだ課題があると感じている。更なる活躍の場をサポートできると良いと思う。また、収穫の繁忙期に、地域にいる非農家女性の力をうまく生かしてネットワークづくりなどもできるとよいと思う。
北海道は課題先進地と言われ、本当に、町を存続させるために大変な思いをされている。その中で食というのは関係人口、連携人口を増やす大切な手段と言い続けられている。農村の振興への質問となるが、「基盤整備を契機とした6次産業化やノウハウ、取り組みを通じて、農業者の所得と雇用機会の確保をする」とはどういう考えなのか。
(瀧川水資源課長)
小学校4~5年生の教科書には、最近、ほ場整備やかんがい施設の整備など土地改良の分野についても記載されるようになっており、そのような年代に対して出前授業などを行うことが有効。その他、各種媒体を活用したPRや世界かんがい遺産の周知など、幅広い世代への周知・PRに取り組んでいきたい。
基盤整備を契機とした、野菜等園芸作物の新たな導入及びその農産物を加工する6次産業化の取組や、都市農村交流・農泊の取組も組み合わせて、農業者の所得や雇用機会の確保を図っている優良事例があり、そういった取組を横展開していきたい。
(藤田氏:北海道土地改良事業団体連合会 専務理事)
農家1戸あたりの経営規模の拡大が進んでおり、大区画化やスマート農業の導入の要望が増えている。また、比較的小規模で基盤整備が進んでいなかった地域においても、将来に向けて、基盤整備に対する要望が増加している。
一方、農業施設の老朽化による維持管理や更新が大きな課題。道内のパイプラインなどでも近年大きな事故が発生している。 また、道内には畑地帯や酪農地帯を中心に莫大な営農用水設備があり、老朽化等に対応する更新も大きな課題。農地や農業用施設にも毎年甚大な被害が発生する中、老朽化施設の適切な維持管理や更新を行うことは、災害や事故を未然に防ぎ、被害を軽減する上で重要な取り組みである。今回の土地改良法の改正案では、これまで以上に更新整備を行うことが可能となるよう、国等の発意により基幹施設の更新ができることとされており、今後、施設の効果的な整備保全が一層推進されることが期待される。
農家人口の減少や水田活用交付金の見直しによる畑地化の推進などにより、一部の改良区からは将来の運営に対し懸念する声も上がっている中、令和9年度より水田政策を根本的に見直すとしており、具体的にどのような制度となるか、農業者も大きな関心を寄せている。畑地化を進める一方、高温による米の収量品質の低下、さらには昨年からの米不足と米価の高騰などの状況を踏まえ、新たな制度が検討されると思われる。一方で今後、積極的に米の輸出に取り組むとしており、生産コストを低減することが必要であることから、基盤整備を積極的に行うとともに、専業的に米作りを行うなどの取り組みが必要。国が将来展望に立った長期的で安定的な水田政策を構築することにより、農家が安心して営農ができ、土地改良区が安定して運営できる仕組みとなることが必要と考える。
ほ場の大区画化やスマート農業など、大規模で効率的な農業を展開する技術は近年急速に発展。農地の整備が遅れることは農業の生産性向上のみならず、農地の流動化にも大きく影響するなど、北海道農業の将来を左右することとなる中、近年、ほぼ横ばいの土地改良予算が6年補正では多く増やしていただいたことに感謝。 しかしながら、人件費や資材費などが高騰、工事単価も上昇しており、地域からは計画的な事業の推進が難しくなっているとの声が寄せられている。基本法改正を受け、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めるとしており、これまで以上の予算の確保が必要。近年は土地改良の必要性、重要性が理解されていると感じるが、土地改良を行わない農地は誰も耕す人がいなくなり、耕作放棄地になるという厳しい現実に日本の農業が直面しているからだと考える。今まで以上のペースで事業を進捗していく必要があると考えるので、改正土地改良法と新たな土地改良長期計画に基づき、計画的な整備が推進されることを期待する。
(大西農村振興局長)
北海道では、全国の01月04日にあたる114万haの農地で、大規模で専業的な農業が展開されているところ。近年の農家減少ペースは早く、10年後には2割の農地が耕作できなくなる恐れもあり、一層の省力化・効率化や規模拡大が必要。
そのためには、省力化や効率化の推進に向けたスマート農業技術の導入が重要であり、その効果を最大限発揮させていくためにも、2割に止まっている1ha以上の水田の割合の向上に向けた大区画化や、道内に4万ha程度ある、携帯電話の繋がらない、いわゆる不感地帯の解消に向けた情報通信環境などの整備が重要。
また、改正基本法で謳われている食料安全保障の確保ということでは、輸入に依存している麦や大豆、飼料作物などの生産拡大が必要であり、そのためには、農地の排水改良や草地整備が重要である。大雨による自然災害や、近年の異常気象による高温・少雨などに対応するためには、用排水路や畑地かんがいなど、農業水利施設の整備を進めるとともに、水利施設の4割が既に耐用年数を超えており、突発事故の発生が多くなっていくことも懸念されていることから、農業水利施設の長寿命化や、施設管理者の体制整備も含めた、戦略的な保全管理の取組を進めていくことも重要。
さらには、農道や農業集落排水、営農用水などといった農村インフラについても、整備から相当年数が経過しており、そうした施設の点検・診断や、長寿命化や耐震化などの計画的な更新整備も重要。
このように、農業農村整備に求められていること、取り組まなくてはならない整備が数多くあり、そうした整備をしっかりと進めていくためには、我々、道も含め、市町村、土地改良区、農協などでは、農業農村整備に精通した人材が減少傾向にあることから、そうした人材の確保や育成を行うことも重要であり、円滑に整備が進んでいくためには、地域計画を含め、地域の目指す整備の方向性が、関係者の合意のもとしっかり定まっていることが重要となることから、地域の整備構想づくりへの一層の支援や、農業農村整備の重要性やその効果について、国民の理解や意識醸成に向けて取り組むことなども重要であると考える。
整備を行った農業者の方々からは、作業性が向上したとか、収量・品質が安定した、といった生産性に関する話の他にも、跡継ぎが戻ってきてくれた、地域の活性化に繋がったなどの整備による効果のほか、非常に多くの整備要望も寄せられており、農業農村整備に対する地域の皆様の期待の大きさを強く感じている。
こうした地域からの声に、今後もしっかりと応えるとともに、北海道農業が日本の食料供給地域としての役割をこれからも果たしていくためにも、さまざまな国の支援が不可欠と考えている。
(北室委員)
土地改良区の女性理事が非常に少ないということが、先般の東京での会議でも論点の一つになったが、住み続けられる農村という視点から、女性理事が増えることの意義や利点はどういったところにあるか教えてほしい。
(佐藤氏:佐藤農場・大雪土地改良区 理事)
私自身、女性理事を務めさせていただいており、組織に何かメリットをもたらすことができたかは自分自身では分かりかねるが、女性理事の登用に向けては当人だけでなく、御家族の理解も大切であり、アプローチにあたっては、土地改良区だけでなく市町村の方も一緒に行ってもらうこともよいと考える。
(岡田氏:岡田農場・(株)更別プリデイクシヨン 代表取締役)
スマート農機の導入に向けては支援がなされているが、作業効率を重視した機器の開発が多く、データを利活用した農業の開発が遅れている。例えば、保水ポリマーというトウモロコシ由来の資材がある。土壌の水分を把握し、ドローンで必要なところにだけ散布していれば、ある程度の干ばつには耐えられるというもの。そういう研究はほとんど進んでいない。
耕作放棄地対策は自動農業が有効と考えている。例えば、雑穀を自動で収穫する機械があれば、収穫は自動で行える。後は、フードプリンターに出力するように粉にすれば、地域の産業として工場もできて、輸送コストも下がる。このような柔軟な考え方で、カロリーを補給できるような取り組みが日本全体で考えられるよう期待する。
(以上)
(岡田氏:岡田農場・(株)更別プリデイクシヨン 代表取締役)
突発的な雨が非常に増えており、例えば大雨が降った時に隣の畑からそのまま土が流亡してくるということも起こる。日本の農地を3Dマップにして、ほ場レベルでシミュレーションした、農業版のハザードマップのようなものが必要になると思う。トラクターなどで簡易的な明渠を部分的に作って、何センチ深く掘ればこっちに流れるといったシミュレーションが作れると、畑への浸水等の影響が大きく減る。デジタル田園都市国家構想推進交付金を活用して更別村の農地は全て3Dモデル化しているが、それ以上のことは進んでいない状況にあるので、そういうことができるようになればと思う。また、防災的な面でも活用できると思う。
中山間地域はネットワークが良くない。更別村はデジタル田園都市の取組みを進めており、農地など電波的な影響のないところではWi-Fiの出力制限等の規制緩和を行うことができないかという検討が行われたが進まなかった。これは、高出力のWi-Fiにより電波不良地帯における長距離でのネットワーク構築を狙いとしたもの。スターリンクを一箇所において、そこからLPWAなどを使ってネットワークを繋げればロボットトラクターでなく自動操舵だけでも使えると考えていた。Wi-Fi HaLowも良いが通信制限があり、LoRaWANだと自動操舵には使えるが、回線速度が遅く制限が多い特徴がある。インターネットインフラの補助が必要で、現在ネットワーク環境が悪いほ場についても確保していく必要があると思う。また、完全無人農業で進めている傾向があるが、どこまで必要かというところは感じている。農作業の繁忙期におけるスマート農業技術の活用をしっかり考えていく必要がある。
(西村部会長(座長)
岡田さん他から話のあった排水不良の件について、マイナーな分野だが、今でも問題になっていることを改めて認識。侵食の話は自分の専門であり、3Dモデルだけでは予測はできず,他に必要な雨や土の入力データについて、ここ10年ぐらい科学研究費助成事業で整備をしてきており、御関心あれば、宇都宮大の教員の方で蓄積をしているので、お声がけいただいたらと思う。
(岡田氏:岡田農場・(株)更別プリデイクシヨン 代表取締役)
進める中で一番の課題は、明渠の雑草である。ノイズが多くて、3D化しようと思った時のデータ処理の難易度が高い。また、法面崩壊や明渠の道路横断も問題となる。それも含めた調査用の予算が必要と考える。
(瀧川水資源課長)
事業の実施に当たっては、将来の降雨予測に基づく排水計画の策定を行えるよう、排水に係る計画基準の見直しを行っている。
また、提案いただいた地図が整備できれば、ほ場のどこが被災しやすいかが分かるので、生産者が営農において取り組めることが増えると思う。まずはモデル的に取り組むこと等を検討したい。
情報通信環境について、地域のニーズに応じた整備を支援することとしている。具体な内容は北海道庁又は農林水産省に問合せいただきたい。
(清水委員)
農家自らが簡易的に明渠を整備するという形で対応できるところはあると思うが、それを許容するような整備水準や整備の仕組みのようなものが必要。防災・減災への対応において自助・共助・公助というものがあるが,それと同様に、体力のある農家が自ら農地を守ることができる自助のように,きめ細やかな対応というのはあるのではないか。農家自らというのは、北海道のような経営規模の大きな農家が多いところだと可能ではないかと思った。
(佐藤氏:佐藤農場・大雪土地改良区 理事)
物価高騰に合わせて基盤整備事業の単価、すなわち受益者負担も上昇している。対応できるよう安定した収入を得るためには、農産物の適正価格の維持が必要だと思っている
また、事業の着工までに年数がとてもかかっている。地元としてもできることは行っていきたいので、早期の事業採択をお願いしたい。
畑地化事業があるが、条件の悪い土地などは畑地にもできず、耕作放棄地になる可能性が懸念されている。今後、そのような農地への支援や対策などをお願いしたい。
土地改良施設が全国的に老朽化している状態で、更新に皆さん苦慮されているのではないかと思っている。単純にただ新しくしていくのではなく、メリハリをつけた更新を国などと連携をとって進めていきたいと思っている。予算も人も必要になるので、施設延命をしながら早期更新に努力していきたい。
(瀧川水資源課長)
合理的な価格の形成に向けては、今国会で法案を審議いただき、取り組んでいくことになっている。
土地改良事業の実施に当たっては、事業種類別に農家負担の軽減のための仕組みを用意しているので、どの軽減措置が適用できるかは北海道庁や開発局の担当に確認いただきたい。制度拡充すべきことがあれば、引き続き検討していきたい。
早期の事業採択に向けて、必要な予算をきちんと確保し、多くの地区が1年でも早く終わるよう努めてまいりたい。
老朽化した施設については、単純に更新するだけでなく、例えばポンプ場を統廃合するなど、維持管理費を低減させながら更新することも進めていきたい。
また、これまで突発事故への復旧については、急施の事業着手を可能にしていたが、今回の土地改良法の改正の中に、事前の事故防止についても急施の事業として行える仕組みを盛り込んでいる。事前・事後の両方の観点から機能保全を図っていきたい。
(沼田氏:北海道農業協同組合中央会JA総合支援部営農支援部長)
農地の確保については食料安全保障上非常に重要な課題であるが、人の問題についても同様。農業者の減少の流れは、北海道においては止められない流れであり、必然的に1戸あたりの経営規模は非常に大きくなっている。省力化や効率化、農地の大区画化、農道の整備、暗渠・明渠排水の整備などの予算について、十分な確保をお願いしたい。
近年の集中豪雨により農地の崩落や堤防の決壊など自然災害が各地で発生。近年一番の被害は平成28年の集中豪雨で十勝とオホーツクが相当な被害を受けた。オホーツク管内では農地崩落などで川に土砂が流れ込み、海に流れ込むということが起きた。農業だけではなく、漁業にも被害が及んでしまう。すでに個人の努力では限界があり、国による対策が必要である。施策の充実と予算の確保をお願いしたい。
(瀧川水資源課長)
昨年、国土強靱化法が改正され、今後は、国土強靱化中期実施計画を策定して、5年単位で予算規模やKPIを定めて防災・減災対策を講じていくことになった。土地改良においても、国土強靱化予算を確保して防災・減災対策を進めていきたい。
(南氏:浜頓別町長)
担い手対策が酪農業の大きな課題。農家戸数もかなり減ってきているが、牧草収穫時のトラック作業員やオペレーター不足も深刻な問題。外国人が酪農現場では今重要な労働力になっているが、その方々の住宅について、どのような支援が可能かを考えている。
農業機械の大型化により、道路の幅や横断管の強度が課題となっており、財政支援や制度の構築をお願いしたい。また、基盤整備事業の長期化も課題である。
エゾシカによる牧草の食害により、大きな損害につながっている。有害鳥獣対策のさらなる強化をお願いしたい。
農業農村整備事業の安定的な予算の確保をしていただいて、未来に繋がる酪農・農業農村の整備をしていただくことをお願いしたい。
(清水委員)
大きな土地改良事業は時間がかかり、要望を実現するまでのタイムラグを改善できるか、考えていかなければいけないと感じた。
情報通信機器などスマート農業の技術の進歩のスピードに比して、土木事業は時間を要するため,タイムラグがあると思う。災害復旧に関しては、迅速に対応しなければならない状況で、どう優先順位をつけるか、どこまで何をやるかということを改めて整理しながら基準や水準を考えていかなければいけないと思った。
(瀧川水資源課長)
現場のニーズに素早く応えるために、まずは必要な予算をしっかり確保していきたい。また、計画を含めて、事業実施にはある程度時間がかかってしまう。農業者の自力施行や共同機械導入に対する支援も用意しているので、これらの活用も検討いただきたい。
(大橋氏:北海道経済連合会理事・事務局長)
排水対策設備等の経年劣化や老朽化が進んでおり、施設も多いことから整備を行い続けなければならないと思うので、しっかりと御対応いただきたい。
大区画化のほかに農道、ターン農道等を含めて、スマート農業の機械がスムーズに動き、機能がフルに発揮できる環境の整備をお願いしたい。大区画化も、まだ道内は8割ほどが1ha以下なので整備が必要であり、しっかりと予算を確保して進めていただきたい。
農業の担い手人材を確保するためには、儲かる農業にすることが重要。国の施策立案においても、そのような視点に立って、どこを重点的にやるのか、受益者負担をどう考えるのかといったところをしっかり対策することで、生産者がやりがいを持って取り組んでいただけるようになると思う。是非、検討をお願いしたい。
(小西氏:フードライター)
農業者の皆さんには儲けていただきたいと思っているが、消費者として、最近の農産物の大幅な価格高騰が気になっているところ。温暖化や異常気象が背景にあると思うが、農業者に必要な整備をお願いしたい。逆に雨が降らなくて、大変という話も聞く。オホーツク地域のたまねぎ農家は、かんがい設備がない地域が多いので、たまねぎがとても小さく育って大変と聞いている。かんがいという部分も目を向けていただきたい。
農産物の価格に対する国民の理解を促進するためにも、農業の今や未来の話を知らせていかないと生産地と消費地の溝が埋まらないように感じるので、情報の出し方も気遣っていただきたい。
取材している中で、農家女性の地位向上には、まだまだ課題があると感じている。更なる活躍の場をサポートできると良いと思う。また、収穫の繁忙期に、地域にいる非農家女性の力をうまく生かしてネットワークづくりなどもできるとよいと思う。
北海道は課題先進地と言われ、本当に、町を存続させるために大変な思いをされている。その中で食というのは関係人口、連携人口を増やす大切な手段と言い続けられている。農村の振興への質問となるが、「基盤整備を契機とした6次産業化やノウハウ、取り組みを通じて、農業者の所得と雇用機会の確保をする」とはどういう考えなのか。
(瀧川水資源課長)
小学校4~5年生の教科書には、最近、ほ場整備やかんがい施設の整備など土地改良の分野についても記載されるようになっており、そのような年代に対して出前授業などを行うことが有効。その他、各種媒体を活用したPRや世界かんがい遺産の周知など、幅広い世代への周知・PRに取り組んでいきたい。
基盤整備を契機とした、野菜等園芸作物の新たな導入及びその農産物を加工する6次産業化の取組や、都市農村交流・農泊の取組も組み合わせて、農業者の所得や雇用機会の確保を図っている優良事例があり、そういった取組を横展開していきたい。
(藤田氏:北海道土地改良事業団体連合会 専務理事)
農家1戸あたりの経営規模の拡大が進んでおり、大区画化やスマート農業の導入の要望が増えている。また、比較的小規模で基盤整備が進んでいなかった地域においても、将来に向けて、基盤整備に対する要望が増加している。
一方、農業施設の老朽化による維持管理や更新が大きな課題。道内のパイプラインなどでも近年大きな事故が発生している。 また、道内には畑地帯や酪農地帯を中心に莫大な営農用水設備があり、老朽化等に対応する更新も大きな課題。農地や農業用施設にも毎年甚大な被害が発生する中、老朽化施設の適切な維持管理や更新を行うことは、災害や事故を未然に防ぎ、被害を軽減する上で重要な取り組みである。今回の土地改良法の改正案では、これまで以上に更新整備を行うことが可能となるよう、国等の発意により基幹施設の更新ができることとされており、今後、施設の効果的な整備保全が一層推進されることが期待される。
農家人口の減少や水田活用交付金の見直しによる畑地化の推進などにより、一部の改良区からは将来の運営に対し懸念する声も上がっている中、令和9年度より水田政策を根本的に見直すとしており、具体的にどのような制度となるか、農業者も大きな関心を寄せている。畑地化を進める一方、高温による米の収量品質の低下、さらには昨年からの米不足と米価の高騰などの状況を踏まえ、新たな制度が検討されると思われる。一方で今後、積極的に米の輸出に取り組むとしており、生産コストを低減することが必要であることから、基盤整備を積極的に行うとともに、専業的に米作りを行うなどの取り組みが必要。国が将来展望に立った長期的で安定的な水田政策を構築することにより、農家が安心して営農ができ、土地改良区が安定して運営できる仕組みとなることが必要と考える。
ほ場の大区画化やスマート農業など、大規模で効率的な農業を展開する技術は近年急速に発展。農地の整備が遅れることは農業の生産性向上のみならず、農地の流動化にも大きく影響するなど、北海道農業の将来を左右することとなる中、近年、ほぼ横ばいの土地改良予算が6年補正では多く増やしていただいたことに感謝。 しかしながら、人件費や資材費などが高騰、工事単価も上昇しており、地域からは計画的な事業の推進が難しくなっているとの声が寄せられている。基本法改正を受け、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めるとしており、これまで以上の予算の確保が必要。近年は土地改良の必要性、重要性が理解されていると感じるが、土地改良を行わない農地は誰も耕す人がいなくなり、耕作放棄地になるという厳しい現実に日本の農業が直面しているからだと考える。今まで以上のペースで事業を進捗していく必要があると考えるので、改正土地改良法と新たな土地改良長期計画に基づき、計画的な整備が推進されることを期待する。
(大西農村振興局長)
北海道では、全国の01月04日にあたる114万haの農地で、大規模で専業的な農業が展開されているところ。近年の農家減少ペースは早く、10年後には2割の農地が耕作できなくなる恐れもあり、一層の省力化・効率化や規模拡大が必要。
そのためには、省力化や効率化の推進に向けたスマート農業技術の導入が重要であり、その効果を最大限発揮させていくためにも、2割に止まっている1ha以上の水田の割合の向上に向けた大区画化や、道内に4万ha程度ある、携帯電話の繋がらない、いわゆる不感地帯の解消に向けた情報通信環境などの整備が重要。
また、改正基本法で謳われている食料安全保障の確保ということでは、輸入に依存している麦や大豆、飼料作物などの生産拡大が必要であり、そのためには、農地の排水改良や草地整備が重要である。大雨による自然災害や、近年の異常気象による高温・少雨などに対応するためには、用排水路や畑地かんがいなど、農業水利施設の整備を進めるとともに、水利施設の4割が既に耐用年数を超えており、突発事故の発生が多くなっていくことも懸念されていることから、農業水利施設の長寿命化や、施設管理者の体制整備も含めた、戦略的な保全管理の取組を進めていくことも重要。
さらには、農道や農業集落排水、営農用水などといった農村インフラについても、整備から相当年数が経過しており、そうした施設の点検・診断や、長寿命化や耐震化などの計画的な更新整備も重要。
このように、農業農村整備に求められていること、取り組まなくてはならない整備が数多くあり、そうした整備をしっかりと進めていくためには、我々、道も含め、市町村、土地改良区、農協などでは、農業農村整備に精通した人材が減少傾向にあることから、そうした人材の確保や育成を行うことも重要であり、円滑に整備が進んでいくためには、地域計画を含め、地域の目指す整備の方向性が、関係者の合意のもとしっかり定まっていることが重要となることから、地域の整備構想づくりへの一層の支援や、農業農村整備の重要性やその効果について、国民の理解や意識醸成に向けて取り組むことなども重要であると考える。
整備を行った農業者の方々からは、作業性が向上したとか、収量・品質が安定した、といった生産性に関する話の他にも、跡継ぎが戻ってきてくれた、地域の活性化に繋がったなどの整備による効果のほか、非常に多くの整備要望も寄せられており、農業農村整備に対する地域の皆様の期待の大きさを強く感じている。
こうした地域からの声に、今後もしっかりと応えるとともに、北海道農業が日本の食料供給地域としての役割をこれからも果たしていくためにも、さまざまな国の支援が不可欠と考えている。
(北室委員)
土地改良区の女性理事が非常に少ないということが、先般の東京での会議でも論点の一つになったが、住み続けられる農村という視点から、女性理事が増えることの意義や利点はどういったところにあるか教えてほしい。
(佐藤氏:佐藤農場・大雪土地改良区 理事)
私自身、女性理事を務めさせていただいており、組織に何かメリットをもたらすことができたかは自分自身では分かりかねるが、女性理事の登用に向けては当人だけでなく、御家族の理解も大切であり、アプローチにあたっては、土地改良区だけでなく市町村の方も一緒に行ってもらうこともよいと考える。
(岡田氏:岡田農場・(株)更別プリデイクシヨン 代表取締役)
スマート農機の導入に向けては支援がなされているが、作業効率を重視した機器の開発が多く、データを利活用した農業の開発が遅れている。例えば、保水ポリマーというトウモロコシ由来の資材がある。土壌の水分を把握し、ドローンで必要なところにだけ散布していれば、ある程度の干ばつには耐えられるというもの。そういう研究はほとんど進んでいない。
耕作放棄地対策は自動農業が有効と考えている。例えば、雑穀を自動で収穫する機械があれば、収穫は自動で行える。後は、フードプリンターに出力するように粉にすれば、地域の産業として工場もできて、輸送コストも下がる。このような柔軟な考え方で、カロリーを補給できるような取り組みが日本全体で考えられるよう期待する。
(以上)
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