新たな土地改良長期計画に関する地方懇談会 関東ブロック(令和7年2月17日)議事概要
1.日時及び場所
日時:令和7年2月17日(月曜日)13時15分~15時15分場所:関東農政局 11F防災対策室
2.議事
(1)新たな土地改良長期計画の策定について(2)関東の農業農村整備の概要
(3)地方代表者による意見・要望等
(4)質疑・応答
(5)意見交換
3.議事概要
議事概要(PDF : 209KB)4 質疑応答、意見交換の概要
(埼玉県地域婦人会連合会会長:柿沼氏)
耕作放棄地は、草が生い茂り、自転車やバイクの走行に支障を来すなど、地域の安全面にも支障を来している。
畦畔撤去による集約化を進めるべき。しかし、自分の土地の方が豊かだから等と言って現場ではなかなか進んでいない。
消費者の方々にもっと農村に入ってきてほしい。そのためには、水利権の問題もあるが、冬水通水による人と生き物が共存できる環境づくりが必要である。
農業集落排水施設の老朽化が問題となっている。また、都市下水だけでは農村はカバーできず、水を綺麗に保つためには合併浄化槽の導入を進める必要がある。
米の輸出拡大ということが言われているが、食料自給率がカロリーベースで38%しかない中、まずは国民の食料を確保することが重要である。
土地改良は国の基盤である。食料自給率を向上させるためだけでなく、国土の保全という観点からも耕作放棄地の解消に向けた取組が必要である。
我が家の周りでも鳥獣被害が増えていることを実感している。農家が安心して営農できるよう、鳥獣被害対策の取組を進めてほしい。
土地改良区の総代会にはほとんど男性しかいない。6次産業化には女性が関わっていることが多く、魅力ある農村づくりという観点では女性の力が必要と考えており、土地改良区の運営にもっと女性が参画すべきである。
(伊那市長:白鳥氏)
土地改良事業がなければ、農業は成り立たない。土地改良事業の重要性を国や地方からしっかりと発信していく必要。
当市には小さな土地改良区も多いが、それらは中山間地域に位置している。中山間地域の農業や水源涵養機能を守るという観点からも、こうした小さな土地改良区も非常に大事であるという認識を持っていただきたい。
土地改良区の組合員のほとんどが土地持ち非農家であるため、賦課金に対する理解がなかなか得られず、賦課金徴収に非常に人的な負担が掛かっている。また、高齢化が進む中で、農地維持のための集落の共同活動もできなくなりつつある。このため、巡回指導、会計への支援、運営資金への補助、公的機関による関与の強化等、土地改良区の体制強化に向けた人的、財政的な支援をお願いしたい。
事業化の機運が高まっても、県や土地改良区も人手不足で計画づくりがなかなか進まない。事業化に向けた取組を進めるため、県土連の職員等制度に精通した実務者による支援をお願いしたい。
((株)カモスフィールド代表取締役:大橋氏)
小松菜、ほうれん草をオーガニックで作っているが、水が不可欠である。しかし、規模拡大をしようにも水が来てなければできないのに、なかなか整備が進まない。道路を挟んだ隣のほ場であってもいつ整備できるか分からないと言われるため、柔軟な整備をお願いしたい。
なぜ農業をやらないかと聞くと、皆儲からないからだと言う。農家が所得を確保できるような政策を考えないと農業は衰退する一方である。
国として有機農業の取組面積を100万haまで拡大するという目標を掲げるのであれば、土地改良事業は、有機農業に取り組む地域を優先的にやっていくようにしなければ達成できないと考えている。
産地パワーアップ事業を使ってハウス等の施設を設置しようとすると、要件上、平場だと3ha以上設置しなければならないが、その規模のハウスを設置しようと思うと、今では資材高騰等による影響で2,3億円の投資が必要になる。一方で、野菜の出荷場のような付帯設備に対しては国から補助が出ない。今後、我々のような農業法人に畑地を任せていくというのであれば、土地改良事業でもそういった設備に対する支援があればありがたい。
(栃木県土地改良事業団体連合会専務理事:渡邉氏)
本県においても、今後を担う若者にとって、気候変動を踏まえた新品種・新技術、機械も含めた営農上の施設更新と並んで、基盤整備が重要なキーワードとなっている。食料安全保障という流れが来ている中で、国、県、地元が一体となって、土地改良事業の重要性をアピールし、これを国民運動にする仕組みを作っていく必要がある。
(農村振興局水資源課瀧川課長)
土地改良事業の重要性の発信や、土地改良区の体制の強化、今後の存り方は全体を通して共通の課題であったと思う。今般の土地改良法改正や令和7年度予算の中で拡充しているものもあるが、更にどのように充実させていくかについては、次期土地改良長期計画の審議の中で議論を深めていきたい。
大橋代表からは、水が特に重要である中で、基盤整備がなかなか進まないという話を伺った。この場では個別の話には即答しかねるが、現場の話を伺った上で、生産者の方が計画的に営農できるよう一歩でも改善していきたい。
柿沼会長から意見のあった女性の参画という点については、先週閣議決定した土地改良法の改正案に、理事の構成は性別や年齢が偏らないよう配慮する旨を規定したところであり、これが現場にしっかり浸透していくように取り組んでいきたい。
(井上委員)
消費者への理解醸成として、日本の食料自給率や食料安全保障がどのように成り立っているのかということを、小中学校の教育の現場で普及していくことが必要ではないか。
法律を整備した後の基本的なルールを国が定め、その二階建て部分で、各地域が柔軟に取り組んでいくことが、政策の実現につながってくると思うが、そのためには人材が重要である。行政、民間、大学等の地域に精通し、横断的に取り組むことができる人材を流動的に起用していくことで、情報が集約化され、そこから課題が見えてくるという図式にしていくことがポイントと考える。
有機生産者が増えていく上ではゾーニングが有効な手法になるが、このゾーニングや畑の土地改良ということに関しても、中核的にリーダーシップを発揮できる法人経営体がいい経営を行っていることが、地域のモデルケースになり得る。
(木下委員)
共通の問題意識として、土地改良区の運営基盤強化が喫緊の課題であることが確認できた。こうした中で、「水土里ビジョン」の取組は、現場の課題の本質を突いた取組となると考えるか。
水利組合と土地改良区は、有機的に結びついた相互補完的な関係であるが、水利組合も高齢化が進んでおり、組織運営が非常に難しくなってきている。現場ではこれに対応するために、土地改良区が末端まで全部面倒をみる、あるいは、水利組合を何とか維持していこうと悩んでおられると思う。
土地改良区のガバナンスのメンバーが偏っているという意見があったが、世代交代も大きな課題と考えている。水や農地の条件等、土地改良事業の存り方は次の世代の経営判断を大きく左右するはずなのに、若い経営者がその意思決定に加わらないのは非常に問題である。若い世代は営農が忙しくて土地改良区の役員にはなりたがらないという現実もあるが、自分たちの将来に関わることなのだから、次の世代を担う人たちが土地改良事業の意思決定に積極的に関わる仕組みづくりや啓発活動が必要ではないか。
((株)カモスフィールド代表取締役:大橋氏)
まさにそのとおりである。私も担い手として呼ばれたが、土地の割り当て等にはほぼ関わっていない。私は新規就農者なので、昔からいる人が決めるのは当然とは思うが、意思決定の場に入れてもらえれば、こういう要望があるとか、区画や面積はこれぐらいほしいといったことも話し合いの中で決められるのかなと思う。
(埼玉県地域婦人会連合会会長:柿沼氏)
世代交代というのはなかなか進んでおらず、総代会に若い世代が数人入ったとしても、意見が通らないというのも現実である。女性であれば、また違った角度からの意見が言えると思う。
(栃木県土地改良事業団体連合会専務理事:渡邉氏)
施設の保全管理という観点からすると、今回の「水土里ビジョン」は大変有意義なものとなると思う。上下水道と異なり、農業水利施設は、基幹的施設を除けば、ほとんどが地域のボランティア的な仕事によって施設管理が成り立っている。そのような中、地域の方々にとって、将来の施設の維持管理にどれだけの費用がかかるかが明確になるとういう点において素晴らしい取組である。
一方、土地改良区がその先頭に立って音頭をとって、地域をまとめていかなければならない点には難しさを感じている。しかし、いいチャンスと捉え、これを何とか現実化し、次の姿に繋げていきたい。
(農村振興局水資源課瀧川課長)
土地持ち非農家の方の合意形成や、地域の水の使い方に係る意思決定が難しいといった指摘や、土地改良区の力が衰えていく中で施設を適切に保全していけるのかといった指摘があった。
組合員の合意形成の問題については、平成30年の土地改良法改正で、准組合員という仕組みを作り、所有者と耕作者の両方を位置付けることができるようにしている。
また、水の使い方についても、同改正で、大規模経営体の意向を水利調整に反映する仕組みを作っている。
事業計画の作成や事業の推進に対しての人的な支援についても、令和4年の土地改良法改正で、土地改良事業団体連合会による代行の仕組みを作っている。また、土地改良区の運営について連合会が行う巡回指導等の経費を支援している。
このように、これまでも様々な仕組みを作ってきているが、それらが現場で上手く使われなければ意味がなく、御指摘のとおり、国の施策を現場に浸透させるコミュニケーションが重要と考える。これまでも意を払ってきたつもりではあるが、御指摘については今後もよく考えて対応していきたい。
(以上)
(埼玉県地域婦人会連合会会長:柿沼氏)
耕作放棄地は、草が生い茂り、自転車やバイクの走行に支障を来すなど、地域の安全面にも支障を来している。
畦畔撤去による集約化を進めるべき。しかし、自分の土地の方が豊かだから等と言って現場ではなかなか進んでいない。
消費者の方々にもっと農村に入ってきてほしい。そのためには、水利権の問題もあるが、冬水通水による人と生き物が共存できる環境づくりが必要である。
農業集落排水施設の老朽化が問題となっている。また、都市下水だけでは農村はカバーできず、水を綺麗に保つためには合併浄化槽の導入を進める必要がある。
米の輸出拡大ということが言われているが、食料自給率がカロリーベースで38%しかない中、まずは国民の食料を確保することが重要である。
土地改良は国の基盤である。食料自給率を向上させるためだけでなく、国土の保全という観点からも耕作放棄地の解消に向けた取組が必要である。
我が家の周りでも鳥獣被害が増えていることを実感している。農家が安心して営農できるよう、鳥獣被害対策の取組を進めてほしい。
土地改良区の総代会にはほとんど男性しかいない。6次産業化には女性が関わっていることが多く、魅力ある農村づくりという観点では女性の力が必要と考えており、土地改良区の運営にもっと女性が参画すべきである。
(伊那市長:白鳥氏)
土地改良事業がなければ、農業は成り立たない。土地改良事業の重要性を国や地方からしっかりと発信していく必要。
当市には小さな土地改良区も多いが、それらは中山間地域に位置している。中山間地域の農業や水源涵養機能を守るという観点からも、こうした小さな土地改良区も非常に大事であるという認識を持っていただきたい。
土地改良区の組合員のほとんどが土地持ち非農家であるため、賦課金に対する理解がなかなか得られず、賦課金徴収に非常に人的な負担が掛かっている。また、高齢化が進む中で、農地維持のための集落の共同活動もできなくなりつつある。このため、巡回指導、会計への支援、運営資金への補助、公的機関による関与の強化等、土地改良区の体制強化に向けた人的、財政的な支援をお願いしたい。
事業化の機運が高まっても、県や土地改良区も人手不足で計画づくりがなかなか進まない。事業化に向けた取組を進めるため、県土連の職員等制度に精通した実務者による支援をお願いしたい。
((株)カモスフィールド代表取締役:大橋氏)
小松菜、ほうれん草をオーガニックで作っているが、水が不可欠である。しかし、規模拡大をしようにも水が来てなければできないのに、なかなか整備が進まない。道路を挟んだ隣のほ場であってもいつ整備できるか分からないと言われるため、柔軟な整備をお願いしたい。
なぜ農業をやらないかと聞くと、皆儲からないからだと言う。農家が所得を確保できるような政策を考えないと農業は衰退する一方である。
国として有機農業の取組面積を100万haまで拡大するという目標を掲げるのであれば、土地改良事業は、有機農業に取り組む地域を優先的にやっていくようにしなければ達成できないと考えている。
産地パワーアップ事業を使ってハウス等の施設を設置しようとすると、要件上、平場だと3ha以上設置しなければならないが、その規模のハウスを設置しようと思うと、今では資材高騰等による影響で2,3億円の投資が必要になる。一方で、野菜の出荷場のような付帯設備に対しては国から補助が出ない。今後、我々のような農業法人に畑地を任せていくというのであれば、土地改良事業でもそういった設備に対する支援があればありがたい。
(栃木県土地改良事業団体連合会専務理事:渡邉氏)
本県においても、今後を担う若者にとって、気候変動を踏まえた新品種・新技術、機械も含めた営農上の施設更新と並んで、基盤整備が重要なキーワードとなっている。食料安全保障という流れが来ている中で、国、県、地元が一体となって、土地改良事業の重要性をアピールし、これを国民運動にする仕組みを作っていく必要がある。
(農村振興局水資源課瀧川課長)
土地改良事業の重要性の発信や、土地改良区の体制の強化、今後の存り方は全体を通して共通の課題であったと思う。今般の土地改良法改正や令和7年度予算の中で拡充しているものもあるが、更にどのように充実させていくかについては、次期土地改良長期計画の審議の中で議論を深めていきたい。
大橋代表からは、水が特に重要である中で、基盤整備がなかなか進まないという話を伺った。この場では個別の話には即答しかねるが、現場の話を伺った上で、生産者の方が計画的に営農できるよう一歩でも改善していきたい。
柿沼会長から意見のあった女性の参画という点については、先週閣議決定した土地改良法の改正案に、理事の構成は性別や年齢が偏らないよう配慮する旨を規定したところであり、これが現場にしっかり浸透していくように取り組んでいきたい。
(井上委員)
消費者への理解醸成として、日本の食料自給率や食料安全保障がどのように成り立っているのかということを、小中学校の教育の現場で普及していくことが必要ではないか。
法律を整備した後の基本的なルールを国が定め、その二階建て部分で、各地域が柔軟に取り組んでいくことが、政策の実現につながってくると思うが、そのためには人材が重要である。行政、民間、大学等の地域に精通し、横断的に取り組むことができる人材を流動的に起用していくことで、情報が集約化され、そこから課題が見えてくるという図式にしていくことがポイントと考える。
有機生産者が増えていく上ではゾーニングが有効な手法になるが、このゾーニングや畑の土地改良ということに関しても、中核的にリーダーシップを発揮できる法人経営体がいい経営を行っていることが、地域のモデルケースになり得る。
(木下委員)
共通の問題意識として、土地改良区の運営基盤強化が喫緊の課題であることが確認できた。こうした中で、「水土里ビジョン」の取組は、現場の課題の本質を突いた取組となると考えるか。
水利組合と土地改良区は、有機的に結びついた相互補完的な関係であるが、水利組合も高齢化が進んでおり、組織運営が非常に難しくなってきている。現場ではこれに対応するために、土地改良区が末端まで全部面倒をみる、あるいは、水利組合を何とか維持していこうと悩んでおられると思う。
土地改良区のガバナンスのメンバーが偏っているという意見があったが、世代交代も大きな課題と考えている。水や農地の条件等、土地改良事業の存り方は次の世代の経営判断を大きく左右するはずなのに、若い経営者がその意思決定に加わらないのは非常に問題である。若い世代は営農が忙しくて土地改良区の役員にはなりたがらないという現実もあるが、自分たちの将来に関わることなのだから、次の世代を担う人たちが土地改良事業の意思決定に積極的に関わる仕組みづくりや啓発活動が必要ではないか。
((株)カモスフィールド代表取締役:大橋氏)
まさにそのとおりである。私も担い手として呼ばれたが、土地の割り当て等にはほぼ関わっていない。私は新規就農者なので、昔からいる人が決めるのは当然とは思うが、意思決定の場に入れてもらえれば、こういう要望があるとか、区画や面積はこれぐらいほしいといったことも話し合いの中で決められるのかなと思う。
(埼玉県地域婦人会連合会会長:柿沼氏)
世代交代というのはなかなか進んでおらず、総代会に若い世代が数人入ったとしても、意見が通らないというのも現実である。女性であれば、また違った角度からの意見が言えると思う。
(栃木県土地改良事業団体連合会専務理事:渡邉氏)
施設の保全管理という観点からすると、今回の「水土里ビジョン」は大変有意義なものとなると思う。上下水道と異なり、農業水利施設は、基幹的施設を除けば、ほとんどが地域のボランティア的な仕事によって施設管理が成り立っている。そのような中、地域の方々にとって、将来の施設の維持管理にどれだけの費用がかかるかが明確になるとういう点において素晴らしい取組である。
一方、土地改良区がその先頭に立って音頭をとって、地域をまとめていかなければならない点には難しさを感じている。しかし、いいチャンスと捉え、これを何とか現実化し、次の姿に繋げていきたい。
(農村振興局水資源課瀧川課長)
土地持ち非農家の方の合意形成や、地域の水の使い方に係る意思決定が難しいといった指摘や、土地改良区の力が衰えていく中で施設を適切に保全していけるのかといった指摘があった。
組合員の合意形成の問題については、平成30年の土地改良法改正で、准組合員という仕組みを作り、所有者と耕作者の両方を位置付けることができるようにしている。
また、水の使い方についても、同改正で、大規模経営体の意向を水利調整に反映する仕組みを作っている。
事業計画の作成や事業の推進に対しての人的な支援についても、令和4年の土地改良法改正で、土地改良事業団体連合会による代行の仕組みを作っている。また、土地改良区の運営について連合会が行う巡回指導等の経費を支援している。
このように、これまでも様々な仕組みを作ってきているが、それらが現場で上手く使われなければ意味がなく、御指摘のとおり、国の施策を現場に浸透させるコミュニケーションが重要と考える。これまでも意を払ってきたつもりではあるが、御指摘については今後もよく考えて対応していきたい。
(以上)
お問合せ先
農村振興局整備部設計課計画調整室
代表:03-3502-8111(内線5514)
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