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農林水産省

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新たな土地改良長期計画に関する地方懇談会 東海ブロック(令和7年2月14日)議事概要

1.日時及び場所

日時:令和7年2月14日(金曜日)13時30分~15時30分
場所:東海農政局 第1会議室

2.議事

(1)新たな土地改良長期計画の策定について
(2)東海農政局管内における農業農村整備の概況等について
(3)地方代表者による意見・要望等
(4)質疑・応答
(5)意見交換

3.議事概要

議事概要(PDF : 247KB)

4 質疑応答、意見交換の概要
((株)つじ農園 代表取締役:辻氏)
米生産は、安定して生産を行い、効率を上げていくことが重要であると感じている。その中で、大きな2つの課題がある。
1点目は気候変動についてである。近年予想がつかないような気候が続いている。特に米の場合、穂に実が入る出穂時期、7月終わりから8月にかけて異常な高温になったり、雨が降らなかったり、或いは晴れた日が無かったりすると稲に実が入らないことがある。
また、微気候というか、津市の気候でみるよりも、もっと細かいレベルで差分がでており、政策・対策に関して大きな網がかけられない。細かく切り取っていかないと課題が嚙み合わないところがあると感じている。
例えば、稲の作付け時期を前後にずらす、あるいは作付けが遅い品種を作ったりして、ある程度軽減したいと何年かトライしているが、結局は地域でどのように水を配分するか、地域内の水調整が課題である。
2点目は、地域コミュニティについてである。我々の地域は古い集落であるがゆえに、生活として農業を営んでいる人が沢山いる。農地を集積・集約化したり、水田の形を変えてスマート農業に適したような水田を作ったりする場合、そこまでの整備を行うインセンティブが、離農された方含め住民の方々にとっては薄いという点が大きな問題だと感じている。
地域住民として取り組むべき課題であるということや、地域全体に利益があるということを伝えながら進める必要があるが、農地が世代を超えてどうなるのかという点は見えにくい。

(各務用水土地改良区事務局次長:波能氏)
耕作放棄地の増加に伴い、大区画化の必要性が高まっていると感じる。当地区は都市近郊に位置しており、農地は大きくても1反や2反が一般的であるが、これらの水田でも担い手がいなくなり、さらに各地区に設けられた“苗田”と呼ばれる2~300m2の小規模な田んぼの多くが放棄され、草が生い茂っている。土地改良区は、地域の米作りなどの営農に直接的に関与する立場ではないが、農家が耕作をやめてしまえば、土地改良区の存在意義そのものが薄れてしまう。農地が荒れ、米作りがなくなれば、用水を供給する意味もなくなってしまう。
当土地改良区では、多面的機能支払交付金制度に取り組む地域保全会のサポートとして事務を受託している。事務作業は大きな負担に感じることもあるが、10年を経て地域の組合員との繋がりが深まっていることを実感しており、今後もこの取り組みを継続していきたいと考えている。令和7年度からは、5つの保全会組織が1つの広域組織となるが、土地改良区にとって地域の協働力や組織との連携が重要である。広域化が進んでも、地域への関心や構成員との関係が希薄にならないように努め、担い手に農地を預けた場合でも、地権者としての役割を果たしていただけるような取り組みが求められると考えている。
農地に価値を見出し、組合員と協力して歴史ある各務用水を守り続けていきたい。

(河野委員)
取組の概要を伺うと、先進的な取り組みを率先されて素晴らしいという感想をもった。一方、課題について伺うと、表と背景にあるものは違うと感じた。
新しい土地改良長期計画においても、日常頑張っていただいている裏で感じている課題を掬い取って反映させる必要があると感じた。
辻氏、波能氏は個の組織では非常に成功しているものの、地域全体への取組の波及については課題もあるとのこと。地域の方々と協働・連携するためには、何があるともう一段階先に進むことができるか、今ある課題を軽減できるのかアイディアがあれば教えていただきたい。
気候変動への対策について、細かいメッシュでの天候予想などの情報が随時入ってくるようなシステムができれば、先ほど話があったような田植えの時期のコントロールにつながるのか。

(長谷川委員)
それぞれ先進的に行っているが、地域共同の取組を行う中で悩みがあるのが分かった。辻氏においては、農業関連人口を増やしていくため、企業研修を受け入れたり、スマート農業を推進し、先進的な農業に取り組みたい人材を増やしていきたいとのことだったが、そうした効果はどの程度現れているのか。

(清水委員)
地域協働の取組として行う中で感じる課題は、私がいる地域でも同じだと感じた。
多面組織の活動について、効率的に進めていくために広域化を選択されたのは素晴らしいと思う。一方で、地域への関心を継続的に維持するために、地権者としての役割・意識と、耕作者、経営をされている方の役割・意識というものをどう結んでいったらよいかはすごく悩ましい。
土地改良区の役割についても発言があったが、時代の変化に合わせて土地改良区の役割についても変化する必要があると感じている。
20代~70代世代の集落営農との協力関係にあるということだったが、それは作業の一部を集落営農の方にお願いするような形か。また、集落・農地毎に作業をお願いすることが可能なコーディネーターが居ることはとても望ましいと思うが、集落営農と付き合う上での課題などがあれば詳しく聞きたい。

((株)つじ農園 代表取締役:辻氏)
細かいメッシュでの気候予想はすでに開発されており、小さい単位での気温の累積温度の測定により、だいたいの生育ステージが次に移るタイミングが分かる。一方で、根本である用水がタイミングに応じて自由に使えないという問題がある。
加えて、DXやデータ観測などは、現場での適用レベルはまだ差があるものの、おおむね使えば満足するレベルとなっている。その中でGISや通信、ロボティックスの技術者が現場に居ないことが問題だと感じる。

(各務用水土地改良区事務局次長:波能氏)
土地改良区は、ある意味で官でも民でもない中途半端な立場。土地改良区の役割が変化する中で、従来通り用水管理を行うのみでは、存在意義がなくなってしまうのではないかと思う。
また、収益事業をしてはいけない。太陽光発電も使用電力量以内となっており、当改良区では、使用電力量のうち最大で9割を太陽光発電により賄っているので、これ以上の発電はできない。しかし、地区内に太陽光発電を設置できる用水路の上部はまだまだある状況。
毎年、農地転用が進み、収入源である賦課金が減少する一方で、維持管理費などの支出は増加している。加えて、職員の雇用条件の見直しも難しく、経営改善が進まないため、非常に厳しい状況が続いている。
一方、農地を守っていくためには、土地改良区の役割が大きくなっていく。市町村やJAと協働しながら活動していくことも必要と考えており、柔軟に国の制度を変えていただきたい。

((株)つじ農園 代表取締役:辻氏)
実感として、農業に興味がある人は非常に多いと思う。就農人口はそんなに減っていない。むしろ人気がある産業。いわゆる営農者、経営者が減っている。これは農地集積、大規模化等と合う話。この1年くらいでも20代の方が3人程度、津市に帰って来て農業をやりたいと相談を受けた。
離農された方について、まだ農作業自体は行えるので、集落営農組織に入ってもらい、可能な作業を切り分けて外注するという仕組みにしている。
先日、スポットワーク型人材派遣会社と意見交換した際、先方もどんどん農作業を切り分けて提供する形にしていきたいと話していた。そのような動きが出てくれば農村への若い方の流入や活性化は問題にならないのではないかと思っている。

(三重県農林水産部 農業基盤整備・獣害担当次長:湯浅氏)
保全管理と地元負担の軽減が事業を進める上で大きな課題と考えている。意見・要望として、4点お話したい。
1点目は、日本型直接支払制度における支援の拡充についてである。労働力不足がさらに進行する中で、条件が不利な農地については、担い手のキャパを考えると耕作放棄地になっていくことが懸念される。こうした農地においても、営農を継続できるよう支援をお願いしたい。
2点目は、農業水利施設の維持管理に対する支援についてである。現在、土地改良法の見直しの中でも検討いただいていると承知しているが、末端施設の管理者を支援する仕組みの構築をお願いしたい。
3点目は、国営事業実施地区へのフォローアップについてである。三重県では国営事業完了地区は4地区ある。当該地区の再整備につきましては、改正基本法の中で保全の必要性等が明確化されましたので、地元負担軽減の観点からも地方の実情を踏まえ、受益面積要件の緩和や新たな制度の創設などにより、国営事業での対応をお願いしたい。
4点目は、情報化施工の取組についてである。整備事業の中で、情報化施工等の推進は必要であると考えるが、工事費が増大する傾向にある。情報化施工の導入により増加した費用は、促進費を加算するなどして、地元負担が増えない形で支援できる仕組みを構築してほしい。

(中西計画調整室長)
令和9年からの水田施策の見直しに関連して、中山間直接支払交付金についても、支援の対象農地の在り方などについて見直しを行う動きがある。これから様々な意見等を参考にしながら、検討を進めていくこととなると考えている。
国営事業のフォローアップについて、前歴事業を行った際は、面積要件を満たしていたものの、農地転用等が進んだことにより要件を満たさないといった状況になっていることと推察される。国営事業で更新を行う際には、省エネ型や流域治水対策型などを選択いただければ、面積要件を緩和できるという制度を用意している。御意見をいただきながら、さらに検討を進めて行きたい。
情報化施工について、建設業界における人手不足対策等に対応するためにも推進していく必要があると考えている。一方で、通常の施工よりも情報化施工を導入することでコストが増加してしまう現状があると認識している。こうした技術が普及し、コストが下がっていくことが望ましいが、増加コストが農家負担にならないよう、農家負担が少ない事業制度を選択して頂ければと考えている。


(長谷川委員)
情報化施工については進めていかなければいけないと考えている。技術の普及に伴い、コストが下がっていくことは想定されるが、果たしてそれを待っていてよいのかは疑問である。期限を設定して、自治体もしくは施工業者に支援を行う制度を作ることも一案であると考える。土地改良長期計画の中でも、情報化施工の進捗度を見ていくことが重要ではないかと思う。

(生活協同組合 コープぎふ組合員理事:伊藤氏)
コープぎふは、実際にはコープあいち、コープみえ、コープぎふの3生協で東海コープ事業連合という形で商品を扱っている。当生協の事業として米の宅配事業等を行っており、毎月、毎週の予約と販売という2種類の購入のシステムがあるが、予約していても今般の米不足により、米が届かず困っているとの話を組合員からよく聞いている。また、最近は野菜の値上がり等もある中で、毎日の食卓を考えている日々である。
以前、畑に産地見学に行った際、同じ地域でも農地の条件によって耕作放棄地になっている箇所があったり、異常気象により腐ってしまった作物があったりと、生産現場に行くことで初めてわかる、経験することが多くあった。生産者の思いを消費者が理解することが重要だと思う。
住民の食・暮らしを意識して明るい農業を進めることができればよいと考える。

(河野委員)
伊藤氏からの要望について、消費者として農業を応援したいという気持ちは同感である。生産だけではなく、机上配布メモの(ア)スマート農業や国内の需要等に対応した基盤整備、(イ)農業生産基盤の保全管理、(ウ)防災・減災、国土強靱化については、消費者の理解が進むよう、応援できる部分を増やして欲しいと思う。
農産品の価格が高くなっていることについて、安いことは消費者にとって嬉しいことではあるが、適正な価格を支払うことが消費者としての責務であると思っている。適正価格で購入し、農業を応援していきたい。

((株)ベジタリ菜代表取締役:杉山氏)
昨今の事情により保管庫の電気代が高騰したり、物流のコストが高まったりしている。当社はキャベツの取扱いが最も多いが、コスト的に厳しい状況の中で出荷を行った。
農家の方たちは、生産に関してはプロであるが、物流に関しては不慣れな部分もある。生産者も高齢化しているので、生産はできるが市場に持っていけないとか産直までいけないとかあって、DX化や地域全体で収穫・出荷する取組を通じてコミュニティを作れればよいと考える。
また、作況指数等の生産に係る情報をきちんと発信し、生産者が再生産可能な価格で販売できる環境を整備するべきである。
能登半島地震を踏まえて、防災協力農地や防災公園の整備について更に取組を進めていく必要があると考える。

(長谷川委員)
杉山氏は、福祉事業者と連携して農作業を行っているとのことだったが、福祉業界にはこうした労働を求める需要が相当あるのか、それともまだまだ福祉事業者を紹介してやってもらうことには理解を求めていかないといけない段階なのか現状を教えていただきたい。

((株)ベジタリ菜代表取締役:杉山氏)
農福連携と言われているが、畑に来て作業をするだけが農作業ではない。座った状態でしか作業できない方もいらっしゃるので、福祉業界の方が農業界に営業して取組を拡大することは難しいと思っている。
そのため、当社では、農業者や市場関係者からの仕事を取りまとめ、様々な障がいを持つ方が従事できるように内容を仕分けして、福祉事業者に紹介する形をとっている。
例えが悪いかもしれないが、1人の農家さんが百の仕事をして百姓というような言葉があるかもしれないが、百人で一つの仕事をするのが百姓だというような感じで切り出していく。

(清水委員)
農林水産省あるいは農村振興局は、農業基盤のことだけを考えていけばよい時代ではなくなってきている。通信環境の整備にしても、経産省あるいは国交省が所掌のようにも思えるが、今回の基本法改正では、食料安全保障が位置づけられたため、適正な価格で国民にきちんと食料を届けることは、まさに食料安全保障であり、そのためにも、通信環境インフラの整備を含めて対応する必要がある。農村、中山間だからそうした取り組みが遅れても良いということでは決してないと強く感じた。

((株)つじ農園 代表取締役:辻氏)
地元でもGNSS通信基地局を整備してドローン等の導入を検討している。5Gレベルまでの整備は求めていない。農林水産省で、こうした需要を満たす通信基地局の整備を行うことができないか。

(中西計画調整室長)
我々の周知が十分でないことを反省しているが、農林水産省でも、農山漁村地域整備交付金や耕作条件改善事業により、情報通信整備環境の整備が可能である。詳細については、東海農政局や県・市町村に問い合わせいただきたい。

(以上)

お問合せ先

農村振興局整備部設計課計画調整室

代表:03-3502-8111(内線5514)
ダイヤルイン:03-6744-2201

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