令和7年度第3回議事録
1.日時及び場所
日時:令和7年8月6日(水曜日)10時00分~11時37分
会場:中央合同庁舎第4号館1219~1221号室
(配信会場:同上)
2.議事
(1)新たな土地改良長期計画(案)について
(2)技術小委員会への付託事項について
ア「環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画設計の技術指針」の改定について
イ「農業農村整備に関する技術開発計画」の改定について
3.議事内容
議事録(PDF : 505KB)
10時00分 開会
○中西計画調整室長 定刻となりましたので、ただいまより食料・農業・農村政策審議会の農業農村振興整備部会令和7年度第3回を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中、また大変お暑い中、御参加いただきありがとうございます。計画調整室の中西でございます。よろしくお願いします。議事の開始まで司会進行を担当させていただきます。
本日は13名の委員に御出席いただいております。北室委員、久保田委員、河野委員、清水委員、藤原委員、長谷川委員、松本委員はウェブでの御参加となります。井上委員、山波委員、加藤委員は所用のため御欠席と伺っております。また、河野委員におかれましては所用のため途中からの御出席、牧委員及び松田委員におかれましては途中での御退席という予定でございます。
それでは、開会に当たりまして、松本農村振興局長より挨拶申し上げます。
○松本農村振興局長 皆さん、おはようございます。農村振興局長の松本でございます。この7月1日に農村振興局長を拝命いたしました。
本日は御多用のところ、またこの暑い中、審議会の開催に当たりまして御案内したところ、御参集いただきまして誠にありがとうございます。また、日頃より我が方の農業農村整備の関係、また農村振興に関して多大なる御理解、御協力を賜りましていること、この場を借りて厚く御礼を申し上げるところでございます。
農政の関係、ここ数年、大きな動きを見せているところです。
特にここ2年間ぐらいで大きな流れがございまして、まずは食料・農業・農村基本法の四半世紀ぶりの見直しに向け、検証の着手から入ったところです。半年以上掛けまして検証を行いながら、食料・農業・農村基本法の四半世紀ぶりの改正を行いました。これを受けまして、本年の4月11日には新たな食料・農業・農村基本計画を立てさせていただきました。
我が方としましては、これと並行しまして土地改良法の改正も実施させていただきました。審議会の皆様方におかれましては、様々な知見を頂きまして、法改正へのお力添えをいただきましたことにつきまして、改めて御礼を申し上げます。
このような流れの中で、土地改良の関係につきましては土地改良長期計画につきましても、こうした農政の流れと期を一にするように、今回は早めに改正の着手をさせていただきました。年明けから審議会を開催いたしまして、皆様からの御意見、また貴重な御検討内容も賜りまして、案の作成を進めてきたところでございます。
本長期計画につきましては、できますれば、この秋口に閣議決定という運びを考えているところです。そのため、審議会からの意見は賜りつつ、また与党との調整を合わせて行いながら、閣議決定という運びに持っていきたいと思っております。議論としましては4コーナーを回った最終局面であり、仕上げの段階でございますが、委員の方からの御知見や御意見を賜りながら仕上げていきたいと考えているところです。
本日も時間が限られているところでございますが、貴重な意見を賜り、また案としての成熟化をさせていきたいと考えております。改めまして、本日の御参加にお礼を申し上げながら、実りある時間になることをお願いいたしまして、私からの冒頭の御挨拶とさせていただきます。
○中西計画調整室長 ありがとうございました。
続きまして、当部会の公表の方法について説明いたします。資料は既に農林水産省のホームページで公表しております。議事録につきましては、内容を確認いただいた上で発言者を明記し、後日ホームページで公表するという形を取らせていただきますので、御了承をお願いします。
本日は12時までを予定しております。
なお、報道関係のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきます。
以降の議事進行につきましては西村部会長にお願いいたします。
○西村部会長 西村です。会場に御参加の委員の皆様、ウェブで御参加の委員の皆様、どうも今日はお暑いところありがとうございます。よろしくお願いいたします。
早速、議事の方に入らせていただきたいと思います。議題の1、新たな土地改良長期計画(案)について事務局の方から説明をお願いいたします。
○中西計画調整室長 それでは資料1-1を御覧ください。
資料1-1に全体の概要をまとめさせていただいています。左上に、昨今の農業・農村をめぐる情勢及び課題ということで、食料安全保障を取り巻く環境の変化や農業者の減少、農業生産基盤等の脆弱化といった課題を書かせていただいています。それを受ける形で、右上に、ここ一、二年で大きく改正された内容を記載しております。
一つ目が食料・農業・農村基本法の改正です。農業生産基盤については整備に加えて「保全」が明記されたところです。それに基づきまして、食料・農業・農村基本計画がこの4月に閣議決定されています。さらに、土地改良法も改正されまして、この4月1日から新たな土地改良法が施行されております。加えて、国土強靱化の実施中期計画につきましても6月に閣議決定されたところです。
こうした大きな流れを受けまして、先ほど局長からもありましたが、土地改良長期計画について、現行の土地改良長期計画は令和3年~7年度が計画期間となっておりますが、今回1年前倒して、令和7年~11年度を計画期間とする土地改良長期計画を策定したいということでございます。内容につきましては、これまでの繰り返しになりますが、政策課題の1から4を立てさせていただいています。政策課題1は、生産性向上等に向けた生産基盤の強化。政策課題2は、農業用水の安定供給及び良好な排水条件の確保。政策課題3は、増大する災害リスクに対応するための農業・農村の強靱化。政策課題4は、農村の価値や魅力の創出というような形で取り上げております。これらに共通としまして、環境と調和の取れた持続的な農業生産にもしっかりと取り組んでいくということでございます。一番下の方には、大規模自然災害への対応ですとか、この計画を円滑かつ効果的に実施するに当たって必要な事項ということを位置づけさせていただいています。
続いて2ページ目になります。
まず、政策課題1、生産性向上等に向けた生産基盤の強化でございます。
これにつきましては政策目標を二つ立てさせていただいています。一つ目として、農地の集積・集約化及びスマート農業の推進に向けた基盤整備による生産コストの低減でございます。これにつきましては、KPIとしまして、一つ目が、大区画化等の基盤整備実施地区における担い手の米生産コストの労働費削減割合を6割以上とするという目標を掲げたいと思います。これは基本計画でも位置づけておりまして、同様のものでございます。
もう一つが、基盤整備着手地区においてスマート農業の実装を可能とする基盤整備を行う地区の割合ということで、これは現行の土地改良長期計画にも位置づけておりますが、これを現行の目標は8割ですが、8割から10割に上げるというようなことで、意欲的な目標として位置づけております。
政策目標2、国内の需要等を踏まえた生産の拡大につきましては、これまで園芸作物の生産額2割以上増加という地区をKPIとして位置づけておりましたが、今回、基本計画で麦・大豆の生産も増やしていくということで、麦・大豆等の生産量が3割以上増加している地区につきましても新たにKPIとして設定させていただいております。
この生産基盤の関係の事業量につきましては、水田の基盤整備として約9万ヘクタール、うち水田の大区画化1ヘクタール以上ということで、約6万ヘクタールとしてございます。これにつきましては、農業構造転換集中対策期間においてしっかりと進めていくということで、この事業量を位置付けております。中山間地域の事業量につきましても、この差分のところで、1ヘクタール以上は中山間では難しいという声もよく聞きますので、その差分の中心は中山間での事業として取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
政策課題2、農業用水の安定供給及び良好な排水条件の確保でございます。
これに関する政策目標3としましては、農業水利施設の戦略的な保全管理による持続的な機能確保です。一つ目の視点としまして、基幹から末端までの農業水利施設の機能保全の推進ということで、このKPIとしまして、農業水利施設の機能が保全され、農業用水が安定的に供給されている農地面積の割合、10割と位置づけさせていただいています。これは、水田約230万ヘクタールと畑地かんがい整備をおこなっている約50万を足し合わせました約280万を対象に、突発事故が起こった際に営農に支障が出ないように、未然の防止を図ることに加えて、突発災害からの早期の復旧に取り組み、営農に支障を出ないように取り組むという内容の目標になります。
もう一つが、土地改良区の受益面積のうち、水土里ビジョンにより地域の農業水利施設等の保全体制が構築された割合8割ということで、今回の土地改良法で位置づけられました水土里ビジョンの取組でございます。この8割というのは、500ヘクタール以上の大きな改良区にやっていただくと大体これぐらいとなります。もちろんそれ以下の小規模土地改良区も含めてしっかり推進していきたいのですが、まずはこの5年間で大きな改良区を中心にという位置づけでございます。
次が維持管理の効率化・高度化の推進です。これにつきましては、現行土地改良長期計画でも位置づけましておりますけれども、更新事業の着手地区において施設の集約・再編、ICT導入等により維持管理費を節減する地区の割合ということで、10割という目標とさせていただきます。
下の方には、事業量を書かせていただいております。まず一つ目が、現在、健全度評価により、早急な対策が必要と判明している基幹的農業水利施設です。そのうち、この計画の令和7~11年度の5年間で更新に着手する基幹的農業水利施設ですとか、そのうち対策を完了させる基幹的農業水利施設というものを事業量として位置づけております。加えて、水土里ビジョンを策定する地区数、農業水利施設のストックの適正化に着手する地区数、小水力発電の電力量、地域の共同活動により農業生産が維持される農地面積ということで、多面的機能支払や中山間地域等直接支払の活動の部分を位置づけさせていただいております。
続いて3ページになります。
政策課題3、増大する災害リスクに対応するための農業・農村の強靱化ということで、政策目標4、気候変動により激甚化・頻発化する災害に対応した防災・減災対策の推進でございます。
この一つ目は、防災重点農業用ため池の計画的な推進です。このKPIとしまして、防災対策を講じる優先度が高い防災重点農業用ため池における防災工事着手割合を9割以上としています。ため池工事特措法に基づいて鋭意実施しておりますが、この法律の期間が令和12年度までとなっておりますので、令和12年度までには全て着手するという予定にしております。すなわち、残りの1割につきましては令和12年度にしっかりと着手したいと考えています。また、湛水被害等の防止ということで、湛水被害等が防止される農地及び周辺農地の面積を21万ヘクタールということで、これは現行の目標と同じものを位置づけさせていただいています。
事業量については、まずは防災工事に着手する防災重点ため池の箇所数、各種防災対策の実施に取り組む地区数、加えて、田んぼダムに取り組む水田面積、農道・農道トンネル、農業集落排水施設の対策に着手する地区数も位置づけさせていただいております。
政策課題4、農村の価値や魅力の創出についてです。
これに関する政策目標5としまして、農村における所得の向上と雇用の創出、生活環境の確保、多様な人材が関わる機会の創出といったことでございます。
まず一つ目としまして、総合的な整備を通じた所得の向上です。このKPIにつきましては、中山間地域等において農業生産基盤及び販売施設等の総合的な整備を一体的に行っている地区のうち、収益力の向上等を達成する地区の割合を10割と位置づけています。
もう一つが地域の共同活動の維持に向けた体制強化ということで、こちらは、農地の保全に資する地域の共同活動を行う小規模組織のうち体制強化に取り組む組織の割合ということで、多面的機能支払、中山間地域等直接支払ともに5割という目標にしています。多面的機能支払につきましては小規模組織という目標にしていますのを20ヘクタール以下、あるいは中山間地域等直接支払につきましては10ヘクタール以下というのを、一つの基準として考えております。
関連する事業量については、総合的な整備を行う地区80地区、情報通信環境の整備に取組地区100地区を位置づけております。残りの部分は再掲という形で書かせていただいております。
続いて4ページに全体をまとめたものがございます。この全体の中で、活動指標の部分も説明させていただきます。
まず、政策課題1の政策目標1の活動指標としましては、基盤整備完了地区における担い手への農地集積率9割以上ということで、現行土地改良長期計画では8割としていましたが、実績等も踏まえまして、より高い9割と設定させていただいています。あと、担い手経営面積に対する農地集約化率9割ですとか、事業実施前後で農業法人の経営農地面積の増加率を1.5倍、あるいは、多面的機能支払の活動によって構造改革の後押しが図られている地域の割合を10割といったようなものを位置づけさせていただいています。
次に、政策目標2につきましては、基盤整備着手地区においてということで、計画段階におきましても麦・大豆あるいは園芸作物を伸ばす計画をしっかり作っていただくということで位置付けております。加えて、裏作が可能な地域における基盤整備完了地区の耕地利用率ということで、現行の土地改良長期計画と同じ125%という目標を書かせていただいています。
次に、政策課題2の活動指標としましては、健全度評価により早急な対策が必要と判明している基幹的水利施設の対策着手率10割ということで、右の方の事業量に記載しております、更新に着手する基幹的農業水利施設、水路約1,100 km、施設約290か所、これにしっかりと着手するという目標です。対策完了率の7割につきましては、これも右の事業量として、対策を完了させる施設ということで、水路約3,000 km、施設約510か所とありますが、こちらが全体で対策が必要としている水路約4,200 km、施設730か所に対しまして約7割ということですので、そうした目標を位置づけています。あとは、多面的機能支払、中山間地域等直接支払の活動、加えて、土地改良区における使用電力量に対する再生可能エネルギーによる発電電力量の割合ということで、エネルギー基本計画とも整合を取った37%を位置づけています。新技術開発件数は、現行の土地改良長期計画と同じです。あと、直轄工事における情報化施工技術の割合を今回位置づけていまして、現在は6割弱ぐらいですが、今後の建設業界の人手不足等を勘案しまして伸ばしていきたいということで、7割以上という目標を設定しています。
次に、政策課題3の活動指標としましては、防災重点農業用ため池の評価完了の割合ということで9割。こちらもため池工事特措法の期限である令和12年までには全て行うということです。あと、田んぼダムに取り組む面積、農道橋や農道トンネルあるいは農業集落排水施設に関して対策着手率10割、これは、右の方にあります約70か所とか500地区に着手するということです。あと、避難所等の重要施設へ接続する農業集落排水施設の耐震性能調査の完了率ということで9割。これも国土強靭化実施中期計画において令和12年までに全て行うという目標と整合をとったものとなっています。
最後の政策課題4の活動指標としましては、一つ目は、現行土地改良長期計画と同じですけれども、土地改良区の理事に占める女性の割合ということで、現在2.6%ぐらいまで上がってきていますけれども、これを10%以上とするということで、基本計画とも整合を取って位置づけております。あと、みどりの食料システムに係る環境負荷低減の取組を推進する地区の割合を10割。小水力発電施設等の整備・更新を行う地区のうち、地域一体となった電源の活用に取り組むということで、例えば、市町村と協定を結んでいただいて、災害時に電力を融通するような取組をする地区というのを8割以上というような形で位置づけています。あと、多面的機能支払活動組織への参加数ですとか、情報通信環境の整備に取り組んで、これを地域活性化に資する取組を行う地区の割合を6割ということで農業以外の部分、例えばスマート鳥獣害対策でありますとか、あるいはため池とか排水路の水位を遠隔で確認するなど、農業以外の用途にも活用していただくということに取り組む地区の割合として設定しています。また、農業集落排水施設や農道についての活動指標は再掲ということになります。
以上が全体の概要説明になります。
続きまして、参考資料1を御覧になってください。参考資料1は、これまで委員の皆様から頂いた意見を踏まえて、今回、土地改良長期計画案の本文の中に反映させていただいた部分をピックアップさせていただいています。
まず、土地改良事業は、将来にわたって適正な価格で食料が供給されるのかという消費者の不安を解消する一つの手段であるということで、消費者の視点ということを書いてはどうかという御意見です。加えて、食料の安定供給に資する観点から、生産の自由度を高めるという旨を記載してはどうかという御意見を頂きました。
これにつきまして、第1の土地改良事業の目的の中に「消費者との関わり」という項目を書かせていただき、その中で、「食料の安定供給に対する不安が消費者にも広がっている。」、加えて、「生産性を向上させるとともに生産の自由度を高める土地改良事業は、農業の持続的な発展を実現することを通じて、将来にわたって食料の安定供給を確保するという消費者の期待に応え得るものである。」というような表現、また、「農業・農村の有する多面的機能が発揮され、その恩恵は、都市住民を含めて国民全体に及んでいる。」といったことを書かせていただきました。
また、昨今の米をめぐる情勢ということにつきまして、こちらについては、「生産者・消費者双方にとってメリットのある米の安定供給や、そのために必要な水田の維持が求められている。」といったような内容を書かせていただいています。
続いて2ページになります。
農業農村工学分野の技術者不足の問題ということで、技術者の数と質においても人材確保の仕組みが必要ではないかという御意見を頂きました。これについては、課題として書かせていただくとともに、あらゆる関係者が連携して農業農村工学技術者の育成を推進すること、その際、維持管理の効率化・高度化等に向けた最新技術を現場で活用できる人材、あるいは、現場での経験の蓄積を通じて地域の特性に応じた様々な施策を講ずることができる人材を育成するといったことを書かせていただいております。
続いて3ページになります。
土地改良長期計画を行動に移すに当たり、地域の実情に寄り添った柔軟な対応が必要だという御意見を頂きました。これにつきましても、地域ごとの地形・土壌・気象条件あるいは地域特有のニーズを踏まえまして、柔軟かつきめ細やかな基盤整備を推進していくといったことを盛り込ませていただきました。
また、KPIを達成することが課題解決にどう貢献するのかという、見える化という部分に関する御意見でございます。これにつきましては、なかなか直ぐに対応できるのかという部分では難しいところもありますが、施策の企画立案に当たっては政策目標を明らかにして、教育機関あるいは研究機関、民間企業とも連携しながら、根拠に基づく政策立案をしっかりと進めていくことが重要だということを書かせていただいております。
続いて4ページになります。
こちらは、輸出用米の生産についての記載はどうなのかという御意見を頂きました。これについても、「輸出の促進」という項目を設けさせていただきまして、「フラッグシップ輸出産地との連携強化等を図りつつ、担い手の生産コスト低減のための農地の大区画化等の基盤整備を推進する。」といったようなことを記載させていただいています。
続いて5ページになります。
まず一つ目が、基盤整備の調査段階からスマート農業の効果をしっかり理解してもらいながら進めるべきだという御意見です。これにつきましても、「基盤整備の実施に当たっては、スマート農業技術の導入効果等の周知を図りつつ」といったような内容を追記させていただきました。
また、流域治水の取組を進めるためには、農業水利施設等がその対策に貢献しているということを広く発信していくべきでないかという御意見です。これにつきましても、流域治水の取組の部分につきまして、農地・農業水利施設が有する機能や農業者・施設管理者が果たす役割というものを地域住民に発信するといったことを書かせていただいています。
続いて6ページになります。
こちら、政策目標5、農村の振興の部分で、注目すべきは女性、若者だけでなく、土地改良に関わってこなかった方々をしっかり巻き込むという観点ではないかという御意見です。これにつきましても、農村関係人口の拡大といったものに取り組み農村振興を図ることが重要であるといったこと、加えて、農村関係人口の創出・拡大に対して、現在、農村振興局を中心に取り組んでいる内容であります、「地方みらい共創戦略」の下、地域の企業とのマッチングや連携等の新結合を促す取組を推進するといった内容を書かせていただいております。
続いて7ページになります。
土地改良区は施設の管理団体としての域にとどまらず、地域農業を担う存在であるといった御意見を頂きました。これにつきましては、土地改良事業により整備されてきた施設は土地改良区を中心とした地域のコミュニティ等により維持されている、その中心的な役割を土地改良区が担っているということを書かせていただいております。
また、地域の共同活動である多面的機能支払活動の中で、学校との連携といったものも位置づけてはどうかという御意見を頂きました。こちらについては、企業、学校、農業に関心のある非農業者とのマッチングといったようなことを加えさせていただいております。
続いて8ページになります。
一つ目が、復旧・復興支援技術職員派遣制度という仕組みについて、この活用を盛り込んでいただきたいという御意見です。こちらについては、そうした大規模災害時の中長期の派遣要員を確保するため、関係省庁が連携して、そうした制度の活用を促進するということを書かせていただいています。
次に、女性理事の登用について。土地改良区の運営体制の強化のためにも必要なので、第6の2にも記載していただきたいという御意見を頂きました。御意見を踏まえまして、第6の2の「土地改良区の運営体制の強化」のところにその旨を追記させていただきました。
また、所有者不明農地だけでなく、不在村の農地所有者も重要な課題となっているという御意見を頂きました。これにつきましても、第6の2の「土地改良区の運営体制の強化」のところに、所有者不明農地、不在村者所有の農地、相続に伴い相当数の所有者が存在する共有地等が増加する中で、土地改良区の運営や事業の円滑な実施に支障を来さないよう、農業委員会及び農地中間管理機構と連携しつつ、担い手への利用権の設定ですとか共有地の代表制、あるいは民法の規定による所有者不明土地管理制度等の活用を通じて、組合員資格の整序化を図るということを書かせていただいております。
続いて9ページになります。
一つ目は、MAFF-SATについて、これまで以上に国民向けの情報発信、周知が必要ではないかという御意見を頂きました。これにつきましては、第6の6の「国民理解の醸成」のところに、「災害時にはMAFF-SATとしての派遣等を通じて被災地の早期の復旧・復興に貢献している。」といったことを書かせていただきまして、こうしたものもしっかりと周知してまいりたいと思っています。
最後に、国民理解の醸成に関して、スマホ等のデジタル機器を活用したコミュニケーションの構築など、従来の取組からバージョンアップした取組をしてほしいという御意見を頂きました。これについても、第6の6「国民理解の醸成」のところに、デジタル化や動画・SNSによる情報発信を積極的に行っていくこと、さらには、少し毛色は違いますけれども、食育の推進、あるいは食文化の保護・継承といったことを、省を挙げてこれから国民理解の醸成に取り組むとしておりますので、そうした活動との連携にもしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。さらには、世界農業遺産・日本農業遺産、世界かんがい遺産等と連携した取組についても情報発信をしっかりとやってまいりたいと考えております。
以上を踏まえまして、資料1-2で提示されております新たな土地改良長期計画(案)を作成させていただいております。
最後に、資料の1-3を御覧になってください。今後の審議の進め方について御説明させていただきたいと思います。
まず、1月に諮問いただきまして、これまで重ねてきた経緯を書かせていただいております。本日8月6日に農業農村振興整備部会を開かせていただいて計画(案)を提示させていただいています。同時並行で、与党にも、この土地改良長期計画(案)を提示させていただいて、御意見を頂いているという状況です。この後、土地改良長期計画(案)に対するパブリック・コメント、都道府県知事、関係行政機関の長の意見聴取という法定手続を経まして、8月末の段階で最終取りまとめ案の答申を頂ければという段取りで進めさせていただきたいと思っています。それを踏まえまして、9月の中旬ぐらいの閣議決定を目指して、進めてまいりたいと考えております。
私から、資料1に関する説明は以上でございます。
○西村部会長 ありがとうございました。
ただいまの説明について、委員の皆様から意見、質問などをいただきたいと思います。時間も制限があるので、お一人2分をめどにお願いしたいと思います。本日は、座席順で御意見いただいて、その後、出席している方の発言が終わった後にウェブでつないでいる委員の方に、名簿順にお願いしたいと考えております。3名ほど意見いただいたところで、必要であれば事務局の方からコメントいただくという進め方でいきたいと思います。
では、木下委員、お願いできますか。
○木下臨時委員 御説明ありがとうございました。第4コーナー回って、来月に閣議決定という流れで、大変お忙しいことだったと思います。
昨日、大変象徴的なというか思い出深い日で、まず観測史上最高気温を記録した日、それから、米政策を大きく転換するという首相からのコメントが発出された日で、直接的に土地改良長期計画に関係するかどうかは分かりませんけれども、農政全体の枠組みの中では関係するだろうというふうに思っています。
先ほどスケジュール的なことを申し上げましたけれども、米の増産にかじを切るという方向性が示されたことを受けて、今回の長期計画案を大きく見直したり、あるいは再検討するような点がないかどうか。逆に言うと、米の増産という大きな流れに沿ってきちんと成果を出せるような長期計画となっているか、あるいは整合性が取れているか、新しい農政に対して将来展望が見通せるものかどうかというところが、改めて質問になります。
もう一つはコメントになりますけれども、米の不足とか価格が高騰したというところの原因、要因分析をしていて、昨日、一定の結論が出されたかと思います。需要の予測の甘さであるとか、流通上の目詰まりとか、いろいろな説がありましたけれども、昨日の公的な見解では、需要予測の甘さと、それから生産側では高温障害による歩留り率が低かったということで、結果、生産量の見積りが甘かったというようなニュアンスだったのかなと思います。
そのことを今朝の新聞各紙がどういうふうに捉えているかというところについて、大体読んでまいりました。個人的には、高温障害の歩留まり率の低さのより根本的な原因は、やっぱり気候変動というのが起きていて、我々の予測を超える、現状ではコントロールできないような生産環境になってきているんだろうと考えます。今後、米の増産か、むしろ米の安定的な生産に向けては、需要の問題よりも生産の安定性というのが、この2、3年経験している米問題の根本的な原因と考えることが大切なのではないか。気候変動に対してどう緩和するかとかどう適応するかという指摘や気候変動が大きな背景としてあることを意識している新聞はほとんどなかったように思います。気候変動問題への対応について、日本国民としてもっと意識する必要があると思います。長期計画案の政策目標4と5に関係するかと思いますけれども、気候変動に対応して米の安定生産という政策成果に結びつけることは、食料安全保障問題の解決の方向としても大切かなと思っています。
以上でございます。
○西村部会長 ありがとうございます。牧委員、お願いできますか。
○牧臨時委員 説明ありがとうございます。これまでやり取りをする中で意見をいろいろ入れていただきまして、大変ありがとうございます。
これまで私は、水田農業の存続のために取水から末端の用水路まで面的な水路システムというものが非常に重要であり、それを面的に管理する組織、土地改良区とセットで考え存続できるような政策を進めていくべきということを根底に置きながら意見を述べさせていただきました。
今、水田政策の見直しということなんですけれども、その基礎的、基本的に係る部分を存続すべき努力を脈々と続けていくということも必要であると思っております。
特に今回、第6のところで、施策の横串のところだと思うんですけれども、土地改良区の運営体制の強化というところで、女性理事の登用について入れていただきました。ここについては今正に進めている最中です。理事長さんは納得しても、理事長さんがほかの理事さんや総代さんたちに説明するときに、女性の理事が土地改良区の体制強化策とはどこに書いてあるのかという話になります。その時にここに書いてありますよって理事長さんが説明することができますので、ここの部分というのは非常に大事な部分になってくると思います。この計画をもって人を動かせるところですので、活用させていただきたいと思います。是非早く閣議決定の方していただきたいと思っております。
それから、同じく第6の3で農業農村工学技術者の育成を挙げていただきました。特に今回の案では、連携の範囲が国から都道府県とか市町村、研究機関に広げていただいていますけれども、例えば、行政の職員が教育機関と連携して実践的な指導や進学、就職支援を行う、また、食料安全保障の確保の観点から、この基本的な土地改良の学術分野や研究分野にてこ入れが行われる、などの具体的な強化策に是非つなげていただくよう期待します。特に水田政策、これから見直しが行われると思いますけれども、農業水利学をはじめ新たな施策の実現も含めそもそもの水田農業に必須な学問というのを、末永く存続するために、ここの部分というのは言い続けることが必要だと考えております。
一方、土地改良法の改正により、計画案にも女性や若者という言葉が多く使われて、非常に焦点が当てられているところです。趣旨はそのとおりなんですけれども、ただ、特にこの土地改良分野というのは、昔ながらのやり方ですとか、用水慣行、排水慣行などが非常に重要になってくる分野です。今までこの分野を苦労して支え続けてきた熟年の方々の知見や経験が必要であり、いていただかなくては困ります。みんなで力を合わせてやっていくべき分野であり、そこを勘違いされないように施策を進めていくべきだと思います。
以上、感想です。
あとは、よりスムーズに進めていただくために全体で語句を足すなり整えていただくなりは事務局さんの方にお任せをいたしたいと思います。なるべく早く計画を決定していただき、これをもちまして土地改良区の組織の強化等に当たらせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
○西村部会長 ありがとうございます。
では、稲垣委員、お願いいたします。
○稲垣委員 これまで申し上げたことを随分反映いただいて、有り難く思っております。その上で、この土地改良長期計画の案で3か所ほど、御確認というか教えていただきたいことがあります。
まず、19ページですが、15行目に、「地域計画の実現に向けてきめ細かな基盤整備を推進する。」と書き込みがございます。最初の案では「地域計画に沿って」というところを、「実現に向けて」と踏み込んだ表現にしていただいて大変有り難く思うわけですが、「きめ細かな」というのは具体的にどういうことをおっしゃっているのか、また地域計画は農地の集積・集約ということが大きな課題であり、農地中間管理機構がかなり大きなプレーヤーとなっておりますので、地域計画の実現に向けてということであれば、そういう農地中間管理機構との連携に留意するみたいな文言が入る余地があるのか否かというのが1点目です。
それから、2点目は21ページで、以前も御質問したところですし、また、我々も現場に行って、よく園芸作物の生産の増加等のハードルが高くてなかなか事業に掛からないということについて、みどりの食料システム戦略との関係で、有機農業の面積を入れるべきではないかというような発言もさせていただいたわけですが、それが入らなかった理由といいますか、どの辺に難しさがあるのでしょうか。事前説明では麦・大豆の要素を入れたということですが、麦・大豆、もちろん結構なんですけれども、中山間というところになりますと麦・大豆でもなかなかハードルが厳しい。そういう中で、有機農業を期待する地域なり人から直接我々も聞いておりますので、それが入らない難しさというのはどの辺にあるのか、御説明を頂きたいというのが2点目です。
それから3点目は、これも前申し上げたんですが、31ページの一番下に、中山間地域に応じた整備ということで、もう少しここは具体的な書き込みをというようなことを申し上げたと思うのですが、「農地へのアクセス向上のための農道整備など」ということで、もう少しそのメニューが、農地へのアクセス向上のための農道整備の他にも考えられるものがあれば、ここの記述を膨らますことが検討できないかということです。
以上の3点、よろしくお願いしたいと思います。
○西村部会長 ありがとうございます。ただいまの3名の委員の方からの御発言に対して、事務局の方で何かありましたらお願いいたします。
○中西計画調整室長 ありがとうございます。
まず1点目、木下委員の方から米政策の関係でございました。
この土地改良長期計画、基本計画に即して土地改良の部分を充実させて書かせていただくというのが基本だと思っています。基本計画の中にも、米については、生産量を増やしていくという目標が書かれていまして、それに基づいてこの土地改良長期計画も策定しているところです。土地改良長期計画の中では、特にそれに貢献する活動として、やはり米の生産コスト低減に向けた取組をしっかりやっていくというのが一丁目一番地だと思っています。それについても今回KPIに米生産コストの低減というのを入れさせていただいておりますし、加えて、今回、水田の基盤整備の事業量というのも、かなり意欲的に盛り込ませていただいております。そういう意味では、方向性としてはしっかり合っているという認識でございます。
あと、気候変動の影響が大きいということで、渇水・高温対策といったものもございました。これについても本文の中では記載しておるわけですけれども、これまで以上にそうした取組が重要になってくるという認識はしっかり持って進めてまいりたいと思っております。
あと、牧委員の方からは、一つ目としまして女性理事の登用の関係、これにつきましては今回も書かせていただきました。これを基に様々な活動をしていただいているということでございますので、その部分、しっかり反映させていきたいと思っています。
あと、技術者の関係のコメントもいただきました。この土地改良というのがやはり不可欠な学問であるというコメントも頂きまして、我々としてもそれにしっかり取り組んでいきたいと思っています。この後、技術小委員会に付託する案件として説明させていただきますけれども、技術開発計画の中でもそうした観点も盛り込んで考えていければと思っております。
あと、女性・若者という部分について、これまでの慣行的な取組との組合せが重要だということでございます。これにつきましては、やはり地域の実情というものを踏まえながら取り組んでいく必要があると思っていますので、女性・若者といったことで、今まで取り組んでこられた方を除外するといったようなことは決していないように、我々としても説明の中でも丁寧に行ってまいりたいと思っています。
あと、稲垣委員から3点頂きました。
まず、19ページ目のところで、「地域計画の実現に向けてきめ細かな基盤整備を推進する。」という部分につきましては、やはり地域計画の実現に向けて、ある程度スピード感を持った取組というのを求められていると思っておりまして、大規模に時間を掛けてやる事業に加えて、すぐ対応できる、事業名で言いますと農地耕作条件改善事業ですとか、そうした事業は基本的に手続きに時間を要さず取り組めますので、そうした事業も使いながら、きめ細かな基盤整備を推進したいということでございます。
加えて、農地中間管理機構との連携についてコメントがございました。これにつきましても、実はその上に書かせていただいている文章が正に農地中間管理機構との連携だと思っておりまして、農地中間管理機構関連事業の事業実施主体、今まで県だけでしたが、今回これに市町村を加えさせていただいたというようなこと、あるいは、そうした農地中間管理機構が所有する農地が事業対象に追加されたといったようなことも法改正でやりました。ですので、そうした部分が、正に農地中間管理機構との関連をこれからより強くやっていくということを書かせていただいた部分だということで認識していただければ有り難いと思います。
あと、21ページ目で、有機農業の関係でコメントございました。これにつきましては、指標として有機農業というのを1本立てに行くというのが、なかなか難しい部分があったというのは事実でございます。加えて、なるべくこの指標につきましてはシンプルなものにしたいという思いもございましたので、こういう形を取らせていただきました。
一方で、本体になりますと39ページになりますが、第6の「計画の円滑かつ効果的な実施に当たって必要な事項」の1番目の「環境と調和のとれた持続可能な農業生産への対応」の18行目から、「有機農業の拡大を後押しする観点から」という部分を一つの文章で入れさせていただいています。我々としてもやはり、この有機農業の取組を進めていくというのは重要なことだと思っておりますので、こうしたところを中心に、現場の方にも丁寧に伝えてまいりたいと考えております。
最後、3点目につきましては、31ページ目でございました、「農道整備など小規模できめ細かな」ということで、もう少しメニューを充実させるような形で記載していただきたいということであったと認識しています。この部分については、文量との関係もあるんですけれども、どういった書き方ができるのか検討させていただければ有り難いと思います。
私の方からは以上です。
○西村部会長 ありがとうございます。では、委員の発言に戻りたいと思います。
続きまして、松田委員、お願いいたします。
○松田臨時委員 これまでの意見を反映してくださったということで、文章化していただいたことに感謝申し上げたいと思います。
今回最終的に提示いただいた案自体には、意見は十分に盛り込んでいただいておりますので、特段の意見はありません。ただ、できた後、どう活用されているのかということについて一つ質問です。土地改良長計は、土地改良事業に関わる方々にとって、今後こういった方向でこういった点に注意しないといけないということを示唆する重要な計画であろうと思います。その意味で、土地改良事業関係者、私ども行政の関係者は目にするんだろうと思います。ただ、それ以外の方々にこの土地改良長計が伝わるかということについてです。これまでの土地改良長計について、土地改良事業関係者以外に伝わるように、どうアプローチしていたのか、教えていただければと思います。
農業を取り巻く環境は激変と言っていいんじゃないかと思います。取り分け象徴的なのが、米の価格を中心に国内生産に対して消費者がかなり注目をしている環境です。だからこそ、農業生産物とその出発点になる基盤整備について、どういう関係性があるのかということを伝えることが重要で、土地改良事業を農業者だけではなくて、農協関係者や農業共済関係者、あるいは農業委員にも、必要性を改めて伝えるとともに、加えて消費者については、そういう基盤があるからこそ米を安心して食べられる、農産物全般を安心して食べられるということを伝えやすいチャンスじゃないかと思うんです。
ですので、今回の長計は、関係者がこれを見て指針として頑張りましょうということだけではなくて、全体に広げるアプローチが必要な気がしております。かつてやっていたということであればといいんですが、その点についての質問です。
○西村部会長 ありがとうございます。松下委員、お願いいたします。
○松下臨時委員 松下です。一つはコメントと、もう一つは質問になります。
まず、資料1-1でも書いてあるように、「食料自給力」といったものが一つのキーワードになっていると理解していますが、食料自給力の定義といったものが、文中の中に正確に記されていません。国民は食料自給率はかなり理解されていると思っていますが、食料自給力となったときに、それがどういったものかっていったのを、もう少し明確に説明があっても良いのではないかと思っております。それが1点目です。
2点目は質問になりますが、木下委員とも重複しますが、気候変動下の農業生産といったことを考えたときに、政策課題1で生産性向上という話がありますが、農家の方にとっての利潤確保を考えたときには収益とコストの両方を見るんですけれども、ここで考えられているのは、基本的にコストの低減の話が主になっています。ただ、気候変動が大きなインパクトをもたらすのは、例えば米で言えば、米の質が収益に与える影響の方が量がそれに与える影響よりも大きいという研究も多々あります。そういったことを踏まえると、質的な問題に余り踏み込んでいないのは土地改良計画の範疇外なのかという、際どいところがありますが、そういった適用策についてもう少し踏み込んだ表現があってもいいんじゃないかと思います。
それに関連してですが、米の増産といったものが打ち出されていますが、そのときに小麦や麦・大豆等との関係性がどうなるのかと、そういった話もあります。気候変動によってネガティブなインパクトがある一方で、場所によっては米と小麦の二毛作もできる場所も増えてくると予測されています。そういったところで、米とその他の両方を生産しながら収益を上げていく、生産量を確保していくって、そういったことも可能にはなってきています。ですので、気候変動下のネガティブなインパクトだけではなくて、それによって可能になるような農業生産の新しい方策についても、どこかで言及するようなことがあってもいいのかなと感じました。
以上です。
○西村部会長 ありがとうございます。
御出席の委員の方から全部コメントいただきましたので、事務局の方からお願いします。
○中西計画調整室長 ありがとうございます。
松田委員からは、農業者、土地改良区を中心とした関係者への今後の方向性や留意点を示していく指針としての活用以外にも、消費者など、それ以外の人々へのアプローチも含めてというコメントだったと思います。
これにつきましては、やはり我々、今までそういったところが不十分であった点というのは否めないと思っています。やはりこの資料について説明に回るのが、地方公共団体あるいは農業関係の方々というのがどうしても中心になっていて、それ以外のところというのはテーマ別でいろいろと、例えば多面的機能ということで小学校に出前授業行ったりとか、そういった形での取組はあったんですけれども、この土地改良事業全体といったようなところは少し弱かった部分があると思っています。今回、この土地改良長期計画の目的のところに、正にそういったことも含めて、消費者視点を含めたような形の文言も追加させていただいたというのは、まずはそれを一つ、解決していきたいという思いでございます。
あと、先ほどの説明でもありましたけれども、やはり食育とか食文化というのを、これから省を挙げてPRしていくということをやりますので、その基になっている部分としての土地改良の役割ということをそうした活動とうまく連携しながら、しっかりと国民全体、農業者以外の方も含めて、伝わっていくような取組にも力を入れて進めてまいりたいと考えています。
あと、松下委員の方からは、食料自給力の関係ですが、御指摘のとおりだと思います。注釈の方に入れるような形の検討をさせていただければというふうに思います。ありがとうございます。
あと、気候変動の関係で、質へのインパクトでありますとか、あるいは、場所によってはこれから新しい作物に取り組めるのではないかというコメントも頂きました。我々、その答えとしては、やはり基盤整備の中で汎用化をしっかりやっていって、様々なものに対応できるような基盤を整えるということだと思っています。そういう意味では、そうしたメッセージがしっかり伝わる様に説明していきたいと思っています。
あと、生産物の質の部分については、やはり営農者のそれぞれの選択や工夫という部分もあって、なかなかこの土地改良長期計画の中で書き切ることが難しい部分もあったということも御理解いただければ有り難いと思います。
以上になります。
○西村部会長 ありがとうございます。オンライン出席の委員の御発言にいく前に、松本局長から一言ございます。
○松本農村振興局長 私、令和2年から3年間、農産政策部長をやっていまして、どちらかというと食糧部会と、また、去年は畜産局長で企画部会という形で審議会携わっていた関係で、米の関係で御発言がありましたので、私の考え方もお話ししたいと思います。
高温、気候変動の関係ですけれども、これらは基本的には、我々が行っているような大区画化ですとか汎用化ということを実施する以外に、やはり一般的にいうと高温耐性品種の導入を進めていくということがあろうかと思います。どうしても水の利用だけでは限界があると思うんです。その時々の気候変動に合わせたものに対して品種も変えていく必要がある。片や昔ながら、どうしてもこれを作りたいという品種がある中で、農業者の方もさはさりながら、気候変動に刃向かうわけにもいかないので、それに合わせていくような形でやっていかないといけないのが、品種の関係で1点あろうかと思います。
あとは、暦の関係も少し変えなくてはいけないのかなと思っています。時期的にいくと、昔ながらの営農暦の中でやっていくのではなくて、水利用も含めたところで営農暦に適用していくというように、営農技術の関係と品種の関係と我々の基盤の関係とは合わさらないと、気候変動にはなかなか適応しづらいのかなと思っています。
そういう面からしますと、増産をやっていく上においては、我々の大区画化というものにつきましては、まず、増産するにしても、コストが掛かって増産したら全く意味がないわけで、我々の大区画化は、まずはコストを下げるという基盤の条件を作るというのが一義的な役割だということを考えております。その中で、例えば今主食用米以外を作っている方が主食用米に転じていけば、おのずとそれは増産に結び付いていくわけでございますので、そういうふうな舞台装置を作っていくというのが我々の、いわゆる農業農村整備サイドの大きな役割かと思っております。
また、増産していく上において、先ほど松下委員からございましたように、汎用化を進めるということにつきましては、耕地の利用率を上げまして、特に西南暖地におきまして主食用米以外の麦・大豆の生産を上げていくというふうに、回転を上げていくことが進みますれば、主食である米ではなくて、やはり、海外に頼っている麦・大豆の生産を上げていくことが全般的な食料安全保障に資するという観点からしますと、我々は大区画化を進めつつ汎用性のある農地を作っていくというものを、両にらみでやっていくというのが増産なり食料自給力の維持向上に結び付く施策ではないかと思っておりますので、これを中心に添えながらやっていくのが基本かと考えております。
○西村部会長 ありがとうございます。続いて、オンラインの委員の方から御発言いただきたいと思います。北室委員、大丈夫でしょうか。
○北室臨時委員 ただいまの御説明ありがとうございました。
やはり、今ほど本当に私たち国民が食料安全保障への問題意識が高まっているときはないと思っております。そんな中で、大変力強い案を頂いたと思います。
私の方からは、質問と意見ということで、まず、スマート農業についてなんですけれども、KPIで、スマート農業の実装を可能とする基盤整備を行う地区の割合、10割というふうにあって、次のページで、情報通信環境の整備に取り組む地区、100地区とありますけれども、いろいろ取材をする中で、特に北海道中心ではありますけれども、やはり電波の不感地帯というのがかなり多いようで、そういった中で、この10割スマート農業実装というときに、100地区という根拠は何でしょうか。かなり大きな範囲を示されているのか、その辺りをお教えいただきたいと思います。
それから、18ページと19ページについて、特に19ページの17行目、「自動走行農機等のスマート農業技術の導入促進に向け」という文言なんですけれども、いろいろ取材をさせていただいた私の実感としては、スマート農業の自動操舵の農機などの旋回のためには、本当に土地改良の基盤整備は、促進というよりも、もう不可欠なんだなということをすごく感じております。例えば、いびつな形をきれいな形にするとか、均平するとか、それから傾斜を緩やかにするとか、それについては「区画整理・緩傾斜化」、「大区画化」という文言ありますけれども、本当に土地改良による物理的な整備というものがスマート農業には不可欠で、それを支えているというようなことを、もう一歩踏み込んで表現いただいたらいいんじゃないかなというふうな感想を持ちました。スマート農業が単に省力化とか担い手の労力軽減ということだけではなく、もう農業者の方のお声を聞きますと、やっぱりスマート農業を実装できていないところから耕作放棄地が始まるんじゃないかというような若い方の御意見、幾つかお伺いして、これは本当にスマート農業にとって土地改良が不可欠なんだという、そういった踏み込んだ必要性というものを強調していただけたらなと思いました。
以上です。
○西村部会長 ありがとうございます。続きまして、久保田委員、よろしくお願いします。
○久保田臨時委員 熊本県土連、久保田でございます。先程来、第4コーナーを回ったということでお話あって、4回の部会を経て、この4コーナー突入する前にはいろんな政局含むデリケートな環境もあって、非常に激務であったかと思いますが、しかも猛暑の中、時間ない中まとめていただいたところについて、中西室長を始め皆様に感謝を申し上げます。私の方からは、感想1点と、提案を1件させていただきます。
まず、感想というか共感の部分なんですが、先ほど説明があった中、参考資料1の冒頭の部分、土地改良長期計画の目的の中に「消費者との関わり」という事項が追加されたこと、これは非常に共感する部分でございます。最近の状況を見て、米の価格を始め、どうしてもやっぱり農業・農村というと、農産物の生産であるとか流通・販売、経営に関係する部分というのが大きく取り上げられるところがあるんですけれども、そこの基礎に当たる部分というのは非常に地味なんですけれども、土地改良が持っている水と土、それと人、これを育む農村、これをしっかり支援して守っていると。そういったところで、やはりここ、消費者との関わりも大きいんだと、距離も近いんだというところを共感した部分であると同時に、そういったところに対するアピール、発信がまだ不足しているんだなというのを、農業団体、現場として非常に痛感をしているところでございます。この事項が入ったことによって、やはり、国、県、市町村、そういったところと連携をしながら、もっと土地改良事業というのが、土地改良というのは非常に重要だということを、我々も団体として今後しっかりやっていくというところを改めて痛感・共感したところでございます。
提案として1件ございます。資料1-1の1ページ、冒頭にありました政策目標の1、生産コストの低減です。かねてから私、委員会の中で提案してございますとおり、大区画をやって効率化を図りながら農地対策、それと人への集積、担い手対策、今後の少子高齢化・人口減少に当たってのいろんな効率化・省力化を図るためにスマート農業、いわゆる高齢化対策、この3点をセット、パッケージでやはりやっていくことが重要だというお話をしていますが、その中で、この目標のKPIの中に「スマート農業の実装」という言葉がありました。この「実装」という言葉が非常にやはり奥行きも幅もあるというふうに感じてございます。これを具体的に今後セットでやっていくことが、大きくはやっぱり持続的な農業振興につながるのではなかろうかなということを感じてございます。
参考資料の1の5ページの方に、それについては出ております。基盤整備の調査あるいは計画段階でスマート農業の効果を理解する。これに関連して、スマート農業、「導入効果等の周知を図りつつ」という文言が追加されたということですけれども、これを今後はやっぱり具体的に、より土地改良長計推進の中で制度の充実だとか支援の充実、こういったことにつなげていく必要があると思いまして、我々も現場サイドとして、こういった事例をしっかり組み入れながら啓発をしていくということが大事かと思ってございますので、こういったスマート農業の実装を可能にする導入の制度の充実、機械購入等の要件緩和等も、是非とも今後具体的に進んでいただければと思ってございます。
私から以上でございます。
○西村部会長 ありがとうございます。河野委員お願いいたします。
○河野臨時委員 日本消費者協会の河野でございます。取りまとめ、ありがとうございました。
ほかの委員の皆様と重なる点もございますけれども、私から3点申し上げたいと思います。
まず、本日示された計画案に異存はございません。昨日の石破首相の宣言のとおり、改めて米づくりを中心に日本の農業を立て直すということで、農業者にとって安心して農作物を作り、同時に、私たち消費者にとっても安心して買って食べる環境が整う方向で、今回の新たな土地改良計画案の早期取りまとめと実行が、強固な農業基盤への大きな支援になることを期待しております。今回の検討の前提として、概要資料に整理いただいたように、農業・農村をめぐる情勢及び課題について把握し、その認識に立った上で、計画に示された四つの政策課題と、それぞれの課題の具体的目標に示されたKPIについて、必ずやり遂げるという決意を持って、この計画を社会に送り出してほしいと思います。
2点目としては、計画スタート後のチェック体制についてです。ロングスパンで評価されがちな土地改良計画ですが、できれば短期間で随時フォローアップし、好事例は全国に横展開、また、進捗を阻害するような問題が見つかれば早期に手を打つというように、臨機応変な伴走支援体制を作っていただきたいと思います。
最後、3点目です。消費者や国民の役割について申し上げます。消費者との関わりについて丁寧な記述を追加していただいて、ありがとうございます。言うまでもなく、土地改良計画というのは農業者、農業関係者、行政だけが尽力するものではなく、直近の米不足ですとか価格の問題、それから、猛暑・渇水などの気候変動問題、米国との関税協議の影響など、日本の消費者の食生活に直結する大問題とだと受け止めています。是非分かりやすい広報素材を用意して、土地改良事業が日本の農業の、今や将来とどのような関係があり、どのような影響を及ぼすのかについて、適時適切に周知・広報を行って、消費者や国民全体を力強い農業の応援団にしていただければと思っております。
私からは以上です。
○西村部会長 ありがとうございます。清水委員、お願いいたします。
○清水臨時委員 ありがとうございます。私も、河野委員がおっしゃったように、すばらしい計画ができたなと思っております。先ほど木下委員からも御発言ございましたけれども、今本当に大きな米政策の転換があって、米、農業・農村・農地に国民からの注目が集まっている中、この長期計画を進めていけることというのは、本当に追い風というかチャンスだと思っております。
その上で、基盤整備というか土地改良を進めていくに当たっては、やはり時間が掛かります。長期的視野の下の計画であるといっても、次の見直しが来たときに実は何も変わっていなかったら、それは意味のないことになってしまうんですが、農村の現場では意思決定にまだまだ時間が掛かるという状況がございます。正直、中山間地域では諦めムードみたいなものもないわけではございません。その諦めムードを少し変えていくという意味でも、土地改良区理事の女性の割合というのを設定されたことというのが一つ大きな転換になるんではないかなと思います。今新しい価値観がどうしても必要で、もちろんこれまで支えてこられた方々を大切にしつつも、ある種、余り言いたくないですけれども、痛みというか、もしかするとコンフリクトかもしれないんですけれども、痛みを持ってでも変えていかなければいけない、今本当ぎりぎりのところに来ているんじゃないかなというふうにも思っております。なので、この長期計画の遂行というか実施において、現場に対して、それは市町村の職員、あるいは小さな土地改良区も含めてなんですが、今取り組まなきゃいけないって踏み切れる、背中をぐっと押すような具体的な事業等を、この計画の下で期待したいと思っています。
私はどうしてもソフトの方に注目してしまうので、現場での意思決定の方法論というのを考えるのですけれども、いい打開策を提案できないまま、ここ10年来てしまったなという反省も思っております。
先ほど松本局長からもありましたように、法改正、新たな長期計画の策定で舞台は整いつつあります。この整った舞台で今後、現場でどうしていくか。人々が心折れないように、前向きに今踏み切れるという状況にしていくためにどうすればいいかというのを、農林水産省の皆様に様々な事業をお願いしたいと同時に、今後の現場に関わる者として、すごく身の引き締まる思いをしております。
感想になりますが、以上です。
○西村部会長 ありがとうございます。では、事務局の方から、何かありましたらお願いいたします。
○中西計画調整室長 ありがとうございます。
まず、北室委員の方から、スマート農業を進めていくということで、一つ目は情報通信の100地区の考え方という御質問いただいたかと思います。今、情報通信で我々が整備している地区が年間で約10か所弱でございます。それを5倍すると50弱となります。今回、基盤整備の事業量もしっかりと伸ばしていくというのに合わせて、やはりこの情報通信も取り組んでいかなければならないということで、今現在の取組のスピードを倍にするような意欲的な数字を入れさせていただいています。これにつきましては、現場への説明の中では、その希望があれば我々としては応えられるツールを持っておりますので、そうした希望やニーズをしっかり踏まえてやっていきたいと思っています。
あと、19ページ目になりますが、スマート農業技術の導入の促進に向けてというところで、不可欠であると考えているという御意見を頂きました。これについては、様々なところで連携が必要ということを書かせていただいています。また、スマート農業もいろんな形の技術があろうかと思っておりますので、この連携をしっかりやっていくというようなことも含めて、導入の促進に向けというような言葉を使わせていただいております。しっかりと我々が取り組むことによってスマート農業技術が入りやすいというのは、そのとおりだと思いますので、そこはしっかり連携取りながら進めてまいりたいと考えております。
あと、久保田委員の方からは、まずPRの関係で、土地連の方としてもしっかりと頑張りたいというコメントがありました。これは国としても是非連携して進めさせていただきたいと思っております。
あと、スマート農業の実装の部分でありますとか、そうしたPRの方法についても、我々も事例とかパンフレットを分かりやすく作っていきたいと思っております。この部分、いろいろと今後も相談させていただければと思います。
あと、制度の充実といったようなコメントもございました。これについても今後、地域の実情等に応じて予算や制度要求していく中で、必要なものというのをしっかりと考えながら取組を進めていきたいと思っています。
河野委員からは、一つ目として、しっかりと進めてほしい、大きく期待しているとエール頂きました。ありがとうございます。二つ目として、チェックのスパンの問題がございました。これについては、今回、基本計画の中で、毎年度PDCAサイクルにより施策を見直すということが盛り込まれております。今回の土地改良長期計画でも基本計画と同様の指標を策定している部分がございますので、そうした指標については毎年度、これから我々もフォローアップしていくことになると思っております。それに応じて、しっかりと次の施策に反映していくというようなことを進めてまいりたいと考えています。あと、消費者へ分かりやすい広報をして、是非この土地改良をよく知ってもらってほしいという、これもエール頂きました。今後、我々、そうしたPR材料を作っていく中でも、いろいろと御相談させていただければ有り難い思っております。ありがとうございます。
清水委員の方からは、女性の割合について、変えていくタイミングというのもあろうかというようなコメントでございました。これについては一番最初に牧委員からも御指摘いただいた部分でもあるんですけれども、やはり地域の実情、ここの部分をしっかりと見て、バランスを取りながら進めていくということが一番重要と思っています。そこは丁寧な話合いの中で、その地域に即して一番ふさわしいような体制をしっかりと模索していければと考えております。あと、今回の土地改良長期計画で位置づけられた施策が進むように、背中を押すような事業制度の充実というようなコメントもございました。これにつきましても、毎年の予算要求の中で、それぞれ実情・状況変わってきておりますので、そうした部分も含めながら、必要に応じて進めてまいりたいと考えておりますので、またいろんな形で意見交換させていただければと思います。
私の方からは以上です。
○西村部会長 ありがとうございます。
では、またウェブの方に戻りたいと思います。長谷川委員、よろしくお願いします。
○長谷川臨時委員 説明ありがとうございました。意欲的なKPIもたくさんあり、今回の長期計画については、おおむねこの方向でいいと思います。
先ほどからいくつか御指摘がありましたが、特に消費者との関わり、消費者目線に立った長期計画の狙いについてきちんと書き込んだのはよかった。消費者にとって非常に関心があるのは、将来にわたって適切な価格できちんと食料が安定供給されるのかということです。これから先も多分ずっとそういう関心は続くと思います。大事なのは、この長期計画を契機に、土地改良事業が消費者の関心事にいかに貢献するのかということを強く発信することです。今回まとめた長期計画の狙いについては、閣議決定した後も発信していくことが大事だと思います。
もう1点は質問です。昨日の関係閣僚会議でも米の増産の話がありましたが、現在、農政が大きく転換する時期に来ています。昨日の閣僚会議では、来年夏ぐらいまでかけて、増産をどうするか、輸出をどうするか、あるいはそれらに伴う大区画はどうするか、といった具体的な話を検討していくことになったようですが、その検討作業と今回の長期計画はどのようにかかわるのか。あるいは、先ほどフォローアップの話もありましたが、今後、農政上の新たな方針が具体的に出てきたときどう対応するのか。例えば大区画化やスマート農業などで生産コストを低減していくというような、大きな方向性は今後も変わらないでしょうが、今後、米の増産などをめぐる具体策がいろいろ出てきた場合、この長期計画を更に強化した方がいいのか。そういうことは検討しておいてもいいかと思います。例えば長期計画のフォローアップや中間評価を通じて、KPIのここの部分をもっと強化するとか、そういう変更もあり得ると想定しているのか。あるいは、長期計画は長期計画としてこのまま維持することになるのか、現時点で事務局としてはどういう姿を描いているのかということについて、お伺いします。
○西村部会長 では、藤原委員、お願いいたします。
○藤原臨時委員 御説明ありがとうございました。
基本的には、今回提示された新たな土地改良長期計画については、今までの委員会での意見を入れていただいておりますので、非常に充実したものに出来上がっていると思っています。そのため、特に新たに何らかの追加意見というのはないのですけれども、政策課題1の事業量について、コメントと、質問というか将来の見通しをお尋ねしたいと思います。
現行の土地改良長期計画と比較した場合、水田の基盤整備というのが9万ha、そのうち大区画化が6万ha、残り3万haは中山間という御説明でした。現在の土地改良長期計画では水田の大区画化しかなかったので、中山間にも事業量を明記して、中山間の特色を活かして整備するという方向を出されているのはすごくいいことと思いました。現行の土地改良長期計画と比較した場合、今回の計画では水田の大区画化が1.6倍、畑地かんがいについては2.2倍に増えているのですが、水田の汎用化については3割減となっています。この水田の汎用化については、現行の長期計画の実施状況についての説明が以前ありまして、その際に、令和3年度の時点で比べると、その時点での目標の50%ぐらいの達成率であったということの説明であったと思います。その理由としては、目標設定時と比べて資材の価格が高騰したということとか、簡易整備における暗渠排水の整備要望の割合が低かったということが分析されていました。今回のこの事業量についても、基本的にこのような要望の傾向を考慮された上での数値だと思いますけれども、将来を見据えると、汎用化できるところは汎用化して整備しておくことも重要と考えられます。汎用化できる水田が、まだあるように思うのですけれども、新たに汎用化する面積というのは将来的には減少傾向に入っているという認識、つまり汎用化を推進しようとしなくなっている方向に向かっているのか、その辺の見通しを教えていただければと思います。
以上です。
○西村部会長 ありがとうございます。
では、お待たせしました。最後、松本委員、お願いいたします。
○松本臨時委員 御説明ありがとうございます。すばらしくまとまりのある長期計画だと認識しており、参考資料1では意見を反映していただき、本当にありがとうございます。
私から3点述べさせていただきます。
現土地改良長期計画のKPI設定においては、数値目標に「約」を付けておりましたところ、今回は付いておりません。全国的な取組の達成目標(KPI)であり、今後、地域別の多様化が進み、さらに、農業を取り巻く社会的・経済的変化もますます大きくなると考えられる中、「約」は残しておいた方が土地改良基本計画法の検証を行う際などによいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
2点目、資料1-1、P3、防災重点農業用ため池におけるKPIが、防災工事着手割合が9割となっております。地元からの申請がなくてもため池改修ができるように制度が拡充されたとはいえ、工事着手のためには、工事期間中ため池の水が使えなくなること等の地元の理解の調整が必要であり、目標は高いことはいいことなのでしょうが、少し高過ぎるのではないかと思いました。
最後に、資料1-1のP3、政策課題4、資料1-2、長期計画本文のP31~P32において、中山間地域に関する課題や対策を記載していただいていることに感謝をいたします。ありがとうございます。このことにより中山間地域にも目を向けていただけることがすごくうれしいです。本当にありがとうございました。
私からは以上です。
○西村部会長 ありがとうございました。事務局のコメントの前に、私の方からよろしいですか。
今までの委員の方とは話が被らない部分として、一つ文言に関してです。本文の途中で「農村インフラ」と「生活インフラ」というのありまして、場所によっては集落排水を二つの言葉が指していたり、農村インフラは施設を指していたりと、ちょっと言葉が混乱しているので、そこの整理をしていただいたらいいのかなと思います。
もう一つは質問ですが、資料2-2の32ページぐらいのところで、農村関係人口の話があるんですけれども、そこのところで研究機関だったり民間だったり教育機関、いろいろ書いてあるんですが、そこで、例えばNPOとかNGOの位置づけというのはどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
以上です。事務局の方、よろしくお願いします。
○中西計画調整室長 ありがとうございます。
まず、長谷川委員の方から、米の関係で、これから1年掛けて増産に向けた議論を行う中で、いろいろと中身が詰まっていくというようなお話ありました。大きな議論の中で、我々省を挙げてしっかりと取組を進めていくということが重要だと思っています。その中で、やはり生産コストを下げていくための我々の土地改良、大区画化というのも、今日の新聞でも書かれていましたが、そうした取組というのは一つの重要なツールになると思っていまして、この議論の中でも、我々としてもしっかりと貢献していきたいと思っております。また、2027年度からの水田政策の見直しというような大きな方向性もある中で、そうしたものがいろいろ動いていく中で、その状況がどうなるかといったことも踏まえながら、そうした状況をしっかり見た上でこの計画に何か追加する必要があるのかといったことについて御相談させていただきたい、判断させていただきたいと考えているところです。そうした意味でも、中間報告みたいな形で今まで土地改良長期計画でさせていただきましたけれども、そこは基本的には変えることは考えていないですけれども、基本計画の方で1年ごとのフォローアップを行いますので、そうした部分の結果はしっかり踏まえながら、必要な施策の反映に取り組んでいければと考えているところです。
あと、藤原委員からは事業量の関係で御質問を頂きました。今回、基盤整備の関係では、特に水田の基盤整備全体の事業量を位置づけています。汎用化につきましても、これは市町村のそれぞれの農業農村整備の事業計画を全国で作っておりまして、そうした計画等を踏まえて、今回この数字を設定させていただいております。また、汎用化については、前回の目標に対しての取組の状況というようなことも勘案しまして、総合的に今回の事業量を設定させていただいたという考え方でございます。いずれにしても、全てのところで、大区画化したところで汎用化が必要かとか、あるいはそうでないかというのは、やはり何を作られるかというその地域の状況にもよるところ大きいと思いますので、我々としては、無駄のないように、かつ地域のニーズにしっかり応えられるような整備を進めてまいりたいと思っております。
松本委員からの御意見ですが、今回、「約」というのをなくしたということで、その「約」という部分が前後どれぐらいなのかという点についてもいろいろ議論あるところだと思っていまして、そこの部分をなくさせていただいて、数値を明確化させていただいたという意図でございます。
あと、二つ目の、ため池の工事着手9割ということでございました。これにつきましては、やはり地元の調整というものをしっかりさせていただきながら進めるというのがもう大原則だと思っております。ため池を工事することによって営農に支障が出るといったようなこと、いろんな現場で起こりますので、営農調整も含めてしっかりと対応させていただいた上で取り組む。一方で、この防災農業重点用ため池については、もし被害が起きたときには、その被害も非常に大きいというため池でございますので、なるべく早急に対策に取り組みたいというようなこともございますので、こうした数字、意欲的な指標を設定させていただいたということでございます。
中山間につきましては、しっかりと我々としても注目しながら、ここの部分、充実させながら取り組んでいきたいと思っております。
あと、西村部会長からは、まず一つ目、「農村インフラ」という文言の定義の関係ございました。これにつきましては、この後、事務局の方で引き取らせていただいて、書きぶり等について考えさせていただきたいと思っております。
あと、農村関係人口のところで、NPO等の位置づけというコメントございました。これについても、全く除外するものではないと認識しております。そうしたところもやはり活動に一緒に参画していただいて、その取組、農村の振興に非常に重要なキーマンの一人だとい思っていますので、連携をしっかり取りながら進めてまいりたいと思います。
私の方から以上です。
○西村部会長 ありがとうございました。以上で議題1の方について締めさせていただいて、時間も結構押していますので、続いて、議題2の技術小委員会への付託事項について審議をしたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
○中西計画調整室長 ありがとうございます。
資料の2-1を御覧になってください。「「環境との調和に配慮した事業実施のための調査計画・設計の技術指針」の改定について」でございます。これにつきましては、環境との調和への配慮の一環として、特に生物に着目した調査、計画、設計・施工、維持管理及びモニタリングを進めるための技術参考資料として定めております。平成27年に最終改定させていただいています。その後、改定から10年たったということと、今後の生態系配慮の方向性でありますとか、あるいは農林水産省の生物多様性戦略の改定といったような動きもありましたので、主な検討内容としまして、一つ目は生態系配慮の指導・助言体制の強化とか、新技術の活用といったようなものについても盛り込んでいけないか。二つ目、特に外来生物の関係の施工時の流出防止策ですとか除去方法等といったものについても追記させていただければと考えております。あと、生態系ネットワークの保全に関する工法、さらには、ため池廃止時における環境配慮手法についてもかなり進んでまいりましたので、そうした内容を盛り込んで改定をさせていただければと思っております。
続きまして、資料の2-2を御覧になってください。もう一つの改定事項が、「「農業農村整備事業に関する技術開発計画」の策定について」です。これにつきましては、土地改良長期計画に位置づけた政策目標の達成に向けて、「実用性に富み、社会に貢献し得る技術開発を推進する観点から、生産基盤の整備等を通じた農村の振興に必要な技術開発の推進方向と具体的方策を取りまとめる」ということで、前回も土地改良長期計画に合わせて策定しております。
今回も、この長期計画の見直しと合わせまして、以下の政策目標の1から5に即したような形の技術開発計画を策定したいと思っております。これも繰り返しになりますけれども、この中で、やはり人材の育成ですとか確保といったようなことにも触れながら、そうした部分についても留意しながら、検討を進めてまいりたいと考えております。
私の方からは以上です。
○西村部会長 今の説明について、何か質問、御意見などあればお願いしたいと思いますが、いかがでしょう。木下委員、お願いいたします。
○木下臨時委員 ささいな質問ですけれども、付託事項の最初の一つ目、環境との調和に配慮したというところで、主な検討内容見ると、生態系配慮、外来生物、生態系ネットワークということで、生物にかなり着目されているのかなという。技術小委員会の専門委員の方々の中に、特にこれにやっぱり詳しいという方は入っていらっしゃるんでしょうか。専門性がよく分からないので、教えてください。
○中西計画調整室長 技術小委員会の専門委員には幅広な分野の方々に入っていただいております。また、この改定を進めるに当たっては、業務発注を行い、特に生物関係の詳しい委員の先生方に別途委員になっていただき、この中身の検討を進めているというところでございます。そういう意味では、様々な生物に関する専門家の方の御意見も頂いていますし、あるいは、技術小委員会の中でもそうした観点からの審査もしっかりしていただけると考えています。
○木下臨時委員 承知しました。ありがとうございます。
○西村部会長 ほかに何かございますでしょうか。よろしいですかね。では、この資料2-1、2-2については小委員会の方に付託させていただきます。委員長の藤原先生においては、いろいろ御面倒をお願いすることになりますが、よろしくお願いいたします。
○藤原臨時委員 承知しました。よろしくお願いします。
○西村部会長 ありがとうございました。以上で予定している議事が終了したということで、もし、ほかに御意見などございましたら、事務局の方に後日お送りいただければなというふうに思います。
では、事務局の方にお返ししたいと思いますので、よろしくお願いします。
○中西計画調整室長 ありがとうございます。西村部会長を始めまして委員の皆様、長時間にわたり御議論いただきましてありがとうございます。
それでは、以上をもちまして本日の部会を終了させていただきたいと思います。誠にありがとうございました。
11時37分 閉会
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