日本農林規格調査会議事録(令和2年8月21日開催)
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日時:令和2年8月21日(金曜日)書面開催
2.議題
(1)ノングルテン米粉の製造工程管理の日本農林規格の制定について(2)有機農産物の日本農林規格等の有機4規格の改正について
(3)地鶏肉の日本農林規格等の確認について
(ア)地鶏肉の日本農林規格の確認
(イ)ハンバーガーパティの日本農林規格の確認
3.議事内容
【委員からの意見の概要】(1)ノングルテン米粉の製造工程管理の日本農林規格の制定について
(折戸委員)・米粉の多用途展開による需要の高まりが期待される状況において、ノングルテンの特長を活かすための規格の整備は重要。品質は製造工
程で作り込むことが重要であり、本規格案はその要件を具備していると認める。
・規格制定後の活用の観点から、規格の英文訳を公開することにより海外における需要にも応えることが期待される。
(里井委員)・米粉の認知度をもっと上げることで、米の消費量増加や生産者のモチベーションアップにも繋がれば良いと思う。
・今後も海外輸出や海外の方が日本での米粉商品に興味を示し、需要増に繋がると良いと思う。
・消費者の中には「ノングルテン」と「グルテンフリー」の差が明確になっていない方も多いと思うので、「ノングルテン」の用語の意味
を明確にするとともに、米粉が「グルテンフリー」だけでなく「ノングルテン」の商品まで作るのに大いに役立つことをPRすべきだと
思う。
(鈴木委員)・ノングルテン米粉の需要の高まり、国内における関連協会による認証制度、海外への輸出の可能性が増す現状などにより、本規格の制定
に賛同する。
(森光委員)・製造工程管理という面での規格制定に同意する。(ノングルテン米粉の)業界認証マークが貼付されている商品を見かける中、JASマー
クによる安心安全を担保する意味にも重要と考える。
(米岡委員)・(資料4-1の「5.2.3」の箇所について)「製造で水を利用する場合」と記載されているが適切なのか。特定の工程や使用方法に限り、か
つ、水を使用する以外の方法がある、若しくは水以外を利用する方法が一般的であれば、この記載のままで良い。
(青木委員)・規格制定の背景要因として、ノングルテン米粉の輸出促進もあることを考慮すると、当該規格で定めるグルテンの定義が、諸外国のそれ
と同一であることを諸外国のステークホルダーが明確に理解できることが必要と考える。また、同時に国内の事業者にとってもわかりや
すい表現とすべき。
・当該規格のグルテンの定義において、「水及び0.5mol/l塩化ナトリウム水溶液に不溶であり、・・・」との記載が文頭にきているが、
CODEX、EU、ノングルテン米粉の認証制度(日本米粉協会)の定義と比較しても違和感がある。小麦については、CODEX STAN
118-1979,EC 828/2014を参考に小麦の補足をしたほうが、諸外国に対する理解が得られやすいと考える。
・CODEX、EUなどがグルテンフリーを20ppmとしていることを考慮すると、ノングルテンとして1ppm以下を目標としているのは極めて
高度な水準と考える。諸外国から見た規格の信頼性と生産工程管理者のばらつきをなくす目的で次の点を明確にしたほうが良い。
(ア)製造方法を変更する際は、その変更内容が及ぼす影響評価(リスク評価)を変更前に行い、管理方法の修正の必要性を判断する。
(イ)原料米穀の管理について、グルテンが混入しないように管理されたことの根拠書類として、圃場段階、収穫後の保管・輸送工程、精
米の段階など、それぞれの工程におけるリスク評価が含まれていることを規格や認証の技術的基準で明確にする。
(ウ)出荷の管理について、予期せぬグルテンの混入が起こった場合の対応として、製品回収やノングルテン、グルテンフリー製品へ原料
として利用しない旨の顧客への通知など、認証事業者がとるべき措置を明確にする。
(岩崎委員)・ノングルテン米粉のグルテン含有量を厳しく管理することに賛成。
・ノングルテン米粉とグルテンフリー食品との区別がはっきりできて良い。
(大谷委員)・いわゆる過度な「グルテンフリー」ダイエットを国が推奨しているとの誤解を避ける観点から、「グルテンフリー米粉」等の「フリー」
の表現は避けるべき。
・すでに政府が行っている「ノングルテン米粉」、「ノングルテン表示」についての国際的な広報活動を徹底してほしい。
(川上委員)・海外でのノングルテン食品への需要が今後も高くなっていく事を踏まえ、輸出に対しての強力な後押しになると思う。ブランドとして是
非活用してほしい。
(富松委員)・日本のコメのブランディングには必要。
・海外で認知されている「グルテンフリー(20ppm以下)に対して、「ノングルテン」をうたうのは、効果に対して費用が掛かりすぎるの
ではないか。
・グルテンの管理を1ppm以下を基準としているが、既存のカントリーエレベーターでは、厳しいIPハンドリングは難しいのではないか。
10ppm以下であれば、食品衛生法のアレルゲンのコンタミの基準に合致しており、運用は可能と考えられる。
・定量検査や定性検査の検査法が記載されているが、規格にはどこでどう使うのかについて記載がない。いつ、何を、どの頻度で行うのか
明記したほうが良い。
(水野委員)・ノングルテン米粉の商品にJASマークが貼付できれば、JASマークが消費者の目について、JASの普及になるので、今後ご検討いただき
たい。
(山根委員)・パン、麺、菓子類等々、米粉利用食品の人気は高まっており、また、グルテンフリー食品の需要も大きく伸びているところ。高品質な米
粉がJAS規格化されることに賛成。
・コメの消費量を増やすことにも繋がると期待されるが、海外がターゲットであり、JASマークも製品に付かないので、我々が直接目にし、
選択の目安とすることができないのが残念。日本産の信頼規格として国民が理解、支持し、家庭でも米粉の利用が広がると良いと思う。
・コロナ禍は食や農を考える機会になっている。コメや米粉を巡る状況についても、国民への積極的な情報提供をお願いする。
*原案どおり制定することについて了承が得られた。なお、提出された意見は、次回の規格見直しの際の参考とすることとなった。
(2)有機農産物の日本農林規格等の有機4規格の改正について
(折戸委員)・EU等での種子の確認方法の取り組みを参考として、有機JAS規格運用の基盤とすることに異論はない。
(木村委員)・(資料3の10ページ左下に記載されている)有機農産物の生産行程の基準を遵守しなかった場合に、ペナルティを課してほしい。
(里井委員)・海外情勢をしっかり見据えたうえで、明確化すべき。
(鈴木委員)・有機農産物のJAS規格については、ゲノム編集技術と遺伝子組換え技術との(ア)用語の問題、(イ)排除範囲の問題、(ウ)確認(検出)
手法が完全でない状況での規格としての妥当性の問題が並行して課題となっていると理解している。
(ア)、(イ)については、CODEXガイドラインの遺伝子操作技術、遺伝子組換え技術に準拠することを支持したい。なお、(イ)につい
ては、これまで行われてきた突然変異育種などの成果との線引きを明確化することが必要。(ウ)については、技術が急激に変化・進歩
する時代にあっては、まさに遺伝子操作がそれに該当するが、「検出、確認できないものは定めない」とするか、「生産工程や情報管
理など状況証拠で判定・判断する」ことになると思う。後者が可能ではないか。
(中嶋会長)・引き続き、海外情報の収集・分析を続けていただきたい。
(森光委員)・加工食品の原材料を輸入に頼る割合が高い日本において、本件の検討をスタートしていることは大変意義深いと考える。一方で、有機
JAS認証基準に関して火急に結論を出す必要はなく、もっと慎重な姿勢であることが肝要と考える。
・この問題は、日本だけが独自に結論を出せる内容ではないと思うので、欧州、米国、アジア諸国等の動向を判断して、同時に国内の現
況分析を継続する段階だと思う。また、日本が培ってきた有機JAS認証が優位に立てるのであれば、プレミアムな有機JAS認証を付加
するような検討を重ねる段階だといえる。
(米岡委員)・EUのような種子のデータベースが構築され利用できることは、規格適合製品の信頼性の面でも重要なことと考える。ぜひ国として推
進していただきたい。
(青木委員)・有機JAS規格としては、現行のまま「組換えDNA技術を用いて生産されたものではないこと」を維持し、運用上のルールとしてゲノム
編集技術を利用して得られたものは、現状認めないことを決めれば良いと考える。
・「自然には起こることのない方法で」ということも1つの重要な視点と考える。遺伝子組換えに該当しないと整理されるSDN-1と
SDN-2の一部については、自然界でも起こりうる遺伝子の変化と整理されていることから、ゲノム編集技術応用食品と従来の組換え
DNA技術と同等の扱いを適用するのが正しいのかは疑問が残る。
・ゲノム編集技術のプラスの側面を見れば、目まぐるしい環境変化に迅速に対応するための品種改良により、環境にあった健全な植物の
育成、結果として環境に影響を及ぼす化学物質の使用削減、安定した生産性や収量向上による貧困撲滅への貢献など、健康の原理、公
正の原理に貢献できる要素も持っていると言える。
問題なのは、ゲノム編集技術にて得られた作物の商業的栽培における影響、有用性などが、実態として現状十分に分かっていないこと
だと考える。
配慮の原理(予防的かつ責任ある方法で管理すること)を考えれば、このような現状においてゲノム編集技術の利用を有機JAS規格の
中で認めることはないと考えるが、長期的な視点で考えれば、ゲノム編集技術という固有名称で規格の中で禁止してしまうことは時期
尚早と考える。
(岩崎委員)・ゲノム編集技術等の明文化については、海外等の状況を見ながら決めていくのが良いと考える。
(富松委員)・(有機JAS規格におけるゲノム編集技術の取扱いについては、)世界の動向を見るために少し時間を空けたほうが良い。
・「有機農産物には、遺伝子組換え技術を使用しない」とする場合、「遺伝子組換え技術」の定義が重要。有機農作物のCODEXガイド
ラインの定義に従うと、放射線や化学物質による突然変異も禁止と解釈できる。有機農産物のJAS規格化を進めるためには、「遺伝子
組換え技術」に関するCODEXガイドラインは不十分。独自の定義が必要。
・「農家が有機種子であることを確認して使う」という運用は、国内的には可能であるが、海外の種子メーカーから見ると排他的な非関
税障壁ともとられかねない。
・有機農産物JAS規格案における「ゲノム編集技術」の取扱いが、厚生労働省や環境省、消費者庁の見解と異なる。国内の省庁間で見
解が異なると事業者は混乱するので、特に厚生労働省や消費者庁とは見解を合わせていただきたい。
・米国やEUでもまだ運用されていないゲノム編集技術を含む有機農産物の規格化は、米国やEUをはじめ、グローバルでの議論が進み、
運用が議論されるまで、少し待ったほうが良いと考える。
(水野委員)・海外の確認方法を参考にしながら、じっくりと検討したほうが良いと思う。
(山根委員)・「有機JAS規格ではゲノム編集技術を含む遺伝子操作、遺伝子組換えの使用を認めない」とする改正を早期に実現することを求める。
・有機JAS規格はプロセスの基準であり、書類審査と現場審査により成り立っている。ゲノム編集においてもプロセスの確認で判断が
なされるものと理解している。具体的な認証手順やQ&A作成は、別途専門家による会議体を作り、検討を進めていただければと思う。
・EUでは、ゲノム編集技術を排除する方法について明文化はされていない一方で、有機基準に従って生産された種子についての一元的
なデータがあるとのこと。日本でも種子の由来(ゲノム編集を含むすべての遺伝子操作技術の使用について)の表示を義務付け、デー
タ化することの検討を進めていただきたいと思う。
(3)地鶏肉の日本農林規格等の確認について
(ア)地鶏肉の日本農林規格の確認
(折戸委員)・地域ブランド展開を支える必要性があるので、規格の確認に同意する。
(鈴木委員)・格付数量が概ね横ばい状況であること他の理由により、規格の確認に同意する。
・地鶏肉JASの説明資料(資料3の13ページ)の格付率の算出に際して、肉用鶏全体を対象として計算している。統計量として正確に把
握できる数値が全体量であろうことは推察されるが、「地鶏肉」を想定して、あるいは類似の生産方法による生産量があれば、明確な
数値が統計量として集計されていない場合でも、地鶏肉の格付率の推計は可能かと思う。
(森光委員)・ブームに比べて想像していたよりも、地鶏肉の格付率が横ばいのまま。規格の「素びな:在来種由来血液百分率50%以上」の基準が邪
魔をしているのか、市中に出回っている「地鶏肉名称」の隆盛に比べて差を感じている。地鶏肉のJAS格付の実績が無い都道府県での
新たな資本参入によって、今後、格付率が増加する傾向があれば良いのだが。今後の注目ポイントとして引き続き見守りたい点である。
(岩崎委員)・JAS認証を受けることにより、消費者の安心に結びつくと思う。
(富松委員)・地鶏のブランディングに役立つのであれば、賛成。
(山根委員)・規格の内容に関わることではないが、アニマルウェルフェアの意識が日本で更に高まってほしい。
*原案どおり確認することについて了承が得られた。
(イ)ハンバーガーパティの日本農林規格の確認
(折戸委員)・消費者の信頼感を維持するために必要な規格であり、確認に同意する。
(里井委員)・今後の社会情勢を踏まえながら、「標準」「上級」の用語の使い方や2つの等級区分など検討が必要になるかも知れないが、現時点で
は問題ない。
(鈴木委員)・生産量、格付量とも安定していること、あるいは微増していることから、規格の確認に同意する。
・「上級」、「標準」の2等級のうち、「標準」については格付実績がないのであれば、規格として存続させる必要性を明確にする必要
がある。
・この規格の格付製品を使用する実需者は1社と聞くが、JAS規格として存続させる意義があるのか。
(米岡委員)・今後の改正に向けて、購買者の利便と事業者による表示等利用拡大などを目的として、「等級の数(種類)」、「等級の名称」など検
討してはどうかと考える。
(青木委員)・今般のチェーン店以外で提供されるハンバーガーの多様性と消費者への浸透度を考慮すると、次回確認時には、市場における商品・製
法の多様性(厚さ、脂肪分、食肉以外の材料(大豆ミートなど)を考慮した方が有用な規格になると考える。
・標準の等級で使用できる「添加物」の規定について、邦文でその内容を記載した方が利用者にとってわかりやすいと思う。
(岩崎委員)・JAS認証品だと消費者は安心感がある。
・等級(上級、標準)に応じて使用できる原材料の規定については、消費者等の価値観や嗜好の変化も生じることもあるので、融通性も
必要だと思う。
(富松委員)・標準規格も品質の下限の基準として機能しており、規格の継続に賛成する。
(山根委員)・今回は確認に同意するが、この規格の実需者が1社であり、幅広く使える規格であるのか、上級・標準の等級区分について見直す必要
がないかなど、別途考える場を設けてはどうかと思う。全く別の商品と認識しているが、肉風味の「大豆ミート」といったものが人気
を集めると言う時代の変化もあり、規格のあり方について幅広く検討する必要性も感じている。
*原案どおり確認することについて了承が得られた。なお、提出された意見は、次回の規格見直しの際の参考とすることとなった。
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