日本農林規格調査会試験方法分科会議事録(令和6年11月13日開催)
1.日時及び場所
日時:令和6年11月13日(水曜日)
場所:農林水産省三番町共用会議所別館 A会議室(Web併催)
2.議題
(1)日本農林規格の制定について
(ア)食品における相対モル感度を利用した定量法に関する一般要求事項の日本農林規格の制定
(イ)米中の4-アミノ酪酸(GABA)の定量-高速液体クロマトグラフ法の日本農林規格の制定
(2)その他
3.議事内容
午後2時00分開会
〇渡部規格専門官
定刻となりましたので、ただいまから令和6年度第2回日本農林規格調査会試験方法分科会を開催いたします。
私は、農林水産省基準認証室で事務局を担当しております渡部でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
委員の皆様におかれましては、本日はお忙しい中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。
本日の分科会は、農林水産省の会議室とウェブとの併催としてございます。
分科会委員7名のうち、恒次委員から欠席の御連絡を頂いております。現在、当会場で3名、オンラインで3名、計6名の委員の方に御出席を頂いてございます。日本農林規格調査会令第7条第1項の規定により、本日の分科会が成立していることを報告いたします。
本試験方法分科会は、日本農林規格調査会に設置されております。試験方法のJASについて制定や改正を御審議いただいているところでございます。
本年7月25日に分科会委員3名の方の御異動がございました。ここで、新たに就任された委員を含めて資料1の委員名簿順に御紹介いたしますので、一言御挨拶を頂きたいと思います。
オンラインで御出席されている委員の方におかれましては、カメラ、マイクをオンにして御挨拶を頂きますようよろしくお願い申し上げます。
初めに、亀山委員でございます。本日はオンラインでの御出席でございます。一言御挨拶いただけますでしょうか。
〇亀山委員
農研機構の亀山でございます。前回に引き続いて委員を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
〇渡部規格専門官
亀山委員、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
続きまして、新藤委員でございます。新藤委員は、今年8月6日にメール開催いたしました第1回試験方法分科会において分科会長に互選されています。
新藤分科会長、一言御挨拶いただけますでしょうか。
〇新藤分科会長
分科会長を務めさせていただきます、日本女子大学家政学部食物学科に所属しております新藤と申します。よろしくお願いいたします。
〇渡部規格専門官
新藤分科会長、ありがとうございました。
続きまして、猪口委員でございます。猪口委員、一言御挨拶いただけますでしょうか。
〇猪口委員
食肉科学技術研究所の猪口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
〇渡部規格専門官
猪口委員、ありがとうございました。
続きまして、小木曽委員でございます。本日はオンラインでの御出席となってございます。
小木曽委員、一言御挨拶いただけますでしょうか。
〇小木曽委員
日本食品分析センターの小木曽と申します。これからよろしくお願いいたします。
〇渡部規格専門官
小木曽委員、ありがとうございました。続きまして、佐藤委員でございます。佐藤委員、一言御挨拶いただけますでしょうか。
〇佐藤委員
今回から新たに参加させていただくことになりました、国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部の佐藤と申します。
国立衛生研究所は川崎市殿町という羽田の向かい側にありますが、私はそこをリタイアした後、世田谷区にある食品添加物指定等相談センターというところで指定に向けた相談の相談員をやっております。よろしくお願いいたします。
〇渡部規格専門官
佐藤委員、ありがとうございました。続きまして、渋沢委員でございます。本日は、オンラインでの御出席となってございます。
渋沢委員、一言御挨拶を頂けますでしょうか。
〇渋沢委員
皆さん、こんにちは。森林研究・整備機構森林総合研究所の渋沢と申します。私は専門が林産物でございまして、前期に続きまして委員としてお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
〇渡部規格専門官
渋沢委員、ありがとうございました。
最後に恒次委員でございますが、本日は所用により御欠席となってございます。
本分科会は公開とさせていただいております。傍聴希望者を募りましたところ、12名の方から申込みがございました。本日、会場で2名、オンラインで10名の方が傍聴されています。
ここで、分科会の開催に当たりまして基準認証室長の谷から一言御挨拶を申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
〇谷基準認証室長
農林水産省基準認証室長の谷と申します。よろしくお願いいたします。
委員の皆様方におかれましては、本日、御多忙のところを御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
また、日頃から農林水産行政に御理解、御協力を賜り、この場をかりまして厚く御礼申し上げます。
本分科会でございますけれども、JASの対象に試験方法の規格が加わったことを機に、平成30年に設置されました。これまでに7つの試験方法JASについて御審議いただきました。いずれの規格も農林水産物や食品を国内外の市場でアピール、プロモーションする際の物差しというか、評価軸としてお使いいただくことをねらいとしております。また、K値を用いた魚類の鮮度の試験方法などにつきましては、JASをISO規格にするべく取り組んでいるところでございます。
JASは、食品産業をはじめとする事業者の皆様方に御活用いただいて初めてその真価を発揮するものであります。近年、機能性成分などの新たな付加価値に対するニーズが高まり、また、それらに対応した客観的な評価軸も求められる中、この試験方法JASは正にそうした期待に応えるものであり、事業者の皆様方に信頼していただける、しっかりと活用していただける試験方法JASをこれからも制定していきたいと考えているところでございます。
本日は、7月の委員改選後初めてのJASの審議でありまして、二つの規格の新規制定について御審議いただくこととしております。新藤分科会長をはじめ委員の皆様方にはそれぞれの御専門のお立場から忌憚のない御意見を頂くとともに、活発な御議論をお願いしたいと存じます。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。
〇渡部規格専門官
ありがとうございました。では、議事進行を新藤分科会長にお渡しいたします。よろしくお願いいたします。
〇新藤分科会長
まず初めに、分科会の議事録署名人の指名を行います。
日本農林規格調査会運営規程第11条に基づき、議事録署名人は分科会長が指名することになっております。今回は佐藤委員、渋沢委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
〇佐藤委員
(うなずく。)
〇渋沢委員
かしこまりました。
〇新藤分科会長
次に、事務局から資料の確認、審議時の留意事項及び議事内容の公表について説明をお願いいたします。
〇渡部規格専門官
資料を確認いたします。
本日の資料は、当会議室にお越しの委員の皆様はお手元のタブレットに保存したものを、オンラインで御出席の委員におかれましては、あらかじめ送信しておりますものをそれぞれ御覧いただければと思います。
続きまして、審議時の留意事項でございます。
今回もウェブ併催としており、オンラインで出席されている委員の皆様におかれましては御発言をされる場合は「挙手」機能、お名前の横にマークがございます。これをクリックしていただいたり、チャット機能に発言がある旨を書き込んでいただく、あるいはカメラをオンにしていただいて、手を振るなど合図をしていただいてもかまいません。御発言がある旨をその都度お知らせいただければと思います。
新藤分科会長が発言者を指名されます。その際はマイク、カメラをオンにしていただいて、御発言をお願いいたします。また、御発言の際はお名前を言っていただいて、御発言の最後には「以上です」など、発言が終わった旨をお知らせいただけますと大変助かります。
また、御発言のとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。カメラはオンのままでも差し支えはございません。
万が一、会議中、音声が聞こえない等の不具合がございましたら「聞こえない」などチャットにお知らせいただく、あるいはあらかじめ電話番号をお知らせしてございますので、そちらに連絡していただければと思います。
次に、傍聴の方へのお願いでございます。
傍聴募集時にも留意事項に記載してございますが、音声が途切れるような通信トラブルの原因となるおそれがございますので、傍聴の際はマイクをミュートに、カメラをオフにしていただきますようよろしくお願いいたします。
最後に、議事内容の公表についてでございます。
本日の議事内容は、御発言を頂いた委員のお名前を明記の上、後日、農林水産省のホームページで公表いたしますので、御了承いただきたいと思います。
私からは、以上でございます。
〇新藤分科会長
それでは、議題(1)日本農林規格の制定についての審議を始めたいと思います。
農林水産大臣から、今回審議する規格に関わる諮問を頂いております。事務局から説明をお願いいたします。
〇渡部規格専門官
資料2を御覧ください。内容を読み上げさせていただきます。
日本農林規格調査会会長、中嶋康博殿。農林水産大臣、小里泰弘。
日本農林規格の制定について(諮問)。
下記1及び2に掲げる日本農林規格については、制定を行う必要があることから、日本農林規格等に関する法律(昭和25年法律第175号)第3条第4項の規定に基づき、貴調査会の議決を求める。
記。
【制定】
1、食品における相対モル感度を利用した定量法に関する一般要求事項の日本農林規格。
2、米中の4-アミノ酪酸(GABA)の定量─高速液体クロマトグラフ法の日本農林規格。
以上でございます。
〇新藤分科会長
ありがとうございました。
本日の審議のため、運営規程第10条第4項に基づき、別紙のとおり申出者等が御出席されています。よろしくお願いいたします。
それでは、議題(1)ア、食品における相対モル感度を利用した定量法に関する一般要求事項の日本農林規格の制定についての審議を始めたいと思います。
事務局から制定案について説明をお願いいたします。
〇栗原課長補佐
農林水産省食品製造課基準認証室の栗原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
資料3「日本農林規格の制定について」を御覧ください。
3ページから6ページの、食品における相対モル感度を利用した定量法に関する一般要求事項JASについて御説明いたします。
4ページ上のオレンジの囲み、「現状」を御覧ください。
近年、国内外の取引において製品の信頼性に対する要求が高まってきておりまして、食品の機能性関与成分等について、信頼性の高い定量分析が必要とされる場面が増加しております。
通常、これらの有効成分(分析対象物質)を正確に定量するためには純度又は濃度既知の標準物質が必要となりますが、全ての分析対象物質について供給が期待できない、又は非常に高価であるのが実情でございます。
このようなところ、医薬品・食品安全分野では、分析対象物質とは別の基準物質との相対モル感度という係数、Relative Molar Sensitivity(レラティブモーラーセンスィティヴィティ)、略してRMSと言いますが、こちらのRMSを利用した、分析対象物質の標準物質を必要としない正確かつ低コストな定量法が複数開発されているところでございます。
次に、緑の囲みの「規格の概要」を御覧ください。
このような現状を受けまして、今般、食品においてもRMSを活用すべく、RMSの決定方法、そのRMSを利用した定量法の開発及び利用に関する一般要求事項を規定するJASの制定について、特定非営利活動法人バイオ計測技術コンソーシアム─JMAC様から申出があったところでございます。
本規格では、規格利用者がRMSの決定及びRMSを利用した定量法の開発、利用を円滑に行えるよう、様々な利用状況を想定した方法を規定するとともに、本規格を利用して開発した定量法の事例を含めた参考情報を掲載しております。
次に、ピンクの囲みの「効果」を御覧ください。
本規格が制定された際の効果ですけれども、本規格を手引といたしまして、標準物質が存在しない機能性関与成分等についての定量方法の開発が活発化・迅速化しまして、食品に信頼性の高い定量値を付与することが可能となります。
更に、定量値を付与することによって、国際競争において機能性関与成分を多く含む日本産の食品の優位性が明確となり、国際市場における取引の増加が見込まれます。
また、高価な標準物質を必要としないため、品質管理のための分析や試験機関に委託する分析におけるコスト低減が図られ、生産者及び食品製造者の負担軽減が見込まれるなどの効果が期待されているところでございます。
引き続きまして、5ページを御覧ください。
緑色の部分、「規格の内容」について御説明いたします。
まず、箇条3及び4の「定義及び原理」においてRMSに関する用語を定義するとともに、RMSによる定量の原理を式を用いて解説しております。
次に、箇条5から7の「RMSの決定及びRMSを利用した定量法」において、RMSの決定及びRMSを利用した定量法の開発・利用において検討すべき事項として、基準物質の選定、クロマトグラフィー分析条件の最適化、適用する定量法の決定、装置の要件等を規定しております。
また、箇条8及び9の「計量トレーサビリティの確保」では、RMSの決定及びRMSを利用した定量における不確かさの評価及び定量値の計量トレーサビリティの確保に必要な要求事項を規定しております。
最後に「参考情報」といたしまして、附属書AからDに、RMSの決定及びRMSを利用した定量法の開発・利用を行う者にとって参考となる情報を掲載しております。
具体的には、RMSの決定及び決定したRMSを利用可能な定量法についてのフローチャート、RMSの決定、RMSを利用した定量法の開発及び不確かさ評価の具体例、本規格を利用して開発した定量法の一例として、カフェ酸を基準物質としたりんごジュース中のクロロゲン酸の定量法、最後に、上記定量法の妥当性の確認のために実施した室間共同試験の結果を参考として付けております。
次に、6ページを御覧ください。
こちらは相対モル感度─RMSについての御説明となります。
上のオレンジの囲みを御覧ください。
RMSは、基準とするある物質の単位物質量当たりのクロマトグラフの検出部の応答に対する、別の物質の単位物質当たりの検出部の応答の比でございます。RMS決定時と同等の条件で試料を分析することにより、基準物質のクロマトグラフの応答から試料に含まれる分析対象物質を定量することが可能となります。
このことをイメージしやすいように、RMSの決定方法とRMSを利用した定量法について、図を用いて説明させていただきたいと思います。
左下の青の囲みを御覧ください。
こちらがRMSの決定方法でございます。
ここでは、基準物質と分析対象物質を混合した混合標準液を利用する例を取り上げております。例えば基準物質と分析対象物質をそれぞれ1モルずつ含んだ混合標準液を高速液体クロマトグラフなどを用いて分析しますと、クロマトグラフ上でそれぞれのピークがそれぞれの大きさで検出されます。ここでは基準物質を青、分析対象物質を緑として表しております。これらのピークから、基準物質のピーク面積に対する分析対象物質のピーク面積の比がRMSとして算出されます。
物質量の異なる複数の混合標準液を測定し、物質量と応答・ピーク面積の関係をグラフ化した場合、左下のグラフのように、RMSは2本の直線の傾きの比として表すこともできます。
続きまして、右下の緑の囲みを御覧ください。
こちらは先ほど決定いたしましたRMSを利用した分析対象物質の定量の概要でございます。
試料溶液に基準物質を添加するRMS内標準法、こちらを例に御説明いたします。
分析対象物質を含む試料、この図ではりんごジュースのイラストを示しておりますが、こちらの試料から分析対象物質を抽出、精製するなどして調製した定量用試料溶液に基準物質を添加いたしまして、RMS決定時と同等の分析条件で分析いたします。
こちらの青い吹き出し部分を御覧ください。
同等の条件で分析することで、RMS決定時と同等の保持時間や面積比で青の基準物質のピークと緑の分析対象物質のピークが現れますので、ピーク面積比とRMSの値、それから定量用試料溶液に添加した基準物質のモル濃度から、定量用試料溶液中の分析対象物質の物質量・モル濃度を算出することができます。
基準物質は利便性を考慮いたしまして、安定性の高い物質や入手が容易な物質などを選定することができます。更に、基準物質として認証標準物質を選択すれば、計量トレーサビリティの確保された分析対象物質の定量値を間接的に求めることも可能でございます。
次に、資料4-1、規格の制定案を御覧ください。
1ページの一番上の左を御覧ください。
こちらに下線がありますけれども、下線はパブリックコメントを受けて修正した箇所、また、その下の波の下線はパブリックコメント募集後に修正した箇所でございます。パブリックコメントを受けて修正した箇所については、後ほど御説明させていただきます。パブリックコメント募集後に修正した波線の箇所は、軽微な字句の修正となっております。
それから、今回の資料4-1には記載していない追加の字句修正が一つございます。
資料4-1の3ページを御覧ください。
真ん中辺にあります(5)の式の分母の「a」の字体が他の箇所と異なっておりましたので、他の箇所と揃えることといたします。
次に、資料5「パブリックコメント募集結果(案)」について御説明いたします。
資料5の1ページを御覧ください。
説明が前後いたしますが、2の事前意図公告については、コメントの受付はありませんでした。
1、制定案に係る意見・情報の募集の概要につきましては、本年7月1日から7月30日までの30日間、意見募集を行いまして、2者から2件の御意見を頂いたところでございます。
次のページにお寄せいただいた御意見の概要と、それに対する当省の考え方を記載してございますので、こちらを用いて御説明させていただきます。
まず、一つ目の御意見の概要ですけれども、表の左を御覧ください。
規格案の「4.2、RMS決定の原理」の式(6)の展開に関しまして、読者の分かりやすさのため、左から3番目の辺と4番目の辺を交換することを御提案いただきました。
その御意見に対する当省の考え方ですけれども、表の右を御覧ください。
御指摘の式(6)につきましては、3番目の辺と4番目の辺の繁分数式、分数が重なっているような式ですけれども、繁分数式は通分すると同じ式であり、入換えが可能でございます。また、式(4)及び(5)を用いて2番目の辺から先に導かれるのは4番目の辺となります。更に、式(2)及び(3)を用いますと3番目の辺から5番目の辺が導かれます。─ということで導かれる順番が前後しておりましたので、導かれる順にするために、御提案のとおり3番目の辺と4番目の辺の順序を入れ換えることといたします。
二つ目の御意見でございますが、表の下の※に記載いたしましたとおり今回の改正案に直接関係がありませんでしたので、御意見として承り、今後の参考とさせていただきます。
私からの説明は、以上でございます。
申出者から何か補足説明がございましたらお願いしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
〇川島食品産業標準化室長(バイオ計測技術コンソーシアム)
JMACの川島と申します。
栗原さん、御説明ありがとうございました。
現時点で私から補足させていただくことは、特にございません。
〇新藤分科会長
御説明ありがとうございました。
それでは、食品における相対モル感度を利用した定量法に関する一般要求事項の日本農林規格の制定案につきまして、御質問や御意見などはございますでしょうか。
〇猪口委員
私も不案内なので教えていただきたいんですけれども、RMSを使うことで全ての標準物質を揃える必要がないというのは大変簡便で、大分コストダウンになるのかなという印象を持ちました。
ちょっと分からなかったのは、個別のRMSの検討で使うNMR装置は、食品分析では一般的な機械なのでしょうか。そこを教えていただければと思います。
もう一つは、参考情報が後ろに載っていて、りんごジュースのクロロゲン酸がありますけれども、ほかに何か想定されているものなどがおありなのか、あるいは、この参考情報は何か更新されるタイミングが出てくるのかどうかを教えていただければと思います。
〇杉本食品添加物部長(医薬品食品衛生研究所)
国立衛研の杉本です。私から説明させていただきます。
一つ目の質問ですが、NMRは食品分析の中で一般的かという御質問ですが、どうでしょうね。一般的な部分もあるし、でもないところもあるというのが正しい答えだと思っています。例えば、ミルク中のカゼインとかそういうものを定性的に分析するという意味ではNMRは一般的ですが、構造決定するとか定量するとかいう部分では、食品分析としては余り一般的ではないのかもしれません。
この規格の中でNMRを用いているわけですが、それは単にモル量を求めるためであって、NMRを使わなくてもRMSの方法をつくることはできるようにしていますので、仮にNMRを持っていない部署であってもRMSの試験法が成立するような規格、一般要求としてあります。
これが一つ目の答えかと思います。
二つ目、りんごジュース中のクロロゲン酸ですね。これは、このRMSを用いて、ここではカフェ酸を基準としてクロロゲン酸を測っているわけですが、このRMSの方法が実際に機能するかを確かめるために、カフェ酸を使ってクロロゲン酸を測ってみているというモデル的なケースになります。
実際には、クロロゲン酸自身も抗酸化活性物質ですので機能性成分ではあるんですが、クロロゲン酸自体、実は標準物質というか、純度がそこそこきれいなものも売られています。それを用いれば測ることはできるわけですが、今回はそれを用いて定量した値とRMSを用いて定量した値が一致することを確認することによって、この方法が標準品を用いなくても実際に使えることを証明するためにやった例として示しています。
〇猪口委員
ありがとうございます。
〇新藤分科会長
ほかには、いかがでしょうか。
私もちょっと質問があるんですが、実は私、NMRが専門なんですが、確かに結構高額な装置ではあるので、こういう食品の分析みたいな研究所なり何なりのどれぐらいが装置を持っているかと言われると、ちょっと分からないなと。ただ、NMRを持っていて、外注でこういう分析を受けるところも結構あることは認識しているので、そういうことを前提にも考えられているのかなとも思ったんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
〇杉本食品添加物部長(医薬品食品衛生研究所)
そうですね、NMRを持っている登録検査機関等は、今は幾つもあります。例えば食品分析センターでも何台か持っているかと思います。実際にモル量を決める、純度を決めるということも登録検査機関で行われています。ですので、外注で求めていただいて、その先のRMSを決めることは十分できる状態になっているかと考えています。
〇新藤分科会長
分かりました。
ほかには、いかがでしょうか。ウェブ参加の方は、いかがでしょうか。よろしいですか。
では、御意見が出尽くしたようですので、食品における相対モル感度を利用した定量法に関する一般要求事項の日本農林規格の制定について、先ほどの資料4-1の3ページ「a」の字体を変える修正をして、制定するということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
〇新藤分科会長
御異議ないようですので、諮問事項の食品における相対モル感度を利用した定量法に関する一般要求事項の日本農林規格の制定については、案を一部修正のうえ制定すべきと報告させていただきます。
また、今後の取扱いにつきましては分科会長一任とさせていただくこととし、告示の手続を行うに当たりまして内容変更を伴わない字句の修正等が必要な場合にあっては、事務局と調整することにさせていただきたいと考えますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
〇新藤分科会長
ありがとうございます。
それでは、そのようにさせていただきます。
次に、議題(1)イ、米中の4-アミノ酪酸(GABA)の定量─高速液体クロマトグラフ法の日本農林規格の制定についての審議を始めたいと思います。
事務局から制定案について説明をお願いいたします。
〇栗原課長補佐
資料3「日本農林規格の制定について」の7ページから8ページ、米中の4-アミノ酪酸(GABA)の試験方法JASについて御説明させていただきます。
資料の8ページを御覧ください。
オレンジの囲みの「現状」でございます。
米については、生産量は減少傾向であるものの穀類で最も多く、国内消費者の主食に関する調査では、米食を主食とする割合が最多となっております。また、米は輸出重点品目に選定されておりまして、アジア、米国を主要な輸出先として、輸出数量、金額ともに毎年増加している状況でございます。
米には4-アミノ酪酸、一般的には「γ-アミノ酪酸」略して「GABA」と申しますが、このGABAが含まれておりまして、米中のGABAは血圧上昇抑制作用等をうたった機能性表示食品の届出も多数なされるなど、米の取扱業者の関心は高く、米中のGABAを増やす技術の開発も進められております。その一方、米中のGABAについて統一的な試験方法は存在しておらず、信頼性の高い公定法が望まれているところでございます。
また、稲作農業の体質強化のため、米の輸出拡大や付加価値向上に向けた取組が官民連携で進められているところでございます。
引き続きまして、緑の囲みの「規格の概要」を御覧ください。
このような状況におきまして、今般、米中に含まれるGABAの定量に適した試験方法を規定したJASの制定について、農林水産消費安全技術センター─FAMICから申出があったところでございます。試験室間共同試験等による妥当性確認を経て、当該試験方法規格は(ア)適用範囲、(イ)試薬、装置及び器具、(ウ)試料調製法、(エ)測定手順等を含む内容となっております。
次に、ピンクの囲みの「効果」を御覧ください。
本規格が制定された際の効果でございますが、妥当性が確認された信頼性の高いJASの活用により、より客観的なGABA含有米の開発及び品質管理が可能になることから、市場に流通する製品の品質の向上に貢献すること、また、機能性表示食品の届出を行う事業者の負担軽減にも寄与することが期待されます。更に、市場においてGABAの機能性を訴求して販売される商品が多く流通することで、米の機能性に関する認知度が向上し、国内外において米のさらなる需要を喚起することや米の高付加価値化につながるとともに、輸出拡大も期待されているところでございます。
次に、試験方法の概要について御説明させていただきます。
9ページを御覧ください。
左の「試料調製~測定手順」を御覧ください。
まず米を粉砕した後、抽出用容器に移し、分析試料とします。この分析試料にスルホサリチル酸溶液を添加し、振とう・pH調整・遠心分離し、GABAを抽出いたします。測定に用いる高速液体クロマトグラフ─HPLCについては、あらかじめ測定条件を検証、設定しておいて、その条件で抽出した溶液中のGABAの濃度を測定いたします。最後に、測定結果から試料中のGABAの濃度を計算いたします。
今、御説明しました試験方法を決定するに当たり、特に検討した内容を御説明させていただきたいと思います。
右の三つの緑の囲みの一番上を御覧ください。
分析対象を米に限定することで、マトリックスの違いによる変動が抑えられることから、(ア)pH調整工程を簡易化いたしまして作業時間の短縮を実現しております。(イ)定容に用いる溶媒は調製が煩雑な緩衝液ではなく、希塩酸を使用することが可能となり、試薬調製の簡易化を実現しております。
緑の囲みの真ん中を御覧ください。
固形物の分離方法について、ろ紙によるろ過では詰まりが生じることがあるのですが、遠心分離を用いることにより、これを回避しております。
更に、一番下の緑の囲みを御覧ください。
HPLCの測定条件を限定せず、定量限界、ピークの分離等の性能を規定し、使用者が用いる測定条件での性能を事前に検証することとしております。このことにより、機種ごとに適した測定条件を設定可能となっております。
次に資料4-2、規格の制定案を御覧ください。
1ページの一番上を御覧ください。
RMSと同じですけれども、波線の部分はパブリックコメント募集後に修正した箇所で、軽微な字句の修正となっております。
資料4-2の後ろから2枚目、7ページを御覧ください。
附属書Aは、本試験法について、試験室間共同実験を行った結果となります。
表A.1を御覧ください。
市販の米、精米2種類、玄米1種類、発芽玄米3種類の計6種類、試料1から6について、粉砕機を用いてそれぞれ粉砕し、均一性を確認したものを試験用試料といたしました。
参加試験室は10で、各試験室は濃度が明示されていない試料、用意いたしました先ほどの試料1から6を各2点、合計12試験用試料について手順書に従って試験しました。10試験室の結果を集計いたしまして、IUPAC共同試験ガイドラインに従って外れ値検定を行った後に採択された試験結果を平均し、GABA含有量の平均値として示しております。
また、採択された試験結果から、分析法のばらつきの指標である併行相対標準偏差─RSDr、室間再現相対標準偏差─RSDRなどを算出しております。
また、この表には記載しておりませんが、室間再現性の評価指標であるHorRat(R)という値があるのですけれども、こちらは試料1から6の結果、0.34から0.68となりまして、妥当性の判断基準となる2よりも十分小さい値となっております。
次に、資料5「パブリックコメント募集結果(案)」について御説明いたします。
3ページを御覧ください。
1の制定案に係る意見・情報の募集の概要及び2の事前意図公告について、いずれもコメントの受付はありませんでした。
私からの説明は、以上でございます。
申出者から何か補足事項がありましたらお願いいたします。
〇木谷試験規格調査課長(農林水産消費安全技術センター)
申出者のFAMIC、木谷でございます。
特段の補足事項はございません。委員の皆様、御審議のほどよろしくお願いいたします。
〇新藤分科会長
御説明ありがとうございました。
それでは、米中の4-アミノ酪酸(GABA)の定量-高速液体クロマトグラフ法の日本農林規格の制定案につきまして、御質問や御意見などはございますでしょうか。
なお、小木曽委員は本規格の原案検討の委員であったため、審議時の御発言については差し支えございませんが、議決については御遠慮いただきたいと思います。
〇佐藤委員
本題とは関わりないんですが、1ページの引用規格で、ほかは全部JIS Kが記載されているんですがガラス製体積計だけISOの規格が使われている、どういった意味でこれが設定されているんでしょうか。
〇佐々木専門調査官(農林水産消費安全技術センター)
FAMIC試験規格調査課の佐々木と申します。
質問にお答えしたいと思います。
こちらにつきましては注記の方で対応するJISを記載しているところですけれども、一方で、対応する国際規格がISO1042ということで、こちらを優先して書くようなルールがたしかあったところですので、このように記載しているところです。
〇佐藤委員
JAS規格は全てISOを先に書く決まりなんですか。
〇佐々木専門調査官(農林水産消費安全技術センター)
いわゆる試験法規格という中においては、ISOの規格がある場合はISO規格を書くようにしているところでございます。
〇佐藤委員
分かりました。
〇新藤分科会長
ほかには、いかがでしょうか。
〇猪口委員
中身とは直接関わりがないんですけれども、米中のGABAの定量については、今現在、国際規格は存在しないという理解でよろしいですか。
〇佐々木専門調査官(農林水産消費安全技術センター)
おっしゃるとおり、国際規格を調べたところ、現状では該当する規格はないことを確認しております。
〇猪口委員
ありがとうございます。
これはISOを目指そう、そういうことをお考えなんでしょうか。
〇木谷試験規格調査課長(農林水産消費安全技術センター)
現在、食品の機能性についてISOを目指すような形で考えられておりますので、その中で、GABAについてニーズがあれば、提案していくこともあろうという考えでございます。
〇猪口委員
ありがとうございました。
〇新藤分科会長
すみません、私も。
ちょっと細かい話ですが、今、文章を見ていて、アシッド、緩衝液ではなく塩酸で一定の条件を付けるということで、検出物質にするときにニンヒドリンでやる場合は、ニンヒドリン陽性物質を除いた塩酸を利用すると書いてあるんですけれども、これは通常に販売されている特級のレベルの塩酸では難しいということですか。
〇佐々木専門調査官(農林水産消費安全技術センター)
一般的にニンヒドリンを用いる場合は、塩酸の中にニンヒドリンと反応する妨害物質、不純物が含まれている場合があるそうでございまして、そのため、このようにニンヒドリン陽性物質を取り除いた塩酸が市販品として売られている状況でございます。
〇新藤分科会長
もう標準の、購入できるものとしてあるんですね。
〇佐々木専門調査官(農林水産消費安全技術センター)
ございます。
〇新藤分科会長
そうですよね、そうでないとちょっと辛いなと思ったので。分かりました。余りそういうものを購入したことがないので。そういうものが普通に手に入る、プレパレーションする必要はないんだと。よく分かりました。
〇佐々木専門調査官(農林水産消費安全技術センター)
私自身はこちらのニンヒドリンの機械を使ったことはございませんが、目的とする対象物質の感度等に対して、いわゆる特級のものであっても使って問題がないようでしたら、使える可能性はあるのかもしれませんが、一般的にこのようなものが売られているということで。
〇新藤分科会長
売られてはいるんですね。分かりました。その入手が難しいと大変なことになってしまうので、一応そこにだけ。
あとは、アミノ基の誘導体化としてはごく一般的な方法ですよね。フタル酸アルデヒドとニンヒドリンというのは。
〇佐々木専門調査官(農林水産消費安全技術センター)
そのように聞いております。
〇新藤分科会長
ですので、極めて適切であろうとは思います。
ほかによろしいでしょうか。
では、御意見が出尽くしたようですので、米中の4-アミノ酪酸(GABA)の定量-高速液体クロマトグラフ法の日本農林規格の制定について、案のとおり制定するということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
〇新藤分科会長
異議ないようですので、諮問事項の米中の4-アミノ酪酸(GABA)の定量-高速液体クロマトグラフ法の日本農林規格の制定については、案のとおり制定すべきと報告させていただきます。
また、今後の取扱いにつきましては分科会長一任とさせていただくこととし、告示の手続を行うに当たりまして内容変更を伴わない字句の修正等が必要な場合にあっては、事務局と調整することとさせていただきたいと考えますが、これでよろしいでしょうか。
(異議なし)
〇新藤分科会長
ありがとうございます。
それでは、そのようにさせていただきます。
議題(2)その他ですが、事務局から何かありますでしょうか。
〇渡部規格専門官
事務局からは、特にございません。
〇新藤分科会長
それでは、本日の審議は終了とさせていただきます。
委員の皆様には会議の円滑な進行に御協力いただき、ありがとうございました。
では、進行を事務局にお返しします。
〇渡部規格専門官
本日御審議いただきました日本農林規格につきましては、速やかに制定の公示ができるよう、所要の手続を取ってまいりたいと思ってございます。
また、次回のJAS調査会の開催につきましては、現在、日程調整中でございます。決まり次第、御連絡を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上をもちまして令和6年度第2回日本農林規格調査会試験方法分科会を閉会いたします。
本日は誠にありがとうございました。
午後2時52分閉会
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ダイヤルイン:03-6744-2098