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オガサワラオオコウモリに関する保護増殖事業計画

平成二十二年十一月十一日 文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省告示第一号

文部科学大臣髙木 義明
農林水産大臣鹿野 道彦
国土交通大臣 馬淵 澄夫
環境大臣松本 龍

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第四十五条第一項の規定に基づき、オガサワラオオコウモリに関する保護増殖事業計画を定めたので、同条第三項の規定に基づき、その概要を次のとおり公示する。本保護増殖事業計画は、文部科学省、農林水産省、国土交通省、環境省及び東京都庁に備え付けて供覧する。

オガサワラオオコウモリに関する保護増殖事業計画(PDF:131KB)

第一 事業の目標

本事業は、本種の生息状況等の把握及びモニタリングを継続しつつ、本種の生息を圧迫する要因の軽減及び除去並びに生息に必要な環境の維持及び改善を図るとともに、農業等人間活動との両立、本種の保全の必要性等の普及啓発、適正な観光利用の推進等により、本種と人の共生する社会づくりを進め、本種が自然状態で安定的に存続できる状態になることを目標とする。

第二 事業の区域

東京都小笠原諸島

第三 事業の内容

一 生息状況等の把握

本事業を適切かつ効果的に実施するため、必要に応じて、次の調査等を実施し、当該調査等の結果、生息状況等に憂慮すべき変化を把握した場合には、原因解明のための調査を実施する等、本種の保全に資する対策を講ずる。

(一)生物学的特性の把握

本種の保全策を適切に講ずるため、本種の自然条件下における生活史、食性、個体の移動分散、行動圏、繁殖生態、個体群動態等に関する調査を実施し、生態等生物学的特性の把握に努める。また、傷病個体、調査のために捕獲される個体等について、可能な場合には、病理及び寄生虫検査を実施し、伝染性疾病の侵入及び流行を監視するとともに、遺伝情報を解析することにより、小笠原群島及び火山列島(北硫黄島、硫黄島及び南硫黄島)の個体群間の遺伝的交流の有無、各個体群内の遺伝的多様性等を明らかにする等、本種の保全のための基礎情報を得るものとする。

(二)生息状況の調査及びモニタリング

本種の父島及び母島における生息個体数、生息域等の生息状況について調査し、重要な生息地を把握するとともに、その動向について定期的なモニタリングを行う。なお、小笠原群島内の父島及び母島以外の島しょにおいては、これまで本種の生息は確認されていないが、食痕等による利用状況等の調査の実施及び目撃等の情報収集に努める。火山列島においては、生息状況の調査等により、個体群の状況を把握するよう努める。

(三)生息環境の調査及びモニタリング

生息地及びその周辺における植生、地形、気象等の生息環境の調査を行い、本種の生息に必要な条件の解明を行うとともに、その変化について定期的なモニタリングを行う。

(四)個体群の維持に影響を及ぼす要因の把握

個体群を維持する観点にも留意し、(一)から(三)までの調査等の結果を分析し、個体群の維持に影響を及ぼす要因について把握する。

二 生息地における生息環境の維持及び改善

本種が自然状態で安定的に存続するためには、集団ねぐら、採餌地等、本種の生息に不可欠な場を良好な状態に保つことが重要であるため、一の調査等により得られた知見を十分に踏まえた上で対応策を検討し、本種の生息に適した環境の維持及び改善のために、必要に応じて、次の取組を行う。なお、本種の生息地における土地利用、開発等の実施に際しては、本種の生息に必要な環境条件を確保するための配慮がなされるよう努める。

(一)在来の森林植生の再生等による餌資源の確保

本種の本来の餌資源となるタコノキ、コブガシ等の在来植物が、アカギ等の外来植物の侵入により減少していること、また、現在では餌資源を農作物に大きく依存し、本種による農作物被害が発生している状況にあることから、外来植物駆除等を通じた在来植生の再生により、本種の本来の餌資源の確保に努める。また、必要に応じて在来植物の植栽を検討する。さらに、農作物被害防除の推進や外来植物駆除等による環境変化によって餌不足を生じさせないよう、必要に応じて餌場の設置等を検討する。

(二)集団ねぐらの保全

本種は、冬季に集団ねぐらを形成することから、集団ねぐら及びその周辺の環境保全に努める。

(三)外来動物による影響の軽減

捕食、餌資源の競合等、イエネコ由来の野生化したネコ(以下「ノネコ」という。)、ネズミ類その他の外来動物が本種の生息に及ぼす影響を把握し、防除方法の検討及び防除の実施を行う。特にノネコについては、集団ねぐら及びその周辺への侵入状況を把握する。

(四)重要な生息地の巡視等

本種の餌資源となる樹種が豊富に存在する森林、集団ねぐら及びその周辺等重要な生息地について、本種の生息環境の保全を図るため、巡視及び看板の整備を行う。

三 農業等人間活動との両立

現在、本種による農作物被害(家庭菜園等で栽培される作物の被害を含む。)が発生していること、その一方で農作物被害防除のための防鳥ネット等の網に本種が絡まる事故が発生していること、さらには人の立入りによる生息地の攪乱が懸念される等、本種の生息は人間活動と密接に関係している。このため、農作物被害状況の把握に努め、安全かつ効率的な被害防除方法の研究開発を行い、その普及を図るとともに、事故の早期発見体制を構築する。また、網を設置する場合には、事故が生じない構造とする等配慮がなされるよう努める。さらに、観察、写真撮影等を目的とした重要な生息地への立入り等、観光利用の実態把握に努め、持続的な地域の活性化につなげるための利用の在り方について検討を行い、適正な観光利用の推進に努める。

四 傷病個体の救護等

防鳥ネット等の網に絡まる事故等による本種の傷病個体の発生時における救護、収容体制等を関係者間で構築する。また、本種の保全に資するよう、野生復帰が可能と判断された保護個体については野外へ帰すものとし、野生復帰が困難と判断された保護個体については生物学的特性の把握、飼育技術の確立、普及啓発等に活用するとともに、死亡個体については可能な限り死亡要因の究明を行い、個体の保管体制及び活用方法について検討を行うものとする。

五 普及啓発の推進

本事業を実効あるものとするためには、本種と人間活動との軋轢が生じている状況にかんがみ、関係地方公共団体、各種事業活動を行う事業者、関係地域の住民、観光客を始めとする国民等の関係者の理解及び協力が不可欠であることから、関係者に対し、本種の保全の必要性、生息状況等の調査結果等本事業の実施状況等に関する普及啓発及び情報発信を進め、本種の保全に対する配慮及び協力を働きかけ、関係地域の自主的な保全活動の展開が図られるよう努める。また、本種の研究、調査等を推進し適切な保全を図るため、専門家の育成に努める。

六 効果的な事業の推進のための連携の確保

本事業の実施に当たっては、国、関係地方公共団体、本種の生態等に関する専門的知識を有する者、本種の保全活動に参画する保護活動団体、関係地域の住民等の関係者間の連携を図り、効果的に事業が実施されるよう努める。

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