野菜生産出荷安定法の施行について(昭和四十一年七月二十五日)
四一園第一二九三号
昭和四十一年七月二十五日
改正:昭和四三年七月二四日 四三蚕園第四五四号
地方農政局長あて
都道府県知事あて
農林事務次官
野菜生産出荷安定法(昭和四十一年法律第百三号)は第五十一回国会において成立し、七月一日に公布され、同日付けで施行された。これに伴い、野菜生産出荷安定法施行令(昭和四十一年政令第二百二十四号)および野菜生産出荷安定法施行規則(昭和四十一年農林省令第三十六号)が同日付けで公布施行された。
ついては、これらの法令に基づく需要の見通し、野菜指定産地の指定、生産出荷近代化計画の樹立、野菜生産出荷安定資金協会の設立および事業の実施等に関し、下記事項を御了知のうえ、この制度の効率的かつ適正な実施に遺憾のないようにされたい。
以上、命により通達する。
記
第一 野菜生産出荷安定法の制定の趣旨
最近における国民所得の増大に伴う国民の食生活の向上により、野菜に対する需要は増大を続けているが、野菜生産の現状は天候に支配されるところが大きいうえ、その生産および出荷の体制が必ずしも十分整備され ていない等のため、野菜農業の健全な発展のうえからも、国民消費生活の安定のうえからも困難な問題を生ずるに至つている。
特に、人口の集中の著しい大都市においては、野菜の消費量も多く、かつ、種類も多岐にわたり、これを出荷する地域も広範囲にわたる等のため、そこで形成される価格が全国の野菜の価格に大きな影響を及ぼしている状況にあるので、大消費地域に出荷される主要な野菜について、その安定的な供給を確保し、もつて野菜農業の健全な発展と国民消費生活の安定に資するための対策が強く要請されている。
このような要請にこたえるため野菜の生産および出荷にわたる施策として、大消費地域に出荷される主要な野菜の安定的な生産と計画的な出荷を行ないうる集団産地の育成を図るとともに、その価格の著しい低落に対 処するため措置を講ずることとした。
以上が、野菜生産出荷安定法の制定の趣旨である。
第二 指定消費地域
野菜生産出荷安定法(以下)「法」という。)第二条第一項の指定消費地域は、法による野菜の集団産地の育成のための措置の対象範囲としての消費地域であり、第一で述べたような趣旨により、人口の集中が著しい大都市およびその周辺の地域としているが、その具体的な指定については、人口の集中度、野菜の入荷量、市場の整備状況、その地域における野菜の価格形成の他地域への影響力等を勘案し、野菜生産出荷安定法施行令(以下「令」という。)第一条に規定するように、京浜地域、中京地域、京阪神地域および北九州地域の四大消費地域の主要都市の区域について行うこととした。
第三 指定野菜
指定野菜については、これは法による野菜の集団産地の育成のための措置の対象範囲としての野菜であり、国民消費生活に占める重要性を考慮し、法第二条第二項に規定するように原則として消費量が多くまたは多くなることが見込まれるものから指定することとしており、当面令第二条に規定するようにキャベツ、きゆうり、だいこん、たまねぎ、トマトおよびはくさいの六品目をその主な出荷時期により区分する等により指定することとした。
第四 需要の見通し
指定消費地域における指定野菜の需要の見通しは、野菜指定産地の指定、生産出荷近代化計画の樹立等に資するため、農林大臣が関係都道府県知事の意見をきき、かつ、その協力を得てたてることとなるが、野菜の流通に関する資料は必ずしも十分に整備されていない現状にあり、その作業はかなり難しいものとなることが予想されるので、特に指定消費地域を管轄する都道府県知事においては、これが自都道府県の住民の消費生活に密接な関連を有する措置であることにかんがみ、野菜の流通量、住民の消費需要の動向等のは握その他について特段の協力をお願いする。
第五 野菜指定産地の指定
一 指定の条件
野菜指定産地の指定は、指定消費地域に対して指定野菜を出荷する生産地域であつて、指定消費地域における指定野菜の需要と動向と、その産地の立地条件、将来性等からみて、指定消費地域に対する指定野菜の出荷の安定を図るため、その集団産地として形成することが必要と認められるものについて、作付面積、指定消費地域に対する出荷数量および出荷に関する条件の基準に照らして行うこととなつている。
この作付面積の基準については野菜指定産地生産出荷指導事業実施要領(昭和四十年五月一日付け四○園第八一六号)により行われてきた野菜指定産地の指定についてのものわおおむね踏襲することとした。
二 指定方針
野菜指定産地の指定については、法第四条第三項に規定するように、指定野菜の種別ごとおよび指定消費地域ごとに、野菜指定産地からの指定野菜の総出荷数量の見込数量が、その需要の動向に即するようにしなければならないこととなっており、この規定にしたがい、各指定消費地域について野菜指定産地からの出荷数量の占める割合をできるだけ高めるよう、野菜指定産地の指定を行う方針である。
三 指定の手続
野菜指定産地の指定を行う場合には、法第四条第四項に規定するように産地の区域を管轄する都道府県知事の意見をきくこととなつており、また法第五条に規定するように、都道府県知事からの指定の申出の規定があることにかんがみ、野菜指定産地の指定については、産地管轄都道府県知事の意向を尊重して行うこととしており、また、具体的な指定手続においても、従来から行なつているように、その指定前に産地管轄都道府県知事から候補地の推せんを受ける方針であるので、御協力をお願いする。なお、野菜指定産地の指定に関する意見の陳述等に当たつては、関係市町村、関係農業団体等の意向も十分徴するよう配慮されたい。
四 従来の野菜指定産地との関連
野菜指定産地生産出荷指導事業実施要領は、法に基づく野菜指定産地の指定が行われた日をもつて廃止する。
第六 生産出荷近代化計画
一 生産出荷近代化計画の樹立
(1) 生産出荷近代化計画の樹立は、法に定める野菜の集団産地の育成のための措置の中核をなすものであり、野菜の生産出荷体制の現状を改善するための最も重要な措置であることに留意し、特段の御協力をお願いする。
(2) 生産出荷近代化計画の樹立期限は、令第四条に規定するように、当該野菜指定産地の指定があつた日から三年以内となつているが、野菜の生産出荷体制の整備の緊要性にかんがみ、その樹立は、可及的すみやかに行なえるよう準備を進められたい。
二 生産近代化計画の内容
(1) 生産出荷近代化計画の内容については、様式その他を別に蚕糸園芸局長か通達させるが、これに基づく事業はおおむね三年で実施されるよう計画されたい。
(2) 生産出荷近代化計画の内容については、関係市町村および関係農業団体等をもつて協議会を設置する等により、これらの協議によつて事業実施主体の具体的な事業計画の積上げを基礎として定めるようにされたい。
(3) 生産出荷近代化計画を樹立したときは、その概要を都道府県公報等により公表するとともに、関係市町村および関係農業団体等に通知する等その周知徹底に努める必要がある。
第七 野菜生産出荷安定資金協会
一 組織
(1) 野菜生産出荷安定資金協会(以下「協会」という。)の組織については、その行なう対象野菜の価格が低落した場合の生産者補給金の交付の業務が野菜指定産地制度による野菜の集団産地の育成措置の一環として行なわれることが適当であること等の理由により、野菜指定産地の出荷団体の自主的な機関としての性格を与えることが妥当であることから、このような組織としたものである。
しかし、協会の業務は、野菜指定産地という公的制度と密接な関連を有し、かつ、一定の資金を管理して補給金の交付を行なうものであり、その厳正な運営を期するため必要な監督規定を整備した。
(2) 協会の会員資格については、農業協同組合、農業協同組合連合会、事業協同組合等対象野菜の出荷団体に与えることとしたが、その業務の円滑な運営を図るため会員があまり小規模の団体となることを避け、 その地区等が野菜指定産地段階以上のものとした。
(3) 事業協同組合および協同組合連合会については、これらの団体の性格にかんがみ、野菜生産出荷安定法施行規則第七条第一項第一号に規定するとおり、対象野菜の出荷についての生産者の委託を受けた実績により会員資格を与えることとした。
また、農業協同組合または同連合会が主たる構成員となつている法人その他の団体についても、生産者補給交付金および生産者補給金の交付の適正を期する観点から同項第二号のように規定した。
(4) 協会の設立は、法施行後すみやかに行なわれることが望ましいので、その準備につき御協力をお願いする。
二 業務
(1) 対象野菜および対象とする消費地域については、当面令第五条に規定するとおりであるが、その他の指定野菜および指定消費地域については、その市場価格の低落の態様と産地の受入体制をみながら遂次検討したい。
(2) 業務内容については、具体的には業務方法書で規定されることとなるが、当面従来の価格補てん制度の仕組みをおおむね踏襲する予定でり、対象野菜の調整保管、廃棄等についての生産者補給金の交付については今後検討を続けていきたい。
(3) 生産者補給金の交付は、個々の生産者に直接行なうことは技術的に困難であるところから、従来の価格補てん制度と同様に対象野菜の出荷に関し生産者と一定の委託関係がある出荷団体を通じて行ない、また、法第十六条の負担金の徴収もこれらの出荷団体から行なうこととしたが、この出荷団体と生産者との間の負担金の分担および生産者補給金の交付については、衡平が期せられるよう十分な指導を行なう必要がある。
(4) 協会の業務は、野菜指定産地制度との密接な関連のもとに運営されることが必要であり、各野菜指定産地の会員資格者は、原則としてこれに参加するとともに、補てん予約数量を多くするよう指導されたい。
(5) 業務に要する資金の造成については、各都道府県においても格別の御協力をお願いする。
三 財団法人からの権利義務の引継ぎ
財団法人青果物生産安定資金協会および財団法人野菜指定産地生産安定資金協会の行なってきた事業については、協会の設立に際し協会へ引き継ぐことができるよう規定を設けた。
第八 出荷に関する勧告
野菜指定産地からの指定野菜の出荷体制の整備については、これを早急に行なう必要があり、このためには野菜指定産地、都道府県および全国の各段階にわたつて農業協同組合等の活動に期待するところが大きいので、国および都道府県は、これについての指導援助を行なうこととし、また必要に応じて法第五十九条の規定により出荷者に対し合理的かつ計画的な出荷に関し必要な勧告を行なうことができることとした。
以上のほか、法に基づく措置の実施に関し必要な事項については蚕糸園芸局長から通達させる。
お問合せ先
生産局 農業環境対策課




