野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律の施行について
五一食流第三六五三号
昭和五十一年六月三十日
地方農政局長あて
都道府県知事あて
沖縄総合事務局長あて
農林事務次官
野菜生産出荷安定法の一部を改訂する法律が、第七十七回国会において成立し、昭和五十一年六月十五日法律第六十七号をもつて公布され、関係法の改正規定を除き、同日付けで施行された。これに伴い、野菜生産出荷安定法施行令の一部を改正する政令(昭和五十一年政令第百五十二号)及び野菜生産出荷安定法施行規則の一部を改正する省令(昭和五十一年農林省令第二十八号)が同日付けで、公布施行された。
ついては、野菜生産出荷安定法の施行に当たつては、下記事項に留意のうえ、遺憾のないようにされたい。
以上、命により通達する。
記
一 法改正の趣旨
野菜生産出荷安定法(昭和四十一年法律第百三号。以下「法」という。)は、指定野菜について野菜指定産地生産出荷近代化計画の制度、その価格の著しい低落に対処する野菜生産出荷安定資金協会の制度等を定め、 その生産及び出荷の安定を図り、もつて野菜農業の健全な発展と国民消費生活の安定に資することを目的として、昭和四十一年に制定された。本法に基づく野菜生産出荷安定制度については、年々その対象野菜、対象地域の拡大、生産者補給金の交付内容の充実等が図られてきたところである。 しかしながら、野菜の消費の多様化及び平準化、流通の広域化の進展等最近における野菜に関する諸事情の変化に対応して、野菜の供給安定対策の強化を図ることが急務となっていることにかんがみ、制度の対象となる指定消費地域の拡大を図るとともに、野菜供給安定対策の実施体制の整備等を行うこととして、今回、法改正が行われたものである。
二 指定消費地域の拡大等
(1)指定消費地域の拡大
指定野菜の計画的安定的な供給を図るべき地域である指定消費地域の要件が「人口の集中が著しい大都市及びその周辺の地域」から「野菜の消費上重要であり、かつ、相当の人口を有する都市及びその周辺の地域」に改められた(法第二条第一項)。 これは、一に述べた最近の野菜の需給をめぐる諸事情の変化に伴い、大都市及びその周辺の地域のみならず相当規模の地方都市及びその周辺の地域に対しても野菜の安定的な供給を確保する必要性が増大していることにかんがみ、これらの地域をも指定消費地域に指定しうる途を開くため、野菜の消費上重要であり、かつ、相当の人口を有する都市及びその周辺の地域の中から指定消費地域を指定することとされたものである。 これに伴い、野菜生産出荷安定法施行令(昭和四十一年政令第百二十四号。以下「令」という。)が改正され、既に指定されている札幌地域、仙台・盛岡地域、京浜地域、新潟地域、金沢・富山・福井地域、中京地域、京阪神地域、岡山地域、広島地域、高松・徳島地域、北九州地域、長崎地域及び鹿児島地域の一三地域に加えて、新たに、秋田地域、山形地域、福島地域、宇都宮地域、静岡地域、松山地域及び高知地域の七地域が追加指定された(令第一条)。
(2)指定野菜の出荷時期区分の改定等
指定野菜は、消費量が相対的に多く、又は多くなることが見込まれる野菜の中から、その種類、通常の出荷時期等により区分して指定されることとされているが、きゅうり、トマト及びなすについては、最近における施設栽培技術の進展等により、出荷時期の延長、冬春期を通ずる産地の重複化等作型としての一体性が強まつていることにかんがみ、春期、冬期の区分を廃止し、新たに、冬春期の区分を設定するとともに、それに対応した指定野菜の需要見通しの時期区分の変更を行うこととされた(令第二条及び第三条)。 指定消費地域の新規指定、指定野菜の時期区分の変更等に伴う指定野菜の指定消費地域における需要の見通しの作成に当たつては、資料の整備、消費需要の動向のは握等につき、特段の協力を願いたい。
(3)野菜指定産地の面積要件の緩和
野菜指定産地は、指定消費地域に対して指定野菜を計画的安定的に出荷する集団産地であり、また、生産者補給金の交付の対象となる産地でもあるが、指定消費地域の拡大等に伴う需要の増加に対応して、野菜指定産地の増加を図り、野菜指定産地からの増加を図ることが緊要となつていることにかんがみ、野菜生産出荷安定法施行規則(昭和四十一年農林省令第三十六号。以下「規則」という。)で定める野菜指定産地の指定要件のうち、面積要件が緩和された(規則第一号)。 ついては、野菜指定産地から指定消費地域への出荷数量をできるだけ高めるよう野菜指定産地の指定促進に努める方針であるので、集団産地の育成等につき特段の努力をされたい。
三 野菜供給安定基金
(1)趣旨 野菜供給安定対策の強化のためには、価格の著しい低落があつた場合における生産者に対する生産者補給金の交付の業務を行つてきた野菜生産出荷安定資金協会(以下「協会」という。)と昭和四十七年以降消費地域における需給の不均衡に直接対処する事業を行つてきた財団法人野菜価格安定基金(以下「野菜価格安定基金」という。)の機能を統合することが望ましいと考え、協会及び野菜価格安定基金を廃止して、これらが実施してきた業務を併せ行う法人として、新たに、野菜供給安定基金(以下「基金」という。)を設立することとされた(法第十条から第五十八条まで)。 これに伴い、協会及び野菜価格安定基金が行つてきた業務については、基金の設立に際し、基金に引き継がれることとなる(基金が事業を引き継ぐまでの間は、野菜価格安定基金及び協会は従前どおり業務を実施する。)(野菜生産出荷安定法の一部を改正する法律附則第二条から第五条まで)。
(2)業務 基金が行う業務については、法第十五条第一項各号及び第二項に規定されているが、具体的には次のとおりである。
ア 法第十五条第一項第一号の規定に該当する業務としては、従前協会が行つてきた生産者補給金の交付の業務が承継され、従前どおり指定野菜の種別ごとの指定消費地域を対象として業務を実施することとされている(令第五条)。 生産者補給金の交付は、従前と同様、対象野菜の出荷に関し生産者と一定の委託関係のある出荷団体を通じて行うこととされており、また、法第十八条の負担金もこれらの出荷団体から徴収することとされている。これらの出荷団体は、従前は、協会の会員とされていたが、協会の廃止により会員制度も廃止されることとされたことに伴い、新たに、基金の登録を受けるものとされた。基金の登録を受けることができる出荷団体は、農業協同組合、農業協同組合連合会、事業協同組合等とされ、従前の協会の会員の資格と同様のものとされている(法第十六条、規則第六条)。 なお、基金が設立された場合、従前の協会の会員は基金の登録出荷団体に円滑に移行できるようにする方針である。
イ 法第十五条第一項第二号、第三号及び第五号の規定に該当する業務並びに法第十五条第二項の規定に該当する業務としては、野菜価格安定基金が行つてきた野菜売買保管事業、大規模低温貯蔵庫設置事業、野菜標準規格及指導事業、秋冬期重要野菜緊急輸送事業等の事業が承継実施される。 これらの業務のうち、法第十五条第一項第二号の業務に係る指定野菜及び法第十五条第二項の業務係る事業については、追つて農林省令で定められる予定である。
(3)法第十五条第一項第四号の期待に該当する業務としては、民法第三十四条の規定に基づき野菜価格の安定を目的として都道府県の区域を単位として設立された法人がアの業務に係る対象野菜以外の野菜であつて野菜の需給及び価格の安定上対象野菜に準じて重要なものにつき、指定消費地域等における価格の著しい低落があつた場合に出荷団体を通じて生産者補給金を生産者に交付する事業を行う場合に、これに必要な資金につき、基金が国の補助を受けて助成する業務が予定されている。 この業務の対象とする指定野菜に準ずる重要な野菜及びこの業務の要件については、追つて農林省令で定められる予定である。
(4)設立及び管理等
ア 基金の設立手続は、野菜の生産、流通及び消費について学識経験を有する者七人以上が発起人となり、定款及び事業計画を農林大臣に提出して、設立の許可を申請し、所定の手続を経て成立することとされた(法第二十五条から第二十九条まで)。
イ 基金の組織については、基金の業務運営に当たつて生産者、消費者のいずれにも偏しない中立的な業務運営の確保が要請されることにかんがみ、その意思決定機関である理事会のほか、生産者と消費者の意向の調和を図り適正な運営を確保するため、基金の運営に関する重要事項を審議する機関として、評議委員会の制度が設けられた(法第三十八条)。
ウ 基金の役員については、イの中立的業務運営の確保の観点から、理事長及び監事を農林大臣の任免に係らしめる等役員に関する監督規定が整備された(法第三十一条から第三十七条まで及び法第四十条)。 エ その他基金の財務及び会計に関し、その健全性を確保するため必要な規定が整備された。