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農林水産省

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病害虫等の防除における農薬の適正使用の徹底について

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14生産第 9797号
平成15年3月10日

地方農政局長あて
沖縄総合事務局長あて
北海道知事あて

生産局長


病害虫や雑草の防除は、農業生産の安定、生産性の向上及び農作物の品質向上等の面で重要な役割を果たしているが、その中にあって農薬は、防除に不可欠な資材として広く用いられている。このため、農薬については、国民の健康や環境に悪影響を及ぼすことのないよう、農薬取締法(昭和23年法律第82号)に基づき、最新の科学的知見を踏まえた厳正な検査を経た上で登録を行っているところである。また、各都道府県における防除技術の指導についても、効率的かつ適切な実施及び農薬の安全使用の徹底を基本として行ってきたところである。
しかしながら、昨年、無登録農薬の流通及び使用の実態が明らかとなったことを契機として、農薬の流通及び使用の各段階における安全かつ適正な管理・使用を徹底するため、農薬取締法が改正され、今般施行されたところである。
また、「農薬の使用、管理等に関する行政評価・監視結果に基づく通知」(平成15年2月総務省行政評価局)において、「防除基準について総点検を行い、安全使用基準等に適合する内容に改訂すること。また、農協等作成の防除暦等について、改訂した防除基準に併せて見直すよう農協等に対し指導を行うこと。」について都道府県に対し技術的助言を行う必要があるとされたところである。
このような状況を踏まえ、今後の病害虫等の防除に当たっては、農薬の使用の一層の適正化を図るともに、病害虫等の防除の効率化及び適正化並びに多様な防除技術の確立・普及をより一層推進することが重要である。
このため、都道府県の防除においては、下記の事項に留意して行われるよう、貴局管内の県に対する指導方お願いする。
なお、「病害虫・雑草防除における農薬の適正使用の徹底について」(平成2年12月25日付け2農蚕第7657号農蚕園芸局長通知)及び「農薬の適正使用の徹底について」(平成6年12月27日付け6農蚕第8011号農蚕園芸局長通知)は、廃止する。

1 農薬の使用の一層の適正化について
(1)農薬の適正使用の確保
ア 農薬取締法第11条に規定する農薬以外の農薬は、同条ただし書に規定する場合を除き、何人も使用してはならないことに十分留意し、その指導を徹底すること。
イ 農薬の使用に先立って、使用上の注意事項等の表示事項を必ず読み、記載された指示に従って農薬を使用するよう指導するとともに、農薬の使用に当たっては、極力飛散の少ない剤型のものを選択するよう指導すること。
ウ 農薬を使用する者は、農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省、環境省令第5号。以下「農薬使用基準省令」という。)に規定する基準に違反して、農薬を使用してはならないことに十分留意し、その指導を徹底すること。
エ 生産現場における農薬の使用状況についての実態の把握に努めるとともに、農薬の適正使用についての指導を徹底すること。
(2)農薬の使用時における安全確保及び周辺環境への配慮
ア 農薬の種類に応じた保護具を装備するとともに、ハウス内の防除に当たっては、無人化を推進するなど、農薬の使用時における安全確保に努めるよう指導すること。
イ 河川や湖沼への農薬の流出により水生動植物に影響が及んだり、周辺への飛散による被害が生ずることのないよう、地形や散布時の気象に十分配慮し、必要最小限の使用に努めるよう指導すること。
特に水田において止水期間が定められている農薬を使用する場合においては、当該農薬の流出を防止するため、止水期間の遵守の徹底及びけい畔の適切な管理等について指導すること。
ウ 有人ヘリコプターによる農薬使用については、従来から、安全確保に万全を期すとともに、農村地域における混住化等周辺の状況に応じて散布地域の点検・見直しを行うよう指導してきたところであり、今後とも適切な農薬使用がなされるよう、より飛散の少ない剤型及び散布技術を積極的に導入するとともに散布地域外に農薬が飛散することを防止するために必要な措置の実施に努めるよう指導すること。
また、無人ヘリコプターによる農薬使用についても、散布による被害や事故を防止するための対策の実施に努めるとともに、農薬の飛散を防止するために必要な措置の実施に努めるよう指導すること。
エ クロルピクリン及び臭化メチルを土壌くん蒸に使用する場合においては、当該農薬の揮散を防止するため、使用時期に応じた被覆期間の遵守の徹底について指導すること。
2 防除基準等の適正化について
(1)これまでに策定した防除基準等を総点検し、必要に応じ、農薬使用基準省令その他の農薬取締法に基づく農薬の使用に係る基準等(以下「農薬の使用基準等」という。)に適合した内容に改定し、その内容を速やかに関係者に周知すること。
(2)防除基準等を新たに作成する場合は、都道府県の気象条件、立地条件及び栽培様式等の状況に十分留意するとともに、必ず農薬の使用基準等に適合した内容とし、その内容を速やかに関係者に通知すること。
(3)農薬の使用基準等に変更が生じた場合等、防除基準等の見直しが必要な場合は、速やかに見直しを行うとともに、当該農薬の使用基準等の変更内容とあわせ、防除基準等の見直しの内容を速やかに関係者に周知すること。
(4)環境保全に配慮した防除を実施する観点から、防除基準等の作成に当たっては、病害虫の防除の要否の判断基準の設定及びその活用の促進を図るとともに、耕種的、物理的、生物的防除法等の積極的な導入を図るよう指導すること。
(5)地域農業改良普及センター、市町村、農業協同組合等が独自に作成している防除暦等を見直し、農薬の使用基準等に適合したものとするよう指導すること。
また、この防除暦等は、あくまでも目安として利用すべきものであるので、これに機械的に従って防除を行うのではなく、病害虫の発生予察情報等に十分留意し、適時適切な防除を実施するよう指導すること。
3 病害虫等防除の効率化・適正化
(1)病害虫発生予察情報の精度の向上
病害虫の発生予察情報の提供は、効率的かつ適正な防除を推進していく上でますます重要となっていることから、農作物の種類や品種、栽培方法等の変化及び薬剤耐性菌や薬剤抵抗性害虫の出現に配慮しつつ、より高精度できめ細かい発生予察情報の作成及び関係機関への迅速な伝達に努めること。
(2)要防除水準の設定及びその利用
ア 病害虫等の防除は、ほ場における病害虫等の発生状況に応じて適切に実施することが基本であることから、少なくとも主要な病害虫等について病害虫等ごとの要防除水準の設定を図るとともに、既存の要防除水準についても、病害虫等の発生状況等の変化に対応して所要の見直しを行うこと。
イ 農家に対し要防除水準の周知徹底を図るとともに、その活用の促進を図ること。
(3)効率的な農薬散布方法の改善
ア 防除の実施に当たっては、発生予察情報等の内容に応じて適切な方法・手段を選択するよう指導すること。
イ 病害虫等の種類及び発生状況並びに農作物の種類及びその栽培の状況によっては、スポット散布や少量散布技術等の利用を促進するよう指導を行い、農薬の使用量等を合理的に削減できる技術を積極的に活用し、効率的な農薬散布方法の普及を図ること。
(4)多様な防除方法の開発・普及
天敵昆虫の利用、病害虫抵抗性品種や台木の利用、太陽熱の利用による土壌消毒、寒冷しゃ被覆等の方法、性フェロモンの利用等多様な防除技術を活用し、農薬のみに依存しない防除の実施に努めるよう指導すること。