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農林水産省

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果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律の施行について(昭和60年7月1日)


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60農蚕第3664号
昭和60年7月1日

都道府県知事あて

農林水産事務次官


第1 法改正の趣旨

近年、我が国の果樹需要は総じて減少、停滞傾向にあるとともに、少量他品目化、良質指向の傾向が強まっており、うんしゅうみかんを始めとして多くの果実が生産過剰基調に陥っている。
また、諸外国からは、果実及び果実製品の輸入拡大の要請が強まっている。
以上のような果樹農業をめぐる内外の諸情勢の下にあって、果樹農業の健全な発展を図るためには、果実の生産過剰基調に対処して、果実の過剰時対策を充実する等果実の需要の動向に即応した生産を誘導するとともに、果樹産地の中核的担い手となり得る自立的な果樹農家を育成し、果樹農業の体質の一層の強化を図ることが必要である。
このため、この度果樹農業振興特別措置法(昭和36年法律第15号。以下「法」という。)の一部改正が行われ、果樹農業の振興に関する制度の整備強化が図られた次第である。

第2 果樹農業振興基本方針及び果樹農業振興計画の内容の整備

1 果樹農業振興基本方針に定める事項については、改正前は「植裁の目標」として新植面積の目標を定めてきたところであるが、今回の改正により、農林水産大臣は「裁植面積の目標」を定めることとした。これは、果実の生産の過剰基調が顕在化している現在にあって、果実の需要の動向に即応した生産の振興を図るためには、果実生産の拡大のみならず縮小にも着目し、新植及びかい廃の双方を考慮に入れた目標を示すことが必要があるためである。
また、果樹農業振興基本方針に定める事項として、「果樹農業の振興に関する基本的な事項」を定めることとし、果樹農業についての解決すべき基本的課題と今後進むべき基本的方向を示し、今後における果樹農業振興の指針とすることとした(法第2条第2項)。

2 都道府県の果樹農業振興計画についても、果樹農業振興基本方針と同様の改正を行った(法第2条の3第2項)。
なお、都道府県知事が果樹農業振興計画において明らかにすることとされている広域の濃密生産団地の形成に関する方針については、果樹生産の拡大を図る場合のみならず、果実生産の合理化を図る場合にあっても生産及び流通の集団的対応が必要であることにかんがみ、当該方針を明らかにすることとした(法第2条の3第3項)。

3 果樹農業振興基本方針の対象となる果樹については、従来の12種類に加え、キウイフルーツを追加することとした(果樹農業振興特別措置法施行令(昭和36年政令第145号。以下「令」という。)第2条)。

4 果樹農業振興基本方針は、おおむね5年ごとに定めることとしており、今回の改正に即した新たな果樹農業振興基本方針は、本年中に公表することを目途に、目下検討中である。

5 以上のほか、都道府県の果樹農業振興計画の作成に関し必要な事項は、果樹農業振興基本方針の公表に当たって、別途通知することとする。

第3 果樹園経営計画制度の改善

1 現在の果樹農業をめぐる諸情勢の下にあって、我が国果樹農業の体質の一層の強化が求められており、果樹産地の中核的担い手となり得る自立的な果樹農家を育成することが必要である。
このため、果実生産の拡大等の所期の目的を達成したことにより都道府県知事に対する認定請求期限が昭和51年3月31日をもって終了している果樹園経営計画について、果樹産地の中核的担い手の育成を図る観点から改善を図ることとし、計画の作成主体を個別果樹農業者に改めるとともに、都道府県知事に対する認定請求期限を廃止する等の改正を行ったものである(法第3条、第4条及び第4条の2)。

2 果樹園経営計画を作成し、都道府県知事の認定を求めることができる者は、果樹農業振興計画を作成し、農林水産大臣に提出した都道府県の区域内において果樹を栽培しているか、又は栽培しようとする農業者とすることとした。当該農業者には、個別農業者のほか、農地法(昭和27年法律第229号)第2条第7号に規定する農業生産法人等が含まれる。
なお、2以上の農業者が共同して一つの計画を作成することは認められないが、2以上の農業者が共同で利用する機械、施設を共同で購入して果樹園経営の改善を図ろうとうする場合には、各々の農業者が各々の計画を作成し、これらを一括して知事の認定を求めることができるものとする。

3 果樹園経営計画の記載事項は、法第3条第2項に定めるとおりである。本計画は果樹農業部門のみを内容とするものではなく、計画を作成する農業者の農業経営全体を内容とするものであるので留意されたい。

4 果樹園経営計画の認定を求めようとする者は、果樹園経営計画をその者の住所地を管轄する市町村長を経由して都道府県知事に提出しなければならないこととした(令第4条)。

5 国及び都道府県は、果樹園経営計画の作成及び達成のために必要な助言及び指導を行うように努めるものとすることとされている。(法第7条)が、本計画の作成の指導に当たっては、当該果樹園経営計画を作成する者の経営に係る土地条件、労働力、生産設備、償還能力等を十分勘案し、自立的な果樹農家の育成のため適正にして実行可能な計画となるよう指導し、単なる資金獲得のための計画とならないように留意されたい。

6 都道府県知事は、果樹園経営計画に係る事項が法第4条各号の要件のすべてを満たすときは、当該果樹園計画の認定を行い、農林漁業金融公庫又は沖縄開発金融公庫は、当該認定を受けたものに対し、当該認定に係る果樹園経営計画を実施するために必要な資金の貸付けを行うものとすることとされた(法第4条及び法第4条の2第1項)。なお、果樹園経営計画の認定を受けた者が農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号)第18条第1項第1号の2に掲げる資金のうち、果樹を植裁するための農地とする土地の取得に必要な資金を借り入れる場合、当該資金の据置期間については、引き続き10年以内において農林漁業金融公庫が定めることとした(法第4条の2第2項)。

7 法第4条第1号の農林水産大臣の定める基準並びに果樹園経営計画の作成、認定及び当該計画に係る融資に関し必要な事項については、別途通知することとする。

第4 果実の生産及び出荷の安定に関する措置

1 趣旨

近年、多くの果実が生産過剰基調にあり、果樹農業の健全な発展を図るためには、果実の生産及び出荷の安定を図ることが必要となっている。
特に、生産過剰が顕在化しているうんしゅうみかんについては、他果樹等への転換を計画的に推進する一方、豊作年等の生産過剰に対処して短期的な需給調整措置が講じられているところであるが、かかる措置の円滑な実施及び実効性の確保を図ることが必要になっている。
このため、農林水産大臣の生産出荷安定指針の作成、果実の生産及び出荷の安定に関する業務を実施する法人の指定、生産者、出荷者等に対する農林水産大臣又は都道府県知事の勧告等を定めることにより、果実の生産及び出荷の安定を図るための体制を整備することとしたものである。

2 生産出荷安定指針

(1) 農林水産大臣は、特定果実について、かつ、その需要の動向及び生産の状況からみて需給が著しく均衡を失すると見込まれる年について、特定果実の生産又は出荷を行う者及びこれらの者の組織する団体(以下「特定果実生産者等」という。)、法第4条の4の規定により指定を受けた法人並びに同条第2号に規定する法人に対する特定果実の生産及び出荷の安定を図るための指針を定めるものとすることとした(法第4条の3)。

(2) 特定果実は、その需給が著しく均衡を失し、又は失するおそれがあり、かつ、その状態を改善するために1年を超える相当の期間を必要と見込まれる果樹の果実であって政令で定めるものとすることとした。したがって、特定果実には、果実の生産能力が需要に対して著しく過剰であるため価格が生産費を大幅に下回ったり果実製品の大幅な過剰在庫が生じており、かつ、他果樹等への転換等の改善措置を講じたとしてもその状態が解消するまでにかなりの期間を必要とすると見込まれる果樹の果実を農業生産上や消費生活上の重要性等を総合的に勘案して政令指定することとなる。

なお、特定果実にはうんしゅうみかんを指定した(令第5条)。

(3) 生産出荷安定指針には、法第4条の3第2項各号に掲げる事項を定めるものとされているが、当該指針は、果実の需給が著しく均衡を失し、その安定的な生産及び出荷を図ることが特に必要な年について、生産、出荷の目標等を生産者、出荷者等に対して示し、これらの者が自主的に推進する計画的な生産、出荷の指針としようとするものである。
したがって、生産出荷安定指針に掲げられた目標を達成し、生産、出荷の安定を期するためには、生産者、出荷者等の自主的な努力とこれらの者の協調的対応が必要であるが、第4条の8(勧告)の規定にもみられるとおり、国及び都道府県が生産出荷安定指針に即した関係者の対応が行われるよう適切に指導することが求められている。
ついては、各都道府県に設置されている特定果実の生産、出荷の安定を図るための協議会(以下「都道府県協議会」という。)に対し、次の点に十分留意の上、指導に遺憾なきを期されたい。

[1] 商系出荷事業者団体の参加を促進すること等により、都道府県協議会の構成員の適正化を図ること。

[2] 都道府県協議会において生産出荷安定指針及び全国段階に設置されている協議会(以下「全国協議会」という。)の協議結果に即して協議を実施すること並びに都道府県協議会の協議結果に即した生産又は出荷を行うこと。

(4) 以上のほか、全国協議会及び都道府県協議会の体制の整備については、別途通知することとする。

3 指定法人

(1) 農林水産大臣は、民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設立された法人であって、果実の生産及び出荷の安定に関する業務を適正かつ確実に実施できると認められるものを、その申請により、全国を一に限って、当該業務を全国的に実施する者として指定できるものとした(法第4条の4)。指定の申請手続は、果樹農業振興特別措置法施行規則(昭和36年農林省令第28号。以下「規則」という。)第1条に定めるとおりである。
当該指定された法人(以下「指定法人」という。)に対しては、農林水産大臣は法第4条の5から第4条の7に規定する監督を行うこととしており、また、国及び都道府県知事は、指定法人及び民法第34条の規定により設立された法人であって、果実の生産及び出荷の安定に関する業務を都道府県の区域内において行うもの(以下「都道府県法人」という。)の業務の円滑な実施のために必要な助言、指導その他の援助を行うように努めるものとすることとした(法第7条)。
これらの規定は、指定法人の業務の適正かつ確実な実施を確保し、生産者、出荷者等が安定的な生産又は出荷を行うために必要な援助体制を整備しようとするものである。

(2) 指定法人の実施する業務は、法第4条の4各号に掲げるとおりであるが、特に同条第1号に掲げる業務については、その重要性にかんがみ、生産出荷安定指針に適合した業務の実施を確保するため、業務実施規程を農林水産大臣が承認することとした(法第4条の5)。
なお、業務実施規程の記載事項は、法第4条の4第1号に掲げる業務の対象とする特定果実の種類、実施時期、実施方法のほか当該業務に必要な経費に関する事項とした(法第4条の5及び規則第3条)。

(3) 法第4条の4第2号に規定するとおり、都道府県法人に対する助言、指導その他の援助を指定法人の業務として位置づけているが、これは、都道府県法人の実施する業務が生産出荷安定指針の実現等果実の生産及び出荷の安定を図る上で極めて重要であり、全国的な見地から一体的に運営されることが必要であることによる。
ついては、都道府県が都道府県法人に対する助言、指導その他の援助を行うに当たっては、指定法人から都道府県法人に対する援助内容に配慮しつつ、都道府県法人の業務が生産出荷安定指針に即して行われるとともに、果実の生産及び出荷の安定が的確に図られるよう留意されたい。

(4) 指定法人及び都道府県法人の業務の内容及び方法の改善等については、別途通知することとする。

4 勧告

(1) 農林水産大臣又は都道府県知事は、生産出荷安定指針が公表されている場合において、特定果実生産者等による特定果実の生産又は出荷が、指定法人が行う第4条の4第1号に掲げる業務又は都道府県法人が行う特定果実の安定的な生産又は出荷の促進に関する業務の円滑な実施に著しく支障を及ぼしていると認めるときは、当該特定果実生産者等に対し、当該業務の実施に協力するよう必要な勧告をすることができることとした(法第4条の8)。
これは、生産出荷安定指針が公表されている場合にあっては、特定果実生産者等が特定果実の生産及び出荷の安定を図るため一致した対応をとることが必要であることにかんがみ、かかる場合に指定法人又は都道府県法人が実施する業務の円滑な実施に著しく支障を及ぼすような特定果実生産者等の生産又は出荷が行われているときは、行政庁がこれを排除するために必要な勧告を行い得ることとしたものである。

(2) 勧告を行い得る場合は、生産出荷安定指針が公表されている場合であって、特定果実生産者等が当該指針に即した生産又は出荷を行わず、かつ、法第4条の8に規定する指定法人又は都道府県法人の業務の円滑な実施に著しく支障を及ぼしていると認めるときであり、例えば、指定法人又は都道府県法人による助成事業の対象者が助成を受けているにもかかわらず安定的な生産又は出荷に協力しない場合や指定法人又は都道府県法人の業務に協力しないよう他の特定果実生産者等に対し働きかけるような妨害行為を行う場合がこれに該当する。

(3) 本規定の趣旨は、生産出荷安定指針の具体化をはかり、特定果実の安定的な生産及び出荷を実現するためには、生産者、出荷者等が自主的に計画的な生産、出荷を実施することが必要であることは勿論であるが、行政庁としてもその助長のため、適正な生産及び出荷が実現されるよう指導を行おうとするものである。
ついては、本規定の趣旨を十分考慮の上、2の(3)の指導等特定果実の安定的な生産及び出荷を図るための指導に遺憾なきを期するとともに、本規定の適正な運用に配慮されたい。

5 外国産の果実等に関する措置

(1) 政府は、外国産の果実又は果実製品の輸入によって国内産の特定果実又は特定果実に係る果実製品の価格が著しく低落し又は低落するおそれがあり、その結果、特定果実の生産又は出荷に重大な支障を与え又は与えるおそれがある場合において、特定果実又は特定果実に係る果実製品につき、2から4に掲げる措置によってはその事態を克服することが困難であると認められるときは、当該外国産の果実又は果実製品の輸入に関し必要な措置を講ずる等当該事態を克服するため相当と認められる措置を講ずるものとすることとされた(法第5条)。

(2) 本規定は、議院修正により政府案に追加して規定されたものであるが、衆議院農林水産委員会の附帯決議において、その運用に関し、「特定果実の生産、出荷に重大な支障を生ずる事態を防止するよう努力するとともにガット等の国際協約との調和の確保をはかること」が求められている。

お問合せ先

生産局 園芸作物課

代表:03-3502-8111

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