森林病害虫等防除法の一部を改正する法律の施行について(昭和42年9月30日)
42林野造第1356号
昭和42年9月30日
改正:平成6年10月1日 6林野造第451号
都道府県知事あて
農林事務次官
森林病害虫等防除法(昭和25年法律第53号)は,第55回国会において成立した森林病害虫等防除法の一部を改正する法律(昭和42年7月31日法律第101号)によって改正され,同改正法は同法附則第1項の規定に基づく森林病害虫等防除法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和42年8月18日政令第259号)によって,本年8月21日から施行されることとなった。これに伴い,森林病害虫等防除法施行規則の一部を改正する省令(昭和42年農林省令第45号)が9月28日公布され,同日から施行されることとなった。
今回の改正は,最近の森林病害虫等の発生状況等にかんがみ,その防除の適切かつ効果的な実施を図るために行われたものであり,その改正の趣旨および内容は,下記とおりであるので,今後の森林病害虫等の防除の運用について遺憾のないようされたい。
なお,森林病害虫等の防除は,国,地方公共団体,林業者の組織する団体及び森林所有者等が相互に協力し,一体となってその実施に当たらなければ効果的に実施できないものであり,今回の改正もこれが防除措置の実施体制を一層整備強化するすることを大きな狙いとしているので,関係機関等をもって構成する防除連絡協議会等の組織化を促進する等により森林病害虫等防除行政の推進を図られたい。
以上,命により通達する。
記
1 第2条関係
(1) 伐採木等の定義の改正について
従来,はく皮された伐採木等については,森林病害虫等防除法(以下「法」という。)に基づく駆除命令等の措置の対象とされなかったのであるが,最近におけるかみきりむし等の材質部せん孔性害虫による被害の状況にかんがみ,はく皮された伐採木等についても法による防除の措置を講じなければならないと考えられるに至ったこと,および薬剤による防除技術の開発の進歩によってこれらの害虫に対しても効果的な防除措置の実施が可能となったことから,伐採木等についてははく皮の有無を問わず防除措置を行ないうることとした。
なお,はく皮された丸太には,森林病害虫等が新たに附着することがほとんどないので,今後とも,可能な限り丸太のはく皮が励行されるようその指導に努められたい。
(2) 指定種苗の定義の拡充について
指定種苗には,樹木の種子および苗のほか,その容器および包装を含めることとし,これらもあわせ防除命令ならびに検査および指示の対象とすることとした。
2 第3条関係
(1) 防除命令の内容の拡充について
近年,各種の効果的かつ安全な薬剤が開発されたので法第3条第1項(法第5条第2項において準用する場合を含む。)第1号,第2号および第6号の命令をする場合において,新たに薬剤による防除を命じうることとした。
なお,薬剤による防除に際しては,防除効果の確保と人畜等の被害防止に留意する必要があるので,薬剤の選択およびその使用方法については,森林害虫防除員等による指導に万全を期すとともに,命令書にその留意事項を記載する等の措置を講じられたい。
(2) 緊急な場合の命令手続について
森林病害虫等の防除のための措置を緊急に行なう必要があるときは,公表をしないで防除命令をすることができることとした。
森林病害虫等が台風等の災害に伴い異常発生した場合,その発見がおくれた場合等で,緊急に防除措置を講じないと防除適期を失するおそれがある場合等には,公表を経ず直ちに命令をなしうるものである。
しかし,この公表は,所有者又は管理者に不服申出の機会と防除のための準備期間を与えるためのものであるので,公表を省略する場合には,その準備期間を考慮して防除実施の期問を定めなければならないこととされており(ただし,移動制限は除外。),受命者が防除期間が短いために自ら防除をすることの意思を有しながら,当該防除措置を実施することができないこととならないように十分注意されたい。
(3) 命令書について
今回の改正に際し,命令の手続きに関する規定について整備することとし,命令は命令書の交付によって行なうこととするとともに,その命令書の記載事項を明定した。
また,本法の防除命令に伴う代執行は,行政代執行法によるものと若干異なっているので,代執行をいかなる場合に行なうか等についても命令書に記載することとした。
3 第4条関係
(1) 代執行をする範囲の拡充について
従来は,受命者が指定期間内に防除を行なわない場合に命令者が代執行を行なうことができることとなっていたが,今回の改正によって受命者が所在不明であるとか風水害等の天災を受ける等やむを得ない事情の発生により,指定期間内に防除を行なうことが著しく困難であるときは,指定期間内であっても代執行をすることができることとしたが,この指定期間内の代執行に当っては,関係市町村長または防除連絡協議会等の意見を聞く等により法の趣旨に即した適正な運用を図られたい。
(2) 代執行に係る費用の徴収について
従来,代執行に伴う費用徴収の根拠が不明確であり,また今回代執行を行ないうる場合の範囲を拡大したこともあって,この際,森林病害虫等の防除の特殊性を考慮しつつ,新たに代執行に伴う費用徴収についての規定を設けることとした。
すなわち,代執行を行なった場合には,法の定めるところにより費用の徴収ができることを明定するとともに,その徴収額は,当該防除措置の実施に要した費用の額が受命者が自ら行なったとした場合に受けることとなるべき損失補償の額をこえるときにそのこえる部分の額に相当する額とすることとした。
4 第4条の2関係
従来,協力の要請は,代執行を行なう場合の地方公共団体に対してのみ行ないうることとなっていたが,森林病害虫等の防除の国,地方公共団体,森林組合,受命者が一体となった効果的な実施を図るため,新たに,森林組合および森林組合連合会に対しても協力を要請することができることとするとともに,その協力を要請する業務は,命令手続き等を含む防除措置の実施に関し必要な業務とした。
なお,この協力要請は,別記様式第1号の例にならい協力要請書を交付してするとともに,当該団体等がその協力に要した費用についての財源措置を講ずるようにされたい。
5 第6条関係
森林害虫防除員等の立入検査場所および収去物件の対象を拡大することとした。この場合「樹木が生育している土地」とは,公園,街路,邸宅,境内および墓地等を含むが,立入検査ができるのは,当該土地に発生した森林病害虫等による影響が森林に及ぶおそれがある場合であるので留意されたい。
また,船車に対する立入検査および第7条の規定に基づく指示については,船車の運行に支障が生ずることのないよう十分配慮されたい。
6 第7条関係
第3条第1項の命令内容を拡大したことに伴い,第7条第1項の規定により森林害虫防除員等が指示することのできる内容を拡大することとした。
なお,指示は,別記様式2号の例にならい,文書を交付してされたい。
また,森林害虫防除員等がその指示に係る措置について自ら処理できる場合について,3の(1)の趣旨と同様の趣旨で拡大がなされたが,これら法第6条および第7条の改正による権限の拡充に伴い,森林害虫防除員の資質の向上を図ることについて配意されたい。
7 第8条関係
従来,伐倒された樹木については,その販売収入によりその伐倒に要する費用を回収できるものと考えられたため,伐倒に要する費用については,損失補償の対象とされていなかったが,今回伐倒費についてもそれが損失となる場合には補償することとした。これは最近,幼齢木や奥地山林の点在木等のように伐採しても販売することができないために伐倒費を受命者が負担することとなる場合が多くなってきたことにかんがみ,その防除の円滑な実施を図るための改正である。
「樹木の伐倒の措置を行なうことにより通常生ずべき損失額」とは,当該樹木につき市場価逆算方式により立木価格を算定し,その価格が伐倒に要する費用に満たない場合その差額と考えられるが,さしあたり林道からの距離,地形的因子および伐倒作業の難易などの一般的,客観的事情を考慮した基準により,当該補償額を算定する等の方法によることもやむを得ないと考えられるので,これにより適切な運用を図られたい。
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